リスク
3【事業等のリスク】
当社のリスク管理体制は、取締役の中から任命されたリスク管理統括責任者が、当社及び当社グループのリスク管理を統括し、全社リスク管理部門がリスク管理統括責任者の指揮命令の下、リスクの洗い出し、評価・結果のモニタリング等を行います。重要リスクについては、経営環境の変化やリスク対応状況等を踏まえて定期的に見直しが行われ、適切なリスク対策が適時に実行されるよう努めております。
事業活動に与える可能性のあるリスクのうち、重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、予見することが困難なリスクも存在します。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断によるものです。
① 気候変動に関する影響
当社グループでは、ESG経営を推進しており、SDGsやパリ協定で示される国際的な目標を重要視しております。また、経営上の重要課題(マテリアリティ)の冒頭に「気候変動による事業環境変化への対応」を掲げております。
世界的な環境意識の高まりや低炭素・脱炭素型社会への移行による、エネルギーシフトが加速する中で、 LNG・原油等のタンク需要が減少することは避けられず、当社の事業環境に悪影響が及ぶ可能性があります。そこで当社の技術を活かし大型液化水素貯蔵の開発や、発電用燃料としての水素やアンモニアの需要拡大への対応を通じた、低炭素社会の実現を目指し、当社の強みを活かしたインフラに係る取り組みを積極的に推進しております。また、当社グループ全体として、省エネ型製品・サービスの開発、自家消費型再生エネルギー(太陽光)の活用など、低炭素・脱炭素型社会に向けた施策を推進しています。当社グループの温室効果ガスの排出(Scope1及び2)の削減については、2022年に「2050年までのカーボンニュートラル達成」を宣言、また同年より「TCFD提言に基づく気候変動リスク(及び機会)にかかる情報開示」も開始しております。気候変動対応については、当社グループ経営における長期的リスク(及び機会)への対応を検討する好機と捉えており、投資家等に向けた情報開示や対話を促進していく考えでおります。
また、当社グループの事業に起因した環境問題が発生した場合には、社会的な信用低下につながる可能性があります。そのため当社が掲げる環境方針のもと、ISO14001を取得・更新し、環境マネジメントシステムを積極的に整備・運用をしております。
② プロジェクトの遂行に関するリスク
物流ソリューション事業では、Eコマース市場の拡大、物流業務のアウトソーシングの広がりなどにより、サプライチェーンの中で物流センターにおける役割が増えると共に、物流業務の効率化、拠点の集約化の動きに合わせて物流センターが大型化する傾向にあり、これまで以上にプロジェクト管理・遂行能力の重要性が高まっております。
そのため、当事業においては、営業提案から施工まで一貫した納期管理の徹底を行い、標準化や生産性向上によるコスト・作業負担の低減に努めると共に、協力会社の拡大など、持続可能なプロジェクト遂行体制の整備に努めており、物流センターの全体エンジニアリングへ業務拡大を進めています。
しかしながら、短納期化が求められるなかでの予期せぬ建築施工計画の変更による工期圧縮や、一定期間内に複数の大型プロジェクトを同時進行することに伴う納期調整など、様々な要因によって想定外のコストが発生する可能性があります。
また、当事業が提供する主要な製品や部材の中には、海外の特定取引先から調達しているものが存在し、取引先の経営方針・経営環境の変化や、国際需給の変動、自然災害、事故などにより、安定的にこれら製品や部材を調達できない場合にはプロジェクトの遂行に影響を与える可能性があります。
プラント事業・次世代エネルギー開発事業においては、国内製油所を中心にタンク補修工事を請け負っており、工事従事者が不足した場合や資機材の調達価格が高騰した場合、現場監督者の技術の継承が遅れた場合には事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。そのため、パートナー企業との連携強化の一環として、タンク建設やメンテナンス業務において多くの実績を持ち、現場施工に精通した人材を有する木本産業株式会社をグループインしました。また、TKKプラントエンジ株式会社と共同で技術者及び現場監督の増員を進めて、施工体制の強化や人材育成、DXを活用した労働環境の改善に注力しています。またタンク新設プロジェクトへの対応として、受注から施工まで少数精鋭による一貫した管理・情報集約体制を整え、迅速かつ効率的なプロジェクトの遂行を行っております。
