2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

(1)OKIのリスクマネジメント体制

OKIは、OKIグループ(当社及び連結子会社)の事業活動に関わるリスクについて、リスクマネジメント規程に基づき、リスクを分類、区分して範囲を確定したリスク分野を定め、それぞれにリスク分野責任部門を配置したリスク管理体制を構築しております。また、発生した危機・懸念事象、リスクマネジメントの運営状況等は、定期的に経営会議、取締役会に報告しております。

OKIでは、社長を委員長とするリスク管理委員会を設置して、リスク・危機管理の年間方針と管理すべきリスク及び対応部門を決定するとともに、事業等のリスクについても審議しております。

 

(2)事業等のリスク

OKIグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには以下のようなものがあります。なお、当該事項は2024年3月31日現在においてOKIグループが判断したものであります。

また、業績に影響を与える要因は、これらに限定されるものではありません。OKIグループはこれらのリスクを認識し、その影響の最小化に取り組んでまいります。

 

①世界の政治経済の動向に係るもの

OKIグループの製品に対する需要は、製品を販売している日本国内、海外の各地域の政治経済状況の影響を受けます。

OKIグループの海外市場は米州、欧州、アジア等であり、当該地域における売上は当連結会計年度においては497億円(連結売上高比率11.8%)を占めております。これらの海外市場をはじめとする各地域においてエネルギー不足、物価上昇、サプライチェーンの混乱等が発生した場合、OKIグループ製品への需要縮小や、半導体等の部品供給不足によるハードウェア製品の製造遅延等が発生し、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、各国での急激な金融引き締めによる景気後退及びそれに伴う需要の縮小、製品に対する輸入規制、世界的に強化されつつある環境規制や各国で施行される情報保護関係等の各地域の法律・規制等の変更により、OKIグループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

なお、各事業における海外向け売上については、定期的に売上状況等をモニタリングするとともに、海外各国の政治経済の変動による影響を極力早期に認識するよう努め、また各種規制、法律の動向についても日本本社で把握、対応を行い、さらに売上が個別地域に過度に集中しないようにする等適切な対策が必要であることを認識しております。また、サプライチェーンの混乱に伴う影響については、調達先の拡大や設計変更による代替部材対応等によりその影響の低減を図っております。

 

②カントリーリスクに係るもの

OKIグループは海外に30の子会社を有しており、数多くの販売・生産拠点が存在しております。対象地域は、主な生産・製造拠点としてタイ、ベトナム、また、主な販売拠点として欧州、米国、中国のほか、インド等があります。

それらの国、地域において、感染症、公害病等の疾病の蔓延に起因した社会的混乱、生産、物流の停滞等が発生する可能性があり、その影響を受け、原材料部品の調達の支障、生産の遅延等により事業そのものに影響が及ぶ可能性があることを認識しております。

さらには、クーデター・紛争・革命、または、暴動・テロ・自然災害等による社会的混乱、それらに関連して、OKIグループの資産の接収、収用、また、人的・物的被害が発生する可能性があることを認識しております。

そのようなリスクが高まる場合、または、具体的な危機事象が発生した場合は、代替の原材料部品・物流ルートの確保、また、関連する拠点の機能の移管、それらの影響により人材が不足する場合は、補完人員の確保等の代替手段の確保が必要であると考えております。

また、発生した事象を的確に分析し、採算性等から適切な事業運営が継続できないと判断した場合には、撤退も含めた対応の検討が必要であることを認識しております。

 

③外国為替の影響に係るもの

OKIグループは海外での事業展開、主要製品の生産を行っており、日本国内、海外の政治経済の状況に影響を受ける為替変動リスクにさらされております。その結果、OKIグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

しかしながら、外貨建て資産と負債のポジション不均衡に対して、一定の方針に基づき為替予約やマリー取引等によりリスクヘッジを実施しております。さらに、投機的な取引は原則禁止しております。これらにより、OKIグループとして外国為替の影響を極力抑制するよう努めております。

なお、当連結会計年度における具体的に為替レートが1円円安に変動した場合の各通貨が営業利益に与える影響は、ユーロは欧州での利益増により約1億円の良化、米ドルは調達・製造コスト増等により約2億円の悪化となっております。

