2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

(1)リスク管理体制と運用状況

 当社では、当社グループの事業活動に影響を及ぼす全社的なリスクについて、その内容と対策を審議するため、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しています。当委員会は年2回定期的(必要に応じて臨時)に開催しており、その活動内容は取締役会や経営会議において定期的に報告され、経営陣が当社を取り巻くリスクを把握し、適切なリスク対策を講じられるようにしております。また下部組織として情報セキュリティ分科会、BCM分科会を設け、個別のリスクに対する対策を検討・実施しております。

 

(2)リスクの把握と対策

 リスクについては、リスクの主管部門である総務、人事、経理、財務、企画、広報、知的財産、環境、情報システム、法務などの機能スタッフ部門と事業部門が、当社グループが現在直面しているリスク、あるいは近い将来に予想されるリスクを抽出しております。そして機能スタッフ部門が、①事業部門が抽出したリスクのうち全社的なリスクとして把握しておく必要のあるリスク、②機能スタッフ部門と事業部門が相互に共有し連携する必要のあるリスク、を正しく認識することで、リスク把握の漏れを防ぎ、全社的なリスクに対して適切に対応できる体制を構築しております。

 そして抽出したリスクについては、発生頻度と影響度から重要度を評価し、それらのリスクをリスクマップ上に表示することで、俯瞰的に当社のリスクを把握・管理しております。リスク管理委員会ではこのように抽出されたリスクのうち、重要度・緊急度の高いリスク対策の実施状況と対策後の残余リスクを確認し、必要に応じて追加対策を指示しております。

 また、内部監査部門は、リスク管理委員会、機能スタッフ部門及び業務執行部門への直接・間接の監査を通じて、当社におけるリスクマネジメントのPDCAが適切に実施されているかモニタリングしております。

 なお、当社は企業価値を大幅に低下させる重大な事案を「危機」と定義し、リスクが顕在化し「危機」が発生した場合に備え、経営陣が迅速に事態を把握するための報告ルールを定め、運用しております。さらに当該「危機」に対し全社的に対応する必要がある場合は、代表取締役社長を本部長とする危機対策本部を立ち上げ対応にあたっております。

 

(3)事業等のリスク

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。各リスク対策実施後の残余リスクについて、影響度と発生頻度を「大」「中」「小」の3段階に分類しております。なお、影響度については「組織的な影響」「生産活動等への影響」「法令・行政上の影響」「商取引上の影響」「報道・風評上の影響」の5つの指標から1つの指標を選択し、各指標であらかじめ定めた基準に基づき分類しております。ただし、以下に記載された項目以外のリスクが生じた場合においても、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであります。

 

 

① 外部環境リスク

(1)グローバルでの事業展開に関するリスク

発生頻度 中

影響度 大

リスク内容

 当社グループの海外売上収益比率は90%を超えており、販売・生産・調達等の事業活動をグローバルに展開しております。従って、当社グループの業績は、進出当該国・地域の政情、税制等の法制度、金融・輸出入に関する諸規制、社会資本の整備状況、その他の地域的特殊性、及びこれらの諸要因の急激な変化の影響を受ける傾向にあります。

対策

 当社グループは、事業展開にあたり、市場や顧客の変化を的確に捉え、高品質の製品と充実したサービスを提供できる体制を構築すべく、販売拠点は世界の主要市場を網羅できる地域に、生産拠点は採算性、周辺市場の拡大予測、顧客動向等から総合的に判断した地域に配置し、仕入先はQCDS等の合理的な基準に基づいて選定することとしております。また、新たな国への進出や新たな仕入先との取引に際しては、そのリスクを慎重に検討、評価した上で適切に判断しております。その上で、進出した地域や仕入先への貢献を重視し、価値向上に努めて、信頼を勝ち得る努力をしております。

 一方で、昨今、ウクライナ情勢や米中対立といった国際情勢の変化など、地政学リスクが常態化してきており、直接・間接的に事業に影響を及ぼす可能性があります。特に当社グループ連結売上収益の約50%、生産高の約20%を中華圏が占めており、中国の内外情勢による経営へのインパクトは高まっております。これに対して、多方面から情報を収集し迅速に対応できる体制を構築し、サプライチェーン全体の複線化の検討・実行に努めております。加えて、事業継続計画(BCP)の観点からのアセアン等での生産強化、日本を含めた代替生産体制の実現等による生産体制の多極化を進めております。