当社グループでは、プラント事業・次世代エネルギー開発事業を中心に海外でも事業を展開しており、当社連結子会社のPT Toyo Kanetsu Indonesiaにおいてタンク等の鉄鋼材料の加工や現地工事、Toyo Kanetsu (Malaysia) Sdn.Bhdでは現地空港における手荷物搬送設備のメンテナンス、及び現地石油化学プラント関連設備のメンテナンス事業を行っております。これらの海外事業には以下に掲げるようなリスクが内在しており、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
1.法律又は規制の予期せぬ変更
2.政治経済の不安定性
3.人材確保の困難性
4.不利な税制改正
5.テロ、戦争、疫病、災害、その他の要因による社会的混乱
新型コロナウィルス感染症の影響や地政学リスクの影響による部品等の不足や価格高騰に対し、早期手配に取り組むなどリスク低減を図っております。
プロジェクトの遂行にあたっては案件に応じて製造物責任賠償保険等に加入すると共に、品質を担保するため、当社グループでは社内規定を制定し、品質マネジメントシステムを整備するなど、品質管理を強化しております。また品質問題が発生した場合でも品質管理の主管部門を社長直轄とすることで、迅速な対応を可能とする体制を整備しております。しかしながら万が一製品に重大な品質クレーム・トラブルが発生した場合に は、修繕費用や賠償の発生等によりプロジェクト収益が悪化するのみならず、当社グループの社会的評価の低下に繋がり、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。
③ 人材の確保・育成に関する影響
当社グループでは、人材の確保と育成は重要課題の一つであり、人材の流出や採用コストの上昇は、事業活動に影響が生じる可能性があると認識しております。
そのため、多様な人材確保のため採用対象を多様化させると共に、女性活躍推進行動計画を策定し、女性管理職候補者の育成・登用、時差勤務の利用促進、有給取得率向上、男性の育児休業取得促進などの取り組みを進め、「健康経営@優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されるなど、働きやすい職場環境づくりによる人材の定着化を推進しております。
また、物流ソリューション事業では、エデュケーションセンターにおいて、人材のさらなる技能強化や安全教育指導を実施しております。
④ 受注競争の激化による影響
当社グループの主力事業は何れも受注型産業であり、厳しい受注競争に晒されているため、採算面での不合理な下方圧力に直面した場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、顧客の政 策・方針や、業界の経営環境変化、業界再編の動きは、受注活動に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクに対し、物流ソリューション事業においては、国内外における顧客領域の拡大を進めつつ、外部技術の柔軟な導入による最適なソリューション提供を行うと同時に、製品の内製化、標準化を推し進め、価格競争力を強化しております。また、更なる業務効率向上を図るために社内システムの刷新を行うなどの対策を進めております。
プラント事業・次世代エネルギー開発事業では厳しい事業環境が長期化する中で、コア技術であるタンク EPC(設計・調達・施工)遂行能力を向上・発展させ、品質面での優位性を活かした受注活動に取り組むと共に、海外子会社による事業領域の拡大を図っております。
また、厳しい受注競争の中で、当社グループは持続的企業価値向上と社会の発展に貢献することを目指し、「革新的な技術と実行力で、社会課題を解決するソリューションイノベーター」となることを経営ビジョンとして掲げ、最先端技術を有する国内外の企業やCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を活用したスタートアップとの連携などを通じて、様々な技術開発に取り組んでおります。
しかしながら、製品・技術のライフサイクルが短命化する中で、市場からの要請に対応が遅れた場合には、当社グループの競争力が低下し、中長期的に業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産等の固定資産を保有しています。継続的な業績のモニタリング等により、当該固定資産に対する投資の回収が困難となる前に対策を講じるように努めておりますが、経営環境や事業の状況の著しい変化等により収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、当該資産に対する減損損失の計上により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 新規事業の立ち上げに関するリスク
当社グループは、長きにわたり物流ソリューション事業、プラント事業・次世代エネルギー開発事業を主力事業として展開をし、これまで相互補完的にグループ収益を支えてまいりましたが、これら事業環境の変動幅は大きく、収益のボラティリティが高いと認識しております。
