リスク
3【事業等のリスク】
当社グループでは、事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを洗い出し、それらについてグループ共通の基準(事業計画への影響度と発生可能性等)で評価を行い、グループ内での事業規模の違いや外部環境の変化等に基づき、経営者の目線からリスク間の相対的な関係を考慮した上で対処すべきリスクの優先順位を決定しています。
なお、リスクの洗い出しに際して、リスクを戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、それぞれ以下のように定義しています。
戦略リスク |
事業戦略の策定及び遂行により獲得を企図する成果が予定通り獲得できない程度及びその発生可能性であり、健全な範囲で事業成果を獲得するために敢えて選択して取るリスク |
オペレーショナルリスク |
戦略遂行を支えるオペレーション上の事象による損失額及び事象発生可能性であり、事業遂行上一定以下に抑制すべきリスク |
これらに基づき、リスクにおける重要性を判断した上で、当社グループの各事業、管理部門、マネジメントの各レベルが当該リスクに応じた対策を立案、実行し、対策の進捗状況をモニターし、継続的に改善する活動を展開しています。
また、監査委員会は取締役会、執行役会及び各委員会への参加、重要書類の閲覧、会計監査人とのコミュニケーション等を通じて、対処すべき優先順位の高いリスクについて適切な対策が実行されているかモニターしています。なお、上記に加えて、必要に応じて各事業及び子会社に対する往査も実施しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについて、影響度、発生可能性、重要性の前年からの変化をリスクマップに一覧化し、詳細な情報を記載しています。当社グループでは、各リスクについてグループ共通の基準で評価した結果を一元的に管理するために、戦略リスクとオペレーショナルリスクを同一のリスクマップに表示しています。なお、以下に示す発生可能性及び影響度の評価は対応策を考慮した後の評価(残余リスク)となります。
また、記載しているリスクや対応策が互いに強く連関している場合は参照リスクとして該当番号を記載していますが、すべての連関を網羅するものではありません。
各リスクに紐づいている重要課題については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。各リスクが重要課題の目標達成を阻害する又は未達成により発生する等の関連性がある場合、該当する重要課題を記載しています。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(リスクマップ及び凡例)
事業等のリスク |
2024年3月期の以下に関するリスク |
発生 可能性 (注)1 |
影響度 |
重要性の 前年からの変化 |
|
戦略リスク |
(1) |
経済状況、為替相場・金利の変動 |
高 |
高 |
同水準 |
(2) |
地政学 |
高 |
中 |
同水準 |
|
(3) |
新製品の開発 |
中 |
中 |
同水準 |
|
(4) |
原材料等の調達 |
中 |
中 |
同水準 |
|
(5) |
環境(気候変動、水、資源) |
中 |
中 |
同水準 |
|
(6) |
事業再編(注)2 |
低 |
中 |
同水準 |
|
(7) |
競合他社との競争・製品価格 |
中 |
中 |
同水準 |
|
(8) |
人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進 |
中 |
中 |
同水準 |
|
(9) |
販売チャネル |
中 |
中 |
同水準 |
|
(10) |
ブランド |
低 |
高 |
同水準 |
|
オペレーショナル リスク |
(11) |
災害・事故・感染症等 |
中 |
高 |
同水準 |
(12) |
情報・サイバーセキュリティ |
高 |
中 |
同水準 |
|
(13) |
知的財産 |
中 |
中 |
同水準 |
|
(14) |
繰延税金資産の回収可能性 |
低→中 |
中 |
増加 |
|
(15) |
規制強化 |
低 |
低 |
同水準 |
(注)1.前連結会計年度の評価から変更のあったリスクについて、前連結会計年度の発生可能性を併記しています。
2.前連結会計年度の「他社との連携・企業買収等に関するリスク」は、当連結会計年度より本リスクに包含しています。
[戦略リスク]
(1) 経済状況、為替相場・金利の変動に関するリスク
当社グループは、グローバルに販売活動を行っており、その売上収益は世界における需要、景気、物価の変動、産業・業界の動向に影響を受けます。例えばアルミ、銅、樹脂、半導体など原材料価格や物流コスト、エネルギーコストの上昇は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に日本国内においては、新設住宅着工戸数や建設会社の建設工事受注高の大幅な変動が同様に当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、為替相場の変動は、当社グループの外貨建取引により発生する資産及び負債の円貨換算額や外貨建で取引されている製品の価格や売上収益等にも重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループの資金調達は、主として金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債によっており、市場金利が著しく上昇した場合には当社グループの資金調達に係る金利負担が増加し、借入や社債発行による資金調達の難航や支払利息・社債利息が増加する等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(2)(3)(4)(11)(15))
発生可能性 |
高 |
影響度 |
