2025年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

(1) 当社のリスクマネジメントの体制

荏原グループのリスク管理活動を統括し、審議、改善指導・支援を行う機関として、リスクマネジメントパネル(RMP)を設置しています。RMPを中心としたリスクマネジメントの体制は下掲の図のとおりです。RMPは代表執行役社長を議長とし、全執行役により構成しています。また、リスク管理における監督機能を発揮するために非業務執行の取締役が陪席し、必要に応じて助言等を行っています。RMPの審議状況は取締役会に報告され、取締役会が情報を的確に捉えて、監督機能を発揮できる体制を整備しています。あわせて、リスク対応の重要度に応じ全社的に対応が必要な場合には代表執行役社長を本部長とする対策本部を立ち上げ、全社で迅速に報告・連絡・判断をとるようにしています。

当社グループの事業活動に関するリスクについては、執行役の職務分掌に基づき各執行役がそれぞれに管理し、重要事項については経営会議で審議します。事業活動を通じたサステナブルな社会・環境の構築にかかるリスクについてはサステナビリティ委員会で審議します。RMPはリスク管理活動を統括し、当社グループ全体のリスク対応体制を整備し、リスク対応活動を支援します。

 

これらの執行会議体とガバナンス体制の全体像は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」及びウェブサイトを参照ください。

https://www.ebara.com/jp-ja/ir/governance/Basic-Policy-and-Framework/


 

(2)事業継続マネジメント

大地震や大規模な感染症などの発生時において、国民の生命・財産にかかわる重要な施設の機能継続や早期復旧を支援するために製品・サービスを提供することは、当社グループの重要な責務であると認識しています。

この認識のもと、事業継続マネジメントシステムを構築し、組織体制や計画をまとめています。

当該体制においては、代表執行役社長を本部長とした統括本部を設置し、初動活動から事業継続及び事業復旧まで一貫して全社の活動情況を把握し、全社的な指示や情報発信を行っています。「初動活動」においては、地域毎に設置した現地本部が避難、救助、消火等を含む社員等の安全確保や資産の保全に関する活動を指揮します。「事業継続及び事業復旧活動」においては、重要業務の継続及び速やかな復旧を各カンパニーが指揮する体制としています。

2024年8月に南海トラフ地震臨時情報が発表されたことを受け、改めて災害対応の重要性を認識するために、国内主要拠点長を対象にシナリオ非提示型の大規模地震対応訓練を実施しました。また、執行役と各カンパニーのRO(Risk Officer)を対象に有事対応能力の強化を目的としたBCP訓練を実施しました。災害対応における優先順位づけの重要性等の気づきを得る一方、本社が被災した際の代替本部への権限移譲が不明確であるなどの課題が明らかとなったことから、当該課題への対応を進めています。


 

(3)リスク分析と当社グループの重要リスク

当社グループの事業等に関するリスクについて、中長期的な社会情勢や市場環境の変動をシナリオプランニングによって分析しています。また、足下の当社グループを取り巻くリスクについては、事業特性に照らし想定し得るリスクの中から当社グループにとっての発生可能性、影響度及び対策後の残存リスクを分析する「全社リスクアセスメント」を3年ごとに実施しており、2025年はその実施年でした。また、近年は社会情勢の変化が著しいため、中間年でもグループ重要リスクを見直すために簡易的なリスクアセスメントの実施方法を検討し、2026年以降に実施することとしました。

2025年に実施したリスクアセスメントでは、前回用いたリスク目録に加えて、第三者的視点としてISO 26000(社会的責任)やGRI(Global Reporting Initiative)スタンダード等を参照し、リスクの網羅性を高めた上で、当社グループの事業運営において想定される約110のリスク項目を作成しました。当社グループにとっての影響度と発生可能性がともに大きいもの、さらに対策の十分性を評価した上で、全執行役及びカンパニー企画部門責任者等へのアンケートとヒアリングを行い、グループ重要リスク10項目を特定しました。あわせて、主管部門や報告先執行会議体などのリスク対応体制を再整備し、RMPに報告しました。なお、2025年2月20日に公正取引委員会から下請代金支払遅延等防止法に基づく勧告を受けたことにより、改めて法令遵守の重要性を認識し、コンプライアンスリスクを選定しています。

全社共通のグループ重要リスクと、当社が対面している市場別のリスクは、以下の表の通りです。

 

