2024年12月期有価証券報告書より
  • 社員数
    2,485名(単体) 8,227名(連結)
  • 平均年齢
    42.4歳(単体)
  • 平均勤続年数
    17.1年(単体)
  • 平均年収
    6,855,000円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2024年12月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

コンポーネントソリューション事業

1,830

トランスポートソリューション事業

2,192

アクセシビリティソリューション事業

3,404

その他

416

全社(共通)

385

合計

8,227

 

(注) 1 従業員数は、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員数です。

2 臨時従業員数は、従業員数の100分の10未満であるため記載を省略しています。

 

(2) 提出会社の状況

2024年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

2,485

42.4

17.1

6,855

( 334 )

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

コンポーネントソリューション事業

967

( 268 )

トランスポートソリューション事業

937

(  51 )

アクセシビリティソリューション事業

245

(  13 )

その他

12

(  1 )

全社(共通)

324

(   1 )

合計

2,485

( 334 )

 

(注) 1 従業員数は、当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員数です。

2 平均勤続年数は、吸収合併前完全子会社での勤続期間を通算しています。

3 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

4 従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員です。

 

(3) 労働組合の状況

提出会社の労働組合は、上部団体としてJAMに属しており、2024年12月31日現在の組合員数は1,972名です。労使関係については円滑な関係にあり、特記すべき事項はありません。

また、一部連結子会社に労働組合が結成されており、労使関係については円滑な関係にあり、特記すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める

女性労働者

の割合(%)(注1)

男性労働者の

育児休業

取得率(%)(注2)

労働者の男女の

賃金の差異(%)(注1,3)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

3.0

76.6

81.8

83.2

78.9

 

(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。なお、管理職に占める女性労働者の割合は2024年12月31日現在の数値となっています。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。男性育児休業取得率は、前年に生まれた子供に対する育休取得等の影響で100%を超える場合があります。

3 賃金制度における性別による処遇の差はありません。海外勤務者は日本勤務した場合の、非正規労働者のうち非常勤者はフルタイム勤務した場合の理論賃金で計算しています。育児・介護による短時間勤務の時間補正は行っていません。

 

 

<各数値に関する補足説明

・提出会社の人的資本KPIについては「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本経営の推進」に記載しています。雇用関連データやダイバーシティへの取り組みの詳細データは、当社のサステナビリティサイトのESGデータ集の「社会データ」のカテゴリーをご覧ください。

・長期ビジョンの実現に向けて、人財ポートフォリオを充足させ、企業経営に多様な視点を取り入れることが重要な取り組みの一つと認識しています。提出会社では、2027年3月31日までに、管理職に占める女性労働者の割合を現在の3.0%から4.1%にまで引き上げる目標を設定しています。特に、女性管理職の内部登用・育成を進めるべく、管理職候補の女性中堅社員及びその上司に対する「女性管理職候補者研修」を開催し、女性登用に向けたパイプラインの強化を進めるとともに、性別によるアンコンシャス・バイアスの解消に向けた「ダイバーシティ研修」を実施しています。

・提出会社の男女賃金差異を要因別に分析した結果、役職位と連動する基本報酬等に大きな差異が生じており、実在者に占める上位役職位割合の違いが賃金差異の主な原因となっていることが判明しました。各職場において、性別によらず次のステージを見据えた適正なテーマ付与が行われるよう、上述のパイプラインの強化に加え、上司に対する「評価者研修」を開催し、役職位に基づく適正なテーマ付与・目標設定の徹底を進めています。

・育児へ積極的に参加する男性労働者の増加は、ダイバーシティの推進ひいては長期ビジョンの目指すイノベーションの創出に繋がるとの認識のもと、提出会社では育児休業と有給特別休暇の合計取得日数の目標を「1カ月」と設定し、育休取得支援等を目的とした「子育て支援相談窓口」の設置や、全社員への育休Eラーニングの実施等を通じて男性労働者の積極的な育児休業取得を推奨する環境づくりに取り組んでいます。

 

 ② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める

女性労働者

の割合(%)(注1)

男性労働者の

育児休業

取得率(%)(注2)

労働者の男女の

賃金の差異(%)(注1,3)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

㈱ナブテック

80.0

88.9

88.9

76.7

ナブテスコサービス㈱

7.4

200.0

81.6

89.6

60.0

ナブテスコオートモーティブ㈱

4.3

100.0

61.9

69.8

64.3

PACRAFT㈱

9.8

66.7

78.0

79.5

34.9

㈱テイ・エス・メカテック

75.0

76.1

77.6

88.0

ナブコドア㈱

1.0

62.5

68.1

69.5

83.1

ナブコシステム㈱

1.9

58.3

66.9

68.0

74.0

 

(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。なお、管理職に占める女性労働者の割合は2024年12月31日現在の数値となっています。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。男性育児休業取得率は、前年に生まれた子供に対する育休取得等の影響で100%を超える場合があります。

3 賃金制度における性別による処遇の差はありません。海外勤務者は日本勤務した場合の、非正規労働者のうち非常勤者はフルタイム勤務した場合の理論賃金で計算しています。育児・介護による短時間勤務の時間補正は行っていません。

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、ナブテスコの価値創造ストーリーにおける「経営マテリアリティ」を経営の最重要課題と位置づけ、長期的に経済価値、環境価値・社会価値を向上させることで、社会と当社グループ双方の持続的成長を目指す経営を追求しています。

長期的な価値創造の推進には、事業環境や経営環境の変化に柔軟に対応し、経営マテリアリティを“動的”に変化させることが重要と捉えており、経営マテリアリティを定期的に見直し、柔軟な対応を行っていくこととしています。経営マテリアリティの各項目にかかるアクションを着実に積み重ねていくことで、経営基盤を一層強化していきます。

なお、本有価証券報告書における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手している情報に基づき当社が判断したものであり、実際の業績等は、「3 事業等のリスク」に挙げた事項等により、異なる結果となる可能性があります。

 

(1) サステナビリティ全般に対する対応

① ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ・ガバナンスを強化するため、2023年に従来のCSR委員会を発展的に解消し、CEO直轄の「経営マテリアリティ委員会」を設置しました。同委員会は、他のCEO直轄委員会と連携し、経営マテリアリティの各項目に関する目標やKPIの設定、及びその進捗を管理しています。活動内容は、経営会議(マネジメント・コミッティ)での審議を経て、取締役会に報告することで、グループ全体のサステナビリティ・ガバナンスの実効性向上を図っています。

 

