2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    1,421名(単体) 228,420名(連結)
  • 平均年齢
    43.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    17.9年(単体)
  • 平均年収
    9,304,992円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2024年3月31日現在

 

セグメントの名称

従業員数(人)

くらし事業

88,738

(16,618)

オートモーティブ

29,177

(2,190)

コネクト

27,960

(1,279)

インダストリー

37,241

(4,002)

エナジー

17,241

(1,776)

その他

26,642

(3,040)

全社

1,421

(124)

合計

228,420

(29,029)

 

(注)1 従業員数は就業人員数であり、臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しています。

   2 臨時雇用者数には嘱託契約、パートタイマー等の従業員を含み、人材派遣会社からの派遣社員を除いています。

   3 従業員数は、前連結会計年度末に比べ4,971名減少しています。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

1,421

43.7

17.9

9,304,992

 

(注)1 従業員数は就業人員数です。

   2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

   3 提出会社の従業員数は、すべて全社に所属しています。

 

(3)労働組合の状況

 パナソニックグループ労働組合連合会には122組合(2024年3月31日時点)が所属しています。

 労使関係はきわめて安定しており、特記事項はありません。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当社グループでは報酬体系上、性別による格差はありません。一方で、とりわけ日本地域では、上級の管理職や意思決定をする職位において、より多くの女性を登用する必要があることを認識し、多様性の確保に注力しています。このため、インクルーシブな職場環境づくりに加え、評価や登用のあり方について公平性の観点から見直しを図っています。また、女性社員向けの勉強会、女性リーダー向けのキャリアアップセミナーの開催、ロールモデルの価値観や仕事観にふれる機会づくりなどにも取り組んでいます。

 

 ①提出会社

管理職に占める

女性労働者の割合(%) 

(注2)

男性労働者の

育児休業取得率(%) 

(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%) 

(注2)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

7.9

82.0

87.3

86.2

104.4

 

 ②連結子会社

名称

管理職に占める女性労働者の 

割合(%) 

(注2)

男性労働者の 

育児休業 

取得率 

(%) 

(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%) 

(注2)

全労働者

正規雇用労働者

パート・

有期労働者

パナソニック㈱

6.5

69.0

72.4

71.1

64.8

パナソニック オートモーティブシステムズ㈱

4.7

107.0

76.1

75.2

70.1

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション㈱

3.2

85.0

78.6

77.1

75.2

パナソニック ハウジングソリューションズ㈱

7.9

48.0

55.8

55.3

61.3

パナソニック コネクト㈱

7.7

92.0

80.0

78.0

96.2

パナソニック インダストリー㈱

4.4

69.0

78.2

77.1

75.6

パナソニック エナジー㈱

6.5

68.0

80.7

80.5

59.6

パナソニック オペレーショナルエクセレンス㈱

16.7

78.0

79.0

78.0

66.3

 

(注)

 

 

 

 

 

 

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出した指標については、小数点以下第2位を四捨五入して、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき算出した指標については、小数点以下第1位を切り捨てて、それぞれ小数点以下第1位まで表示しています。

 

 

 

 

 

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。(管理職に占める女性労働者の割合算出の基準日は2024年4月1日です。労働者の男女の賃金の差異については、2023年度の給与・賞与に基づいて算出しています。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の2023年度の取得割合を算出したものです。なお、計算式は次のとおりです。「2023年度に育児休業等をした男性労働者の数及び小学校就学前の子を対象とした育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数の合計数÷2023年度に配偶者が出産した男性労働者の数」

 

 

 

上記以外の連結子会社については、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報 (2)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において判断したものです。

 

(1) ガバナンス

 当社グループでは、グループCEOが委員長を務め、委員長から任命を受けた執行役員及びグループ会社の役員等によって構成されるサステナビリティ経営委員会を原則月1回開催しています。
 サステナビリティ経営委員会は、取締役会の監督の下、当社グループのサステナビリティに関する重要テーマについての議論・方向付けを行い、グループ経営会議等を通してグループ全体に展開・徹底しています。また、その内容は必要に応じて取締役会においても報告・共有されグループとしての意思決定につなげています。
 

