2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

当社グループでは緊急事態発生時の対応だけでなく、日々の企業活動において重大な影響を及ぼす様々なリスクに対し、リスク発生時のダメージを最小化するためのリスクマネジメントの実践を経営の最重要課題の一つとして推進しています。
 自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えており、グローバルに事業を展開する当社グループは、世界情勢の変化に素早く対応し、経営の持続性の確保と経営基盤の強靱化を図りつつ、人的、社会的および経済的損失の最小化にこれまで以上に取り組んでいく必要があります。このような環境のなかで事業活動を行っていくうえで、グループ全体での戦略的なリスクマネジメントの推進が不可欠であり、当社グループをリスクに強い体質にし、企業価値の向上を図ることが重要であると考えています。

 

当社グループのリスクマネジメント体制

当社は、グループのリスク顕在化と拡大を防止するため、取締役会が選任したCRMO(最高リスク管理責任者)が、当社グループのリスクマネジメント・コンプライアンス活動を統括し、活動状況などを取締役会に報告するとともに、重要な案件については取締役会の審議を経て意思決定しています。具体的な推進体制として、各部門に本部長クラスのリスク管理責任者を置き、CRMOを委員長、リスクマネジメント・コンプライアンス室および法務部からなるリスクマネジメントグループを業務執行責任範囲とする執行役員を副委員長とする「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」(以下「リスコン委員会」という)において、重要事項の審議・協議、決定および情報交換・連絡を行い、重要度に応じて取締役会に上程しています。CRMOは、リスクマネジメント・コンプライアンス室や法務部などのコーポレート部門の専門的見地からの支援を受けつつ、各事業に横断的な役割を担う経営企画部や各部門・カンパニーと密接に連携し、グループを通じたリスク管理の強化を推進しています。さらに、監査部が各部門および各子会社の業務遂行について計画的に監査を実施しています。

 


 

リスクマネジメントの取り組み

2024年度は、平時の取り組みとして、リスコン委員会において、グループ全体の「リスクマネジメント方針」と各部門の「リスクマネジメント行動指針」のもと、各本部の重要リスクの洗い出しを実施、影響度の大きな課題を優先的に対応し、日常業務としてリスクの抑制を図る活動を推進しました。

2023年8月2日に公表した「新体制の方針」の実現をより確実に進めていくために、各本部の重要リスクに加え、外部変化や足元の環境を踏まえた経営レベルの議論を通じて策定したリスクマップを活用するなどリスクマネジメントの一層の強化を進めています。これに加えて、最適なリスク管理とその実効性向上のためのリスクマネジメント研修会を実施、リスクリテラシー向上と委員会活動の活性化を図りました。

さらに、当社グループの重点リスク低減に向け、それぞれのリスク分野を担当するリスクオーナー主導のもと「サイバーインシデント訓練」の実施、「関連企業の適正取引」の徹底推進、当社の「自然災害におけるBCP体制」の充実などに取り組み、リスコン委員会で定期的なフォローによる実効性の向上を図りました。加えて、海外の重要な子会社との直接的なリスクマネジメント活動を推進しています。具体的には、定期的なリスク評価の実施、リスク軽減策の共有、そして現地の法規制や文化に対応したリスクマネジメントの強化を図っています。

また、定期的に「安否確認システム」の訓練などを実施することで、当社に影響を及ぼすおそれのある災害発生時の情報共有に備えています。

 

 

主要な事業等のリスク

当社グループの経営成績および財務状況、キャッシュ・フローなどに数百億円以上の大きな影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクと対応策は以下の通りです。
 なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに関するすべてのリスクを列挙したものではありません。

 

米国の関税政策

当社グループは、米国を主要市場とした自動車事業を行っており、米国の関税政策により主に米国販売子会社が日本から輸入する完成車や、米国生産拠点の現地生産車について一部の国から輸入する部品などが関税の対象となります。現在、各拠点や日米間で関係部門が密に連携し、情報の収集や対応策の検討を行っています。引き続き、関税政策の影響を最小化すべく、売上台数の増加・売上構成の改善・販売奨励金の抑制・原価低減・費用圧縮などにグループ一丸で取り組むとともに、2026年3月期は複数のSUBARUらしい魅力的な新商品をお客様に提供し収益の確保に努めていきます。

