2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループでは、「内部統制システム構築の基本方針」に規定する「損失の危機の管理」に基づき、リスクの未然防止及び発生時の影響最小化を目指し、「リスク管理規則」等の必要な規則及び体制を整備しています。リスク管理規則では「リスクを特定・分析し、対策を講じる」プロセスを毎年実行し、持続的かつ円滑な事業運営を図ることを目的としたリスク管理の運用ルールを定めています。その運用は、サステナビリティ推進部が主管部門となって運用を行っています。

具体的には、リスク管理フローに基づき、担当各部門が想定されるリスクの発生可能性(頻度)とその影響度(売上・利益への影響等)を評価し、重要度の高いリスクに対しては優先的に回避策・軽減策・移転策を検討・立案・実行しています。これらの対策について、担当各部門に対してサステナビリティ推進部がヒアリング等を通じて実施状況の確認及び有効性の評価を行っています。年度毎のリスク評価結果は、マネジメントレビューを経て取締役会に報告され、全社員に展開されます。また、事業計画や中期事業計画等の策定においては、策定プロセスでのリスク分析と対策を計画に織り込んでいます。

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重大な影響を与える可能性がある主要なリスクを以下に記載します。ただし、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクからの影響を将来的に受ける可能性もあります。

なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 戦略リスク

① 市場動向・競争環境の変動

発生可能性:高

影響度:大

リスク

当社グループが製造・販売するディスプレイ製品は、それを搭載する製品市場の変動や競争環境の影響を受けます。具体的には、景気の変動、消費者嗜好の変化、季節性等により市場が大幅に変動した場合、売上高の減少、過剰在庫に伴うコスト増加や評価損、さらには工場稼働率の低下による機会損失が発生する可能性があります。さらに、競合他社との競争が激化した場合、売上高が減少し、販売価格が低下する可能性もあります。

対応策

顧客の需要動向を注視し、適切な在庫管理や生産管理に努めるとともに、BEYOND DISPLAY戦略のもと、製品ポートフォリオの変革を通じた売上高の維持・拡大、及び販売価格の維持・適正化を目指しています。

・ディスプレイ事業は、アセットライト化による費用の極小化と生産効率向上を目指すとともに、ファウンドリーパートナーへの生産委託を通じた事業の強化を推進します。

・センサー及び先端半導体パッケージング事業では、当社グループがディスプレイ事業で培った独自技術を活用するとともに、外部企業との協業等を通じて競合他社との差別化を図り、競争優位性を確保します。

・自社の競争環境をより正確に把握するため、競合分析と外部環境分析を継続します。

 

 

② 技術・研究開発

発生可能性:低

影響度:大

リスク

当社グループは、高度な技術を必要とするディスプレイの製造・販売を行っており、その技術優位性の確保は、当社グループの競争力にとって極めて重要です。次世代OLED「eLEAP」等の新たな「世界初、世界一」の独自技術を開発するなど、高い技術優位性の維持・向上のために弛まぬ研究開発活動を推進しています。しかしながら、当社グループの技術が顧客に採用されない場合や、他社の技術開発により当社グループの技術優位性が相対的に低下した場合は、売上高の減少により当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・当社グループは独自技術を基盤とする「技術立社」として、社会と人々の課題解決に取り組んでいます。技術の研究開発においては、競合他社の開発・製品化情報の把握や顧客のニーズを考慮した当社の技術戦略のもと、研究開発対象の厳選、開発段階での進捗レビュー及び継続是非の判断を行っています。また、技術開発における優位性を継続的に確保するために必要な新たな技術知識の習得と開発・製造のリードタイム短縮のため、2021年から「高度専門教育」と「デジタル・AI教育」を中心としたリスキリング教育を開始しました。教育実施後の効果として、既にデジタル技術を活用した効率的な開発と製造が開始されており、今後さらにその範囲を広げていく予定です。

 

 

 

