2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 

1.当社のリスク管理体制

 当社は、当社グループの事業活動に関するリスク管理を所管するコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、毎月1回開催することにより、リスク管理のグループへの推進と情報の共有化を図り、リスクへの迅速な対応とリスク顕在化の回避及び軽減等の決定を行っております。委員は、社外取締役を含む全取締役で構成されており、取締役会が定めたリスク管理規程に従って、事務局である法務部を所掌する執行役員がコンプライアンス・リスク管理統括責任者に指名されリスク管理体制の運用に当たっています。

 当社グループは、リスク・リストを定め、各リスク分野を所掌する部署は、各々の職務分掌に基づいて担当職務ごとにこれらのリスクを管理(リスク・マッピング)し、重要度と脆弱性が高いと分類されたリスクについては、優先的に対策を立案し、随時実践して行くこととしています。

 また、リスク管理規程に基づくリスク管理情報報告の制度の下、日常の事業活動の中で各部署あるいは各グループ会社で認識されたリスクは、随時コンプライアンス・リスク管理統括責任者に報告されることとしています。認識されたリスクについては、コンプライアンス・リスク管理委員会にて社外取締役からも助言や指導を得て、対策の立案と推進に活かしています。

 

2.事業等のリスク

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性のある主要なリスクは以下のとおりです。これらは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。また、特定された主要なリスクに対して講じている各々の対応をしても全てのリスクの発生を排除することができず、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断したものです

 

(1)気候変動に関連するリスク

 気候変動にかかるリスク及び収益機会が当社グループの事業活動や収益等に与える影響等については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)環境への取組」をご覧ください。

 

(2)天候・災害等について

 当社グループの主力製品は、製氷機、冷蔵庫等ですが、用途の特性上需要期の天候が業績に影響を及ぼします。また、地震・風水害等の大規模自然災害、テロ等の人為的災害及び感染症等が発生した場合、当社グループの設備、情報システム、取引先等の操業等に影響が出る可能性があります。このような災害発生時には、当社グループの生産活動及び販売活動に大きな影響を与え、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型コロナウイルス感染症などの重大な感染症が拡大した場合、当社グループの生産・営業活動等に影響を与え、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 自然災害等への備えとして、BCP(事業継続計画)を策定すると共に必要な保険を付保して、災害等発生時にも事業及び財政状態等への影響を最小限に抑えています。

 感染症に対しては、コロナ禍での学びも活用して感染防止に努めると共に、生活様式やマーケットの変化に対しては新たな市場や需要の開拓により対応することにより、経営成績等への影響の極小化、ひいては好影響を与えられるように引き続き努めていきます。

 

(3)製品の品質について

 当社グループが生産している製品及び他社仕入商品については、高品質な製品を安定供給するという基本方針の下、厳重な品質管理をして出荷しています。しかしながら、万一、市場クレームの発生等によって想定を超える品質問題が発生した場合には、製品・部品の不具合点検と交換による費用が発生することに加え、企業イメージや社会的評価が低下する可能性があり、その場合には当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社は、品質保証部が、全社的立場から品質改善や品質管理を徹底・強化すると共に、グローバル製造部による海外各国の製造拠点に対する製造品質支援も定着し、さらなる品質向上に努めています。万一品質問題が発生したときは、品質保証部、法務部その他の関係部署が連携して解決に万全を期す体制を整備すると共に、PL保険(生産物賠償責任保険)を付保して財政状態等への影響を軽減する措置を取っています。また、海上輸送や国内輸送中に生じ得る製品等の毀滅リスクを低減すべく、保険会社の知見を活用したloss prevention(損失予防)活動を強化しています。

 

(4)原材料・部品の調達について

 当社グループの製品における原材料、部品等は、市況の変動等により調達価格が高騰した場合は製造コストに影響を及ぼします。製造コストの低減や製品価格への転嫁が困難な状況においては、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 加えて、新型コロナウイルス感染拡大で顕在化した世界的サプライチェーンの混乱や中国ロックダウン等に起因する部材の調達難が起こった場合には、当社の製品製造にも相当の影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社のサプライチェーンにおいて不適切な対応に基づく環境や人権問題が発生した場合、顧客との取引の停止や行政罰、また、社会的信頼の喪失につながる可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社グループは、市況の変動等による原材料価格の変動リスクを吸収し得る製造原価低減策やIT投資による製造業務効率化施策及びその他の経費節減を継続し、高利益体質への強化を引き続き図ってまいります。

