リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは次のとおりです。当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、事態発生の回避及び発生した場合の迅速かつ適切な対応に努めます。なお、本項における将来に関する事項は、別段の表示がない限り、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) リスク管理方針
当社は生命保険会社としての財務の健全性及び業務の適切性を確保しつつ、リスク戦略を実現するため、リスク管理態勢の整備・確立が経営上極めて重要であると認識しています。これらリスク管理に係る基本的な考えを「リスク管理に関する基本方針」に定め、社内の組織態勢を確立することにより、各リスクの評価・改善態勢を整備しています。また、当社の子会社においても、これらリスク管理に係る基本的な考えを、適切な業務運営のため準用することとしています。
(2) リスク管理体制
当社では、社内の組織態勢(図参照)として、管理すべき各リスクの一次リスク管理部門を定め、リスク管理部が主な二次リスク管理部門として、リスクを統括するものとしています。また、総合的なリスク管理を行うためには、組織横断的な取組みが有効との考えに基づき、関係役員・部門長等で構成される「リスク管理委員会」を設置しています。さらに、生命保険会社にとっては、資産・負債の総合管理がリスク管理の要諦になるとの認識に立脚し、これとは別に「ALM*1委員会」を設けています。その他に、内部統制の体制整備・運営の推進を図るため、コンプライアンス体制の整備や推進状況等を協議・フォローする組織横断的な機関として、関係役員・部門長等で構成される「コンプライアンス委員会」を設置しています。
*1. Asset Liability Management(資産・負債の総合管理)
(3) リスクの分類
当社グループは、主要なリスクについて、事業戦略リスク、保険引受リスク、市場リスク、信用リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスク*1に分類しています。以下は、この分類とともに当社グループの主要なリスクを示したものです。
*1. オペレーショナルリスクは事務リスク、法務リスク、コンプライアンスリスク、システムリスク等に分類し管理しています。
リスク分類 |
主要なリスク |
A.事業戦略リスク |
A-1 競争状況に係るリスク A-2 保険獲得キャッシュ・フローの投下に係るリスク A-3 提携先との関係及び提携先の業績に係るリスク A-4 日本国内の人口動態に係るリスク A-5 気候変動に係るリスク A-6 サステナビリティ全般に係るリスク A-7 法規制に係るリスク A-8 社会保障制度等の変更に係るリスク A-9 他の生命保険会社の破綻に係るリスク A-10 オンライン生保業界の風評に係るリスク A-11 技術革新に係るリスク A-12 IFRSにおける繰延税金資産の評価に係るリスク |
B.保険引受リスク |
B-1 死亡率・罹患率等に係るリスク B-2 IFRSにおける保険契約の評価に係るリスク |
C.市場リスク・信用リスク・流動性リスク |
C-1 金利変動に係るリスク C-2 再保険取引に係るリスク C-3 株価・為替等の変動に係るリスク C-4 社債等に係る信用リスク C-5 流動性リスク |
D.オペレーショナルリスク |
D-1 システムリスク D-2 法令等違反及び社会規範逸脱に係るリスク D-3 情報漏えいに係るリスク D-4 大規模災害等における事業継続性に係るリスク D-5 事務リスク D-6 保険金・給付金の支払い漏れに係るリスク D-7 人材の確保・維持に関するリスク D-8 訴訟リスク D-9 リスク管理体制に係るリスク |
(4) 特に重要性が高いリスク
「(3)リスクの分類」で分類・管理している主要なリスクのうち、発生した場合の影響度及び発生可能性に鑑みて特に重要性が高いと評価されるリスク及びその内容と対応策は以下のとおりです。
a. A-1 競争状況に係るリスク
当社グループは、日本の生命保険市場において、国内生命保険会社、外資系生命保険会社、保険子会社を保有している国内の大手金融機関との競争に直面しています。競争には、価格や商品内容、契約者向けサービス、代理店手数料に関するものが含まれます。新型コロナウイルス感染症拡大以前から続く金融サービスのデジタル化は、当該感染症の拡大を背景に加速し、生命保険業界においても対面チャネルを主力としていた会社が一部オンライン化を推進するなど、新規プレイヤーが参入しており、今後、オンライン生保市場の拡大とともに競争環境の厳しさが増していく可能性は高いと考えています。当社グループが主力としている個人保険事業のダイレクトビジネスにおいて、競争力を維持できない場合には、新契約件数の減少及び解約等の増加によって保有契約件数が減少し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループは保有契約の持続的な成長を目指していますが、保有契約の成長が限定的になれば、規模の拡大と業務効率の改善による収益性の向上が実現できないこととなります。