<サステナビリティ・ガバナンスの推進体制(2025年1月1日現在)>


 

② 戦略

■経営マテリアリティの構造

経営マテリアリティは3つの柱から成り立ち、財務・非財務両面での取り組みを進め、経済価値と環境価値・社会価値の両立を長期的な視点で図ることで、「利益ある成長」を継続しながらステークホルダーへの価値を持続的に創造してまいります。

「財務パフォーマンス向上への取り組み」では、短期的な収益目標の遂行を積み重ねながら、経営資源の効率的な配分と資産効率の向上を追求し、ROIC経営の浸透を図ります。

「経営基盤強化への取り組み」では、企業活動を通じた社会貢献に向けて強化すべき項目を抽出し、ESG項目に関連する各活動と、当社の利益や成長との結合性を意識しながら取り組んでまいります。

さらに、「長期目標実現への固有の取り組み」により、社会貢献を含めた事業活動を強化し長期的な成長率を高めていきます。

 

■経営マテリアリティの特定プロセスと定期的な見直し

当社グループでは、事業戦略を通じて解決する社会課題や、当社グループに関連性の高いESGテーマなどから社会問題を抽出し、「自社への影響」と「ステークホルダーへの影響」の視点で重要度を分析した上で、経営マテリアリティを特定しています。その妥当性について、外部有識者との意見交換や、経営マテリアリティ委員会及び、経営会議(マネジメント・コミッティ)における審議を経た後、取締役会にて決定しています。

また、経営マテリアリティについては、事業環境、社会要請の変化に迅速かつ適切に対応するため、毎年1回を目途に見直し、変更の有無に関わらず、年1回、取締役会にて決定しています。

 

(特定プロセス)

STEP1:課題の認識

・当社グループの事業戦略を通じて解決する社会課題、当社に関連性の高いESGテーマなどを踏まえ、当社グループを取り巻く社会環境や事業環境の社会課題を抽出

 

STEP2:重要性の分析

・ダブルマテリアリティの考え方に基づき、「自社への影響」と「ステークホルダーへの影響」の視点で重要度を分析し、これらの結果をキーワードとして整理

 


 

STEP3:経営マテリアリティの特定

・外部有識者と意見交換を実施

・経営マテリアリティ委員会及び、経営会議で議論の上、取締役会の承認を得て経営マテリアリティを特定

 

STEP4:目標の設定とモニタリング

・経営マテリアリティの優先度に応じて目標・アクションプランを設定

・目標・アクションプランに対する取り組み状況を継続的にモニタリング

 

STEP5:定期的な見直し

・事業環境、社会環境の変化、ステークホルダーの期待、ならびに当社グループの事業戦略の変化に応じて年1回、見直しを実施

 

なお、2024年は、課題の認識の妥当性及び重要性について、改めて検証した上で、「新中期経営計画で求める収益性の改善とイノベーション領域の明確化」「社会的な要請であるダブルマテリアリティ」の側面を織り込んだ項目に見直しました。

 

・財務パフォーマンス向上への取り組み

新中期経営計画において「ポートフォリオバランスの最適化」と「ROIC向上」の両立を目指すことから、項目は「資産効率経営(ROIC)の推進」に統合しました。

 

・経営基盤強化への取り組み

ESGの観点で再整理し、E「気候変動の対応」、S「人的資本経営の推進」「安全・安心・快適の追求」、G「コーポレートガバナンスの強化」「レジリエントな企業基盤の構築」に見直しました。

 

・長期目標実現への固有の取り組み

新中期経営計画における方向性や戦略をより明確に示すため、「スマートモーションコントロールを通じた社会課題の解決」、「DX活用によるものづくり革新」、「グローバルマネジメントの強化」に見直しました。

 

また、経営マテリアリティの各項目に対して、サブマテリアリティとKPIの設定し、各活動の進捗管理を強化することで、より実効性を高めてまいります。

 


 

 

③ リスク管理

■リスクマネジメントの考え方

当社グループは企業価値の維持及び向上を目的として、事業活動に伴う様々なリスクを適切に把握し、万一リスクが顕在化した場合にも適切な危機管理で損失を最小限に抑えることにより、リスクを管理しています。

 

1) リスク管理は、経営の状態や事業環境の動向を注視して実施します。

2) 危機管理は、発生したインシデントの影響及び損失を最小限に留めるため、迅速な情報共有に努めつつ、関係法令及びナブテスコグループの社会的責任に基づいて実施します。

3) インシデントの発生後は、具体的な危機管理を検証し、再発防止に努めます。

 

■リスクマネジメント基本方針

当社グループは、業務執行に関し、損益、資産効率、品質、災害等の状況を適正かつタイムリーに取締役会に報告する体制を整備し、リスクの早期発見に努め、損失の極小化を図っています。

持続的な企業価値の向上に向けて、重要事項の審議等を行うCEOの直轄機関としてリスクマネジメント委員会を設置しており、その委員はCEOより任命されます。

さらに、リスクマネジメント委員会の委員長(常務執行役員)は、必要に応じて、経営マテリアリティ委員会、品質・PL委員会、ESH委員会の委員と協議や調整等を行った後、リスクマネジメントの取り組み状況をCEOが出席するマネジメント・コミッティや取締役会等の経営会議に定期的(年2回程度)に報告しています。

 

■リスクマネジメント手法

・リスク管理

リスクマネジメント委員会は、全社横断的な組織として、毎年1回、コーポレート部門、社内カンパニー及びグループ会社が行ったリスクアセスメントの結果に基づいて、全社的重大リスクを特定し、それらの対策を審議することに加えて、対応策の実施状況も適切にフォローしています。事業活動に影響を与える各リスク項目について、その発生頻度及び影響度で評価し、さらに発生原因の分析も実施します。そして、リスク対応の優先順位付けとリスクに対する許容度を確認した上、リスクの対応方法を立案し、対策案の審議を経て実行します。

また、リスクマネジメント委員会に加えて、内部監査部門をはじめとする本社専門スタッフが業務上のリスク管理状況を監査し、専門的知見に基づき業務改善に向けた必要かつ適切な助言を提供し、取締役会に報告することでリスク対応状況を適切にモニタリングします。

なお、当社のリスク評価は、①リスク分析、②リスク評価、③リスク判定の順で実施します。リスク分析において、個々のリスクに対し、発生度5段階と影響度4段階により重要度を分析します。リスク分析から得られた結果に基づいて、スコアを特定し、リスクレベル及び対策レベルを4段階で判定します。

