2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    34,850名(単体) 112,743名(連結)
  • 平均年齢
    43.1歳(単体)
  • 平均勤続年数
    18.2年(単体)
  • 平均年収
    9,291,084円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

 

(1)連結会社の状況

2025年3月31日現在

区     分

従業員数(人)

サービスソリューション

79,725

ハードウェアソリューション

15,485

ユビキタスソリューション

309

消去・全社

11,499

非継続事業

5,725

合計

112,743

(注)1.従業員数は就業人員(当社グループ(当社及び連結子会社)からグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)です。

2.上表のほか、当連結会計年度における平均臨時雇用人員は12,092人です。

3.当社は、当連結会計年度より「デバイスソリューション」を非継続事業に分類しております。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

34,850

43.1

18.2

9,291,084

 

区     分

従業員数(人)

サービスソリューション

23,782

ハードウェアソリューション

2,417

ユビキタスソリューション

95

消去・全社

8,556

合計

34,850

(注)1.従業員数は就業人員数(当社から当社外への出向者を除き、当社外から当社への出向者を含む。)です。

2.平均年間給与は、税込額で時間外勤務手当等及び賞与その他の臨時給与を含んでおります。なお、就業人員数から、当社外から当社への出向者を除いて算出しております。

3.平均年齢及び平均勤続年数は、就業人員の平均です。

 

(3)労働組合の状況

当社グループには、全富士通労働組合連合会等が組織されており、同組合員数は約56,000人です。なお、春季交渉など同組合との主要な交渉事項については、いずれも解決しており、労使関係は引き続き安定しております。

 

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

※1

男性労働者の育児休業取得率(%)

※2

労働者の男女の賃金の差異(%)

※1、※3、※4、※5

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

11.5

86.2

79.0

78.4

86.2

(注)1.※1は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

2.※2は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。

3.※3は男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しております。

なお、同一労働の賃金に差はなく、ジョブ(職責)レベル毎の人数構成の差によるものです。

4.※4の賃金は、基本給、賞与、各種手当等の労働の対償として期間中に労働者に支払ったものとしています(ただし、通勤手当及び退職手当は除いています。)。

5.※5の賃金は、当社グループ会社から他社への出向者、及び他社から当社グループ会社への出向者のうち当社グループ会社からの賃金の支払いがない者かつ給与データを当社グループ会社で管理していない者を除きます。

 

② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

※1

男性労働者の育児休業取得率(%)

※2

労働者の男女の賃金の差異(%)

※1、※3、※4、※5

全労働者

うち正規雇用

労働者

うちパート・有期労働者

富士通Japan㈱

10.3

78.6

76.1

75.4

77.7

富士通ネットワークソリューションズ㈱

3.1

79.2

75.6

72.2

87.9

富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ㈱

4.4

84.6

76.0

70.6

118.3

Ridgelinez㈱

14.4

89.5

72.2

74.0

44.4

㈱トランストロン

1.0

100.0

63.8

65.2

30.8

エフサステクノロジーズ㈱ ※6

4.9

91.0

79.0

78.5

83.8

富士通フロンテック㈱

4.8

110.0

71.7

68.7

60.6

富士通テレコムネットワークス㈱

0.0

87.5

66.0

69.1

81.1

㈱富士通パーソナルズ

0.0

50.0

78.2

71.2

137.1

(注)1.※1は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

2.※2は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。
 なお、該当事業年度以前に配偶者が出産した男性労働者で該当事業年度中に休職または育児目的休暇を取得した人も含むため、取得割合は100%を超過する場合があります。

3.※3は男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しております。

    なお、同一労働の賃金に差はなく、ジョブ(職責)レベル毎の人数構成の差によるものです。

4.※4の賃金は、基本給、賞与、各種手当等の労働の対償として期間中に労働者に支払ったものとしています(ただし、通勤手当及び退職手当は除いています。)。

5.※5の賃金は、当社グループ会社から他社への出向者、及び他社から当社グループ会社への出向者のうち当社グループ会社からの賃金の支払いがない者かつ給与データを当社グループ会社で管理していない者を除きます。

6.※6 ㈱富士通エフサスは、2024年4月1日付で、エフサステクノロジーズ㈱に商号を変更しております。

7.連結子会社のうち主要な連結子会社以外のものについては、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報 (2)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティに対する考え方及び対応

当社グループでは、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスとし、その実現のための2030年に向けたビジョンとして「デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになること」を掲げています。

また、優先的に取り組むべき重要課題として、「経営におけるマテリアリティ」を2023年に設定しました。このマテリアリティの考え方を、事業戦略に組み込むことを通じて、サステナビリティへの取り組みを一層強く推進してまいります。経営戦略の全体像の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

<マテリアリティ>

中長期的な視点で2030年を見据え、優先的に取り組むべき重要課題を、「必要不可欠な貢献分野」、「持続的な発展を可能にする土台」の2つのカテゴリーに分類し、具体的には、6つのテーマとそれに基づく重点項目を特定しています。

詳細については、下記「②戦略<マテリアリティ>」をご参照ください。

なお、2025年4月にマテリアリティの重点項目の見直しを行いました。見直し後のマテリアリティは、今後、当社ウェブページ(https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/materiality/)で2025年7月に開示予定です。

 

 

<GRB>

マテリアリティに包含され、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みを「グローバルレスポンシブルビジネス(Global Responsible Business : GRB)」(以降“GRB”と記載)と呼称しています。

GRBの詳細は下記「② 戦略<GRB>」をご参照ください。

 

 

全社レベルでのマテリアリティへの取り組みを推進し、経営における重要なリスクの低減・回避と事業機会の拡大を図り、当社グループの企業価値向上と、地球環境問題、デジタル社会、人々のウェルビーイングにおいてネットポジティブの実現に貢献していきます。

なお、2025年度よりGRBは解消し、推進してきた取り組みはマテリアリティに統合して実行していきます。

 

①ガバナンス

<取締役会による監督体制>

当社グループはサステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針の策定を行っています。これらの結果は、経営会議を通じて取締役会に報告されます。

 

サステナビリティ推進体制

 

また、当社グループは、全社レベルのリスクマネジメント体制において、取締役会の監督の下、代表取締役社長を委員長としたリスク・コンプライアンス委員会が、サステナビリティ課題を含むグループ全体のリスク分析と対応を行っています。同委員会は、グループ全体のリスクマネジメント及びコンプライアンスに関わる意思決定機関であり、抽出・分析・評価された重要リスクについて、定期的に取締役会に報告しています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

<リスクと機会の評価・管理における経営者の役割>

代表取締役社長は、サステナビリティ経営委員会及びリスク・コンプライアンス委員会の委員長を務め、最高位の意思決定の責任と業務執行の責任を担っています。取締役会は、経営会議及びリスク・コンプライアンス委員会を通じた報告をもとに監督する責任を有します。また、CSSOはサステナビリティの最高責任者として、取締役会、経営幹部への変革提案とサステナビリティ関連業務の執行を推進しています。加えて、業務執行取締役の賞与の評価指標に、ESGに関する第三者評価が含まれています。

(注)CSSO:Chief Sustainability & Supply chain Officerの略。富士通グループとして事業と連動したサステナビリティを起点とした重点施策を実行し、更にサプライチェーン全体で環境・社会課題の解決を目指す。

 

②戦略

当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、事業全体でのマテリアリティを特定し、サステナビリティ経営を推進しています。また、マテリアリティの中で、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みをGRBとして活動を展開しています。

 

<マテリアリティ>

・マテリアリティ 2つのカテゴリー、6つのテーマと18項目(2025年3月現在)

これまで当社グループでは、CSRに限定した重要課題(マテリアリティ)を定めておりましたが、2023年度にビジネスを通じたお客様・社会への価値提供という観点も取り入れ、社内外の様々なステークホルダーの声を反映し、事業活動として優先的に取り組むべき重要課題としてマテリアリティを設定しました。

2030年を見据え、「自社」及び「ステークホルダー」の観点から評価を行い、優先的に取り組むべき重要課題を、「必要不可欠な貢献分野」、「持続的な発展を可能にする土台」の2つのカテゴリーとして特定しました。

