2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 188,535 100.0 25,000 100.0 13.3

事業内容

3【事業の内容】

 当社グループは、ロジック半導体市場の中で、「ソリューションSoC」という新しくかつ独自のビジネスモデルのもとで顧客にカスタムSoCを開発・提供しているファブレスの半導体ベンダーです。新しいサービス/製品の差別化のために独自の先端SoCを必要とする顧客のパートナーとして、また、IP(※1)、EDA(※2)ツール、ソフトウエアからプロセス、アセンブリ、テストに至るまでの最新の技術を提供する半導体のエコシステムを構成するサプライヤーと協働して、顧客、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会を実現することを目指しています。

 当社グループは、従来、顧客から受領したSoCの仕様に基づき物理設計のみを担う従来型のASIC(※3)や、分野・アプリケーションを限定して機能・目的を特化させた汎用的なASSP(※4)を中心に事業を展開しておりましたが、2019年3月期以降、従来型のASICおよびASSPに加え、自社製品における差別化を求める顧客に対して、顧客とともに仕様の策定や論理設計を行い、先端テクノロジーを組み合わせて顧客にとって最適なSoCを提供するビジネスモデルへのシフトを進め、この「ソリューションSoC」ビジネスモデルによるカスタムSoCを中心に事業を展開しております。

 カスタムSoCには主として3つのビジネスモデルが存在します。まず従来型ASICでは、アーキテクチャ設計、企画・仕様設計および論理設計等SoC設計における上流設計を顧客自身が行い、それ以降の工程を外部のカスタムSoCベンダーが担当します。そのため、従来型ASICは上流設計を自ら行う能力を有する顧客に利用が限定されます。他方、当社グループの「ソリューションSoC」ビジネスモデルでは、当社グループが顧客とともにこれらの上流設計を行うため、上流設計を行う能力を保有していない顧客にも製品を提供することができます。また、ASSPをベースにカスタマイズされたASICを提供するモデルでは、ベンダー自身のASSPをベースとしてカスタマイズするため、カスタマイズの幅が限定されるとともに、顧客からはベンダーロックイン(※5)への警戒感が生じることとなります。これに対し、「ソリューションSoC」ビジネスモデルでは、外部ベンダーが提供する最先端の技術も活用し、顧客に最適なSoCを提供しつつ、ベンダーロックインを回避することができます。

 

 

 近年、半導体製造技術の進展やこれを使ったネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、今までにない新たなサービスや製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を開発する企業は、自社のサービス/製品の差別化のために先端テクノロジーを活用した高性能かつ拡張性の高い独自のSoCを必要としています。

 一方で、半導体産業においては、プロセス技術(※6)、パッケージング技術(※7)、テスト技術のほか、IP/EDAツール/ソフトウエアまでも含めてそれぞれを専業にする企業が出現し、常に最先端のイノベーティブな技術が生み出され、誰もがその最先端の技術を市場から入手することが可能なエコシステムへと進化を遂げています。その一方で、それらの様々な技術を選択し、組み合わせて顧客にとって最適なSoCを設計開発する難易度は上昇しています。

そのため、独自のSoCを必要とする多くの企業は、SoCのアーキテクチャに対する知識はもとより、SoCが搭載される最終製品やサービスに関する理解が深く、差別化のために、先端のハードウエアからソフトウエアに至るまでの技術を組み合わせて最適なソリューションを提案できるパートナーを求めています。