① 全社共通のリスク

項目

影響度×起こりうる可能性

リスク内容

当社の対策

人材リスク

中×大

・事業ごとに求める人材像の多様化・専門化による採用戦略立案及びキャリア展望構築の困難化による、要員計画の未達。

・働き方の多様化や部下の成長支援など管理職の負担の急増とマネジメントスキル高度化によるチーム運営の質の低下や離職の増加。

・事業別の採用環境に即した統合的採用戦略の再構築と、社内公募制度等の活用によるグループ内人材の最適配置。また、人材の定着・成長を促す処遇制度や教育体系の継続的な強化・見直し。

・管理職の負担軽減とマネジメント教育の拡充や心理的安全性の醸成と健全な組織風土の構築。

国際情勢・地政学上のリスク

中×中

・政治情勢や国際関係の変化に関する戦略的情報の収集・活用体制の未確立による事業への悪影響。

・国際機関の影響力低下を背景とした地域紛争の増加及び各国に展開する当社グループ拠点の安全への影響。

・政治情勢や国際関係の変化に係る専門的な分析及び事業への影響評価を可能とする体制の構築と経済安全保障施策の推進。

・有事に備えたリスクシナリオの策定と、安全確保策の策定。

サプライチェーンリスク

中×大

・保護主義の高まりや地域紛争の増加による市場アクセスの制限やサプライチェーンの分断・不安定化。

・サプライヤの高齢化による事業承継リスク及び中小企業等保護に係る規制強化への対応不足。

・当社グループの経済活動が人権問題に波及する認識不足。

・サプライヤの地政学的分散や多重化の戦略的実施。事業承継リスクを加味した中長期かつ強靭なサプライチェーンの構築。

・人権デュー・ディリジェンス等への対応強化と社内教育の充実。

気候変動・自然災害

大×小

・当社グループ及び当社製品における脱炭素化への対応遅れによる国際市場での競争力低下及びビジネス機会の喪失。

・気象災害の激甚化等の自然災害による当社事業場やサプライチェーンへの直接的な損害の発生。

・長期的・多様なシナリオ分析に基づくリスクと機会の予測と対策を実施。

→気候関連シナリオ分析については当社ウェブサイト「気候関連開示(TCFD提言)」※1を参照ください。

・荏原グループの2050年カーボンニュートラルに向けた施策の着実な推進。

→詳細は当社ウェブサイト「荏原グループのカーボンニュートラル」※2を参照ください。

・国内地震対策を中心とした事業継続計画から、海外グループ会社を含めたオールハザード型の事業継続計画への転換。

市況等の変化リスク

中×中

・為替変動や金利上昇等による業績への影響。

・半導体産業を始めとしたビジネスサイクルの短期化による需要変動への対応遅れによる市場シェア喪失。

・対面市場別5カンパニー制によるリスク分散の継続、及びサービス・ソリューション事業の強化による安定的な収益基盤の拡大。

・景気変動に対応した生産体制の構築と意思決定の迅速化。

技術革新・研究開発の失敗

大×小

・変化の激しい市場環境において、技術革新を支える人材不足や研究開発と事業戦略との連携不足による顧客要求への対応遅延や競争優位性の喪失。

・チャレンジ精神に溢れる人材不足による新たな付加価値の創出不全。

・研究開発活動に関する知識・ノウハウの形式知化及びAI活用による開発効率と質の向上。事業部門トップとの連携強化。

・技術者・研究者のローテーションや社外共創・協業を通じた異文化・価値創造体験を増やし、次代を担う「失敗を恐れない人材」の育成。

サイバーセキュリティリスク

中×中

・外部からのサイバー攻撃、自社や委託先での人為的過失に加え、自然災害やインフラ障害など不測の事態により、重要な業務やサービスの長時間停止、機密情報・個人情報の漏洩、重要データの破壊・改ざんが発生する可能性、及びサプライチェーン全体に影響が及ぶリスクの誘発。