必要不可欠な貢献分野については、「地球環境問題の解決」、「デジタル社会の発展」、「人々のウェルビーイングの向上」の3つのテーマに貢献する価値を、Fujitsu Uvanceを中心とした事業を通じて、お客様や社会に提供します。加えて、この3つのテーマで2030年の非財務指標も設定しました。詳細については、「④指標及び目標 <マテリアリティ 2030年非財務指標>」をご参照ください。

また、持続的な発展を可能にする土台については、当社グループの価値創造の源泉であるとして、「テクノロジー」、「経営基盤」、「人材」を強化し、新たなビジネスモデルやイノベーションの創出を支えます。

 

 

・マテリアリティの特定プロセス

当社グループでは、ダブル・マテリアリティの原則に基づき、企業と環境・社会の相互影響(環境・社会課題が当社に与える財務的な影響、当社活動による環境・社会に与える影響)を考慮しマテリアリティを特定しました。

 

実施ステップ

実施内容

Step1

社会課題の整理・抽出

・2030年の未来を見据えたメガトレンドを踏まえ、様々な社会課題を整理したロングリストを作成(163課題)

・ロングリストから、類似項目の統合や、事業と関連性の少ない項目を削除し、最終的に40個の社会課題を抽出

Step2

優先順位付け

・抽出された社会課題をもとに、幅広く社内外のステークホルダーに対するアンケートやインタビュー、及びデスクトップ調査を実施。2030年の未来を見据え、各課題をリスク・機会両方の側面で、「当社にとっての重要度(環境・社会課題が当社に与える財務的な影響)」及び「ステークホルダーにとっての重要度(当社活動による環境・社会に与える影響)」の視点から包括的に評価・採点を行い、社会課題の優先順位を示すマテリアリティ・マトリックス案(40課題から25課題に絞り込み)を作成

・個別インタビュー、サステナビリティ経営委員会等を通じて、マテリアリティ・マトリックス案について富士通の独自性(富士通らしさ)といった観点から妥当性に関する評価・討議を実施し(執行役員・業務執行取締役による評価・討議に加え、非執行取締役、監査役によるレビューを含む)、マテリアリティ・マトリックスを最終化(25課題から18課題に集約)

・マテリアリティのコンセプト整理を行い、18課題を2つのカテゴリー、6つのテーマに分類・構造化

 

マテリアリティ・マトリックス

 

 

Step3

マテリアリティの決定

・サステナビリティ経営委員会を経て、特定したマテリアリティ及び全社的な取り組み推進の方向性について審議、承認

・マテリアリティを含む中期経営計画を取締役会にて審議、承認

Step4

レビュー、見直し

・定期的にレビュー・討議を実施予定

 

・マテリアリティへのアプローチ

マテリアリティに対するリスク・機会の認識を踏まえ、2025年度に向けたアプローチを検討・整理しました。リスクについては富士通自身の社内における取り組みを中心に施策を実施し、機会についてはFujitsu Uvanceをはじめとしたビジネスを拡大することによって社会課題を解決し、お客様・社会に価値を提供していきます。マテリアリティへのアプローチの推進により、当社事業、社会に対するネガティブなインパクトの縮小、ポジティブなインパクトの拡大を促進し、ネットポジティブの実現に貢献します。

(凡例)●:社内の取り組み、□:お客様・社会への事業展開

マテリアリティ

2025年度に向けたアプローチ

(主な取り組み)※2023年度時点

気候変動
(カーボンニュートラル)

●事業拠点のGHG排出量の削減(省エネルギーの推進と再生可能エネルギー使用量の拡大)

●製品の省電力設計の推進、サプライチェーンにおけるGHG排出量の削減

□サプライチェーンのGHG排出量の可視化・削減

□工場等設備のエネルギー使用量の可視化(一次データの収集自動化) 等

資源循環
(サーキュラーエコノミー)

●事業拠点の水使用量削減、サプライチェーン上流における水資源保全意識の強化

●製品の省資源化・資源循環性向上の推進 等

□ブロックチェーン活用やリサイクルによるトレーサビリティの強化とロスの削減

□生産品質等の可視化による材料の有効活用の促進 等

自然共生
(生物多様性の保全)

●サプライチェーンを含む自社の企業活動の領域における、生物多様性への負の影響低減、正の影響増加

□生物多様性に配慮した事業活動において、事業計画シミュレーションによる環境保全と影響度の可視化

□新たな生産方式の採用・材料開発による水、森林資源の保護・過剰消費の抑制

情報セキュリティ確保

●ガバナンス強化:経営の能動介入及び現場セキュリティ体制強化による施策実行の迅速性・実効性の向上

●サイバー脅威への対策強化:予兆を含むセキュリティリスク可視化・対処、情報管理の強化 等

□セキュアなHybrid IT基盤の提供により、顧客システム/事業の信頼性確保

□公共/金融機関などミッションクリティカル領域に対し、レジリエントなHybrid IT基盤の提供と、ITガバナンス、セキュリティガバナンスの強化 等

デジタル格差の解消

□先端医療の民主化と、患者に合わせた最適化

□原材料トレーサビリティ・証明に関する課題解決、意思決定の高度化 等

情報・AI倫理の推進

●AI倫理の社内実践の制度化や、従業員やお客様へのAI倫理教育の提供など、AI倫理浸透に向けた活動

●AI開発者やお客様自身によるAI倫理リスクの発見を容易にし、解決案を提示する技術・エコシステムの提供

□AI倫理ガイドラインを遵守したAIの提供や、説明可能なAIの提供による、AIへの信頼性・透明性の確保(説明可能なAIを利用した企業の財務・非財務データからの不正リスクの予測による、ビジネスにおける持続的な信頼性の向上)

□AIの適切な使用に関する倫理ルールやガイドライン作成などのコンサルティングの提供

働きやすい環境の推進と労働力不足解消

□自動化技術あるいはAR/VR及びリモートコミュニケーション技術を活用した、生産・配送・出荷・販売等の作業の効率化と安全性の両立

□労働環境の変化に応じた、働く人を中心とした働き方の改革・エンゲージメント向上のための業務状況や社員の声の可視化、分析による戦略立案と実行 等

責任あるサプライチェーンの推進

●サプライチェーンにおける人権リスクの予防・軽減

●サプライチェーンにおけるGHG排出量の削減の推進 等

□サプライチェーンのトレーサビリティ向上による管理強化

□災害、パンデミック、国際政治リスクなど、多面的なサプライチェーンリスクの検知 等

QoL(生活の質)向上に向けた医療ヘルスケアの推進

□医療機関と外部機関・サービスをつなぎ、生活者・患者の診療情報と生活情報の相互流通の実現

□予防、治療から予後までのEnd-to-endのヘルスケア・ ジャーニーの個別化・最適化(パーソナルヘルスケアの実現)

生涯教育・リスキリングの推進

□AIによる個人最適化された教育の提供や時間や場所を選ばないマイクロラーニング環境の実現

□DX実現に向けて求められる人材像の定義、人財戦略・人財開発計画の策定支援、教育・研修プログラムの提供により、戦略的なリスキリングの実現

顧客・生活者体験の向上

□マーケティング/プロモーションのパーソナライズ化、新たなオンライン・オフライン購買の実現

□あらゆるブランドチャネルと消費者との接点における、一貫性があり、かつ流動的でパーソナライズされたショッピング体験の実現 等

最先端技術の開発及びイノベーションの創出

●量子:量子HPCハイブリッド技術によるお客様との新アプリケーションの開拓、世界をリードするエラー訂正技術の開発。1,000量子ビット機とさらなる大規模化技術の開発

●Computing:Computing Workload Broker技術を強化し、グラフAIを加速するフレームワークを開発、HPCをデジタルツイン等の新領域に拡大 等

ガバナンス・コンプライアンス

●コーポレートガバナンス:コーポレートガバナンスの不断の見直し、株主を含む全てのステークホルダーとの協働に資する会社情報開示の充実、株主との建設的な対話の促進

●コンプライアンス:コンプライアンス意識向上、Global Compliance Programの展開、お取引先へのコンプライアンス教育提供

リスクマネジメント

●GRCツールの活用最大化(潜在リスクマネジメントへのシフト)