こうした市場の変化の中、当社グループは、ソフトウエアからサブシステムまでも含めたカスタムSoCの設計開発能力を有し、顧客と共同して技術的課題を解決できるエンジニアリソース群を抱えていることに加えて、量産/品質保証/SCMまでトータルにサポートできる総合力を有しているといった強みを持っております。これにより、従来型のASIC、ASSPおよびASSPをベースにカスタマイズされたASICでは満足できない顧客に対して、顧客とともにSoCの仕様を決めていく共同開発プロセスを通じて、顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるビジネスモデルとして「ソリューションSoC」を確立しました。また、こうした新たな最先端の市場で経験を積み重ね、ノウハウを蓄積すると同時に、競争力をさらに強化するため、差別化のための先端技術や種々の技術の組み合わせとその実証にも積極的に投資するとともに、事業部ごとの壁を取り除き、開発機能ごとに集約し、その中から各プロジェクトに必要なリソースを割り当てていくフラットな研究開発体制へと移行しました。また、大規模先端技術分野のモデルプロジェクトを通じた開発基盤構築に取り組む組織として、グローバルリーディンググループを設けました。「ソリューションSoC」ビジネスモデルに相応しいコンピュータアーキテクチャベースの開発基盤と標準的な開発プロセスの構築、開発の効率化/可視化、開発マネジメント改革を一体として実現する取り組みを進めています。これらの結果、7nm以細の先端プロセスノード(半導体の製造技術(半導体プロセス)の世代を表す指標。1nmは100万分の1mmであり、nm数が小さくなるほど先端のテクノロジーを表す。)を活用する案件がNRE売上(※8)に占める割合は、2025年3月期には74%になりました。

 また、ビジネスモデルのシフトに加え、注力する事業領域に関しても、それまでのテレビ等のコンシューマ向け中心の分野から、「オートモーティブ」「データセンター/ネットワーク」「スマートデバイス」といった先端分野へと大幅な転換を果たしました。

当社グループは、AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)や車載センシング等の「オートモーティブ」、データセンターやAIアクセラレータ等の「データセンター/ネットワーク」、アクションカメラやネットワークカメラ等の「スマートデバイス」等の先端分野を注力分野としております。また、FA(Factory Automation)機器や計測機等の「産業機器」の分野でも先端テクノロジーの活用、「ソリューションSoC」ビジネスモデルへの需要が拡大する傾向にあり、今後は「産業機器」についても当社グループの注力分野として位置付けることとします。これらの注力分野に加え、特異な技術で今後の成長が期待できる電波式測距センサー等の「IoT&レーダーセンシング」分野でも事業を展開しております。

 半導体製品が顧客に採用され量産に至るまでには一般的に長い期間が掛かります。商談獲得後の設計開発および顧客の評価完了から量産開始まで通常2年以上を必要とし、さらに量産を終了するまでには相当の期間が掛かります。このため、顧客の基幹部品を長期間にわたって開発、供給する責任を有する企業として、強固な財務基盤のもと事業を行っております。

 当社グループは、設計開発段階において、顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領し、量産段階において、当社グループの売上全体の大半を占める製品売上を受領しております。また、当社グループは、水平分業が進む半導体業界のメリットを最大限活かすべく、工場を持たないファブレスの事業形態を採っております。製品の製造についてはTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(以下「TSMC」という。)をはじめとするファウンドリやOSAT(※9)等の専業メーカに委託しております。

 顧客の最先端の製品やサービスには、常に新たなSoCが求められ、そのような先端SoCを求める顧客や市場も変化し続けます。当社グループもこの変化をいち早く捉えるべく、先行開発投資や開発力の強化を進め、今後も常に持続的な成長を目指します。

 

※1.IPとは、Intellectual Propertyの略語であり、半導体業界においては、半導体を構成するための部分的な機能単位でまとめられている回路情報のことです。外部から購入する調達IPと自社で開発を行う自社IPとに分けられます。

2.EDAとは、Electronic Design Automationの略語であり、半導体の設計作業を自動化して行うソフトウエアやツールです。

3.ASICとは、Application Specific Integrated Circuitの略語であり、特定の顧客向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称です。

4.ASSPとは、Application Specific Standard Productの略語であり、分野・アプリケーションを限定して、機能・目的を特化させた大規模集積回路のことです。ASSPは、特定の顧客用にカスタマイズされておらず、顧客を限定しないため、複数の顧客に提供する汎用部品です。