③ 他社との協業・提携

発生可能性:中

影響度:大

リスク

当社グループは、競争力強化や収益性向上、長期的な供給体制の維持、及び新技術・新製品の開発のため、部材サプライヤー、装置メーカー、顧客を含む外部企業との協業を行っています。今後も競争力強化のため、新たな協業の推進、戦略的提携、出資・買収等を実施する可能性があります。これらの企業戦略が、資金の制約、戦略上の目標変更、技術管理又は製品開発等における問題の発生、あるいは関係当局からの許認可等の規制、市場の変動等により、維持又は実施できなくなった場合、又は実施後に十分な成果が得られない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・当社グループは、協業や出資等の企業連携に際して、対象となる市場や事業並びに相手先企業の経営状況等のリスク分析を行った上で判断をしています。また、実行中は協業や提携の進捗をモニタリングし、必要に応じて戦略の軌道修正や組織再編を行い、事業ポートフォリオマネジメントの実行に取り組んでいます。直近では、米国企業と資本業務提携契約を締結し、米国におけるディスプレイ工場設立に向けた協業を開始しています。

 

 

(2) 財務リスク

① 資金調達

発生可能性:高

影響度:大

リスク

当社グループでは、運転資金の調達を目的としたいちごトラストからの借入を行っています。今後の資金需要の発生時には、借入の実行、低効率資産の売却、営業債権等の流動化など、適切な資金調達策を講じてまいります。また、いちごトラストに付与した新株予約権の行使要請についても、資金調達の一環として検討してまいります。

しかしながら、いちごトラストや金融機関等からの借入が困難となった場合、その他の資金調達手段が十分に機能しない場合、あるいは資産売却が計画通りに進まない場合には、必要な資金を確保できず、当社の事業遂行に支障をきたす可能性があります。また、借入に伴う金利の増加による負担が当社の財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、新株予約権の行使がなされない、または一部のみの行使にとどまった場合には、資金不足に陥るリスクがあり、一方で、新株予約権が行使された場合には、株式の希薄化により既存株主の持分比率が低下し、株主価値に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・2025年2月に発表した茂原工場での生産停止、並びに2025年5月に発表した人員削減等の施策を通じて、事業規模に見合った組織・人員体制の構築を進めております。加えて、BEYOND DISPLAY戦略の推進による業績改善を図ることで、資金調達手段の多様化と選択肢の拡大を目指しております。これらの施策によりキャッシュ・フローの改善を図るとともに、キャッシュマネジメントの強化を通じて、外部資金への依存度を段階的に引き下げ、財務の安定性向上に努めてまいります。

 

 

② 為替変動

発生可能性:高

影響度:中

リスク

当社グループの顧客や取引先には、欧米や中国等の海外企業が多く含まれており、為替相場の変動は外貨建てで取引される製品・サービスの売価や費用に影響を与え、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、海外子会社の現地通貨建ての資産・負債は、連結財務諸表作成時に円換算されるため、当社グループの財政状態もまた為替相場の変動により影響を受けます。

対応策

当社グループでは、主要通貨の短期的な為替変動の影響を最小限に抑えるため、ドル建ての支払いとドル建ての回収を組み合わせる為替マリーや、外貨建債権・債務の決済期間を短縮するネッティング等のオペレーショナルヘッジを活用し、為替変動リスクを低減しています。現在、当社では長期的なヘッジ取引の設定に制約を受けていますが、当社の信用状況が改善した際には、改めて最適なヘッジ戦略の検討を行う予定です。

 

 

 