 

④金融市場・金利変動に係るもの

OKIグループの有利子負債は、金融市場及び金利変動の影響を受けます。現在のOKIグループの長期・短期借入金残高の合計は1,100億円でありDEレシオは0.8倍となっております。また、当連結会計年度における支払利息は23億円となりました。金融市場、または、OKIグループの信用力の変動等により、借入金利の上昇、資金調達方法の制限等が発生した場合、OKIグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

しかしながら、借入には、金利スワップ取引を行う等さまざまな対策を講じるとともに、健全な借入レベルを維持するよう努めております。従いまして、OKIグループとして金利上昇の影響は極めて限定的と考えております。

また、株式市場の低迷や資産の運用環境が悪化した場合には、OKIグループが保有する上場株式や年金資産の価値が下落し、評価損の計上や純資産の減少により、OKIグループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

なお、政策保有株式については、毎年個別銘柄ごとに定量的・定性的要因を考慮し、保有株式の縮減に取り組んでおります。

また、年金資産は企業年金の積立金の運用を行っておりますが、その運用目標等は、資産運用委員会が起案し、代議員会にて決定しております。両会のメンバーは、従業員代表、並びに、財務及び人事部門の専門性を有するもので構成されております。

 

⑤法規制に係るもの

OKIグループは事業展開する日本国内、海外の各地域において、事業・投資の許認可、国家安全保障、環境関連法規制、情報保護関連規制、外国貿易及び外国為替法関連規制、競争法関連規制、贈収賄関連規制、経済制裁規制等の理由による輸出入制限、税務制度等といったさまざまな法規制の適用を受けております。

また、日本国内においては、製品・サービスにかかわる法規制・技術基準、下請法、建設業法、労働安全衛生法、さらには、インターネットその他の高度情報通信ネットワークに関しては、サイバーセキュリティ基本法等の適用を受けております。

日本国内、海外において、これらの法規制(類似・同種の法規制含む)等を遵守できなかった場合、追加費用が発生し、事業活動に支障をきたす可能性があります。加えて、お客様の信用、社会の負託を失うこととなり、結果としてOKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

しかしながら、上記の法規制をはじめとしてOKIグループの事業に密接に関係する各法規制については、OKIグループ内にて法規制の遵守を徹底させるべく、統括する主体となる部署を指定し、社員教育の推進、遵守状況のモニタリング等、全社横断的に法規制の遵守を推進しております。

また、必要に応じ、弁護士、コンサルタント等の専門家並びに専門機関の協力を得て、対策を講じております。

なお、個別項目においても法規制が関係する場合には、当該項目にて法規制影響等について記載しております。

 

⑥事業別市場の動向・製品・サービスに係るもの

OKIグループでは、「中期経営計画2025」の初年度である今年度から、モノづくり・コトづくりを通じて社会課題の解決を目指すため、既存事業領域とともに新領域にも積極的に取り組むべく、事業セグメントを新たに4つの領域に再編しております。

具体的にはパブリックソリューション、エンタープライズソリューション、コンポーネントプロダクツ、EMSの4事業に区分し、それぞれ取り扱う製品・サービス機軸について日本国内、海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しております。それぞれの事業において、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があるものを以下に記載します。

 

1)パブリックソリューション事業

当事業におけるビジネス領域では、消防・防災・交通・防衛といった社会インフラ市場をベースに止まることが許されないミッションクリティカルなソリューションを提供しております。

当連結会計年度は売上高940億円、営業利益44億円、連結売上高に占める割合は22%となっております。

当領域のビジネスにおいては豊富な市場導入実績や業務ノウハウをいかし、顧客ニーズを取り込むことで差別化した新商品を投入し、消防・防災を中心として更改需要の獲得に取組んでおります。

さらに鉄道事業者や道路事業者、海洋などの新領域に対して、OKIの強みであるエッジ領域を中心としたセンシング技術やネットワーク技術をいかし、エッジデバイスから取得したデータの利活用を深化させ個別の顧客業務に特化したプラットフォームの提供に取組んでおります。

