2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上重要と思われる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点からこれを記載しております。当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の損害の低減に努めてまいります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)経済状況の変化

 顧客の製品に搭載される当社製品の需要は、当社グループが販売している多様な市場における経済状況の影響を受けます。したがって、日本、北米、欧州、アジアを含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小等は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、市場環境や受注状況を取締役会等の重要会議において定期的にレビューするなど、常に最新の市場動向を予測した上で、設備投資や人員・在庫等の適正化を図り、市場への対応力を高めています。

 

(2)為替レートの変動

 海外子会社の財務諸表上の現地通貨建ての項目は、連結財務諸表を作成するために円換算されております。したがって、換算時の為替レートにより円換算後の計上額が影響を受けることになります。特に米ドルに対する円高は当社グループの連結業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響をもたらします。

 当社グループが生産を行う地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における現地通貨建ての製造と調達のコストを押し上げます。コストの増加は当社グループの利益率と価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼします。

 当社グループは、為替リスクを測定した上でヘッジ効果とヘッジコストを勘案し、許容可能な為替リスク量まで為替リスクを軽減するため、社内規程に従い為替予約を利用してヘッジをしています。

 

(3)新製品・新技術の開発

 新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、様々なリスクが含まれます。

 当社グループが市場ニーズの変化を十分に予想できず、魅力ある新製品をタイムリーに開発できない場合、又は当社製品が陳腐化するような技術革新等が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、変化の激しい昨今の事業環境下における当社の競争優位性を更に拡大することを目的として研究開発活動に関する組織体制を構築しております。また迅速な意思決定や市場ニーズの変化へのスピード感のある対応、用途市場別の新機種開発対応力の向上、顧客サポートやCS活動のグローバル化対応等を実現するため、営業部門と一体化し、事業部活動の強化発展を推進しています。

 

(4)価格競争

 当社グループは、電気・電子機器、機械等製造業界に属する多様な分野の企業を顧客としておりますが、これら業界における価格競争は大変厳しいものになっております。このような環境下で、価格はすべての分野において大きな競争要因になっており、中国競合メーカーの台頭等もあって、競争はさらに激化しております。 直近では、世界的な材料価格及び物流費の高騰が継続しており、不適切な価格設定や、各種コストダウン活動が市況変化に追いつかない場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、標準化、省人化をはじめとする知恵と技術を結集し、製品設計・開発段階からのコスト管理、生産技術の改善、部品調達のグローバル化による体系的なコストダウン、適正な価格設定及び付加価値の高い製品の継続的な投入、平均単価及び収益力の維持向上に取り組んでいます。

 

(5)国際的経済取引及び海外進出に潜在するリスク

 当社グループの事業活動の大部分は欧州、北米、アジア各国等で行われております。これら海外における事業活動においては、政治・経済環境の変動、インフラストラクチャーの未整備、法律や税務その他の諸制度の変動、社会的混乱等のリスクが内在しております。

 例えば当社グループは、生産活動の多くを中国及びベトナムにおいて行っております。同国における政治又は法環境の変化、経済状況の変化、雇用環境その他の社会環境変化等、予期せぬ事象の発生が生産・販売活動に大きな問題を生じさせ、これが業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、直近ではロシアによるウクライナ侵攻を発端とした地政学上のリスクが高まり、原材料の高騰、エネルギーの供給不安、国際的なサプライチェーンの混乱が生じておりますが、情勢の変化については、引き続き状況を注視してまいります。

 当社グループは、事業展開する国等の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集・対応するため、世界5極体制の構築も含めた適時適切な対応を検討・実施しています。

 

(6)製品の品質

 当社グループのすべての製品について大きな品質問題が発生しないという保証はありません。品質問題が発生した場合、その賠償額は、当社グループ製品を搭載した最終製品の品質に与える影響に左右されます。万一、大規模な製品クレーム又はリコールや製造物責任賠償に繋がるような製品の欠陥が発生した場合は、多額のコストの発生や信用の失墜による売上の低下を招き、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、すべての生産拠点で安定した品質を生みだすために、事業拠点ごとに国際規格ISO9001やIATF16949を認証取得し、マネジメントシステムの継続的な改善と向上に努めるとともに、本社が定めた品質システムを遵守し、高品質な製品の供給に努めています。また、不具合発生時においても根本原因を究明したのち再発防止・未然防止策の実施・徹底をすすめております。