高 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
当社グループ全体における販売活動においては、適切なタイミングにおける価格改定を実施し、価格の適正化を図っています。日本での販売活動においては、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数減少の予想を踏まえ、新築市場におけるシェアの拡大の取り組みのみならず、中高級品市場への拡販、リフォーム戦略の強化を進めています。また、生産活動においては、代替調達先の確保による製品・原材料を含めた適切な在庫水準の維持により、安定的な供給体制の構築に努めています。 さらに、日本の財務部門において、運転資金及び投融資による資金需要を把握し、投資審査委員会等で案件を審査する体制を構築しています。また、日本の財務部門の他に、中国、シンガポール、ドイツ、米国に1か所ずつ計4拠点の「リージョナル・トレジャリー・センター」を設置し、各拠点において為替相場の動向を月次でモニタリングするとともに、必要に応じヘッジ手続きを実行することにより、為替相場の変動影響を低減しています。当該「リージョナル・トレジャリー・センター」に各地域における資金管理業務等を集約することにより、資金調達の効率化及び安定化を進めています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
すべて |
[戦略リスク]
(2) 地政学に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、地政学の影響を広範囲に受ける可能性があります。国際情勢や多国間の国際関係は、原材料、資源・エネルギー価格や輸送費の高騰及び調達リスク、物流における供給停滞・遅延といった直接的な影響に加え、世界的な物価高や政策金利への影響を増長させるといった間接的な影響もあり、多岐にわたる他のリスクと複雑に関係し、それらの影響及び不確実性を増長する可能性があります。また、各国の経済安全保障政策が強化され、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止、戦争・紛争が発生した地域における長期事業停止や事業撤退等、予期しない政策や法規制等の変更、また社会的な期待の変化が、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(4)(11)(12)(15))
発生可能性 |
高 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
当社グループは海外にも生産拠点を持ち、製品をグローバルの顧客に供給していることから、事業継続に影響する地政学リスクについて様々な面から対応を強化しています。調達リスクについては、事業に甚大な影響を及ぼすサプライチェーンの分断対策に注力しています。カントリーリスク対応を推進し、特定国・地域に過度に偏ることがないように取り組んでいます。また、有事の際の在庫備蓄品目を拡大することで備えを強化しています。さらに緊急対応先への先行移管や有事の際の行動計画を作成し、定期的なコミュニケーションが取れる関係を構築することでグループ全体としての調達機能の活用・強化を実行しています。 物流においては、供給網の寸断に加えエネルギーコストも考慮してグローバルのサプライチェーンを地域内に順次変更しています。欧州においては配送センターを再編し、北米においてはメキシコの生産力を高め地域内での供給体制を強化しています。国内においては調達物流専門部署を設置し、複数拠点の生産体制や工場間の応援生産体制の整備、適切な在庫水準の維持を進めています。また、政治・経済情勢や法規制の動向を注視し、事業環境の変化や当社グループへの影響を早期に把握することで、事業環境の変化に迅速に対応できる体制の構築に努めています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
すべて |
[戦略リスク]
(3) 新製品の開発に関するリスク
当社グループは、常に技術と顧客ニーズを的確に把握し、魅力ある製品の開発に努めています。しかしながら、市場や業界のニーズ変化に対応できない、十分な開発投資を維持できず上市に至らない、あるいは新製品の価値が顧客へ効果的に訴求できない場合、将来の成長鈍化と売上収益の低下につながる可能性があります。また、製品に欠陥が生じリコールが発生するリスクもあります。大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、多額の支払が生じ、当社グループ製品への信頼性や評判に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(4)(15))
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
市場の変化に迅速に対応し、新たな価値を生み出す製品を開発しています。顧客志向を強化するインクルージョン文化の醸成として、「LIXILユニバーサルデザインコンセプト」を積極的に取り入れ、泡シャワー「KINUAMI U」や電動オープナーシステム「DOAC」など、誰もが使いやすい製品の開発、提供に努めています。また、企業や個人に対して資源の責任ある利用が求められていることを踏まえ、環境配慮型製品の開発を加速させています。「プレミアル/PremiAL R70」に加え、リサイクル率100%を実現した「プレミアル/PremiAL R100」の展開により2031年3月期までにアルミリサイクル率100%を目指すほか、「LIXILプラスチック行動宣言」の実現に向け、リサイクル比率を従来品の3倍に高めた高性能樹脂窓「EW」や、従来再資源化が困難となっていた廃プラスチックと廃木材を利用した新素材「レビア/revia」を開発するなど、 製品の原材料として可能な限りリサイクル素材を使用し、市場ニーズと持続可能な社会への貢献のどちらにも応える製品を開発しています。 各製品上市後は業績管理により、市場トレンドと開発戦略の適合性の確認を継続しています。開発プロセスにおいてはステージゲートシステムを導入し、品質不具合の早期発見と迅速な対応を可能にし、大規模な製造物責任賠償やリコールにつながる可能性を低減しています。また、従業員を対象とした品質意識調査の実施や毎年の品質テーマを掲げた啓発活動、品質意識を継続的に高めることを目的とした情報メディアの発行など、コストや納期よりも顧客目線での品質を最優先する風土の醸成に努めています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
