リスク
3【事業等のリスク】
(1) グローバルな事業活動を支える統合リスクマネジメント
当社グループでは、統合リスクマネジメントというグループ共通のフレームワークでリスクマネジメントを行っています。経営・事業を取り巻く環境変化のスピードが上がり、不確実性が高くなる中で変化に迅速に対応するためには、リスクへの感度を上げ、リスクが顕在化する前に察知し、打ち手を講じていく必要があるためです。
現場だけでは対処できない環境変化から生じる問題を、現場と経営が力を合わせて解決する活きたリスクマネジメントを目指し、グローバルでPDCAサイクルを回しながら、当活動の質の向上を図っています。
「SF2030」を実現していくため、企業理念やルールを守りつつ、いかに効率的、効果的で迅速なリスク判断を現場ができる仕組みを構築するかという点も重要なテーマとして、取組みを進めています。
(2) 統合リスクマネジメントの仕組みと体制
統合リスクマネジメントの枠組みは、内部統制システムの下、グローバルリスクマネジメント・法務本部長(GRL長)を推進責任者とし、オムロングループルール(OGR)(注1)「オムロン統合リスクマネジメントルール」にまとめ、グループ経営における位置づけを明確にしています。また、リスクマネージャを本社機能部門、ビジネスカンパニー、海外の地域統括本社、国内外の各グループ会社で任命し(160名)、経営と現場が一体となってグローバルの活動を推進しています。
主な活動は次の3点です。
・環境変化をタイムリーに把握して、関係者で共有し、適時に影響評価を行うこと
・定期的に、グローバルにリスクを分析して重要リスクを洗い出し、対策をとること
・リスクが顕在化し、危機が発生した場合は、即時に報告し危機対策を講じること
<企業倫理リスクマネジメント委員会体制> |
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GRL長を委員長、主要なリスクマネージャを構成員とする企業倫理・リスクマネジメント委員会(原則年4回開催)においては、重要なリスクの発生状況、環境変化、リスク対策の状況について議論・共有するとともに、グループ全体のリスク評価を行っています。また、危機が発生した場合には、速やかに経営報告され、リスクのランクに応じて危機対策本部を通じて対応を行っています。これらリスクマネジメントの活動状況については、適宜、執行会議や取締役会に報告するとともに、内部監査部門による内部監査を受けています。 |
<統合リスクマネジメントのサイクル>
(注1)当社グループでは、公正かつ透明性の高い経営を実現する経営基盤として、グループ共通の「オムロングループルール(OGR)」を制定しています。OGRは、リスクマネジメントの他、会計・資金、人財、情報セキュリティ、品質保証等の主な機能に対し制定されています。環境変化等を適宜・適切にルールへ反映するため、毎年見直しを行っています。
(3) グループ重要リスクとその分析
当社グループでは、「SF2030」において、「新たな社会・経済システムへの移行」に伴い生じる社会的課題を解決するため、事業ドメインにおける社会価値創出、事業とサステナビリティとの一体としての取組みを行っています。2024年4月から2025年9月については構造改革期間とし、構造改革プログラム「NEXT2025」を実行中です。これらを遂行する中で対処すべき重要な要素を、リスクと捉えています。
リスクのうち、当社グループを運営する上で、グループの存続を危うくするか、重大な社会的責任が生じうるリスク(Sランク)および重要なグループ目標の実現を阻害するリスク(Aランク)を「グループ重要リスク」に位置付け、対策の実行状況やリスク状況の変化をモニタリングしています。「グループ重要リスク」に対して適切な対策が講じられない場合、重大な社会的責任が生じたり、事業戦略の失敗につながり、結果的に企業価値が喪失する可能性があります。
<2023年度末時点のリスク評価>
2023年度末に実施した当社グループのリスク分析に基づくグループ重要リスクのテーマは下表の通りです。事業ポートフォリオや人員数・能力の最適化等「NEXT2025」の実行に伴うリスク、事業スピードの加速や収益性の改善をはかる中でのグループガバナンス・コンプライアンスリスク等については特に注視をしていきます。これらのリスクは、適切かつ充分な対策が取られなかった場合、長期ビジョン目標の実現、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があるため、投資家の皆様の判断にも重要な影響を及ぼす可能性がある事項と考えています。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月21日)現在において当社グループが判断したものです。
<事業等のリスクの全体像>
<グループ重要リスクへの対応>
① 事業ポートフォリオ |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
当社グループが解決すべき社会的課題に対する取組みの必要性は高まる一方で、足元では中 |
