リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
① オフセット印刷市場が縮小するリスク
当社グループは、これまで出版、商業印刷向けオフセット印刷機を主軸に事業を展開してきましたが、印刷業界は、インターネットや電子書籍の浸透によって、特に欧米・日本では書籍、商業印刷の需要が縮小しており、商業印刷向けオフセット印刷機の売上高が減少してきております。今後、電子媒体の増加が新興国を含め世界的に急速に浸透することによって書籍、商業印刷の需要がさらに縮小した場合には、出版、商業用印刷向けオフセット印刷機の需要も縮小し、当社グループのオフセット事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方、厚紙(加飾、医薬、中間箱)、段ボール、ラベル、軟包装等といったパッケージ市場は持続的に成長していることから、パッケージ印刷はこれからも成長が見込まれます。当社グループは、今後、オフセット事業の主力分野を商業印刷からパッケージ印刷市場への対応を強化し、製品戦略としてROIを軸とした製品ポジショニングの見直しによる競争力向上と生産体制の再構築を行い、差別化商品の市場投入、ブランド認知度の向上、ソリューション提案による領域の拡大等の施策を行ってまいります。
② 欧米の現地法人の収益力が弱体化するリスク
現地法人では、電子媒体の増加に伴い、販売主力機である商業印刷向けオフセット印刷機の需要が減少傾向にあり、収益力が弱体化する可能性があります。
そのため、オフセット印刷機の入れ替え需要の獲得、部品販売や保守サービスの推進、さらに資材及び機材販売の強化に乗り出しておリます。また、商業印刷向けオフセット印刷機の需要は漸次減少しつつも、一定の入れ替え需要は存在しております。しかしながら、印刷会社においてコスト競争力の強化が必須になっており、印刷工程の省力化、スキルフリー化が求められております。その対策として、当社グループが開発したKP-ConnectやDPSを活用し、リカーリングインカムの増大を構築すべく工程最適化ソリューションの提案による商機拡大を図ってまいります。
③ 海外事業に伴うカントリーリスク
当社グループは、海外事業の展開に伴い、外国企業に対する暴動、内乱、テロ、戦争、自然災害、感染症の発生等、予測困難な外的要因により、財政状態及び経営成績に悪影響を受ける可能性があります。加えて、特定国における通商政策の変更、特に米国における関税措置(いわゆる「トランプ関税」等)や輸出入規制の強化は、当社グループの調達・販売活動に影響を及ぼすリスク要因となります。これにより、コスト構造の変動や市場アクセスの制限が生じる可能性があります。
当社グループでは、こうしたハザードリスクや政策リスクに対し、全社的な対応方針を定め、客先対応ルールの整備、定期的な市場調査情報の取得とリスク評価を通じて、中期計画への影響分析を行う等、リスクの最小化に努めています。
④ サプライチェーンリスク
当社グループでは、原材料・エネルギー、その他物価上昇に伴う値上げリスクについて、原材料やエネルギー価格の変動が事業運営に与える影響を注視しています。近年、国際情勢や為替の変動、物流費の上昇等を背景に、調達コストが高止まりする傾向が続いており、製品の価格設定や収益性に影響を及ぼす可能性があり、環境対応や制度変更に伴うコスト増加も想定され、これらが中長期的な経営資源の配分に影響を与えるリスクも存在します。当社グループは、調達先の見直しや省エネ施策の推進、製品設計の工夫等を通じて、影響の最小化に取り組んでいます。
また、労働人口減少による廃業・事業譲渡に伴う供給リスクについては少子高齢化や人手不足の影響により、取引先の廃業や事業譲渡が増加しており、安定的な部品・資材の調達に支障をきたす可能性があります。特定の供給先への依存が高い場合、代替確保に時間を要し、生産や納期に影響を及ぼすリスクがあります。
当社グループでは、調達先の分散や在庫管理の見直し、新規サプライヤーの開拓等を通じて、供給の安定化に取り組んでいます。
⑤ 製品の品質クレームにより損害が生じるリスク
当社グループが製造・販売する製品に販売、製造、サービスに起因する製品の品質クレームが発生した場合は、補修等の損失や損害賠償による損失が発生し、さらには信用問題とともにブランドが毀損する可能性があります。
そのため、当社グループは、「顧客視点」の総合的な品質管理として知覚品質管理を実施しております。この知覚品質管理は、「ブランド管理」を軸にし、「総合製品品質管理」、「顧客対応品質管理」、「見栄え品質管理」を行っており、顧客視点での品質保証体制を整備しております。また、グローバルCRMを活用したサービスケースの迅速な対応を体制強化してまいります。
⑥ 情報セキュリティの侵害に係るリスク
情報セキュリティが侵害され、情報漏洩、データの破壊や改ざん、業務やサービスの停止等の被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与えるのみならず、当社グループへの信用失墜に繋がる可能性があります。
そのため当社グループは、情報セキュリティの推進に係るポリシーを「情報セキュリティ基準」や具体的な利用・運用ルールの要領として定めるとともに、推進組織として情報セキュリティ委員会を設置し、国内外グループ会社を含めセキュリティ体制の構築、維持、整備を行っております。また、定期的な脆弱性診断やリスクアセスメントを実施することにより、リスクを早期に発見し、対策を講じる体制を構築しております。また、一般従業員向けメール訓練や教育も実施する等のリスクを未然に防ぐ対応も実施しております。
今後も脅威動向の変化を捉え、サイバーセキュリティ対策への取組みを継続してまいります。
(2) 成長事業に関するリスク
① DPS事業の拡大が停滞するリスク
印刷業界では、印刷品質と生産性の両面においてデジタル印刷機への需要が根強く、当社グループとしても引き続きプロユース向けデジタル印刷機の商品化に取り組んでおります。