そのため、M&Aの実行や、CVCの立ち上げとスタートアップとの連携など、適切なパートナー企業と様々な可能性について探索しております。M&Aにおいては、対象となる企業の財務や税務、法務などの契約関係及び事業の状況等について事前に社内外の専門家と詳細なデューデリジェンスを実施し、可能な限りリスクの低減に努めておりますが、M&A後に、事業環境に急激な変化が生じた場合やその他予期し得ない理由により当初の計画通りに事業が進展しない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 労働安全衛生に関する影響
当社グループでは、安全をすべてに優先すべき事項と捉え、「労働安全衛生方針」のもと、OHSAS18001・ ISO45001の取得・更新、社長直轄の主管部門の設置、グループ安全会議の開催、現場パトロールの実施、パートナー企業を含めた安全体制の維持・拡充等により、安全衛生の確保・向上に努めております。
しかしながら、このような対策を取っていながらも、事件、事故が発生した場合、工場の稼働や顧客対応に支障が生じるだけでなく、損害賠償の発生、刑事罰や行政処分の執行、社会的信用の失墜などにつながり、事業活動や財政状態に影響を与える可能性があります。
⑦ コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、社会インフラという社会からの信頼なくしては成り立たない分野で事業を行っており、法令等を遵守するコンプライアンスは、信頼される事業活動のもっとも重要な基盤の一つであると認識しております。
そのため、当社ではコンプライアンス委員会の設置や統括責任者の任命など組織体制を整備する他、グループ企業行動憲章をはじめとした諸規程を定め、グループ全取締役及び社員へ社会的責任及び公共的使命を周知徹底し、意識を醸成するなど、コンプライアンスを堅持する取り組みを推進しております。
しかし万が一、国内外の関連法規などに抵触する事態が発生した場合には多額の課徴金や損害賠償が発生するなど、業績及び財政状態に悪影響を及ぼすだけでなく、当社グループの社会的な信用が低下し、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 自然災害・疫病等に関するリスク
当社グループは、火災や地震、大規模な自然災害や疫病の流行等に備え、BCP(業務継続計画)マニュアルを策定し、連絡体制の整備、災害備蓄の実施、国内主要製造・開発拠点における耐震補強工事や避難所の設置、定期的な訓練の実施やBCPに向けた製造機能再編や強化など、事業継続に必要な対策を講じております。しかしながら、想定以上の災害の発生により深刻な物的・人的被害を受けた場合、社員の健康のみならず施設に重大な影響を与え、損害保険の付保による適切なカバーを行なっているものの、直接的・間接的損害や復旧費用などが予想以上に多額となり、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、疾病等の感染拡大による影響は、多方面にわたるリスクとの認識のもと、当社グループでは、感染防止指針や事例別対応マニュアルを策定し、感染拡大への防止策を講じながら、リモートワークの推奨、休暇・補償制度の拡充などの制度面の整備や、電子申請システム、クラウドストレージなどITツールの強化も行っております。
⑨ 情報セキュリティ並びに情報インフラ整備に関する影響
当社グループは、顧客情報や技術情報などの機密性の高いデータを多数取り扱っており、これらの情報資産を適切に保護するため、情報セキュリティ小委員会を中心に体制を整備し、継続的な社員教育を実施しています。2023年4月には、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を取得し、第三者による管理水準の担保にも努めています。
一方、サイバー攻撃の高度化や生成AIを悪用した新たな手法、サプライチェーン全体を標的とする攻撃の増加など、情報セキュリティを取り巻く脅威は複雑化しています。万が一、情報漏洩やデータ破損が発生した場合には、信用失墜、業務停止、法的責任など、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対しては、「ゼロトラスト」の考え方に基づくアクセス制御、通信の暗号化、端末・クラウド環境の多層的な防御策を講じています。また、取引先を含むサプライチェーン全体の安全性確保の観点から、外部宛メールへのファイル添付を原則禁止とし、安全なクラウド型ファイル共有サービス(Box®)に一本化しています。
加えて、当社ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を成長戦略の柱とし、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した業務プロセスの効率化を進めています。老朽化した業務システムについては、安定稼働を踏まえた最新化を図り、柔軟な業務への対応が求められる領域には、従来のシステム化範囲にとらわれず、業務全体を見直した刷新を計画的に進めています。