残余リスク

 上記の対策を講じたとしても、想定を超える政治・経済・社会的要因の急激な変化が起きた場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2)為替変動に関するリスク

発生頻度 大

影響度 大

リスク内容

 当社グループの海外売上収益比率は90%を超えており、またグローバルに事業を展開していることから、生産・販売等の事業活動が為替変動の影響を大きく受けます。また、為替変動は当社グループの外貨建取引から発生する収益・費用及び資産・負債の円換算額を変動させ、業績及び財政状態に影響を及ぼします。翌連結会計年度において 為替変動が営業利益に及ぼす影響は、米ドルに対して円高方向に1円変動した場合に年間約45億円の減益と見ております。

対策

 当社グループでは、為替変動リスクを軽減させるため、海外での販売について為替の変動を販売価格に反映させるよう努めており、また為替変動による損益への影響をヘッジする目的で、為替ヘッジコストを考慮しながら外貨建取引金額の一定比率に対して為替予約契約を締結しております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、為替変動による影響を完全に排除することは困難であり、米ドルなど他の通貨に対して、円高が急激に進んだり長期に及んだ場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3)資金調達に関するリスク

発生頻度 中

影響度 中

リスク内容

 当社グループでは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のための資金需要に対して内部資金だけでは不足する場合があります。

対策

 当社グループでは、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することで対応しており、銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を適宜実施しております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、金融市場の不安定化により、金融機関が貸出を圧縮した場合、円の金利が上昇した場合、また格付機関による当社信用格付けの引下げの事態が生じた場合などには、資金調達の制約を受け、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4)環境規制に関するリスク

発生頻度 小

影響度 中

リスク内容

 当社グループは、国内外において、大気汚染、水質汚濁、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、製品に含有する化学物質など、様々な環境法令の規制を受けております。当社グループでは、これら法令を遵守し、事業活動を進めておりますが、地球環境保全の観点、事業の継続的な発展の観点において、今後ますます国内外での環境規制が強化され、これに適応するための費用の増大が予想されます。

対策

 当社グループでは、近年、気候変動や資源循環と事業との調和に関して重要性を強く認識するとともに、それらを事業の機会とリスクと捉え、各取り組みを進めております。この他、化学物質の使用に関する規制や揮発性有機溶剤の大気放出に関する規制への対応など、環境保全に関する当社グループの課題認識とその対応に関して、担当執行役員を委員長とする環境委員会及び気候変動対策委員会を組織し、当社グループ全体で対策を推進しております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、環境規制への適応が極めて困難な場合、想定を超える費用の発生や事業からの部分撤退、または当社グループへの社会的信頼が損なわれることにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5)気候変動に関するリスク

発生頻度 中

影響度 大

リスク内容

 近年、世界各地で深刻化している環境問題に対応するため、資源循環や脱炭素に対する取り組みが企業に求められております。当社グループでは気候変動対策の強化、及び持続可能な資源利用をマテリアリティ(重点課題)として設定し対策を実施しておりますが、ステークホルダーからの要請への適応が極めて困難な場合や、対応に不足、又は遅れが生じた場合、以下のリスクが顕在化する可能性があります。

(移行リスク)

・全世界での脱炭素製品のニーズ拡大や環境意識の向上に後れを取ることによる顧客の逸失や企業価値の低下、カーボンプライシング導入や省エネ基準の厳格化が進むことによる工場建設・運用コストの増加等は、経営戦略や財務計画、設備投資の意思決定において見込むべき潜在的なリスクになっております。

(物理リスク)

・台風や大雨などの異常気象は、工場やサプライチェーンに影響を及ぼし、洪水や停電による主要工場の全面停止、異常気象による原材料の供給途絶などのリスクが想定されます。

