2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

・リスクマネジメントに関する基本的な考え方及び体制について

当社グループがグローバルに事業活動を展開していく上で、複雑かつ多様なビジネス環境の変化によって生じるあらゆるリスクを早期に把握し、適切な対策を講じることが、当社グループの経営戦略・事業戦略の実現に必要不可欠であると考えております。

当社グループでは、組織的かつ継続的にリスクの抽出・評価を行い、抽出されたリスク項目ごとに主管役員を選任し、対応案の策定と実行を進めております。
 また、これらの取り組みに関して、定期的に取締役会への報告を行い、想定しているリスクの網羅性、各種対策の有効性及び進捗状況等について確認する体制を構築し、リスクの発生可能性・損失規模の低減に向けてリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。

 

・経営・事業を取り巻くリスク

(1)製造委託先について

 当社グループは、経営資源を設計・開発業務に集中し、製品の生産を外部に委託するファブレスという事業形態を採用し、多くの資金が必要となる生産設備投資に制約されることなく事業を推進しております。生産は国内外のファウンドリ及びOSATといった製造委託先に分散して委託しておりますが、かかる事業形態に関して以下のようなリスクがあります。

 

①製造委託先が限定的であることについて

 当社グループは台湾、日本、中国、シンガポール及び韓国等の製造委託先に半導体の製造を委託しております。特に当社グループの取扱う最先端テクノロジー品や、車載品等の高い品質・信頼性を要求される製品については、製造委託先が限定される場合があり、特に半導体製造の前工程においてはTSMCに多くの製造を委託しています。そのため、当社グループの顧客への製品の供給は、製造委託先の方針、技術力や製造キャパシティの制約による影響を受けています。急速に技術革新が進む半導体業界において製造委託先が技術革新に乗り遅れた場合や、原材料・燃料価格の高騰が生じた場合には、当社グループによる当該製造委託先への委託が困難となる可能性がありますが、契約条件、事業上の関係性又は顧客の意向といった制約により、そのような場合に当社グループにおいて適時に合理的な条件で新たな製造委託先を確保できる保証はありません。さらに、製造委託先において、半導体製造のために必要な水、エネルギー又は廃水処理能力の不足による制約が生じる場合、当社グループの製品の供給に遅延が生じる可能性があります。

 当社グループは、複数の製造委託先を確保する等、不測の事態に備えてはいるものの、半導体業界に固有の急速な業界環境の変化、地政学的な要因や技術革新等により将来の需要予測には限界があり、製造キャパシティの制約に起因して製品の供給に遅延や中断が生じた場合には、当社グループの評判が悪化し、顧客から損害賠償請求を受ける可能性もあります。この結果、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

②製造委託における価格について

 当社グループの製造委託先は限定されており、また、製造委託先との間で長期的な製造委託契約を締結しているわけではないことから、製造キャパシティの制約、原材料・燃料価格の高騰、人件費、為替変動その他の理由による製造委託費の値上げの影響を大きく受けることとなります。当社グループと顧客との間の契約において製造委託先による値上げに応じた価格調整に関する規定を設けないことが通常であるため、製造委託先による値上げを顧客への製品価格に適切に転嫁できない場合には、当社グループの利益率が大きく低下することとなります。このような製造委託先における事情により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

③製品の品質について

 当社グループの製品については、製造委託先の責任による歩留の低下や製品の欠陥が生じる可能性があります。これらの問題は製造過程の初期段階では発見することが困難であり、その改善に多くの時間や費用を要する可能性があります。また、このような場合に、他の製造委託先や製造拠点への移管を行おうとしても、対応可能な製造委託先等が存在しない等移管が困難である可能性や、移管に多くの時間や費用を要する可能性があります。

 当社グループの製品に歩留の低下や製品の欠陥その他の製造に関する問題が生じた場合には、顧客への製品の供給に遅延が生じ又は供給ができないことやプロジェクトが中止となること等により、顧客から損害賠償請求を受ける可能性があります。仮にかかる請求が認められない場合でも、その対応には多くの時間や費用が必要となります。また、製造委託先の責任に起因する場合でも、製造委託先に対して費用償還を求めることが困難な可能性もあります。これらにより、当社グループの事業、経営成績、財政状態、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(2)当社グループの製品の設計開発について