社会インフラ市場におけるDXへの期待は大きく、5G通信やAI、クラウド環境を活用したリアルタイムデータの活用・分析予測による効率性の向上、安全性の確保などの新たな価値の提供が求められており、交通プローブを活用した交通分析や安全対策への貢献や、2030年のBeyond5Gの実現に向けた光アクセス通信システムの開発に着手しております。

なお、2022年4月1日に事業を譲り受けた航空機用計器事業のPMIは順調に進み事業運営の安定化と成長に向け一歩を踏み出しました。

この領域でのリスクとしては、部材供給を中心としたサプライチェーンの回復の遅れ等を起因とした製品供給の遅れや過去に販売した製品の品質に関するトラブル、案件失注などによる売上・利益の減少があげられます。

また、環境やエネルギーの観点でデジタル化は省エネルギー、CO削減などの面で重要な役割を果たすことから、社会インフラ市場におけるデジタル化はこれからも加速し、ここに追従するための技術の進展と活用に遅れをとった場合に、新領域における事業機会の獲得を逸する可能性があります。

加えてお客様のニーズの変化に迅速に対応できなかった場合、計画通りのビジネス獲得ができない可能性があります。

しかしながら、サプライチェーンの回復の遅れ等によるビジネスリスクに対しましては内製化を進め国内外のサプライチェーン環境の変化への対応力を高めます。

また、研究開発への積極的な投資により、新しい製品やサービス、技術を開発し競争優位性獲得し向上させると共に新たなビジネスチャンスをつかみ事業拡大につなげてまいります。

 

2)エンタープライズソリューション事業

当事業におけるビジネス領域は、さまざまなメカトロ製品(自動化端末・機器)を提供するプロダクト事業、金融・運輸旅客・製造関連の各種システムを提供するソリューション事業、ATMのフルアウトソーシングによる監視・設置・運用・保守をリカーリングで提供するサービス事業で構成されております。

当連結会計年度は売上高1,801億円、営業利益220億円、連結売上高に占める割合は43%となっております。

当領域のビジネスにおいては現金処理機、ATM、発券端末といった商品群を社会インフラを中心とする多様なお客様に提供しております。事業環境において大きく2つの環境変化が起きております。第一は少子高齢化・人口減少に伴う労働力不足、第二はキャッシュレス、ペーパーレス等の現物レス化であります。これらの環境変化を事業機会と捉え、セルフ化・省人化を実現する商品の品揃えを強化してまいります。さらにパートナーのお客様には組込みが容易なモジュールとして提供してまいります。

また、新規市場として医療分野での人手による作業、監査業務などの支援機器、空港のセルフ化・自動化機器、製造現場における組立支援ツールなど、各種業種における人手不足・労働力不足に対する課題解決をテーマに研究開発投資を行ってまいります。

部品・原材料についてはサプライヤーと連携し安定調達に努めておりますが、天災や事故等によりサプライヤーの生産活動が停止した際には、部品・原材料の調達に困難が生じる可能性があります。これらの事態が発生した場合、生産に影響が生じ業績に影響を与える可能性があります。

これらの部品・原材料の調達リスクに対し、サプライヤーとの連携を強化し調達課題を検知した際は影響の極小化に向けて代替部材の採用を促進する体制を組んでおります。

 

3)コンポーネントプロダクツ事業

当事業ではメーカー直販・間接販売並びにOEMビジネスを展開しており、センシング、AI、通信、データ出力に関わる製品を提供しております。プリンターとIoT機器のコア技術の融合が可能な体制を活かし新たなエッジデバイスを生み出します。

当連結会計年度は売上高734億円、営業利益6億円、連結売上高に占める割合は17%となっております。

当領域で扱うプリンター事業は海外展開をしており、販売・生産・開発拠点がグローバルに存在し、また研究開発に関するパートナーも多いという強みをいかして、これらの資産を他製品に活用、特に成長領域と位置付けているエッジデバイスについては、カーボンニュートラル、インフラモニタリング市場への参入を目指し、国内実績の海外展開や国内外のアライアンスを推進しながら2031年に向けて事業の育成・独立採算事業化を図っております。