(2) リスク管理

 当社グループは、財務及び社会への影響の視点で、重要な機会とリスクをマテリアリティとして特定しています。
 マテリアリティの特定にあたっては、まず、社会からの要請や予見される将来課題等から、機会及びリスクになる課題を抽出しました。次にこれらについて、当社グループ及びステークホルダー視点で重要度評価を行い、最重要課題及び重要課題を抽出しました。このプロセス及び抽出したマテリアリティについて社外の専門家との対話を通じて妥当性を確認し、当社グループのサステナビリティ経営委員会、グループ経営会議、当社取締役会での議論を経て、マテリアリティを特定しました。

 このマテリアリティをもとにサステナビリティの取り組みを推進し、新たな事業機会の活用とリスクの低減を通じて、サステナビリティ経営の向上を図っていきます。また特定したマテリアリティは、今後の環境変化やステークホルダーとの対話を踏まえ、適切に見直していきます。

 当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを管理するエンタープライズリスクマネジメント
(全社リスクマネジメント、「ERM」)の取り組みについては「3.事業等のリスク」をご確認ください。

 

(3) 戦略、指標及び目標

 当社グループは、「事業を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献すること」を経営基本方針の中心に据え、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を目指しています。この経営基本方針の実践こそが、当社にとってのサステナビリティ経営であると考えています。

 その中で、グループ共通戦略として、「環境」と「くらし」の領域で新しい事業機会を最大限に活用し、持続的な価値創出を目指します。「環境」の領域では、「地球環境問題の解決」へのお役立ちのために、2022年度に長期環境ビジョン“Panasonic GREEN IMPACT”を掲げ、取り組みを進めています。「くらし」の領域においては、「一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」へのお役立ちのために、多様なお客様一人ひとりにあった価値を提案できる
“くらしのソリューション・プロバイダー ”となることを目指し、グループの総合力を発揮していきます。

 一方、様々なリスクを低減し、持続的に価値を創出していくための経営基盤の強化を図ります。これら、グループ共通戦略及び経営基盤の強化におけるマテリアリティのうち、最重要課題とその指標及び目標は以下の通りです。

 「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」も合わせてご参照ください。

 

 

 

 

マテリアリティ
(最重要課題)

指標

目標

グループ
共通戦略

地球温暖化進行と
資源の枯渇

CO2削減インパクト

3億トン
(2050年)

全工場 CO2排出量

実質ゼロ
(2030年)

廃棄物リサイクル率

99%以上

お客様一人ひとりの生涯にわたる
健康・安全・快適

継続検討

持続的に価値を創出

していくための基盤

ビジネス
インテグリティ

重大なコンプライアンス違反の発生

0件

自社の
サプライチェーン
マネジメント

継続検討

社員の

ウェルビーイング

重篤災害・重大災害の発生

0件

「従業員意識調査」の社員エンゲージメント/社員を活かす環境

グローバル

最高水準

(2023年80%以上)

コーポレート・
ガバナンス

株主との建設的な対話の充実

実施

取締役会実効性評価の実施と改善施策への取組み

実施

PHD取締役会の社外取締役比率

1/3以上

業績連動型役員報酬における非財務指標の採用

実施

人権の尊重

当社グループ各社に対する人権デュー・ディリジェンスにおいて特定された、強制労働につながり得る課題の是正推進

実施

外国人移住労働者を雇用する当社グループ拠点に
対する、強制労働防止に向けた研修実施率

100%

サイバー
セキュリティ

セキュリティ意識の向上と行動変容を促進するための全従業員向けの教育・訓練の実施

年4回以上

専門チームによる脅威情報・脆弱性情報の定常的な
収集・監視と、必要に応じた対応

実施

サイバー攻撃を想定した専門チームによるインシデント対応訓練の実施

年1回以上

重大インシデント発生件数

0件

 上記の指標及び目標については、事業環境の変化等を踏まえて、適時適切に見直しを実施しており、継続検討中の
指標及び目標については、来年度以降、随時開示をしていきます。

 

