人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数5,041名(単体) 78,665名(連結)
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平均年齢45.4歳(単体)
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平均勤続年数20.0年(単体)
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平均年収8,602,008円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1)連結会社の状況
2025年3月31日現在
(注) 従業員数は就業人員であり、臨時従業員数は重要性がないので記載を省略しております。
(2)提出会社の状況
2025年3月31日現在
(注) 1 従業員数は就業人員であり、従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員(1日7.5時間換算)であります。
2 臨時従業員には、嘱託(シニアを含む)、パート・アルバイトの従業員を含み、人材派遣社員、業務委託、請負の従業員を除いております。
3 平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含んでおります。
4 従業員数が前事業年度末(7,282名)と比べ大幅に減少しておりますが、その主な理由は、2024年7月1日付でエトリア株式会社を承継会社とする吸収分割を行ったことによるものであります。
(3)労働組合の状況
当社及び一部の連結子会社において労働組合が結成されておりますが、労使関係については特に記載すべき事項はありません。
(4)多様性に関する指標
当連結会計年度の多様性に関する指標は、以下のとおりであります。
① 女性活躍推進法及び育児・介護休業法に基づく開示
(注)
1 上記は社員100名以上又は「えるぼし」認定企業を対象としております。
2 正社員に占める女性比率は2025年3月末時点、管理職に占める女性比率は2025年4月1日時点となります。
3 管理職に占める女性比率及び男女の賃金格差については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する
法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したもので、出向者は出向元の従業員として集計しております。
4 男性の育児休業取得率については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したもので、出向者は出向元の従業員として集計しております。なお、男性の育児休業取得率算出にあたっての各条件は厚生労働省発行のリーフレット「男性の育児休業取得率等の公表について」の記載に準じております。また、前連結会計年度以前に子が生まれた社員が当連結会計年度に取得するケースがあるため、100%を超えることがあります。
5 「-」は対象となる従業員が無いことを示しております。
6 男女の賃金格差について、基本的に処遇は男女同一であり、現在生じている格差は職務、等級、年齢構成の違いによるものです。
② 連結会社の状況
(注)
1 正社員に占める女性比率は2025年3月末時点、管理職に占める女性比率は2025年4月1日時点となります。
2 管理職に占める女性比率及び男女の賃金格差については、出向者を出向元の従業員として集計しております。
3 当社及び国内連結子会社の男性の育児休業取得率については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したもので、出向者は出向元の従業員として集計しております。なお、男性の育児休業取得率算出にあたっての各条件は厚生労働省発行のリーフレット「男性の育児休業取得率等の公表について」の記載に準じております。また、前連結会計年度以前に子が生まれた社員が当連結会計年度に取得するケースがあるため、100%を超えることがあります。
4 男性の育児休業取得率については、海外連結会社のデータ収集を実施していないため「-」とし、記載を省略しております。
5 男女の賃金格差については、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しております。なお、賃金は基本給及び賞与等のインセンティブを含んでおります。基本的に処遇は男女同一であり、現在生じている格差は職務、等級、年齢構成の違いによるものです。