当社グループでは、「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」というライフネットの生命保険マニフェストのもと、お客さま視点で商品・サービスの設計・開発を行い、お客さまの当社グループに対するエンゲージメントを高めることで競争力の維持・強化を図っています。その他、積極的な保険獲得キャッシュ・フローの投下や、パートナービジネスにおける協業の推進、団体信用生命保険事業への取組みなど、当社グループの今までの経験を活かした事業の拡大を進め、これまでに築き上げてきたオンライン生保市場での競争優位性を維持・強化してまいります。
b. A-2 保険獲得キャッシュ・フローの投下に係るリスク
生命保険業では一般的に、長期間にわたり平準的に保険料を収受する一方、契約前後の短期間に広告宣伝費・代理店手数料などが集中的に支出されます。当社グループは、認知度の向上や新契約の獲得を目的として、テレビCMや検索連動型広告に代表される各種の広告宣伝を行っており、積極的に保険獲得キャッシュ・フローを投下しています。営業活動の効果が十分に得られない場合、営業活動が適切に行われない場合、又は想定するほどにインターネットを通じた保険商品への購買行動が消費者に浸透しない場合には、保険獲得キャッシュ・フロー効率が低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
お客さまのニーズの変化や社会経済環境の動きには様々な短期的要因や長期的要因があり、それらの影響を受けて保険獲得キャッシュ・フロー効率も常に変動します。当社の商品・サービスやマーケティングにおいてこれらへの対応が適切になされない場合、今後、現状の規模での保険獲得キャッシュ・フローの投下を継続したとしても新契約業績が低下し、適正な商品の収益性が確保できないことになります。当社では、新契約の成長と保険獲得キャッシュ・フロー効率のバランスを定期的にモニタリング・分析を行いながら、保険獲得キャッシュ・フローの投下を判断してまいります。これらのコントロールを通じて、保険獲得キャッシュ・フローの投下に係るリスクの発生可能性を抑制することができると考えています。
c. B-1 死亡率・罹患率等に係るリスク
生命保険料は、予定死亡率、予定罹患率、予定解約率、予定事業費率等の基礎率に基づいて計算されています。このため、例えば、実際の死亡率が予定死亡率よりも高い水準となること、又は、過去の死亡率実績から増加することにより、想定よりも多くの保険金を支払うこととなる可能性があります。また、終身医療保険、就業不能保険、がん保険及び認知症保険などの非伝統的なリスクを保障する商品に用いる予定罹患率は、死亡率などの伝統的なリスクを保障する生命保険商品の基礎率に比べ、相対的に高い不確実性を内包しています。さらに、当社は、これまで、定期死亡保険・終身医療保険・就業不能保険・がん保険・認知症保険の保障性商品に限定した生命保険の販売を行っていることにより、リスク・ポートフォリオにおいて、リスクを分散させる効果が相対的に小さくなる可能性があります。
また、2023年7月から開始した団体信用生命保険事業においても、実際の死亡率や罹患率が保険料の計算基礎を上回り損失が発生する可能性があります。団体信用生命保険はそれぞれの契約の保険料率を1年ごとに変更する仕組みであることなどから、その損失を限定的なものとすることが可能と考えていますが、保険料率や商品設計の適切な管理がなされない場合、より長期にわたって当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、新型コロナウイルスを超えるような感染症の大流行や、東京や大阪等の人口密集地域を襲う地震・津波・テロ等の大規模災害を原因として大量の死傷者が発生した場合、当社は保険給付に関する予測不可能な債務を負うリスクにさらされます。当社は、日本基準の会計においては、保険業法上の基準に従って危険準備金を積み立てていますが、これは必ずしもあらゆる大規模災害発生時の支払いを担保するものではなく、保険金・給付金の支払いが危険準備金を超える可能性があります。
これら死亡率・罹患率等に係るリスクは、現状の国民の死亡率や疾病・障害の罹患率の動向等に鑑みれば現時点での発生可能性は低いと考えています。当社では、死亡率や罹患率等が適正な範囲を超えることがないよう、商品開発時に保障内容や診査方法等を適切に設定するとともに、死亡率や罹患率等の状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて診査方法等の見直しや商品改定を実施する体制としています。また、ストレステストを実施し、大規模災害が発生した場合の影響や対応を確認しています。
d. C-1 金利変動に係るリスク
当社は、高格付けの公社債などを資産運用の主たる手段として保有しています。今後、市場金利が大幅に上昇する場合、当社が保有している公社債の時価が想定を超えて下落する可能性があります。