 また、半導体等部材の調達懸念に対しては、代替可能材料や部品を積極的に取り入れています。その調達先も複線化する等グローバルで見直し、部品の確保等により需要回復に対応した増産に努めています。また、部材価格や物流費の高騰に対しては予実管理を強化すると共に、自社努力のみでは収益性の改善は困難と判断した場合は、製品価格の改定を実施していきます。

 当社グループは対処すべき重要な課題の一つに持続可能なサプライチェーンマネジメントを掲げ、環境や人権に配慮した責任ある調達活動を目指しています。また、EUを始め各国で制定されつつある人権デュー・ディリジェンスの法令化に対応し、契約への反映等コンプライアンスの徹底を目指しております。

 

(5)価格競争について

 当社グループを取り巻く事業環境は、フードサービス産業における競争が激化するなか、競合他社との競争が大変厳しくなっております。当社のコスト低減レベルを超えて低価格競争が激化した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社グループは、製品の品質、コスト(労務費、物流コスト等を含む)、技術・サービス等のあらゆる面で、継続的かつ積極的に競争力の向上に努めています。特に、より高品質で独創的な、環境保護性能に優れた製品(例:自然冷媒を使用した業務用冷凍・冷蔵庫)や省エネ・省力化に寄与する製品(例:「ホシザキ コネクトWi-Fi」等)の提供により他社との差別化を推進し、市場シェアの拡大を目指しています。また、各地域の需要動向、製造コスト等を総合的に勘案した上で、製造拠点や供給方法の最適化を進めていきます。

 

(6)情報セキュリティについて

 当社グループは、事業活動を通じて、取引先等の個人情報あるいは機密情報を入手することがあります。これらに加え、技術、契約、人事等に関する当社グループの機密情報について、サイバー攻撃等による不正アクセスや保存情報の破壊、漏洩等が発生した場合には、当社グループの事業継続に支障が生じる等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社は、情報セキュリティ管理について、適切な技術対策、社内管理体制の整備、社員への教育等の対策の実施を進めています。技術的には、従来の入口対策(不正アクセスや不正ソフトウェア等の侵入を防ぐ対策、暗号化通信によるネットワーク環境の提供、会社指定デバイス以外からのネットワークへの接続を制限するなどの対策)に加えて、システム・ネットワーク監視や出口対策(機密情報等の外部流出防止対策)を導入し運用しています。また、標的型攻撃メール等のセキュリティ・インシデントを想定した訓練を実施しています。2022年以降新たにグローバルでのサイバー保険を付保し、インシデント発生時にも事業及び財政状態等への影響を最小限に抑えています。

 

(7)法的規制等について

 当社グループは、事業活動を行う国や地域において、食品衛生規制、環境保護規制、贈収賄防止法、投資許認可、安全規制、輸出入規制、人権や労働関係法制等の様々な政府規制の適用を受けています。また、経済関連法令の主なものとして、独占禁止法、知的財産権に関する法令、法人税、関税、付加価値税等多岐に渡るものがあげられます。とりわけ環境保護関係では、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、有害物質の使用、廃棄物処理、製品リサイクル等を規制する様々な法令の適用を受けております。

 このような規制を遵守できなかった場合、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社ではコンプライアンスをコア・バリューの一つと位置付け、法務部を中心に法令遵守を徹底する活動に力を入れています。万一、法令違反、不適合等の問題が発生した場合には、適切に解決する体制を強化する一方、毎年、強化すべきトピックスを取り入れたコンプライアンス研修を当社グループ全社員向けに実施しています。また、法制動向をタイムリーに把握して法改正時には関係者に要点を周知徹底することによって意識と知識の向上に努めています。なお、法令違反や不適合などの行為については内部通報制度などでこまめに拾うことによって、人づくり・仕組みづくりに生かしています。

 

(8)知的財産権について

 当社グループが生産・販売する製品に関連して保有する知的財産権を、第三者が不正に使用して類似製品を製造、販売することを完全には防止できない可能性があります。一方、当社グループが製品を開発する際は、第三者の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、第三者から侵害訴訟を提起された場合、当社グループの信用低下や損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社グループは、技術企画部が中心となって知的財産権を管理し、当社の知的財産を保護し、第三者の知的財産権の侵害を防止する体制を取っています。特に当社グループの製品や技術の模倣に対しては、特許、意匠、商標などの知的財産権の活用及び不正競争防止法等に基づく排除も含め、厳正に対応しています。2023年には、中国で発見された当社製品の模倣品について、当局より当社ロゴに類似したロゴの使用中止命令を含む行政処分が下されました。