6 当社における男女間賃金格差は管理職では 94.4%となります。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 当社グループのサステナビリティ方針
当社グループは、三愛精神に基づき、目指すべき持続可能な社会の姿を、経済(Prosperity)、 社会(People)、地球環境(Planet)の 3つのPのバランスが保たれている社会「Three Ps Balance」として表しています。この3つのPのバランスを保ちつつ発展し続ける社会の実現に向け、1998年に世界に先駆け「環境経営」を提唱。20年以上にわたり「環境保全と利益創出の同時実現」に取り組んできました。この取り組みを土台に、「ESGと事業成長の同軸化」を方針に掲げ、ESG/SDGsの経営戦略、経営システムへの統合を進めています。21次中経では、「ESGグローバルトップ企業」を目指し、バリューチェーン全体を俯瞰した活動を進めています。
① ガバナンス
環境・社会・グループ経営のガバナンス分野における課題を経営レベルで継続的に議論し、グループ全体の経営品質向上につなげる目的でESG委員会を設置し、取締役会による監督体制を構築しています。
a. 監督体制
(a)サステナビリティ・ガバナンス
取締役会においては、当社グループの重要社会課題(マテリアリティ)の決定をはじめとしたESGに関する方針・事業計画の確定・執行及び経営リスク・機会に対する監視・監督・助言を行っています。ESG関連の議題において、2024年度は全体議案の2割程度の時間を割いて審議の時間を設けました。加えて、当社グループのガバナンスの方向性や課題について、取締役・監査役等が包括的な議論を行う場としてガバナンス検討会を開催しています。2024年度は、情報セキュリティ、2025年度重点経営リスクとESG開示規制に関して議論を行いました。実施した検討会の概要は「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」等で開示しています。
<サステナビリティに関する直近の取締役会報告内容>
・2024年度ESG関連情報開示について
・2024年度外部評価結果報告
・グローバルのESG開示規制動向について
(b)取締役のサステナビリティスキル・スキル開発
当社グループが目指す、3つのPが保たれた社会(Three Ps Balance)を実現すべく、持続的な株主価値・企業価値の向上に不可欠と考えるESGの取り組みを通じた社会課題解決を推進するため、「サステナビリティ」のスキルを取締役の主要なスキルの一つに選定しています。具体的には、事業を通じた社会課題解決や「気候変動への対応」「循環型社会の実現」等、当社グループにとって重要なサステナビリティ課題への知見・経験があることを指しています。取締役及び監査役のスキルマトリックスについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (2)役員の状況」を参照ください。
また、取締役のスキル開発については、ESG動向を踏まえた当社グループにとってのESG課題を取締役会及びガバナンス検討会で定期的に報告することで理解を深めています。特に、社外取締役に対してはESG担当部門長より社会動向の最新情報を提供するとともに、個々の取り組みに対して議論の場を設けることにより、適切な経営判断及び経営監督を行うための基盤を醸成しています。
(c)ESG指標と役員報酬の連動
ESGの取り組みの確認ツールとして活用している「DJSI年次レーティング」を社内取締役の業績連動型賞与の計算式に組み込むことで、ESGの取り組みへのインセンティブとしています。
また、21次中経がスタートした2023年度からは賞与に加え、社内取締役向けにESG目標を組み込んだ業績連動型株式報酬を導入しています。全社で定めたESG目標の達成項目数と支給率を連動させています。
役員株式報酬制度の詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」を参照ください。
b. 執行体制
(a)ESG委員会
環境・社会・ガバナンス分野における課題を経営レベルで継続的に議論し、グループ全体の経営品質向上につなげることを目的にESG委員会を設置しています。ESG委員会はCEOを委員長とし、社内取締役を含むグループマネジメントコミッティ*メンバーとビジネスユニットプレジデントから構成され、四半期に一度開催する意思決定機関です。社内外監査役もESG委員会にオブザーブ参加しています。
ESG委員会では、サステナビリティ領域における事業の将来のリスク・機会や、重要社会課題(マテリアリティ)の特定、ESG目標の設定等について審議しています。重要な審議内容については、取締役会の承認を経て決定しています。
2024年度のESG委員会での主な議題については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 (Ⅻ)ESG委員会」を参照ください。