グローバルな衛生課題の解決、気候変動対策を通じた緩和と適応、水の持続可能性の追求、 資源の循環利用の促進、製品ライフサイクルを通じた環境への影響、多様性の尊重、 製品の安全性、顧客満足、企業倫理とインテグリティ、リスクマネジメント、 ステークホルダーエンゲージメント、情報セキュリティ |
[戦略リスク]
(4) 原材料等の調達に関するリスク
当社グループの生産活動においては、資材、部品等の供給品を調達しています。そのため、業界の需要増加や事業展開国におけるインフレ等による原材料価格の高騰、為替レートの変動、コモディティの価格変動や重要な物的資源(金属・木材・樹脂・セラミック等)の調達可能性の変動の結果、売上原価が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、資材、部品等の供給品は、欠陥や欠品により当社グループの製品の信頼性や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、生産・販売活動と密接に関わる物流業務に関して、運搬物の増加等による調達遅延や石油価格の変動、人件費の高騰などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(1)(2)(3)(5)(11)(15))
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
原材料価格高騰部分の販売価格への転嫁、価格変動のヘッジを目的としたデリバティブの活 用を行っています。また、複数購買の実施、有事における対応力が強いサプライヤーの選定、カントリーリスク対応を推進するほか、取引先に対しては信用情報調査や調達アンケート、および定期的なコミュニケーションを実施しています。BCPの観点では、定期的な品質テスト、安全在庫量の確保等により安定的な供給体制の構築に努めています。 また、コモディティ価格の高騰の影響緩和のため、原材料の代替素材への転換やリサイクル素材の使用、および製品の長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を推進しています。その一貫として、当社グループが掲げる「LIXIL環境ビジョン2050」の注力分野の1つとして資源の循環利用を促進しています。さらに、物流に関しても、物流効率の改善に取り組むことで物流費の安定化を図っています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
資源の循環利用の促進、製品ライフサイクルを通じた環境への影響、生物多様性の保全、 製品の安全性、人権、サプライチェーンマネジメント、リスクマネジメント |
[戦略リスク]
(5) 環境(気候変動、水、資源)に関するリスク
当社グループは、製品開発から調達、生産、販売活動に至る事業活動において地球環境保全に向け様々な活動を行っています。特に近年においては、気候変動が自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクが顕在化する可能性が高くなっています。さらに、今後世界的な水問題への対応、原材料・部材の価格高騰、石油由来のプラスチックや木材に関する規制強化、サーキュラー・エコノミーへの移行による消費者嗜好の変化等の市場変化に柔軟に対応していかなければ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(4)(15))
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略審議会を設置し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境重要課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の目標管理とモニタリングなど、環境戦略を構築し、実行しています。 LIXIL環境ビジョン2050では「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までのCO2排出ネットゼロ及び水の恩恵と限りある資源を次世代につなぐことを目指した活動を推進しています。その長期目標である2050年までのCO2削減目標(Science Based Targets)については、2024年3月期にネットゼロ認定を取得しました。 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言を踏まえ、気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境課題が当社グループに及ぼすリスクと機会を特定・評価し、執行役会・取締役会へ報告・承認を経て、環境戦略に反映させる取り組みを進めています。移行リスクに対しては、生産活動におけるエネルギー使用効率化や積極的な再生可能エネルギー活用に加えて、今後はサプライチェーン全体での環境負荷削減の取り組みを強化していきます。さらに、インターナルカーボンプライシングのより実効的な運用に向けた検証や、2050年に向けた長期的な脱炭素技術の開発や導入を促進していくための製造技術や製品材料の研究を進めています。また、物理リスクに対しては、BCP計画によるリスク最小化、生産バックアップ体制整備、固定資産への保険、渇水対策のための取水管理などを進めています。 移行リスク及び機会への対応においては、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、その進捗の監視と振り返りを行う管理プロセスを構築し、適宜改善を進めています。また、ISO14001若しくは環境マネジメントシステムによる環境関連法令の洗い出しや遵守の点検ルールを定め、運用状況について定期的に内部監査を実施し、内部監査で指摘があった事項については、フォローアップを行い、改善の実施を確認することで、環境マネジメントシステムの効果的な運用につなげています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