●潜在リスクの高度化(データドリブンへの取り組み)

経済安全保障対応

●経済安全保障や地政学上の観点によるビジネス継続リスクの評価と、BCPへの反映等を通じたビジネス・レジリエンスの強化

●重要な先端領域を含む技術の全社横断的な管理強化 等

デジタルトランスフォーメーション(DX)

●OneFujitsuプログラム推進によるデータドリブン経営の実現、及びオペレーショナルエクセレンスの追求:合理的・迅速な意思決定を支えるリアルタイムマネジメント、経営資源のEnd-to-endでのデータ化・可視化、グローバルでのビジネスプロセス標準化

DE&I

●多様性:

・誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な組織文化の構築

・リーダーシップにおける女性の参画強化

・グローバルに通用する文化・民族の総合戦略の構築 等

●人権:バリューチェーンにおける人権リスクの予防・軽減(人権教育、有識者ダイアログ)

ウェルビーイング・人材育成

●人材基盤の強化:ジョブ型人材マネジメント、DX人材への進化 等

●ウェルビーイング向上:ウェルビーイング理解・浸透策の展開、データドリブンな可視化と分析 等

 

 

<GRB>

当社グループでは、マテリアリティの中で、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みをGRBとして掲げ、下表のとおり、6つの項目ごとにありたい姿と目標を定めています。なお、目標に対する実績は「指標と目標」に示します。

 

項目

ありたい姿と2025年度目標(KPI)

人権・多様性

 

◆人権

<ありたい姿>

実社会/デジタル社会において、「人間の尊厳」への配慮がすべての企業活動に反映され、「人を中心とした価値創造」が恒常的に行われている。

<KPI>

当社バリューチェーン全体における人権リスクを予防・軽減する。

・継続的な人権教育の実施(受講率90%以上を維持)

・有識者ダイアログの実施(毎年)

・パートナー、お客様、NGOと連携し、富士通の知見・テクノロジーで人権尊重の促進と保護へ貢献

◆ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)

<ありたい姿>

多様性を尊重した責任ある事業活動(レスポンシブルビジネス)に取り組む。誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化を醸成する。個人のアイデンティティに関わらず、誰もが違いを認め合い、活躍できるようにする。インクルーシブなデザインやイノベーションを通じて、社会により良いインパクトをもたらすよう努め、エンパワーし合うことで、持続可能な世界の実現を目指す。

<KPI>
年齢、性別、文化、民族、性的指向、アイデンティティ、能力に関係なく、すべての社員がサポートされ、尊敬されていると感じられるようにする。

・従業員エンゲージメント・サーベイの 「個人の尊重」に関する質問に対する回答結果の平均を7ポイント向上(80ポイント)

<KPI>

誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な企業文化を構築する。

・従業員エンゲージメント・サーベイの「機会の均等」に関する質問に対する回答結果の平均を4ポイント向上(74ポイント)

<KPI>

リーダーシップの役割にも重点を置き、女性の参画を同等にする。

・リーダーシップレベルの女性比率を20%に向上

<KPI>

文化に配慮した偏見のない職場環境を実現するために、尊敬と寛容を促進し、私たちが働く社会の中で経営者レベルから下位層へと反映する。

・地域やグローバルな取り組みをしつつ、グローバルに通用する文化・民族の総合戦略を構築

<KPI>

LGBTI+を受け入れるベストプラクティスを推進し、富士通のすべての拠点で社員とその家族をサポートする。

・LGBTI+の社員に平等な機会と一体感をもたらすため、FWEI(富士通ワークプレイス平等指数)を導入

<KPI>

すべての社員、お客様、及び社会のステークホルダーが、当社のソリューション、製品、サービス、システムを使用し、 当社のコミュニケーションを理解できるようにする。

・デジタルアクセシビリティをブランドコミュニケーション、顧客エクスペリエンス、ワークプレイスを含む企業戦略の一つとして推進及び提唱

ウェルビーイング

<ありたい姿>

仕事もプライベートも、自分自身が大切にしている価値観に向き合い、自身の未来の幸せに日々向かっている。

<KPI>

社員一人ひとりが自分のウェルビーイングを理解し、語ることができる。

◆ウェルビーイング

 ・理解浸透に向けて、Globalにウェルビーイングに関するメッセージの発信

◆ウェルビーイングに関しての指標開発

 ・安全衛生

 ・重大な災害発生件数:ゼロ

環境

<ありたい姿>

グローバルなSustainability Transformation(SX)リーディング企業として社会的責任を果たす。自らのカーボンニュートラル実現に加え、お客様との共創により、革新的なソリューションを提供することで様々な環境課題を解決する。

<KPI>

社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献

・自社・サプライチェーンにおけるSBT(Science Based Targets)ネットゼロ※を目指したGHG排出削減

※SBT基準に沿った当社の目標(温室効果ガス排出量ネットゼロ):温室効果ガス排出量を目標年度に基準年度の90%以上を削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること

・事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化

・ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献
 (具体的な目標は、第11期環境行動計画で策定)

コンプライアンス

<ありたい姿>

当社グループ内の役職員が高いコンプライアンス意識をもって、事業活動を行うことにより、社会の規範としての役割を果たしつつ、ステークホルダーから投資や取引、就業の対象として選択される、信頼される企業グループである。

<KPI>

コンプライアンスに係るFujitsu Way「行動規範」の組織全体の周知徹底を図るために、グループ全体にGlobal Compliance Program を展開することで、高いコンプライアンス意識を根付かせるとともに、経営陣が先頭に立って、従業員一人ひとりがいかなる不正も許容しない企業風土(ゼロ・トレランス)を醸成する。また富士通のビジネスに携わるすべての人に活動を広げ、理解を求める。

・社長を含めた富士通本社の経営層や各国グループ会社の社長等からコンプライアンス遵守の重要性をメッセージとして毎年発信

・コンプライアンス教育を、お取引先100社以上を対象に毎年提供

・贈賄、カルテルを起こさせない

サプライチェーン

<ありたい姿>

当社グループは、人権・安全衛生、環境に配慮し、多様性を確保した責任あるサプライチェーンを実現する。

<KPI>

サプライチェーンにおける、人権リスクを予防・軽減する。

・調達指針の遵守要請と並行して、お取引先の可視化・課題の特定を推進し、問題を起こさない仕組みを構築

<KPI>

サプライチェーンにおけるGHG排出削減の推進

・GHG排出削減をお取引先とともに推進するため、主要取引先に対して、国際基準に沿った数値の目標設定を要請
(主要取引先において、SBT WB2℃※相当の排出削減目標が設定されることを目標とする)

※産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑制することを規定するとともに、1.5℃までへの抑制に向けた努力を継続

<KPI>

サプライチェーンの多様性を確保

・各リージョン・国での社会的要請に基づき、多様性の指標を定め活動

・日本での活動を女性活躍とし、お取引先の取組状況を測定する仕組みを構築

コミュニティ

<ありたい姿>

社員一人ひとりが幅広いステークホルダーとの共働・共創を通して社会課題への共感性を高めて活動に取り組み、社会にスケールあるインパクトをもたらすことで、富士通の成長機会を創出し、パーパス実現に貢献している。

<KPI>
コミュニティ活動※に対する社員のマインドセット変革・組織風土醸成、及び社会へのインパクトを創出する。

・コミュニティ活動に参加した社員(従業員数の20%)

※コミュニティ活動とは:重要なステークホルダーの1つである地域社会とグローバルで協力し、社会が抱える課題解決に取り組み価値創造をめざす活動

 

③リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針や目標を策定するとともに、進捗を確認しています。また、リスク・コンプライアンス委員会は、国内外の各部門及び各グループ会社の事業活動と、それに伴う重要リスクの抽出・分析・評価を行い、これらに対する対策状況を確認したうえで、対策の策定や見直しを図っています。また、様々な対策の実行にもかかわらずリスクが顕在化した場合に備え、対応プロセスを整備しています。