また、IFRSの保険契約の評価における割引率や経済価値ベースの保険負債評価に用いる割引率は市場金利に基づいて変動します。これら金利変動に伴う公社債の時価や保険負債等の評価額の変動によって、日本基準の純資産、IFRSの資本、当社が企業価値を表す経営指標として定める包括資本及び経済価値ベースの資本が影響を受けます。当社によって対処し得る程度を超えて市場環境が大きく変動した場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
現在、世界経済や国際政治状況が大きく変化するなかで、グローバルに物価上昇が進行し、欧米各国も政策金利の引上げを行ってきました。これらの状況において、金利変動の蓋然性は高まっていると認識していますが、当社は現状では十分な資本を確保し、経済価値ベースにおいても保障性商品のみで構成される商品ポートフォリオにより金利変動による影響は限定的と考えています。当社では、金利リスクを含む市場リスクに対しリスクリミットを設定したうえで、その状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて資産運用方針等を見直す体制としています。現在、金融経済の動向を踏まえ、金利変動リスクの抑制と財務会計上の耐性を高めることを目的として、債券のデュレーションの短期化及び日本基準における会計上の保有目的区分について「その他有価証券」から「満期保有」への割合のシフトを進めています。
e. D-1 システムリスク
当社グループは、インターネットを主な販売チャネルとしており、情報システムの安定運用に依拠して、生命保険の販売、引受け、契約の管理、統計データ及び顧客情報の記録・保存などの事業運営を行っています。また、当社グループの業容拡大、商品・サービス開発の機動性確保及び業務効率化のため、毎年一定規模の情報システム投資を行っています。しかし、事故、災害、停電、ユーザー集中、人為的ミス、妨害行為、内部・外部からの不正アクセス、ウイルス感染やネットワークへの不正侵入、外部からのサービス妨害攻撃、ソフトウエアやハードウエアの異常等の要因により、当社グループの情報システムが機能しなくなる可能性があります。また、情報システムの刷新にあたり問題が発生する可能性もあります。それらの場合、機会損失や追加費用が発生する可能性があります。加えてこれらが原因で、当社グループがお客さまに提供するサービス、保険金・給付金の支払いや保険料の収納、資産運用業務などを一時的に中断せざるを得ない事態が生じる可能性があり、その結果、お客さまの信頼及び当社グループのレピュテーションの低下を招くとともに、行政処分につながるおそれがあり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、開業以来現在に至るまで大規模なシステムトラブルなどは発生しておらず、安定したシステム運用を行っています。想定外の原因により大規模なシステムトラブルが発生する可能性は、今後も低いと考えているものの、他の金融機関と同様に存在すると考えています。当社グループでは、情報システムを安定運用するための基本的な考え方や方策を社内規程等に定め、それらに基づく情報システムの開発、運用状況の監視、バックアップ体制の整備、障害発生時の対策等を行っています。また、外部からの攻撃等に備え、ファイアウォールやウイルス対策ソフト等による不正侵入や不正使用の防止と監視、ソフトウエアの脆弱性診断や、有事に適切な対応を図るためのCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の運営等を行っています。
f. D-2 法令等違反及び社会規範逸脱に係るリスク
当社グループは、当社グループ又はその役職員、代理店、外部委託先又は顧客による不正や法令違反、例えば、違法な保険募集、顧客情報の不正利用、顧客による詐欺・なりすまし、その他の不祥事件等により、損失を被るリスクがあります。特に、違法な募集行為や顧客情報の不正利用が発生した場合には、監督当局から行政処分を受けるおそれがあるほか、当社グループへの信頼の低下、ブランドの毀損及び訴訟などの多額の費用負担につながり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、不正や法令違反には該当しない場合であっても、当社グループ又はその役職員が、社会的な規範や期待、要請に反する行為や、商慣習や市場慣行に反する行為、利用者の視点の欠如した行為に至ることにより、顧客を含むステークホルダー、市場の健全性、公正な競争、公共の利益に悪影響を及ぼす可能性があります。それらの場合、当社グループへの信頼の低下、ブランドの毀損及び対応費用の発生につながり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、オンライン生保であるため保険募集に係る不正が発生しづらいことや、事業の範囲や規模が限られること等により、発生可能性は低いと考えていますが、不祥事件等を排除又は減少させるための態勢を整備しています。当社グループでは、コンプライアンス委員会等を通じて法令等の遵守体制の整備や遵守状況の確認を定期的に実施し、必要に応じて課題や問題の改善に取り組んでいます。加えて、役職員に対し、テーマ別や階層別の研修を通して、法令等に対する意識浸透を図っています。また、当社グループでは、顧客を含むステークホルダーや社会からの期待に応えるため、経営理念を「ライフネットの生命保険マニフェスト」として定め、役職員への浸透と実現を図っています。その他、顧客からの問い合わせや苦情の分析等を通じて、顧客本位の業務運営の実現状況を定期的に確認しています。
