2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

当社グループでは、2019年3月期よりグループ全体のリスクマネジメント体制を整備し、リスク管理委員会を中心に、重点領域を設定して対策強化を行うとともに、これらの情報については取締役会に報告する体制としております。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

(1)リスクマネジメント体制

 当社は、社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、当社グループのリスク管理体制の維持・強化を進めております。

 

 

(2)リスク管理プロセス

 リスク管理活動は、下記のPDCAを回すことでリスクの特定と評価を行っています。洗い出されたリスクを、影響度と発生可能性の二軸で評価し、重要リスクと特定した事項について、主管部門を中心に平時における予防措置を講じるとともに、危機発生時に迅速に対応できる体制の確保・向上に努めており、リスク管理委員会では、その結果に基づき、諸対策について審議しています。また、その概要については、定期的に取締役会に報告しております。

 

(3)事業等のリスク

リスク分類

リスク項目

リスク内容

事業環境

キャッシュレス化の急速な進展/現金処理機への高い依存

当社グループは、ソフトウェアプラットフォームやDMP事業などのDX分野を含む新領域事業の拡大に取り組んでおりますが、新領域事業が成長するまでの間に、デジタル通貨の発行など急激なキャッシュレス化がグローバルに、また短期間に進展した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、2026中期経営計画において、リテール・金融及び飲食市場を注力市場とし、ソフトウェアプラットフォームの提供によりお客様の店舗DXのサポートを行うことで、新領域事業の拡大を加速させてまいります。

海外事業展開

当社グループは、海外市場への事業展開を積極的に行っておりますが、戦争や紛争の発生、高率の追加関税など国際情勢の変化による事業活動への影響を含む地政学的リスクに加えて、予想の範囲を超える為替相場や金利の変動、知的財産の侵害等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、世界各地で高まる地政学的リスクの影響を低減する中長期的な事業戦略と生産戦略の立案と推進、また為替相場の変動に備えた為替ヘッジ施策、未来創造と事業収益に直結した知的財産活動により、事業展開を進めてまいります。

各国の法令・各種規制

当社グループは、事業活動を行っている国及び地域において、事業の許認可や輸出入規制のほか、環境関連及びデジタル規制を含む技術に関する法令等の適用を受けております。これらの法令の改廃や新設等がなされ、対応が遅れた場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、各国法規制の動向を調査のうえ、かかる規制等の適用を受ける業務の特定、リスク評価と対応策の実施ならびに社員教育を進めてまいります。

戦略投資

当社グループは、中長期にわたる持続的な企業価値向上を目的として、コア事業の拡大及び新領域事業創出に向けて積極的に経営資源を投入しております。2025年3月期末現在、企業買収に伴い発生した「のれん」及び「顧客関係資産」の金額は、それぞれ連結総資産の15.0%(66,031百万円)及び7.4%(32,877百万円)を占めており、事業環境の変化等により期待した成果が得られない場合には減損損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。また、持分法適用会社となった投資先が事業計画を達成できない場合には、持分法による投資損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、戦略投資委員会規程に基づき、投資先の事業を取り巻く環境の評価を定期的に実施し、取締役会等において報告を行うことで、投資後の管理を確実に行い、投資時のシナリオに沿った成長戦略の推進を行っております。

 

サプライチェーン

当社グループは、天災や事故等によりサプライヤーの生産活動が停止した場合や、特定の部品や原材料等、世界的な需給バランスの崩れにより、納期遅延が発生した場合は、生産に影響が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

また、インフレーション等により部品・原材料の価格が高騰した場合には、原価

が上昇し、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、入手性の高い部品・原材料への切替えや、緊急時の事業継続を目的とした適正在庫の確保など、安定的な生産が可能な方策を進めております。

事業環境

人材の確保

当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、多様な国籍、価値観、専門性等を持つ従業員が働いております。当社グループの中長期的な成長は、これらの人材に大きく依存していることから、優秀な人材、特に新領域事業拡大に必要なDX人材等の確保・育成が中長期的に計画どおり進まなかった場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、競争力の源泉となる人的資本の充実を人材戦略の目標に掲げ、社員エンゲージメントの向上策として、個人と会社の成長が実感できる人材育成と健康経営を中心とした働きやすさの向上や、ダイバーシティの推進、人権の尊重に取り組むことにより、DX人材を中心とした人材の確保・育成に注力してまいります。

事業運営

知的財産権

当社グループは、当社グループ製品による第三者の重要な知的財産権の侵害を防止するとともに、第三者により当社の知的財産権を侵害されないよう他社製品の継続的な調査を行っておりますが、当社グループのような研究開発型企業においては、他社との知的財産紛争が生じる可能性があります。このような事態が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、知的財産部門と事業部門が連携し、知的財産における当社の市場ポジションを示す“IPランドスケープ”を実施することにより、第三者の知的財産権の調査を通して、知的財産紛争発生のリスク低減を図っております。

