2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社では、リスクマネジメントを経営が関与する最上位の規格に位置づけております。当社は「リスクマネジメント基本方針」に基づきリスクマネジメント委員会を設立し、グループのリスクを横断的・総括的に管理しております。現に存在するリスクや将来考慮すべき各種リスクを「戦略リスク」「財務リスク」「ハザードリスク」「オペレーショナルリスク」「気候関連リスク」に分類し、年2回リスクマネジメント委員会でとりまとめ、取締役会及び経営委員会に報告しております。

 このようにして特定・報告されたリスクのうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のある主要なリスクには以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済状況について

 当社グループは、コンデンサ及びその他の電子部品の製造・販売を主たる事業としており、事業活動を日本、米州、欧州、アジア等グローバルに展開しております。そのため、当社グループの製品が販売されている国、地域の経済状況の変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。米国の関税政策の影響については、関税相当分の売価への一部転嫁や当社のグローバルな生産・販売・物流体制の関税政策に応じた最適化、加えて米国工場を保有する強みを活かした販売戦略の実行などにより、可能な限り影響を回避する方針です。(2)為替レートの変動

 当社グループの製品は日本国内のほか米州、欧州、アジア等の地域に販売されており、連結売上高に占める海外売上高の割合は、2024年3月期79.8%、2025年3月期78.6%となっております。このため為替予約等によりリスクヘッジを行っておりますが、全てをカバーできる保証はなく、当社グループの業績及び財政状態は為替変動の影響を受ける可能性があります。

 また、連結財務諸表を作成するにあたって在外子会社の財務諸表を円換算しておりますが、換算時の為替レートにより、現地通貨における価値に変動がなくても、円換算後の価値が影響を受け、業績及び財政状態が変動する可能性があります。

(3)価格競争

 当社グループの主力製品であるアルミ電解コンデンサにおいて、国内外の競合他社との間に生じる価格競争が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは、多様な国と市場において事業活動を行っておりますので、そのような国・市場ごとの個別の要因に応じて価格競争リスクに対応する必要があります。国・地域ごとの生産販売コストの変動、材料費の高騰、生産技術のイノベーションなどは係るリスクの要因となります。海外売上比率が高い当社グループは常に国際的な競争に晒されており、価格競争の激化は収益の押し下げのみならず世界シェアの低下を引き起こす可能性があります。当社グループといたしましては、材料開発から製品販売まで一貫した生産体制という強みを活かし、生産システムの効率化等によるコストダウンを推進する一方、高付加価値で高収益な製品の開発や重点市場への拡販により競争力強化を図っております。上記の事業戦略を踏まえ当社グループはリスク対応を実施しておりますが、価格競争の激化は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。2025年度は受注環境が好転することが予想されており過度な価格競争は発生しない見通しです。

(4)原材料等の価格変動と調達について

 近年の物流費・人件費、原材料費の高騰などにより特に日本国内で調達する材料には大きな値上げ圧力がかかっており、アルミ箔や薬品をはじめとした原材料等の仕入価格上昇によるコストアップの影響や原材料等の調達困難による製品出荷の停滞等は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、海外製造会社における現地調達の推進や生産性向上等によるコストダウンの継続や複数社からの購買、サプライヤーの定期的な与信管理を行うなど、リスク回避対策に取り組んでおりますが、急激な原材料等の価格高騰と災害等による広範な原材料不足は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ウクライナ紛争に代表される国家間の武力紛争による地政学的緊張が継続的な調達リスクとして顕在化しております。更には不採算改善などによる製造中止(EOL)も増えており、安定調達を喫緊の課題としてサプライチェーンの強化に取り組んでおります。

(5)製品の欠陥

 当社グループは、世界各拠点で、世界的に認められている品質管理基準(UL規格、AEC-Q200など)に従って製造を行っております。

 しかし、将来にわたり全ての製品において欠陥が発生しないという保証はありません。また、生産物賠償責任保険に加入しておりますが、この保険が賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

 また、当社は全生産拠点にてISO9001、IATF16949の認証を取得し品質管理の強化を図っておりますが、大規模な製品の欠陥の発生は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、欠陥の発生の際はその影響を最小限に抑えるべく迅速に対応する体制を構築しております。

(6)法令その他の公的規制等に関するリスク

 当社グループが、事業を展開する国内外での進出先における法令その他の公的規制等及びその重要な変更、特に、当該規制等を遵守するための費用負担や当該規制等に違反したと判断された場合における刑事処分、課徴金等の行政処分または損害賠償請求は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの事業は環境法令の適用を受けており、法令等の制定または重要な変更によっては環境責任のリスクを抱える可能性があります。

 当社を含む被告らは、電解コンデンサ、タンタルコンデンサ及びフィルムコンデンサに関するイスラエル競争法違反等について損害賠償等を求める集団民事訴訟の提起を受け、訴訟対応を継続しておりました。2024年12月、当社は損害賠償等の責任を認めておりませんが、諸般の事情を総合的に勘案した結果、集団訴訟原告団との間で和解金として350万米ドルを支払うことに合意し、和解契約を締結しました。本和解は、裁判所の承認手続きを経て、正式に効力発生します。