(4) サステナビリティに関する取り組み紹介

①地球環境問題

 当社グループは、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、2022年に長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」を発表しました。目指すゴールは、責務としてスコープ1~3(注)1にあたる自社グループバリューチェーン(注)2におけるCO2の排出を実質ゼロにすることによる排出削減1.1億トンに加え、事業活動を通じた社会への排出削減貢献2億トンにより、2050年に全世界の排出総量の約1%にあたる3億トン(注)3以上の削減インパクトを創出することです。

 PGIがゴールと定める削減インパクトの2/3を占める削減貢献量は、自社の技術や製品、サービスを使用した場合にどれだけのCO2削減効果が見込めるかを推定する指標です。当社グループは、この削減貢献量が企業の脱炭素への貢献として適切に評価されるよう、国や業界・金融界を巻き込んで、その社会的意義・国際標準化の必要性の議論を先導しています。2023年8月に発行したサステナビリティデータブックでは、削減貢献量の事例や算定式などを初めて開示しました。IEC(国際電気標準会議)・GXリーグ(注)4・WBCSD(持続可能な発展を目指すグローバル企業団体)での標準化活動やガイダンス作成に参画する他、これまで様々な国際イベントで発信し続けてきた成果として、2023年4月のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合、及び5月のG7広島首脳サミット、それぞれの成果文書において「削減貢献量を認識することに価値がある」「脱炭素ソリューションを通じ他の事業者の排出削減に貢献するイノベーションを促すための民間事業者の取り組みを奨励・促進」と明記されるに至りました。その後も2023年11月にドバイで開催されたCOP28(注)5において、PGIを実現する先進環境技術の展示やセミナー、及びパネルディスカッションへの登壇を通じ、削減貢献量の意義や国際標準化の必要性などを発信しました。

 事業を通じて地球環境問題解決に貢献していく、という決意を込めたPanasonic GREEN IMPACTが目指すゴールには、カーボンニュートラルとともに、サーキュラーエコノミー(CE)(注)6の実現も含んでいます。2022年に公表した環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」では、脱炭素に向けた目標設定に加え、CEの実現につながる工場廃棄物のリサイクル率(99%以上を維持)、再生樹脂の使用量(2022~2024年3年累計9万トン)、CE型事業モデル数(2024年までの累計13事業)の目標も設定しています。更にグループにおけるCEへの取り組みを加速させるため、2023年12月に「サーキュラーエコノミーグループ方針」を策定し、各事業会社の事業特性に応じたアプローチでの課題の特定や、長期戦略・中期行動計画の策定を進めています。

 わたしたちの次の世代、さらに未来の世代にわたって、人々が安心してこの地球でくらしていけるよう、今後も事業活動を通じて、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みをグループ一体となり加速していきます。

 

 なお、当社グループは2019年5月にTCFD(注)7提言への賛同を表明しています。

当社グループは、マテリアリティ特定プロセスを経て、地球温暖化進行を当社グループにおける最重要課題とし、気候変動に関するリスクと機会の特定にあたっては、TCFD提言を踏まえ、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントを実施することを想定し、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を行っています。

 

<TCFD提言に基づく開示>

 

ガバナンス

当社グループでは、環境経営推進体制のトップには取締役会が位置しており、グループ環境経営について取締役会への報告を実施しています。
また、GREEN IMPACT PLAN 2024で社会に約束した環境目標の主要項目に対する進捗と実績は、

グループCEOと事業会社社長などの経営幹部が出席するグループ経営会議で確認し、方向性や課題、特に重要な施策について意思決定しています。特に重要内容は取締役会に諮られています。グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」は、このプロセスを経て、2022年4月に発信しています。グループの環境経営活動の推進にあたっては、2021年12月に設置された、

