事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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(単一セグメント) | 801,753 | 100.0 | - | - | - |
事業内容
3【事業の内容】
当社グループは、当社および子会社154社(国内63社、海外91社)、関連会社10社(国内7社、海外3社)により構成(2025年3月31日現在)されており、電気機械器具、電子応用機械器具、精密機械器具、医療用機械器具、およびその他の一般機械器具の製造・販売およびこれらに付帯する業務を中心とした事業を営んでいますが、その製品の範囲は産業用制御機器コンポーネントの全分野およびシステム機器、さらには生活・公共関連の機器・システムへと広範囲に及んでいます。
オペレーティング・セグメントごとの主要な事業内容、および主な関係会社は次のとおりです。
(1)インダストリアルオートメーションビジネス(IAB、制御機器事業)
制御機器事業は、「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」をビジョンに、オムロンがこれまでに培ってきた“センシング&コントロール+Think”のコア技術を基盤に、世界中の製造業のモノづくりを先進のオートメーションで革新し、産業の発展に貢献してきました。独自の価値創造コンセプト“i-Automation!”(*)を掲げ、業界随一の幅広い制御機器を軸に、製造業を中心に急激に変化する社会課題を革新的ソリューションで解決し、産業の高度化とともに働く人々の幸せの実現に貢献する社会価値の創出を目指します。 |
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(*)当社は、モノづくり現場の課題解決を通じて社会価値を創出する価値創造コンセプト“i-Automation!”を提唱し、モノづくり革新を牽引しながら地球環境との共存と人々の働きがいを実現するサステナビリティに向けたオートメーションの提供を推進しています。“i-Automation!”は、人をより創造的な役割に誘い、現場生産性の最大化とエネルギー効率を両立する「人を超える自働化」、人の可能性を最大に引き出し、人と機械が共に成長・進化する「人と機械の高度協調」、そして製造現場や設備をデジタル空間で再現し、モノづくり現場のDXを加速させ、業務プロセスの革新に貢献する「デジタルエンジニアリング革新」の3つのコンセプトの具現化を目指しています。
(2)ヘルスケアビジネス(HCB、ヘルスケア事業)
ヘルスケア事業は、「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」をミッションに、誰でも簡単・正確に測定できる使いやすさと、医療現場からも信頼される精度にこだわり、商品やサービスを開発しています。商品では、血圧計や体温計、喘息治療薬を吸入するための機器であるネブライザなど、各国の医療機器認証を取得したデバイスの販売を世界130ヵ国以上で展開しています。サービスでは、医師が遠隔で患者をモニタリングし処方・治療支援を行う遠隔診療サービスの提供を主要国から進めています。 |
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(3)ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(SSB、社会システム事業)
社会システム事業は、「世界中の人々が安心・安全・快適に生活し続ける豊かな社会を創造する」をミッションとしています。太陽光発電用パワーコンディショナー、蓄電システム、自動改札機や券売機などの駅務システム、交通管制システム、決済システム、UPSなどのデータ・電源保護といった、多岐にわたる端末・システム、さらにソフトウェア開発、保守メンテナンスによるトータルソリューションを提供し、社会インフラを支えています。 |
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(4)デバイス&モジュールソリューションズビジネス(DMB、電子部品事業)
電子部品事業は、「我々のデバイスとモジュールで、顧客の価値を創造し、地球上の人と社会に貢献する」をミッションとしています。EV・モビリティやエネルギーインフラ、家電製品、産業機器など、幅広い業界の顧客に対して、電気を繋ぐ・切るためのコア部品となる、リレー、スイッチ、コネクターや、さまざまな製品の目や耳になるセンサなどのデバイスやモジュールを、全世界で提供するオムロンの基盤事業です。 |
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(5)データソリューションビジネス(DSB、データソリューション事業)
データソリューション事業は、「モノの枠を超えるビジネスへ。オムロンを変革し、真の顧客価値を創出する」をミッションとしています。 オムロングループが提供する様々な商品やサービスから得られる現場データに、データマネジメントやソリューション開発力を掛け合わせることで、生活習慣病をはじめとした疾患の予防、店舗・事業所などの現場業務の効率化・DX支援、企業の温室効果ガス排出削減の支援など、ますます複雑化・多様化する顧客のニーズに対応するソリューションを提供しています。 |
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業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討
①当社グループの経営成績の実績及び見通し
<2024年度実績>