しかし、関税政策の長期化やそれにもとづく為替や金融市場の大きな変動ならびに需要が減少した場合は、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

経済・金融環境の変動に関連するリスク

 (1) 主要市場の経済動向

当社グループの主要な市場である国および地域の経済情勢は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内はもとより、当社グループの売上収益の約8割を占める北米における景気の後退や需要の減少、価格競争の激化などが進むことにより、当社グループの提供する商品・サービスの売上収益や収益性に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (2) 為替の変動

当社グループにおいて北米売上収益は約8割を占め、売上収益、営業利益、資産等のなかには、米ドルを中心とした現地通貨建ての項目が含まれており、連結財務諸表作成時に円換算しています。通期の業績見通しなどにおいて想定した為替レートに対し、実際の決算換算時の為替レートに乖離が生じた場合、主に円高局面では当社グループの売上収益と財務状況はマイナスに作用し、円安局面ではプラスに作用する可能性があります。当社では為替リスクを最小限にすべく、状況に応じ為替予約などによるヘッジを実施していますが、期末日に極端な為替変動が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (3) 金融市場の変動

当社グループは、事業活動の資金を内部資金および金融機関からの借入や社債の発行によって確保しています。また、十分な手元流動性を確保するために、一定額の現金および現金同等物残高の確保を行っています。しかし、経済・金融危機などの発生により金融市場から適切な条件で資金調達が出来なくなった場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは市場性のある証券や債券などの金融資産を保有しており、金融市場の影響により公正価値や金利などが著しく変動した場合、金融資産の減損および年金資産の減少による従業員給付債務の増加により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (4) 原材料価格の変動 

当社グループは、原材料を多数のお取引先様から適時適切な量で調達していますが、特定の原材料およびお取引先様に依存している場合があります。原材料の調達においては、持続的な競争力を確保するために、お取引先様との共存共栄に根差した生産性改善・品質改善等に取り組んでいます。

一方、地政学リスク、需給の逼迫、環境規制などの要因による原材料価格や物流費、エネルギー価格の高騰や人件費の上昇等によるコストの増加に対し、原価改善努力や当社製品価格への転嫁等でその影響を吸収しきれない場合、当社グループの経営成績と財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、米国の関税政策により、米国生産拠点の現地生産車について一部の国から輸入する部品の調達コスト増加の影響があるため、原材料や部品調達への影響を注視するとともに、お取引先様と一体となり最適な調達を行うことで引き続き原価改善に取り組んでいきます。

 

 

 業界および事業活動に関連するリスク

 (5) 特定の事業および市場への集中

当社グループは、主に自動車と航空宇宙の2つの事業により構成され、“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、限られた経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開しています。自動車事業の売上収益が9割以上を占め、販売市場は主に北米を中心とした先進国です。主要生産拠点は国内の群馬製作所および米国のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)の2拠点となり、主にSUV(多目的スポーツ車)を中心とした生産と販売を行っています。このため、自動車事業に関わる需要や市況、同業他社との価格競争などが予測し得る水準を超えて推移した場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (6) 市場における需要・競争環境の変化

当社グループの主力事業である自動車業界は大きな環境変化を迎えており、モビリティサービスの普及に伴う異業種からの参入や環境対応に伴う電動化へのシフト、シェアリングや自動運転普及に伴う移動手段の多様化によって、お客様の価値観や嗜好ニーズはさらに多様化していくことが予想されるなど、当社を取り巻く環境は非連続かつ急速に変化しています。このような状況のなか、当社グループは2023年6月に経営体制を刷新し、同年8月に「新体制の方針」として、2028年までの5年間を大変重要な期間と位置づけて、「モノづくり革新」と「価値づくり」の2つに強い決意をもって取り組んでいくことを発表しました。2024年4月には、これら2つの取り組みを加速させることを主眼に、全社組織の横串機能強化と執行責任の明確化ならびに具現化していく体制(自動車事業 5つのCXO(Chief X Officer、の新設※1など)、2025年4月には、更に2つのCXO※2や組織改編(カスタマーファースト推進本部の新設・営業部門再編)を実施、核心的重点テーマへの取り組みのスピードアップと全体最適化の実現を目指します。このように、常に市場環境や需要動向を捉え、お客様ニーズに基づく商品企画を行い、適切なタイミングと価格で新商品を開発・製造し、市場に導入することに努めています。このような取組みの一方で、当社グループの新型車や新商品が販売計画に満たない場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