情報セキュリティ

当社グループは、顧客等の個人情報や機密情報の漏洩等の防止は、必要不可欠の事項と捉え、規程の制定、社内教育の徹底、情報セキュリティシステム構築等の措置を講じていますが、情報漏洩等の事態が発生した場合、当社グループの信用低下につながるだけでなく、顧客等に対する損害賠償責任が発生するおそれがあります。また、当社グループの事業活動において、情報システムの重要性が高まっており、不正アクセスによる事業活動の停止リスクも増大しております。

 

<対応策>

当社グループは、グループCISOを中心に情報セキュリティガバナンスの統制を行い、社員教育の徹底、システムの刷新や運用状況のモニタリング等の対策を継続・強化しております。

 

ソリューションの品質

当社グループは、金融機関や流通店舗、飲食店舗での現金の取扱い等、安定的な運用が強く求められていることから、信頼性の高いソリューションを提供することに注力しております。しかしながら、デジタル技術やネットワーク技術の活用、ソリューションの高度化に伴う不確実要因など、想定外の品質問題の発生もあり得るため、これらが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、品質管理システムに基づき、品質及び安全性の設計・検証を徹底しております。また、保守サービスにおいても、遠隔監視や定期点検により問題発生の未然防止に努めております。品質問題が発生した場合や法規に抵触する可能性のある不具合が発生した場合は、迅速に品質マネジメント担当役員に情報が届くシステムを設定し、対応に遅れが出ないようにしております。

 

資金調達

当社グループは、事業活動の資金を内部資金及び金融機関からの借入れや社債の発行等により調達しています。主に日本、米州、欧州において政策金利の引上げや、格付機関による当社信用格付けの引下げ等が生じた場合には、資金調達コストが増加し、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、資金繰り計画を適時に更新するとともに、銀行借入れや社債発行など資金調達の多様化を進めることにより、流動性リスクの低減を図っております。

環境

気候変動

当社グループは、気候変動問題を喫緊の課題と捉え、事業活動における温室効果ガス排出量の削減や環境配慮型製品の開発等に取り組んでおります。しかし、各国における法規制や要求が予測を超えることにより「移行リスク」が高まった場合、省エネ/再エネ設備への投資や炭素税・排出権取引の導入等によるエネルギー調達コストの増加、さらには販売機会損失や企業ブランド棄損による企業価値低下が発生するなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、気候変動により台風・豪雨等の自然災害が激甚化することにより、「物理的リスク」が高まった場合、自社工場及び従業員の被災や部品調達先の操業停止等の影響を受け、当社グループの事業活動が制限され、業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、「温室効果ガス排出量の削減」をサステナビリティの最重要課題として特定し、国際基準(SBT)に基づくグローバル規模での温室効果ガス排出量の削減目標を掲げ、2050年度の「CO2排出量実質ゼロ(スコープ1・2)」に向けた取組みを推進しております。さらに、バリューチェーンにおける環境負荷(スコープ3)についても、削減目標を設定し取り組んでおります。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しており、今後も引き続き提言に沿った情報開示の充実を図ってまいります。

内部統制

内部統制

当社グループは、財務報告等の正確性を確保するため、業務プロセスの文書化や厳密な内部監査の実施等により内部統制システムの強化に努めておりますが、その内部統制システムが有効なものであっても、従業員等の作業ミスや不正等によって機能しなくなる場合があります。このような事態が生じた場合には、財務情報を修正する必要が生じ、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

<対応策>

当社グループは、2022年2月に発覚した国内子会社における金銭横領事件を受け、経理・財務関連規程や現預金管理の厳正化等の再発防止策の取り組みを通して、グループ全体における内部統制と子会社ガバナンス体制を強化するとともに、コンプライアンス意識の浸透・徹底を図っております。

 

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題と位置づけ、「将来の事業成長への投資、財務体質の維持・強化を図りつつ、安定した配当を継続すること」を基本方針とし、「2026中期経営計画」期間(2025年3月期から2027年3月期)の目標を「2024年3月期の配当金額(1株につき年間106円)を基準とした累進配当及び株主資本配当率(DOE)3%以上」としております。

 

また、当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会または取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めており、中間期及び期末の年2回の剰余金の配当を行うこととしております。

 

上記の基本方針及び目標に基づき、当期の期末配当を1株につき54円とする議案を、2025年6月20日開催の第79回定時株主総会に付議いたします。本議案が原案どおり承認可決されますと、すでに取締役会決議により実施済みの中間配当54円を合わせた年間配当は1株につき108円となり、株主資本配当率(DOE)は3.5%となります。

 

2026年3月期及び2027年3月期につきましては、目標として定める「2024年3月期の配当金額(1株につき年間106円)を基準とした累進配当及び株主資本配当率(DOE)3%以上」に加え、「総還元性向 100%以上」を目標に追加いたしました。また、次期の配当につきましては、基本方針及び変更後の目標に基づき、1株につき112円(中間配当56円、期末配当56円)とする予定です。

なお、連結財務諸表「注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおり、自己株式の取得(取得価額の上限:150億円/取得株式の上限:600万株)につき、2025年5月13日開催の取締役会において決議いたしました。本決議に基づき取得した自己株式につきましては、取得終了後、その全数を消却する予定です。

 

 

 また、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年11月7日

3,027

54

取締役会決議

2025年6月20日

3,121

54

定時株主総会決議(予定)