グループCEOが主宰するサステナビリティ経営委員会での意思決定を通じて、グループ全体で

連携して推進できる体制を構築しています。

戦略

気候変動がもたらす影響について、当社グループ事業のリスクと機会を把握した上で、影響の

ある項目について当社グループ事業へのインパクト分析を行い、最も影響のある項目を軸に

2030年を想定した社会シナリオを策定し、そのシナリオに対応した戦略を検討し、当社グループの戦略のレジリエンスを検証しました。

リスク管理

当社グループは環境リスクを継続的に低減させていくためのマネジメント体制として、事業会社ごとの環境リスク管理体制を組織し、グループ全社のリスクマネジメントの基本的な考え方に則り、毎年度、環境リスクの洗い出しとグループ全社リスクマネジメント推進、及び環境リスク発現時の迅速な対応を進めています。また、当社グループでは、パナソニックホールディングス㈱(PHD)及び事業会社で同一のプロセスに基づくリスクマネジメントを推進しています。

PHD エンタープライズリスクマネジメント委員会では、当社グループの経営・事業戦略と

社会的責任の観点から審議を行い、グループ重要リスクを決定します。2024年度は、グループ

重要リスクのうち、戦略リスクとして気候変動・環境規制/サーキュラーエコノミーの進展、

オペレーショナルリスクとして自然災害、サプライチェーンマネジメントが取り上げられています。

指標と目標

当社グループは、温室効果ガス(GHG)削減の中長期の目標を設定し、2017年10月にSBT(注)82度

目標として認定を受けました。さらに、新たに設定したGHG削減目標が2023年5月に1.5度目標の認定を受けました。(下記の表を参照)

 

 

GHG排出量目標(SBT1.5度目標認定)

目標

目標進捗率

当社グループ事業活動における排出量

(スコープ1、2)

2030年に90%削減(2019年度比)

23%

当社グループ製品使用に伴う排出量

(スコープ3)

2030年に30%削減(2019年度比)

(注)9

 

 

(注)1 スコープ1~3                             :国際的な温室効果ガス排出量の算定・報告の基準である「温室効果ガス(GHG)プロトコル」の中で設けられている排出量の区分。スコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、スコープ2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3はスコープ1、2以外の事業者の活動に関連する他社の排出

2 バリューチェーン                           :原材料調達から製造、流通、販売、アフターサービスにいたるまでの企業の一連の事業活動

3 全世界の排出総量の約1%にあたる3億トン以上:2020年エネルギー起源CO2排出量(出典:IEA)による(CO2削減貢献量の排出係数は2020年基準)

4 GXリーグ                                   :カーボンニュートラルにいち早く移行するための挑戦を行う企業群が官・学・金と一体となり経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)のための議論と新たな市場創造を実践する場として経済産業省が設立した枠組み

5 COP28                                      :第28回 国連気候変動枠組条約締約国会議。気候変動問題解決に向けた国際会議として約200カ国・地域等が参加

6 サーキュラーエコノミー(CE)                 :循環経済。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化するなど、モノのシェアリングやサービス化で資源の有効活用を図る経済システム

7 TCFD                                       :Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略で、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受けて、金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォースのことであり、2017年に提言を公開

8 SBT                                        :Science Based Targetsの略で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2度未満、できれば1.5度未満に抑えるという目標に向け、科学的知見と整合した削減目標

9 ―                                         :算出対象製品拡大による排出量増加のため進捗率は算出せず

 

 なお、サステナビリティデータブック2024年3月期版は2024年9月頃に下記のウェブサイトに掲載予定です。

 https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/data-book.html

 

 

②人事戦略

 当社グループは、創業以来、人材を重要な資本として捉える「人的資本経営」の考え方を大切にしてきました。それは一人ひとりが自主責任感に基づき挑戦する社員稼業と、互いに言うべきことを言い知恵を出し合う衆知経営からなる自主責任経営です。私たちはこの経営基本方針の実践をグループ共通の経営戦略とした上で、事業会社が競争力を磨き上げることで「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を具現化していきます。

 そこで当社グループ共通の「一人ひとりが活きる経営の心構え」(後述)では「人財を預かる全ての人」と「組織を預かる全ての責任者」の心構えを定めています。そして、社員一人ひとりが理想の社会実現に向けて経営基本方針の実践を目指すための行動指針としては「Panasonic Leadership Principles(PLP)」(下記)があります。私たちは具体的な行動を通じて、より高い付加価値を社会に創出していきます。