g. D-3 情報漏えいに係るリスク
当社グループは、インターネットを活用した生命保険事業を展開しており、顧客情報(個人情報)を中心とする様々な機密情報を主に電磁的方法により保有しています。当社グループの役職員、代理店、外部委託先による顧客情報の紛失・漏えい・不正利用が発生した場合、若しくは第三者が当社グループの情報システムに侵入して顧客情報を不正取得した場合には、監督当局から行政処分を受けるおそれがあるほか、当社グループへの信頼の低下、ブランドの毀損及び訴訟や顧客への損害賠償などの多額の費用負担により、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
情報漏えいが仮に発生した場合の影響の大きさに鑑み、当社グループは、情報セキュリティ管理の重要性を経営の最重要課題の一つと認識し様々な対策を行っているため、情報漏えいの発生可能性は低く抑制できていると考えています。データの持ち出し等については、データへのアクセスやコピーの制限、ログのモニタリング等の技術的な対策を行っています。また、外部からの攻撃等に備え、ファイアウォールやウイルス対策ソフトによる不正侵入や不正使用の防止と監視、ソフトウエアの脆弱性診断や、有事に適切な対応を図るためのCSIRTの運営等を行っています。
(5) その他の主要なリスク
「(3)リスクの分類」で分類・管理している主要なリスクのうち、「(4)特に重要性が高いリスク」以外のリスクの内容は以下のとおりです。
a. A-3 提携先との関係及び提携先の業績に係るリスク
当社グループは、インターネットを通じた主力のダイレクトビジネスに加えて、収益機会の拡大を目指し生命保険業界内外の企業との業務提携を通じたパートナービジネスの取組みを強化しています。当社グループの提携先が事業上の問題に直面した場合、業界再編などによって戦略を転換した場合、又は当社グループが魅力的な提携相手でなくなったと判断された場合などには、当社グループとの業務提携が解消される、又は提携内容が変更される可能性があります。また、今後当社グループ以外の競合会社との提携が進む可能性があります。その結果、当社グループは事業戦略の変更を迫られ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
b. A-4 日本国内の人口動態に係るリスク
1960年代後半以降、日本国内の合計特殊出生率は総じて減少傾向にあり、依然として低い水準にあります。その中で、15歳から64歳までの人口(以下、「生産年齢人口」)も減少しています。このような人口動態の変化が、日本国内における生命保険市場に悪影響を与える可能性があります。また、当社が販売する生命保険商品の顧客基盤は、主にこの生産年齢人口に属しています。生産年齢人口が今後も減少し続けた場合、当社の主力商品である定期死亡保険に対する需要が減少することになり、中長期的に当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、人口動態の変化などの社会情勢の変化も踏まえながら、お客さまのニーズに応える商品・サービスを開発してまいります。
c. A-5 気候変動に係るリスク
気候変動への対応は、国際社会全体で取り組む大きな社会課題となっており、企業に対しても気候変動への適応と緩和に対する取組みが求められています。当社グループにおいても、気候変動は中長期的な業績に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば温暖化に伴い感染症が増加する場合や、異常気象が健康へ悪影響を及ぼす場合、自然災害等による被害が増加する場合には、保険金・給付金の支払いが増加する可能性があります。また、当社グループが社債等を通じて投資する企業において、自然災害等の被害の増加や、低炭素社会への移行に向けた制度変更、消費者選好の変化等による悪影響を受ける場合、当該企業への投資価値が低下する可能性があります。
d. A-6 サステナビリティ全般に係るリスク
社会環境や自然環境の悪化、人権や平和への侵害によって、中長期的な当社グループ事業の成長可能性と持続可能性が低下する可能性があります。そのため、持続可能な社会に向けての取組みは、当社グループにおいても社会的使命を果たしつつ長期的に企業価値を向上させていくため、事業戦略の一部として重要であると認識しています。