対策

 当社グループは、CO2排出量削減等の「気候変動対策の強化」を企業経営の非財務重点課題の1つとして選定し、気候変動対策に関する課題認識とその対応に関して取締役常務執行役員を委員長とする気候変動対策委員会を組織し、対策を推進しております。

(移行リスク)

・カーボンプライシング(以下CP)導入への対応として、サステナビリティ投資促進制度(社内CP制度等)を活用し、省エネ/再エネ活動をさらに加速させます。

・脱炭素製品のニーズに応えるべく、再エネを積極的に導入・サプライヤーとも連携したCO2排出削減に取り組むことでバリューチェーン全体の脱炭素化を促進するとともに、軽薄短小・高効率化・長寿命化の継続的な製品開発を進めていきます。

・工場建設や運用コストの上昇に対しては、省エネ補助金/税制優遇措置の積極的な活用によりコスト負担を軽減し、低環境負荷建築などの採用による運用コスト軽減を図ります。

(物理リスク)

・台風の強大化等による異常気象によって、工場の立地によっては甚大な被害を受ける可能性があります。そのため当社グループでは、ハザードマップを活用し、各工場のリスク評価を実施しており、輸送を途絶えさせないよう生産製品の分散化・輸送ルートの複数化を図っております。

・その他気候変動に関するリスクや機会に関しては、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に基づいた内容を開示しております。具体的な各施策については、SBT(Science Based Targets)として認定された目標値を達成するため、さらに取り組みを強化し、将来的には2050年のRE100を実現するため、活動してまいります。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、中長期的にステークホルダーの要請が変化し、その要請に応えられないことによって当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6)災害・感染症等による事業活動の停止に関するリスク

発生頻度 小

影響度 大

リスク内容

 当社グループは、事業所所在地における大規模な自然災害の発生や感染症の流行等により、事業活動が長期間停止する可能性があります。

対策

 当社グループでは、大規模災害や感染症の流行による主要製品の操業停止の影響を最小限にし、「お客様に製品を安定供給する」という責任を果たすため、生産拠点を国内外に分散するなど、事業継続計画(BCP)を策定しております。また、国内全拠点において一定規模の地震災害を想定して建物・生産設備の耐震性・安全性確保、通信・情報システムのバックアップ体制、在庫による供給維持などの施策を講じております。さらに、定期的な防災訓練や事業継続訓練の実施により、初動対応の実効性確認と継続的な改善や危機対応能力の向上とBCPの改善点の把握に取り組んでおります。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、想定を超える大規模災害の発生や新型感染症の流行、原子力発電所の事故等による、長期にわたる製造ラインや情報システムの機能低下、世界レベルでの経済活動の停滞に伴う大幅な事業活動の縮小や停止が、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 戦略リスク

(1)当社製品の需要変動に関するリスク

発生頻度 中

影響度 大

リスク内容

 当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して、電子部品を供給することを主たる事業としております。

 エレクトロニクス製品の需要動向は、世界の経済情勢に大きく左右されます。従って、経済情勢の急激な変化は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼします。加えて、特に成長性の高いエレクトロニクス製品に使用される電子部品については、実態とは乖離する部品需要が発生することもあり、その場合、当社グループは需要変動の影響をさらに増幅して受けることになります。

対策

 当社グループでは、これに対して、1)通信・モビリティ市場の双方を基盤領域としつつ、環境・ウェルネス市場を挑戦領域として、より広い事業機会を捉えることでのリスク分散を図る、2)世界経済の動向を注視し、中長期的な需要予測に基づき生産設備と必要人員を迅速に手配し生産能力を拡充する、3)IT技術の積極活用等による生産効率の継続的改善に注力する、4)生産能力や稼働日数の柔軟な調整を行う、等の対策により、需要の急激な増加への対応と余剰資産等ロスの発生を抑制するよう対策を講じております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、世界経済やエレクトロニクス産業全般の急激な変化により当社グループの製品の需要が予測を大幅に下回る事態となった場合には、手配した生産設備、人員、資材、製品等が余剰となり、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。一方、想定を超える需要が急激に発生した場合には、顧客の要求に応じられず販売機会を逃し、そのことが将来の競争力低下につながる可能性があります。

 