③ 支配株主との関係

発生可能性:高

影響度:大

リスク

いちごトラストは、2025年3月31日現在、当社の議決権の78.2%を保有する支配株主であり、株主総会における決議に対して重大な影響力を有しています。また、当社の取締役であるスコット キャロン氏は、いちごトラストとの間の投資一任契約に基づき、いちごから投資運用に関する権限を受託しているいちごアセットマネジメント・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッドへの投資助言を行う、いちごアセットマネジメント株式会社の代表取締役社長です。さらに、いちごトラストが当社株式を売却する場合、その方式や規模によっては、当社株式の需給関係や市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社は、2021年3月期に指名委員会等設置会社へ移行し、社外取締役が過半数を占める監査委員会、指名委員会、報酬委員会を設置することで、経営の独立性と透明性の確保を図っています。また、取締役会全体でも独立取締役が過半数を占め、支配株主の影響を適切に監視・抑制する体制を整備しています。さらに、いちごトラストおよびその関係会社との取引については、利益相反の懸念を回避するため、スコット キャロン氏は当該取引に関する取締役会の審議及び決議には参加していません。加えて、東京証券取引所プライム市場の上場維持基準への適合を目指し、いちごトラストの持株比率の低下を図るなど、株主構成の健全化にも取り組んでいます。

 

 

④ 上場維持基準への不適合

発生可能性:高

影響度:大

リスク

2025年3月31日現在、当社の「流通株式比率」は20.1%であり、東京証券取引所プライム市場の上場維持基準(35%以上)を満たしておりません。当社は、いちごトラストとの資本提携により、2028年3月末までを適合に向けた計画期間とする特例の適用を受けていますが、この期間内に基準を満たせない場合は、上場廃止となります。なお、いちごトラストの普通株式保有比率は79.2%であり、優先株式の転換や新株予約権の行使により、流通株式比率がさらに低下する可能性があります。

また、当社は2026年3月期末までに債務超過となる可能性があり、上場維持基準に適合しない状態となるおそれがあります。この場合、上場維持のためには、2027年3月期末までに債務超過を解消する必要があります。当社は、資産売却やその他の財務施策により、債務超過の回避・早期解消を目指しますが、これらの施策が想定どおりに進まない場合には、上場廃止となる可能性があります。

対応策

流通株式比率に係る上場維持基準への適合には、いちごトラストの持株比率低下が不可欠であることから、当社は、当社株式の新たな保有先となり得る投資家との接触及び交渉を継続的に行ってまいります。また、投資家による当社株式の保有を促すためには、業績の改善に加え、その取組み状況や進捗、将来の展望について、投資家及び市場関係者の皆様に対する理解を深めることが重要であると認識しております。このため、当社は、積極的な情報開示に努めるとともに、国内外向けの説明会開催等を通じて、情報発信の強化を図ってまいります。

債務超過への対応としては、上記のとおり資産売却による譲渡益の計上を主な回避策として取り組んでおります。併せて、茂原工場の生産停止や人員削減、役員報酬・賞与及び従業員賞与の減額等、固定費の大幅な削減を実施しているほか、BEYOND DISPLAY戦略のもとでの収益力強化を通じて、財務体質の改善を進めております。さらに、いちごトラストに対する新株予約権の行使要請についても、上場維持に向けた資本政策の一環として検討してまいります。

これらの施策を総合的に講じることで、債務超過の回避及び流通株式比率の改善を図り、上場維持を確保してまいります。

 

 

 

⑤ 継続企業の前提に関する重要事象等

発生可能性:高

影響度:大

リスク

当社グループは、当連結会計年度において8期連続で営業損失及び重要な減損損失を、11期連続で親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことにより、純資産の額が減少し、株主資本合計がマイナスになっていることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しています。

加えて、依然として厳しい競争環境が継続しており、米国の関税政策の影響、世界的なインフレによる原材料費・エネルギー費・輸送費等のコストの高止まり、及び顧客需要の低下に伴う売上減少等により早期の業績回復による黒字転換が遅延する懸念があります。さらに、今後の資金調達策の結果によっては、当社グループ資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性があることから、現時点において継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していると認識しております。