そして、2023年に策定したマテリアリティの結果は、全社のリスクマネジメントにも活用しています。マテリアリティ分析から抽出された気候変動や人権、セキュリティなどの課題を、当社グループ全社で行われる潜在リスクアセスメントにおいて重要リスク項目として連動させ、その一部は「事業等のリスク」として公表しています。

事業活動に伴う主なリスクの詳細及び対応プロセスについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標及び目標

<マテリアリティ 2030年非財務指標>

2023年度からの中期経営計画の中で、マテリアリティ(必要不可欠な貢献分野)の3つのテーマ(地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイング)に対応する2030年の非財務指標を掲げました。現在、各非財務指標における具体的な実績のトラッキング等について検討しています。

 

マテリアリティ
(必要不可欠な貢献分野)

非財務指標
(2030年)

地球環境問題の解決

世界のGHG排出量削減への貢献:0.3%
(サービスソリューションによる世界CO2削減インパクト)

デジタル社会の発展

デジタルアクセシビリティ:1.5億人

人々のウェルビーイング向上

ICTスキル、教育提供数:1,200万人以上

 

<GRB 2025年度の目標と実績(2023年度)>

当社グループは、GRBの項目ごとに目標/KPIを定めております。この達成に向けて実効力のあるマネジメント体制を構築し、また各国の国内法や労働市場など国・地域ごとの違いを踏まえつつ、グローバルでより高いレベルの活動が実施できるよう、具体的なアクションを定め、目標達成に向けた取り組みを推進しております。なお、2024年度の主な実績について、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2023年度の主な実績を記載しています。

 

GRBの目標と実績

項目

2025年度目標

2023年度実績

人権・

多様性

<人権>

当社バリューチェーン全体における人権リスクの予防・軽減

継続的な人権教育の実施

(受講率90%以上を維持)

新入社員、キャリア入社者を対象に「ビジネスと人権」に関するeラーニングを実施(受講率:77%)

有識者ダイアログの実施(毎年)

富士通グループのビジネスと人権に関する取り組みをテーマに、外部有識者とのダイアログを実施(2024年3月)

<ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)>

 

年齢、性別、文化、民族、性的指向、アイデンティティ、能力に関係なく、すべての社員がサポートされ、尊敬されていると感じられるようにする

従業員エンゲージメント・サーベイの「個人の尊重」に関する質問に対する回答結果の平均を7ポイント向上(80ポイント)

「個人の尊重」 73ポイント(前年比+2)

「機会の均等」 71ポイント(前年比+1)

誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な企業文化を構築する

従業員エンゲージメント・サーベイの「機会の均等」に関する質問に対する回答結果の平均を4ポイント向上(74ポイント)

リーダーシップの役割にも重点を置き、女性の参画を同等にする

リーダーシップレベルの女性比率を20%に向上

15.75%(2024年3月)

文化に配慮した偏見のない職場環境を実現するために、尊敬と寛容を促進し、私たちが働く社会の中で経営者レベルから下位層へと反映する

地域やグローバルな取り組みをしつつ、グローバルに通用する文化・民族の総合戦略を構築

各国・地域の実態に即し、文化・民族的背景を考慮したイベントを実施

LGBTI+を受け入れるベストプラクティスを推進し、富士通のすべての拠点で社員とその家族をサポートする

LGBTI+の社員に平等な機会と一体感をもたらすため、FWEI (富士通ワークプレイス平等指数)を導入

LGBTI+の社員も働きやすい職場環境構築に向け、トップメッセージ発信、及びグローバル各地域で「プライド月間」を開催

すべての社員、お客様、および社会のステークホルダーが、当社のソリューション、製品、サービス、システムを使用し、当社のコミュニケーションを理解できるようにする

デジタルアクセシビリティをブランドコミュニケーション、顧客エクスペリエンス、ワークプレイスを含む企業戦略の一つとして推進及び提唱

ブランドコミュニケーション、顧客エクスペリエンス、ワークプレイスにわたる「アクセシビリティステートメント」策定

ウェルビーイング

自身のウェルビーイング実現に向けて、具体的に行動している

理解浸透に向けて、グローバルにウェルビーイングに関するメッセージの発信

メッセージの発信:2回

ウェルビーイングに関する指標開発

ウェルビーイングサーベイの実施(日本)

重大な災害発生件数:0件

重大な災害発生件数:0件

環境

社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献

 

自社・SCにおけるSBTネットゼロを目指したGHG排出削減

・目標30.0%以上削減、396千トン以下に対し実績41.6%削減、330千トン(2020年度比 毎年 約10.0%削減)

・再生可能エネルギー使用率:目標37%以上に対し実績42.7%

事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化

・水の使用量:目標1.9万㎥以上の削減に対し実績5.9万㎥削減

・サーキュラーエコノミー型ビジネスモデルに資する製品・サービスの開発:CEビジネス製品・サービスの開発に対し製品系事業部へCEビジネスに関する説明(ワークショップ等)を実施。製品系事業部門にレンタル製品のリファビッシュによる保守部品の長期安定化等、個別目標の設定を依頼

・製品の使用時消費電力によるCO2排出量:目標7.5%削減に対し実績34.2%削減(2020年度比)

・サプライチェーンにおけるGHG排出量削減の推進:主要取引先への排出削減目標設定(SBT WB2℃目標)目標50.0%以上に対し54.0%

・サプライチェーン上流におけるCO2排出量削減及び水資源保全:主要取引先への取組依頼を100%完了

ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献

 

WBCSDのPACTプログラムに参加し、サプライチェーン全体のCO2排出量の可視化とデータ連携を通じてネットゼロを目指す取り組みを成功するなど、サプライチェーンのグローバル実装を拡大

コンプライアンス

コンプライアンスに係るFujitsu Way「行動規範」の組織全体の周知徹底を図るために、グループ全体にGlobal Compliance Program を展開することで、高いコンプライアンス意識を根付かせるとともに、経営陣が先頭に立って、従業員一人ひとりがいかなる不正も許容しない企業風土(ゼロ・トレランス)を醸成する。また富士通のビジネスに携わるすべての人に活動を広げ、理解を求める

社長を含めた富士通本社の経営層や各国グループ会社の社長等からコンプライアンス遵守の重要性をメッセージとして毎年発信

国際腐敗防止デーに合わせたFujitsu Compliance weekにおいて、社長、各リージョン長等の経営層から、従業員に対し、コンプライアンス徹底に関するメッセージを発信

コンプライアンス教育をお取引先100社以上を対象に毎年提供

お取引先211社に対しコンプライアンス教育を提供

贈賄、カルテルを起こさせない

贈賄、カルテルの確認件数0件

サプライチェーン

サプライチェーンにおける、人権リスクの予防・軽減

調達指針の遵守要請と並行して、お取引先の可視化・課題の特定を推進し、問題を起こさない仕組みを構築

新調達指針の公開と220社から同意書の取得、リスク情報取得デジタルツールの評価

サプライチェーンにおけるGHG排出削減の推進

GHG排出削減をお取引先とともに推進するため、主要取引先に対して、国際基準に沿った数値の目標設定を要請

(主要取引先において、SBT WB2℃相当の排出削減目標が設定されることを目標とする)

2022年度の主要取引先のうち54%のお取引先において、排出削減目標の設定が完了(調達額ベース)

サプライチェーン多様性の確保

各リージョン・国での社会要請に基づき、多様性の指標を定め活動

UK・Americas・オセアニアにおいて、中小企業(SME)・女性経営・少数民族企業等、多様な属性を持つ企業からの調達KPIを達成

日本での活動を女性活躍とし、お取引先の取組状況を測定する仕組みを構築

女性活躍推進に関する説明会を開催し、厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」への登録を依頼(271社参加、262社登録済)

コミュニティ

コミュニティ活動※に対する社員のマインドセット変革・組織風土醸成、及び社会へのインパクト創出

 

※コミュニティ活動とは:重要なステークホルダーの1つである地域社会とグローバルで協力し、社会が抱える課題解決に取り組み価値創造をめざす活動

コミュニティ活動に参加した社員(従業員数の20%)

従業員数の19.8%

 