5.ベンダーロックインとは、特定ベンダーが提供する製品やサービスを一旦採用してしまうと、将来他のベンダーが提供するよりよい製品やサービスへの乗り換えが困難となり、顧客側の選択肢が限定されることをいいます。

 

6.プロセス技術とは、半導体の製造工程のうち前工程と呼ばれるシリコンウエハに回路を形成するまでの工程における技術のことです。

7.パッケージング技術とは、半導体の製造工程のうち後工程と呼ばれる半導体チップを外部から守るパーツで保護し、かつ電気的に接続するための工程における技術のことです。

8.NRE売上とは、Non-Recurring Engineering 売上の略語であり、製品の量産化前の開発段階において顧客から受け取る売上のことを指します。NRE売上は、人件費、IP、設計ツール、レチクル(半導体製造の露光工程で使用され、設計した回路をシリコンウエハに転写するためのフォトマスク)、試作品製造等といった、開発段階で発生する設計開発コストに対応し、通常、開発のマイルストーン進捗に応じて複数回にわたって計上されます。

9.OSATとは、半導体製造の後工程における請負製造サービス(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)の略語です。

 

 

 事業の系統図は以下のとおりです。

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態および経営成績の状況

a.経営成績

 当連結会計年度における世界経済は、インフレ圧力は緩和されつつあるものの、地域による温度差が生じています。具体的には、欧州や日本では、中国の内需低迷の影響による輸出需要が減少するなど厳しい状況が続きました。一方、米国では、個人消費の改善や設備投資を含む需要の拡大を背景として経済は堅調に推移しました。なお、為替相場においては、米国の金利引き下げペースの鈍化により日米の金利差が縮まりにくくなることを背景に円安が進みました。

 

 当社グループにおいては、2018年4月以降、ビジネスモデルの転換、グローバルな大型商談が見込まれる成長分野/先端分野へのシフト、さらに大胆な事業体制の変革等の構造改革を進めてきました(「第一の変革」)。その結果、注力分野であるオートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス分野を中心に多くの大型商談を獲得しております。年間の商談獲得金額(1米ドル=100円で換算)は、構造改革以前は1,000億円程度でしたが、構造改革後は2,000億円程度へ、2023年3月期は2,500億円程度に達し、2025年3月期は約3,000億円規模へと拡大しました。また、獲得した商談の量産が徐々に始まり、確実に売上拡大に繋がっております。

 さらに、競争力のある開発体制の構築やグローバル企業に相応しい組織風土を目指す「第二の変革」を進めております。グローバルな顧客、半導体エコシステムを構成するプレーヤー、投資家等とのコミュニケーションを通じて、社内の体制、組織の構造、従業員の意識を変える取り組みを強化しております。

 

 先端技術分野のモデルプロジェクトの開発および開発基盤構築に取り組む組織であるグローバルリーディンググループを中心に、「ソリューションSoC」ビジネスモデルに相応しいコンピュータアーキテクチャベースの開発基盤と標準的な開発プロセスの構築を進めてきました。また、これと並行して、開発の効率化/可視化、開発マネジメント改革を一体として積極的に推進してきました。

 

 半導体関連サプライヤーが集中する台湾において、委託先の生産を管理するチームを現地(台湾)に配置することでダイレクトインターフェースを構築しました。これにより、サプライヤーとの連携がより強固なものとなり、製造委託先の供給状況の変化にも迅速に対応する体制が整いつつあります。

 

 ここ数年の大型先端開発案件の商談獲得に伴い、半導体業界を取り巻くエコシステムを形成するグローバル企業との関係強化を進めてきました。特に、北米や台湾等に本社を置くグローバル企業とのマネジメントレベルでの関係構築/強化により、これらの企業との先端技術分野での共同開発プロジェクト等の進捗がありました。

 