コニカミノルタ社と共同開発したB2サイズのデジタル印刷機「Impremia IS29」については、技術課題を克服し、製品としての完成度が向上しております。B2サイズ市場は登場から約10年が経過し、競合他社による次世代機の開発計画や新規参入の動きも見られることから、当社グループとしても次世代製品の開発を進めております。その一環として、オフセット印刷機の高速・高精度な搬送技術を応用した次世代型B2枚葉UVインクジェット印刷機「J-throne 29」を開発し、販売を開始いたしました。これに伴い、製品改良や新規開発に向けた開発投資が発生する可能性があります。
また、B1サイズの次世代デジタル印刷機「Impremia NS40」については技術課題に対応し、早期市場投入に向けて準備をしております。
② PE(プリンテッドエレクトロニクス)事業における、対象分野の変動リスク
市場変化のスピードに追随できず、事業収益を大幅に低下するリスクがある成長事業の一つの柱であるPE事業では、開発対象分野の技術革新の影響より収益が見込めると判断した分野が急速に収縮したり、他の分野が急速に立ち上がったり等の環境に置かれています。
従って新しい市場開拓に時間を要し、対象分野の急速な市場変化により想定した事業拡大等ができず、事業収益が大幅に低下するリスクがあります。
当社グループは市場調査を徹底し事業推進体制による商品化機能を強化しております。さらに次世代プリンテッドエレクトロニクスのイノベーションを推進するために、山形大学と包括的な連携協定を締結いたしました。今後は市場変化を見極めながら次世代プリンテッドエレクトロニクスの開発を推進してまいります。
(3) 財務に関するリスク
① 為替レート変動によるリスク
当社グループの主要な海外市場は、欧州、北米、中国を含むアジアであり、海外売上高比率は全体の60%超となっております。円以外の主要な取引通貨はドル、ユーロであり、為替変動の影響を受けやすい構造となっており、想定為替レートに対し急激な円高が発生した場合は売上高、利益の減少等収益に影響を与えます。
為替レート変動によるリスクを軽減するため、当社グループは原材料や部品の海外調達や、一部製品の海外生産を実施しております。また、円建て契約を優先するほか、先物為替予約等でヘッジすることにより短期のリスクの合理的な軽減を図っております。しかしながら、大幅な変動が生じた場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② のれんの減損が顕在化するリスク
当社グループは、印刷需要が伸びている新興国市場でのシェア拡大を目的とした企業買収を行っております。この企業買収に伴い、のれんを計上しておりますが、買収後の事業が計画に対して実績が下回る等により、その乖離が継続して生じた場合は、のれんの減損損失の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企業買収に当たりましては、企業価値算定、投下資金の回収見込み、買収金額の妥当性、リスク等について取締役会で十分な審議を行った上で意思決定を行っております。また買収後は出向者の派遣及び連携の強化等を通じて、管理及び事業の推進体制を整え、リスクの軽減に努めております。
③ 棚卸資産の過多によりキャッシュ・フローが悪化するリスク
当社グループが販売予測の前提条件と実績の乖離により過剰な製品在庫を生じさせた場合は、生産調整にとどまらずキャッシュ・フローを悪化させる可能性があります。
そのため、過剰な製品在庫を生じさせない対策として、適正在庫の全社目標を設定するとともに、関係会社ごとに売上水準に合わせた在庫目標を設定し、月次で乖離を管理しております。一方で、昨今の電子部品等の供給リスクに対しては、中長期的な販売予測を元に部品毎に適正在庫量を設定することで、棚卸資産の管理と安定供給生産の両立を目指してまいります。
(4) 災害等によるリスク
緊急事態における本社機能、製造拠点の集中に係るリスク
当社グループは、地震・風水害・感染症の拡大等の緊急事態に備え、本社機能及び生産拠点の事業継続計画(BCP)を整備しています。これらの事象は、業務の中断や物流の停滞を引き起こし、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、近年の通信インフラの早期復旧傾向を踏まえ、代替拠点の確保に代えて、クラウド環境の活用やリモートアクセス体制の強化を進めています。また、災害時における従業員の安全確認と迅速な初動対応を目的として、安否確認システムを導入し、情報収集と社内連携の円滑化を図っています。
今後も、定期的な訓練や体制の見直しを通じて、BCPの実効性向上に努めてまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、長期的展望に立ち、経営基盤の充実と将来の事業拡大のための内部留保の確保を念頭に置きながら、株主の皆様に対し安定かつ充実した利益還元を継続的に行うことを最重要課題の一つと認識しております。なお、当社は、会社法第454条第5項の規定に基づき、中間配当をすることができる旨を定款で定めており、剰余金の配当は中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。
当事業年度の配当につきましては、当期の経営成績等を総合的に勘案した上で、1株当たり中間配当20円、期末配当48円、合計68円の配当を実施いたしました。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
(注)1.2024年10月31日開催の取締役会決議による配当金の総額には、株式給付信託(BBT)が保有する当社株式に対する配当金5百万円が含まれております。
2.2025年6月18日開催の定時株主総会決議による配当金の総額には、株式給付信託(BBT)及び株式給付信託(J-ESOP)が保有する当社株式に対する配当金19百万円が含まれております。