当期(2024年度)における当社グループの業績は、売上高は前期比で減収となりましたが、営業利益は増益となりました。売上高は、社会システム事業が前期比で増加したものの、制御機器事業や電子部品事業において設備投資需要が総じて低調に推移したこと、ヘルスケア事業の中国市場における需要が減少した影響が大きく、加えて制御機器事業においては、前年上期の売上高が受注残に支えられていたこともあり、全体としては前期比で減少しました。
営業利益については、売上総利益率が前期比で改善したことに加え、2024年2月26日に発表した「NEXT2025」の効果もあり収益性は着実に改善し、前期比57.4%の増益となりました。
法人税等、持分法投資損益控除前当期純利益については、営業利益が増益となる一方、「NEXT2025」の経営施策のひとつである、人員数・能力の最適化に伴う一時的費用220億円を計上したことにより前期比で減少しました。なお、「その他収益-純額-」には、一時的費用および収益として計上した、データソリューション事業にかかるのれんの減損117億円、投資有価証券評価益123億円を含んでいます。
当社株主に帰属する当期純利益については、構造改革を進める中でも、前期比100.7%と大幅な増益となりました。
<2025年度見通し>
当社グループにおける次期(2025年度)の事業環境は、FA業界で依然、需要回復に力強さを欠くものの、各セグメントにおいて、顧客起点の取り組み強化による売上高拡大を図るとともに、当期(2025年3月期)から実行している「NEXT2025」による収益・成長基盤の再構築を完遂します。加えて、制御機器事業を中心に、中長期的な成長を見据えた投資を、さらに加速させていきます。
また、足元の事業環境は、米国の関税政策の動向により世界経済が大きな影響を受ける情勢にあり、極めて不透明な状況は継続すると想定しています。今後の米国による関税政策の影響によっては、当社グループの業績見通しに対して、売上高で最大150億円、営業利益で最大90億円のマイナス影響が発現するリスクがあると想定しています。米国の関税政策に対しては、変化対応力を発揮し、機動的な売価施策の実行、耐性を備えたサプライチェーンマネジメントの構築など、対応策を実施していきます。
以上により、次期の見通しについては、当期比で増収増益を計画するものの、米国の関税政策に伴う業績変動の可能性を踏まえ、売上高および各利益項目については、レンジでの見通し数値とします。なお、見通しのレンジ・リスクについては各セグメントに反映せず、全社セグメントに含めています。
<売上高・営業利益・売上総利益率の推移>
<2025年度の経営方針と重点取組み>
次期は、「All for creating customer value ~需要変化の迅速な察知と機動的アクションによる売上最大化の実現~」を全社方針とし、「NEXT2025」を完遂し、取組みの成果を業績に結実させます。次期は、売上高8,350~8,200億円、売上総利益率44.7~44.2%、営業利益650~560億円の増収増益を目指します。
また、2024年度に設定した非財務目標における各取り組みは、次期においても継続して実施しますが、次期中期経営計画に向けて非財務目標の見直しを検討しており、かつ、2025年9月までは構造改革期間中であることから、具体的な目標は設定していません。
<財務目標>
<2024年度の非財務目標と実績>
(注) 1 2024年度に設定した目標値
2「カーボンニュートラルの実現」、「デジタル化社会の実現」、「健康寿命の延伸」に繋がる注力事業の売上高
3 非財務目標の⑧から⑩は、社員投票で決定した目標。
4 非財務目標に記載されている数値は、2022年度に設定したSF 1st Stageの当初設定目標。
②各事業セグメントの実績及び見通し
<「SF2030」における価値創造の取組み>
制御機器事業では、事業ビジョン「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」を設定しました。オートメーションを通じ豊かな医・食・住環境を支える持続的な産業の発展と、働く人々の幸せ、そして地球環境の維持との両立を目指しています。制御機器事業は、事業ビジョンの設定において、今後10年で直面するであろう社会の変化を想定しました。それは、目まぐるしく世界が変化する中で、さまざまな社会的課題が浮き彫りになる時代だと考えています。このような市場背景の中で、制御機器事業が解決すべき社会的課題を、「働く人」と「産業の高度化」の二つの側面で捉えました。
「働く人」とは、ミレニアル世代やZ世代に代表される価値観の変化や技術の進化に伴う働く人のマインドの変化、そして働く人にとっての労働機会の変化です。そして、「産業の高度化」とは、次々と生まれる先進技術により2次産業でのモノづくりの革新だけでなく、1次産業や3次産業にまで広がる大きな変革です。制御機器事業が取り組むべき社会的課題は、制御機器事業が強みとするオートメーションにより、働くすべての人々の幸せと産業の高度化の両立を実現し、さらに社会的要請でもある地球環境の保全にも貢献していくことです。制御機器事業が目指すのは、持続可能な産業の進化により、世界中の人々が共通して求める医・食・住環境が充実した社会です。これは、長年に渡りモノづくりを源流で支えてきたオムロンだからこそ可能なチャレンジであり、事業ビジョンには、このような思いを込めました。
その実現に向け2016年に提唱した独自のモノづくりコンセプト、「i-Automation!」を進化させ、業界随一の幅広い制御機器の品揃えと技術・ソリューションで社会的課題を解決するイノベーションを量産し、持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化に貢献していきます。
<2024年度の業績と2025年度の見通し>
2024年度の業績 |