国経済の成長鈍化やサプライチェーンの混乱など経済環境が悪化、今後もボラティリティが高い不透明な状況が続くことが見込まれます。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの各事業における活動エリアや製品展開に大きな影響があります。 ・制御機器事業における中華圏エリアでの事業展開 ・ヘルスケア事業における血圧計事業 ・社会システム事業におけるエネルギーソリューション事業 |
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影響 |
成長業界・エリアの需要拡大に的確に応えていくことは、新たな社会価値創出、事業機会と |
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なります。一方、現在依存度の高い中華圏エリアや各事業で成長の牽引役となる事業・製品の事業環境が想定以上に悪化し、環境変化に対応するポートフォリオの最適化が図れなかった場合、売上減少等の業績低迷や、収益を伴った持続的成長が実現しないリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
『構造改革プログラム「NEXT2025」』のもと、欧州・米州への事業展開を加速する等、中国 |
依存を低減する業界・エリアポートフォリオの構築に取り組みます。 |
※『構造改革プログラム「NEXT2025」』の詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)構造改革「NEXT2025」」をご参照ください。
② 地政学 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
米中関係やロシア・ウクライナ情勢、中東紛争などを巡る各国・地域の政策により、グロー |
バルビジネスの環境は複雑さを増しています。特に半導体等重要物資の安定供給や先端技術開発の促進、輸出入や投資への規制等、経済安全保障政策は、多国間枠組みの形成・活用を含め更に進展しています。今後、政治的対立や人権問題、紛争リスクの高まりによる各種措置の更なる拡大や各国での選挙に伴う政策転換の可能性もあり、これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・中国・アジア等の主要工場からグローバル市場への製品供給 ・米国等におけるロボット等 先端技術に対する投資や事業拡大 ・経済安全保障政策の対象製品に関わる顧客への販売、金融・交通等 社会インフラに関する事業の推進 |
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影響 |
グローバルでのサプライチェーン再編等の動向は、新たな社会価値創出、事業機会となりま |
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す。一方、市場変化への対応が十分でなかった場合、当社グループへの需要が減少し、また、新たな法規制への対応が適切に行われなかった場合には、輸出規制や制裁違反等が発生する可能性があります。その結果、売上減少・戦略の見直しや重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
事業対応方針については、取締役会や執行会議等の経営会議体にて議論し、決定していま |
す。法規制対応については、各主管部門が統括し、例えば、輸出規制はグローバルリスクマネジメント・法務本部が輸出管理全社委員会のもと、グローバルに安全保障取引管理を行っています。 ・関連OGR:統合リスクマネジメントルール・安全保障取引管理ルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・地政学リスク影響を低減する中長期的な生産・研究開発等の体制検討と推進 ・グローバルの政治・経済情勢や法規制動向のモニタリング、経済制裁等に対する影響分析と対応 [具体的なリスク対応例:ロシア・ウクライナ情勢] 安全保障取引管理について、グローバルに懸念のある取引を事前審査するプロセスを強化することにより、複雑化する各国の輸出規制や制裁に対する対応体制の整備を進めました。 |
③ IT・情報セキュリティ |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
社会経済活動の急速なデジタル化は、データに基づく経営判断やAI・IoT機器を中心とした新 |
たな製品・サービスの開発等 企業運営に変革をもたらしています。グローバルにデータ流通の基盤が整備されていく一方で、AIの悪用等によるサイバー攻撃や人財の流動化等に伴う技術情報漏えいのリスクはますます高まり、また、プライバシー保護や経済安全保障の観点から個人データや技術情報等、重要情報の取扱いや移転について各国で規制の強化も進んでいます。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・サプライチェーンも含むグローバルのシステムによる事業運営 ・新たな経営システムの構築を目的とした「コーポレートITシステムプロジェクト」 ・データソリューション事業での健康データの活用等「モノとサービス」での新規ビジネスモデルの推進 |