当社グループは、第2[事業の状況]2[サステナビリティに関する考え方及び取組](2)サステナビリティ全般に記載のとおり、マテリアリティを特定するとともに、持続可能な社会の実現に向けた取組みを行っています。これらへの当社グループ自身の取組みが不十分と評価される場合、又は当社グループが社債等を通じて投資する企業の取組みに問題がある場合、追加的なコストの発生や社会的評価の悪化を通じ、当社グループの業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
e. A-7 法規制に係るリスク
当社は、保険業法の規定による生命保険業免許を受けた保険会社であり、保険業法等による規制と金融庁の広範な監督の下にあります。保険会社に適用される法規制の改正は、当社グループの保険販売に影響を及ぼす、又は法規制に対応するための予期せぬ追加コストの発生により当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、情報漏えいに対する問題意識の高まりなどから、保険募集におけるインターネットの利用を制約するような法規制が導入された場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、ソルベンシー規制として、保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors: IAIS)が国際的な規制を、金融庁が国内向けの規制を、いずれも経済価値ベースで新たに導入することが検討されています。このように新たな規制や基準等が導入された場合には、これらに含まれる制約が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、保険業法は、内閣総理大臣(原則として金融庁長官に権限委任。以下同じ)に対して、免許の取消し、業務の停止、立入検査、報告又は資料の提出など、保険業に関する広範な監督権限を与えています。特に、保険業法では、当社が、法令に基づく内閣総理大臣による処分を受けた場合、定款、事業方法書、普通保険約款、保険料及び責任準備金の算出方法書などの基礎書類に定めた事項のうち特に重要なものに違反した場合、免許に付された条件に違反した場合、又は公益を害する行為をした場合に、内閣総理大臣が保険業法第133条に基づき、当社の免許を取り消すことができると定めています。仮に、当社の免許が取り消されることとなれば、当社は事業活動を継続できなくなり、解散となる可能性があります。
f. A-8 社会保障制度等の変更に係るリスク
生命保険は、相互扶助の原理に基づき、国の社会保障制度を補完する私的保障の中核を担っています。当社の商品も、国の社会保障制度を前提として設計されており、中長期的に社会保障制度の変更があった場合、訴求力を失う可能性があります。
また、私的保障の充実を促す仕組みである生命保険料控除制度が税制改正により縮小若しくは廃止となった場合、当社の新契約件数の獲得、ひいては当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
g. A-9 他の生命保険会社の破綻に係るリスク
当社は、国内の他の生命保険会社とともに、破綻した生命保険会社の契約者を保護する生命保険契約者保護機構(以下、「保護機構」)への負担金支払い義務を負っています。将来的に、国内の他の生命保険会社が破綻した場合や、保護機構への負担金の支払いに関する法的要件が変更された場合には、保護機構に対する追加的な負担を求められ、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、他の生命保険会社の破綻は、生命保険業界全体に対する消費者の評価にも悪影響を与え、生命保険会社に対するお客さまの信頼を損なう可能性があります。この生命保険会社に対する不信感の影響で、当社の新契約件数の減少及び解約等による保有契約件数の減少を招き、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
h. A-10 オンライン生保業界の風評に係るリスク
インターネットを通じた生命保険商品の販売は、様々なメディアにおいて「オンライン生保」という業種・業態として認知を高めつつあります。このような業界認知の向上は、当社グループの認知度向上及び成長にプラスに寄与する側面もある一方、同業他社において個人情報の漏えいやシステム障害等の問題が生じた場合は、オンライン生保業界全体に対する消費者の評価に悪影響を与え、新契約件数の減少や解約等による保有契約件数の減少により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、オンライン生保の提携先としての魅力が毀損され、ビジネスパートナーとの協業に悪影響を与える可能性もあります。
i. A-11 技術革新に係るリスク