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売上高の 状況 |
製造業における設備投資需要は、日本においては半導体市場が、中国の半導体国産化の投資需要を受けて好調に推移しました。一方、中国においては太陽光発電関連投資と二次電池投資の需要停滞が継続し、欧州および東南アジアにおいては電気自動車(EV)向け投資需要が減速し、全体としては低調に推移しました。これらの結果、売上高は、前年上期の売上高が受注残に支えられていたこともあり、前期比で減少しました。 |
営業利益の 状況 |
売上高は減少しましたが、売上総利益率の改善や構造改革を通じた固定費圧縮効果が寄与し、営業利益は前期を大きく上回りました。 |
2025年度の見通し |
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売上高の 見通し |
半導体関連の投資需要は、中国向け投資が調整局面へ移行するものの、AI関連需要は増加が継続する見込みです。また電気自動車(EV)向け投資は、中国国内ではEV普及率の拡大に伴い、堅調な内需が継続する一方、中国以外では投資は低調に推移すると見込みます。これらの状況のもと、顧客起点の取り組み強化による売上拡大を図り、全体では次期の売上高は当期比で増加を見込みます。 |
営業利益の 見通し |
将来の成長に向けた投資を加速させる一方で、売上高の増加に加え、固定費の効率的な運用を図ることで、次期の営業利益は当期比での増加を見込みます。 |
<売上高・営業利益・営業利益率の推移> <社会価値創出のKPIの進捗>
(注)1 経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。
これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。
2 2025年度見通しのレンジ、リスクについては各セグメントには反映せず、全社セグメントに含めています。
<「SF2030」における価値創造の取組み>
ヘルスケア事業では、家庭で測定した血圧が人々の健康に役立つという信念のもと、その普及に取り組んできました。今では、高血圧治療の現場で家庭で測った血圧データが活用されるようになり、高血圧患者の降圧コントロールにも成果が見られます。しかし、高齢化に伴い高血圧患者はグローバルに増え、高血圧に起因する脳・心血管疾患の発症も増加しています。加えて、新興国を中心に増え続ける呼吸器疾患患者、日常生活に大きな影響を与える膝や腰、肩の慢性的な痛み。これらは人々のQOLを著しく低下させてしまいます。
「SF2030」のビジョン「Going for ZERO 〜予防医療で世界を健康に〜」には、世界中の一人ひとりが健康ですこやかに生活できる社会を、オムロンの手で切り拓いていく、という強い意志を込めました。
これまで培ってきた技術と知見を活用し、「循環器」「呼吸器」「ペインマネジメント」領域において、脳卒中や心不全などの「脳・心血管疾患の発症ゼロ」、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの「呼吸器疾患の増悪ゼロ」、膝痛や腰痛などの「慢性痛による日常生活の制限ゼロ」の3つのゼロにチャレンジします。
そして、病気にならない、病気を重症化させないための予防医療という新しい価値を提案し、「健康であり続けたい」という世界中の人々の願いをかなえます。
世界の高血圧患者は12.8億人、心房細動患者数は4,600万人いると言われています。これらの患者数は先進国での高齢化の加速や成長国における中間層の拡大を背景にグローバルで増加傾向にあり、健康機器の需要は拡大していく見通しです。中でも、インドやアジアなど成長国においては、血圧計の普及率が低く、成長ポテンシャルが高いと考えています。引き続き、今後ますます市場の拡大が見込まれるエリアに注力し、基盤事業を強化します。
<2024年度の業績と2025年度の見通し>
2024年度の業績 |
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売上高の 状況 |
主力製品である血圧計市場において日本や欧州などの一部地域で需要は堅調に推移したも のの、中国における個人消費の低迷により、需要停滞が継続しました。また、前年の呼吸器 疾患特需の反動を受け、ネブライザ・酸素発生器の需要が減少したことなどにより、売上高は前期比で減少しました。 |
営業利益の 状況 |
売上高の減少や物流費増加の影響を受け、慎重な固定費運用を行いましたが、営業利益は前期比で減少しました。 |
2025年度の見通し |
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売上高の 見通し |
グローバルでの血圧計需要は堅調に拡大するものの、その拡大速度は鈍化すると想定しています。また中国の個人消費は、回復の兆しが見えず、需要の先行きは不透明な状況が続くと想定しています。このような状況ではありますが、グローバルで拡大するオンラインチャネルでの販売強化に加え、新興国における需要拡大を引き続き捉えてまいります。以上より、次期の売上高は当期比で増加を見込みます。 |
営業利益の 見通し |
売上高の増加に加え、製造原価のコストダウンの加速や、慎重な固定費運用により、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 |
<売上高・営業利益・営業利益率の推移> <社会価値創出のKPIの進捗>
(注)2025年度見通しのレンジ、リスクについては各セグメントには反映せず、全社セグメントに含めています。
<「SF2030」における価値創造の取組み>