また、電源レス、低消費電力を強みとした通信技術や狭小空間での設置に優位性を持つ小型化・メカトロ技術などの強みをいかすことで、今後の成長が期待できるインフラモニタリング市場への製品展開を図ります。

一方でプリンター、PBXは成熟から減少へ市場が変化しており、この分野は事業の縮小が避けられない状況であります。

さらに商品をグローバルに展開する上では、各地域の規制に対応できない場合、市場から受け入れられない懸念があります。

これらのリスクに対してプリンター、PBXは販売力強化、市場シェア維持施策により影響の最小化・残存者利益の最大化を図ってまいります。また、各国の規制情報を素早く把握し製品への適用を進めるとともに、省エネ・省資源といった環境性能を一段と高める製品を提供していきます。

 

4)EMS事業

当事業領域では主にEMS/DMS(設計・製造受託サービス事業)や部品事業、エンジニアリング事業で構成され、設計から製造、信頼性試験までを網羅するモノづくり総合サービスを提供しております。当連結会計年度は売上高739億円、営業利益11億円、連結売上高に占める割合は18%となっております。

当領域のビジネスにおいては、昨今のカントリーリスク拡大による国内生産回帰や人手不足による国内EMS活用拡大の機会と捉え、高品質/変種変量生産に対応できる強みをいかしたモノづくり総合サービスを提供し、お客様の困りごとを生産面で支える製造プラットフォーマーを目指しております。OKIが保有する高い技術力がお客様のニーズを満たすよう営業・技術・生産が一体となり活動してまいります。

リスクとしては半導体部品の需要拡大による部材入手難等のサプライチェーン問題の再燃や人的資源の不足にともなう生産能力不足により、製品・サービスの提供遅れが想定されます。また、新たな技術開発や新商品・サービスの創出が実現できない場合や、市況変化に伴うお客様の需要変動に追随できない場合、売上高の減少による経営成績への悪影響が懸念されます。

しかしながら、EMS事業におけるビジネスリスクに対しては部材の先行手配や自動化促進による生産性向上により提供遅れに対応すると共に、新商品・サービス創出のリソース強化、事業ポートフォリオの多角化による売上減少リスクの解消を図り、事業成長を実現してまいります。

 

⑦イノベーション、技術開発に係るもの

OKIグループとして、項番⑥記載の4つの事業セグメントにおける市場動向への追随、お客様のニーズに叶う製品設計・サービスが実施できない場合、既存事業にとらわれない研究開発やイノベーションが功を奏せず、新商品・新技術の創出が為されない場合、新たな収益源となるような新事業が構築できない場合は、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

特に「中期経営計画2025」の初年度である今年度から、全社横断組織として技術開発マネジメントを担う技術本部、新規事業開発の加速を担うイノベーション事業開発センターを新設しました。これらの機能強化により外部環境の変化にも揺るがず、OKIグループとしての総合力を発揮できる体制を整え事業力の底上げを図ります。

 

1)イノベーション

OKIは国際規格ISO56002を先取りしたイノベーション・マネジメントシステム(IMS)「YumePro」を構築し「全員参加型イノベーション」を全社展開しております。2023年度からは実践モードのイノベーション活動として本格運用し、マテリアリティに掲げた「価値を創造し続ける企業文化への変革」を加速すると共に将来事業の創出、グローバル展開に挑戦しております。

なお、OKIではISO56002に基づき事業化に向けて、4つの観点(需要リスク、実現性リスク、事業環境リスク、収支リスク)を低減していくことにより、事業の解像度を上げております。また、これらの観点は、イノベーションプロセスの段階に応じて低減する観点が異なることから、各段階でのステップアップ時には、これらの観点を如何に低減したかを注意深く確認することが、解像度向上にとって重要ととらえております。