・多層的な技術的防御策の導入、及びISO 27001準拠レベル体制整備とそのPDCAサイクルの定着。

・情報セキュリティに関する人材の確保、及び攻撃トレンドの変化(アカウント乗っ取り型攻撃の増加等)に対する継続的な教育と訓練実施による防御力の向上。

・グループ社員のセキュリティ・リテラシーの向上。

・サプライチェーン管理能力強化

M&Aリスク

中×小

・デュー・ディリジェンスで買収対象会社の財務状況及び事業運営に重大な影響を及ぼす不適切な事項を発見できないことによる、当社への悪影響。

・買収後の統合プロセスの不備・遅滞に伴う、期待したシナジーの未達。

・案件実行の迅速化及びM&Aに関する知見の集約と人材育成を図る専門部署の設置。ならびに各領域の専門家による不適切事象の精査。

・カンパニーとコーポレートの担当部門間連携による、円滑な統合に向けた推進体制の構築とその進捗の確認。

品質リスク

中×小

・ベテラン社員の知識・ノウハウに過度に依存した製品開発が続くことで、退職による製品品質への負の影響。

・自社基準や組織の論理に基づく判断の恣意性による品質不正の誘発。

・過去データやノウハウなどをデジタルで見える化・共有化による品質保証プロセスの変革

・技術者倫理教育・ガバナンスの徹底及び、早期の予防・未然防止を徹底する品質重視文化の醸成。

10

コンプライアンスリスク

中×小

・法令遵守に対する意識の希薄化や制度の形骸化による当社役員や従業員による重大な法令違反等。損害賠償等による経済的損失、行政処分による受注機会の逸失及び社会的評価の低下。

・当社グループに大きな影響を与える法令の整理と主管部門の明確化、ならびに法令変更時等の予兆段階からの把握と影響調査とエスカレーション体制の運用による早期対応の徹底。

・部下への適切な指導・監督を可能とする組織体制の適正化、報告・相談が咎められない文化の醸成。

 

注1.気候関連開示(TCFD提言):https://www.ebara.com/jp-ja/sustainability/think/tcfd/

 2.荏原グループのカーボンニュートラル:
   https://www.ebara.com/jp-ja/sustainability/environment/carbon-neutrality/

 

② 対面市場別リスク

セグメント

対面市場

主要製品

主なリスク

当社の対策

建築・産業

建築設備・

産業設備

 

標準ポンプ(陸上ポンプ、水中ポンプ、給水ポンプ)、冷熱機械、送風機

・需要増加地域での規制強化と価格競争激化

・人口減少地域での建築設備需要減による市場縮小に伴う収益悪化

・輸出規制及び制裁への対応を含めたコンプライアンスリスク

・製品開発による差別化、S&S事業への注力や業務効率化による競争優位性の確保

・グローバル市場でのリソースの戦略的最適化

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

エネルギー

石油・ガス
電力
新エネルギー

 

カスタムポンプ、コンプレッサ・タービン、クライオポンプ・エキスパンダ

・石油価格の変動により、急激な需要変動が発生

・脱炭素社会への移行により、客先の需要動向が変化

・景気後退時に受注量や販売価格が下落し、生産能力の余剰が発生する等、損益を圧迫する一方、景気好転時にはサプライチェーン起因を含む生産能力不足等が生じ、シェアを低下させるリスク

・輸出規制及び制裁への対応を含めたコンプライアンスリスク

・水素等、次世代エネルギー関連事業の促進

・需要の変化に対し、先行指標の確認等による、高い予測精度での投資計画の策定・実施とリソース管理

・需要の変化に対し、リードタイム短縮や設計・製造の自動化等、効率化による損益分岐点の低下

・需要の変化に対し、S&S事業比率の上昇による安定収益の確保

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

インフラ

水インフラ
 

 

カスタムポンプ(農業用ポンプ、排水ポンプ、上下水道ポンプ)、トンネル用送風機

・海外市場での規制強化と価格競争激化

公共事業特有のコンプライアンスリスク

・製品開発による差別化、S&S事業への注力や業務効率化による競争優位性の確保

・グローバル市場へのリソースのシフト

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

環境

固形廃棄物処理

都市ごみ焼却プラント、産業廃棄物焼却プラント

・人口減少と循環経済への移行による焼却処理する廃棄物の減少

・労働市場の縮小による、施設オペレーションの人材不足の懸念

公共事業特有のコンプライアンスリスク

・リチウムイオン電池の発火等が原因の施設火災

・新技術やライフサイクルアセスメント(LCA)などによる差別化、業務効率化による競争優位性の確保

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

・火災の予防および早期検知と拡大防止をソフトとハードの両面で強化

精密・電子

半導体製造

 

真空ポンプ、CMP装置、めっき装置、排ガス処理装置

 

 

・半導体需要の変動に伴う、客先の投資・稼働の変化や需給不均衡による収益・シェアへの影響リスク

・輸出規制への対応を含めたコンプライアンスリスク

半導体業界の人財獲得競争による人材不足リスク

・先行指標の確認等による、高い予測精度での投資計画の策定・実施とリソース管理

・リードタイム短縮や設計・製造の自動化等、効率化推進による損益分岐点の低下

S&S事業の拡充による安定収益の確保

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

・人材戦略の再構築及びエンゲージメント向上施策の推進

 

 

(4)顕在化したリスクへの対応状況

経営に重要な影響を及ぼす恐れのある、全社的に対応が必要な事態が発生した場合には、リスク対応体制として代表執行役社長を本部長とする対策本部を立ち上げ、全社で迅速に報告・連絡・判断ができるようにしています。161期に顕在化したリスク及びその対応としては以下のとおりです。