 

(2)製品の競争力(市場シェア)に関するリスク

発生頻度 中

影響度 中

リスク内容

 当社グループが属する電子部品業界は、中長期的に需要機会は大きく伸長すると見込まれますが、同時に競合他社との競争は激しく、製品の特性、供給力、コスト競争力等総合力で競合他社に劣後する場合、当社市場シェアが低下するリスクがあります。従来からの競合に加え、昨今、中国ローカルの部品サプライヤーが急速に力をつけてきており、競合との競争はさらに激化する傾向にあります。

対策

 当社グループは、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいた研究開発の元で、小型、薄型、高信頼性、低消費電力等を実現する付加価値の高い新商品を継続的に投入し、また独自の材料技術や生産技術、現場のモノづくり力を統合した継続的かつ積極的なコストダウンの推進、顧客需要にタイムリーに応える供給力の整備、顧客との安定した取引関係を構築する販売ネットワーク力等の総合力により、マーケットシェアの維持拡大に注力し、売上の拡大や収益性の向上に努めております。

残余リスク

 上記の対策を講じたとしても、競合他社が革新技術を獲得して技術的に先行する、圧倒的なコスト低減に成功する等々の要因により、当社の市場シェアが低下し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3)特定の取引先、製品への依存に関するリスク

発生頻度 中

影響度 中

リスク内容

 当社グループには、連結売上収益において依存度の高い取引先及び製品が存在します。具体的には、当連結会計年度において連結売上収益の10%を超える顧客グループが1グループあります。また、コンデンサは当連結会計年度において連結売上収益の46%を占める主力製品となっております。

対策

 当社グループでは、これらのリスクに対して、次のような対策を実施しております。

 まず、強みであるグローバルな販売ネットワークを駆使して、当社グループの製品を幅広い用途、顧客に販売するなど、特定の顧客への依存度を下げる取り組みを実施しております。

 つぎに、5G化の進展、CASEと呼ばれる自動車産業の変革による需要機会は大きく、今後も継続して当事業の強化を図っていくとともに、通信用デバイス、モジュール、バッテリー事業等の拡大により収益の多角化を進め、特定の製品への依存度を下げる取り組みを実施しております。

残余リスク

 上記の対策を講じたとしても、当該顧客グループからの受注が減少したり、当該顧客グループ製品の販売が低迷した場合は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

 また、コンデンサを代替しうる革新技術、製品の出現、強力な競合の台頭は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4)M&A、業務提携、戦略的投資に関するリスク

発生頻度 中

影響度 大

リスク内容

 当社グループは、事業ポートフォリオマネジメントを念頭に、新規技術の獲得、新たな事業領域への進出、既存事業の競争力強化などを目的としたM&A、業務提携、戦略的投資を必要に応じて実施しておりますが、市場環境や競争環境の影響を受ける潜在的なリスクが常に存在します。

対策

 当社グループは、M&A、業務提携、戦略的投資に際して、事業ポートフォリオ上での位置づけを明確化するとともに、対象となる市場や事業並びに相手先企業の経営状況などのリスク分析を行った上で判断しております。また、M&A等を実施後も定期的に事業統合や事業状況を検証し、必要に応じて戦略の軌道修正や組織再編を図り、事業ポートフォリオマネジメントの実行に取り組んでおります。

残余リスク

 上記の対策を講じたとしても、市場環境や競争環境の著しい変化、当事者間の利害の不一致、又は人材の流出などが発生した場合には、想定していた事業ポートフォリオマネジメントを実行することができず、投下資金の未回収や追加的な費用の発生、のれん及び長期性資産の減損損失などにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③経営基盤リスク

(1)情報セキュリティに関するリスク

発生頻度 大

影響度 大

リスク内容

 近年、退職者による情報漏えい事件や標的型メール攻撃などが報道されているように、企業の保有する情報をターゲットとした内部不正やサイバーアタックによる情報漏洩や企業活動停止のリスクが高まっております。