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影響 |
医療におけるビッグデータ活用等の動向は、新たな社会価値創出、事業機会となります。一 |
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方、サイバー攻撃対策や技術情報の管理等の情報セキュリティ対応が十分でなかった場合、当社グループの事業活動や製品・サービス提供の停止および情報の漏えいといったセキュリティインシデントが発生する可能性があります。また、グローバルの個人データ規制について、特に国外移転対応が適切に行われなかった場合、法令違反が発生する可能性があります。その結果、売上減少や重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
基本方針として「情報セキュリティ基本方針」を新たに制定し公表しています。施策につい |
ては、統括担当取締役の監督のもと、情報セキュリティ、製品セキュリティ、個人情報管理の領域ごとに、各本社機能本部長が執行責任者として統制・管理しています。各領域を横断する課題については、統括担当取締役を議長とする「サイバーセキュリティ統合会議」を開催し、解決しています。さらに、経営レベルで推進の方向付けを行うために、社長を議長とする「情報セキュリティ戦略会議」にて優先課題と戦略を議論しています。実行面においても、サイバーセキュリティ統括担当役員として、グローバルビジネスプロセス&IT革新本部長を議長とし、全地域統括本社のIT責任者が参画する「情報セキュリティ推進会議」を通じて施策を推進・管理しています。また、個人データについては、グローバルリスクマネジメント・法務本部長の責任のもと、各国法令動向や当社グループの状況を把握し、法規制対応の強化を図っています。 ・関連OGR:IT統制ルール・情報セキュリティルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・グローバル標準のフレームワークであるNIST-CSF(注1)に準拠した評価と対策の強化 ・外部専門機関を通じた包括的な脅威情報の収集とグループ内への対策の展開 ・インシデント対応オフィス(CSIRT)による事故発生時の迅速な報告と被害最小化に向けた対応 ・高リスクのサプライチェーンのセキュリティ確保のためリスク評価と対応の推進 ・情報リテラシー向上のための社員教育・サイバー攻撃訓練の実施 ・Webサイトの脆弱性診断と改善の実行 ・グローバルでの個人データ規制への対応体制構築 [具体的なリスク対応例:有事を想定した対応体制・プロセスの進化] ランサムウエア危機管理手順の整備、経営層向けサイバー攻撃演習訓練、地域統括本社毎のインシデント対応訓練などの活動により、有事における対応力の向上を図りました。 |
(注1)NIST-CSF:米国国立標準技術研究所(NIST)が2014年に発行したサイバーセキュリティフレームワーク(CST)。
汎用的かつ体系的 なフレームワークで、米国だけでなく世界各国が準拠を進めている。
④ 品質 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
品質は企業に対する社会的信頼の基盤です。新技術を活用した新規性の高い製品・サービス |
においても、高い安全性や正確性の確保が求められ、AI利用や製品セキュリティに対する新たな法規制等も検討・制定が進んでいます。また、人の健康や環境負荷低減に対する社会的要請はますます高まり、有機フッ素化合物(PFAS)等をはじめとする化学物質の含有やリサイクル、表示等に関する規制が各国で厳格化しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・不具合発生時に火災や事故、設備の停止等につながる制御機器やエネルギーソリューション製品の展開 ・様々な国の製品安全や化学物質、サイバーセキュリティ等の法規則が適用されるグローバル製品の展開 ・製造現場のデータ活用サービスi-BELT等「モノとサービス」を組み合わせたビジネスモデルの推進 |
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影響 |
新たな技術や製品安全等の高い基準にグローバルで対応した品質の確保は、新たな社会価値 |
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創出、事業機会につながります。一方、製品やサービスの設計・検査の不備や、品質不具合発生時等の顧客対応や報告が十分でなかった場合、グローバルの法規制・規格等への準拠が適切に行われなかった場合には、当社グループ製品の大規模リコール、製品の生産・流通の停止等が生じる可能性があります。その結果、損失の発生や売上減少、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
社長を最高責任者とする品質保証体制を構築し、「品質第一」を基本とする「品質基本方針」 |