 


 

■重大リスクと対応策

国内外のコーポレート部門、社内カンパニー及びグループ会社を対象として、毎年リスクアセスメントを実施し重大リスクを特定しています。その後特定した重大リスクに対して、各リスク主管部門が専門的知見に基づき対策を策定し、実施しています。重大リスクの一部と対応策は以下のとおりです。

※その他重大リスクは、「3 事業等のリスク」に記載しています。

 

重大リスク例

リスク
優先度

発生
頻度

影響

当社グループへの影響

リスク
許容度

対応策

海外事業
展開

地政学
リスク

C

C

・調達、事業活動サービスの遅延や中断

中~高

・現地での情報収集

・サプライヤーの分散化

・BCPの実効性強化

環境

気候変動
リスク

C

B

・炭素税等の規制によるコスト増大

・ゲリラ豪雨などによる物理的被害

・顧客からのGHG排出削減要請の増大

低~中

・SBT認証の長期目標の設定

・再生可能エネルギーの活用

・各環境教育の実施

・サプライヤーの気候変動リスクに対する意識醸成活動

業務災害

労働安全
衛生リスク

★★

A

C

・事業活動、サービスの中断

・各事業所において安全衛生管理体制を整備し安全衛生管理者及び安全管理担当者を配属

・年2回の定期健康診断

・産業医による職場巡回

製品品質

品質
リスク

★★

C

B

・損失・損害賠償等によるコスト増大

・ブランド価値低下

・各種管理規程の整備

・生産現場における品質マネジメントシステム認証取得

・各種教育研修の実施

 

※リスク優先度について、以下の基準に基づき分類をしています。

★★★:速やかに対策が必要とされる。

★★  :必要に応じて対策が必要とされる。

★    :恒常的に対策が必要とされる。

※発生頻度:A(極高)、B(高)、C(中)、D(低)、E(ほぼ起こらない)

※影響度:A(極大)、B(大)、C(中)、D(小)

※リスクの許容度について、特定したリスクに対して、許容する度合いを示しています。

低:一切のリスクを受け入れず、許容しないもの

中:必要に応じて、利益やメリットを考慮しながらリスクを受け入れる場合があるもの

高:然るべき対応策を講じながら、積極的にリスクを負って、機会の創出をしていくもの

 

 

■新興リスク

外部環境の変化等により新たに出現したり変化したりする「新興リスク」についても、定期的なリスクの見直しにより事業への影響度を識別し管理しています。

 

新興
リスク

人材の確保に関するリスク

(人口減少による製造業の人材不足のリスク)

情報セキュリティに関するリスク

(サイバー攻撃リスク)

リスクの内容

当社グループは、日本国内の人口減少と高齢化による機械製造業への人材不足を、新興リスクとして認識しています。

当社グループは、製造・開発・販売、その他専門分野に携わる優秀な人材を幅広く採用・育成し、ニッチな機械部品やコンポーネントにおいて高いシェアを保っています。ナブテスコの機械部品の製造には、旋盤や加工、組み立て等において高い専門性が求められ、現場での業務が定着し、熟練するまで時間がかかります。これらが主な要因で、十分な人材の確保、とりわけ若年労働力の確保と育成が難しくなるリスクが増加しています。

当社グループは、事業活動を通して、お客様や取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しています。しかしながら、企業や公的機関へのサイバー攻撃は、世界的に高度化しており、当社においても防御体制の強化や情報漏洩保護は、より高い水準のリスクへの対応を求められています。

事業への潜在的な影響

日本における人材不足は、国内のマザー工場における人員不足、当社の特殊技術の継承者や製品検査等の専門職の不足に直結し、中長期的視点では生産性や技術革新のペースを低下させ、競争力の低下につながり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

世界的に複雑な広がりを見せるサイバー攻撃により、上記の情報の流出や重要データの破壊、改ざん、システム等の停止が生じるリスクがあります。当社グループは、鉄道車両用機器事業や航空機器事業、プラットホームドアなど公共インフラや公的機関に関わる製品を生産しているため、公共的安全を棄損するほどの影響があります。今後、サイバー攻撃がさらに活発化した場合、このリスクが中長期的に顕在化する可能性があると認識しています。

リスク低減措置

当社グループは、人材不足に限らず、ダイバーシティの観点からも外国籍の社員や高齢者(定年再雇用)も積極的に採用しています。また、主として以下の2つの施策を採ることによってリスクの事業影響を最小化しています。

一つは、「技術系研修」プログラムの充実です。技術系新入社員は全員が「技術系基礎研修」を3年間受講します。その後、部門に分かれてより専門性の高い技術を学ぶとともに、全社横断的技術も学ぶことにより、イノベーションにつなげる「技術系専門研修」を実施しています。

もう一つは、プロセス・イノベーションの導入の推進です。AIを活用した工場の製造ラインの自動化推進により省人化へ対応しています。

また熟練工の作業内容、確認項目、判断基準をAIに記憶させ、機械学習を重ねることで、製品検査や目視検査の自動化を図り、作業者を選ばず品質安定の実現を目指しています。

ナブテスコはサイバー攻撃リスクからの影響を最小化するため、以下の対策を講じています。

 

1) 情報セキュリティ・インシデント対応

当社は情報セキュリティ・インシデント発生時の対応基準を定め、インシデント対応専用チーム(CSIRT)を設置しています。このCSIRTはインシデント発生に伴う被害の拡大防止や、迅速な業務回復を目的に活動しています。また当社は年に2回以上、インシデント対応検証を実施しています。

 

2) 各種管理基本規程の整備

ナブテスコグループは、情報管理基本規程、情報セキュリティ管理基準、情報セキュリティ・インシデント対応基準など各種規定を整備し、管理しています。

 

3) 情報セキュリティ教育

情報セキュリティ意識を高めるために、毎年「情報セキュリティ研修」を、全社員に実施しています。加えて、新入社員や中途採用社員に対しても、入社時に、情報セキュリティ研修の受講を義務付けています。研修コンテンツは、情報セキュリティにかかる最新トレンドを適時に反映させており、毎年内容を更新しています。

 

 

④ 指標及び目標

2024年度経営マテリアリティにおける「経営基盤強化」の各課題の目標と指標、主な活動実績・計画は以下のとおりです。

 

<サステナビリティに関する目標と指標、主な活動実績・計画>

 

■財務インパクトの大きいESG項目

ESG

分野

経営マテリアリティ項目

目指す方向/主要
アクション

2024年度活動目標(抜粋)