「中期経営計画2025」においても本イノベーション機能は、将来事業の創出の活動そのものに位置付けられており、グループ内におけるモノづくり基盤やイノベーション活動を進化させ、そこで培った技術やプロセスをソリューション、プロダクト、サービスにいかすことで、価値を創出し社会やお客様の課題に貢献することを明確にしております。OKIの強みである情報通信技術、センシング技術、セルフ化や自動化に必要なコンポーネント技術などのエッジ技術の強化とともに、データマネジメントにも力を入れ、「社会インフラ」「製造」「海洋」を注力領域としてリアルな現場から得られるデータの活用を深化させるためのプラットフォーム化を推進します。また、「高度遠隔運用」「物流」「ヘルスケア・医療」「CFB(Crystal Film Bonding)」という領域において、グローバルでの事業化を加速しております。物流領域における配送計画最適化サービスの市場投入、高度遠隔運用を実現するリモートDXプラットフォームの開発も推進、並行してお客様との共創を進めながら新たな事業化に向けて着実に推進してまいります。

 

2)技術開発

市場の技術革新や社会の変化を適切にとらえ、お客様のニーズの変化に対応できない場合、OKIグループ横断で共通する技術開発の統合・再利用が進まない場合、OKIグループ全体の研究開発効率と業績に影響を及ぼす可能性があります。

「中期経営計画2025」では4つの事業領域から中長期の成長を描くため、技術コンセプト「エッジプラットフォーム」を提唱し、AI・データとコンポーネントの観点で技術強化に取り組んでおります。AI・データの観点ではデータマネジメント機能によるデータの共有化と、それらを促進するプラットフォーム技術の強化、OKIに強みのあるアナログ技術やデータ分析技術には発展著しい生成AIのコラボレーション、またコンポーネントは事業分野横断の共通化を推進しております。

これらの技術開発に対する継続的な活動は中期経営計画の達成並びにその後の中長期の成長に不可欠なものと認識しております。

 

3)生産技術

OKIグループの各生産拠点を有機的につなぎコスト競争力の向上と付加価値の最大化によってグループ全体で強いモノづくりを推進してまいります。

また、最先端の生産技術開発を行い、これらを各生産拠点へ展開することにより、更なる生産効率向上を推進してまいります。

 

 OKIグループでは、商品開発の加速、成長領域へのリソースの再配置、既存市場における一層深度ある事業展開等に継続注力し、事業の成長・継続に努めております。

 なお、持続的成長に向けた事業戦略がスピード感をもって実行されていくため、2023年度に大幅な組織再編を実施しております。組織再編については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照ください。

 

⑧調達に係るもの

国内外での自然災害・紛争・テロ等や調達先の事業方針転換等の不測の事態が発生することによる資材調達不足、それらの影響を受けてOKIグループ自体の工場稼働率が低下した場合、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、サプライチェーンにおける人権侵害の発生も調達先の操業に影響を与え、資材調達の不足や遅延を生じるリスクとなります。

OKIグループでは特定の製品、部品や材料を複数の調達先より調達する仕組みをとっております。資材不足、生産設備の非稼働が余儀なくされる場合は、資材調達先の代替確保、代替生産設備の確保や適切な在庫管理等に尽力する体制を構築しております。また、調達先へのCSR調査の実施等により、人権侵害等のリスクについても配慮した取組みを進めてまいります。

これらによりOKIグループとして調達に係るリスクの影響を極力抑制するように努めております。

 

⑨重要な特許関連契約及び技術援助契約に係るもの

OKIグループは、日本国内、海外の複数の企業との間で知的財産関連契約または技術援助契約を締結しております。これらの契約が適正に遂行されない場合の他、不公平な内容で契約が締結された場合、また、その知的財産、援助技術が適正に活用されない場合には、OKIグループの関連する日本国内、海外の事業に影響を及ぼす可能性があります。

なお、OKIグループの製品・サービスには、OKIグループ独自の技術を効果的に活用し、多方面にわたり、その性能に反映させております。他方で、他者の知的財産を尊重すると共に、OKIグループの製品・サービスに許可なく実施することのないように侵害予防調査を実施しております。

また、関連する契約に関しては、社内の知的財産及び法務に関連する専門部署による内容の精査等を実施しております。あわせて専門人材の育成、配置や経験豊富かつ知見ある国内外の弁護士との連携を積極的に行っております。