※1:CMzO(最高モノづくり責任者)、CBBO(最高バッテリービジネス責任者)、CDCO(最高デジタルカー責任者)、

   CCBO(最高コネクトビジネス責任者)、CCIO(最高コスト改革責任者)

※2:CLO(最高物流責任者)、CHRO(最高人財責任者)

 

 (7) 商品ならびに販売・サービスに関する責任

当社グループは、品質の高さをSUBARUブランドの大事な根幹、付加価値の源泉であると位置づけ、「品質改革」の3つの切り口である「品質最優先の意識の徹底と体制強化」「つくりの品質の改革」「生まれの品質の改革」に取り組み、着実な成果を生んでいます。

今後もこれらの改革を加速させるとともに、電動化など新技術対応を含めた開発最上流から、生産、物流、そしてアフターサービスなど、様々な接点でお客様に価値を感じていただける品質を確保します。そのために、厳格な完成検査体制を維持して確かな品質で商品をお届けするとともに、万が一不具合が発生してしまった場合には、お客様へのご迷惑を最小限にするとともに、迅速な解決を最優先とした業務プロセスの改革に取り組みます。

さらに、お客様視点に重点を置いた啓発活動を全社で展開することで、従業員全員の品質最優先の意識の徹底を図っていきます。

このように品質改革に取り組む一方で、大規模なリコールなどが起こった場合、多額のコストとして品質関連費用などが発生することに加え、ブランドイメージの毀損などにより、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (8) サプライチェーンの分断

当社グループは、自動車や航空機などの製造にあたり、多数のお取引先様から部品や材料を調達しています。定期的にお取引先様の品質保証力や供給能力のチェックを行うとともに、必要に応じお取引先様の経営状況のチェックも行い、安定調達に努めています。物流については、2025年4月から、CLO(Chief Logistics Officer:最高物流責任者)ならびに物流本部を新設し、ドライバー不足などサプライチェーンを取り巻く環境変化に、迅速かつ柔軟な対応を進め、今まで以上に安全で効率的な物流の実現に向けた取り組みを行っていきます。

また、有事が発生した際は、平時より整備をしている「サプライチェーン情報データベース」に基づき、影響を受ける可能性のあるお取引先様や部品を早期に特定することにより、生産継続に必要な在庫数の確認や代替品の生産検討、さらには生産設備の復旧支援を行うなど、サプライチェーン分断の影響を最小限に留める対応を取っています。しかしながら、大規模な地震や台風などの自然災害、工場火災やサイバー攻撃被害、地域紛争などによりサプライチェーンの分断や需給のひっ迫、物流網の混乱が発生した場合、安定したコスト・納期・品質で調達の維持や商品の出荷が出来ず、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (9) 知的財産の侵害

当社グループは、製品やサービスを通じてお客様に「安心と愉しさ」という価値をお届けするために必要な技術・ノウハウなどを知的財産として保護し、SUBARUのブランド価値の維持・向上に努めています。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似製品を製造した場合や、知的財産に関わる訴訟などが生じて当社に不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (10) サイバーセキュリティ

当社グループは、製品の開発・生産・販売など、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しています。また、製品では電子部品を搭載し、ソフトウエア制御しています。これらの資産を守るためにサイバーセキュリティ基本方針を定め、サイバーセキュリティ部門が中心となりセキュリティマネジメントシステムを構築し、これに基づく活動をサイバーセキュリティ会議の運営を通じて行っています。

また、セキュリティインシデントの未然防止やサイバーセキュリティ対策の一層の強化に向けて、セキュリティに関する外部専門家の知見も取り入れITガバナンスの強化や技術的な対策を講じています。

具体的には従業員の意識向上に向けたセキュリティ教育や監査を定期的に実施するとともに、セキュリティ防御システムの増強も行うことで日々進化するサイバー攻撃からのリスク低減を図っています。これに加え、サイバー攻撃検知の迅速化を図るための監視とセキュリティインシデント発生時のSIRT(Security Incident Response Team)体制も整備しています。データのバックアップについては、当社データセンター内の自社運用ならびにクラウド環境において、複数箇所に分散しバックアップが取れる体制を整えており、局所的な災害などにおいても、事業継続や復旧の早期化に向けた対策を講じています。当社グループの情報技術やネットワーク、システムは、安全対策が施されているものの、サイバー攻撃、不正アクセス、マルウェアによる攻撃、人為的なミスによる個人・企業情報の漏洩、大規模な停電、火災などが発生した場合、重要な業務やサービスの中断、データの破損・喪失、機密情報の漏洩などが発生し、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (11) コンプライアンス