 本和解の効力発生により、各国において当社グループに対して現在までに提起されていたアルミ電解コンデンサ等の取引に関する損害賠償等を求める民事訴訟のうち、現在未解決のものは台湾で提訴を受けている案件1件のみとなりますが、重要性のある損失は発生しないと当社では認識しております。

 また、当社の子会社であるSingapore Chemi-Con(Pte)Ltd.(以下「SCC」といいます。)は、Dyson Manufacturing Sdn. Bhd.(以下「Dyson」といいます。)に販売した部品に関して、2024年12月、Dysonより、シンガポール国際商事裁判所において訴訟を提起されました。Dysonは、SCCに対して、1億4554万4762英ポンドの損害賠償等の権利があると主張しております。しかしながら、かかる主張は妥当ではないものと考えており、今後、SCCの責任が否定されるよう、裁判の中で適切に主張・立証していく所存です。

(7)自然災害や突発的事象発生のリスク

 地震等の自然災害や突発的事象に起因する、設備の破損、電力・水道の供給困難等による生産の停止は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の拡大・長期化は市場の減退を引き起こす可能性があるだけでなく、各国政府の方針により休業を求められるなど事業継続に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは従業員やステークホルダーの皆様の安全・健康を第一に考え、情報収集や行政との連携に努めながら、在宅勤務やフレックス勤務等各種感染予防対策の実施に加えてリモートワークツール等の活用により、業務遂行の継続に努めてまいります。

(8)気候関連リスク

 地球温暖化に由来する気候関連リスクは、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。現在、主要国において炭素税やカーボンプライシング・排出量取引制度の導入が進められております。係る制度導入により中期的に大きな影響を与える可能性があり、直接的・間接的に追加費用(原材料高騰による追加費用含む)が生じるリスクがあります。また、気候変動への対応に係る顧客要求(環境性能やサステナビリティに係るサプライヤー選定基準等)を当社グループが十分に満たすことができない場合、製品の市場競争力の低下等により、短~中期的に当社売上の減少に影響を与える可能性があります。さらに、自然災害の激甚化や頻度の高まりは、短~長期的にサプライチェーン全体を含む当社グループの生産活動等の事業継続の中断や臨時の追加費用の発生を生じさせるリスクがあります。係るリスクに対応するため、当社グループは省エネルギー対策小委員会が中心となり、グループ全体での省エネやカーボンニュートラルに向けたロードマップを基にしたCO削減に取り組んでおります。また、事業継続計画の見直しや自然災害による事業活動への影響が大きいと想定される事業所の防災設備等を優先的に拡充し、さらに調達・研究開発の面からも顧客要求を充足させる取組みを進めております。

(9)転換制限解除事由の発生

 当社定款に基づくA種種類株式及びB種種類株式(以下、総称して「本種類株式」という。)に付されている普通株式を対価とする取得請求権(以下、「取得請求権」という。)について、当社と本種類株式の株主であるジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第参号投資事業有限責任組合(以下、「JISファンド」という。)との間で締結した出資契約(以下、「本出資契約」という。)において、2026年3月31日以降においてのみ行使できるとの転換制限が付されておりますが、転換制限解除事由が発生した場合には、2026年3月31日の到来前であっても、JISファンドは取得請求権を行使することができることが合意されております。

 また、当社定款において、本種類株式には譲渡制限が付されておりませんが、本出資契約上、JISファンドは、2026年3月31日までの間に本種類株式を第三者に譲渡する場合には、当社の承認が必要とされているものの、転換制限解除事由が発生した場合には、2026年3月31日の到来前であっても、当社の承認を経ずに本種類株式を第三者に譲渡できることが合意されております。

 この度、2025年3月期の当社の連結営業利益の額が、本出資契約に規定する水準に達しなかったため、転換制限解除事由が生じております。取得請求権が行使された場合には、既存株主の皆様が保有する普通株式について希薄化が生じる可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社の配当に関する基本的な考えと致しましては、長期的に安定した配当を継続することとしております。

 原則と致しましては、配当額は収益に対応すべきものと考えておりますが、製造業であります当社におきましては、合理化及び規模拡大の為の設備投資並びに研究開発投資は毎期継続して行わなければならないものであり、そのための内部留保も重要と考えております。

 従いまして、各期の単独及び連結の業績の状況により、内部留保とのバランスを考慮しつつ安定的な配当に努めてまいります。

 当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

 なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 

 当事業年度の普通株式の期末配当につきましては、業績状況と財務状況等を総合的に勘案いたしました結果、誠に遺憾ながら無配とさせていただきました。

 A種種類株式の期末配当につきましては、当社定款に基づき、1株につき55,000円00銭の配当を実施いたします。

 

(注)基準日が当事業年度に係る剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

株式の種類

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年6月27日

A種種類株式

550

55,000.00

定時株主総会決議

(予定)