当社グループは、インターネットを活用した生命保険業務を展開していることから、インターネットとその関連技術に精通し続けることが当社グループの成長において不可欠です。IT関連業界は、技術革新のスピードが速く、新技術の登場により当業界の技術標準又は顧客の利用環境が変化することから、新技術への対応が遅れた場合、当社グループの提供する保険商品及びサービスが劣後し、業界内での競争力の低下を招き、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
j. A-12 IFRSにおける繰延税金資産の評価に係るリスク
当社グループは、2023年度よりIFRSを任意適用しています。IFRSにおいては、保険契約の評価に係る税務上の将来加算一時差異があり、その解消により回収が見込まれる範囲内で税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対する繰延税金資産を認識しています。当社グループの経営状況の悪化や将来の見通しの変化等により、保険契約の評価に係る将来加算一時差異が減少し、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対する繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額され、その結果、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
k. B-2 IFRSにおける保険契約の評価に係るリスク
当社グループは、2023年度よりIFRSを任意適用しています。IFRSにおいては、保険契約の評価を、報告日時点における将来キャッシュ・フローに関する現在の見積り、現在の割引率及び非金融リスクに係るリスク調整に関する現在の見積りを用いて測定しています。将来キャッシュ・フロー及び非金融リスクに係るリスク調整の見積りについて、保険契約の評価をするにあたっての前提条件の変更があった場合、その影響額は契約サービスマージン(CSM)で調整されます。しかしながら、保険事故発生率、解約失効率、維持費率の著しい悪化、または、非金融リスクに係るリスクの著しい増大により、保険契約グループにおいてCSMで調整しきれない悪化方向の前提条件の変更を行うこととなる場合、その影響額のうちCSMを超える金額については当期の損失として計上されることになります。その結果、財務会計上の損失が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
l. C-2 再保険取引に係るリスク
当社は、主に保険引受リスクの軽減のため、再保険会社と再保険契約を締結しています。しかし、再保険契約は、取引先の存在が前提となるカウンターパーティ・リスクが伴うことから、現在の契約が履行されない場合や、将来適切な条件で締結できない場合及び再保険の締結自体ができない場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
m. C-3 株価・為替等の変動に係るリスク
当社は、運用資産の一部として海外の債券や国内外の株式なども保有しています。これらは、適切なリスクコントロールのうえ投資を実施しているため、市場リスクに与える影響は限定的であると認識していますが、予期せぬ市場の変動等により株価下落・クレジットスプレッド拡大・円高などが進行した場合に、時価が下落することや、予期せぬタイミングで売却することなどにより、当社グループが損失を被る可能性があります。
また、一部において、純投資目的に加えて当社グループの企業価値又は業績の向上を目的とした株式投資を行っており、今後も行う可能性があります。投資先の選定にあたっては、必要な検討を実施したうえで投資判断を行っていますが、市場経済の動向や投資先の財務内容及び業績が悪化した場合や為替の変動が発生した場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
n. C-4 社債等に係る信用リスク
当社は、主に高格付けの公社債などへ投資しているため信用リスクに与える影響は限定的であると認識していますが、保有する公社債の発行体の業績が著しく悪化し信用力が低下した場合、時価の下落に加え、元利金不払い等の債務不履行が生じる可能性があります。また、当社グループが保有するその他の資産についても、取引先の破綻等により、回収不能に陥る可能性があります。それらの場合、当該資産の価値が減少又は消失し、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
o. C-5 流動性リスク
当社グループは、保険金・給付金の支払いに対応するために必要な一定程度の預貯金を含め、手元流動性を確保した資産運用を行っています。しかし、感染症の大流行・地震・津波・テロなどの大規模災害により、急遽、多額の保険金・給付金の支払いが求められた場合、当社グループの資金繰りに悪影響を及ぼす可能性や、不利な条件での資産の売却を強いられ当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、大規模災害が金融市場の混乱につながった場合など、資産の処分が全くできなくなった場合、保険金・給付金の支払いが遅延する可能性があります。その結果、当社グループのレピュテーションが低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