2024年度活動実績(抜粋)

環境(E)

気候変動への対応

・CO₂削減 中長期目標の達成

・中長期目標に沿ったCO₂削減(2015年度比25%削減)

・環境配慮型最新工場の立上げ(浜松・垂井工場)

・中長期目標に沿ったCO₂削減(2015年度比28.4%削減)

・環境配慮型最新工(浜松・垂井工場)の稼働開始

社会(S)

事業を通じた社会課題の解決

・環境・安全に配慮した設計開発の推進

・社会課題解決に貢献する新事業・新製品の創出

・社内アイデア事業化制度(第2期)の推進、カンパニーイノベーション支援制度の推進

・ベンチャーユニット事業化の推進

・社会課題解決に貢献する新事業・新製品の創出

・社内アイデア事業化制度(第2期)の実施、第1期通過案件の事業化推進

・カンパニーイノベーション支援制度の推進継続

・船舶の状態監視「Cassandra」の「イノベーションエンドースメント」認証取得

強靭なサプライチェーンの構築

・サプライヤーの供給リスクへの対応

・サプライヤーのESG課題解決に貢献

・サプライヤーのBCP支援

・サステナビリティ監査の拡大

・サステナビリティ啓蒙活動の推進

・レジリエンス認証取得支援

・サプライヤーのESGリスク抽出、改善策の提案、是正装置の推進に向け、累計117社へのサステナビリティ監査を拡充

・サプライヤーへのレジリエンス認証取得支援(累計60社)を実施、2024年度末までにレジリエンス認証を累計41社が取得

ガバナンス(G)

経営会議体の実効性向上

・多様性を基盤とする経営体制構築

・取締役会での中長期戦略に関わる議論の強化

・取締役会の運営効率の向上

・重要課題への審議を拡充(グローバル戦略、技術戦略等)

・社外取締役の当社理解の深耕を目的とした情報収集の機会の拡充

・取締役会における重要課題の審議を開催(グローバル戦略、中期経営計画等)

 

(注) 上記CO₂排出削減量のうち2024年度の数値については提出日時点の集計値に基づいたものです。

 

■サステナビリティパワーの源泉となるESG項目

ESG

分野

経営マテリアリティ項目

目指す方向/主要
アクション

2024年度活動目標(抜粋)

2024年度活動実績(抜粋)

環境(E)

環境マネジメントの推進

・原材料の効率的な使用・廃棄物の削減

・生物多様性の保全

・廃棄物・水資源・化学物質管理:売上高原単位で前年以下

・生物多様性に関する影響調査をバリューチェーンに拡大

・廃棄物・水資源:売上高原単位で前年以下達成

・化学物質:売上高原単位で前年以下未達成

・生物多様性に関する影響調査をバリューチェーンに拡大実施

社会(S)

安全・安心・快適の追求

・品質・安全管理の高度化

・製品安全に関する目標の遂行

・機能安全の対応推進

 

・製品安全に関する目標

・製品安全性審査の実施計画達成率:実績100%

・製品安全に関する社員教育の計画達成率:実績100%

・機能安全規格取得に向けた支援実施

・全社統一安全基準の設定・展開

・安全モデル職場改善活動実施(国内8拠点、海外5拠点)

・全社統一安全基準の一次展開実施

・安全モデル職場改善活動及び報告会の実施

 

人的資本経営の推進

・事業起点の人財マネジメントへの移行

・ダイバーシティ&インクルージョン推進/人権マネジメントの高度化

・社員エンゲージメントの向上

・一般職人事制度の改定、管理職人事制度の運用・定着

・施策の実行、KPI・指標のモニタリング、人的資本開示の強化

・ナブテスコ ウェイ浸透活動の実行

・健康経営の重点テーマ設定・実行

・1on1の全社展開、タレントマネジメントシステム運用

・一般職人事制度の改定、管理職人事制度の運用・定着

・人財ポートフォリオ充足施策の実行(DX/女性/グローバル/シニア)

・人的資本KPIの重点課題項目を踏まえた諸施策の企画・実行

・ナブテスコ ウェイ浸透活動の実行

・1on1の全社展開、エンゲージメントワークショップ開催

・健康経営優良法人の認定取得

地域社会とのエンゲージメント

・企業市民活動の推進

・環境・教育・福祉領域での企業市民活動の実施

・新規協賛プログラム1社開始(日本障がい者サッカー連盟への協賛活動等)

ガバナンス(G)

経営の透明性確保

・コーポレートガバナンスの強化

・リスク管理とコンプライアンスの徹底

・ステークホルダーとの積極的な対話

・意思決定スピードアップに向けた責任権限規程体系の見直し

・欧州独禁法遵守教育実施、欧州公益通報者保護指令対応

・非財務情報開示の充実

・更なる権限委譲について検討中

・欧州独禁法遵守教育実施、欧州公益通報者保護指令対応の実施

・有価証券報告書の非財務情報開示の充実、統合報告書の発行

 

 

当社グループでは、経営マテリアリティを2025年度から見直しております。最新の経営マテリアリティに対する活動目標は以下のとおりです。

 

ESG

分野

経営マテリアリティ項目

目指す方向
/サブマテリアリティ

2025年度活動目標(抜粋)

環境(E)

環境マネジメントの推進

・脱炭素への取り組み強化

・サプライチェーンを巻き込んだ脱炭素への取り組み強化

・中長期目標に沿ったCO₂削減(2015年度比42%削減)

・Scope3 算定データ精度の向上

社会(S)

安全・安心・快適の追求

・労働安全の確保

・製品・サービスの安全性確保

・労働災害ゼロ/重大事故ゼロへの取り組み

・製品安全性審査及び社員教育の実行

人的資本経営の推進

・イノベーションを生み出す組織風土

・事業戦略と人財戦略の連動

・インナーコミュニケーション施策の実行

・社人財流動化施策の企画・実行

・人事制度定着に向けた活動の推進

・人財情報可視化、活用施策の企画・実行

ガバナンス(G)

コーポレート・ガバナンスの強化

・経営の透明性確保

・コンプライアンスの推進

・各役員の自己評価等に基づく分析を踏まえた取締役会の実効性に関する評価の継続

・コンプライアンス強化に向けた、研修及び関係拠点との連携強化

レジリエントな企業基盤の構築

・事業継続性の確保

・強靭なサプライチェーンの構築

・サイバーセキュリティ強化に向けた情報セキュリティ対応の推進

・コア価値(知的資本)を獲得強化する知財経営推進に向けたグループ開発会議と全社知財戦略審議の融合

・サプライヤーのレジリエンス認証取得支援

 