 

(7)知的財産保護

 知的財産の獲得は、当社グループの成長を大きく左右するものと認識しております。しかしながら特定の地域では、固有の事由によって当社グループの知的財産権が完全に保護されない場合があります。その場合、当社グループの知的財産を第三者が無断使用し、類似製品を製造することによって損害を受けることや、その他の技術やノウハウ等が流出し他社で利用されることにより競争優位性を損なう可能性がある一方、当社グループが他社の知的財産を侵害したと主張される可能性もあります。

 知的財産権における保護の失敗や侵害、その他の知的財産の流出は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、製品の拡販・新用途拡大に向け、俯瞰的且つ積極的に知的財産権の獲得・保護を行うことにより、競争優位性の確保を図っております。また、知的財産権の確保だけでなく、権利の流出・侵害といったリスクに対しても、当社グループ従業員に対し、教育等の意識向上施策を広く実施しております。

 

(8)人材獲得と育成

 当社グループは、激しい企業競争を勝ち抜くため、関連分野における能力の高い従業員、殊に高度な科学・技術に通じたエンジニアや、ビジネス戦略、組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成が不可欠であり、世代の交代を超えて常に充実・向上させることが必要であると認識しております。一方で、これら人材の積極的採用と継続的な育成には、コストを必要とします。

 優秀な人材の獲得や人材育成が長期的視点において計画どおりに進まなかった場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、ニーズに基づいた通年採用を実施しております。また、能力開発を支援する教育制度の拡充、多様な社員の能力が十分に発揮できるよう適性を重視した配置、各部門において早期にスペシャリストを育成するための体系やワークライフバランス支援制度の整備により、社員のモチベーションを高め、社員の定着・育成に努めております。

 

(9)原材料等の調達

 当社グループが外部から調達している原材料等の種類によっては、限られた供給元に依存するものがあり、こうした供給元における事故その他の事由による原材料等の供給中断、需要の急増による供給不足等が発生する可能性があります。これらが長期にわたり代替品の入手が困難な場合、当社グループの生産活動に大きな影響を及ぼし、顧客への製品の納入や品質の確保に支障をきたす可能性があります。また、市況品価格の高騰などにより製造コストの上昇を招くことも考えられます。

 このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、このようなリスクを回避するため各種の原材料や部品等を複数の事業者から調達し、安定的な供給の維持を図るとともに、CSR調達にも配慮しております。また、一部の素材につきましては適切な先物予約等による価格の安定化を図り、製造コストへの影響を抑制する対策を推進しております。

 

(10)自然災害や事故、感染症の流行

 当社グループは国際分業体制を確立し、世界各国で事業活動を行っており、本社及び各拠点において工場や事務所等の施設・設備を保有しておりますが、災害、事故の発生や感染症の流行等による事業活動中断等の不測の事態が生じた場合は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、事業継続基本計画(BCP)を策定しており、本社及び拠点における災害や事故の発生等のリスクの顕在化防止又は保険の付保を含む損害低減策を講じております。新型ウイルス等の感染症への対応では、当社グループが事業を展開している国・地域において、現地の政府及び自治体等の指導に沿った対応を行っており、当社グループの従業員及びその家族の健康に配慮し、在宅勤務や時差出勤の推奨、テレビ会議の活用、社内での三密の防止等に取り組むとともに、事業への影響を最小限に抑えるよう日々努めています。

 

(11)環境対応について

 当社グループは、環境関連諸法令を遵守するとともに有害物資の漏洩防止及び適法適切な廃棄処理を徹底し環境被害の発生防止に努めておりますが、サステナビリティに対する意識の高まりなどにより環境に対する規制が厳しくなり、さらなる環境対応が必要になった場合には当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、本社及び海外生産拠点において、環境管理責任者及び各部門長で構成される環境管理委員会を定期的に開催し、環境情報の共有化及び環境保全活動を効率的に行っています。これに加え、本社及び海外生産拠点の環境管理責任者で構成される環境管理責任者会議を開催し、環境問題に関する情報共有の促進及び環境管理について当社グループ全体で対策を推進しております。また、サステナビリティ中期目標においても、環境負荷の軽減を重要課題として認識し、具体的な目標を設定しております。

 