 当社グループの製品については、商談を獲得したのち、製造に向けた設計・開発を行うこととなりますが、設計・開発から顧客の評価完了までは2年以上という長期間にわたる可能性があるため、その間に生じる半導体や最終製品の市場環境及び顧客の戦略・需要の変化、新規技術の発明・市場への導入、製造委託先の製造キャパシティや繁忙状況の変化といった事象の影響を受け、顧客による仕様変更やプロジェクトが中止となる可能性があるほか、顧客の要求水準を満たす製品の開発や顧客が受入可能な価格及び数量での製造に成功しない可能性もあります。設計・開発段階でプロジェクトが中止となった場合、製品売上は一切受領できないこととなります。

 また、当社グループは設計・開発段階において、一般的に顧客から設計・開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領しておりますが、上記のように設計・開発段階でプロジェクトが中止された場合には、残りの期間のNRE売上を収受できない可能性があるうえ、NRE売上は設計・開発段階で生じる費用の全てをカバーしない場合があるため、プロジェクトによっては損失が生じる可能性もあります。また、製品売上が当社グループの売上の大半を占め、当社グループの注力分野ではプロジェクトごとの規模が大きくなる傾向にあり、特定のプロジェクトにおける製品の価格もしくは数量の変更又はプロジェクトの延期や中止による当社グループの将来の経営成績への影響が大きくなります。従って、重要なプロジェクト又は複数のプロジェクトが設計・開発段階で中止となった場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響が生じる可能性があります。

 

(3)当社グループの製品の量産化について

 設計・開発が完了した場合、製品の量産段階に進むこととなりますが、商談獲得段階では製品単価については顧客との間で合意している(但し、仕様変更により変更される場合があります)ものの、製造数量については合意しておらず、量産段階における顧客からの個別の発注により確定することとなります。そのため、当社グループが商談獲得時に予測した数量の製品を顧客が量産時点において購入する保証はありません。従って、当社グループが当初想定していた数量について製品の量産化が行われない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(4)当社グループの経営指標について

 上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、当社グループは「商談獲得金額」及び「商談獲得残高」を重要な経営指標としております。商談獲得金額及び商談獲得残高の算出には、製品の販売可能期間及び受注が中止される可能性に関する見込みのほか、開発計画、開発コスト、NRE売上、製品単価及び将来の製品の販売数量(なお、価格については、仕様変更による変更はありうるものの、商談獲得段階で合意されます。)に関する仮定及び見込みを含む当社グループによる将来の予測や主観的判断が相当程度考慮されています。製品の販売数量は、顧客から提示された初期的な数量見込みのほか、顧客との過去の取引履歴や第三者による市場データその他の情報に基づく当社グループ独自の予測、第三者による市場データその他の情報を基礎として判断したものですが、製造委託先の受注制限等、製造キャパシティによる制約は考慮していません。このように商談獲得金額及び商談獲得残高の算出は当社グループ独自の方法により行われているため、他社が用いる同種の指標との比較は適切でない可能性があり、当社グループと他社の現在及び将来の業績の比較において当該指標に依拠することもできません。当社グループは、商談獲得金額及び商談獲得残高が過大な見積りとならないよう、モニタリング部門によるレビュー及び経営陣による承認に関する社内手続を定めていますが、かかる手続が有効である保証はありません。また、ある期間に獲得された商談獲得金額は、かかる期間の末時点における当社グループの仮定及び見込みを反映したものに過ぎず、その後の案件の中止、かかる案件に関連して実際に計上された売上、又は開発プロセス、当社グループによる将来の製品販売数量の見込み、製品単価、製造キャパシティ、その他事後的に発生する要因の変更に基づき更新することはしておらず、年度ごとの比較が適切でない可能性があります。商談獲得残高は月次でこれらの情報を考慮し更新していますが、更新時点における見積もりであることに変わりはなく、かかる見積もりが正確である保証はありません。当社グループは商談獲得金額及び商談獲得残高の算出方法を将来変更する可能性があり、また、過去にも変更しています。

 以上のような制約により、商談獲得金額及び商談獲得残高は当社グループの将来予測される業績を示すものではなく、実際の売上と大きく異なる可能性があります。

 

