2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

当社グループに係るリスクについては、経営管理本部長をリスク管理およびリスクマネジメント推進の担当役員として定め、当社およびグループ会社のリスクの分析・評価を定期的に行うとともに監視を継続し、その発生防止に努めています。なお、気候変動を含むサステナビリティに関するリスクはサステナビリティ推進本部長が担当しています。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済、市場の状況

当社グループは事業活動を行っている国内および海外の国・地域の経済状況の影響を受けております。電子市場、一般水処理市場ともに工場操業度、設備投資の動向により需要が変動し、経営成績に影響を与える可能性があります。電子市場では顧客の経営状況により需要が変動し、経営成績に影響を与える可能性があります。さらに米中貿易摩擦の加速により輸出規制や制裁関税措置等が強化された場合は、関係する当社顧客の経営状況に影響し、間接的に当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。気候変動問題対応による顧客の化石燃料関連事業の縮小・撤退、燃料や水資源等の代替、当社設備および当社製品等から排出されるCO2に対する炭素税の導入や増加などにより経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、水と環境に関わる課題にソリューションを幅広い業種の顧客に提供しており、またサービスビジネスへの転換を推進し、安定した収益の確保に努めております。さらに、当社は、関係会社の月次・四半期での業績や方針・施策の展開状況の確認、および内部監査や財務報告に係る内部統制のモニタリングを行うとともに、当社の決裁・審査規程に基づき関係会社における重要事項を当社が決定するなど、関係会社の事業管理に努めております。また、当社グループの事業分野における競合相手との競争激化による製品やサービスの価格下落等により、当社グループの収益性が低下する可能性がありますが、当社グループは(3)に記載のとおり競争優位性の確保に努めております。

 

(2) 資材調達に関する影響、原材料・資材・エネルギーコストの高騰およびサプライチェーンの混乱

当社グループは製品の製造や製作・建設等のために使用する原材料や部品を当社グループ外から調達しております。また、様々な業務を行ううえで必要な役務サービスを当社グループ外から調達しております。これら調達については、クリタグループ行動準則に基づく人権への配慮に加え、クリタグループ調達方針を定め、法令を遵守し、経済・社会・環境に配慮した調達活動を行っておりますが、市況の変化により原材料、部品および役務の価格は変動し、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、新型コロナウイルス等の感染症の拡大やウクライナおよび中東情勢の緊迫化などの国際関係の変化を起因とした水処理薬品の原材料や水処理装置の資材の高騰、エネルギーコスト高騰による物流コストの増加、サプライチェーンの混乱が再燃する可能性がありますが、その場合には販売価格への転嫁、在庫の確保などの対策を講じます。

 

(3) 新技術・新製品・新サービスの開発、ビジネスプロセスの変革

当社グループは、従来に比べ温室効果ガス(GHG)排出削減、節水、廃棄物資源化に大きく貢献するCSVビジネスをはじめ、新技術・新製品・新サービス等の開発により、薬品、装置、メンテナンスの技術・製品・サービスを駆使した総合ソリューションの拡充に取り組んでおります。また近年ではデジタル戦略本部を設置し、新製品・新サービスへのIoTやAIの活用、ビジネスプロセスのデジタル化などデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでおります。これらの開発・変革は不確実なものであり、顧客ニーズに合致した技術や優位性のある製品・サービス・ソリューションモデルをタイムリーに提案できない可能性や、技術革新や顧客ニーズの変化、デジタル技術の進化に追随できない可能性があります。優位性のある新製品・サービス・ソリューションモデルを開発できない場合やデジタルトランスフォーメーションの取り組みが遅延した場合、そして事業を通した顧客における温室効果ガス(GHG)排出削減の取り組みが停滞した場合は、将来の成長と収益性を低下させる等、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

(4) 海外事業展開に係るリスク

当社グループは海外市場における事業拡大を図っております。これらの海外市場への事業展開にあたっては、国内とは異なる、予期しない法律又は規制の変更、政治・経済の混乱、紛争・テロ等のリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループの事業展開地域においては、外務省やコンサルタントからの治安等の情報入手、現地の弁護士、公認会計士等の専門家の活用による法律・規制に関する確認等を実施しております。また、海外への出張者に対しては海外出張ガイドブックによる安全管理教育を実施し、海外駐在員に対しては医療・トラブル時の支援サービス、安全に関する情報を提供し役員・従業員の安全確保に努めております。また、ロシアのウクライナ侵攻、台湾や朝鮮半島の情勢による規制・制裁強化の影響やそれに伴う景気悪化等の間接的な影響も考えられます。

 

(5) 大規模自然災害等

大規模自然災害等により当社グループの事業遂行に直接的または間接的な混乱が生じた場合は、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは、地震、台風、集中豪雨等大規模な自然災害その他の事象を想定したクリタグループBCM(事業継続マネジメント)方針を定め、事業継続計画の策定、当社グループの各拠点および役員・従業員の自宅の水害リスク調査と対策実施、安否確認システムの構築、建物の耐震化、防災用物資の備蓄、役員および従業員を対象とした災害対応訓練等を行っております。

 

(6) 為替変動

当社グループは、海外での企業買収などにより海外売上比率は48.5%になっております。

各海外子会社の現地通貨建の財務諸表は、円換算後に連結財務諸表に反映されております。従って、現地通貨と日本円との為替レートの変動が当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、為替リスクをヘッジする目的で為替予約、通貨スワップ契約等のデリバティブを利用することがあります。

 