 

 

(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った情報開示

当社グループは、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同表明し、取り組みの進捗に合わせて、TCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示の充実を図っています。

 

① ガバナンス

当社の取締役会は、重要事項の報告等を通じて情報を共有化することにより、当社の戦略・基本方針及び重要な業務執行を決定し、監督を行っています。気候変動に関しては、取締役であるものづくり革新担当役員が監督責任を持ちます。CO2削減目標に対する進捗状況や主要な環境設備投資の状況について、環境安全の担当役員が報告しています。

取締役会の指揮・監督のもと、代表取締役社長 最高経営責任者(CEO:以下CEO)は当社グループ環境理念・環境行動指針・長期目標を制定しています。執行役員会(CEO及び執行役員で構成)において、環境安全担当役員が社内カンパニーと主要なグループ会社のCO2排出状況を報告し、目標との乖離があった場合は、原因を明確にして対策を実施しています。CEOは、審議事項や報告において事業に影響を及ぼすと考えられる事案について、対応を決定し事業戦略に反映しています。

ESH(Environment, Safety & Health)管理に関するCEO直轄の推進機関として、当社グループ全体を管轄するESH委員会を設置しています。ESH委員会の委員長及び委員はCEOによって取締役を含む役員から任命されます。ESH委員長は、気候変動に係るリスク・機会を含めた環境・安全・健康に関する重要な情報を各カンパニー及びグループ会社から収集しています。また、確認のためESH監査、全社省エネ委員会などを各事業所に訪問して実施しています。これらのモニタリングから重要性の評価及び重要と評価された事案への対策についてESH委員会にて審議を行っています。

 

会議名

気候変動に関する議題

取締役会

主要アクション(環境):環境負荷低減(CO2排出量、年2回)

環境負荷低減:CO2排出量、売上高原単位、省エネ・創エネ、環境配慮型製品の開発 (年4回)

主要な環境設備導入(都度)

執行役員会

環境負荷低減

CO2排出量、売上高原単位、省エネ・創エネ(年12回)

ESH委員会

環境負荷低減

CO2排出量、売上高原単位、省エネ・創エネ(少なくとも年2回)

 

 

 

② 戦略

気候変動が事業活動に及ぼす影響を適切に把握・管理するため、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯の外部シナリオを用いて、取引先や顧客を含むサプライチェーン全体のリスク・機会を分析しています。

ESH委員会の審議結果において、気候変動による事業への重要な影響を及ぼすと考えられる事案(リスク・機会)については、CEOの決定で事業戦略に反映しています。

当社グループでは、「気候変動への対応」は「長期ビジョン実現に向けた長期的な課題」である経営マテリアリティの1つとして特定しています。進捗を管理している経営マテリアリティ委員会が、ESH 委員会をはじめとする他の委員会と連携し、定期的に評価しています。活動内容は経営会議(マネジメント・コミッティ)での審議・決定を経て、取締役会に報告されます。

今後、市場やお客さまの要求により、炭素価格の上昇や再生可能エネルギー電力の購入による運用コストの上昇リスク、再生可能エネルギー発電等の導入の資本的支出、省エネ製品開発のための研究開発費の増加リスクが想定されます。また、風水災によるインフラの損傷や電力の不安定化による事業中断などの物理的リスクも挙げられます。

一方、省エネラベリング制度の義務化等の法規制による新たなビジネス機会や、消費者の気候変動への関心が高まると、CO2排出量を抑える観点から、長寿命化への嗜好の変化に対してMRO(Maintenance, Repair, Overhaul)ビジネスの機会拡大などが考えられます。

今後も、環境に関連するリスク・機会の把握に努め、省エネ活動のさらなる推進をはじめとするリスクへの対策・機会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

③ リスク管理

ESH委員会において、気候変動に係るリスク、機会に関する重要な情報を社内カンパニー及びグループ会社から収集し、事業活動に大きな影響を及ぼすか否かの評価及び重要と評価された事案への対策について審議を行っています。想定される影響額及び発生(実現)可能性について評価し、優先付けをしています。リスクについては影響額にかかわらず、発生可能性の高いリスクについて、優先的に対策案を策定し、ESH委員会において審議を行っています。また、ESH委員会では、気候変動以外に水資源、廃棄物、化学物質、従業員の安全、健康に関する評価も行っています。

 

<TCFDへの対応:リスク評価結果(参照シナリオ:IEA 450/IEA NZE 2050/RCP2.6/RCP8.5))>

■移行リスク                                 ▲:リスク ●:機会

タイプ

気候変動
リスク項目

影響
評価

事業リスク/機会

当社の対応

(短期)         (中期)            (中長期)         (長期)

政策規制

炭素税の引上げ

 

 

 

▲エネルギー調達コスト増

●低炭素製品による差別化

●適切な情報開示による評価向上

・再生可能エネルギー活用推進

・カーボンプライシングの導入

・代替素材への効率的な転換

省エネ・低炭素規制

▲省エネコスト増

●低燃費製品の売上増

▲規制対応開発コスト増
(例:TRS・その他セグメント)

●規制対応製品需要増
(例:TRS・その他セグメント)

▲規制に伴う旧型機の需要減
(例:TRSセグメント)

●高効率新型機の需要増
(例:TRSセグメント)

・省エネ製品認定制度の運用

・設備投資・省エネガイドラインの運用

・燃費向上製品のラインアップ拡充

・新燃料対応製品の開発

政策

 

▲法令対応コスト増

・技術・製品開発への投資

・戦略的な気候変動情報開示

技術

低炭素製品への置換

 

▲新要素技術獲得のためのコスト増

●新要素技術開発による新市場獲得

▲ニーズ多様化による開発コスト増

・規制・開発動向にあわせた技術投資、製品の開発、他社との協業

・新たなモビリティへの採用製品開発

市場

消費行動の変化

 

▲競合他社に比べた開発遅れ

●電動化需要
(例:CMPセグメント)

●技術力で他社を上回り競争力向上

 

市場の不確実性

 

▲CO₂排出削減要求増によるコスト増

●モーダルシフト・電動化による需要増
(例:TRSセグメント)

▲RE100対応による操業コスト増

●適切な情報開示による評価向上

・再生可能エネルギーの活用促進

評判

業界批判

 