* グループマネジメントコミッティ:取締役会から権限移譲された意思決定機関として一定の資格要件を満たす執行役員で構成
(b)執行役員の報酬連動
執行役員に対しても担当領域におけるESG目標を評価指標の一部として報酬に連動させることで、各ビジネスユニット・グループ本部のESG目標達成に対するコミットメントを強化しています。
(c)推進体制
ESG戦略部を設置し、コーポレート執行役員が担当役員としてESG活動を推進しています。ESG委員会での決定事項を含むESGに関する重要テーマは、各機能部門組織、ビジネスユニットに具体的な目標・施策として落とし込まれており、その進捗状況についてはESG委員会において定期的に確認しています。
② 戦略
a. マテリアリティ及び戦略的意義
当社グループでは、「ESGと事業成長の同軸化」を方針に掲げ、ESGを非財務ではなく、3~10年後の財務につながる「将来財務」と位置づけています。中期経営戦略において特に重点的に取り組むマテリアリティを特定し、その評価指標としてESG目標(将来財務目標)を設定しています。
マテリアリティの特定及び改定は、ステークホルダーの皆様の視点や各種ガイドラインを参照しながら、3年ごとの中期経営戦略単位でStep1からStep4(図1)のプロセスで行っています。マテリアリティの改定はESG委員会にて審議の上、財務目標とともに取締役会で承認した上で開示しています。
21次中経では、事業活動を通じた4つの社会課題解決と、それを支える3つの経営基盤の強化をマテリアリティとして特定し、これら7つのマテリアリティの事業戦略との結びつきや財務への影響を「戦略的意義」として示しています(図2)。評価指標としては、世界共通の課題である気候変動や人権問題に関する目標や、デジタルサービスの会社への変革に必要となるデジタルサービス関連特許や情報セキュリティ、デジタル人材育成等、16のESG目標を設定しています。マテリアリティとESG目標はESG委員会にて審議の上、財務目標とともに取締役会での承認を経て決定し、年度ごとの実績を毎年開示しています。ESG目標の詳細については、「(1) 当社グループのサステナビリティ方針 ④指標及び目標」を参照ください。
図1 マテリアリティの特定及び改定プロセス
マテリアリティの特定及び改定において参照したもの
*1 SDGs Compass:企業がSDGsを経営戦略と整合させ、SDGsへの貢献を測定し管理していくための指針
*2 GRIスタンダード:組織が経済、環境、社会に与える様々なインパクトについて、国際的なベストプラクティスを反映している規準
*3 欧州 非財務情報開示指令:環境、社会、雇用、人権の尊重、汚職・贈収賄の防止等を経営報告書に開示することを規定
*4 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース):金融安定理事会(FSB)によって設立され、企業に対する気候関連リスク・機会の情報開示の促進と、低炭素社会へのスムーズな移行による金融市場の安定化を目的としている
*5 ISO26000:組織の社会的責任に関する国際的な規格・手引
図2 7つのマテリアリティと戦略的意義
③ リスク管理
a. リスクマネジメント体制
当社グループでは「リスクマネジメント」を事業に関する社内外の様々な不確実性を適切に管理し、経営戦略や事業目的を遂行していく上で不可欠のものと位置づけ、全役員・全従業員で取り組んでいます。リスクマネジメントを遂行する上でのガバナンス体制として、取締役会がリスクマネジメントに関する経営者の職務の執行が有効かつ効率的に行われているかを監督する役割と責任を担っています。リスクマネジメント体制の詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 (Ⅹ)リスクマネジメントシステムとリスクマネジメント委員会」を参照ください。
b. 重点経営リスク
当社グループのリスク管理は、経営に大きな影響を及ぼすリスクを「重点経営リスク」と位置づけ、その特性によって「戦略リスク」と「オペレーショナルリスク」に分けて管理しています。
サステナビリティに関するリスクは、企業の中長期的な成長に大きく影響を与えることから「ESG/SDGsの深化」を戦略リスクの一つとして位置づけ、気候変動、資源循環、生物多様性や人権に関するリスク管理を全社レベルで行っています。
リスクレベルは、影響度及び緊急度を基に算出し、全社リスクマネジメントの枠組みに則って評価されています。サステナビリティに関するリスクの詳細については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」における「⑥ESG/SDGsの深化」を参照ください。