(7) 不採算工事発生によるリスク

水処理装置事業における水処理設備において、顧客との契約時に設定する原水条件等の当社グループ側での不備や、設計・施工における過失等に起因する製品・サービスの欠陥や事故による追加原価の発生、またはそれにより顧客へ損害が生じた場合の損害補償の発生の可能性があります。当社グループでは、設計・施工要領書に基づく設計・施工の徹底をしており、工事予算交付前にエンジニアリングレビューという会議体を設置し、その場にて工事単位ごとに品質・コスト・納期・安全・環境等に関する設計の妥当性を確認しております。また受注後から引渡しまで毎月ビジネスプロセスレビューという会議体において、工事進捗度の確認、工事単位ごとの収支管理を行い、工事原価総額の見積りにおいても最新の情報に基づいた見積りを行っております。海外のグループ会社でも同様の取組みを実施しており、大型工事については当社より設計や工程管理に関する支援を行っております。このように、問題情報データの共有等により不適合の未然防止を図っております。

 

(8) 固定資産の減損損失

①のれん及び無形資産の減損損失

当社グループは、海外事業の基盤獲得や競争力のある技術や事業モデル獲得のため、企業買収を実施し、結果として「のれん」の残高は71,001百万円(連結総資産の12.7%)となっております。「のれん」は償却を行わず、毎年又は減損の兆候が存在する場合はその都度、減損テストを実施しております。事業環境の変化等により買収が期待どおりの効果を得られない場合や減損テストにおける将来キャッシュ・フローの見積りと実績に差異が発生した場合は、「のれん」等の減損損失が発生します。減損テストを実施するにあたり、回収可能価額は使用価値により測定しております。使用価値は将来キャッシュ・フローを資金生成単位の加重平均資本コストを参考に決定した割引率で割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの予測期間は5年であり、過去の経験と外部の情報を反映して作成され、経営陣によって承認された事業計画を基礎としております。5年を超える期間については、資金生成単位が属する市場の状況を勘案して決定した長期平均成長率をもとに算定しております。事業計画における売上成長率、その後の期間の成長率および割引率を主要な仮定として使用しており、これら仮定の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社は、当社グループの投融資に関する審査機能を強化するため、経営管理本部副本部長を委員長とする投資委員会を設置しております。同委員会は取締役会や経営会議に付議する投融資案件について、事業計画・投資金額・リスク評価の妥当性、採算性、競争優位性、適法性などの観点から審査を実施し、審査結果や主要論点を取締役会および経営会議に報告することで、当社は十分な検討、議論を経て企業買収の実施を決定しております。また、買収後は(1)に記載の関係会社の事業管理を行っております。

 

②有形固定資産の減損損失

当社グループは、主に超純水供給事業等で顧客工場に事業用設備を設置しております。顧客の事業撤退や工場の休止に伴い固定資産の減損損失が発生する場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、これらの投資決定にあたっては、顧客の事業状況、顧客との契約条件および投資対効果などを慎重に検討しております。

 

(9) 情報システムのセキュリティ

当社グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しており、コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合は、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは情報システム管理方針を定め、ウイルスチェックソフト導入、標的型攻撃メール訓練等の役員・従業員への情報セキュリティ教育や啓発の実施によりコンピュータウイルス対策を強化しております。またセキュリティ事故が発生した際の機会損失を最小限に抑えるため、緊急対応を実行する組織を設置しております。

 

(10)法令・コンプライアンス

当社グループの役員・従業員が法令を遵守できなかった場合や社会倫理に反する行動を起こした場合は、事業活動の制約、罰金、社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、サステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、コンプライアンス活動を単に遵法活動と捉えるのではなく、社会倫理に基づいた行動を全ての企業活動の前提として徹底していくための活動として位置付け、推進しております。

 

(11)製品・サービスの品質および水処理設備のオペレーションエラー

顧客または当社グループの水処理設備のオペレーションにおける人為的なエラー等により基準に満たない処理水を供給または排出することで損害賠償の発生や社会的信用の失墜につながる可能性があります。賠償責任保険の適用を超えるような責任が発生した場合や社会的信用が失墜した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは(7)で記載したように品質マネジメントシステムを構築し、顧客満足向上のため、継続的な改善活動に取り組んでおります。

 

(12)知的財産権

広範囲に事業を展開する中で、当社グループの知的財産権が侵害される可能性や第三者が保有する知的財産権を侵害する可能性があり、こうした場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性がありますが、当社グループは知的財産権の重要性を認識し、国内および海外において、知的財産の権利化、第三者が保有する知的財産権の侵害防止に継続して取り組んでおります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様への安定配当の継続を基本方針としております。

配当性向は連結ベースで30%~50%を目安とし、毎年の業績変動に柔軟に対応するため直近5年間通算での配当性向により判断し、増配の継続に努めます。

当社は、剰余金の配当は、中間配当と期末配当の年2回行うことを基本方針としております。

これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

当事業年度の剰余金の配当につきましては、今後の事業展開を勘案するとともに、株主の皆様のご支援にお応えするため、1株につき84円の配当(うち中間配当42円)を実施することを決定しました。この結果、当事業年度の配当性向は54.8%(連結では32.3%)となりました。

内部留保資金の使途につきましては、投資の規律を守りながら成長が見込める有望事業に優先的に活用してまいります。余剰資金があると判断した場合には、株価の水準も勘案して自己株式の取得等も検討し、資本効率の改善と株主の皆様への還元を図ります。

当社は、「取締役会の決議によって毎年9月30日最終の株主名簿に記録されている株主又は登録株式質権者に対し会社法第454条第5項の規定による剰余金の配当をすることができる。」旨を定款に定めております。

なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年11月7日

4,731

42

取締役会決議

2024年6月27日

4,731

42

定時株主総会決議