リスク
3【事業等のリスク】
当社グループではリスクを「会社運営・業績・株価などに重大な影響を及ぼす可能性のある事項」と捉え、「経営の基本方針」、「中期的な経営方針・対処すべき課題」を遂行する上で取り組むべき課題として認識しております。
当社グループの業績は自動車の販売台数に依存しておりますが、自動車業界を取り巻く環境はクルマの在り方の変化、着実な電気自動車需要の増加により、当社グループの新製品開発へも大きな影響を与えております。従って、対応次第では大きなリスクにもなります。
また、品質に関しては当社グループとして最優先で取り組んでおります。リコール等の品質問題は業績への影響のみならず、お客様の信頼にも大きな影響を与えます。さらに、「環境変化に耐えられる柔軟かつ強固な経営基盤の確立」を目指すうえで、事業継続計画(BCP)へのリスク認識は不可欠で、減災活動、生産復旧活動、電子部品の安定供給など、当社グループのみならず仕入先も含めたリスク対応を実施しております。
当社グループは、以上のような項目を中心に重要なリスクを識別し、対策を検討しております。なお、文中の将来の事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)自動車産業及び、主要客先への販売依存
当社グループの製品は、主としてHMI製品、スマートシステム、シートベルト、シフトレバー等の自動車部品であり、当社グループ製品の販売実績は自動車の販売台数に大きく依存しております。従いまして、直近での米国の関税政策のような完成車メーカーの生産動向に直接的な影響を与える事象は当社グループへも大きな影響を与えます。
また、主要客先であるトヨタ自動車株式会社、及びトヨタグループ(関連会社含む)への売上高比率は74%と比較的高い水準になっており、当社グループの経営成績はトヨタ自動車株式会社の生産動向の影響を大きく受けております。
更なる成長に向け、各拠点にて他の完成車メーカーへの拡販活動を継続し、当社グループ製品の搭載は拡大しております。
(2)新製品開発
自動車業界は100年に一度の大変革期を迎え、クルマの変化・使われ方を見据えた製品企画・技術開発が必要となります。特にクルマの自動化・電動化の進捗は既存の製品やビジネスモデルを大きく変える可能性があり、当社グループにとってその遅れは既存・新規ビジネスの機会を逸する事になり、当社の経営成績に影響を及ぼします。
このような環境のなか、既存事業においては車両室内空間の有効利用と操作性、意匠性に優れるシフトバイワイヤシフターは、自動運転や自動駐車機能との相性もよく、様々なタイプの開発を進めています。自動運転向けでは、路線バス車内での転倒などの事故防止をはじめとした自動運転社会の実装に向けた画像認識システムの実用化に向けた共同検証を行っております。
また、デジタルキー分野では社用車管理システム「Bqey(ビーキー)」を提供する当社と、モビリティの遠隔起動制御技術を持つ Global Mobility Service株式会社、それぞれと協業関係にある大日本印刷株式会社が、アルコールチェックと車両の起動システムを連携させた「飲んだらエンジンがかからない仕組み」を実現し、社用車向けにアルコール・インターロック機能の提供を開始しました。
(3)競争の激化
自動車業界の再編や、自動化・電動化に伴い当社グループの事業領域への他業種からの新規参入により競争が激化しております。
当社グループでは、新製品開発による競争力強化に加え、DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進による開発、生産準備のリードタイム短縮や間接部門業務プロセスの改善、更には国内外の生産体制再編による競争力強化に取り組んでおります。
(4)海外進出に内在するリスク
当社グループは海外12か国31拠点に生産及び営業拠点を構え、当社グループの事業活動における海外比率は年々高まっております。これら海外市場、特に新興国には法令・規制の変化、その他要因による政治・経済・社会的混乱、文化や習慣の違いに起因するトラブルの発生リスクが内在しております。従って、政治又は法環境の変化、労働力不足、ストライキ等、予期せぬ事象により当社の事業の遂行に問題が生じる可能性があります。
当社グループとしては、現地での法律・規制・租税制度等に関する動向を海外拠点スタッフの情報網に加え、外部コンサルタント等を積極的に活用する事で適時適切に入手し対応するように努めております。
(5)リコール等の品質問題
当社グループは品質第一を基本的な考え方として各種製品を製造しておりますが、将来においてリコールや製造物責任が発生する可能性があります。また、自動車業界における部品の共通化は効率化、取引拡大の機会となる反面、品質不具合が発生した際に影響を受ける対象が拡大するため、多額のコストが発生する可能性があります。
その対応として、①リコールフリー必達に向けた品質確保、②品質の東海理化を支える基盤強化、③新事業のお客様満足の向上、を柱に品質向上活動を行っており、2025年頃「お客様に選び続けられる東海理化」、2030年頃「お客様にとって無くてはならない東海理化」を目指した活動を推進しております。
(6)自然災害等による影響と事業継続計画
地震・台風・洪水などの自然災害、又は感染症等により企業活動・生産活動が停止する可能性があります。さらに災害への備えが不十分な場合、甚大な被害をおよぼし生産活動に大きな支障をきたし、生産停止からの復旧が遅れるなどの可能性があります。対策として、減災対応の強化や社員の災害対応力向上のために初動対応訓練を実施することで災害リスクの軽減を図るように努めています。また、大規模自然災害や感染症等の発生を想定した生産復旧訓練による全社BCP(事業継続計画)の強化をはじめ、BCP用電子部品の在庫積み増し、有事の際の外製移行といった代替シミュレーションを実施しております。
(7)仕入先への供給依存
当社グループの生産は仕入先からの原材料や部品の供給に依存しております。当社グループは供給元と取引基本契約を結び、原材料や部品の安定的な取引を前提としておりますが、事故・災害により仕入先の操業が不安定になる可能性があります。仕入先からの供給停止は当社グループの安定生産に大きな影響を与えます。また、需給逼迫等による価格の高騰や供給量不足が生じる可能性もあります。
当社グループでは、事業継続性の観点からリスクの高い供給元の特定を行い、対象となる仕入先において在庫管理、工程管理、生産管理が適切に行われているかを確認するとともに課題を共有し、仕入先ごとに改善計画を策定しております。
(8)情報セキュリティ