気候変動対策を通じた緩和と適応、水の持続可能性の追求、資源の循環利用の促進、 製品ライフサイクルを通じた環境への影響、環境マネジメント、生物多様性の保全、 サプライチェーンマネジメント、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
パリ協定及びSDGsの目標13に掲げられているとおり、CO2削減のため、製造・販売活動の見直しや気候変動による影響を低減するための取り組みを実施することが以前にも増して企業に求められています。また、世界的な人口増加や経済成長に伴い、SDGsの目標12や目標6に掲げられているとおり、持続可能な資源利用や節水・浄水技術に対する需要が高まっています。近年では、SDGsの目標14や15に掲げられているとおり、気候変動の影響と合わせて生物多様性の損失がグローバルリスクとして認識が高まり、自然資本に関するリスクの把握や対応に対する評価を求める動きが始まっており、当社グループにおいてもTNFDへの対応を開始しています。
[戦略リスク]
(6) 事業再編に関するリスク
当社グループは、経営の効率化及び競争力強化のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の再編、製造拠点や販売・物流網の再編及び人員配置等の適正化による事業の再構築を行うことがあります。これらの施策に関連して、事業再編後の組織において全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、投融資等の意思決定の際に、事業戦略、領域、展開国等に内在するリスクが的確に識別されず、投資実行後に当初想定していた利益やシナジー効果を実現できないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 |
低 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
経営陣と従業員とのコミュニケーション強化を図ることにより、当社グループの経営戦略の浸透を図っています。 事業・地域ポートフォリオマネジメントを強化することを通じて経営資源配分の優先順位を明確にすることにより、事業再編後の組織において、シナジー効果の最大化や戦略実効性の向上が早期に実現するよう努めています。事業再編後のスムーズな組織の構築に向けて、M&Aにおける買収先企業のPMIを強化しています。その一環として、ガイドラインの策定を通じて、PMI推進体制及び進捗報告プロセスを明確化することにより、有効かつ適切なPMIプロセスの整備・運用による子会社のガバナンス強化を推進しています。さらに、当社又はその子会社による会社の新設、事業再編等を含む投融資に関する事項(投融資案件)については、その内容や金額的重要性に応じて適時適切な判断ができるよう、投資審査委員会による審査や決議をする体制を整えています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
企業倫理とインテグリティ、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
[戦略リスク]
(7) 競合他社との競争・製品価格に関するリスク
当社グループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争に直面しています。特に売上収益は競合他社の価格設定に影響を受けます。当社グループは高品質で魅力的な製品を市場へ投入する能力を保持していますが、価格面において競争優位に展開できる確証はありません。これにより、製品・サービスが厳しい価格競争に晒され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
競合他社との激しい競争による市場価格の下落に対し、多様なニーズに寄り添った付加価値製品の市場投入による差別化を進め、販売価格の底上げに取り組んでいます。生産活動においても共通部分の生産を汎用設備で行うことで生産スペースを削減(プラットフォーム化)するなど、投資資本効率の向上に努めています。プラットフォーム化により、新製品の早いサイクルでの市場投入を可能とし、時代に合った新しい価値を常に提供し続けることが可能となります。 また、富裕層をターゲットとした製品や、当社独自の技術によって実現した環境配慮型製品など、他社差別化製品の展開により、価格競争に晒されにくい事業ポートフォリオの改善を推進するほか、仕様や基準およびデザインを統一することで、リビングなど空間全体のコーディネートを追求した提案を行うなど、当社ならではの幅広い製品を活かした体制づくりを行っています。 その他、クラウドファンディング等も活用しながら、市場に対して新しい価値を提供する製品を適時に投入することで、価格ではなく「価値」で顧客に選ばれる取り組みを実施しています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
多様性の尊重、顧客満足、責任あるマーケティングと広告 |
[戦略リスク]
(8) 人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進に関するリスク