 

(9)重要な訴訟事件等について

 当社グループの事業活動に関して重要な訴訟その他の法手続が提起又は開始されるリスクは皆無ではありません。当報告書作成の時点では、重要な訴訟等はありませんが、万一、将来提起された訴訟等において不利な判断がなされた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社では、法務部にグローバル法務の豊富な知見を有する人材を採用、配置し、紛争処理、紛争予防及び渉外法務を3本柱として法務体制を強化しています。

 

(10)企業買収等について

 当社グループは、既存の事業基盤の拡大やシナジーを創出するため、あるいは新たな事業分野への進出のために、企業買収や事業提携を行うことを成長戦略の一つとして位置付けております。その実施に際しては十分な検討を行いますが、買収後の事業計画が当初の計画通りに進捗しない場合には、のれん等の減損処理あるいは多額の資金投入が発生し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社グループは、企業買収等を行う場合、買収前には、外部専門家によるデュー・ディリジェンスの実施や事業計画の妥当性検証を十分に行うことによってリスク軽減を図るとともに、買収後には、想定した効果を創出すべく組織力を積極的に発揮し、PMI(post-merger integration)を推進して事業計画の達成に取り組んでおります。

 

(11)政治経済の状況について

 当社グループが事業活動を行う主要な市場における政治経済の状況や変動は、当社グループ製品の主な販売先であるフードサービス産業、流通業界等の企業業績動向に影響を及ぼします。特に、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ情勢を始めとした米州、欧州、アジア各国における地政学リスクの高まりや、各国の物価上昇や金融・経済政策の影響による経済環境の悪化等は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社グループは、国内及び海外における政治、経済及び社会のリスクをグループ会社ごとに見える化し、各種のリスクに適時適切に対応することにしています。

 

(12)為替相場の変動について

 当社グループは需要地生産を中心としているため、輸出入取引に係る為替相場の変動による影響は限定的ですが、部材の調達等を外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によっては製造コストや売上高に影響を及ぼす可能性があります。また、連結財務諸表の作成にあたって、各グループ会社の現地通貨建ての売上、費用、資産、負債等の項目を円換算しているため、換算時の為替レートによりそれらの項目の円換算額が影響を受けます。加えて、当社が保有する外貨建預金や海外の関係会社に対する投資を換算する際の為替相場の変動は、当社グループの財政状態、包括利益を含む経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 当社が保有する外貨建預金や海外の関係会社に対する投資については、主要な通貨別の為替換算による影響額を継続的にモニタリングし、ポジションを見直す等随時必要な措置を取って為替リスクの低減を図っています。

 

(13) 人材確保、育成について

 当社グループは、2023年12月末現在において内外拠点に研究開発人員を約550名、国内販売会社に営業人員約2,900名、サービススタッフ約2,600名を擁し、グローバルに技術、製造、販売、サービスの各部門に配置するプロフェッショナル人材及び経営人材を重要な人的資本と位置付け、その育成、拡充に力を入れております。労働人口が減少傾向にあるわが国を始め、関係各国の労働市場において人材の確保のための競争は激化しており、優秀な人材の採用や育成、雇用の継続が困難になった場合は、結果として当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

 人材確保、育成にかかるリスクへの対応については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご覧ください。

配当政策

3【配当政策】

当社は、利益配分を経営上重要な政策として認識しており、将来にわたる安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保の充実を図るとともに、当社及び当社グループの財務状況、収益状況等を総合的に判断し、株主の皆様に安定的に利益還元を行うことを基本方針としています。

なお、株主還元については、総還元性向40%以上を目標とし、継続的かつ安定的な配当を維持しつつも、利益成長に応じた株主還元を行い、株価水準や投資計画及び資本効率などを総合的に勘案し、柔軟かつ機動的な自己株式の取得も検討することとしております。

当期の期末配当金は、基本方針に基づき、1株当たり65円といたしました。なお、当社は株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図るため、2022年7月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。中間配当(1株当たり30円)とあわせ、1株当たり95円の年間配当金となり、株式分割後に換算すると前期実績から実質的に25円の増配となりました。

次期の配当金(予想)につきましては、1株当たり中間配当45円、期末配当50円としております。

また、当社は「取締役会の決議により、毎年6月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

当事業年度の配当に関する取締役会の決議日及び配当金の総額並びに1株当たりの配当額は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年8月10日

取締役会決議

4,346

30.00

2024年2月13日

取締役会決議

9,416

65.00