▲環境対応遅れによる評価棄損

●環境対応製品の売上増

●自社の環境対応によるブランドイメージ向上

・再生可能エネルギーの活用促進

・戦略的な気候変動情報開示

 

 

■物理リスク                                 ▲:リスク ●:機会

タイプ

気候変動
リスク項目

影響
評価

事業リスク/機会

当社の対応

(短期)         (中期)            (中長期)         (長期)

急性

台風頻発

▲インフラ損傷、操業停止

●電力インフラ強靭化需要増(例:風力発電機用CMFS機器)

・BCP運用

・部品調達の分散化

・電力レジリエンスの向上

・工場に配置する従業員の最適化

・気象予報サービス活用・緊急対策

豪雨・旱魃

▲インフラ損傷、操業停止

●水資源インフラ整備需要増(例:CMPセグメント)

●復興のための建設機械需要増(例:CMPセグメント)

慢性

降水パターンの変化

 

 

 

▲水害・洪水による

操業停止

●水資源インフラ

整備需要増
(例:CMPセグメント)

・サプライヤーとの風水災に関する対応策の検討

・電力のレジリエンスの向上

・拠点立地の見直し

・水の再利用・循環の見直し

・気象予報サービス活用・緊急対策

平均気温の上昇

 

 

 

▲空調費・設備投資

の増加

▲発電効率低下による

電力コスト増

●工場の効率化需要増
(例:CMPセグメント)

 

(注) 影響度については、発生頻度と財務的な影響度の2つの観点から、大・中・小に分類をしています。

-発生頻度:頻繁に起きている/起きることが知られている/起きそうにない/まずありえない

-財務的な影響度:深刻(50億円以上)/大きい(25億円以上~50億円未満)/中程度(5億円以上~25億円未満)/軽微(1億円以上~5億円未満)/極めて軽微(1億円未満)

 

④ 指標及び目標

当社グループは、温室効果ガス排出削減の長期目標としてグループ全体のCO₂排出量を、2030年度で63%、2050年度で100%削減することとしています(基準年:2015年度、SBT1.5に認定)。2024年度までの累計実績は28.4%減と目標実現に沿ったペースで着実に削減を進めています。

また、自社だけでなく、サプライヤーへの展開活動も始めています。温室効果ガス排出量をサプライチェーン全体で見た場合、製品・サービスの購入(スコープ3 カテゴリ1)の割合が高いため、サプライヤーでの温室効果ガス排出量削減の取り組みが欠かせません。そこで、メインサプライヤー(年間調達額の70%を占める上位)の温室効果ガス排出量自主削減目標の設定状況の調査を開始しました。

2023年度時点で、メインサプライヤーの72%が温室効果ガス排出量自主削減目標を設定し、取り組みを行っています。2025年度までに、すべてのメインサプライヤーが自主削減目標を設定するよう支援を行っていきます。

 

<CO排出削減の長期目標(1.5℃目標/Scope 1+2)>

 

2015年度(基準年)

2030年度(63%減)

2050年度(100%減)

グローバル排出量(t-CO₂)

54,803

20,277

0

 

 

<CO排出削減の実績(単位:t-CO₂) (注)1、2、3

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

直接排出(スコープ1)

4,491

4,061

3,893

4,929

4,202

電力使用等による間接排出
(スコープ2)

48,073

41,021

43,140

38,495

35,060

 

(注)1 上記排出量のうち2024年度の数値については提出日時点の集計値であり、第三者保証を取得後、

確定値を当社のウェブサイトにて開示します。

2 集計範囲はナブテスコ単体及び国内外の主要な連結子会社です。

3 集計の方針及び基準は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」「地球温暖化対策の推進

に関する法律」に準拠し、環境情報管理に関する社内規定に基づき集計しています。

 

<その他の間接排出(スコープ3) 2023年度実績 (注)1、2>

カテゴリ

CO₂排出量
(t-CO₂)

割合

備考

1

製品・サービス購入

856,494

79.68%

 

2

資本財

30,922

2.88%

 

3

エネルギー関連活動

6,445

0.60%

 

4

輸送・配送(上流)

154,878

14.41%

 

5

事業から出る廃棄物

1,101

0.10%

 

6

出張

5,442

0.51%

 

7

従業員通勤

1,695

0.16%

 

8

リース資産(上流)

対象外(該当するリース資産なし)

9

輸送・配送(下流)

対象外(完成品は、委託物流のためカテゴリ4に含む)

10

販売した製品の加工

対象外(当社製品は完成品のため、販売後に加工を行わない)

11

販売した製品の使用

17,006

1.58%

 

12

販売した製品の廃棄

924

0.09%

 

13

リース資産(下流)

対象外(該当するリース資産なし)

14

フランチャイズ

対象外(該当するフランチャイズなし)

15

投資

対象外(該当する投資なし)

合計

1,074,907

100%

 

 

(注)1 2024年度実績については集計中のため、2023年度実績の情報を記載しています。

2 2023年度スコープ3算定方法、対象期間、範囲は以下のとおり。

・算定方法:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省、経済産業省)に準拠。

・算定期間:2023年1月1日2023年12月31日

 

(3) 人的資本経営の推進

当社グループは、長期ビジョンで掲げる「イノベーションリーダー」に向けて、統合前から積み重ねてきた顧客ニーズに「応える」取り組みとともに、顧客や社会の期待を「超える」視点を重視し、業績の向上 (Financial Impact)と社会課題の解決 (Social Impact)を同時に実現していくことで企業価値を高めることを追求しています。

その実現には、「両利きの経営」で言われる既存事業の深化と新規事業の探索の両立が必要であり、イノベーションを促進する基盤となる諸資本の変革が求められます。

なかでも人的資本は価値創造プロセスの起点となる重要な資本であり、当社グループでは、「イノベーションリーダー」の実現に向けた人的資本の最適化を図ることを、人的資本経営の目的としています。

顧客の「期待に応える」ためには、既存事業における絶え間ない技術革新や性能・品質の改善、生産性の向上等を通じて、顧客ニーズに徹底的に寄り添う人財が必要となります。一方、顧客や社会の「期待を超える」ためには、既存事業領域の拡大や新事業の創出など、顧客や社会の期待を超える価値を生み出し、提案する人財の拡充や育成が求められます。

組織面では、経営環境の変化に対して柔軟に対応できる組織能力の獲得が重要となります。そのためには、経営層からの上意下達による従来型のマネジメントだけではなく、各個人が自律的・自発的に行動することやトップダウンとボトムアップをつなげる管理職層の役割が重要となります。当社グループの人的資本経営は、これら各層の三位一体による推進が骨格となっています。各層がこのような役割を果たせるよう人的資本への投資を積極的に行い、「期待に応える」と「期待を超える」サイクルを力強く回し続けることで長期ビジョンの実現につなげていきます。