のもと、グローバル購買・品質・物流本部が推進しています。重大な品質問題が発生した場合は、取締役会の監督のもと、迅速かつ適切に対応を行っています。 ・関連OGR:品質保証ルール、製品品質リスク管理ルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・ISO9001等(ISO13485:医療機器産業、IATF16949:自動車産業)品質マネジメントシステム(QMS)の取得 ・サービス事業に適合したQMSの適用展開 ・安全リスクが高い技術(リチウムイオン電池、パワーデバイス等)に関する品質技術確立 ・製品セキュリティ体制強化(外部からの脆弱性情報収集と対応(PSIRT)・セキュリティ監視活動等) ・製品環境や安全関連の法規制・規格の動向の把握、影響評価を行う管理体制の強化 ・品質相談窓口の設置・運用、品質コンプライアンス研修・現場品質点検の実施 |
⑤ 会計・税務 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
適正な財務報告と税務コンプライアンスは企業活動の基本です。企業のグローバル化や取引 |
のボーダーレス化が加速し、新たなビジネスモデルやサービスが生まれる中で、会計基準も高度化し税制も複雑化しています。また、各国間の協調・連携が進み企業に対する税の透明性に対する要請も高まっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・グローバルでの顧客との取引・グループ間取引 ・「モノ」に加え「モノ」と「サービス」の組合せによる多様なサービス展開 |
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影響 |
グローバルの会計基準への準拠と税務手続きに対する信頼の確保は、新たな社会価値創出、 |
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事業機会につながります。一方、新サービスや事業、構造改革等を行うに際して、資産が適切に管理されなかった場合や、会計処理が適切に行われなかった場合、また、各国の租税法や移転価格税制、関税法、および当局の執行動向に適切な対応が行えなかった場合、決算修正、多額の追徴や和解金の支払い、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
財務報告に係る内部統制の基本的枠組み、取締役会で承認した「税務方針」(注1)のもと、グ |
ローバル理財本部を中心に、会計・税務の適正性を担保するための体制・ルールを整備し、運用しています。 ・関連OGR:会計・資金ルール、不正統制ルール、J-SOX推進ルール、関税・通関ルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・内部統制の自主点検強化とリスク兆候への重点監査 ・外部専門家等を活用した会計基準の定期的な情報収集と影響等の調査・対応 ・OECDの各種報告書や新しい国際課税ルールの整備状況などを踏まえた国際税務に係る方針の見直し ・現地法人と連携した各国・地域における税制や当局の執行状況の変化への対応 ・関税コンプライアンス体制およびモニタリングの強化 |
(注1)「税務方針」については下記をご参照ください。
https://sustainability.omron.com/jp/governance/tax/
⑥ 事業継続リスク(自然災害等) |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
洪水・豪雨、巨大地震等の自然災害や感染症の発生により、社会が機能不全に陥る可能性が |
グローバルで継続しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・グローバルの様々な国や地域に存在する仕入先や生産拠点 ・緊急時においても継続が求められる社会インフラや人の健康管理に使用される製品・サービスの提供 ・防災・減災需要に対するエネルギーソリューションビジネスの展開 |
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影響 |
企業に対する事業継続の要請や社会のレジリエンスを高める取組みは、新たな社会価値創 |
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出、事業機会となります。一方、予期できない災害等が発生した場合、社会インフラ・経済活動の大規模停止、自社工場の生産停止、重要仕入先からの長期にわたる部品供給停止等により、事業活動の一部停止や縮小等が生じる可能性があります。その結果、売上減少やブランド価値の棄損につながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
人身の安全、社会インフラの維持、復興への全面協力等を定めた基本方針のもと、各ビジネ |