④ 指標及び目標
a. ESG目標の進捗
21次中経におけるESG目標の進捗は以下のとおりです。2025年度目標達成に向けておおむね順調に進捗していますが、①顧客からの評価、⑮エンゲージメントスコア、⑯女性管理職比率については遅れが発生しており、課題の対応を進めてまいります。
ESG目標の進捗(事業を通じた社会課題解決)
*1 デジタルサービスの会社としてご評価いただけた顧客の割合
*2 中南米はソリューション顧客を対象にした調査
*3 APAC:アジアパシフィック
*4 GHG(Green House Gas):温室効果ガス
*5 組織体制の変更に伴い、開示対象範囲を見直し、関連する数値を再算出しております
*6 第三者検証中の暫定値。確定値は2025年8月に以下ウェブサイト上で開示予定
https://jp.ricoh.com/sustainability/materiality
ESG目標の進捗(経営基盤の強化)
*7 CHRB(Corporate Human Rights Benchmark)スコア:機関投資家とNGOが設立した人権関連の国際イニシアチブ。5セクター(農産物,アパレル,採掘,ICT,自動車)のグローバル企業から選定して評価(最新のベンチマークは約250社を選定)
*8 特許出願数に占めるデジタルサービス貢献事業に関する特許出願数の割合
*9 プロセスDXの型に基づいたプロセス改善実績のある人材の育成率(母数は各ビジネスユニットの育成対象組織総人員数)
*10 Gallup社のQ12Meanスコア(高い組織パフォーマンスを予見するための12要素に対する評価スコア)を採用
b. 社会課題解決型事業の売上高実績
ESGと事業成長の同軸化の進捗をより具体的にステークホルダーの皆様にお示しするため、社会課題解決に貢献する事業について2025年度までの売上高目標を設定しました。2023年度及び2024年度における実績額、並びに、2025年度の目標額については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」における「将来財務(ESG)の視点」を参照ください。
c. ESG要求の高まり
グローバル企業の顧客を中心に、契約書にESG関連の要求が盛り込まれるケースや当社グループのESGの取り組み状況の確認、アンケート提出の依頼を受けるケースが増加しています。例えば、製品の環境ラベル、再生材の使用率、人権配慮の取り組み状況等が問われています。また、商談参加の前提条件としてESG外部評価のスコアやレーティングの提出依頼も増えています。お客様からのEcoVadis*1スコア開示要求累計数は、2020年度は149件でしたが、2024年度は364件に増加しています。なお、開示要求数全体の2割程度はFortune Global 500*2の企業からの要請です。このようにESGはビジネスにおいて必須条件となっており、お客様と世の中の期待に応えるべくESGの強化に取り組んでいます。
*1 EcoVadis:企業の環境・社会・ガバナンス側面を評価する国際的な評価機関であり、多くのグローバル企業がサプライヤーの選定に評価結果を活用
*2 Fortune Global 500:米国の経済誌Fortuneが毎年公表する、世界の企業を売上高順にランキングした上位500社の一覧
d. 社外からの評価
ESGへの取り組みが評価され、国内外のESGインデックスの組み入れ銘柄として採用されています。2024年度はESG情報開示を拡充したことと、強みである環境配慮製品・サービスの売上の拡大・気候変動対応へのアドボカシー活動が評価され、各評価においてグローバルトップレベルへ前進しました。
*1 CDP:企業の環境分野の情報開示を促し、気候変動、水セキュリティ、フォレスト等の取り組みを評価する国際的な非営利団体
*2 Global100:カナダのCorporate Knights社による、環境・社会・ガバナンスの側面について企業を評価し、持続可能な企業100社を選定する評価機関
*3 GPIF6指数:MSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)、FTSE Blossom Japan Index、FTSE Blossom Japan Sector Relative Index、S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数、Morningstar 日本株式ジェンダーダイバーシティ・ティルト指数(除くREIT)
*4 「コンピューター及び周辺機器製造」セクターにおいて1位獲得
(2) 気候変動・資源循環・生物多様性への対応
① ガバナンス
「(1) 当社グループのサステナビリティ方針 ①ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