  (2)気候変動への対応

気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルに活動する当社にとっても重要な課題であると認識しています。たとえば、気候変動によりもたらされる災害は調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、各事業所への部品調達やエネルギー調達を困難にします。また、GHG排出量に関する法規制は、製品・サービスの製造、開発等に影響を与え、対応への遅れはビジネスチャンスの損失を招く恐れもあります。

当社グループでは、環境行動計画を策定し、環境活動を継続的に拡大してきました。特にGHG排出量の削減を重要課題と捉え、環境行動計画の当初(1993年)から目標に掲げて取り組んでいます。これからも当社グループは時代の変化をとらえ、持続可能で豊かな社会の実現を目指して環境活動を深化・発展させていきます。

現在、第11期富士通グループ環境行動計画(2023年度から2025年度)として、環境・社会課題の解決に向け、「お客様・社会」及び「自社・サプライチェーン」の2つの軸で、世界経済フォーラムのグローバルリスクである「気候変動」、「資源循環」、「自然共生」の3つにおいて8項目の目標を設定しました。そのうち、4項目は気候変動に関するものです。お客様・社会へのデジタル技術貢献に向けた取り組みや、自社の再生可能エネルギー使用率拡大など、当社グループの環境ビジョンの実現に向け足元を固めた取り組みを展開していきます。

詳細については以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/action-plan/

 

①ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ経営委員会やリスク・コンプライアンス委員会において、気候変動に関するリスクと機会の共有、方針策定、重要リスクに関する特定等を行い、取締役会へ報告しています。詳細については、上記の「(1)サステナビリティに対する考え方及び対応 ①ガバナンス」の項をご参照ください。

 

②戦略

   <富士通グループ環境ビジョン>

グローバル社会におけるカーボンニュートラルへの取り組みが加速する中、当社グループが果たすべき社会的役割を再検討し、「2050年度に富士通グループ自らが排出するCO2をゼロエミッション」としてきたこれまでのビジョンを20年前倒しして2030年度にゼロエミッション達成を目指すこととしました。さらにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を2040年度にネットゼロ※とする目標を定めました。

富士通グループ環境ビジョンは、「バリューチェーンでのネットゼロ」「緩和:カーボンニュートラル社会への貢献」「適応:気候変動に対する社会の適応策への貢献」という3つの柱で構成されています。先進のDX技術を効果的に活用して当社グループ自らのネットゼロにいち早く取り組むとともに、そこで得られたノウハウを当社グループのソリューションとしてお客様・社会に提供します。それにより、ビジネスを通して気候変動の緩和と適応に貢献することを目指しています。

※温室効果ガス排出量ネットゼロ:温室効果ガス排出量を目標年度に基準年度の90%以上を削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること。

詳細については、以下のウェブサイトをご参照ください。
  https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/climate-energy-vision/

 

   <TCFDに基づいたシナリオ分析>

また、当社グループでは、気候変動戦略のレジリエンスを確保するため、2018年度に「2℃」シナリオ、2021年度にIPCC、IEA、環境省・気象庁等政府機関、各種民間調査機関の公開情報を参照し、「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて、気候変動による事業インパクトを分析し、当社グループの気候関連リスク・機会を特定するとともに対応策を検討しました。自社オペレーション、サプライチェーンにネガティブな影響を及ぼす移行・物理リスクに対応するとともに、お客様の気候関連リスクを理解することで価値創造の提案につなげ、ビジネス機会の獲得を目指します。

 

 

   ・シナリオ分析

当社は、ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューション「Fujitsu Uvance」において、クロスインダストリーな重点分野を定めています。そのうち、特に気候変動の影響が大きいと考えられるSustainable Manufacturing(検討領域:石油化学、自動車、食品、電子機器関連ビジネス)、Trusted Society(検討領域:公共、交通、エネルギー関連ビジネス)、Hybrid IT(検討領域:データセンター関連ビジネス)に対し、「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて2050年までを考慮したシナリオ分析を実施しました。分析は「リスク重要度の評価」、「シナリオ群の定義」、「事業へのインパクト評価」、「対応策の検討」という4つのステップにて行いました。Sustainable Manufacturing及びTrusted Societyはお客様の気候関連リスクへの対応を支援するなど、当社におけるビジネスの「機会」を中心とした分析を行い、Hybrid ITは、自社事業及びお客様の気候関連リスクへの対応など、「リスク」と「機会」の両面で分析しました。分析結果として、シナリオで分析した機会についてオファリングの検討・開発方向と一致していること、また、リスクについても対応策を整備できていることを確認し、中長期的な観点から当社の事業は戦略のレジリエンスがあると評価しました。現在、顧客のGHG排出量の削減、エネルギー効率向上などをデジタルリハーサルによりお客様のESG経営を支援するオファリングを提供しています。また、サプライチェーン全体の環境変化を可視化し、データドリブンの施策実行によりScope3までを含むGHG排出量削減など環境への影響を最小限に抑え、各企業のESG経営に繋がるサプライチェーンマネジメントの実現に向けた「Dynamic Supply Chain Management」のオファリングを準備しています。

詳細については、以下の当社ウェブサイトに掲載している「TCFDに基づく情報開示」、「Fujitsu Uvance」をご参照ください。
 https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/tcfd/

https://activate.fujitsu/ja/uvance

 

   機会

機会分類

対象期間

内容

主な対応策

製品・サービス

短~長期

高エネルギー効率製品・サービスの開発・提供による売上増加

高性能・低消費電力の5G仮想化基地局、高性能・省電力のスーパーコンピュータ等の開発・提供

市場

短~長期

ICT活用により創出される気候変動対策に向けた新規市場機会の獲得

サプライチェーンのCO2排出量算定・可視化、ゼロエミッションに向けた新材料探索を効率化するシステム等の開発・提供

レジリエンス

短~長期

レジリエンス強化に関する新製品及びサービスを通じた売上の増加

防災情報システム、洪水時の河川水位を予測するAI水管理予測システム等の開発・提供

 

 リスク

リスク分類

対象期間

内容

主な対応策

移行

政策/

規制

短~長期

・温室効果ガス排出やエネルギー使用に関する法規制強化(炭素税、省エネ政策等)に伴い、対応コストが増加

・上記法規制に違反した場合の企業価値低下のリスク

・温室効果ガス排出量の継続的な削減(再生可能エネルギーの積極的な利用拡大、省エネルギーの徹底)

・EMSを通じた法規制遵守の徹底

市場

中~長期

・カーボンニュートラルの推進(電動化などの普及)に伴った電力価格の高騰

・社内基準の策定、革新的な技術開発などによる電力消費量の削減

技術

中~長期

・熾烈な技術開発競争(省エネ性能、低炭素サービス等)で劣勢になり、市場ニーズを満たせなかった場合、ビジネス機会を逸失するリスク

・顧客の気候変動課題解決に対応する製品・サービス開発、イノベーション推進

評判

短~長期

・投資家・顧客等のステークホルダーからの要請へ対応することによるコストの増加

・外部要請への対応遅れによる評価・売上に対するネガティブ影響が発生

・中長期環境ビジョン、環境行動計画の策定・推進

・気候変動戦略の透明性確保に向けた積極的な情報開示

物理

(自然災害等)

慢性、急性

短~長期

・降水・気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇、渇水などへの対応コストが増加

・異常気象の激甚化によるサプライチェーンを含む操業停止、復旧コストが増加

・BCP対策強化、お取引先の事業継続体制の調査やマルチソース化などの対策実施

・潜在的水リスクの評価とモニタリングの実施

 

 

③リスク管理

気候変動を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

また、気候変動を含む環境課題に関するマネジメントについては、前述の仕組みに加え、ISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築しています。気候変動対策の方針策定及び進捗管理は、サステナビリティ経営委員会が担当しています。

 

④指標及び目標

GHG排出量に関しては基準年に対する排出削減比率、再生可能エネルギー導入比率を指標として管理しています。

カーボンニュートラルに向けた動きを加速するため、自社事業活動における排出量を2030年度に、またバリューチェーン全体の排出量を2040年度にネットゼロとする目標を策定し、2023年6月にSBTi(Science Based Targets Initiative)より「ネットゼロ」の認定を取得しました。

