リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を与える可能性のある主要なリスクとして次の事項があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 事業戦略に関するリスク
① 技術革新への対応について
当社グループが販売する医療機器の中には、その独自性や操作性が評価され、高い市場シェアを有する製品があります。しかしながら、医療機器業界では競合企業による研究開発が活発に行われており、当社製品と競合する医療機器が市場に導入された場合や、革新的な医療機器の上市により治療方法が大きく変化した場合、また、PFA(パルス・フィールド・アブレーション)等の新技術が普及した場合、当社製品の市場シェアが低下し、当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。とくに、オンリーワン製品であるS-ICD(完全皮下植込み型除細動器)や、コア製品として販売している心腔内除細動カテーテル、Frozen Elephant Trunkおよび大腿静脈用止血デバイスの4品目は、2025年3月期の売上高の約5割を占めており、当該リスクが顕在化した場合、一定の影響があると認識しています。
当社グループでは、コア製品における競合他社の新規参入に対応するため、製品ラインナップの強化・拡充を図るとともに、医療技術の動向を注視し、新規性の高い製品の導入を推進することで、リスクの低減に努めています。
② 製品の不具合の発生について
当社グループが取り扱う製品は医療機器であり、製品の不具合に起因する健康被害の発生や、その懸念が生じた場合には、製品の販売停止や回収等の措置を講じる可能性があります。
また、健康被害が製品の不具合に起因して発生した場合には、損害賠償請求等の訴訟を提起される可能性があり、これらの事象が発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、医療機器の有効性や安全性を確保するため、関連する規制や品質管理に関する規格に準拠し、厳格な品質管理体制を構築することで、リスクの低減に努めています。
③ 特定の仕入先に対する依存について
当社グループは、一部の商品や自社製品の原材料供給を特定の仕入先に依存しています。災害やその他の要因により商品や原材料の供給が円滑に行われなくなった場合や、競合企業による仕入先の買収等により当社との取引が終了した場合には、該当製品の販売が継続できなくなり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。とくに、2025年3月期において、仕入先上位5社の商品が連結売上高の約4割を占めており、これら仕入先に係るリスクが顕在化した場合、一定の影響が生じる可能性があることを認識しています。
過去には、仕入先の買収に伴う販売契約の終了が複数回発生しており、このようなリスクを完全に回避することは困難です。当社グループでは、契約期間の長期化、支配権変更時の補償条件の設定、代替仕入先の確保等を通じて、リスクの低減に努めています。
④ 取引先等への投融資について
当社グループの資産には、海外スタートアップを中心とする取引先への投資有価証券および貸付金が含まれています。当社グループは、独自の技術を有し特定のメーカー系列に属さない独立性の高い経営体制を持つ取引先に対し、投融資を行うことで協力関係を強化し安定的な製品開発の支援を通じて、商品パイプラインの確保を図っています。
しかしながら、これらの投資有価証券および貸付金は、取引先の経営状況の悪化や事業計画の遅れにより、投資有価証券評価損や貸倒引当金の計上が必要となり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。
当社グループでは過去に取引先への投融資に関連する損失計上が複数回発生しています。将来のパイプライン確保のために必要な取組みであり、このようなリスクを完全に回避することは困難ですが、当社グループでは、リスク低減のために投融資委員会を設置し、新規の投融資案件について慎重に審議を行うとともに、既存の投融資案件についても取引先の経営状態や財務状況を定期的にモニタリングし、投融資の評価および継続の可否を審議する体制を整備しています。
(2)経営基盤に関するリスク
① 医療機器の製造・販売に係る許認可について
当社グループは、医療機器の製造販売を行うにあたり、医薬品医療機器等法の規制を受けており、当社は以下のとおり第一種医療機器製造販売業許可を監督官庁より取得しています。
当社グループでは法的規制を遵守し、業許可の基準を満たしていますが、製造販売業許可が更新できない、または取り消された場合、医療機器の販売ができなくなる可能性があります。
また、新たな医療機器の国内販売を開始するにあたり、仕入先が薬事承認を取得する一部の商品を除き、当社グループが同法の定めに従い、品質、有効性および安全性等に関する審査を受け、監督官庁の承認を取得する必要があります。当該医療機器に係る承認が取得できない、または、承認取得までの期間が想定を超えて長期化した場合、当社グループの販売戦略の変更が必要となるおそれがあり、これにより当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、当社グループでは法令遵守体制の強化や、承認取得プロセスの効率化を図るとともに、監督官庁との適切なコミュニケーションを維持することで、リスクの低減に努めています。
許認可等の名称 |
許認可等の内容 |
有効期限 |
主な許認可取消し事由 |
第一種医療機器 製造販売業許可証 |
第一種医療機器製造販売に関する許可 許可番号:13B1X00007 |
2027年6月30日 (5年ごとの更新) |