当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要です。しかしながら、特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、国内外で必要な人材を継続的に採用・維持するための競争は厳しく、人材獲得や育成が計画通りに進まない場合には、長期的観点から業務運営の効率性が損なわれ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
当社グループにおいて、継続的な事業の発展のためにグループ全体で女性のさらなる活躍、障がいのある従業員のための取り組みや人種における平等、性的マイノリティに関する取り組み等を推進しており、地域ごとに人事制度の改定や拡充を行うほか、グローバル規模の従業員リソースグループ(ERGs:Employee Resource Groups)として、ジェンダー平等、多文化、障がい、働く親や介護者、LGBTQ+にフォーカスした5つのグループを立ち上げる等、インクルーシブな組織風土を醸成するために様々な活動を行っています。 日本において、新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開するほか、人事・教育体系を充実させ、従業員の定着と育成に努めています。また、グローバルで活躍できる人材を育成するために、各プログラム(海外派遣研修、選抜型の育成プログラム、eラーニング等)を実施しています。多様なバックグラウンドを持つ従業員が個性や能力を十分に発揮し活躍できるよう、インクルーシブな環境を構築するための取り組みを推進しており、マネージャー向け研修をはじめとする多様な人材を受け入れる企業文化の醸成、在宅勤務等の職場環境の整備、エキスパート制度等の新たな人事制度の構築に取り組んでいます。さらに、「報酬・福利厚生委員会」を設置し、グローバルでの処遇の公平性・透明性に向けた取り組みを強化しています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
多様性の尊重、人材と能力開発、従業員の安全と健康、企業倫理とインテグリティ、人権 |
近年、高齢化の進行による高齢世帯の増加及び障がい者人口の増加に対応した製品の必要性が高まっています。また、SDGsの目標5にて掲げられているとおり、企業に対して高齢者や障がい者の雇用だけでなく、ジェンダー格差の是正に対する取り組みも求められています。
[戦略リスク]
(9) 販売チャネルに関するリスク
当社グループはグローバルに事業を展開しており、各事業において販売チャネルの戦略を推進しています。しかしながら、流通経路の変更や新規の販路拡大に対して、想定していた顧客数が確保できない等の理由により、売上成長が鈍化する可能性があります。また、コスト構造の改革が計画通りに進まない場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
例えば、当社の連結子会社であるASD Holding Corp.は様々な需要に応じて幅広い製品を展開していますが、近年特に北米を中心として流通構造の変革が起きています。具体的には、エンドユーザーへの直接的な販売の拡大が起きており、ASD Holding Corp.においても、Eコマース(EC)を活用したウェブサイトでの自社製品の販売等を含め、ビジネスの転換を図り、売上の伸長やコスト構造の改革に努めています。
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
各事業の市場傾向やターゲット顧客の特性を把握し、事業戦略と一貫した販売チャネル戦略を推進しています。市場環境の変化における需要の変動や法規制、技術革新、競合他社の活動等を適切に把握し、適時に戦略の方針やアプローチを改善することで、各事業における当社製品の効果的な市場浸透を図っています。 ASD Holding Corp.では、販売チャネルの拡大を進めるために、従来、外部の販売代理店が行っていた営業活動を内製化し、施工会社等のステークホルダーに対して、当社ブランドの専門性を持った担当者が直接アプローチすることで自社製品の販売促進に努めています。特に、建設会社への拡販やショールームの活用強化に注力しています。また、自社のECを活用したウェブサイトの展開や施行者向けトレーニングを充実させるなど、エンドユーザーへの直販チャネルの拡大を促進しており、売上高も増加傾向にあります。その他、リテール市場の縮小によるリスク軽減を見据え、子会社の買収・売却・解散等を適切に判断することにより、ポートフォリオの管理を行っています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
顧客満足、サプライチェーンマネジメント、情報セキュリティ、 責任あるマーケティングと広告 |
[戦略リスク]
(10) ブランドに関するリスク
当社グループはグローバルに事業を展開しており、多数のブランドを保有しています。しかしながら、ブランド戦略と事業戦略との整合性や、市場トレンドとの適合性、それらの把握および管理不足によりブランド・エクイティが変動する、あるいは製品事故などインシデント発生によるレピュテーション毀損等によりブランド価値が低下することで、業績に影響を与える可能性があります。
特に当社の連結子会社であるLIXIL Europe S.à r.l.が保有するGROHEブランドは富裕層をターゲットとしたプレミアムブランドとして認知されており、激しい競争環境において従来の欧州中心のビジネスのみならず、中東市場における販売の拡大を推進しています。当ブランド価値の毀損により、売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
発生可能性 |
低 |
影響度 |
高 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