 当社グループにおける研究開発は、注力分野における商談獲得に繋げるための先行開発と、獲得した商談の製品開発から構成されております。当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度比12.3%増の59,821百万円となりました。これは主に獲得した商談の製品開発が増加していることによるものであります。先行開発では、日々進化する半導体エコシステムにおいて最新の技術を活用するために、Arm Holding plc(Arm社)およびTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC社)とも密に連携し、2nm以細のプロセステクノロジー、チップレット等の先進的なパッケージング技術、最新設計ツールの実用化およびプラットフォーム化等に積極的に取り組んでおります。また、Arm社のアーキテクチャ採用のTSMC社の3nmプロセステクノロジーを使用したハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)プロセッサーSoCの開発、Google社との量子コンピューティング向けSoCの開発等も順調に進んでおります。さらに、インド電子情報技術省(Ministry of Electronics and Information Technology, MeitY)の主要な研究開発機関であるCentre for Development of Advanced Computing(C-DAC)およびMosChip Technologiesと提携しました。加えて、北米を中心に複数のデータセンター向けSoC商談を獲得しており、それらの開発も開始しております。

 今後は、引き続き、設計開発へのAI導入等にも取り組んでいきます。

 

 また、当社グループでは、優先的に取り組むマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ活動を推進しております。当連結会計年度においては、個々のマテリアリティの実現に向けた取り組みの結果として「脱炭素経営ランキングGX500」への選出、「日経スマートワーク経営企業」および「日経SDGs経営企業」としての認定を受けるなど、社外からも一定の評価をいただくことができました。

 

 当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高は188,535百万円(前連結会計年度比14.8%減)となりました。当社グループの売上は、量産段階で受領する製品売上と、設計開発に要する費用を段階的に受領するNRE売上から構成されております。製品売上は、中国の5G基地局向け商談における特需の終了やデータセンター/ネットワーク分野での中国市場における通信機器などの需要減少により、146,578百万円(前連結会計年度比19.8%減)となりました。NRE売上は、オートモーティブおよびハイエンドカメラでの7nmより微細な先端テクノロジーの開発案件が重なったこともあり、41,019百万円(前連結会計年度比9.1%増)となりました。

 

 また、売上原価は84,616百万円、先端テクノロジーを使用した開発案件の増加および円安影響により販売費及び一般管理費は78,919百万円となり、営業利益は25,000百万円(前連結会計年度比29.6%減)となりました。これに営業外収益・費用を加え、経常利益は25,118百万円(前連結会計年度比32.3%減)となりました。特別利益1,790百万円は、第2四半期に計上した高蔵寺事業所の売却による固定資産売却益であります。特別損失1,531百万円は、第4四半期に計上したオートモーティブ分野の特定顧客の事業撤退方針決定に伴い、当社が保有する技術資産が遊休資産となったことによる減損損失であります。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は19,600百万円(前連結会計年度比25.0%減)となりました。

 当連結会計年度の1米ドルの平均為替レートは152.6円、前連結会計年度比8.0円の円安となりました。

 

 なお、当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は行っておりません。

 

b.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は126,290百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,611百万円減少しました。これは主に、売上高の減少により、売掛金および棚卸資産が減少したことによるものであります。

 固定資産は44,022百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,917百万円減少しました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクル、テストボード、設計開発環境の増強およびⅠPマクロ等の設備投資がある一方、減価償却費の増加、高蔵寺事業所の売却および技術資産の減損によるものであります。

 この結果、総資産は170,312百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,528百万円減少しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は31,271百万円となり、前連結会計年度末に比べ21,823百万円減少しました。これは主に、売上高の減少により、買掛金および有償支給に係る負債等の減少によるものであります。

 この結果、負債合計は33,266百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,554百万円減少しました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は137,046百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,026百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益19,600百万円、配当金の支払額8,952百万円および自己株式の取得5,000百万円(2,016,500株)によるものであります。