 また、個人情報に関する権利意識の高まりとともに、世界各国でGDPR(EU一般データ保護規則)をはじめ個人情報保護のための法令が検討、制定されており、個人情報の安全管理措置や漏えい事故の監督官庁への通報など、会社に求められる法令対応事項が増加し、違反した場合の罰則が厳罰化しております。

対策

 当社グループが持続的に成長を続けるためにも、技術情報や経営情報などの企業機密、会社で取り扱う個人情報、取引先・お客様やパートナーから提供いただいた情報などを守ることが大切であり、そのため国際標準(ISO27001)をベースにした情報セキュリティマネジメントを実施しております。具体的には、情報セキュリティ基本方針、情報セキュリティ管理規定、個人情報保護方針、個人データ保護グローバル規定などのルールを制定し、情報セキュリティと個人情報保護の施策を人的・技術的・物理的の三側面から、整備・運用しております。

 まず人的側面では、情報を正しく取り扱えるよう、ルールを分かりやすく解説した「情報セキュリティガイドブック」の配付、情報セキュリティ意識を高める年次教育、フィッシングメール訓練、階層別社内研修などを実施しております。また、情報セキュリティ事故への対応体制を整備しております。

 つぎに技術的側面では、マルウェア対策、システムへのアクセスコントロール、脆弱性診断と対応、情報端末や通信の監視、各種ログの収集、セキュリティ事故になりうるインシデントへの対応体制の構築、生産現場でのセキュリティ強化などを行い、日々変化するサイバー攻撃やリスクへの対応・対策を進めております。

 そして物理的側面では、入出門管理、機密管理レベルに合わせたセキュリティゾーン設定とアクセスコントロールで社内外からの不正侵入を多重に防いでおります。

 上記国際標準(ISO27001)をベースにした情報セキュリティマネジメントの取組みに加え、自動車業界において情報セキュリティの重要性が高まっていることから、ドイツ自動車工業会による情報セキュリティ評価である「TISAX(Trusted Information Security Assessment Exchange)」認証を本社含む主要な国内外拠点において取得しております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、想定した防御レベルを超える技術による不正アクセスや、予期せぬ不正使用があった場合には、情報が外部へ流出したり検知できないまま改ざんされるリスクが残り、当社グループの社会的信用に影響を及ぼすのみならず、その対応のために多額の費用負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2)公的規制とコンプライアンスに関するリスク

発生頻度 小

影響度 大

リスク内容

 当社グループは、国内及び諸外国・地域において、商取引、独占禁止法、知的財産権、製造物責任、環境、労務、人権、租税等の法規制、事業投資の許認可、輸出入規制など、様々な公的規制の適用を受けて事業を行っております。これらの公的規制に違反した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の毀損、社会的信用の失墜等のリスクがあります。

対策

 当社グループでは、公的規制の対象領域ごとに主管する部門を決め、公的規制に対応した社内ルールを定めるなど、未然に違反を防止するための方策を講じ、適時にモニタリングを実施しております。

 さらに、これらの取り組みに加え、当社ではコンプライアンス推進委員会を設け、法令遵守のみならず、役員・従業員が共有すべき倫理観、遵守すべき倫理規範等を「企業倫理規範・行動指針」として制定し、当社グループにおける行動指針の遵守並びに法令違反等の問題発生を全社的に予防するとともに、コンプライアンスの実効性を担保するため、コンプライアンス上の問題を報告する通報窓口を社内・社外に設けております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、グローバルに事業を展開するなかで、国や地域において、公的規制の新設・強化や想定外の適用等により、結果として当社グループが公的規制に抵触することになった場合には、事業活動に制約が生じたり、公的規制を遵守するための費用が増加したりするなど、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3)知的財産権に関するリスク

発生頻度 中

影響度 中

リスク内容

 当社グループは、技術革新が著しく競合他社との競争が激しい電子部品業界に属していることから、他者の知的財産権を尊重しつつ、自社の技術開発を進めていく必要があります。他者の知的財産権の存在とその内容によっては、自社の技術開発やそれに基づく事業遂行が妨げられる可能性があります。特に自社の存在する事業領域についての情報が乏しい新規事業領域においては、その可能性が高まることが想定されます。