なお、2024年度の主な実績については、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2023年度の主な実績を記載しております。

 

 

   <Scope 1、2及び該当する Scope 3のGHG排出量>

項目

GHG排出量実績(2023年度)

Scope 1

64千トン-CO2

Scope 2(Market-based)

266千トン-CO2

Scope 3(Category 1)

Scope 3(Category 11)

1,086千トン-CO2

2,283千トン-CO2

 

   <目標と実績(2023年度)>

項目

目標

実績(2023年度)

自らのGHG排出量削減(※1)

SBTネットゼロ認定

中期

2030年までに100%削減(※2)

41.6%削減

バリューチェーンのGHG排出量削減(※3)

長期

2040年度までに90%削減(※2)

28.1%削減

再生可能エネルギー使用率

RE100加盟

中期

2030年度までに100%導入

42.7%導入

(注)1.※1 Scope1+Scope2

2.※2 2020年度比

3.※3 Scope1+Scope2+Scope3

 

(3)人的資本及び多様性

サステナブルな企業として、社会に価値を提供していくための最大の経営資源、そして顧客価値の源泉は「人」です。「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」となることを目指し、企業価値向上に向けた中長期的な人的資本の強化に取り組んでいます。

 

①ガバナンス

当社グループは、事業戦略の実行に連動した最適な人材ポートフォリオの実現に向けて、CHRO(最高人事責任者)を責任者として、国内外の人事、人材開発・育成責任者と連携して各種施策の策定・実行にあたっています。

また、経営層が人材マネジメントについて議論する場も定期的に設けています。具体的には、当社代表取締役社長、副社長、CHROが参加するGlobal Talent Committeeを年2回程度開催し、グローバルレベルで重要なポジションにおけるサクセッションプランの検討状況の共有や個別アポイントメントの検討、また経営者育成に向けた施策に関する議論を実施しています。加えて、Talent Acquisition(人材獲得)、Learning & Development(人材開発)、Performance Management(パフォーマンスマネジメント)、Engagement(エンゲージメント)等、人事・人材育成に関する具体的な課題や方針、施策に関する検討、議論、決定も行っています。なお、人的資本や多様性を含めた人事・人材育成に関わる事項のうち重要なものについては経営会議及び取締役会に報告されます。

さらに、各リージョンの人事責任者を含む、人事部門の各領域の責任者が参加するグローバルHRカンファレンスを年2回開催し、グローバルレベルでの人事戦略、人事施策の検討、各リージョンにおける人事施策の進捗状況や課題の共有等を実施しています。

 

②戦略

 「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を実現するため、以下3点を人事部門のグローバル戦略テーマとしています。

 “Empowerment”

多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。

 “Growth”

常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。

 “Impact”

国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。

 

 上記を実現するために、2024年度は主に以下の取り組みを進めました。

 

(ⅰ)事業戦略と一体化した人材ポートフォリオの策定

 事業戦略を実現するためには、その戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定が不可欠です。事業戦略に基づいて将来必要とされる人材のロールやスキルを定義するとともに、人数等の規模感を特定し、現有人材とのギャップ分析を行い、そのギャップを充足する計画の立案が必要です。

現在当社においては、事業と人材ポートフォリオの連動に向け、事業、ロール、地域の3軸での可視化・モニタリングプロセスの検討を開始しています。事業のポートフォリオとアラインしたロール別の人員数をマッピングし、成長領域への戦略的な人材の採用・配置や、リスキリング・アップスキリングを含めた人材育成施策を実行するとともに、効率化や自動化を推進することで生産性の向上を目指す分野を可視化していくことを目指しています。2024年度は、グローバルに統一されたロールフレームワークを用い、各ビジネスグループ及びリージョンにおけるロール別人材ポートフォリオの可視化、事業計画に連動した要員計画の検討・策定を推進しました。

 

(ⅱ)人材ポートフォリオの質的変革

 事業戦略と一体となった人材ポートフォリオの実現に向け、2020年より導入しているジョブ型人材マネジメントの考え方に沿って、社内の人材流動化の促進、より質の高い人材の採用、リスキリング・アップスキリングの強化、人材獲得競争力強化に向けた従業員報酬の設計に取り組んでいます。

 

・社内の人材流動化

 社内公募制度であるポスティングをグローバル・グループワイドに展開しています。国内(グループ会社含む)を対象に実施しているグループワイドポスティングでは、2024年度は7,869名が応募し、うち2,826名が合格し異動しました。また、富士通グループグローバル横断で実施するグローバルポスティングでは59名が合格し、一貫して社内における適所適材の推進が進んでいます。このほか、従業員自身が希望する部署に期間限定で異動し、異なる業務を経験できる、社内インターンシップ制度「Jobチャレ!!」や、所属組織や業務を超えて、スキルや経験を活かして挑戦できる社内副業制度「Assign Me」など、社員が主体的に挑戦できる機会の拡充にも取り組んでいます。

 

・より質の高い人材の採用

2024年度は新卒採用871名、キャリア採用794名を採用しました。

新卒採用については、変化の激しい環境下で社会課題の解決やお客様のニーズに応えるために、求められるソリューションやテクノロジーに即応しながら、必要な役割を自律的に遂行できる人材の採用を加速するため、2026年度入社者より、新卒一括採用の廃止と新卒入社者へのジョブ型人材マネジメントの拡大を行うことを決定しました。毎年計画数を定めて一斉のタイミングや学歴別一律の初任給で採用する考え方を改め、新卒採用・キャリア採用の区分にこだわらず、必要な職務を担う人材を、計画数を定めずに通年でフレキシブルに採用します。処遇については、入社時よりジョブレベルに応じた処遇を適用し、高度な専門性などが必要なジョブを担うことができる人材には、入社時からそれに応じた処遇とすることで、より優秀で多様な人材の獲得を推進していきます。また、応募者が募集しているジョブへの理解を高め、入社後の自身の活躍をイメージすることが重要との観点から、当社の各領域におけるスペシャリストとともに実ビジネスに挑戦できる数か月にわたる長期の有償インターンシップを実施しています。2024年度は約200名が富士通のインターンシップを経験し、富士通への理解や参加者自身のキャリア形成に繋げることができました。

また、引き続き2023年度より、グローバル共通のEmployee Value Proposition(EVP)(注1)を展開し、採用活動における訴求力向上に努め、各種オンボーディング施策を実践するなど、採用力強化に加え、新規入社者の定着率向上についても実践しています。

(注1)当社では、会社が社員に提供できる価値を明文化し、グローバルに統一されたEVPとして5つのPeople Promisesを定めています。①Do the right thing ②Trusted to transform ③Work Your Way ④Global reach, local impact ⑤Achieve together

 

・人材獲得競争力強化に向けた従業員報酬の設計

当社が導入しているジョブ型人材マネジメントにおいては、人材獲得・定着に向けた競争力強化の観点から、「労働市場」を第一義として報酬水準を決定すること、すなわち、各人の職務・ポジションに対して、マーケットベンチマークに基づき相応しい報酬水準を設定することが基本的な考え方です。

この考え方に基づき、2023年4月にグローバル企業のベンチマーク結果を踏まえ、従業員の報酬水準の引上げを実施し、人材獲得競争力の向上につながっています。

また、中長期的な当社のビジネスへの貢献度が極めて高い領域(注2)における人材獲得競争力の強化を目的として、当該領域に非常に高い専門性を有する従業員を対象に報酬のアドオンを行う「高度専門職系人材処遇制度」や、受注獲得等の営業成績に対して責任を持つ社員を対象とした「セールスインセンティブ制度」の導入等、より職種の特性に応じた報酬の仕組みを導入し、従業員の納得性と当社で働く魅力の向上を図っています。

(注2)サイバーセキュリティ、AI、データサイエンティスト、重点オファリング(SAP, Salesforce, ServiceNow(3S)、社内弁護士)等を適用領域としています。

 