不正な手段による許可の取得や役員等の欠格条項違反に該当した場合は許可の取消し (医薬品医療機器等法第75条) |
② 情報セキュリティについて
当社グループは、販売物流業務、生産管理業務、経理業務等の事業全般においてITシステムを活用しています。このため、サイバー攻撃やシステム障害等により大規模なシステムトラブルが発生し、復旧に時間を要した場合や、不正アクセス等による個人情報や製品情報等の機密情報の漏洩が発生した場合、事業活動の停滞、信用の低下、訴訟の提起等を招き、当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対し、当社グループでは、コンピュータウイルスやサイバー攻撃に対する防御策の強化、有事におけるマネジメント体制の構築、情報セキュリティ関連規程の整備を進めています。
また、全従業員を対象とした標的型攻撃メール訓練の実施やメールセキュリティシステムの導入を行い、セキュリティ意識の向上を図っています。
秘匿性の高い患者様のプライバシーに関わる情報等については、2021年12月にプライバシーマークを取得し、適切な保護措置を講じる体制を整備しています。
(3)外部環境に関するリスク
① 特定保険医療材料の償還価格改定について
当社グループが販売する製品の多くは、健康保険の給付対象となる特定保険医療材料であり、その価格は政府により保険償還価格として決定されています。医療費抑制策の一環として、保険償還価格は継続的に改定されており、大幅な引下げが行われた場合には、当社グループの製品販売価格が下落し、経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。
2024年6月に実施された改定では、2025年3月期の連結売上高に対して前期比で約2%のマイナス影響がありました。このようなリスクに備えるため、当社グループでは医療保険制度や保険償還価格の改定に関する動向を常に注視するとともに、保険償還価格改定の影響を受けにくい新規性の高い製品の導入を推進することで、リスクの低減に努めています。
② 外国為替相場の変動やインフレーションについて
当社の仕入商品および自社製品の部材・原材料については、円安やインフレーションの進行に伴う仕入コストの上昇が、当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。現時点では、当社の商品仕入の約75%が円建てで行われており、円安の影響は限定的です。
外国通貨建ての一部取引については、一定以上の為替変動が生じた場合に仕入価格を調整する為替条項を設けるなど、リスクの低減に努めています。
なお、一時的なコスト増加の影響があった場合でも、売上原価の計算に移動平均法を採用しているため、損益に与える影響は長期間にわたって平準化されます。
③ 災害の発生について
地震、台風、洪水等の自然災害や火災等の災害により、当社または取引先の事業所に損害が発生した場合や、サプライチェーンが寸断され、その復旧に時間を要する場合、当社グループの事業活動が停滞し、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、災害防災マニュアルや事業継続基本規程の整備、BCP(事業継続計画)の策定、社員安否確認システムの導入等の対策を講じています。
また、国内外のサプライチェーンにおいては、生産拠点や原材料の仕入先の複線化を進めるなど、リスクの低減に努めています。
④ 医療従事者の不足について
国内において、循環器内科医(心臓血管外科医、小児循環器医を含む)を志望する若手医師が、その業務の厳しさから減少傾向にあり、今後増加が見込まれる診療ニーズとの乖離が懸念されています。こうした状況により、症例数の伸び率が将来的に鈍化し、当社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。国は看護師や臨床技師等への業務移管や運営上の工夫を進めている状況です。
このような課題認識のもと、当社グループでは、手技の時間短縮に寄与する製品の開発・上市を通じて、医療従事者不足に伴うリスクの低減に努めています。
配当政策
3【配当政策】
当社は、当期の業績および今後の事業展開における資金需要等を勘案し、必要な内部留保を確保しながら配当性向40%またはDOE(株主資本配当率)5%のいずれか高い方を目安として安定的な配当を継続するとともに、株主の皆様に対する利益還元策を適宜実施していくことを基本方針としています。当社の剰余金の配当は、期末配当として年1回を基本方針としており、株主総会にて決定しています。
以上を踏まえ、当期の配当は、期末配当として1株当たり53円(配当性向:40.3%、DOE:6.5%)としました。
また、中期の配当政策としては、当社は2024年3月期から2028年3月期までの中期経営計画の期間の中で、配当と自己株式の取得を合わせた総還元額として270~300億円程度を目安として掲げています(2025年5月7日に公表した中期経営計画の上方修正に伴い、従来目安としていた250億円程度の水準から引き上げています。同日に開示した「2025年3月期通期決算説明資料」のP47もご参照ください)。
2026年3月期の配当は、期末配当として1株当たり54円(配当性向:40.5%、DOE:6.1%)を予定しています。
なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めています。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、次のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
|
2025年6月26日 |
定時株主総会決議(予定) |
3,722 |
53.00 |