(5)事業計画等の前提となる事項について

 当社グループは、日々変化していく市況に対応し、持続的な成長を遂げていくため、事業計画の策定と実行、組織強化を目的とした各種施策を遂行しております。これら事業計画及び各種施策の策定においては、半導体及び最終製品の市場動向その他の経営環境について一定の前提を置いており、かかる前提には、例えば、当社グループが成長性のある注力分野において引き続き商談を獲得していくこと、商談獲得金額及び商談獲得残高がその需要予測に従いNRE売上及び製品売上として実現されること、製造委託先における製造キャパシティの確保が当社グループの想定どおりに実現されること、並びに為替変動が一定の範囲に収まること等が含まれます。しかしながら、これらの前提が現実と異なる場合には、当社グループの事業計画における各種施策の遂行及び経営指標の達成が困難となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(6)主要顧客について

 当社グループは、「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」、「スマートデバイス」及び「産業機器」等の分野において商談を獲得しており、今後当該分野の主要顧客への売上の割合が高くなることが予想されますが、主要顧客への売上は、商談の獲得時期及び規模並びに当該商談から得られた製品売上、当社グループの顧客基盤の多様化、消費者の嗜好の変化、業界の動向、法規制の変更、自然災害その他の要因により、大きく変動する可能性があります。当社グループにおける顧客との取引は、個別の発注に基づいており、顧客は長期的な購入義務を負わず、顧客が当社グループの期待する数量の製品を購入する保証はありません。主要顧客が最終製品の市場への投入を延期又は中止し、また、当社グループの製品の機能・性能、又は開発スケジュールが主要顧客の要求水準を満たさない場合には、当社グループの製品の採用を中止する可能性があります。主要顧客は、当社グループの製品を組み込んだ最終製品の売れ行きが芳しくない場合、当社グループの製品の発注数量を減少させ、又は納入期日を延期することがあります。さらに、当社グループの主要顧客が、競争力の低下又はM&Aや提携を契機として、当社グループの製品の購入量を減少し、また、当社グループとの契約条件が主要顧客に有利なように改定される可能性があります。これらにより、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(7)海外での事業活動について

 当社グループは、顧客が世界の様々な地域に所在していることから、米国、欧州及びアジアの主要エリアに営業拠点を有しており、各地域の特色に合わせた営業活動を行っております。海外で事業活動を行うにあたっては、地政学上のバランス、各国の政治・経済情勢、海外輸送・生産の遅延やコストの上昇、為替の変動、外資規制・知的財産権等に関する法規制の新設又は変更、税制の変更等のリスクが存在すると考えております。これらのリスクが顕在化することにより、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(8)経済情勢について

 当社グループは、グローバルな景気動向、最終製品の需要変動、技術革新、製品の陳腐化や価格の下落、半導体市場の市況変動の影響を受けております。足元では、各国の金融引締め政策による金利の上昇やインフレーションの進行が経済情勢の先行きを不透明にしています。また、近年は半導体需要が高まりを見せていますが、かかる需要が今後も同水準で成長又は継続する保証はありません。経済情勢の停滞・減退局面においては、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(9)為替レートの変動について

 当社グループは、設計開発・製造・販売活動をグローバルに展開しており、多くの収益を海外から得ているため、米ドルを中心とする為替レートの変動に伴う影響を受けます。当社グループは為替レートの変動の影響を軽減するよう対応に努めていますが、かかる影響を完全に排除することはできないため、為替レートの変動状況によっては、外貨建取引の売上高、外貨建の設計開発や製造販売コスト等への影響により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。

 

(10)競合について

 当社グループによるカスタムSoCの開発・供給は独自のビジネスモデルであり、直接的な競合先は少ないと認識しているものの、個別の商談獲得においては、従来型のASIC、汎用的なASSP及びASSPをベースにカスタマイズされたASICが競合しており、それらのベンダーとは競合関係にあります。

 当社グループの半導体製品・サービスは主に先端テクノロジーを必要とする各種エレクトロニクス製品に採用されておりますが、当該分野は技術革新の速度が速く、激しい市場競争に晒されております。競合他社の設計・開発能力の向上、異業種からの新規参入、巨大テック企業によるSoCの自社開発の拡大、従来型のASICや汎用的なASSPのベンダーによる開発の動向、顧客の嗜好・需要、各国政府による自国企業の優遇措置、競合他社間の統合・提携により、競争がさらに激化する可能性があります。また、当社グループの注力分野のうち、「オートモーティブ」においては、現状当社グループは優位な地位にあると認識しておりますが、技術革新・他社の積極的な攻勢等によりその地位を維持できない可能性があります。他方、データセンターやネットワーク等の既存市場ではより厳しい競争状況にあるところ、当社グループは顧客との共同開発を通じて顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるという強み、先端分野への研究開発投資及び多様な製品の提供を通じてより多くの商談を獲得することを目指しておりますが、そのような施策が奏功する保証はありません。