スカンパニーと本社機能部門とが連携し、生産、購買調達、物流、ITを含めた事業継続計画を整備しています。 ・関連OGR:統合リスクマネジメントルール・購買ルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・有事を想定したシミュレーション・訓練 ・社員の安否確認システムの運用、リスクに応じた事業所での非常食や飲料水の備蓄対応 ・仕入先の生産地情報の一元管理、代替え生産拠点の評価体制整備 ・緊急時のエスカレーションルート・影響を把握する仕組みの整備 |
⑦ 環境 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
脱炭素・環境負荷低減の実現に向け、気候変動を「機会」と「リスク」の二側面で捉えた企 |
業としての社会的責任の実践と更なる競争優位性の構築が求められています。また、企業価値評価・投資活動に反映させるため、企業の環境課題への取組みに対する開示要請は年々高まっており、内容の第三者保証を法規制化する動きも進んでいます。一方で、温暖化に起因する洪水や干ばつ等の頻発化により生じる食料・水不足、プラスチック問題、生態系の破壊等は地球レベルでの社会課題となっており、グローバル各国でカーボンニュートラルに向けた政策が加速する中、企業に対する温室効果ガス排出量の削減やトレーサビリティの確保等の要請も拡大しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・制御機器事業における生産性とエネルギー効率を高める生産現場オートメーションの実現 ・社会システム事業におけるエネルギー制御技術の進化による再生可能エネルギーの普及 ・電子部品事業におけるカーボンフットプリント削減に繋がる部品の開発・提供 ・「循環型社会」実現に向けたグローバル全生産拠点での廃棄物の削減 |
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影響 |
脱炭素に貢献する製品やサービスに対するニーズの高まりは、新たな社会価値の創出と事業 |
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機会となります。一方、多くの企業が社会課題の解決に挑む中、戦略と実行の成否は事業競争力に直結します。また、販促活動においていわゆるグリーンウォッシングといわれる不適切な開示を行った場合には、社会的信用が失われ、その結果、取引停止・製品の開発中止や戦略の見直し、ブランド価値の棄損につながる可能性があります。 |
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対応 |
体制 |
環境課題への対応については、取締役会決議により制定されたオムロン環境方針に基づいた |
活動を行っています。具体的な執行体制としては、社長CEOから権限委譲されたサステナビリティ推進担当役員の責任のもと、グローバルコーポレートコミュニケーション&エンゲージメント本部が中心となって取組みを推進し、自社領域はグローバル人財総務本部長、サプライチェーン領域はグローバル購買・品質・物流本部長、事業戦略領域は各ビジネスカンパニー長がそれぞれ責任を持って対応しています。 ・関連OGR:環境経営ルール、購買ルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・Scope1・2、Scope3カテゴリー11ごとに目標を設定した温室効果ガスの削減の加速 ・回収・リサイクルの拡大、循環型の原材料調達、再資源化率の最大化等による循環経済への移行 ・TCFD提言に沿った情報を含む環境課題にかかる情報開示 |
※環境リスクへの対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、(2)気候変動への対応」をご参照ください。
⑧ 人権 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
持続可能な社会の実現に向け、人権課題に対して、自社だけでなくバリューチェーン全体を |
通じて、企業が責任を果たすことが求められています。一方で、強制労働、児童労働、低賃金や未払い、長時間労働、安全や衛生が不十分な労働環境、ハラスメント等の是正は社会課題となっており、デューディリジェンスによるサプライチェーンの可視化や人権侵害懸念国・地域からの輸入禁止等により、人権の尊重を法規制で担保する取組みが進んでいます。また、AIの活用等技術革新による新たな人権課題も生じています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・中国・アジアを含めグローバルの事業拠点とサプライチェーン ・AIを活用した製品・サービスの研究開発・提供 |
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影響 |
人権に配慮したバリューチェーンの構築やAIの活用は、新たな社会価値の創出、事業機会と |