 


 

① 人的資本経営の目指す姿

当社グループでは、会社・経営層、組織・管理職層、個人による役割遂行が価値創造につながるとの認識のもと、人的資本の最適化に向け、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」のそれぞれでの目指す姿を設定しています。

会社・経営層においては、Actionできる「状況・環境」を創り出すこと。「組織・管理職層」においては、個々人のActionの種に気づきを与えること。「個人」においては「Innovation in Action」の種を芽吹かせること。これらが、当社グループの人的資本経営の目指す姿です。

 

 


 

 

② 現状と目指す姿のギャップ/課題抽出

当社グループでは、社員の主観的な状態を測定するエンゲージメントスコア(ES)と組織診断を定期的に実施し、個人の状態と組織風土の両面から現状把握と課題抽出を行っています。

組織診断の設問設計にあたっては、挑戦、共創、学習、創意工夫などイノベーション促進に関連性が高いと考えられる項目(イノベーション項目)を設定しました。下のグラフは、ESと組織診断の設問群を「個人の状態を表すもの(個人指標)」、「組織の状態を表すもの(組織指標)」に分類した上で、イノベーション項目とそれ以外の設問項目の充足度の相関分析を両指標について実施し、イノベーションとのつながりの強さ(横軸)、充足度(縦軸)でプロットしたものです。

両グラフの右下の項目群は、「イノベーションとのつながり」が強い一方で「充足度」が低い項目であり、個人指標では、仕事へのやりがいや達成感を得られ、成長につながる実感を持つことがイノベーション推進のドライバーとなることが示唆されます。

組織指標においては、会社・経営層のレベルでは「目標達成の見通しの実感」、「会社による世の中の変化先取り」「挑戦する風土の醸成」、組織・管理職層のレベルでは、「部署を超えた問題解決」や、「次のリーダー育成」といったキーワードが挙がっています。これらの項目の充足が、イノベーションリーダーの実現に向けた重点課題となるとの仮説を構築し、ギャップ解消に向けた各施策を、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」が三位一体となり推進しています。

 

 


 


 

 

③ 指標及び目標

前頁のギャップ解消に向け、当社グループでは、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」の各層でのイノベーションに向けた取り組みの進捗を測る結果系指標として、「イノベーション指数」「リンケージ指数」「エンゲージメント指数」の3つの人的資本KPIを設定しています。これらの指標は、組織診断結果とエンゲージメントスコアを合成した結果系指標であり、各指標で2022年度の第三四分位の値を当面の目標として設定しています。

「イノベーション指数」は、Actionできる「状況・環境」を創り出すための指標で、ナブテスコ ウェイの浸透、人財ポートフォリオの充足により、イノベーションに取り組む目的を共有することで組織・個人がActionできる状況・環境を支援していきます。

「リンケージ指数」は、個々人のActionの種に気づきを与えるための指標で、配置・育成・評価、新規事業の仕組み、支援、制度改定により、「期待に応える」「期待を超える」両利きの視点で個人のActionを後押しします。

「エンゲージメント指数」は、個々人におけるMy “Innovation in Action”の種を芽吹かせるための指標で、ナブテスコ ウェイの自分事化、自律的キャリア形成、リスキリングにより、個々人のイノベーション意識を定着させていきます。

人的資本KPIについては、実行戦略や各指標の進捗をモニタリングしつつ、課題の変化に合わせて柔軟に見直し、人的資本経営の高度化を図っていきます。

 

<人的資本KPI>

(会社・経営層)

イノベーション指数

(組織・管理職層)

リンケージ指数

(個人)

エンゲージメント指数

 


 


 


 

(注)1 2024年度実績については集計中のため、2023年度実績の情報を記載しています。

2 組織診断とエンゲージメントサーベイの集計について、両データを整合させるために部門平均値を使用した結果、2022年度の数値を遡及修正しています。また、この修正に伴い、人的資本KPIの目標も2022年度の第三四分位の数値へ遡及修正しています。

 

(会社・経営層)イノベーション指数

イノベーション指数向上に向けた体系的な施策展開


 

 

(組織・管理職層)リンケージ指数

リンケージ指数向上に向けた体系的な施策展開


 

(個人)エンゲージメント指数

エンゲージメント指数向上に向けた体系的な施策展開


 

 

(4) 持続的なイノベーション創出をリードする知的財産経営戦略

当社グループは、顧客やパートナー企業など、すべてのステークホルダーが持続的成長と事業拡大を図るために、その事業競争力の源泉である現在及び未来の「コア価値(知財・無形資産)」の持続的な競争優位を担保する「知的財産経営戦略」をグループ全体で推進することで、企業価値の向上を追求しています。

当社グループの「コア価値」は、いわゆるコアコンピタンス(中核となる強み)だけでなく、競合企業も保有している技術等であっても、顧客への価値提供に必要な技術等を含むものとなります。コアコンピタンスだけでは顧客に価値を提供できないため、対象を広く捉えており、更に特許などの知的財産権だけでなく、ノウハウや取引実績、サプライチェーンなども含まれる知財・無形資産をいいます。そして、現在保有しているコア価値(現在のコア価値)と、将来必要となるコア価値(未来のコア価値)を事業毎に定めています。

さらに現在及び未来のコア価値は全社共通の切り口(機能や目的)で可視化され、共有されています。

 

<当社グループのコア価値>

 


 

① ガバナンス

グループ全体の知的財産戦略の基本方針を議論・審議するため、CEOを委員長とし、経営幹部を委員とした全社知財戦略審議を年1回開催しています。ここで決定された基本方針に基づき、各社内カンパニーやグループ会社固有の知財戦略を議論・審議するため、各社内カンパニー等の社長を委員長とし、各社内カンパニー等の幹部を委員としたカンパニー知財戦略審議を年2回開催しています。

また、各カンパニー知財戦略審議の活動状況の共有や社内カンパニー等の共通の知財課題について議論・審議するため、技術本部長を委員長とし、コーポレート部門長や社内カンパニー等の代表者を委員とした知的財産強化委員会を年2回開催しています。ここで議論された内容は戦略提案として全社知財戦略審議の議題の一つとなり、審議されて、翌年の基本方針に反映されています。このように全社知財戦略審議、カンパニー知財戦略審議及び知的財産強化委員会の活動が有機的に結びつき、スパイラル的に発展していく形になっています。