各ブランドの強みや認知度を活かし、事業戦略と一貫したブランド戦略を策定し展開しています。各市場や競合環境を適切に把握するとともに、策定した戦略に基づき顧客・従業員・取引先等を含めたコミュニケーションを強化することで、共通したブランド認識の構築と浸透を図っています。また、グローバルで自社及び競合他社ブランドの販売価格を継続的にモニタリング・分析し、当社グループ全体において統一的な施策を立案・実行できる仕組みを整備し、競争の激しい市場においてもブランド価値を反映した価格帯を維持できるよう対応しています。 さらに、ウォーターテクノロジー事業におけるGROHEブランドの位置付けについて、事業内の他ブランドとの差別化を図るため、ブランドデザインの使用に関するルールを設け、ブランド価値の維持・管理に努めています。このような総合的なブランド戦略により、GROHEブランドの認知度を高め、市場でのトップポジションを維持することを目指しています。 |
||||
重要課題 との関連性 |
多様性の尊重、顧客満足、責任あるマーケティングと広告 |
[オペレーショナルリスク]
(11) 災害・事故・感染症等に関するリスク
当社グループは、日本国内及び海外諸国の複数の拠点において生産・販売活動を行っていることから、各地で発生する地震や台風等の自然災害、未曽有の大事故や感染症によって、当社グループの調達、生産、物流、販売活動や情報管理関連施設等の拠点に甚大な被害を受ける可能性があります。特に、災害・事故等の発生により、当社グループの国内及び海外工場の生産活動が停止することは、市場への製品供給に深刻な影響を及ぼし、売上収益に悪影響を与える可能性があります。
また、感染症の発生や拡大は当社グループ従業員の健康状態悪化による労働力の低下の可能性や、取引先の生産・販売活動の一部停止等、当社グループの事業活動に支障が出る可能性もあります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(2)(4)(15))
発生可能性 |
中 |
影響度 |
高 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
大規模自然災害や事業活動に伴う事故に備え、早期に復旧できるよう事業継続計画(BCP)を策定し、災害・事故発生時の対応を適時に行うことができるよう事前の対策を講じております。実際に大規模災害が発生した場合には危機管理対策本部を立ち上げ、事業継続と被害の最小化に努めています。 海外子会社の従業員や出張者が自然災害や政変によるテロ・暴動に巻き込まれる等、海外での緊急事態発生についても対応ルールの整備をするとともに、外部専門家と提携し緊急事態発生時の現地従業員へのサポート体制も整えています。 感染症対策に関しては、在宅勤務の環境整備と運用を従来から推進しており、また政府指針等を踏まえた対応ハンドブックを策定し、適時更新し運用しています。感染発生時の対応準備や感染発生時の報告フローの見直しなどを行い、従業員が安心して働ける環境を構築するとともに、事業活動を従来通り継続することに努めています。 当社グループは、従業員及び従業員家族、取引先を含むステークホルダーの方々の生命及び安全の確保を最優先としています。なお、緊急事態発生時の行動や対策については従業員への周知徹底と継続的見直しを実施しています。 |
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重要課題 との関連性 |
気候変動対策を通じた緩和と適応、従業員の安全と健康、サプライチェーンマネジメント、 リスクマネジメント |
[オペレーショナルリスク]
(12) 情報・サイバーセキュリティに関するリスク
当社グループが行う生産・販売活動及び各種事業活動は、コンピュータシステム及びコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを利用しています。このため、通信ネットワークに生じる障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウェア、若しくは、ソフトウェアの不具合・欠陥、データセンターの機能停止等により事業活動に支障が出る可能性があります。また、情報システムが適切に導入・更新されていないことによりシステム上の不具合、業務の非効率、生産性低下を招き、事業活動に支障が出る可能性があります。
さらに、当社グループでは、業務を遂行する中で顧客情報をはじめとする様々な個人情報を取り扱う機会があり、厳格な情報管理が求められています。このため、不測の事態により個人情報の遺漏が発生した場合には、社会的信頼の失墜を招くとともに多額の費用負担が生じる可能性があります。その結果、売上収益の減少あるいは販管費等の増加により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(2))
発生可能性 |
高 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
情報セキュリティ委員会を設置し、情報セキュリティに関する社内規程の整備、不正アクセス等を未然に防止するための対策、従業員に対する教育等を実施し、さらにこれらの取り組みを定期的に評価・見直すことにより、情報セキュリティマネジメントの継続的な改善を実施しています。特に、効率的で安定した事業活動の遂行を担保するため、老朽化した基幹システムの刷新を進めています。また、サイバー攻撃全体への対応としてCSIRT (シーサート: Computer Security Incident Response Team)を設置し、外部からの不正アクセスを常時監視するとともに、有事の際に適切な対応を実現する体制を構築しました。また、情報セキュリティリスクが顕在化した場合には、緊急時の報告基準とフローに沿ってエスカレーションを行い、事業部門とコーポレート部門が連携し、速やかに初動対応と事業復旧対応が取れる危機管理体制の整備を推進しています。 IoT (Internet of Things)やOT (Operational Technology)も含めたサイバーセキュリティ強化の構築も推進しています。また、個人情報保護に関する法令を遵守すべく、必要な社内規程の整備やEU一般データ保護規則 (GDPR)で要求されるデータ保護責任者を含む個人情報責任者の設置、適切な研修の実施、プロセス整備等を行っています。 さらに、ランサムウェア対策として、定期的なバックアップ、従業員へのフィッシング詐欺対策研修、エンドポイントのセキュリティ強化などを実施し、サイバー攻撃に対する防御体制を強化しています。 |