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なります。一方、バリューチェーン上の人権課題に適切な対応を行わなかった場合やAIに対する法規制等に準拠せず製品やサービスを通じて差別などの人権問題を発生させた場合には、社会的信用が失われ、その結果、取引停止・製品の開発中止や戦略の見直し、ブランド価値の棄損につながる可能性があります。 |
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対応 |
体制 |
人権課題への対応については、取締役会決議により制定されたオムロン人権方針に基づいた |
活動を行っています。具体的な執行体制としては、社長CEOから権限委譲されたサステナビリティ推進担当役員の責任のもと、グローバルコーポレートコミュニケーション&エンゲージメント本部が中心となって取組みを推進し、自社領域はグローバル人財総務本部長、サプライチェーン領域はグローバル購買・品質・物流本部長、事業戦略領域は各ビジネスカンパニー長、AIを含むテクノロジーの倫理的な活用については技術・知財本部長、救済メカニズムについてはグローバルリスクマネジメント・法務本部長がそれぞれ責任を持って対応しています。 ・関連OGR: HRMルール、労働安全衛生管理ルール、購買ルール |
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取組 |
具体的には、企業の人権尊重責任を果たすために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則 |
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(UNGP)」に沿って、以下を含む対策を推進しています。 ・RBA(注1)アセスメントツールを活用したリスク評価 ・仕入先に対するサステナブル調達ガイドラインの提示・遵守状況確認 ・AIに関する情報収集およびAIを事業で活用するための社内ルールの整備 ・グローバルでの人権救済メカニズムの運用 |
(注1)RBA:Responsible Business Allianceの略。電子業界を中心とするグローバルなCSRアライアンス。
※人権リスクへの対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、(4)人権尊重に関する取組み」をご参照ください。
⑨ 人財・労務 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
グローバルで人財の流動化が進むなか、IT人財をはじめ先端技術を保有する希少な人財の獲 |
得競争がこれまで以上に激化しています。また、世界的なインフレや人手不足を契機として、賃金水準はグローバルで上昇傾向にあります。このような環境では、人財から選ばれる人的資本経営を実行し、従業員のエンゲージメントを高めることが重要になってきます。加えて、近年は社会から人的資本の情報開示が求められるようになっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・既存人財に対する更なる能力開発と、必要な能力を有する人財の獲得 ・ダイバーシティ&インクルージョンの加速 |
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影響 |
スペシャリティを備えた多様な人財が集い、一人ひとりが主体性を持って能力を発揮し続け |
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る人財づくり・環境づくりは企業価値向上の原動力となります。一方、構造改革期間での人事施策の効果が十分でない場合は、新たな人財の採用が困難になるだけでなく、希少なスキルや経験を持つ従業員の流出や労務トラブルにつながる可能性があります。加えて、人的資本の情報開示が不適切な場合、投資家からの信頼低下等により、ブランド価値の毀損にもつながる可能性があります。 |
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対応 |
体制 |
重要な人財戦略については、取締役会・執行会議にて議論し、決定しています。CHRO(最高人 |
事責任者)の下、グローバル人財総務本部が中心となり施策を実行しています。 ・関連OGR:HRMルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・人財ポートフォリオの再構築 ・企業理念を全社員に浸透させ、共感と共鳴の拡大を促す取組み「TOGA」の実行 |
※人財・労務リスクへの対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、(3)人的資本に関する取組み」をご参照ください。
⑩ 知的財産 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
社会課題を解決しながら持続的に企業価値を向上するためには、強みのある知的財産・無形 |