 

 

 そしてこの付加価値を高める重要な4つの要素が、「ケイパビリティ(階層別の能力開発)」「社員エンゲージメント(自発的な挑戦意欲)」「社員を活かす環境(能力を活かし、働きやすい環境)」「多様な人材」です。

 私たちは、これらの要素の源泉は一人ひとりが心身ともに健康で、挑戦の機会を通じて幸せと働きがいを感じている状態、つまり「社員のウェルビーイング」であると考え、自主責任経営の前提として位置付けています。

 この実現をグループ共通の人事戦略とし、「安全・安心・健康に、はたらく。」、「やりがいを持って、はたらく。」、「個性を活かしあって、はたらく。」の3つの柱で取り組みを推進し、付加価値を創出します。

 

 当社グループは、「社員のウェルビーイング」を実現するため3つの柱の取り組みに紐付く指標を設定して、特に「社員エンゲージメント」及び「社員を活かす環境」を示す指数、女性管理職比率(管理職に占める女性労働者の割合)(日本)、労働災害の件数をグループ共通の最重要指標と定めています。

 「社員エンゲージメント」及び「社員を活かす環境」を示す指数は、「従業員意識調査」で測定する肯定回答率(%)です。これは社員の意識を定点観測する取り組みとして毎年グループ社員を対象に実施している調査(2023年度の回答者数は約15.7万人)です。2030年度にはこの指数をグローバル最高水準(80%以上)とすることを目標としています。調査結果は年々上昇傾向にあり、2023年度の「社員エンゲージメント」指数は68%、「社員を活かす環境」を示す指数は66%でした。なお、女性管理職比率については「第1 企業の概況 5 従業員の状況」及び「第7 提出会社の参考情報 2 その他参考情報 (2)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

 

(a)安全・安心・健康に、はたらく。

― 安全・安心・健康な職場づくり

 安全・コンプライアンスは事業運営の大前提です。当社グループはパナソニック ホールディングス

㈱の取締役会が制定改訂する「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準(以下、「コンプライアンス行動基準」)」、及びグループCEOが発信する「パナソニックグループ 労働安全衛生ポリシー」において、パナソニックグループで働く人の安全と健康の確保を定めています。労働安全衛生については、モノづくり現場における重篤・重大災害の防止に向けて、設備安全基準の教育の展開・浸透を図るとともに、リスクアセスメントに基づき非定常作業時における安全確保の徹底を図っています。

 また、衛生管理においても今般の法改正を踏まえ、化学物質管理の自律化に向けた人材育成と職場管理体制の強化に取り組んでいます。健康については、グループ全体に「健康メッセージ」を発信しています。社員のウェルビーイングの実現に向けた健康投資を強化する方針を明確化するとともに、各事業会社においても従来からの会社、労働組合、健康保険組合が一体となった「健康パナソニック活動」に加え、独自の取り組みにも着手しています。定期健康診断や従業員意識調査、ストレスチェックなどの結果をレビューし、成果の確認を行うとともに、更なる改善と強化につなげていきます。なお、日本では経済産業省が推進する「健康経営優良法人」の取り組みを進めており、2024年3月時点ですべての事業会社が健康経営優良法人として認定されています。さらにパナソニック コネクト㈱及びパナソニック㈱は、ホワイト500(注)に認定されています。

 また、コンプライアンス遵守においては、あらためて社員自らの関わる事業・地域に関する法規制についての教育を実施しています。加えて、グローバルホットライン「EARS」等を活用し、問題の早期発見・未然防止について周知徹底を図ると同時に、あらゆるハラスメントの根絶に向けた啓発活動の強化に取り組んでいます。

 

(注)ホワイト500:大規模法人部門における健康経営優良法人の中で特に取り組みが優良とされる上位法人500社

 