 この結果、自己資本比率は80.47%となり、前連結会計年度末から10.35ポイント増加しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は72,837百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,099百万円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは31,866百万円の収入(前連結会計年度は52,882百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益25,377百万円、減価償却費16,237百万円および法人税等の支払額8,551百万円によるものであります。

 

 投資活動によるキャッシュ・フローは14,552百万円の支出(前連結会計年度は23,155百万円の支出)となりました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクル、テストボードおよび設計開発環境の増強等の有形固定資産の取得による支出12,758百万円、IPマクロ等の無形固定資産の取得による支出3,821百万円および固定資産の売却による収入2,363百万円によるものであります。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローは13,825百万円の支出(前連結会計年度は6,624百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額8,952百万円および自己株式の取得による支出5,000百万円によるものであります。

 

 当社は、顧客の需要変動および世界景気の減速や地政学リスクの高まり等に対応して、借入枠20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

③生産・受注および販売の実績

 当連結会計年度における生産実績、受注実績および販売実績は次のとおりであります。

 なお、当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

a.生産実績

 当社グループは、ファブレスモデルのビジネス形態となっており、製品の製造については、製造委託先(ファウンドリ、OSAT)へ委託しております。当社グループ製品は、顧客の特定製品向け専用で設計し搭載されるものが主であり、受注生産を行っていることから、生産実績は販売実績と概ね同等の金額となるため、生産実績の記載は省略しております。

 

b.受注実績

 当社グループは、商談獲得後、設計開発業務に係る受注を受けて設計開発を開始し、開発終了後にサンプルを製作の上、顧客に提供し評価を受けます。設計開発開始後、顧客の評価完了までの間、受注した設計開発業務に係る売上が段階的に計上されます。顧客により製品の性能等に問題がないことが確認されると、製品の量産段階に移行し、顧客の買取責任が発生する形で製品の量産に係る受注を受け、当社グループは製造委託先へ製造を委託します。当社グループの当連結会計年度における設計開発および製品の量産に係る受注高および受注残高は以下のとおりです。受注高については、2026年3月期に量産に入る新商品の受注が入り始め前年度比増加となりました。受注残高については、半導体不足時における顧客の先行手配の影響で、前連結会計年度は顧客側での発注調整が行われましたが、当連結会計年度でも調整の影響が残っており前年度比減少となりました。なお、下記の受注高および受注残高は、当社グループの経営指標である商談獲得金額および商談獲得残高とは算定方法および基準時点が異なります。

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

受注高 (百万円)

114,307

171,045

49.6%

受注残高(百万円)

175,124

156,802

△10.5%

 

c.販売実績

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

売上高 (百万円)

221,246

188,535

△14.8%

(注)主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合

 ・CRS TECHNOLOGY Co., LTDへの前連結会計年度および当連結会計年度の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、60,171百万円、27.2%および、30,488百万円、16.2%であります。

 ・加賀FEI株式会社への前連結会計年度および当連結会計年度の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、56,408百万円、25.5%および、50,169百万円、26.6%であります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

a.売上高

 当連結会計年度の売上高は188,535百万円(前連結会計年度比14.8%減)となりました。うち「製品売上」は146,578百万円(前連結会計年度比19.8%減)となりました。中国の5G基地局向け商談における特需の終了やデータセンター/ネットワーク分野での中国市場における通信機器等の需要減少により減少しました。「NRE売上」は41,019百万円(前連結会計年度比9.1%増)となりました。オートモーティブおよびハイエンドカメラでの7nmより微細な先端テクノロジーの開発案件が重なったこともあり、対価としてのNRE売上が増加しました。今後、開発が完了し顧客での評価後量産段階に移行した場合には製品売上高の増加に貢献することが見込まれます。「その他」は知的財産のライセンスによる収入が増加しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

製品売上 (百万円)

182,876

146,578

△19.8%

NRE売上(百万円)

37,609

41,019

9.1%

その他  (百万円)

