2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業について

① LSI製品の需給バランスにおけるリスク

当社グループはLSIの設計、開発から生産までのトータルソリューションを提供しておりますが、自社で生産設備は保有せず、生産は全て外部に委託するファブレスの事業形態をとっており、台湾を中心とする国内外の大手ファウンドリーとのネットワークを構築し、顧客のニーズにあわせて製品の製造を委託しております。

したがって、半導体市況の需給バランスにより調達数量と価格が影響を受け、当社グループの望む納期、数量及び価格で製品が調達できない可能性があります。

これに対処するために、既存ファウンドリーとの連携をこれまで以上に強固なものとし、製品を優先的に調達できる環境整備に取り組んでおります。これに加え、新たなファウンドリーを検討し調達先を増やすことで、リスクの最小化に努めております。

② 販売先におけるリスク

当社グループは、LSI製品として、アミューズメント分野向けに使用されるゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)、ゲーム機本体・周辺機器向けのLSIの他、デジタルカメラ向け等画像処理用LSI、事務機器向けLSIを主に販売しておりますが、ゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)を主に供給している、任天堂株式会社への売上高の割合が高くなっております。

したがって、これらのLSI製品が使用されるゲーム機器やゲームソフトウェアの販売動向、また、同社におけるLSIの採用状況などにより、当社グループの業績が変動する可能性があります。

当該リスクは完全に排除できる性格のものではありませんが、当社は任天堂株式会社と良好かつ緊密な関係を構築し、最適なソリューションの提供や安定した製品の供給等により顧客満足の獲得に努め、リスクの最小化に努めております。また、今後の成長が見込める産業機器分野、通信分野、エネルギー制御分野等における新たな事業の育成にも注力し、中長期において事業ポートフォリオの適正化を進めていく考えです。

なお、任天堂株式会社への売上高については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (4) 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおりであります。

③ 生産委託先(外注加工先)におけるリスク

当社グループは、製品の生産を外部に委託するファブレスメーカーという事業形態を採用し、特徴のある技術力を核に顧客のニーズに最適な製品を開発しております。当社グループの主力取引先である任天堂株式会社へ供給するゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)及びゲーム機本体・周辺機器向けのLSIなどの製品の生産については、主にMacronix International Co.,Ltd.(以下「マクロニクス社」)へ委託しており、マクロニクス社への外注割合が高くなっております。

したがって、何らかの理由によりマクロニクス社で生産ができなくなった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

現在のところ、当該リスクの顕在化の兆候はございません。なお、当社は任天堂株式会社及びマクロニクス社との間で製造委託契約を締結しており、両社と良好かつ緊密な関係を構築し、安定的な製品の供給に努めております。

また、生産委託しているファウンドリーは台湾が中心となっているため、地政学的なリスク等があることも認識しております。これらに対処するために、ファウンドリーを国内外に広く求め、信頼関係を築き不測の事態に備えてまいります。

 

④ 人材の確保におけるリスク

当社グループは、独自のアナログ・デジタル技術を駆使し、技術開発力をベースとして事業を展開しており、その成長は人材に大きく依存しております。そのため、優れた技術者を獲得して維持することや、必要とする人材をどのように処遇し、どのように育成していくかは、人事政策上の重要課題と認識しております。

したがって、将来において、当社グループの国内外の優秀な技術者の維持や、人材の新規採用・育成・グローバル化が計画どおりにできなかった場合、当社グループの競争力が弱まり、企業価値そのものに影響を与える可能性があります。

これらに対処するため、当社グループは人事処遇体系を整備し、中長期の新たな事業育成等のための人材投資について、育成計画に基づいて人事政策を実行いたします。また、多様な環境で能力を発揮し、組織の成果を最大化出来る人材を育成できるよう、人材育成に積極的に取り組んでおります。なお、詳細につきましては、2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (5) 人的資本に関する方針と取り組みをご参照ください。

 

(2) 経営について

① 戦略的投資におけるリスク

当社グループは、他社との事業連携、情報収集等を目的とした戦略的提携により当社の企業価値向上に資すると判断した場合に、提携先企業並びに最先端の技術やアイデアを持つスタートアップ企業への投資を行っております。当連結会計年度末のこれらの投資有価証券の残高は123億5千5百万円となっており、連結総資産の9.8%を占めております。

このような事業の成長を加速するための投資を含めた戦略的提携におきましては、事業上の補完関係の構築や業績の拡大等において、当社の予測どおりの効果が得られない可能性があります。また、投資株式の時価の下落や実質価額の著しい低下による評価損の発生により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

なお、これら戦略的投資に関しては、取締役及び社外有識者を中心とした会議体において、投資先企業ごとに、事業連携等による当社グループの付加価値向上の状況並びに将来の収益力などを総合的に勘案し、投資効果やリスクの検証を行ったうえで戦略的投資の可否を決定し、取締役会の承認を得て実施しております。

② 為替変動について

当社グループと顧客や生産委託先などのパートナーとの取引においては、米ドルや台湾ドルを主とする外貨建取引が一定割合含まれております。また、海外子会社の財務諸表は連結財務諸表作成のために円換算されていることから、外国為替相場、殊に日本円・米ドル間の為替相場の変動により、当社グループの業績が変動する可能性があります。外国為替相場が円高方向に進行した場合、概して損失方向に影響し、その変動幅が大きいほど当該リスクの顕在化の可能性が高まります。