対応策

当社は、これまでのディスプレイ専業メーカーから脱却し、センサー及び先端半導体パッケージングを新たな事業の柱に加えるBEYOND DISPLAY戦略を推進しております。これにより、製品及び事業ポートフォリオの再編を通じて、早期の黒字体質への転換と事業成長を目指しております。ディスプレイ事業においては、茂原工場での生産を2026年3月までに終了し、石川工場への生産集約を進めて、コストの極小化を図っております。また、車載用ディスプレイ関連の事業については、BEYOND DISPLAY戦略の実現と競争力強化のため、2025年10月1日付で新設分割により新設予定の「株式会社AutoTech」に承継する計画です。

財務面では、資金需要に応じた機動的な借入の実施、事業規模に見合わない資産の売却や営業債権等の流動化、及びいちごトラストに対する新株予約権の行使要請等、適時適切な資金調達策を講じることで、財務基盤の安定化を図ってまいります。

 

 

(3) ハザードリスク

① 大地震・自然災害・感染症等

発生可能性:中

影響度:大

リスク

・大地震や気候変動に伴う大型台風、洪水等の自然災害によって、従業員、設備、サプライチェーン等が被害を受けたことにより、市場への製品供給に大きな支障をきたした場合、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、火災、爆発事故等により従業員や周辺地域に大きな被害が発生した場合、経営成績に重大な影響を及ぼすとともに、社会の信用を失う可能性があります。パンデミックが発生した場合、ロックダウンや当社グループの拠点やサプライチェーン上での集団感染の発生により、製品やサービス提供に支障が生じる可能性があります。

これらの災害による損害に備え、当社グループは適切と判断するレベルの補償範囲をカバーする各種保険に加入していますが、全ての損害額がカバーされるものではありません。

対応策

・当社グループは、不測の事態による生産活動への影響を最小化し、早期復旧を図ることを目的としたBCP規則を定め、危機管理委員会を設置しています。有事が発生した場合は、災害エスカレーションによる最新状況の共有と対策本部の設置を行い、関連部門と連携して正確で迅速な行動が取れる体制を構築しています。また、安全衛生基本方針や安全関連規則等を制定し、安全衛生管理推進体制を構築することで、火災、爆発及び化学物質漏洩を防止し、安全で安定した操業を維持しています。

・大規模自然災害や事故への対応として、全社員を対象とした防災訓練や安否確認システムの利用訓練等を定期的に実施しています。また、製造拠点では火災の発生や使用する薬液・ガス体の漏洩等、様々なリスクに対する緊急事態想定訓練を定期的に実施しています。

・パンデミックへの対応は、ガイドラインと行動計画を定めて運用しています。状況に応じて出勤・出張・面会等を制限し感染リスクを低減するとともに、従業員の同居家族を含む陽性者が発生した場合の社内アクションや出社条件等を設定し、感染拡大を防止し事業活動への影響を最小化しています。

 

 

 

② 情報セキュリティ

発生可能性:中

影響度:中

リスク

当社グループは、自社・顧客・サプライヤーの技術、研究開発、製造、販売及び営業活動に関する機密情報、並びにステークホルダーの個人情報を多様な形態で保有しています。これらの情報を保護するために適切な管理を行っていますが、かかる管理が将来にわたって保証されるわけではありません。サイバー攻撃等により当社グループが管理・保有する情報が流出し、第三者がこれを不正に取得又は利用する事態が生じた場合、損害賠償訴訟の提起等により、当社グループの事業、業績、財政状態、及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・当社グループは、不正行為等による機密情報の紛失、漏洩等の防止を目的に、情報セキュリティ方針や情報セキュリティ規則を定め、情報セキュリティ委員会を設置し、国際標準(ISO27001)に準拠したセキュリティマネジメントを実施しています。

・セキュリティリスク対応としては、ネットワークの監視や定期的な侵入テストによる潜在的な脆弱性への対策、ワークスタイル変化へのセキュリティ強化、及び全社員を対象としたセキュリティ教育やサイバー攻撃対策訓練の定期的な実施等によりリスク低減を図っています。