企業や組織、生産システムの情報のデータ化促進に伴い、情報資産の最適活用が重要になっております。また、組織内において情報の共有化のみならず提供・収集が電子的に行われる事が一般的になっており、扱われる情報が高密度なものになっております。このような環境下においては機密情報や個人情報が外部流出し、事業活動が一時的に停止する可能性があります。
対策として、情報セキュリティポリシーを策定し、3大要素であるCIA「機密性(Confidentiality)」、「完全性(Integrity)」、「可用性(Availability)」の確立に向けて活動を進めております。
また、有事の際の影響を最小限に抑えるため、子会社を含めた初動体制整備を進めるとともに、特定の企業や組織を狙った「標的型攻撃」への教育訓練の実施等で社員の情報セキュリティ意識の向上に努めております。
(9)気候変動対応
気候変動がもたらすリスクは、製品の開発設計から調達・生産・物流・販売まで、企業活動全般に渡って存在しており、異常気象による災害リスクがもたらす生産影響、規制強化によるコスト増等は企業活動を停滞させる恐れがあります。
当社グループでは「カーボンニュートラル戦略2030」を策定しCO2削減の様々な取組を推進しています。生産戦略では温室効果ガスの代替化、既存生産技術の改善、革新生産技術の開発導入、再生可能エネルギーの利用拡大により工場CO2を2030年までに60%以上削減(2013年度比)し、先行して本社・本社工場ではカーボンニュートラルの実現にチャレンジしています。
加えて、環境情報の開示に関してはCDPによる気候変動質問書への回答を通じて環境情報を開示しています。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)最終提言に沿った取組を推進しています。詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (6)気候変動への対応」をご参照ください。
(10)法令への適合
当社グループは事業の遂行にあたり各国の法的規制の適用を受けております。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受ける可能性があります。訴訟及び規制当局法的手続きの当事者になる事で和解金及び罰金等の費用が発生し、業績に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループではコンプライアンス委員会を設置しております。また、法令主管部署及び各部にコンプライアンス管理責任者・担当者を設置し職場に適した活動やコンプライアンス相談窓口の設置とその適切な対応を継続的に行う事が出来るように取り組んでおります。
(11)知的財産管理
当社グループは知的財産に関し、当社技術の保護及び他社権利の侵害防止などの取組を強化しておりますが、当社グループ製品には多くの技術が使われているため、知的財産が理由で係争や訴訟に巻き込まれたり、第三者から思いがけない指摘を受けたりすることによって当社グループの不利益につながる可能性があります。
対策としては、当社製品に採用される技術を特許出願により確実に保護するとともに、他社による権利侵害が持続しないように対処しております。また、技術開発・製品設計プロセスの複数段階で調査を実施し第三者の知的財産を侵害しないよう努めております。
(12)為替変動の影響
当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は、当連結会計年度60%となっております。当社グループの経営成績は為替変動により重要な影響を受ける可能性があります。当社グループでは一部の外貨建輸出債権を対象とした為替予約によるリスクヘッジを実施し影響を最小限にするよう取り組んでおります。
(13)退職給付債務
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。このため、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、将来の退職給付費用及び債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(14)人権
当社グループは「社会の一員として、法と倫理を遵守し自然・地域と共生する企業」を理念とし、全ての事業活動において人権尊重の重要性を認識しておりますが、当社グループの事業活動が各国・各地域において潜在的又は実際に、人権への影響を及ぼすリスクがあると認識しております。これらのリスクの顕在化や取組不足によっては、社会的信用の失墜により、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは「東海理化グループ人権方針」に基づいた人権デューデリジェンスとして、事業活動における人権への負の影響の特定・評価を行い、評価結果に基づく適切な対応策、モニタリング、及び情報開示に取り組んでおります。また、人権を尊重した持続的な事業活動の実現に向けて、社内外のステークホルダーとの対話を通じて、自社の活動にフィードバックしています。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様の利益を重要な経営方針の一つとし、安定的な配当の継続を基本に、「株主資本配当率(DOE)3%」を目安とし、「連結配当性向」、「配当利回り」とあわせ、収益状況や財務状況等を総合的に勘案して決定することを利益配分の基本方針としております。
この方針のもと、当期の配当につきましては、2025年4月24日開催の取締役会決議により期末配当金を普通配当1株当たり50円とし、2025年5月27日を支払開始日とさせていただきました。これにより、2024年11月に実施いたしました中間配当金の1株当たり45円を合わせた当期の年間配当金は1株当たり95円となり、前期から20円の増配となります。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は次のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
2024年10月30日 |
3,842 |
45 |
取締役会決議 |
||
2025年4月24日 |
4,269 |
50 |
取締役会決議 |
(注)1 2024年10月30日の取締役会決議による配当金の総額には、従業員向け株式交付信託が保有する当社株式に対する配当金36百万円を含んでおります。
2 2025年4月24日の取締役会決議による配当金の総額には、従業員向け株式交付信託が保有する当社株式に対する配当金17百万円を含んでおります。