こうした施策に支障が生じた場合には、業務の停滞やシステム障害による混乱、新たな事業機会の逸失といった経営リスクが生じる可能性があるため、慎重かつ段階的な推進とリスク対応に努めています。
⑩ 市場動向等に関するリスク
物流ソリューション事業では、小売、卸売、生協などの業界を中心に製品・システムを納入しております。また国内空港を中心に手荷物搬送システム等を提供しております。そのため、景気後退や少子高齢化の進展等による物流量の低下などで、物流施設関連への投資が停滞した場合や、航空関連需要の動向によっては、当事業の展開に影響を与える可能性があることから、AI、IoT技術を活用した事業領域の拡大を図っております。
プラント事業・次世代エネルギー開発事業においては、LNGプラントや製油所等に各種タンクを納入すると共に、既設の原油タンク等のメンテナンスを実施しております。そのため世界的な景気動向の他、産油・産ガス国や消費国の経済・社会情勢、各国のエネルギー・環境政策の動向、原油・LNG価格の動向等により、プラントオーナーの投資計画の中止・延期・大幅見直し等が発生した場合には、当事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があることから、安定収益源の確保による受注変動に強い事業体質を確立すべく、メンテナンス案件の収益性向上等の取り組みを強化しています。
また、経済環境が悪化した場合には次のようなリスクを想定しております。
a)為替相場の変動
当社グループの事業活動には、海外における製品の生産、資材の販売、建設工事等が含まれており、主に米ドル建てでの取引が発生します。現時点において、外貨建ての取引高、及び保有資産額は相対的に僅少であるため、為替相場の変動リスクは低いと認識しておりますが、想定外の変動は将来的な当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
b)金利の変動
当社グループは営業債権などによる信用供与、固定資産取得などのため、短期・長期の調達比率のバランスを鑑みながら金融機関より資金調達を行っております。大規模な金融緩和政策などにより、低金利が継続しているものの、金利が上昇する局面においては、資金調達コストが増大し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
c)保有有価証券の評価
当社グループは、時価のある有価証券を保有しております。決算期末日の株価によって再評価を行っており、大幅に株価が下落した場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置付けており、財務の健全性と株主の皆様への利益還元とのバランスを最適化することを基本とした株主還元方針を策定しております。
株主還元方針の内容
・連結配当性向 :50%以上とします。(1株当たり年間100円配当を下限とします。)
ただし、大規模な資金需要が発生した場合にはこの限りではありません。
・連結総還元性向 :連結総還元性向は設定しないものの、業績動向などにより機動的に対応することとします。
・本方針の適用期間:2023年3月期から2025年3月期までの3期とし当該期間終了時点で見直すこととします。
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針とし、これらの剰余金の配当の決定機関については、期末配当は株主総会又は取締役会、中間配当は取締役会としております。
当社は、機動的な資本政策及び配当政策を遂行するため、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当等を取締役会の決議により行うことができる旨を定款に定めております。
当事業年度の期末配当につきましては、株主還元方針に基づき、1株当たり186円とすることを決定しました。これにより年間配当は、中間配当50円と合わせて、1株当たり236円となりました。(連結配当性向50.0%)
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年11月14日 |
389 |
50 |
取締役会決議 |
||
2025年6月26日 |
1,449 |
186 |
定時株主総会決議 |
なお、当社は、2025年5月14日開催の取締役会において、株主還元方針を以下の通り改定する旨決議しております。
・基本方針:経営の重要課題の一つとして、持続的な成長を可能とする戦略投資と、株主への利益還元の最大化をバランスよく実施することを基本とする。
・KFI:株主資本配当率(DOE)を4.0%以上
適用期間:2026年3月期から2028年3月期まで