・情報セキュリティ事故発生時は、対応フローによるエスカレーションにて最新状況の共有を行い、関連部門と連携して正確で迅速な行動が取れる体制を構築しています。

 

 

➂ 地政学的リスク

発生可能性:低

影響度:大

リスク

当社グループは、日本とフィリピンに製造拠点を有し、中国と台湾に後工程の製造委託をしています。また、グローバルに販売拠点を有し、海外顧客への売上高が当社グループ全体の売上高の大きな割合を占めています。海外事業の展開にあたっては、地政学的リスク要因として、外国における経済情勢や政治情勢の不安定化、現地従業員との関係悪化、外国為替管理の強化、予期しない法規制の新設又は変更、税制、法制度及び事業環境の差異及びその変更による不利益、課税等の行政上の措置、戦争及びテロ等の軍事的影響、反日感情による非買運動等があり、これらの要因が当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・地政学的リスクの高まっている国、地域に対しては、多方面から情報を収集して迅速に対応できる体制を構築し、サプライチェーン全体の複線化を検討・実行しています。さらに、BCP(事業継続計画)の観点から、日本を含めた代替生産体制の実現等による生産体制の分散化を進めています。また、サプライチェーンの混乱や半導体不足による顧客の生産調整、部材・エネルギー・輸送費高騰等の影響を最小化するよう事業活動を進めています。

 

 

(4) オペレーションリスク

① 品質

発生可能性:低

影響度:大

リスク

当社グループは、国内外の製造拠点及び生産委託先において厳格な品質保証体制を構築し、顧客に対して高性能かつ信頼性の高い製品及びサービスを提供しています。しかしながら、万が一、当社グループの製品又はサービスに欠陥が発生した場合、製造物責任その他の責任を負う可能性があります。さらに、大規模な訴訟やリコールの発生が、顧客の信頼や社会的信用の低下を引き起こし、企業ブランドの価値と当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・当社グループは、品質方針に基づき、品質マネジメントシステムを構築し、企画・設計・製造・販売・サービスに携わる全ての部門がPDCAサイクルを運用し、サプライヤーの協力のもとで継続的な改善を実施しています。

・ディスプレイ製品に関してはグループ全体で品質マネジメントシステムであるISO9001:2015の認証を取得しており、車載用のディスプレイの製造拠点では自動車の製造領域に特化した品質マネジメントシステムIATF16949:2016の認証も取得しています。

・製品の品質・製造物責任に対する予防・対応プロセスとして、FMEA(故障モード影響解析)運用規則、製品安全規則等を制定し運用しています。

・万が一、品質上の問題が発生した場合に備え、迅速かつ確実な是正措置及び顧客対応が行える体制を整備しています。

 

 

 

② 原材料・部品調達

発生可能性:高

影響度:大

リスク

当社グループは、原材料・部品等を複数のサプライヤーから購入しています。そのため、供給遅延、供給不足又は価格高騰等が生じた場合は、生産遅延、代替調達による費用増加、調達コストの上昇等が生じる可能性があります。さらに、調達した原材料や部品に欠陥・瑕疵や、仕様の不備があった場合、顧客への製品供給の遅延や顧客からの返品、製品の評価減の発生、又はクレームや訴訟といった問題が発生する可能性があります。当社グループは、仕入品の品質管理やサプライヤーの多様化によるこれらリスクの低減に努めておりますが、原材料・部品等の一部については、その特殊性からサプライヤーが限定されているものやサプライヤーの切替えが困難なものもあり、これら調達品に係るリスクが顕在化した場合は、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・当社グループは、原材料価格の上昇に対し、製品売価への転嫁要請や原価低減策を行い、影響の軽減を目指しています。安定調達については、適正在庫の確保やサプライチェーンの複線化、仕入先のBCP体制の事前確認等を通じてリスクの軽減を図っています。また、サプライヤーの生産地域等をデータベース化し、災害発生時に迅速にサプライヤーと連携できる体制を整えています。