2030年に向かうこれからは、地球温暖化を起因とした自然災害の多発や、少子高齢化に伴う労働人口の不足など、暮らしの安心・安全・快適への障害となる、新たな社会的課題が顕在化する時代です。そして、そのような時代を生きる人々の価値観も多様化していきます。社会システム事業は、顧客のニーズに応えることに加え、顕在化する社会的課題を踏まえ、社会システムのあり方を考え、その答えを導き出してまいります。そして、その答えに共感していただいたステークホルダーの皆様とともに、「次世代の社会システム」をつくっていきます。この一連のプロセスと想いを「SF2030」の事業ビジョンの「Design」に込めました。社会システム事業は、暮らしをよくする“ソーシャルグッド”を生み出しながら人々の暮らしをより良くし、笑顔溢れる明るい未来を実現します。
「SF2030」においてオムロンが捉えた解決すべき社会的課題は、「カーボンニュートラルの実現」と「デジタル化社会の実現」です。CO2総排出量の増加や気候変動の加速、少子高齢化の加速による労働力不足といった社会的課題は深刻化し、社会生活にもさまざまな不都合や不安が生じます。また、企業各社では事業運営の効率化や省力化の進展と同時に、事業継続や環境配慮への対応が求められるなど、経営課題は複雑化していきます。これからは、既存の機器やサービス提供による現場課題の解決だけではなく、お客様の経営課題の解決に、ともに取り組むことが必要です。これからの安心・安全・快適な社会とは何か?オムロン自身が将来像を描き、社会システム事業で培ってきたノウハウを活かしたソーシャルオートメーションで、次世代の社会システムの実現を目指します。
<2024年度の業績と2025年度の見通し>
2024年度の業績 |
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売上高の 状況 |
エネルギーソリューション事業は、再生可能エネルギーの自家消費ニーズの高まりや補助金制度の利用、産業・商業領域でのカーボンニュートラルに向けた取り組み加速による投資拡大を受け、蓄電システムなどが好調に推移しました。また、駅務システム事業は、旅客者数の回復と運賃改定による鉄道各社の好調な業績を背景に、設備投資需要が好調に推移しました。これらの結果、売上高は前期比で増加しました。 |
営業利益の 状況 |
売上高の増加により営業利益は前期比で大きく増加しました。 |
2025年度の見通し |
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売上高の 見通し |
エネルギーソリューション事業においては、エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルに向けた取り組みが続いており、住宅および産業領域での再生可能エネルギーに対する需要は堅調に推移すると見込みます。また、駅務システム事業では、顧客の設備投資が引き続き堅調であると想定しています。以上より、次期の売上高は当期比で増加を見込みます。 |
営業利益の 見通し |
売上高の増加や生産性向上により、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 |
<売上高・営業利益・営業利益率の推移> <社会価値創出のKPIの進捗>
(注)2025年度見通しのレンジ、リスクについては各セグメントには反映せず、全社セグメントに含めています。
<「SF2030」における価値創造の取組み>
電子部品事業は、「SF2030」において、3つのトランスフォーメーションを実現していきます。
1つ目は、事業のトランスフォーメーションです。オムロンの注力ドメインの一つとして、「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会」の社会的課題を解決する事業を目指します。コア技術と多彩な機能の組み合わせで製品の価値を向上させ、お客様が必要な機能をデバイス&モジュールを軸としたソリューションとして提供し、社会課題の解決に取り組んでいきます。コアとなる“繋ぐ・切る”技術は、創業以来、社会・お客様に提供し続けているリレー、スイッチ、コネクター、センサなどのデバイス&モジュールの高機能化と品質向上で磨き続けてきた製品に流れる電気を繋ぐ・切る(オン・オフする)機能や、センシングする機能です。これらで、「新エネルギーと高速通信の普及」に貢献する新たな社会価値を創出していきます。
2つ目は、注力領域のシフトです。コア技術を軸とした事業の強みが最大限発揮でき、さらなる成長機会が見込まれる4つの事業領域にフォーカスしていきます。注力領域は、DCドライブ機器、DCインフラ機器、高周波機器、遠隔/VR機器です。DCドライブ機器、DCインフラ機器においては、環境負荷対応により電源の直流化・高容量化、インフラの電動化が進んでいきます。製品の普及促進に向けて課題となるのが、感電や発火を防ぐための安全対策です。高周波機器、遠隔/VR機器においては、急速なデジタルシフトで高速通信・データの大容量化を実現する技術・デバイスが必要となります。これら課題解決の根幹を、我々の“繋ぐ・切る”技術で実現します。
3つ目は、提供価値のシフトです。これまでの価値に加えて、「グリーン・デジタル・スピード」を軸とした新たな価値を加えていきます。脱炭素社会の実現に貢献するデバイス群の創出、デジタル価値の提供、営業・開発・生産が一体となり、社会変化に柔軟かつタイムリーに対応するコンカレント活動などにより提供価値スピードを加速していきます。
<2024年度の業績と2025年度の見通し>
2024年度の業績 |
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売上高の 状況 |