 

① 法令遵守等のコンプライアンスリスクへの対応

当社は2025年2月20日に公正取引委員会から下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)に基づく勧告を受けました。下請法やその他関連する法令遵守に向けた再発防止とサプライヤとのより健全な関係構築に向けて「全社公正調達推進プログラム」に注力しました。具体的には、型管理の適正化、取引の適正化(支払遅延、代金減額、買いたたき、受領拒否、割引困難な手形の交付・受取拒否、協議に応じない一方的な代金決定等の防止)、価格転嫁への適正な対応、関連する業務プロセスや社内規程・制度の見直しや整備を実施しています。また、施策の履行状況については、RMPに対し定期的に報告を行い、実効性のあるモニタリング体制を維持しています。

下請法(2026年1月より製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)に関連する法令のみならず、当社グループが遵守すべき最新の法令を把握し、コンプライアンス経営を一層深化させるために、「法令改定対応委員会」を新設しました。法改正情報の早期捕捉および影響分析に基づき、必要に応じてタスクフォースを組織することで、適時適切な法令改正への対策を講じる体制としています。さらに、CRO(Chief Risk Officer)の主導により改正法の法令遵守方針を定め、各事業責任者およびグループ会社への周知徹底と、モニタリングに努めております。

 

② 地政学上のリスクへの対応

2025年4月から米中経済対立、米国関税政策、その他地政学上の懸念事項に対する、定期的な執行役等による情報共有および対策協議を実施しています。2025年6月のイスラエル・イランの両国間の緊張激化に際しては、駐在員及びその家族の退避方針を検討しました。国際情勢が大きな転換期を迎えるなか、貿易管理部門の機能を拡張し、経済安全保障施策の推進と経済制裁に対するコンプライアンス体制を整備しました。今後はリスクシナリオの策定やサプライチェーンへの影響分析などを通じ、当社グループの事業の戦略的不可欠性・自律性の実現を図っていきます。

 

③ 環境及び労働安全における課題への対応

2025年に当社事業所内で発生した事故の中には、重大な事態につながりかねない事案も見られました。これを受け、部門横断的な調査および検証を実施した結果、工程の進捗を優先するあまり工事審査の通過自体が目的化し、施工の計画・実施段階における安全意識が希薄化していることが判明しました。安全性の向上に向けた抜本的な改革を実施するため、2026年にEHS(Environment, Health & Safety:環境・衛生・安全)を統合的に推進する部署を設置しました。今後は、グループ全体で一貫した施策を展開し、安全を優先する組織文化の醸成を図ります。

 

④ 国内における巨大地震への対応

2025年12月9日に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されたことを受け、対象となる地域(1道6県)の勤務者に対し、地震への備えの再確認や迅速な避難態勢の準備を指示しました。特に津波避難対策特別強化地域の拠点では在宅勤務を原則とし、本社と防災担当者との常時連絡体制を整えました。特別な注意の呼び掛け期間の終了に伴い、業務遂行上の支障がないことを確認した上で、同月16日より通常体制へ移行しました。なお2025年8月に改訂された「南海トラフ地震臨時情報 防災対応ガイドライン(内閣府)」を参考に、2つの地震情報で齟齬が生じないよう、社内ガイドラインを作成しております。

配当政策

3 【配当政策】

当社グループは、E-Plan2028において中長期的な企業価値最大化に資する成長投資を優先的に実施し、残余キャッシュは原則として株主還元に振り向け最適な資本構成を保つことを株主還元の基本方針とします。配当については、連結配当性向35%以上を目標に当該期の業績に連動して実施します。また、必要な投資を行い且つ財務規律の範囲内であることを前提に、ROE目標に沿った適正な自己資本水準への調整として自己株式の取得を継続的に実施していきます。これらをふまえ、3年間累計のフリーキャッシュフロー(資産売却・圧縮によるキャッシュインフローを除く)の100%以上となるよう株主還元(配当・自己株式取得)を実施します。

当社は、剰余金の配当を取締役会の決議によって定めることができる旨、また毎年6月30日及び12月31日を基準日として中間配当と期末配当の年2回の配当を行うほか、基準日を定めて実施できる旨を定款に定めています。

内部留保資金については、競争力強化及び効率化を目的とする投資の原資として活用していきます。

 

当期に係る剰余金の配当は、以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年8月14日

取締役会決議

12,937

28.00

2026年3月26日

定時株主総会決議

(予定)

14,154

31.00