761

938

23.3%

売上高合計(百万円)

221,246

188,535

△14.8%

 

b.売上原価・販売費及び一般管理費並びに営業利益

①売上原価

 当連結会計年度の売上原価は84,616百万円、売上総利益は103,919百万円(前連結会計年度比5.5%減)となりました。主に、製品売上の減少による売上総利益の減少によるものです。売上原価率は、製造委託先の能力確保のための一時的なコスト負担が減少したことや、品種構成の変動により減少しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

売上原価率

50.3%

44.9%

△5.4ポイント

売上総利益(百万円)

110,003

103,919

△5.5%

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 売上原価率:売上原価/売上高×100

 

②販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は78,919百万円(前連結会計年度比4,426百万円増)となりました。先端テクノロジーの開発が進んだことから研究開発費は59,821百万円(前連結会計年度比6,542百万円増)、研究開発費を除いた販売費及び一般管理費は19,098百万円(前連結会計年度比2,116百万円減)であります。

 

③営業利益

 当連結会計年度の営業利益は25,000百万円(前連結会計年度比10,510百万円減)となりました。主に、売上高の減少によるものです。当連結会計年度の1米ドルの平均為替レートは152.6円、前連結会計年度に比べて8.0円の円安となりました。

 

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

営業利益(百万円)

35,510

25,000

△29.6%

営業利益率

16.1%

13.3%

△2.8ポイント

EBITDA(百万円) ※

48,906

41,237

△15.7%

 ※ EBITDAは、「営業利益」および「減価償却費」を合計して算出しております。

 

c.税金等調整前当期純利益

 当連結会計年度の特別利益は1,790百万円となりました。第2四半期に計上した高蔵寺事業所の売却による固定資産売却益であります。

 当連結会計年度の特別損失1,531百万円は、第4四半期に計上したオートモーティブ分野の特定顧客の事業撤退方針決定に伴い、当社が保有する技術資産が遊休資産となったことによる減損損失であります。

 

 以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は25,377百万円(前連結会計年度比11,745百万円減)となりました。

 

d.親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の法人税、住民税および事業税の額が5,175百万円、法人税等調整額が602百万円となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は19,600百万円(前連結会計年度比6,534百万円減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報

a.資本の財源および資金の流動性についての分析

 当社グループは、経営環境が急激に変化したとしても、顧客にとっての基幹部品である当社グループ製品を長期にわたり供給していく責任があることから、内部留保を厚くし資金の流動性を高く維持する方針としております。

 

 当連結会計年度末における総資産は170,312百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,528百万円減少しました。流動資産は126,290百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,611百万円減少となりました。これは主に、売上高の減少や顧客要望に基づく先行手配の減少による、売掛金、棚卸資産の減少によるものです。当社グループはファブレスによる事業運営のため、資産構成上流動資産の割合が高く、総資産の74.2%を流動資産が占めております。

 ・財政状態および財務指標

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当連結会計年度末

(2025年3月31日)

前年度比

総資産(百万円)

186,840

170,312

△16,528

流動資産(百万円)

138,901

126,290

△12,611

流動資産比率(%)

74.3

74.2

△0.1ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動資産比率:流動資産/総資産×100

 

 当連結会計年度末の負債合計は33,266百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,554百万円減少となりました。これは主に、製造委託先からの購入金額の減少や顧客要望に基づく先行手配の減少による、買掛金、有償支給に係る負債および未払金の減少によるものです。

 

 ・財政状態および財務指標

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当連結会計年度末

(2025年3月31日)

前年度比

流動負債(百万円)

53,094

31,271

△21,823

流動比率(%)

261.6

403.9

142.3ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動比率:流動資産/流動負債×100

 

 当連結会計年度末の純資産は137,046百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,026百万円増加となりました。これは主に、利益剰余金が10,648百万円増加したことによるものです。

 