 

(11)地政学リスクについて

 当社グループが製造する半導体は、近年経済安全保障上重要な製品と認識されておりますが、米中貿易摩擦、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学リスクの顕在化や台湾有事の懸念の高まりにより、各国が輸出管理規制、関税や制裁措置等を発動・強化した場合、当社グループの主要な販売地域における当社グループの製品に対する需要の減退、競争力の低下、又はサプライチェーンの寸断や遅延が生じ、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。当社グループにおける中国での売上高が一定規模を占めていることや当社グループがTSMCに多くの製造を委託していることから、これらの地域における地政学リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響が生じる可能性があります。

 

(12)研究開発活動について

 当社グループが属する半導体業界は技術革新の速度が速く、既存技術の陳腐化、それに伴う新たな市場の創出及び既存市場の縮小が起こる可能性があります。このような業界で、日々高まる顧客の要求水準を満たす新製品を開発し顧客が受入可能な価格及び数量で製造するためには、多額の研究開発費用を要し、かかる費用が商談獲得や将来の製品売上に繋がらない場合には損失を被る可能性があります。当社グループは今後も積極的な研究開発活動を行う予定ですが、このような技術革新に当社グループが対応できず、当社グループの市場シェアや製品価格が低下する場合や、研究開発を効率化できず研究開発費用が増加する場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(13)感染症の世界的な拡大に係る影響について

 当社グループ、当社グループの製造委託先及びサプライチェーンにかかわる取引先が事業を行っている台湾等の地域において、新型コロナウイルス感染症その他の感染症の感染拡大により事業活動等が禁止・制限されるような事態に陥った場合、製造委託先の工場閉鎖や生産停止及びそれらに伴う製造・輸送の遅延、部材調達の制限等の予期できない事象により、当社グループの製品に対する需要の減少や供給能力に対する制約を受ける可能性があります。また、それらに伴う当社グループの取引先の経営状態の悪化、通信・金融・サプライチェーンを含む公共及び民間のビジネスインフラの混乱等が生じる可能性もあります。

 

(14)災害等による影響について

 当社グループは日本のみならず、世界各地で設計開発・製造・販売活動を行っており、当社グループが事業を展開する各地域において大規模な地震、津波、干ばつ、暴風雨、洪水、大雨、噴火その他の自然災害や火災、停電、感染症の流行、戦争・紛争、テロ行為や政治・社会騒動、セキュリティ侵害又はコンピュータ関連システムの障害その他の事故・事件等が発生した場合、当社グループの事業拠点、当社グループの製造委託先、取引先、顧客及びサプライチェーンに関係する当事者に対して大きな被害が発生する可能性があります。特に、当社グループは、台湾に本拠を置くTSMCに多くの製造を委託しているため、これらの災害等が台湾において発生した場合、当社グループの製品の製造及び供給に悪影響が生じる可能性があります。

 当社グループにおいては、リスクの予防・回避及び発災時の人命の安全、並びに被害の抑制・軽減、二次災害の防止、早期の業務再開を図ることを目的に事業継続に関する規範・規程類を定めており、リスクの軽減に向けた施策を実施しておりますが、かかる施策が奏功しない可能性があり、その場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(15)資金調達について

 当社グループにおいては、新技術や新製品のための研究開発への継続的な投資が必要となります。当社グループは、これまで必要な資金を主に営業活動から得られるキャッシュ・フローにより賄ってきましたが、業績、資金需要や市場環境並びにこれらの見込みにより資金調達を検討することがあります。しかしながら、当社グループの将来的な資金需要に必要な資金を、適時かつ受入可能な条件で調達できる保証はありません。また、金融市場の混乱、日本銀行を含む各国中央銀行の金融政策の変更、半導体業界の低迷、金融機関の貸付方針の変更、当社グループの信用力の低下等により、当社グループに有利な条件で資金調達をできない可能性もあります。これらの結果、資金調達コストが増加する可能性や、研究開発や必要となる各種投資を適時かつ適切な範囲で実施できない可能性があります。

 