民生業界向けの需要は、中国などの一部エリアや先端半導体関連など一部の業界では回復が見られるものの、欧州や日本では、顧客での在庫消化の停滞や生産計画の見直しなどにより低調に推移しました。自動車業界向けの需要は、中国では増加したものの、欧州では電気自動車(EV)優遇施策見直しにより低調に推移しました。これらの結果、売上高は前期比で減少しました。 |
営業利益の 状況 |
売上高減少に加えて原材料価格高騰などの影響もあり、営業利益は前期比で大きく減少しました。 |
2025年度の見通し |
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売上高の 見通し |
民生業界向けの需要は、総じて横ばいを見込みます。その中でも注力するエネルギー関連業界や半導体関連業界では、顧客の投資拡大やAI関連需要の牽引によって好調に推移すると見ており、顧客ニーズを捉えた新アプリケーション創出などの取り組みにより、拡大する需要を着実に取り込んでいきます。以上より、次期の売上高は当期比で増加を見込みます。 |
営業利益の 見通し |
原材料価格高騰の影響などが継続するものの、売上高の増加に加えて価格適正化や収益改善施策に取り組むことにより、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 |
<売上高・営業利益・営業利益率の推移> <社会価値創出のKPIの進捗>
(注)1 経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。
これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。
2 2025年度見通しのレンジ、リスクについては各セグメントには反映せず、全社セグメントに含めています。
<「SF2030」における価値創造の取組み>
データソリューション事業本部は、多様な産業の現場や生活の中でご利用いただいている各種機器から収集されるデータを活用して、顧客の本質課題を解決するソリューション・サービスを創出し、提供します。
2023年10月に連結子会社となった株式会社JMDC(以下、JMDC社)との協業では、①JMDC社の事業成長加速、②オムロンのヘルスケア事業成長に加え、③オムロンのヘルスケア以外でのデータソリューション事業拡大に注力し、オムロングループのビジネスモデル変革を先導しています。
JMDC社の事業成長については、すでに20%超の高い事業成長率を遂げているJMDC社に、オムロンのブランドや顧客基盤を活用することでさらなる加速を図ります。JMDC社は、主に保険者・医療機関・製薬企業・個人をつなぐ医療データプラットフォームをビジネスの基盤としていますが、オムロンがリードしている「健康経営アライアンス」を通じて企業向けにも事業を展開するなど、サービスの提供範囲を拡大しています。
オムロンのヘルスケア事業成長では、JMDC社がもつ医療データの解析技術とオムロンがもつバイタルセンシング技術を融合し、生活習慣病の予防を目的とした「プロアクティブヘルス事業」の拡大に取り組みます。また、企業の人事・総務・経営管理部門向けに、従業員の健康増進を通じた企業の活性化や、健康経営/ウェルビーイング経営の推進を支援する「コーポレートヘルス事業」を創出・拡大します。
オムロンのデータソリューション事業拡大においては、顧客の拠点・施設・店舗などが抱える現場、管理、経営のオペレーション課題に対し、オムロンのフィールドエンジニアリングサービス(設計・運用・保守・BPO)とデジタルサービス(DX支援)を組み合わせて、ワンストップで支援します。例えば、小売流通業の人手不足や店舗運営コストの上昇、製造業に求められる環境対応やエネルギーコストの増加など、各業界特有の課題に対して具体的なソリューションを展開・拡充します。
これらの取組みにより、ヘルスケア分野にとどまらず、オムロングループがもつ多様な商品、顧客ネットワーク、現場実装ノウハウ、そしてそこから得られるデータと、JMDC社のデータマネジメント力、ソリューション開発力を組み合わせることで、複雑化する顧客課題に対して最適なソリューションを提供していきます。
<2024年度の業績と2025年度の見通し>
2024年度の業績 |
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売上高の 状況 |
JMDC社における契約健康保険組合数や、データ利活用先である製薬企業および保険会社との年間取引量、さらに遠隔読影サービスを利用する医療機関数の拡大により、売上高は増加しました。 |
営業利益の 状況 |
ソリューション事業創出に向けた投資を着実に実施した一方、JMDC社の売上高が増加したことにより、営業利益は堅調に推移しました。 |
2025年度の見通し |
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売上高の 見通し |
JMDC社の事業において、製薬企業中心に医療データ利活用の動きが引き続き拡大すると見込んでいます。また個人の健康、予防意識の高まりを受け、保険者、生活者向けサービスの需要も拡大が続くと見ています。以上より、次期の売上高は当期比で増加を見込みます。 |
営業利益の 見通し |
売上高増加に伴い、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 |
<売上高・営業利益・営業利益率の推移>
(注)2025年度見通しのレンジ、リスクについては各セグメントには反映せず、全社セグメントに含めています。
(2) 財政状態、キャッシュ・フローの状況・分析・検討
①財政状態