(12)世界的な気候変動について

 当社グループは、気候変動対策に関して、継続的な省エネルギー施策及び太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの導入に取り組み、CO2排出量の抑制に努めておりますが、世界的な気候変動に伴う異常気象(暴風雨、洪水、干ばつ等)による被害や、温室効果ガス排出に対する規制(排出量取引制度等)が強化された場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、「2030年までにCO2排出量を2018年比30%削減」との中期目標に加え、2050年カーボンニュートラルに向けた活動を推進しております。国際社会にとって喫緊の課題である気候変動問題に対応するため、当社グループは、太陽光発電システムの設置、排熱を回収して再利用するシステムの採用、インターナル・カーボン・プライシングの導入、及び生産設備の省電力化等のCO2排出量削減に取り組んでおります。また、気候変動をリスクとしてだけではなく機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題を解決していくことを目指します。

 気候変動に関する情報開示については、2021年3月に賛同を表明したTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に基づき、継続的に気候変動の影響の評価及びその情報の開示に取り組んでまいります。

 

(13)情報セキュリティによるリスク

 当社グループは、事業活動において顧客、他企業の機密情報及び取引先関係者、従業員の個人情報を入手することがあり、同情報が外部への流失及び目的外の流用等が起こらないよう運用しておりますが、人的及び技術的な過失や違法又は不正なアクセス等により漏洩した場合は 、多額のコストの発生や信用の失墜による売上の低下を招き、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、私どもが保有する情報資産の管理及び情報セキュリティ管理を適切に行い、情報の漏洩、改ざん、滅失、盗難等を防止することが企業の社会的責務の一つであると認識し、役員を含めた全ての従業者が情報セキュリティの必要性及び責任について理解を深めるとともに、情報セキュリティポリシーを定め、情報セキュリティの確保に万全を期しております。具体的には、当社グループはリスクマネジメント委員会の活動を通じて、情報セキュリティに関する継続的な取り組み、評価、改善が可能な体制・仕組みを構築しております。また、情報資産を適切に分類、整理し、その重要性に応じた情報セキュリティ対策を取るとともに、情報の取り扱いについて細心の注意を払い、厳重に管理し、当社グループの役員、社員、その他の従業者が情報セキュリティの重要性を理解し行動できるよう、必要な教育・訓練を継続的に実施しております。

配当政策

3【配当政策】

 基本方針

当社は、会社の成長・発展に必要な研究開発並びに設備投資用資金を内部留保によって賄い、財務の健全性を維持しつつ、業績に応じて株主に対する利益還元を積極的に行うことを基本的な方針としております。

この方針の下、急激な経営環境の悪化による著しい業績低迷時を除き、長期安定的な配当である普通配当1株当たり年30円を継続的に実施し、これに事業成果としての連結純利益の30%を1株当たりに換算した特別配当金を併せて実施することとしております。

自己株式の取得につきましては、株価や経営環境の変化に対する機動的な対応、資本政策及び株主に対する利益還元の一方法として、適宜その実施を検討してまいります。

内部留保資金は、企業価値の増大を図るため、既存事業の一層の強化・深化並びに将来の成長分野への投資に充当することにしております。

これらの利益配分に関する基本方針に変更はございませんが、当期につきましては、業績改善をふまえた特別措置として年間135円(普通配当30円、特別配当105円)に、創立70周年記念配当15円を期末配当に加算し、過去最高更新の年間150円(普通配当30円、特別配当105円、記念配当15円)を当期の配当といたしました。その内訳は、第2四半期末配当金として1株当たり67円(普通配当15円、特別配当52円)、当期末の利益配当金として1株当たり83円(普通配当15円、特別配当53円、記念配当15円)となります。

次期の配当につきましては、一層の株主還元の強化を図るため、単年度の業績の影響を受けにくい株主資本配当率(DOE)を配当金額算定の指標として採用することとし、具体的にはDOE 3.0~4.0%を目安に、キャッシュ・フロー及び事業環境等を総合的に勘案して配当を決定いたします。

次期の配当予想は、2024年1月1日に行った1株につき2株の割合による株式分割を反映して、1株当たり年間76円といたします。なお、株式分割前に換算すると過去最高更新の1株当たり年間152円となります。

また年間配当金の内訳は、第2四半期末配当金として1株当たり38円、期末配当金として1株当たり38円の予定となっております。

なお、当事業年度の剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年8月10日

4,367

67

取締役会決議

2024年3月28日

5,355

83

定時株主総会決議