なお、為替リスクの低減のため、必要に応じて為替予約取引を利用しております。

③ 知的財産権について

当社グループは、研究開発を主体としたファブレスメーカーであり、知的財産権の保護は事業展開上の重要課題と認識しております。

しかしながら、当社グループが出願する特許や商標などがすべて登録されるとは限らないこと、また、公開前の他社技術など、他社権利を調査しても把握できないものもあることから、他社の知的財産権を侵害し、訴えを提起された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの独創的な技術が、特定の国・地域においては、法整備等の理由により充分な保護を受けることができない可能性があります。このような状況下で、他社が当社グループの知的財産を無断で使用し、類似の製品を市場に販売した場合、これを効果的に阻止することができない可能性があります。

なお、当社グループは、知的財産に係わる社内体制及び特許事務所との連携を強化し、当社グループが提供する製品・サービスを保護するための特許や商標などの出願・登録を積極的に行うと同時に、他社権利の調査を徹底することにより他社権利の侵害を防止するなど、リスクの最小化に努めております。

 

④ 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、製品開発や知的財産などの機密情報の他、事業活動を通じて顧客やサプライヤー等の機密情報や従業員等の個人情報等を保有しております。このため、昨今のセキュリティリスクの高まりの中、情報の適切な管理と情報セキュリティ対策を十分に行うことが、事業を展開する上での重要課題となっております。

これらの情報の取り扱いにつきましては、社内に情報システムを整備し、情報の適切な管理とセキュリティ対策を行っておりますが、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの侵入等により、万一これらの情報が流出した場合や、重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には多額のコストが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループは、社内の情報システムのセキュリティ強化や従業員に対するIT教育等による意識向上など、システムと運用の両面において情報セキュリティ対策に努めております。また、情報セキュリティの確保においては、政府や他社との連携により早期の情報共有を図り、万全を期すなど、リスクの最小化に努めております。

⑤ 偶発的な災害等におけるリスク

当社グループが事業を展開する国内外において、大規模な地震をはじめとする自然災害や火災、未知の感染症の流行、テロ行為や社会騒動、その他の事故・事件等が発生した場合、当社グループの事業拠点、生産を委託するファウンドリーやメーカー、あるいは顧客自身に対して大きな被害が発生する可能性があります。また、これらの影響によって当社グループの事業活動の縮小等を余儀なくされた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

このような偶発的な災害等におけるリスクを全て回避することは極めて困難でありますが、当社においては、リスクの予防回避及び発災時の人命の安全、並びに被害の抑制・軽減、二次災害の防止、早期の業務再開を図ることを目的に危機管理マニュアルを策定し、危機管理についての必要事項と対応方法を定めるとともに、リスクの軽減に向けた対応を可能な範囲において実施しております。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への適切な利益還元を重要な経営課題のひとつとして位置づけており、持続的な利益還元と会社の成長をともに実現することに向け、今後の会社の経営状況を勘案した上で積極的な利益還元に努めております。その基本方針は次のとおりであります。

(利益配分に関する基本方針)

(1) 剰余金の配当につきましては、中期的な経営状況の見通しを考慮の上、親会社株主に帰属する当期純利益(但し、会計・決算・税務上の特殊要因は、十分勘案の上、加減算することもあります)の30%以上に相当する額を配当金総額として決定し、これを期末時点で保有する自己株式数を差し引いた期末発行済株式数で除した金額とします。

(2) 企業価値の持続的な向上を目指し、革新的な新技術の創出のための基礎研究や独創的な製品の開発、適正な事業ポートフォリオの実現、優秀な人材の獲得など、中長期の成長に向けた資金を確保すること、並びに経営環境の変化にも耐えうる健全な財務体質を維持することにも配慮します。

(3) 資本効率向上のため、市場の状況、株価動向、財務状況等を勘案し、機動的に自己株式を取得し、株主の皆様に還元するよう努めます。

配当の決定は、2006年6月23日開催の第16期定時株主総会におきまして承認いただきました定款により、会社法第459条第1項の規定に基づき、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議により実施します。

配当は、毎年3月31日の最終の株主名簿に記載・記録された株主様又は登録株式質権者様に対し、年1回実施します。但し、会社法並びに定款の規定に従い、取締役会決議により別に基準日を定め、配当を行うことがあります。

 

当期の剰余金の配当につきましては、上記の利益配分に関する基本方針に基づき、2024年3月31日現在の株主様に対し、普通配当として1株当たり50円、特別配当として1株当たり60円の年間110円(前期は年間90円)の配当を実施することを決定いたしました。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2024年5月10日

取締役会決議

1,997,401

110.00

 

 

資本市場からの自己株式の取得(取締役会決議によるもの)につきましては、2023年3月22日付の会社法第370条(取締役会の決議に替わる書面決議)による決議に基づき、当事業年度に832,800株(取得価額の総額2,991,369千円)の自己株式を取得いたしました。また、2024年2月9日開催の取締役会決議に基づき、当事業年度に225,900株(取得価額の総額943,432千円)の自己株式を取得いたしました。