・リスキリング、アップスキリングの実践

事業戦略に沿って、必要となるスキルや専門性を有する人材の育成に向けて、リスキリングやアップスキリングに取り組んでいます。

Fujitsu Uvanceの拡大に向けては、「Business Application」領域のソリューションであるSAP、Salseforce、ServiceNowや「Hybrid-IT」領域のAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureのスキルを有するエンジニアの育成に注力しています。人材育成投資を当該領域に集中的に実施することで、資格取得の総数は前年度比でSAP 116%、Salesforce 169%、ServiceNow 225%と堅調に推移しています。また、資格取得に留まらず、人材最適配置と生産性向上を加速するため、当社コンサルティング事業「Uvance Wayfinders」の展開に向けたコンサルタントの育成やデリバリー力強化に向けたデリバリー人材の育成に取り組み、当社重点強化領域へのリソースやスキルのシフトを推進しています。

 

(ⅲ)キャリアオーナーシップの浸透

当社のジョブ型人材マネジメントにおいては、従業員一人ひとりが自らのキャリアを考え、成長に向けて主体的に行動していく「キャリアオーナーシップ」の考え方を重視しています。

人材育成においては、「キャリアオーナーシップ」マインドを醸成し、行動変革を促進するための施策と、自ら主体的に選択して受講できる教育機会の拡充に取り組んでいます。

多様な従業員と互いのキャリアを語り合う「キャリアCafe」は、国内(グループ会社含む)を対象に2021年度より実施しており、2024年度までに延べ25,638名が参加しています。2022年度までは幅広い世代に実施をしておりましたが、2023年度からは、キャリア資本を戦略的に考えてもらうために、特に若手・ミドルシニア世代に注力し実施しています。2024年度は、2023年度より継続及び新たに対象となる従業員を中心に実施しています。

また、いくつかの質問に答えることで、個人のキャリアオーナーシップの状況を診断できる「キャリアオーナーシップ診断」は2022年度に導入し、キャリアCafeとも連携しながら提供しており、日本で延べ36,979名の従業員が活用しています。

学びの機会の拡充については、教育プラットフォーム「Udemy Business」や 「LinkedIn ラーニング」を導入し、自律的な学びの文化の醸成を促進しています。「Udemy Business」は、生成AI等の最新技術動向やデジタルリテラシー、お客様のDX戦略の加速とビジネス変革を支援するためのテクノロジー関連スキルの早期獲得を目的とし、2020年度より導入しています。「LinkedIn ラーニング」は、グローバルスタンダードのビジネススキルの習得を目的に、2023年度より全従業員(グローバル含む)に導入しています。

加えて、プログラムの提供だけでなく、職場・社員のキャリア形成を支援するキャリアカウンセラーの設置や、2024年度に約1,300名が参加した社内キャリアカウンセラーによるキャリア面談についても2022年度より全社展開を開始し、一人ひとりのチャレンジを後押しする取り組みも進めています。

 

(ⅳ)挑戦を促す評価制度「Connect」

2021年より順次、社員が自律的に考え、行動を起こしていくためのグローバル共通の人材マネジメントの基盤「Connect」を導入しました。

「Connect」では、当社のパーパスと個人のパーパスを起点にそれらを結び付け、社員一人ひとりの主体的な挑戦を後押しし、組織や個人の成長を最大化することと、社会やお客様に大きなインパクトをもたらすことをねらいとしています。

また、評価制度としては社員一人ひとりがビジョン実現に向けて生み出したインパクトの大きさ(Impact)、Fujitsu Wayの大切にする価値観「挑戦」「信頼」「共感」の体現度(Behaviours)、パーパスやビジョンを基にした自身とチームの成長(Learning&Growth)を評価します。

2024年度からは、毎月の1on1ミーティングのうち、3か月に1度の振り返りと未来に向けたアクションについて上司部下間で対話する「Connect Conversations」を全リージョンに導入しています。加えて、評価の決定と評価結果に基づいた個人のアサインメント・各種成長支援等の検討という一貫したアプローチを実施するための、組織全体の人材にまつわる議論の枠組みである「People discussions」についてもグローバルで考え方を統一しました。評価結果を報酬やアサインメント、スキル向上支援の検討にも活用することで、一貫性のある人材マネジメントを行うことができる仕組みとしています。

 

(ⅴ)エンゲージメントの向上

当社グループの持続的な成長を測る1つの指標として、2020年度より従業員エンゲージメントを非財務指標に設定し、2025年度までにグローバル企業と同等の数値(75ポイント)に引き上げることを目標に掲げ、様々な取り組みを推進しています。

社員一人ひとりが、パーパス実現に向けて活き活きと活躍できるよう、年2回のエンゲージメントサーベイを通じて社員の声を集め、組織の風土を「見える化」し、各組織へフィードバックすることで組織活性化に取り組んでいます。

また、2023年度より、サーベイプラットフォームをグローバルで統一し、より一貫した集計の下、組織・チーム内での内省・メンバーと一緒に行動を起こすこと(Action Taking)の実行を積極的に促しています。

この数年で従業員エンゲージメント数値は69ポイント付近を推移し、目標達成には未だ至っていない状況です。しかし、組織ごとにエンゲージメントスコアの影響要因にはばらつきがあり、高スコアを達成している組織も存在する一方、低スコア組織ではコミュニケーションの質と量に課題があることがエンゲージメントサーベイのフリーコメント分析から明らかになりました。この課題に対し、経営層からのメッセージ発信に加え、経営方針への理解と共感を深めるためのコミュニケーションフレームワーク「オープントーク」を展開し、組織のトップとメンバーが率直な対話を行う機会を設けています。また、特にマネジメントに課題を抱えるチームにおいては、人事部門が策定したガイドラインに沿って、組織長や上司幹部が職場主体で課題の改善に取り組むことで、対象チームの約4割でエンゲージメントスコアが改善しました(改善したチームで平均13ポイント改善)。

「1on1」の可視化による質の向上にも取り組み、2024年度は従業員1人あたり平均12.8回の1on1を実施し、昨年度より向上しました。さらに、マネジメント以外の経営基盤に関する課題の可視化も進め、関係部署と連携を始めています。

また、富士通研究所を含む社内外の最新の知見やテクノロジーを活用し、各組織における課題のさらなる深掘りと可視化を進め、より真因に迫ったAction Takingを推進しています。

今後も、エンゲージメントに影響を与える要因に対し、多角的な視点から根本原因を追求し、具体的な対策を実行することで、エンゲージメントの向上を目指してまいります。

 

(ⅵ)DE&Iの推進

当社グループが目指すDE&Iの姿は「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化」です。これを基盤に多様性を尊重した責任ある事業活動に取り組み、持続可能な社会の実現に向けたイノベーションの創出を目指しています。

DE&Iにおける5つの重点領域(注3)をグローバルで設定し、持続的な発展を可能にする土台である多様な人材の活躍を支援しています。中でもジェンダーへの取り組みは現在の必須課題と位置づけており、非財務指標のKPIの1つとして、リーダーシップレベルにおける女性比率の目標を2025年度で20%と策定しました。2024年度末時点では17%となりました。

さらに、一人ひとり異なる価値観や能力を互いに活かし合える職場環境を醸成するため、全社員の意識やマネジメントスタイルの変革を目的とした「マインド改革(注4)」や、ありたい姿に向けた戦略的な採用・育成・登用や能力発揮を促す「活躍支援(注5)」を行い、当社が提唱する「Work Life Shift」の下、多様で柔軟な働き方を実現し、社員のキャリアやライフイベントへのサポートを一層充実していく等、様々な取り組みを推進しています。

(注3)2022年に「Global DE&I Vision & Inclusion Wheel」を刷新し、その中でジェンダー、世代間、LGBTI+、文化・民族、健康・障がい・アクセシビリティの5つを当社の重点領域として設定

(注4)マインド改革の例:アンコンシャスバイアス研修、インクルーシブリーダー研修、エンゲージメントサーベイの活用

(注5)活躍支援の例:コミュニティの充実、メンター制度、多様なキャリアの支援

 

(ⅶ)健康経営と労働安全衛生の遵守

当社では、健康に関する最終的な評価指標として「生産性向上」「個人・組織活性化」「人材リテンション強化」に関わる指標を設定し、下記5つの重点施策領域において、それぞれの指標を改善・向上させるためにPDCAサイクルを回しながら取り組んでいます。