・持続可能かつ責任ある調達の推進に向けては、「JDIサプライチェーンサステナビリティ推進ガイドブック」を全ての1次サプライヤー及び商社経由の調達先である2次サプライヤーに配布し、遵守を要請しています。さらに、「JDIサプライヤーサステナビリティ自己監査票」による定期的な自己監査を行い、サプライヤーの遵守状況を確認しています。

 

 

③ 気候変動・環境規制

発生可能性:中

影響度:大

リスク

慢性的な気温上昇に伴う自然災害の頻発化・甚大化によるサプライチェーンの混乱や生産性の低下、BCP対応コストの増加に加え、今後の脱炭素化(カーボンニュートラル)への取組み強化に伴う費用負担の増加や、顧客要求水準未満の取組みによる取引の減少、将来的なカーボンプライシングの導入等が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、国内外の様々な環境関連法規制の強化に伴う遵守対応費用の増加や、法規制の違反が発生した場合には、当社グループの業績や社会的評価に影響を与える可能性があります。

対応策

・当社グループは、気候変動問題を経営重要課題の一つと認識し、環境最高責任者であるCEOの下で、環境活動を推進しています。また、TCFDの枠組みに基づくシナリオ分析を実施し、気候変動に伴うリスクと機会を明確化しています。

・気候変動による物理的影響への適応策として、サプライヤーの複線化や製品在庫の一定量確保を行い、BCP検証に基づく原材料・部品の適正在庫量を検討し、外部製造委託の拡大を計画的に進めていく方針です。

・環境規制に対しては、環境マネジメントシステムを構築し、環境関連法の遵守徹底と規制変化へのタイムリーな対応を行っています。また、環境パフォーマンスデータを開示し、温室効果ガス排出量データについては第三者保証を取得するなど透明性・信頼性の確保に努めています。また、カーボンプライシング導入等への対応として、省エネ・再エネ活動をさらに推進していきます。

 

 

 

④ 内部統制とコンプライアンス

発生可能性:中

影響度:大

リスク

当社グループは、2020年3月期に、過年度決算において不適切な会計処理が行われていたことが判明し、財務報告に係る内部統制に重要な不備がありました。これにより損害を被ったとして、2020年7月に株主から当社及び元取締役10名に対し、約3,858百万円の損害賠償請求が提起されています。この不備を是正するため、ガバナンス向上委員会を設置し、再発防止策を全社で実行いたしました。その結果、2021年3月期末には重要な不備が解消され、これまで有効な内部統制報告が確保されています。しかしながら、再発防止に取組みつつも、対応が有効に機能せず、又は新たな内部統制の不備が発生した場合には、財務報告の信頼性に影響が出る可能性があります。

また、当社グループは、国内外で商取引、独占禁止法、知的財産権、製造物責任、環境保全、人権、労働安全、輸出入規制等様々な公的規制を受けています。これらの違反が発生した場合、課徴金納付命令、刑事罰、取引停止、社会的信用の失墜等、会社に甚大な損害を与えるリスクがあります。

対応策

・不適切会計処理の再発防止に向けては、会計業務のシステム化等に継続して対応しています。訴訟の提起については、原告の主張を踏まえて適切に対応してまいります。

・「コンプライアンス基本規則」に基づき、コンプライアンス推進体制や諸制度の確立、浸透、定着を目的に、関連部門が集まり諸施策を審議・推進する場としてコンプライアンス委員会を設置しています。また、コンプライアンス違反の是正を図り、社会的信頼を確保することを目的として「内部通報制度」を設けているほか、コンプライアンス遵守状況の把握、内部通報の掘り起しを目的として、従業員へのコンプライアンスアンケートを定期的に行っています。