(16)M&A・提携協業等について

 半導体業界では、M&Aや提携が頻繁に行われており、当社グループにおいても、技術や大口顧客の獲得、事業領域の拡大、競争力の強化や収益力向上を図るため、M&Aや提携を実行する可能性があります。しかしながら、当社グループが適切な対象会社や提携先を発見できる保証はなく、また、デュー・デリジェンスで重大な問題点を検出できない可能性や、競争法その他の法規制による事業活動への制約等により当初期待した効果が得られない可能性があります。このような場合には、保有株式やのれんの減損が生じ、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(17)知的財産について

 当社グループは他社製品と差別化を図るための様々な技術やノウハウを開発・保持しております。当社グループでは、これらの技術やノウハウを知的財産として保護しており、知的財産が流出・不正利用されることのないよう、専門部門で管理するとともに、従業員との秘密保持契約の締結や、第三者によるオフィス・施設へのアクセスの管理等の施策を講じております。しかしながら、知的財産に対する十分な保護が得られない地域もあり、かかる施策にかかわらず、当社グループの知的財産が競合他社により不正に取得又は利用される可能性があります。

 また、当社グループの製品には第三者からライセンスを受けて製造・販売しているものがありますが、今後第三者から必要なライセンスを受けられなくなる可能性や、引き続きライセンスを受けられるとしても従前より不利な条件でしかライセンスを受けられない可能性があります。さらに、半導体業界では、多数の特許が存在し、また新たな特許の出願が急速に進んでおります。当社グループ又はその顧客が事前の調査にかかわらず第三者の権利を侵害する場合、第三者より当社グループ又はその顧客に対して知的財産権に関する訴訟を提起され、当社グループが重要な技術を利用できなくなる可能性や、当社グループに帰責事由がある場合には当社グループが多額の損害賠償責任を負う可能性があり、また、当社グループに帰責事由がない場合でも、訴訟対応のため、時間、費用その他当社グループの経営資源が費やされる可能性があります。

 

(18)製造物責任について

 当社グループでは、様々な施策を通じて最適な品質を確保できるよう品質管理に取り組んでおりますが、当社グループの製品に用いられる技術の高度化、製造委託先に起因する欠陥等により、出荷時に発見できない不具合や異常が製品に存在する可能性があり、顧客への出荷後にそれらが発見される場合があります。この場合、製品の回収及び交換、製品の採用中止等により多額の費用が発生する可能性、当該顧客から損害賠償請求を受ける可能性、当該顧客又は他の顧客からの将来の受注を失う可能性があります。

 また、当社グループの製品は、顧客がエンドユーザーに販売する最終製品に組み込まれますが、その方法次第で、当社グループがエンドユーザーから損害賠償責任を追及される可能性もあります。顧客における当社グループの製品の使用方法は多様化しており、当社グループが当初想定していなかった方法で使用されることがあるところ、当社グループの製品が顧客の製品に組み込まれた後になって問題が発見される可能性もあります。このような場合には、当社グループもエンドユーザーによる損害賠償請求の対象となる可能性があります。かかる事態に備えて、当社グループは、製造物責任保険やリコール保険に加入していますが、これらの保険により当社グループの負う多額の費用や損害賠償の全額が補填される保証はありません。

 

(19)人材確保について

 当社グループが厳しい事業環境下において競争優位性を確保するためには、経営陣、経営管理、設計・開発、製造技術支援、営業等の各分野において優秀な人材を確保することが重要です。しかしながら、専門性の高い優秀な人材の数は限られており、人材の採用及び確保の競争は激化しています。特に当社グループのカスタムSoCの設計開発において、エンジニアは重要な役割を担っていますが、当社グループがエンジニアを含む優秀な人材を十分に採用及び確保できない場合は、設計・開発に支障をきたす可能性があります。また、当社グループから、専門性の高い優秀な人材が競合他社に移籍した場合、その者が有する当社グループの知識やノウハウの流出により、当社グループの競争優位性が損なわれる可能性があります。これらにより、当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(20)情報セキュリティについて