当社グループは「環境保全と利益創出の同時実現」という考えに基づき、環境と事業成長の両立を目指す事業活動を展開してきました。環境経営活動を展開するにあたっては、気候変動、資源循環、生物多様性という環境課題が密接に関連しあっていることから、包括的な対応が不可欠であるという認識のうえ、シナリオ分析やリスク・機会の評価を行い、環境負荷の低減と事業成長の両立を目指しています。
a. シナリオ分析の考え方
2018年、当社グループはTCFD提言に賛同表明して以降、TCFDのフレームワークに沿ってシナリオ分析、及び、気候変動リスク・機会について評価を進め、ESG委員会による承認を経て毎年、開示を行ってきています。TCFD提言における気候変動のリスク・機会、「サーキュラーエコノミーへの移行」、更にはTNFD*1における「自然資本に関する依存*2と影響」等、気候変動、資源循環、生物多様性を統合的なアプローチで対処する考え方がG7にて議論され、日本政府も、環境分野におけるリスク・機会を統合的に評価することを推奨しています。当社グループでは2024年からこれらの環境分野を俯瞰的に捉え、TCFDに加え、TNFDのフレームワークを活用して評価を行った上で、気候変動、資源循環、生物多様性を統合したリスクと機会を特定しています。
シナリオ分析は「重要性評価」「シナリオの特定」「事業インパクト評価」「シナリオ分析によるリスクと機会の特定」の4つのステップで進めました。重要性評価のステップでは、TNFDフレームワークによって抽出された依存とインパクトについて、生物多様性への重要性が高い領域と、バリューチェーンを通じた影響の重大さを評価しました。2040年における社会動向や規制動向等を予測し、環境分野におけるリスク・機会の項目を幅広に列挙しました。また、シナリオの特定では不確実な未来に対応するために、既存の主要ビジネスであるプリンティング事業の継続、デジタルサービスの会社に向けた事業戦略等を鑑みて、1.5℃シナリオを含む複数の気温変化のシナリオを参照し、分析を行いました。
*1 TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース):自然関連のリスク管理と開示の枠組みを提供するために2021年6月に設立されたタスクフォース。2023年9月にTNFDの最終提言(v1.0)として、企業と金融機関が自然関連課題を特定、評価、管理、開示するための枠組みを公表した
*2 依存:事業活動に不可欠な自然資本や生態系サービス、またはこれらが不可欠である状態
b. 自然関連の依存とインパクトの評価
気候変動、資源循環、生物多様性に対するリスクと機会の特定、及び、シナリオ分析を行うにあたり、以下のステップにて依存とインパクトを評価しました。
評価プロセスの詳細は、「Ricoh Group Environmental Report 2024」をご参照ください。
https://jp.ricoh.com/sustainability/report/environment
Step1: 依存とインパクトの抽出
依存とインパクトが重大と推定した以下の事業プロセスをENCORE*により評価
•バリューチェーン上流:紙の製造
•直接操業:画像機器とその消耗品の製造、サーマルペーパーの製造
→水関連、土壌汚染、GHG排出等を抽出
* ENCORE:国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンター等が中心となって開発された、自然関連リスクの特定ツール
Step2: 直接操業における優先地域*の特定
依存とインパクトの抽出段階で影響度が高いと推定された水と、自然資本を生産・回復する主体である生物多様性について評価した結果、優先地域を有する国・地域として、日本・中国・東南アジア・北米が挙げられました。これらの国・地域、操業拠点について、今後、より具体的な評価を進めていく予定です。
* 優先地域:事業活動が重要な生態系に接している、または、事業活動の依存やインパクトの度合いが高い地域
Step3: 依存とインパクトの重要性評価
日本国内におけるA3カラー複合機とサーマルペーパー(粘着ラベル)の使用をモデルシナリオとして、LCA(Life Cycle Assessment)によりバリューチェーンにおける重要性を評価した結果、以下のことが分かりました。
•紙に起因する依存とインパクトが大きい
•いずれの依存とインパクトについても、バリューチェーン上流の影響が大きい
•生物多様性(種の絶滅)に対する比較では、森林資源消費とGHG排出の影響が大きい
•水資源利用に対する生物多様性への影響は定量的に評価できないが、紙や段ボール使用による影響が大きいと予想される
したがって、シナリオ分析においては、紙や森林資源の観点での検討を通したリスクと機会の特定が重要であると結論付けました。