資産を形成した上で価値創造ストーリーと連結することが必要不可欠となり、また、技術開発やビジネスモデルの構築においてオープンイノベーションやアライアンスが加速しています。一方で、知的財産を巡る企業や国家間の競争や対立も激化するとともに、スタートアップ企業との事業連携における公正取引上の課題も指摘されています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・ロボティクス、センシング、パワエレ、AI・データ解析等の注力する技術領域 ・データヘルスケア、食生産のオートメーション、製造現場のDX支援等の新規事業創造 |
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影響 |
知的財産・無形資産への投資を促進し競争力の源泉とする動向は、新たな社会価値創出、事 |
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業機会となります。一方、その取得や保護が十分でなかった場合、技術・ノウハウの流出やブランドの模倣等が発生し、事業競争力を喪失する可能性があります。また、特許等の侵害や不正使用に関する紛争が発生した場合、当社グループの製品・サービスの提供停止や巨額の損害賠償請求・ロイヤリティの支払い等が生じる可能性があります。その結果、損失の発生や売上減少、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
技術・知財本部を主管として、基本方針に基づく知的財産活動を実行しています。また、知 |
的財産戦略については定期的に取締役会にて報告・議論されています。 ・関連OGR:知財管理ルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・IPランドスケープを活用して研究テーマの方向性決定や協業先選定の確度を高める取組み ・事業や研究開発と連動させた知的財産戦略を策定・実行し、強みのある知的財産権を蓄積 ・研究開発および設計にあたっての第三者の知的財産権調査 ・第三者の当社グループへの知的財産権の侵害に対する分析・評価と権利行使の強化 |
⑪ M&A・投資 |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
社会課題を解決する手段として、テクノロジーの進化が求められる中、技術力のある企業と |
のアライアンス、M&A、出資を通じたイノベーションの加速が期待されています。一方で、投資先の業績・評価の変動に加え、経済安全保障政策による投資規制やIT等新たな分野における独占禁止法の運用強化等の動きもあります。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・ポートフォリオマネジメントのもとアライアンスや事業売却も含むM&A・投資の推進 |
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影響 |
戦略的なM&A・投資を通じた新たな経営資源の獲得は、社会価値創出、事業機会となります。 |
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一方、計画やデューディリジェンスが不十分であったり、PMI(Post Merger Integration)やM&A・投資先に対するガバナンスが適切に行われなかった場合には、想定したシナジー効果や提携が計画通り進まない可能性があります。その結果、多額の減損や計画の大幅な見直しにつながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
M&A・投資の方針と実行は、投資規律のもと、経営ルールに定める責任権限に基づき取締役 |
会等の経営会議体にて議論・決定し、案件ごとに、ビジネスカンパニーと本社部門および外部専門家から構成されるプロジェクトチームにより推進しています。 ・関連OGR:経営ルール |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・事業戦略に基づいたM&A・投資候補の探索・評価 [具体的なリスクへの対応例:上場子会社に対する監視・監督] 出資先であるJMDC社に対してTOBを実施し、23年10月に連結子会社化しました。同社の戦略・事業計画や進捗と課題について、当社取締役会にて監視・監督を行い、同社の持続的成長を実現する体制を構築します。 |
⑫ グループガバナンス・コンプライアンス |
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リスクシナリオ |
環境認識 |
気候変動や高齢化等の社会課題に対する取組みはグローバルで加速し、企業の果たす役割が |
重要になる中、公正な取引に対する社会的要請も益々高まっています。国際機関や各国政府により反競争法的行為や贈収賄防止等に対する法規制は厳格化するとともに、ITやAI等技術の進化やアライアンス等によるイノベーションの推進等に対応した規制の検討や運用も進んでいます。また、一部の新興国、地域においては法による統治機能が脆弱であったり、政情が不安定であることから、汚職や腐敗等が社会問題化する場合があります。日本では、昨今の円安やエネルギー価格高騰等の影響から、下請事業者に対する保護要請が高まっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・各国政府の許認可を含む製品・サービスのグローバル展開 |