 以上の結果、当連結会計年度の自己資本は137,046百万円となり、自己資本比率は80.47%に、ROEは14.62%となりました。引き続き、経営環境の変化に柔軟に対応できるよう、収益力と財務体質の改善に取り組んでまいります。

 

 ・財政状態および財務指標

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当連結会計年度末

(2025年3月31日)

前年度比

自己資本(百万円)

131,020

137,046

6,026

自己資本比率(%)

70.12

80.47

10.35ポイント

ROE(%)

21.70

14.62

△7.08ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

自己資本比率:自己資本/総資産

ROE(自己資本利益率):親会社株主に帰属する当期純利益/((前連結会計年度末自己資本+当連結会計年度末自己資本)/2)

 

 当社は、顧客の需要変動および世界景気の減速や地政学リスクの高まり等に対応して、借入枠20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当社グループは、売掛債権の回収期間および棚卸資産の滞留日数の短縮に取り組んでおり、運転資金および成長に必要な資金を、営業キャッシュ・フローから確実に確保できるよう努めております。

 

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは前年度比21,016百万円減少の31,866百万円のプラス(前連結会計年度は52,882百万円のプラス)となりました。これは主に、製品売上の減少による、営業利益の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは14,552百万円のマイナス(前連結会計年度は23,155百万円のマイナス)となり、フリー・キャッシュ・フローは17,314百万円のプラス(前連結会計年度は29,727百万円のプラス)となりました。

 

 ・当社グループのキャッシュ・フロー関連指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

52,882

31,866

△21,016

Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△23,155

△14,552

8,603

Ⅰ+Ⅱ フリー・キャッシュ・フロー(百万円)

29,727

17,314

△12,413

 

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは13,825百万円のマイナス(前連結会計年度は6,624

百万円のマイナス)となりました。これは主に、配当金の支払額8,952百万円、自己株式の取得5,000百万円によるものです。

 

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は72,837百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,099百万円増加しております。

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えられる特に重要な会計方針は以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産に関して、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。

 

b.棚卸資産の評価

 棚卸資産に関して、正味売却価額が取得原価より下落した場合に簿価の切下げを行います。また、一定期間を超えて滞留する棚卸資産について、将来の需要や市場動向を反映した正味実現可能価額まで簿価の切下げを行います。

 

c.固定資産の減損

 固定資産に関して、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上いたします。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化による将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

 当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

 

【関連情報】

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

(単位:百万円)

 

 

製品売上

NRE売上

その他

合計

外部顧客への売上高

182,876

37,609

761

221,246

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:百万円)

 

日本

米州

欧州

アジア

合計

 

83,799

 

32,278

 

9,216

 

95,953

 

221,246

 

 

 

米国 32,278

 

 

 

中国 87,551

 

 

(注)売上高は顧客指定の送付先を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

(2)有形固定資産

(単位:百万円)

 

日本

台湾

その他

合計

9,263

9,157

3,380

21,800

(注)有形固定資産の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:百万円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

CRS TECHNOLOGY Co., LTD

60,171

加賀FEI株式会社

56,408

(注)当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、関連するセグメント名の記載を省略しております。

 

 

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

(単位:百万円)

 

 

製品売上

NRE売上

その他

合計

外部顧客への売上高

146,578

41,019

938

188,535

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:百万円)

 

日本

米州

欧州

アジア

合計

 

84,073

 

32,379

 

7,608

 

64,475

 

188,535

 

 

 

米国 30,066

 

 

 

中国 56,504

 

 

(注)売上高は顧客指定の送付先を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

(2)有形固定資産

(単位:百万円)

 

日本

台湾

その他

合計

9,313

10,727

2,298

22,338

(注)有形固定資産の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:百万円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

加賀FEI株式会社

50,169

CRS TECHNOLOGY Co., LTD

30,488

(注)当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、関連するセグメント名の記載を省略しております。

 

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 該当事項はありません。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

 当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

 該当事項はありません。

 

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

 該当事項はありません。