・独占禁止法及び各国競争法の遵守徹底のため、各国競争法の遵守、教育活動及び発生時対応の強化に努めています。

 

 

⑤ 人財確保

発生可能性:中

影響度:大

リスク

当社グループは、優秀な人材の採用と育成を重要課題と認識しています。しかし、人材確保の競争激化や育成計画の遅れ、又は専門性の高い人材が競合他社に移籍した場合、これらは当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・新卒採用、中途採用を計画的に行い、フレキシブルな働き方の推進や社内公募制度の活用を含む多様な人財が活躍できる環境を整備しています。また、教育制度の拡充による社員の能力開発や、適性を重視した配置、ワークライフバランスを支援する制度の整備により、社員のモチベーションを高めていきます。

 

 

⑥ 知的財産権

発生可能性:中

影響度:中

リスク

当社グループは、自社技術の保護のために適切な国・地域での知的財産権の取得を目指していますが、一部の国・地域では十分な保護が得られない可能性があります。また、当社グループは、第三者からの知的財産権の実施許諾を受ける場合がありますが、今後、必要な実施許諾を得ることができなくなる、不利な条件での実施許諾しか受けられなくなる、競合他社が有利な条件で実施許諾を受けることにより、当社グループの競争力が相対的に低下する可能性があります。

対応策

・新規の技術開発や設計にあたっては、先行技術調査を徹底し、各国の知的財産法、審査基準やプロセスを把握し、知的財産権獲得の精度向上に努めています。自社製品を市場に提供する前にも、第三者の知的財産権調査を精度よく実施しています。また、知的財産権を事業戦略や研究開発と連動させて最大限活用し、強みのある知的財産権を蓄積しています。

・万が一、他社から知的財産権侵害の指摘を受けた場合や実施許諾条件の変更等を求められた場合に備え、専門人財を配置し、外部弁護士とも連携して適切に対応する体制を整えています。

・なお、当社は、2025年5月15日付基本合意書に基づき、特許権等の知的財産権の一部をいちごトラストに譲渡することに合意しております。但し、当社の事業規模に見合う知的財産権については引き続き当社が保有し、譲渡対象の知的財産権についても、当社が実施権を確保することでいちごトラストと合意する予定であり、本件譲渡が当社の今後の事業展開に支障をきたすことはないと考えております。

 

 

 

⑦ 人権

発生可能性:中

影響度:大

リスク

サプライチェーン上における強制労働や児童労働等の人権侵害が発生した場合、原材料・部品調達が困難となることや、顧客や他のサプライヤーとの取引停止により、当社グループの業績、財務状況、社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

また、米国の「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」により、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品は、強制労働により生産されたとみなされ輸入が原則禁止されています。これによるサプライヤーとの取引関係悪化や国レベルでの貿易制限が生じた場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

・当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」に沿った対策を推進しています。サプライチェーン上の人権課題に対しては、「JDIサプライチェーンサステナビリティ推進ガイドブック」を配布し、遵守を要請しています。また、自己監査を定期的に実施し、遵守状況を確認しています。

・責任ある鉱物調達のため、紛争鉱物調査を実施し、武装勢力への資金供給がないことを確認しています。

・人権、ハラスメント問題等の注意喚起のため従業員教育も定期的に行っています。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社グループは、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しております。しかしながら、当期(2025年3月期)は親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、配当原資となる剰余金もマイナスとなっており、運転資金の確保が必要であることから、誠に遺憾ながら既に開示のとおり無配とさせていただきます。また、E種優先株式につきましても、無配といたします。

2026年3月期につきましては、業績及び財務状況の改善に向けた取組みを継続してまいりますが、引き続き運転資金の確保が必要であることから、引き続き無配とさせていただきます。

株主の皆さまには深くお詫び申し上げますとともに、ご期待にお応えできるよう早期の業績の改善を目指し、最善を尽くしてまいりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

当社は「毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めておりますが、年間の配当回数は決定しておりません。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。