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影響 |
グローバルな需要拡大に的確に捉えること、企業のイノベーションに対する期待は、新たな |
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社会価値創出、事業機会となります。一方、事業スピードの加速や収益性の改善が求められ、各地域やグループ会社における事業運営の自立化も進む中、ガバナンス不全や社内管理の不備により、公正な取引や会計などに関する法規制・コンプライアンス違反が発生した場合には、重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。 |
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対応 |
体制 |
企業倫理・コンプライアンスを含む内部統制としての対応方針は、取締役会で議論し決定し |
ています。「オムロングループマネジメントポリシー」のもと、OGRに基づくグループ会社におけるガバナンス体制の構築と運用、企業倫理リスクマネジメント委員会による活動の展開を行っています。 ・関連OGR:法人運営ルール、倫理行動ルール、内部監査ルール、購買ルール等 |
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取組 |
具体的には、以下を含む対策を推進しています。 |
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・各機能主管部門におけるグローバルでの牽制とモニタリング |
配当政策
3【配当政策】
当社は、定款の定めに基づき取締役会決議によって行う中間配当を除き、剰余金の配当等の決定については株主総会に諮ります。
当社は、株主の皆さまへの還元を含む利益配分に関しては、次の基本方針を適用しています。
キャッシュアロケーションポリシー
(1) 長期ビジョンの実現による企業価値の最大化を目指し、中長期視点で新たな価値を創造するための投資を優先します。ただし、2024年4月1日~2025年9月30日までの「構造改革期間」は、全社のリソースを集中して構造改革プログラム「NEXT2025」に取り組み、「業績の立て直し」と「収益・成長基盤の再構築」を実現するために必要な投資を最優先で実行します。その上で、安定的・継続的な株主還元を実行していきます。
(2) これら価値創造のための投資や株主還元の原資は内部留保や持続的に創出する営業キャッシュ・フローを基本とし、必要に応じて適切な資金調達手段を講じて充当します。なお、金融情勢によらず資金調達を可能とするため、引き続き財務健全性の維持に努めます。
株主還元方針
(1) 中長期視点での価値創造に必要な投資を優先した上で、毎年の配当金については、「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準とします。そのうえで、過去の配当実績も勘案して、安定的、継続的な株主還元に努めます。
(2) 上記の投資と利益配分を実施したうえで、さらに長期にわたり留保された余剰資金については、機動的に自己株式の買入れなどを行い、株主の皆さまに還元していきます。
当期(2023年度)の期末配当金については、業績状況を鑑み、DOE基準ならびに過去の配当額の水準も考慮したうえで安定的・継続的な配当とするため、52円としました。2023年12月4日に実施済みの中間配当金52円を加えると、年間配当金は104円となります。
次期(2024年度)の年間配当金については、上記の方針に沿って、104円とする予定です。なお、次期の中間(第2四半期末)および期末の配当金は未定です。
<株主還元の推移>
(注)1 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本としています。
2 剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。
3 当社は、「取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めています。
4 総還元性向の算出式は次の通りです。総還元性向=(現金配当額+自己株式の取得金額)/当社株主に帰属する当期純利益(純損失)(単元未満株の買取分は含まない)。
5 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年10月27日 |
10,267 |
52.00 |
取締役会決議 |
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2024年6月20日 |
10,267 |
52.00 |
定時株主総会決議 |
<株主総利回り(TSR)の推移>
(注)TSRは、2018年度末時点の株価を基準として算出しています。