当社グループは、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つと位置付け、法令・社内諸規程などの遵守はもとより、社会規範に則した公明かつ公正な企業活動を遂行することを役職員一人ひとりに浸透させるべく、コンプライアンス体制・組織の構築および運営、ならびに各種研修等の活動を行っています。コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めているものの、当社グループおよび委託先などにおいて重大な法令違反や役職員の不正・不適切行為などが発生した場合、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下などによるブランドイメージの毀損が事業基盤に重大な影響を与え、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (12)訴訟など法的手続き

当社グループは、事業活動を行うなかで、お客様、お取引先様や第三者との間で様々な訴訟そのほかの法的手続の当事者となる可能性があります。現在係争中の案件や将来の法的手続において当社グループに不利な判断がなされた場合、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (13)ステークホルダーコミュニケーション

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、すべてのステークホルダーから満足と信頼を得るために、コーポレートガバナンスガイドラインを定め、コーポレートガバナンスの強化を経営の最重要課題の一つとして取り組んでいます。また、ディスクロージャーポリシーに基づき、フェアディスクロージャーに努め、法令に基づく開示を行っています。さらに、経営戦略や事業活動など当社グループを深く理解していただくために有効と思われる会社情報を、迅速、公正公平、適正に開示しています。また、当社グループの持続的な成長に向けた発信として、2023年8月に公表した「新体制の方針」の各取り組みの進捗や、電動化・人的資本・知的財産・ガバナンスなどのESG情報、および資本コストや株価を意識した経営について株主・投資家等と建設的な対話を図るとともに、社内関係者へのフィードバックを行うなどステークホルダーコミュニケーションの向上に努めています。しかしながら、株主との建設的な対話やステークホルダーとのコミュニケーションが不十分な場合、インサイダー取引などの不公正取引や虚偽記載などの法令違反行為による巨額の課徴金支払いなどが発生した場合は、株主や投資家をはじめとしたステークホルダーからの信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下などによるブランドイメージの毀損が事業基盤に重大な影響を与え、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (14) 人権尊重

当社グループは人を第一に考え、「人を中心としたモノづくり」を行っています。「一人ひとりの人権と個性を尊重」することを、SUBARUの重要な経営課題と捉え、SUBARUグループの「人権方針」を策定するとともに、同方針をもとに、ビジネス上の人権リスクを特定し、その対応策を策定、実行する「人権デュー・ディリジェンス」を実施しています。そのなかで明確化したSUBARUグループにとって特に重要なリスクについての対応策を着実に進め、継続的にリスク軽減を進めています。また、サプライチェーンを含め、事業に関連するビジネスパートナーやそのほかの関係者にも、本方針に基づく人権尊重の働きかけを行い、人権尊重の取り組みを推進しています。

それにもかかわらず、当社グループおよび上記関係者において、労働環境・労働安全衛生上の問題、様々なハラスメント、労働者の権利・機会の侵害、人権上の問題のある調達などを行った場合には、関連法規への抵触に加え、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下によるブランドイメージの毀損、販売の低迷、人財流出、資材・資金の調達難などが事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (15) 人財の確保と育成

当社は、従業員一人ひとりがSUBARUグループの持続的な成長と持続可能な社会の実現の両立を担う原動力となるべく、「真の競争力をもった人・組織」の実現を目指すとともに、自身のキャリア形成を考え、チャレンジする風土づくりや多様な人財が活躍できる環境整備を進めています。「モノづくり」と「価値づくり」で世界最先端を目指すべく、電動化対応、先進安全技術、IT分野の強化などの専門領域における人財確保に向けて、積極的な採用を行っています。2020年12月にIT企業の集積地である東京都渋谷区に新たな開発拠点として「SUBARU Lab(スバルラボ)」を開設し、これまでAI開発に必要な人財の採用に取り組んできました。2025年2月には拠点を拡張し、その機能をソフトウエア全般の開発に広げイノベーションの創出につなげていきます。