 

1.生活習慣病・がん対策 2. メンタルヘルス対策 3.口腔・歯の健康施策

4.ヘルスリテラシー・健康意識向上、生活習慣の改善 5.職場環境の整備

 

また、労働安全衛生基本方針として「全ての事業活動において、心とからだの健康と安全を守ることを最優先とする」と定め、安全・快適に働く環境の整備と職場風土づくりをグループ一体となって推進し、社員の健康・安全の確保を図っています。この基本方針に基づき、各リージョンに労働安全衛生施策を展開しています。

 

(ⅷ)ウェルビーイングの実現

当社グループでは、マテリアリティ(組織が優先して取り組んでいく重要課題)の1つとして「人々のウェルビーイングの向上」を定めています。

当社ではウェルビーイングの定義を「一人ひとりが、自身の大切にしている価値観に向き合い、仕事と生活を通じて、未来の幸せに日々向かっている」と定めました。従業員一人ひとりのウェルビーイング向上に向けて以下4つのカテゴリにまとめ、カテゴリごとに方針を定めてグローバルで活動を実践しています。

 

 

ウェルビーイングの2025年度目標を、社員が「自身のウェルビーイング実現に向けて、具体的に行動している」とし、その達成に向けて2024年度はウェルビーイングの理解・浸透策の展開と、データドリブンによる可視化・分析の取り組みを重点的に推進してきました。

その1つの取り組みとして、ウェルビーイングの影響因子の可視化、データ分析結果の人事施策への立案と展開を目的に、2024年11月から12月に海外を含む全富士通グループ社員にウェルビーイングサーベイを実施しました。全社サーベイの結果、ウェルビーイングの実感は、性別や職責等の属性に加え、リージョンや国によっても異なり、特に海外の社員においては日本とは異なる傾向が見られました。ウェルビーイングにおいて重視する項目も同様に多様であることが判明したため、今後も分析と考察をさらに深め、各リージョン・国に適した活用方法や、ウェルビーイング向上に繋がる施策を検討していきます。

 

(2024年度ウェルビーイングサーベイ実施概要)

目的

・社員のウェルビーイング実感値を把握する。

・サーベイ結果を基に、ウェルビーイング向上のための施策を企画・実行する。

対象者

海外を含む全富士通グループ社員に任意調査(有効回答数88,640人)

回答期間

2024年11月~12月

 

(ⅸ)人的資本価値向上とデータ検証

 当社では2022年度より、人的資本経営の実践に向けて他社のCHROと協働する「CHRO Roundtable」(注6)を主催しています。人的資本経営の実践においては、人材に関する取り組みが戦略の実現にどのように関わっているのかを伝える一貫性あるストーリーと、その裏づけとなる自社固有のKPIを特定し、取り組みを進めていくことが重要との認識のもと、2022年度に実施した第1回CHRO Roundtableにおいて、各社が人的資本経営を検討するにあたっての構想フレーム「人的資本価値向上モデル」を策定し、社外に公開しています。各社が人的資本経営を実践するにあたり、自社の施策をこのモデル図に落とし込んで整理していくことで、企業価値向上につながる全体構造を捉えることが可能になります。

 2023年度より実施した第2回CHRO Roundtable(注7)では、この人的資本価値向上モデルを活用し、経営戦略と組織・人材に関する取り組みの関係性を、データにより定量的に可視化する取り組みを進めました。様々なデータの相関分析を通じて、富士通が取り組んでいるジョブ型人材マネジメントの考え方に基づく自律的な人材流動化が、組織にプラスのインパクトをもたらしている可能性が示唆されました。また、最新のテクノロジーを活用した因果関係の探索にも取り組み、多様な人材の活躍には、マネージャーのピープルマネジメント力向上が鍵になりうるという示唆が得られました。

 2024年度より実施している第3回CHRO Roundtable(注8)では、人的資本経営を実践フェーズに移すべく、人事がデータドリブンで事業に貢献するためのポイントや実践方法について議論を重ねています。

(注6)第1回CHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable Report」参照(下記リンク先よりダウンロード可)https://www.fujitsu.com/jp/microsite/fujitsutransformationnews/2023-04-20/01/?_gl=1*lizz6i*_ga*MTM5MjU4OTcxNi4xNzI5MDQyOTc3*_ga_GSRCSNXHW8*czE3NDc2MzAwMjMkbzQ3JGcxJHQxNzQ3NjMwMTUxJGowJGwwJGgw ga_GSRCSNXHW8*czE3NDc2MzAwMjMkbzQ3JGcxJHQxNzQ3NjMw MTUxJGowJGwwJGg

 

(注7)第2回CHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable Report 2024」参照(下記リンク先よりダウンロード可)
https://global.fujitsu/ja-jp/insight/tl-chro-roundtable-20240718

 

(注8)第3回CHRO Roundtableについて報告した「CHRO Roundtable Report 2025」は、2025年7月に公開予定

   ③リスク管理

人的資本を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

また、CHROを人事部門の最高責任者として、全社経営・事業戦略とアラインした人材戦略を策定して事業への貢献を確実なものとするため、“経営トップが参画し、次世代経営リーダー候補者の選抜・育成を筆頭に人事・人材育成に関する具体的な課題や方針、施策に関する検討、議論、決定を行う場である「Global Talent Committee」”、“グローバルで一気通貫の人事戦略・施策を促進する「グローバルHR カンファレンス」”において人的資本に関する議論のサイクルを定期的に回すことで、優秀人材の離職や人材獲得競争が激化するリスクにスピーディに対応できる体制を構築しております。

 

④指標及び目標

組織・人材の活性化の観点において重要とされる、従業員エンゲージメントスコア、女性管理職比率について、それぞれ中長期的に目標を定めマネジメントしております。

 

 

項番

指標

目標

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

(ⅴ)

従業員エンゲージメントスコア(注1)

25年度12月までに75

22年度12月時点で69

23年度11月時点で69

24年度11月時点で68

(ⅵ)

管理職に占める女性労働者の割合(注2)(注3)

25年度までに20%

15%

16%

17%

 

(参考)人事戦略に関する指標

人事戦略の重要なテーマに関する参考指標は、以下のとおりです。

項番

指標

2022年度

実績

2023年度

実績

2024年度

実績

(ⅱ)

新卒採用数(注4)

765名

1,037名

871名

(ⅱ)

キャリア採用数(注4)

818名

1,083名

794名

(ⅱ)

高度専門人材認定者数

(内3S認定)(注4)

78名

(57名)

143名

(128名)

178名

(159名)

(ⅱ)

SAP資格取得件数(注4)

848件

452件

438件

(ⅱ)

ServiceNow資格取得件数(注4)

217件

430件

1,114件

(ⅱ)

Salesforce資格取得件数(注4)

589件

950件

1,674件

(ⅱ)

新卒入社三年後定着率(注4)

89%

90%

90%

(ⅱ)

社内ポスティング異動人数(注5)

3,419名

2,725名

2,826名

(ⅱ)

グローバルポスティング異動人数(注2)

98名

65名

59名

(ⅲ)

Jobチャレ!!利用者数(注5)

-

71名

73名

(ⅲ)

キャリアcafé参加者数(注5)

8,296名

7,255名

2,849名

(ⅲ)

キャリアオーナーシップ診断(注5)

15,187名

11,813名

9,979名

(ⅲ)

Udemy Business 利用者数(注5)

36,764名

33,320名

32,598名

(ⅲ)

LinkedIn ラーニング 利用者数

(注2)

-

104,773名

99,746名

(ⅴ)

1on1平均実施回数(注5)

1人当たり

年間平均

9.4回実施

1人当たり

年間平均11.7回実施

1人当たり年間平均12.8回実施

(注1)2022年度実績は日本の連結対象会社のみ、2023年度実績から当社グループ全体の数値

(注2)当社グループ全体の数値

(注3)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)又は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)における算定方法による算出

(注4)提出会社のみ

(注5)日本の連結対象会社のみ