当期末の資産の部は、概ね前連結会計年度末と同水準の13,618億円となりました。負債の部は、事業運営資金確保のために社債発行を含む外部資金調達を実行し、前連結会計年度末に比べ236億円増加の4,274億円となりました。純資産の部は、為替換算調整額や退職年金債務調整額の減少などにより、前連結会計年度末に比べ166億円減少し9,344億円となりました。株主資本比率は56.7%と前期末比で1.4ポイント低下となったものの、引き続き、強固な財務基盤を維持しています。
資金流動性については、当期末現在の手元現預金を1,490億円保有していることに加えて、金融機関との間で300億円のコミットメントライン契約を維持しており、高い水準を維持しています。また、今後の成長投資資金の確保に備え、格付機関から長期発行体格付として高格付を維持するとともに、グローバルで金融機関との良好な関係を維持することで、資金調達力を確保してまいります。
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2023年度 |
2024年度 |
増減 |
資産合計(資産の部合計) |
13,547億円 |
13,618億円 |
+71億円 |
負債の部合計 |
4,037億円 |
4,274億円 |
+236億円 |
株主資本 |
7,867億円 |
7,719億円 |
△148億円 |
非支配持分 |
1,643億円 |
1,625億円 |
△18億円 |
純資産の部合計 |
9,510億円 |
9,344億円 |
△166億円 |
負債及び純資産合計 |
13,547億円 |
13,618億円 |
+71億円 |
なお、当期(2024年度)のROE(株主資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)は、前期より改善しましたが、依然として当社グループの資本コスト(当社推定値8%)を大きく下回る水準となりました。さらなる企業価値向上のためには、蓄積されたキャッシュと今後生み出すキャッシュを既存事業の強化と新たな成長機会に再投資し、成長を加速することが必要と認識しています。引き続き、経営資本の適正配分により、将来キャッシュ・フローの創出能力と資本効率を高めて企業価値向上を実現し、株主の皆さまの期待に応えてまいります。
<ROIC> <ROE>
<株主資本、株主資本比率>
②キャッシュ・フローの状況
キャッシュアロケーションの方針と推移
当社グループにおけるキャッシュアロケーションポリシーと株主還元方針は、以下のとおりです。
<キャッシュアロケーションポリシー>
(ⅰ)長期ビジョンの実現による企業価値の最大化を目指し、中長期視点で新たな価値を創造するための投資を優先します。ただし、2024年4月1日~2025年9月末までの「構造改革期間」は、全社のリソースを集中して「NEXT2025」に取り組み、「業績の立て直し」と「収益・成長基盤の再構築」を実現するために必要な投資を最優先で実行します。その上で、安定的・継続的な株主還元を実行していきます。
(ⅱ)これら価値創造のための投資や株主還元の原資は内部留保や持続的に創出する営業キャッシュ・フローを基本とし、必要に応じて適切な資金調達手段を講じて充当します。なお、金融情勢によらず資金調達を可能とするため、引き続き財務健全性の維持に努めます。
<株主還元方針>
(ⅰ)中長期視点での価値創造に必要な投資を優先した上で、毎年の配当金については、「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準とします。そのうえで、過去の配当実績も勘案して、安定的、継続的な株主還元に努めます。
(ⅱ)上記の投資と利益配分を実施したうえで、さらに長期にわたり留保された余剰資金については、機動的に自己株式の買入れなどを行い、株主の皆さまに還元していきます。
当社グループのキャッシュアロケーションの推移は以下のとおりです。
<キャッシュアロケーション推移>
(注)1 為替レートの影響は除いて表示しています。
2 投資キャッシュ・フローについては、事業売却・買収等による影響を分けて表示しています。
事業売却・買収等による収入・支出には、連結キャッシュ・フロー計算書の「事業売却(現金流出額との純額)」
「事業買収(現金取得額との純額)」および 「関連会社に対する投資の増加」が含まれています。
2024年度のキャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益の増加に加え、仕入債務の増加などにより、558億円の収入(前期比109億円の収入増)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、資本的支出などにより479億円の支出(前期比592億円の支出減)となりました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは79億円の収入(前期比701億円の収入増)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債発行を含む外部資金調達を行う一方で、配当金の支払いなどにより46億円の支出(前期比906億円の支出増)となりました。
以上の結果、当期末における現金及び現金同等物残高は、前期末から59億円増加し、1,490億円となりました。
<2024年度のキャッシュ・フローの概要>
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2023年度 |
2024年度 |
増減 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
449億円 |
558億円 |
+109億円 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,071億円 |
△479億円 |
+592億円 |
フリーキャッシュ・フロー |
△622億円 |