対策

 当社グループでは、材料から製品まで一貫生産体制を構築しており、材料開発、プロセス開発、製品開発、生産技術開発を行う中で、適切なタイミングで他者の知的財産権を調査し、必要に応じて設計回避等の対策を講じております。また研究開発の際に創出される発明等について、発明考案等取扱規定により適切に取り扱い、その発明等に基づく適切な知的財産の獲得・蓄積により、他社に対する牽制力を強化しています。

 また、知的財産に関する階層・職能教育や知的財産に関する啓発フォーラムなどの様々な社内イベントを開催することにより、当社グループ従業員の知財マインドを醸成しております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、競合他社その他の第三者の知的財産権の取得及び活用動向次第では、当社グループの製品等が第三者の知的財産権を侵害しているとの主張を受けることで、技術開発や事業の方針を変更せざるを得なくなるなど、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4)税務に関するリスク

発生頻度 中

影響度 中

リスク内容

 当社グループは、世界各国で販売や生産などの事業活動を行っており、各国税務当局から多額の追徴課税を課されるリスク、さらにそれに伴って発生する信用毀損リスク及び移転価格税制の課税による二重課税リスク等の税務リスクがあります。

対策

 当社グループでは、「グローバルタックスポリシー」に従い、早期に税務リスク情報を収集し、法令の立法趣旨に照らして税務処理を決定し、税務処理に不確実性が残った場合は、税務当局への事前照会や外部専門家への相談を行い不確実性の排除に努めております。また、税務専門組織を独立した組織として設置し、専門的知識と経験豊富な人材の確保・育成を行い、税務リスク極小化のための体制を整備しております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、近年のビジネスの拡大とグローバル化の進展に伴い、税務リスクが顕在化する可能性は高まっており、また、その金額的重要性も高まる傾向にあります。税務リスクが顕在化した場合は、法人税等の追加負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5)人材の採用・確保に関するリスク

発生頻度 中

影響度 中

リスク内容

 当社グループは、材料から商品までの一貫生産を行うとともに、主要な生産設備を内作するなど技術の独自性を追求しておりますが、技術の高度化、技術革新が加速する今日、多様な技術分野において優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっております。

 一方、各産業分野における技術革新の進展、とりわけエレクトロニクス分野の広がりにより、当社グループが必要とする多様な技術領域の人材ニーズの産業界全体における増大や日本国内の少子高齢化に伴う労働人口の減少など、優秀な人材の獲得は競争状態となっております。

 なお、高度技術人材の獲得競争がグローバルで激化することを踏まえ、シニア層含めての技術領域及び競争力観点でノウハウを有する人材の定着確保も重要となっております。

対策

 当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、ニーズに基づいた過年度卒の通年採用を実施しており、2020年12月に神奈川県横浜市に研究開発拠点として「みなとみらいイノベーションセンター」を設立し、重点成長市場である通信市場・自動車市場を中心とした事業に加え、エネルギー、ヘルスケア、IoTなどの新規市場向け人材やデジタルトランスフォーメーションに必要な人材の採用強化も進めております。

 また、能力開発を支援する教育制度の拡充、多様な社員の能力が十分に発揮できるよう適性を重視した配置や、専門系人材の適切なキャリアルートの設定、ワークライフバランスを支援する制度、さらには2024年4月から導入した65歳定年制の整備により、シニア層を含めた社員のモチベーションを高めることに努めています。加えて、社員の層別に応じた報酬水準の引き上げも適切に行い、人材の定着と動機づけを行っております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、雇用環境の変化などにより人材の獲得競争が激化し、当社グループが求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④事業遂行リスク

(1)新技術・製品の開発に関するリスク

発生頻度 小

影響度 大

リスク内容

 当社グループが属する電子部品業界は、技術革新のスピードが加速し、製品のライフサイクルが短期化しており、将来にわたって当社グループの売上収益を維持・拡大していくためには、革新的な新製品の開発を適切なタイミングで実施していくことが重要となっております。

対策

 当社グループでは、新技術や新製品開発に必要な研究開発投資を継続的かつ積極的に行っており、売上収益に占める研究開発費の割合は7~8%で電子部品業界の中でも比較的高い水準にあります。