(b)やりがいを持って、はたらく。

― 自発的な挑戦意欲と自律したキャリア形成支援

 当社グループでは前述の通り「一人ひとりが活きる経営の心構え」を定めています。一人ひとりが活きるとは、互いに言うべきことを言い、多様な意見を積み重ねて質の高い意思決定を行い、より高い価値を生み出すことです。「人財を預かる全ての人」及び「組織を預かる全ての責任者」の心構えを次の通り定め、人材育成の基本としています。

一人ひとりが活きる経営の心構え

背景

パナソニックグループの存在意義は「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現です。
多様化する社会にお役立ちを果たし続けるためには、私たち社員一人ひとりの個性が最大限に活きる会社であることが不可欠です。

一人ひとりが活きるとは、互いに言うべきことを言い、多様な意見を積み重ねて質の高い意思決定を行い、より高い価値を生み出すことです。

そのためには、社員一人ひとりは、それぞれの個性を最大限に発揮し、「社員稼業」を実践すること、そして、組織を預かる全ての責任者は、社員一人ひとりが「社員稼業」を実践できる環境を整え支援するとともに「衆知を集める全員経営」を実践することが求められます。

 

位置づけ

本心構えは、「一人ひとりが活きる経営」を実践するために、「人財を預かる全ての人」と「組織を預かる全ての責任者」の心構えを示すものです。なお、「人財を預かる全ての人」とは、役職を問わず人財の成長に関わる全ての人のことを意味します。また、全ての社員に求められる心構えは、信条・七精神を含む経営基本方針に表される通りです。

 

人財を預かる全ての人の心構え

1. 一人ひとりの多様な個性を尊重する

2. 一人ひとりの思いを大切に育む

3. 一人ひとりの挑戦を後押しする

 

 

心理的安全性を高め、相互協力の関係性を築くこと

社会へのお役立ちの意欲を喚起し、信頼して任せること

誠意と大きな愛情をもって挑戦を支援し、失敗からの学びを奨励すること

 

組織を預かる全ての責任者の心構え

1. 目指す姿を明示すること

2. 成果達成の道筋を共有すること

3. 挑戦への阻害要因を取り除くこと

4. 人への投資を十分に行うこと

 

 

目指す姿を明確にし、対話を通じて共感を高め、実践への意欲を喚起すること

あるべき姿に向かう日々の目標と指標を一人ひとりと共有し、参画意識を高めること

内向きな仕事を見直し、「やめる・減らす・変える」を判断すること

一人ひとりが個性を発揮し、力を伸ばすことができる環境を整えること

 

なお、経営責任者は一人ひとりが活きる経営の最終責任を負います。

 

 

 そして、社員一人ひとりがその個性や能力を最大限に発揮し、働きがいを高められるよう、採用、人材育成、評価・処遇、異動・配置などの様々な場面において一人ひとりの体験価値を高め、挑戦し活躍できる機会づくりを推進しています。

 

<経営者づくり>

 当社グループの持続的な成長を実現するためには、事業を牽引する多様な経営者が必要不可欠であり、そのために中長期にわたる後継者のパイプラインづくりを推進しています。具体的には、パナソニックホールディングス㈱執行役員及び事業会社社長等の26の重要ポストを対象とし、後継者の早期発掘と「適所適材」を基本に、国籍や職歴、性別、年齢等の属性に限らない多様性あふれる経営者づくりを推進しています。そのためにグループ全体最適視点で後継者の発掘・育成・配置・モニタリングを複眼的に議論・推進するグループタレントマネジメントコミッティーを設置し、現在100名規模の後継者のキャリア開発に取り組んでいます。

 

<PX、GXを推進する人材の育成>

 PXとはPanasonic Transformationの略です。お客様サービスと事業オペレーションの2つの側面から形成されるパナソニックのデジタルトランスフォーメーションをPXと称し、ITの変革、オペレーティング・モデルの変革、カルチャーの変革を推進しています。この推進にあたってはすべての経営者がコミットして「7つの原則」を制定し、それぞれの現場でPXを推進する全社員に対する約束としています。その原則の一つに、「現場も含めたグループ内で、データ・テクノロジーを利活用する人材を増やし支援する」があります。これに関し、経営層も含め、社員一人ひとりが各々の現場で、データ・テクノロジーを利活用し、付加価値創出ができるよう知識・スキルの向上を支援していくとともに、PXを推進する専門人材の採用・育成に注力していきます。また、GXとは国が提唱・推進する「Green Transformation」の略です。当社グループは、環境に関する長期ビジョン「PGI」を発信し、サステナブルな地球環境の実現に向けてカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどに関わる知見を有する人材の育成を推進しています。