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重要課題 との関連性 |
リスクマネジメント、情報セキュリティ |
[オペレーショナルリスク]
(13) 知的財産に関するリスク
当社グループは、魅力ある差別化された製品やサービスの開発に努めています。このような製品やサービスに対し、第三者が保有する知的財産権との関係で紛争や交渉が生じる可能性があります。この場合、当該第三者の知的財産権を侵害しない製品やサービスの開発、損害賠償金の支払い、当該第三者の知的財産権のライセンスの取得とロイヤルティの支払い、差止命令による当社グループの製品やサービスの一部について製造販売や提供の中止を要求される可能性があります。
一方では、当社グループの製品やサービスの差別化要素となる技術やデザイン等が第三者に模倣されることにより、当社グループの製品又はサービスの市場競争力の低下を引き起こす可能性があります。また、当社の商標権等の知的財産権を侵害する模倣品の流通により、当該模倣品を使用した顧客に事故や健康被害等が発生した場合、当社グループへの評判、ブランド価値、当社グループの製品の信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらは、当社グループの経営成績及び財政状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
知的財産部門と事業部門が連携し、第三者の知的財産権の調査分析を行う等の知的財産権についてのリスクアセスメントを製品開発のプロセスに組みこむことで、開発段階から訴訟その他の重大な事業リスクの発生を未然に防止する対応をしています。すなわち、第三者の知的財産権についての事前調査や必要なライセンスの取得などの対応を図っています。 また、長期にわたって事業の競争優位性と高収益性を実現するために、競争力の源泉である当社の差別化要素の第三者による模倣を防ぐ対応を行っています。そのため技術開発、製品企画の段階から保護すべき知的財産を特定し、特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を取得し、又は当該知的財産を秘匿する等の対応を図るとともに、日本及び各国における知的財産ポートフォリオマネジメントを推進しています。なお、模倣品に対しては、お客様に対する注意喚起や税関への差止申立て、インターネット販売における監視と排除、当局による摘発への協力等を行い、その流通の防止に努めています。 さらに、知的財産情報をはじめとする各種のデータ分析に基づく知財インテリジェンスを実行し、上記のリスクアセスメントを効率的に行うとともに、戦略的に知的財産ポートフォリオを構築することに活用しています。 |
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重要課題 との関連性 |
リスクマネジメント |
[オペレーショナルリスク]
(14) 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク
当社グループは、税効果会計を適用し、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対してそれらを回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得は、マネジメントが確認した将来の業績見積りを基礎としています。当該見積りにおいて、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少が予想される中、販売価格の適正化及び政府による住宅省エネ化支援策の拡充も踏まえたリフォーム戦略の強化等による売上収益の増加や原価低減による売上総利益率の改善等の収益性向上を見込んでおり、これらの施策の達成には不確実性が伴います。また、税務上の繰越欠損金の繰越年数や使用上限割合が変更される等、当社グループにとって不利な税制改正が行われる可能性が否定できません。これらの結果、繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断された場合、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
増加 |
対応策 |
見積りの達成にあたっては、当社グループ全体の業績管理を担う企画管理部門によるモニタリングを強化しており、見積りの達成を阻む要因があれば、早期に対応できる体制を構築しています。 さらに、当社CFO直轄組織がガバナンス強化の取り組みの一環として業績管理プロセスを強化することにより、業績悪化の兆候を早期に捉え、税制改正にかかる情報については、当社税務部門において早期に捉えるようにしています。これらの部門が、業績悪化の兆候や税制改正にかかる情報を把握した際には、当社経理財務部門及び税務部門と協議を行い、繰延税金資産の回収可能性に関して見直しの必要性を含めて適時に対策が打てるような体制を構築しています。 当期においては、当社及び一部の子会社の繰延税金資産の一部については使用できるだけの十分な課税所得が稼得されない可能性が生じたため、当該繰延税金資産の帳簿価額の一部を減額しました。今後、収益性の回復により回収可能性が高いと見込まれた際には、再度帳簿価額の増額を行います。 |
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重要課題 との関連性 |