79億円 |
+701億円 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
860億円 |
△46億円 |
△906億円 |
2025年度のキャッシュ・フローの見通し
次年度(2025年度)においては、「NEXT2025」の遂行による利益率改善や棚卸資産を中心とした運転資金の効率化を図ってまいります。
投資活動においては、投資規律を維持し、設備投資・投融資の案件を厳選して実行してまいります。なお、2025年度の設備投資は、ITシステム刷新等により当期比80億円の増加を見込んでいます。
また、財務活動では、グループ全体の効率的な資金配置を継続して実行していくとともに、金融情勢を踏まえた柔軟な調達・運用を実施してまいります。
<2025年度のキャッシュ・フロー関連項目>
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2024年度 (実績) |
2025年度 (見通し) |
増減 |
減価償却費 |
335億円 |
370億円 |
+35億円 |
資本的支出(設備投資) |
490億円 |
570億円 |
+80億円 |
(注)資本的支出は、連結キャッシュ・フロー計算書記載の金額
資金調達、資本政策の方針
当社グループは、成長投資の実行と安定的な事業運営を行うため、資本効率を高めつつ、事業運営に必要な流動性と多様な調達手段を確保することを基本としています。そのための資金調達を含む資本政策については、以下の基本方針としています。
(ⅰ)株主価値を維持向上するために、投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)の目標水準を考慮した経営を行います。また、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢によらず資金調達が可能な高格付けを維持できる自己資本比率を目標とします。
(ⅱ)支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策については、取締役会において、上記の目標とする投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)等への影響を十分に考慮した上で合理的な判断を行います。
(ⅲ)大規模な希釈化をもたらす資本調達を実施する場合には、資金使途の内容と回収計画を取締役会において十分に審議のうえ決議するとともに、投資家・株主への説明を行います。
<格付情報>
本報告書提出時点における格付けについては、株式会社格付投資情報センター(R&I)から以下のとおり取得しております。
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格付 |
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長期 |
短期 |
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格付投資情報センター |
AA- |
a-1+ |
<社債情報>
社債の残高については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 Ⅱ 主な科目の内訳および内容の説明 I 借入金および社債」をご参照ください。
(参考)ROIC経営への取組み
当社グループはROICを重要な経営指標としています。全社一丸となってこの指標を持続的に向上させるため、「ROIC経営」を社内に広く浸透させています。長期ビジョン「SF2030」においても、ROIC経営を推進し、今後も飛躍的な成長を実現していきます。
事業特性が異なる複数の事業部門を持つ当社グループにとって、ROICは各事業部門を公平に評価できる最適な指標です。営業利益の額や率などを指標とした場合、事業特性の違いや事業規模の大小で評価に差が出ますが、投下資本に対する利益を測るROICであれば、公平に評価することができます。独自の事業ポートフォリオを展開していく当社グループにとって、ROICは欠かすことができない指標です。当社グループのROIC経営は、「ROIC逆ツリー展開」、「ポートフォリオマネジメント」の2つで構成しています。
<ROIC逆ツリー展開>
ROIC逆ツリー展開により、事業戦略を起点にROICを各部門のKPIに分解して落とし込むことで、現場レベルでのROIC向上を可能にしています。ROICを単純に分解した「ROS」、「投下資本回転率」といった指標では、現場レベルの業務に直接関係しないことから、部門の担当者はROICを向上させるための取組みをイメージすることができません。例えば、ROICを自動化率や設備回転率といった製造部門のKPIにまで分解していくことで、初めて部門の担当者の目標とROIC向上の取組みが直接つながります。現場レベルで全社一丸となりROICを向上させているのが、当社グループの強みです。
<ポートフォリオマネジメント>
全社を約60の事業ユニットに分解し、ROICと売上高成長率の2軸で経済価値を評価するポートフォリオマネジメントを行っています。これにより新規参入、成長加速、構造改革、事業撤退などの経営判断を適切かつ迅速に行い、全社の価値向上をドライブしています。
また、限られた資源を最適に配分するために、「経済価値評価」だけではなく、「市場価値評価」も行っています。それにより、各事業ユニットの成長ポテンシャルを見極められ、より最適な資源配分を可能にしています。