また、2022年以降より年1回、取締役会で全社知的財産戦略の基本方針を報告し監督を受けています。なお、個別事業に関する知的財産戦略については事業戦略に含めて都度、取締役会で報告し監督を受けています。

なお、2024年より知財戦略と技術戦略を統合して、カンパニーロードマップ全体を議論・審議できるように会議体の一部見直しを行いました。更に2025年はカンパニーレベルだけでなく、グループレベルについても知財戦略と技術戦略を統合して議論できるように会議体の見直しを行う予定です。

 


 

② 戦略

■IPランドスケープによる新事業創造

当社グループではIPランドスケープを活用した市場や顧客ニーズの探索を通じて、コア価値の強化、新規獲得を図っています。当社グループの製品・サービスが使用される設備やシステム全体に関する特許情報などの知財情報だけでなく、論文、雑誌、企業情報などあらゆる公開情報をグローバルに調査し、技術・市場動向や顧客ニーズをマクロ分析しています。さらにこの分析結果をもとに新事業テーマ・市場・顧客ニーズの探索や開発テーマの検証、オープンイノベーションなどの協業先の探索など、将来事業の方針設定や他社連携の議論をイノベーション戦略室や社内カンパニー等と行っています。

 

■コア技術情報管理と知的財産権獲得の戦略的な活用

当社グループの競争力の源泉であるコア価値(知財・無形資産)には、いわゆる発明だけでなく、顧客との深い信頼関係や市場におけるブランドイメージ、商品・サービスに関するアイデア、設計・製造ノウハウ、サプライチェーンや人財などが含まれます。秘匿可能なコア価値については、徹底したコア技術情報管理(秘密情報管理)を行い、販売等のため秘匿することが困難なコア価値については、積極的に出願して知的財産権を獲得することで、コア価値の保護を図っています。

現在保有するコア価値とともに新たに生み出されるコア価値をコア技術情報管理と知的財産権獲得の両面で保護することにより、当社グループの総合的なコア価値力を持続的に増大させ、企業価値の向上を図ります。

 


 

③ リスク管理

■秘密情報管理と知的財産権獲得の戦略的な活用

当社グループの競争力の源泉であるコア価値には、顧客との深い信頼関係や市場でのブランドの構築、商品、サービスにおける技術アイデアや、設計・製造ノウハウなどが含まれ、これらは多数の特許、意匠、商標、営業秘密等の知的財産権で保護されています。

創造されたコア価値(知財・無形資産)は、原則として、全てコア技術情報(秘密情報)として徹底した秘密情報管理(コア技術情報管理)がされています。コア技術情報管理の一環として、全役員・社員(含む派遣社員)を対象に毎年情報管理教育を行うとともに、万一の国内外の裁判でも耐えうるような証拠形成も行っています。さらに業務監査部門とも連携して管理体制の維持も図っています。

一方、製品販売等の事業活動で公開するため、秘匿することが困難な技術的コア価値のみ、知財網を構築する知的財産権獲得戦略で保護を図っています。2024年末の時点で日本2,400件程度、アジア1,600件程度、欧州1,150件程度、米国500件程度の特許・実用新案・意匠(出願中含む)からなるパテントポートフォリオを構築しています。

現在のコア価値とともに新たに生み出される未来のコア価値をこのコア技術情報管理と知的財産権獲得戦略の両面で保護することにより、当社グループの総合的な知財・無形資産力を持続的に増大させ、これにより企業価値の持続的な向上を図ります。

 


 

■知財クリアランスの実行取り組み

当社グループでは、顧客の事業や製品を守ることを必須項目とし、当社グループの事業・製品を守ることを必要項目として、事業化プロセスの中で知財クリアランスを実行しています。具体的にはコア技術情報管理、知的財産権獲得、他社の知的財産権侵害防止、技術契約遵守、模倣排除、商標・著作権保護等の活動を事業化プロセスの中で実施しています。

2018年度以降で160件以上の製品・サービスについて実施しています。

 

■模倣品排除

当社グループのブランドを信じて購入した顧客が損害を被らないように、ブランド模倣はコストが掛かっても徹底的に排除する方針を取っています。

社内カンパニー及び国内外グループ会社からの情報のほか、展示会の定期巡回、ECサイトへの出品状況や企業ホームページの定期的な監視、過去に警告して侵害を中止した企業の定期監視等を行い、模倣品の早期把握を図っています。

その結果、2018年度以降で360件以上の侵害警告を行っています。

 

④ 指標及び目標

■業績評価の基準に「知財創造」を設定

2017年度からは、社内カンパニーとグループ会社の業績評価項目に「知財創造」を新たに加え、コア価値(知財・無形資産)を獲得・強化するための知的財産戦略活動を体系化し、社内カンパニーとグループ会社の中期経営計画の中で、その知的財産戦略活動を事業計画の一つとして策定、実行することを徹底しています。

また、すべての技術者が自ら新事業や新技術のアイデアや設計・製造のノウハウを創造する風土を構築するために、その創造活動を業績評価の対象として積極的な活動を奨励すると共に、事業に貢献する発明をなした方々(2024年度までに延べ234名)に対して、会社の創立記念式典で優秀発明者表彰を行い、全社でその栄誉を称え、社員の創造意欲の高揚を図っています。

このような活動を通じて、発明、意匠及びノウハウに関する知財創造届出件数は、以下のグラフに示すように、着実に増加しています。

なお、これまでの取り組みにより、知財創造届出件数は一定量を確保できるようになったため、2025年以降は量だけでなく、質の更なる向上を目的とした活動及び指標に変更予定です。

 

<知財創造届出件数>


 

■知の探索によるイノベーションを推進する施策

2022年度からいわゆる知の探索によるイノベーションを活性化させる一つの取組みとして知財創造する人の多様性を高める活動を展開しており、この活動状況を示す指標として「発明者割合」を設定しました。

この「発明者割合」は開発者だけでなく生産技術者を含む技術者に対する知財創造届出を行った発明者等の実数の比率で、年度単位で算出されるものであり、多様性が継続的に維持・改善されているかを示すものです。目標は80%以上としており、これを継続するために小集団活動を含め各種施策を展開しています。

更に新たな市場ニーズ等を収集し、イノベーションに繋げた営業担当者等を対象とした知財創造支援者制度により、全社一丸となったイノベーション推進を図っています。

 

<発明者割合>