 当社グループは、事業活動全般において、様々な情報システムを利用しており、災害、戦争、テロ行為、コンピュータウイルスの感染やサイバー攻撃等により、システム障害が発生する可能性があります。また、在宅勤務者の増加等の働き方の変化により、新たなサイバー攻撃等のリスクが生じています。これらにより、当社グループの業務活動や製品の製造委託及び供給の停止、重要なデータの喪失、多額の対応費用の発生等が生じた場合には、当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 また、当社グループは、事業活動の遂行に関連して、自己又は顧客その他の第三者の秘密情報や個人情報を多数有しております。これらの情報については、セキュリティシステムを整備し、法令や社内規則等に基づき管理しておりますが、不正行為や妨害行為の手法は多様化しており、かつ発見が困難であることや、関係者による意図的な漏洩の可能性もあるため、予防策が奏功せず、予期せぬ事態により情報が流出するおそれがあります。そのような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や、顧客の信用や社会的信用の低下を招く可能性があるほか、システム改修等の対応に要する費用の発生や顧客からの損害賠償請求により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(21)環境について

 当社グループは、大気汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー管理等に関し、世界各国において様々な環境関連法令の適用を受けています。当社グループは、これらの規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、過失の有無にかかわらず、過去分を含む環境問題に対して法的又は社会的責任を負う可能性があり、そのような事態が生じた場合、その対応のために多額の費用負担が発生する可能性、当社グループの事業が停止する可能性や当社グループの社会的信用の低下を招く可能性があります。また、将来、環境に関する規制や社会的な要求がより厳しくなり当社グループ及び製造委託先の事業活動に制約が生じ、かかる規制に対応するためのコストが増加する可能性や、環境関連の規制又は社会的要請に適切に対応しないことにより当社グループに対する社会的評価・信用が低下する可能性があるほか、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(22)法規制等について

 当社グループはグローバルに事業活動を展開しており、当社グループが事業活動を行っている国及び地域における安全保障、外国貿易管理、労働、競争政策、税制、腐敗防止及び環境保護等に関連する様々な法律及び規制の対象となっています。当社グループは、かかる法律及び規制のコンプライアンス体制の整備、業務の適正化のために必要な社内体制を構築しておりますが、かかる体制が適切に機能する保証はなく、また、これらの法律及び規制の新設又は改正により法規制等の遵守が困難になる可能性もあります。これらの法律又は規制に違反した場合、当社グループに民事上の損害賠償請求や、刑事上又は規制上の罰則等が科せられ、当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(23)訴訟等について

 当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、様々な国又は地域において、取引先、従業員、競合他社等から契約違反、労働問題、知的財産権の侵害等に関して訴訟の提起を受け、又は規制当局による措置、処分等に服するリスクを有しています。訴訟やその他の法的手続、当局による調査の結果、当社グループに不利益な決定がなされた場合、その決定の内容によっては当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(24)内部統制の整備について

 当社グループは、財務報告に係る内部統制の整備・運用及び評価のための体制を整備しております。しかしながら、内部統制が有効に機能しなかった場合、又は財務報告に係る内部統制の不備もしくは開示すべき重要な不備が発生した場合、当社グループの内部統制への信頼性が失われる結果、株価に重大な悪影響が生じ、又は法令違反、行政処分及び損害賠償請求を受けることにより、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(25)販売特約店について

当社グループは、販売特約店を通じて販売を行ったり、商談を獲得する場合があります。特に、当社グループの継続的な販売特約店である加賀FEI株式会社及びその子会社を通じて相当の取引を行っております。そのため、販売特約店の事業活動が中止する又は販売特約店との取引が中止される等の場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、中長期的に企業価値を高めるとともに、株主の皆様に利益を還元していくことを重要な経営課題の一つとして位置付けております。将来の成長に必要な先行開発投資と、顧客への信用としての確固とした財務基盤の維持のバランスに配慮しつつ、連結配当性向40%程度を目安に安定的な配当の実施を目指してまいります。加えて、中期的には成長投資と強固な財務基盤を維持しながら、さらなる株主利益と資本効率の向上に向けて、総還元性向50%程度を目安に株主還元を促進してまいります。

 また、剰余金の配当等、会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって定める旨及び毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。2024年3月期以降の当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。

 当期の期末配当金は、当該方針に基づき、2024年5月17日開催の取締役会において、1株当たり25円とすることを決議いたしました(支払開始日:2024年6月5日)。

 なお、当社は投資家層の拡大と市場流動性の向上を図るため、2024年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき5株の割合で株式分割を実施しております。株式分割前の2023年9月30日を基準日として1株につき115円の中間配当金をお支払いしておりますので、当期の年間配当金は、株式分割前に換算いたしますと、中間配当金115円と期末配当金125円を合わせた1株当たり240円、株式分割後に換算いたしますと、中間配当金23円と期末配当金25円を合わせた1株当たり48円に相当いたします。