また、独自の価値創造を実現し続けるため、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できるよう、性別・国籍・文化・ライフスタイルなどの多様性を尊重した登用を行うとともに働きやすい職場環境の整備に努めています。特に安全衛生については、重要な経営課題と位置づけ「安全衛生はすべての業務に優先する」ことを基本理念とし、労働災害防止、疾病予防、労働環境向上に向けた取り組みを全社的に進めています。今後、労働市場のひっ迫、異業種も含めた人財獲得競争の激化、コンプライアンス事案につながるような労務問題により人財の確保ができない場合、安全衛生への対応が不十分な場合、あるいは人財の流出が続いた場合は、当社グループの事業活動や経営に影響を及ぼす可能性があります。同様に、人財の育成が不十分な場合や、従業員の多様性が尊重された誰もが活躍できる職場環境が実現できない場合においても、当社グループの事業活動などに影響を及ぼす可能性があります。

 

 

  (16) 気候変動

当社グループは、気候変動に関連する「政策・規制」、「技術」、「市場」などの移行リスクに関して、各専門部門が広く情報を収集し、将来予測から不確定な気候変動リスクの認識に努めています。また、気候変動の物理的なリスクに関わる浸水などの自然災害に伴う操業リスクに関しては、BCPの一環として、リスクマネジメント・コンプライアンス室が中心となり関連規程類の整備を進め、緊急時のSUBARUグループ全体にわたる情報を一元的に掌握するとともに、その対応を統括管理する体制を整えています。このような取り組みの一方、気候変動に対する取り組みが適切に進まない、あるいは異常気象による調達・生産・物流活動の停滞などが生じた場合、さらに現時点での将来予測が極めて困難な移行リスク・物理リスクの影響および発現度により、研究開発費用などの増加、顧客満足やブランドイメージの低下による販売機会の逸失、異常気象による調達・生産・物流活動の停滞などにより、SUBARUグループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性が考えられます。

 

 

 

 

 

規制

事業運営

全般

各国の気候変動に関する目標の見直しにより、ビジネス全般に重大な影響を与える可能性があります。

商品

各国の燃費規制に合致しない場合、法令違反に基づく追加の費用や損失を被る、あるいは商品の販売機会が制限される可能性があります。

生産段階

石油などの地政学的な要因によるもののほか、政府のカーボンプライシング制度の対象となり、化石燃料使用に伴うコストが上昇する可能性があります。

技術

商品

電動化は、ライフサイクル全体で収益性を確保しつつ進めることが重要であり、商品の上流・下流を巻き込んだ取り組みが進まない場合、商品のライフサイクル全体でその目的を達成できない可能性があります。

生産段階

再生可能エネルギー利用が進まなかった場合、スコープ1、2排出量の削減対策が滞る可能性があります。

市場

商品

現時点では電動化に関する予測が難しく、将来、市場との乖離が生じることが予想されます。この乖離は過大な開発投資による損失や顧客満足の低下による販売機会の減退を招き、電動化の進行を遅らせる可能性があります。

また、電動化は中長期的に着実に進むものと考えており、ある段階で一気に市場への浸透が進んだ際、適切な技術と商品を備えていない場合、商品の販売機会に重要な影響を与える可能性があります。

評判

事業運営

全般

 脱炭素化への取り組みが不十分な場合、ブランド価値の毀損による人財採用や販売での悪影響および資金調達の困難による資本コスト上昇の可能性があります。

物理リスク

急性

事業運営

全般

気候変動の顕在化に伴う各地での集中豪雨の多発による原材料供給の停滞や工場浸水によ る操業リスクが考えられます。

慢性

天然資源を使用しているタイヤ、電動化技術に使用する金属資源の調達が困難になる可能性があります。

 

 

気候変動に関する認識している主な機会

気候変動に対する適切な取り組みにより、新たな市場の開拓や雇用の創出、資本やエネルギーの効率的な活用が期待されます。

市場機会

商品の環境対応が適切に進み、かつ、世界規模で気候変動の適応・緩和も進んだ場合、

SUBARUの主力市場を維持しつつ、安心と愉しさに共感する市場の拡大が期待できる可能性があります。また、気候変動の緩和に貢献することで、SUBARUのブランド価値が上昇し、人財の採用や販売に好影響を与える可能性があります。また、投資家からの資金調達が容易となり、資本コストの低減につながる可能性があります。