p. D-4 大規模災害等における事業継続性に係るリスク
感染症の大流行や、人口密集地域や広範囲を襲う地震・津波・テロ・国家間紛争等の大規模災害が発生した場合、保険引受リスクや流動性リスクへの影響に加え、当社グループの役職員・関係職員の被災・罹患や当社グループ施設の損壊、外部の業務委託先の機能停止等により、当社グループの事業継続への影響や追加費用が発生する可能性もあります。当社グループは、地震等で被災した場合を想定して事業継続計画を策定していますが、この事業継続計画の想定を超えるような大規模災害が発生した場合、当社グループの業務運営に重大な支障をきたす可能性があります。なお、このような状況においては、当社グループが事業を継続できていた場合も、社会・経済全体の活動が低下することにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
q. D-5 事務リスク
当社グループが構築した事務リスク管理体制が有効に機能することなく、事務手続き上の重大な過失が起こった場合、当社グループの風評の低下又は財務上の損害をもたらす可能性があるとともに、行政処分を受ける可能性があります。また、当社グループの外部委託先や代理店の不適切な事務処理が原因で、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、2023年度より連結財務諸表についてIFRSを任意適用し、それらの財務諸表を作成するための事務体制を構築していますが、対応の不備等による開示情報の重大な誤謬が発生した場合、当社グループの風評の低下又は財務上の損害をもたらす可能性があります。
r. D-6 保険金・給付金の支払い漏れに係るリスク
生命保険業界全体が保険金等の「不払い問題」を契機に以後継続的に支払い体制の強化を図る中で、当社においても、正確かつ迅速な支払いを行うための不断の努力を重ねています。しかし、事務手続き上の重大な過失や保険金・給付金の支払い漏れが発生した場合、行政処分の如何にかかわらず、当社グループへの信頼の低下等を通じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
s. D-7 人材の確保・維持に関するリスク
当社グループは、時代や環境の変化にすみやかに対応し、お客さまのさまざまなニーズにそった商品やサービスを提供するため、高い専門性を有する多様な人材の確保に努めています。また、事業の成長及び企業価値の向上につなげるべく、人材の育成に努めています。しかし、人材の確保及び育成に関する環境整備が不十分な場合、または重大な人事・労務問題の発生により当社グループの信頼が著しく低下した場合、必要な人材が採用できず、また、社外に人材が流出することにより、当社グループの業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
t. D-8 訴訟リスク
当社グループは、主に予防法務に重点を置き、弁護士などと相談しながら訴訟の発生リスクを極小化しており、現在までのところ、重大な訴訟は発生していません。しかし、生命保険事業に関連した訴訟が発生し当社グループが不利な結果を被る可能性もあり、将来にわたって当社グループの社会的信用や業績に影響を及ぼす訴訟や係争が発生する可能性があります。また、同様に、他社が係争中の訴訟を含め、生命保険会社に不利な判決が下された場合に、潜在的な訴訟の可能性や顧客への対応に係る事務コストが高まる可能性があります。
u. D-9 リスク管理体制に係るリスク
当社は、リスク管理に関係するあらゆる事項の報告を行う全社横断的な機関である「リスク管理委員会」を設置し、適切なリスク管理を行っています。しかし、リスクを把握する上で必要となる過去の実績や経験の蓄積が十分ではない可能性があり、当社グループのリスク管理体制が有効に機能しなかった場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、日本基準において累積損失を計上していることに加え、中長期の収益性の向上を目指して成長基盤の強化を優先することから、現時点での剰余金の配当に関する具体的な実施時期等は未定です。今後も、認知度向上、新しい商品・サービスの開発等の成長施策、システム投資等に調達資金を有効活用し、事業の拡大と利益の創出に努めます。将来的には剰余金の配当を含めた株主還元策の実施を検討することとします。当社は、法令に別段の定めのある場合を除き、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項の決定機関を取締役会とすることができる旨を定款に規定しています。なお、当社は、2023年度から、連結財務諸表においてIFRSを任意適用していますが、剰余金の配当については日本基準による個別計算書類に基づくこととなります。