これらにより、OKIグループとして知的財産関連契約並びに技術援助契約に関するリスクの影響を極力抑制するよう努めております。

 

⑩品質に係るもの

OKIグループは、国内外の生産拠点や生産委託先にて厳格な品質管理を行い、提供する製品・サービスについて品質の徹底に努めております。品質の責任が担保できない場合、その欠陥に起因したリコールの処置費用及びお客様あて賠償責任・費用が発生する可能性があります。また、その欠陥に対して多大な対策費用が発生する可能性もあり、加えて当該問題により当社の企業ブランド、製品ブランドが棄損され、お客様の信用失墜から経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

しかしながら、OKIグループ「品質理念」のもと、事業ごとに品質責任と権限を定め、個々の事業特性に則した品質マネジメントシステムを構築し、商品の企画から製造・保守・運用に至るまで、全ての業務プロセスにおいて、品質向上に努めております。

また、品質問題に関係する情報はグループとして一元管理し、適時、適切に関連部門に共有され、迅速な対応に努めております。

特に安全に関しては、法令遵守に留まらず、OKIグループ「商品安全基本方針」に従った安全・安心の確保に取り組んでおります。

品質不正を起こさない取組みとして、教育、品質アンケート、現場調査等を実施し、運用の徹底をはかっております。これらにより、OKIグループとして品質に関するリスクの影響を極力抑制するよう努めております。

 

⑪M&A、アライアンスに係るもの

OKIグループは、業容拡大、経営の効率化等を目的に、研究開発、製造、販売等、多岐にわたり他社とのアライアンス、事業買収、関係会社の統合等を国内、海外で適宜推進しております。これらの活動はグループの事業ポートフォリオ強化にとって有効な手段であると考えております。双方が有する技術、お客様基盤、人材等経営資源の有効活用につながり、持続的な事業成長の機会に直結するものと認識しております。

しかしながら、経営戦略、製品・技術開発、資金調達等について相手先と当初想定した協力関係が維持できない場合や、不公平な内容の契約締結、関連契約の相手先による一方的な反故、契約違反等が発生した場合、また、M&A、アライアンスにより参入を計画した市場において、当初想定した市場の開拓がなされない場合は、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

その対策として相手先との取引開始時には、先方についての信用調査、コンサルタントの活用、また、各種の契約締結時には、社内の知的財産、及び法務に関連する専門部署による内容の精査、市場調査等を実施し、M&A及びアライアンスに関するリスクの影響を極力抑制するよう努めております。

 

⑫環境保全に係るもの

OKIグループでは、生産活動において、大気・水質・土壌汚染等の原因となりうる化学物質等を使用・排出する工場があります。また、工場やオフィスにおける電力等のエネルギーの使用やお客様による製品使用を通じて間接的にCOを排出しております。

気候変動に伴う社会変動リスク(移行リスク)としては、投資家やお客様等から、再生可能エネルギーの導入等による温室効果ガスの排出量の抑制等への要求が急速に高まりつつあり、こうした要求に応えられない場合や、OKIが得意とするIoT、AI、制御等の技術を気候変動に伴うビジネス機会に活かせない場合には、販売機会の逸失等につながる可能性があるものと考えられます。

また、気候変動の影響による風水害等の激甚化に伴うリスク(物理的リスク)としては、自社及び取引先における工場や調達先の被災による、事業所資産の損失・稼働停止・サプライチェーンの寸断リスクなどが想定されます。このほか、風水害等に起因し許容範囲を超えて環境汚染が生じるリスクがあります。環境汚染が発生した場合、賠償責任の発生や販売機会を逸するリスクがあります。

OKIグループでは当該リスクを低減するために、ISO14001統合認証を取得し、環境法規制等の遵守、環境負荷の低減活動、環境関連データの監視、再生可能エネルギーの導入検討のほか、気候変動起因のBCP・BCM、環境貢献売上高の拡大等を推進しております。