 

<A Better Dialogue(本人と上司の対話)>

 一人ひとりの成長や挑戦を支援するグループ共通の取り組みのひとつが「A Better Dialogue」です。本人と上司との対話の「質」と「量」を高めるこの取り組みは、一人ひとりの想いを引き出す1on1 Meetingに加え、「キャリア・能力開発」、「目標管理」、「コンピテンシーレビュー」の3つの仕組みで構成されています。こうした多様な対話機会の提供を推進し、2023年度は日本では実施率83%、満足度84%となっています。

 

<公募異動>

 一人ひとりの自発的な挑戦意欲、自律したキャリア形成を支援する仕組みの一つが公募異動です。グループ共通の制度としては、eチャレンジ(募集中の案件に対して、応募することができる公募制度)・eアピール(希望する部門に自らアピールすることができる制度)、複業(所属部門に身を置きながら、社内の新しい業務を経験できる制度)があります。2023年度はeチャレンジ・eアピールには募集人員を大きく上回る約1,700名の社員が手を挙げ、うち約500名が挑戦しました。また複業には約50名が挑戦しました。その他、各事業会社でも独自の公募異動が活発化しています。

 

(c)個性を活かしあって、はたらく。

― Diversity, Equity & Inclusion(DEI)の推進

 当社グループは2021年に制定したグループ共通の方針である、Panasonic Group DEI Policyを軸に、3つの視点でDEIを推進しています。1つ目はトップコミットメントです。これは、経営者自らがDEI推進にコミットし、事業戦略に織り込んで推進することです。グループDEI推進委員会を定期的に開催し、経営者と社員の対話を通じてアクションを決定し、取り組みを加速させていきます。2つ目はインクルーシブな職場環境づくりです。これは、社員の多様な個性に気付き、それを活かすマネジメントや組織環境をつくっていくことです。例えばアンコンシャス・バイアストレーニングを各地域で推進しています。3つ目は社員一人ひとりへのサポートです。ジェンダー、LGBTQ+、障がいのある人、高年齢者、また育児や介護を抱える人など、多様な個性を持つ一人ひとりが、それぞれの挑戦に向き合えるよう支援することです。様々な個性に応じたコミュニティの活動展開の支援や制度・仕組みの構築、運用の見直しなどを実施しています。

 なお、多様性に関する指標(管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異)については「第1 企業の概況 5 従業員の状況」及び「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報 (2)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

<ジェンダーの公平性の取り組み>

 当社グループでは報酬体系上、性別による格差はありません。一方で、とりわけ日本地域では、上級の管理職や意思決定をする職位において、より多くの女性を登用する必要があることを認識し、多様性の確保に注力しています。このため、前述のインクルーシブな職場環境づくりに加え、評価や登用のあり方について公平性の観点から見直しを図っています。また、女性社員向けの勉強会、女性リーダー向けのキャリアストレッチセミナーの開催、ロールモデルの価値観や仕事観にふれる機会づくりなどにも取り組んでいます。

 

<妊娠・育児中の社員へのキャリアサポート>

 会社制度の理解促進を図るとともに、上司のマネジメントガイドとして妊娠中から育児期まで、それぞれの部下の状況に合わせたコミュニケーションを推進しています。さらに、希望する誰もが育児とキャリアを両立できるようグループ各社において制度の整備と職場風土の醸成に取り組んでいます。具体的にはより安心して休業を取得できるよう、一日単位の有給の育児休暇の新設や、最大2年間の育児休業制度のうち一定期間を有給化するなどの取組みを推進しています。加えて、働く時間と場所の柔軟化など、単に休業という選択肢に留まらず、一人ひとりのニーズに応じて育児と仕事を両立するための制度整備を図っています。