 研究開発のテーマについては、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいて選定し、研究開発活動の各段階において研究開発成果の評価を行うなど、その実効性と効率性の向上に努めております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、市場、製品動向の変化や当社グループの技術を代替しうる技術革新が予測を超えて起こった場合には、期待した製品需要の減退、開発期間の長期化や開発費用の増大を招き、当社グループの業績及び財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2)調達に関するリスク

発生頻度 中

影響度 中

リスク内容

 資材調達におけるリスクとしては、仕入先の事業運営上のトラブル、治安の悪化、感染症の蔓延、災害(人災・自然災害)、資源の枯渇等の発生に伴う資材品の供給停止や価格高騰が想定されます。

対策

 当社グループは、資材品の在庫政策に基づく適正在庫の確保、サプライチェーンの複線化、仕入先の事業継続計画(BCP)体制の事前確認等を通じてそれらのリスクを低減しております。

 また、資材仕入先の生産場所をデータベース化し、災害発生時に速やかに仕入先と連携できる体制を整えるとともに、災害発生時の初動対応フローを策定し、迅速な復旧対応ができる体制を整えております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、想定を超える規模・期間の災害等が発生した場合、当社グループの業績及び財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3)品質に関するリスク

発生頻度 中

影響度 大

リスク内容

 当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して電子部品を供給することを主たる事業としております。事業を取り巻く環境は日々変化しており、特に環境負荷物質に関する法規制は厳格化され 、それら関連法規制を遵守した上での品質保証体制整備が求められています。また、顧客において当社グループの製品の品質に起因する事故、市場回収、生産停止等が生じた場合、顧客の損失に対する賠償責任を問われる可能性があります。加えて、自動車の電動化(xEV化)、安全機能の高度化に伴って、当社グループの自動車市場向けの売上は増加しており、市場回収に至った際に業績に与える影響度も増大しております。

対策

 当社グループは、ISO・IATFをはじめとする、各種品質マネジメント規格に準拠した品質保証活動を行っております。

 製品の生産に関しては、関連法規制の調査/周知徹底・設計審査・製品アセスメント・内部品質監査・工程管理・各種評価試験・取引先など協力者との改善活動・M&A先や業務提携先との仕組みの融合等を通じ、開発から出荷に至るサプライチェーンを含めた全ての段階における品質保証体制整備に努めております。さらに各種品質イベント活動を通じて品質意識の向上・コンプライアンス遵守風土の醸成に努めており、品質基本方針として全社に広く周知しております。

残余リスク

 上記対策を講じたとしても、現時点での技術、管理レベルを超える事故が発生する可能性は皆無ではなく、品質に関わる重大な問題が起こった場合には、多額の損害賠償金の支払や売上の減少又は当社グループ製品に対する信頼の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 株主の皆様への利益還元策として、当社は配当による成果の配分を優先的に考えております。長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、1株当たり利益を増加させることにより配当の安定的な増加に努めることを基本方針とし、中期的に配当性向30%程度を目安にDOE4%以上を実現することといたします。この方針に基づき、連結ベースでの業績と内部留保の蓄積などを総合的に勘案した上で、配当による利益還元を行っております。また、当社は自己株式の取得につきましても、株主の皆様への利益還元策として捉えており、資本効率の改善を目的に適宜実施しております。

 内部留保金は、技術革新に対する研究開発費、新製品や需要の拡大が期待できる製品の生産設備投資など、将来の事業展開のために有効に活用してまいります。

 当事業年度の配当金については、中間配当金を1株当たり75円、期末配当金を1株当たり27円といたしました。

なお、当社は、2023年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。2024年3月期の1株当たり期末配当金については、当該株式分割後の金額を記載しています。株式分割を考慮しない場合の2024年3月期の期末配当金は81円、年間配当金は156円となります。

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当(基準日は毎年9月30日)については取締役会であります。なお、当社は2024年6月27日の第88回定時株主総会において、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議によっても剰余金の配当等を行うことができる旨の定款変更を決議しております。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年10月31日

47,231

75

取締役会決議

2024年6月27日

51,009

27

定時株主総会決議