税の透明性 |
[オペレーショナルリスク]
(15) 規制強化に関するリスク
当社グループは、日本国内において事業活動を行う上で、会社法や独占禁止法、個人情報保護法、税法、会計基準等、経営に係る一般的な法令諸規制の適用を受けています。また、海外での事業活動についても、それぞれの国や地域における競争法、個人情報保護法、国際取引規制、その他の法令諸規制の適用を受けています。近年、当社グループの重要な物的資源(金属・木材・樹脂・セラミック等)又はその原材料を含む自然資源の利用や、非財務情報開示を含むサステナビリティに関わる規制等、新たな法令諸規制の導入について活発に議論されています。また、個人情報保護に関する規制については、グローバルに規制強化の一途を辿っており、その執行も活発化しています。
これらの法令諸規制は、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇、国際情勢や多国間の国際関係の変化、その他の社会情勢の変化などに応じて、将来において急速に新設・変更・廃止され、厳正な法執行が行われる可能性があります。その結果、製品その他サービスの提供の制限や、売上原価の増加、設計・開発段階におけるコスト増、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止等、当社グループの事業運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新たな法令諸規制に対応できる人材の確保を含む体制整備や、システム導入に遅れが生じた場合、従来と比較して法令違反のリスクが高まる可能性があります。
(参照リスク(1)(2)(3)(4)(5)(11))
発生可能性 |
低 |
影響度 |
低 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
対応策 |
当社グループは、複雑化し急速に変化し続けるグローバルな規制環境の中で行う事業活動に機動的に対応するため、2022年1月に法務・コンプライアンス部門のグローバルでの組織再編を実施しています。また、2022年4月には個人情報保護をグローバルで統括する専任の組織を立ち上げました。これらの新体制のもと、法務部門を中心とした各地域の法令遵守と法的リスクを抑制するための体制が整備されています。 さらに、法令諸規制に関する情報発信や定期的な教育等により、従業員の理解度を高めるとともに、事業部門とコーポレート部門が規制対応に関して適切に連携できるよう取り組んでいます。規制の新設・変更・廃止が実施された場合には、規程やガイドライン等の作成・更新に加えて、取引先に対するコンプライアンスデューデリジェンスにその内容を反映する等の実務的な方策によって、規制違反の回避に努めています。 |
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重要課題 との関連性 |
すべて |
配当政策
3【配当政策】
当社では、株主還元については、連結配当性向30%以上を配当方針とするとともに、財務状況や利益水準を総合的に勘案した上で、安定的に利益の還元を行うことを基本方針としております。経営の方向性と財務体質強化の進捗に照らし、資本効率の向上と株主還元の強化の観点で、機動的な自己株式の取得も適宜検討します。また、内部留保の使途については、事業活動拡大などの戦略的投資に活用します。
毎事業年度における配当の回数の基本方針については、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うこととしています。また、「会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行なうことができる。」旨を定款に定めており、これらの剰余金の配当の決定機関は、中間配当及び期末配当ともに取締役会です。
当事業年度については期末配当金を1株につき45円(中間配当金を含め年間90円配当)とします。当事業年度に係る剰余金の配当は、次のとおりです。なお、当社は連結配当規制適用会社です。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
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2023年10月31日 |
取締役会決議 |
12,922 |
45 |
2024年5月20日 |
取締役会決議 |
12,921 |
45 |
(注)表中の金額は、百万円未満を切り捨てて表示しています。
(注)配当方針の変更について
当社は、2024年4月30日開催の取締役会において、当社の実態に即した内容を反映するとともに、各ステークホルダーにとって理解しやすい内容に見直し、下記のとおり配当方針を変更することを決定しました。今後も、財務体質を強化し、成長投資と株主還元のバランスをより一層意識した経営資源の配分を実践することにより、更なる持続的成長と企業価値向上を実現することを目指します。なお、変更後の配当方針は、2025年3月期より適用します。
<変更後の配当方針>
当社は、期間収益並びにキャッシュフロー、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、利益配分を決定することを方針としております。当社は、その時点でのキャッシュフローの状況を勘案し、財務体質の強化に加え、競争力強化を目的とした設備投資(新商品開発、合理化、IT投資等を含む)等の成長投資を優先することを前提に内部留保の使途を決定いたします。株主還元については、長期にわたり安定した配当を実施することを基本とし、中期的なEBITDAの水準に基づき、年間配当金額を決定するとともに、自己株式の取得は機動的に行うことを方針としております。
(注)安定的・継続的に創出可能と判断したEBITDA:事業利益+減価償却費(IFRSにおけるリース会計適用による現金の流出を伴う減価償却費の計上額を補正)