その一環として、OKIグループ中長期環境ビジョン2030/2050において、2030年度における温室効果ガス排出削減目標について、国際的なイニシアティブである「Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)」より、科学的知見と整合した水準であるとして認定(SBT認定)を受けました。2023年に行なった改定では、2050年度目標として自社拠点を含むバリューチェーン全体の「ネットゼロ」を実現することを掲げ、本長期目標についてもSBT認定取得を目指します。この目標の達成に向け、本庄工場のH1棟が大規模生産施設として国内初の『ZEB(Net Zero Energy Building)』を取得するなど、自社拠点における再生可能エネルギーの導入を進めているほか、製品の省電力化などを進めております。

これらの活動により、OKIグループに関連する環境リスクは限定的と考えております。

 

⑬情報セキュリティに係るもの

OKIグループでは、業務において多種多様なコンピューターシステムを利用、運用しております。システムの利用、運用については、適切な使用、システムトラブルの回避、情報の社外漏洩の防止等を実施すべく、各種マニュアル類の制定、システム機器の適切な取扱いの励行、情報の暗号化、多要素認証導入等、多面にわたり様々な対応を行っております。

しかしながら、防御策を講じてもなお外部からのサイバー攻撃、コンピューターウイルスの感染、システム機器の不適切な取扱等により、システムの停止、データの紛失・改ざんや個人情報、機密情報といった情報漏洩の発生等の可能性があること、及びそれらの事象発生による企業価値やブランドの毀損、信用低下などのレピュテーションリスクを招く可能性があることを認識しております。

特に企業を狙ったサイバー攻撃が多発しておりますが、OKIグループにおいても、過去に海外子会社のサーバを経由して第三者による日本のファイルサーバへの不正アクセスを受けました。この事案を受け、OKIグループではエンドポイント・セキュリティツールの全端末への導入及び24時間365日の監視体制の構築等により対策を強化しております。

OKIグループでは、このような事態を極力抑制するため、再三にわたる社員教育の徹底、システムの運用状況のモニタリング、情報セキュリティの推進体制の整備を継続、推進しております。特に新たに認識した課題については、是正並びに強化策の対応を推進しております。

 

⑭人材に係るもの

OKIグループが、社会やお客様のニーズを理解し、最適な商品・サービスを提供し続けるために、経営から現場まであらゆる領域で多様性を持ちながら適材を確保し、一人ひとりが十分に力を発揮する必要があります。また、OKIグループの年齢構成は50歳代にピークがあり、今後離脱が増えることが想定されます。加えて、特に、ニーズを理解しDXにつなげていける人材、グローバルに活躍できる人材、競争力あるモノづくりを実現する人材等は労働市場での獲得競争が激しいことが想定されております。

こうした背景のなか、離脱者の補完や事業計画で必要としている人材の確保ができない場合、今後のOKIグループの中長期的な事業推進に影響を及ぼす可能性があります。

OKIグループでは、質・量ともに十分な人材を確保するために、採用方法の見直し・強化、種々の採用形態・チャネル開拓等により採用増を実現し、全員参加型イノベーションの浸透を起点に人材を育成し、事業間の人員のシフトやシニア人材の活用を行っております。

さらに、役割とその遂行を軸足とする新たな幹部社員等級制度・評価体系の導入、時間と場所に制約されない働き方を実現するための制度の拡充、学びと経験を多く積めるようなキャリアアップ環境の整備、従業員エンゲージメント向上施策や健康経営の推進等の組織風土改革といった多様な人材が前向きに活躍できる職場づくりに取組んでおります。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様に対する利益還元は経営の最重要施策の一つとして位置づけております。

配当については、安定的な配当の継続を基本としながら、業績及び将来の成長に不可欠な投資(設備投資、研究開発投資、人的資本投資)を踏まえたキャッシュ・フローの状況、内部留保の水準を総合的に勘案した上で配当金額を決定することとしております。今後とも財務基盤の強化を図りつつ、株主利益の増大に努めます。

なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めており、剰余金の配当の決定機関は、期末配当につきましては株主総会、中間配当につきましては取締役会であります。

また、当社は連結配当規制適用会社であります。

 

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

株式の種類

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年6月21日

定時株主総会

普通株式

2,600

30.00