(3) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当有価証券報告書に記載する連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示および報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。長期性資産の減損、のれんおよび非償却性の無形資産の減損、および繰延税金資産の回収可能性等については、事業環境の変化の影響を踏まえて見積りおよび判断を行っています。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 Ⅰ 重要な会計方針の概要 F 会計処理基準」に記載していますが、当社の経営戦略および連結財務諸表に与える影響から重要性があると考えられるものは以下のとおりです。
戦略投資等にかかるのれん等の評価
当社グループは将来に向けた成長力強化の一環として積極的な戦略投資を行っています。
制御機器事業(IAB)においては、モノ作り現場の課題に対して、“i-Automation!”で革新を起こすアプリケーションを強化することを目的として、2015年にモーションコントローラーメーカーであるDelta Tau Systems, Inc. およびロボットメーカーであるAdept Technology, Inc.を、2017年にコードリーダーメーカーであるMicroscan Systems, Inc.をいずれも 米国にて取得しました。
ヘルスケア事業(HCB)においては、脳・心血管疾患の重症化を防ぎ、治療をサポートする事業での協業を目的として、米国を中心に心疾患の診断と治療の支援サービスおよび商品を提供するAliveCor,Inc.へ2020年2月に出資を行いました。
また、長期ビジョン「SF2030」ではデータを基軸とした価値創造への収益構造転換が重要になると考えており、その先駆けとして、2022年2月に医療データサービス会社であるJMDC社との資本業務提携のために同社株式の取得を行いました。また、2023年10月には同社株式の追加取得を行い、連結子会社としました。
・のれん評価
当社は、のれんの評価について、のれんの償却は行わず、少なくとも年に1回又は減損の兆候が識別された場合に減損テストを実施しています。
IABにおいて取得した事業ののれんについては、取得した事業が“i-Automation!”戦略と一体となってシナジー効果が創出されることから、シナジー効果の享受が期待される、検査装置事業を除いたIABをのれんの報告単位として決定しています。
JMDC社の連結子会社化により取得した事業ののれんについては、当社の既存ビジネスとJMDC社の協業により、ソリューションビジネスを推進するために2023年12月21日付で設立したデータソリューション事業本部(DSB)を報告単位として決定しています。
減損テストの実施に当たっては、当該報告単位の公正価値をディスカウント・キャッシュ・フロー法により算出した評価額と市場価格にコントロールプレミアムを加味した市場株価法による評価額に基づいて算出し、対応する帳簿価額と比較して評価を行っています。ディスカウント・キャッシュフロー法による公正価値は経営者により承認された原則5年間の事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しています。事業計画の策定には、マクロ経済状況、市場成長率、利益率、設備計画等の仮定を用いており、事業計画予測期間以後のキャッシュ・フローは、各事業の所在国のインフレ率で永続的に成長する仮定や、類似企業の公開市場での評価を参考にしており、多くの重要な見積りを含んでいます。
加重平均資本コストは、リスクフリーレート、所在国の経済や市場の状況を反映させるためのリスクプレミアム、インフレ率、負債コスト、類似企業の決定、類似企業に対してプレミアムもしくはディスカウントが適用されるべきかの決定等、多くの見積りを使用して算出しています。
当年度の減損判定においては、DSBのれんについて公正価値が帳簿価額を下回っていたため、のれんの減損損失を計上しました。その他ののれんについては公正価値が帳簿価額を上回っております。
各オペレーティングセグメントの当期末連結貸借対照表におけるのれん残高および減損テストの方法は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 Ⅱ 主な科目の内訳および内容の説明 G のれんおよびその他の無形資産」に記載しています。
・関連会社に対する投資の評価
当年度末連結貸借対照表に計上されている関連会社に対する投資および貸付金には、HCBのAliveCor,Inc.に対する持分法による投資9,721百万円が含まれており、純資産に対する当社の持分相当額を上回る9,349百万円は、主に持分法適用開始時に識別したのれん相当額によるものです。
当社は、関連会社に対する投資について、投資先の超過収益力に基づく公正価値評価を行い、その価値の下落が一時的とは認められない場合には、持分の簿価が当該関連会社の公正価値の当社持分を超過した分について持分法損失を認識しています。同社についてはスタートアップ企業であるため将来事業計画の達成可能性の不確実性やのれん相当額の重要性を鑑み当該公正価値をのれんの評価と同じ方法で算出した結果、公正価値が投資簿価を上回ることから、評価損失の計上は不要と判断しています。
(4) 生産、受注および販売の実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は、「(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討」に記載のとおりです。なお、当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額で示すことはしていません。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。