エネルギー源に関する機会

生産段階で消費するエネルギーに関し、費用対効果にも配慮しつつ再生可能エネルギーへ移行することは、化石燃料由来のエネルギーに内在する価格変動リスクから解放され、将来のコスト上昇を未然に防げる可能性があります。

 

 

※リスク・機会に関しては、過去の事実や現在入手可能な情報に基づいたものであり、将来の経済の動向、SUBARUを取り巻く事業環境などの要因により、大きく異なる可能性がある。また、気候変動に適応したSUBARUの商品が貢献できる機会を表したものであり、気候変動の悪化などを期待するものではない。

 

その他事業活動に影響を与える各国規制やイベント性のリスク

  (17) 事業活動に影響を与える各国の政治・規制・法的手続き

当社グループは、北米を中心に世界各国において事業を展開しています。海外市場での事業活動においては、政治的、経済的要因、法律または規制の変更、課税、関税、その他の税制変更等のリスクが内在しています。当該リスクが顕在化した場合や事業展開をしている国・地域において政治的要因・通商政策の強化、通商紛争などが発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

特に、米国の関税政策により、米国販売子会社が日本から輸入する完成車や、米国生産拠点において一部の国から輸入する部品などが関税の影響を受けています。当社グループでは、今後も動向を注視し、関税政策の影響を最小化すべく様々な対応を行っていきます。

また、環境などに関する主な法的規制は、自動車の燃費、排出ガス、省エネルギーの推進、騒音、リサイクル、製造工場からの汚染物質排出レベルに関するもので、これらの規制は、今後、さらに強化される可能性があります。各種規制への対応が不十分な場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (18) 地政学・地経学的災害(国際紛争・テロリスク)

当社グループは、世界各国において事業展開をしており、統括部門が日々情報収集やモニタリング活動を行い関連部門で情報を共有しています。しかしながら、当該国や地域においてテロ、戦争、内戦、政治 不安、治安不安などが発生し、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売および物流、サービスの提供などの遅延や停止が長期化する場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (19) 自然災害と関連する損害

当社グループでは、日ごろから事業継続に備えた規程類の定期的な整備とアップデートおよび訓練などを実施しています。さらに、各事業所単位では、重要業務の選定、緊急連絡体制の整備等BCPの強化を図り、全社コーポレート部門と密接に連携しながら事業継続や早期復旧を的確かつ迅速に行うための対応を進めています。しかしながら、大規模な地震、台風、豪雨、関連する火災・洪水等の自然災害や火災などの事故の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売および物流、サービスの提供などの遅延や停止が長期化する場合や、企業機能停止が長期化する場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (20)感染症等の発生

当社グループは経営に重要な影響を及ぼしかつ通常の意思決定ルートでは対処困難な緊急性が求められるリスクについて、有事の際に対応できる体制を整備しているものの、感染症やその他未知見な災害(パンデミック等)の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、生産、商品の販売やサービスの提供などの遅延や停止が長期化する場合や企業機能停止が長期化する場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様の利益を重要な経営課題と位置付けており、毎期の業績、投資計画、経営環境などを総合的に勘案しながら、配当を基本と位置づけ総還元性向40%以上を目指します。配当はDOE(親会社所有者帰属持分配当率)を3.5%とし、配当額が総還元性向40%を下回る場合には、自己株式の取得を主として対応いたします。なお、DOEのベースとなる親会社所有者帰属持分は、累進的な配当を目指すため、為替などの影響で大きく増減する「その他の資本の構成要素」は除きます。

なお、当社は中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を基本としています。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であり、中間配当については、「取締役会の決議によって、毎年9月30日に最終の株主名簿に記載または記録された株主または登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項の定めるところにより剰余金の配当をすることができる」旨を定款に定めています。

当期末の配当については、2025年3月期の業績および今後の事業展開などを勘案し、直近の配当予想通り、1株当たりの普通配当を67円、年間配当金はすでに実施した中間配当48円と合わせて115円とすることを2025年6月25日開催予定の第94期定時株主総会において決議し実施する予定です。
  

基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下の通りです。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2024年11月1日

取締役会決議

35,109

48.0

2025年6月25日

定時株主総会決議(予定)

49,006

67.0