c. シナリオ分析の結果
気候変動のみならず生物多様性、資源循環の側面も含めシナリオ分析を実施した結果、当社グループには、環境分野における様々なリスクがあり、特に環境規制・規格への対応を怠ると収益への大きな影響があること、また自然災害リスクに関しては先送りすると大きな事業インパクトが発生しかねない喫緊の課題であることが分かりました。これらのリスクに対する当社グループの対応は以下のとおりです。
一方で、環境問題に対する緩和、適応への積極的な対応は将来の財務効果を生み出す可能性があることが改めて確認できました。
d. リスクの緊急度・影響度(移行リスク・物理リスク)
シナリオ分析に基づき、当社グループにおいて財務にも影響を与えうる重要なリスクを特定しました。気候変動、資源循環、生物多様性それぞれのリスクを洗い出し、重複するリスクについては統合したうえで移行リスクと物理リスクに分類し、全社リスクマネジメントシステムの考え方に則って緊急度(発現可能性)と影響度(財務インパクト)を見積もりました。また、EUサステナビリティ規制簡素化や米国の政策転換の影響についても検討しましたが、シナリオ分析のステップにおいて想定していた範囲内であるため、大きな影響がないことを確認できました。
この影響レベルに基づいた対応を着実に実践することで環境リスクに対するレジリエンスを高めていきます。
移行リスク(1.5℃シナリオ*1)
*1 1.5℃シナリオ:2100年までの平均気温上昇が1.5℃未満に抑えられている世界
*2 SBTi(Science Based Targets initiative):企業の温室効果ガス(GHG)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
物理リスク(4℃シナリオ*3)
*3 4℃シナリオ:2100年までの平均気温上昇が4℃上昇する世界
e. 機会の財務効果
気候変動、資源循環、生物多様性における環境影響は単に事業リスクだけではなく、自社製品・サービスの提供価値及び企業価値を高める機会につながると認識しています。
省エネルギー、省資源技術、創エネサービス等を活かしたお客様の環境負荷削減につながる商品やソリューションの提供、DXを支援するソリューション等、様々な機会をもたらし、現時点で環境配慮のオフィス機器、DXを支援するソリューション、環境・エネルギー事業は1兆円規模の売上に貢献しています。
③ リスク管理
「(1) 当社グループのサステナビリティ方針 ③リスク管理」をご参照ください。
④ 指標及び目標
a. 気候変動分野
(a)方針及び取り組み
当社グループは、事業を通じた脱炭素社会の実現を目的として脱炭素目標を設定しており、2030年にスコープ1,2のGHG排出(絶対量)を基準年*1比で63%削減することを掲げ、SBTiの基準「1.5℃目標」の認定を取得しました。
また、再生可能エネルギーに関しては、2017年4月に日本企業として初めてRE100*2に参加し、RE100基準に適合する再生可能エネルギー由来の電力の総電力量に対する割合で算出される再生可能エネルギー比率の目標(相対指標)を設定しています。
気候変動分野における環境目標については、適宜、見直しを行っており、2024年3月には、新たに2040年目標を設定し、スコープ1,2のGHG実質排出ゼロの達成、事業活動における使用電力の100%再生可能エネルギーへの移行(RE100達成)を従来の2050年から10年前倒ししました。スコープ3についても対象範囲を従来のカテゴリー1(調達)、4(輸送)、11(使用)から全カテゴリーに拡大し、基準年*1比65%削減を新たに2040年目標として設定し、対応を強化しています。また、2050年のスコープ1、2、3のGHG排出ネットゼロ目標についても、排出量を自助努力で基準年*1比90%削減する数値目標を追加設定しました。目標の達成に向けては、スコープ1、2及び3の脱炭素ロードマップを策定し各施策の進捗を管理していきます。2024年度のGHG排出量/再生可能エネルギー使用率等の実績は、2025年8月に以下ウェブサイト上で開示予定です。
https://jp.ricoh.com/sustainability/environment/zero_carbon_society
*1 2015年度
*2 RE100:事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟する国際イニシアチブ
リコーグループ環境目標(気候変動分野)
* 6種類の温室効果ガス(CO2,CH4,N2O,HFCs,PFCs,SF6)を含む
* 2030年目標のGHGスコープ1,2,3、2040年目標のGHGスコープ3:自助努力による削減率を設定したグロス目標。2040年目標のGHGスコープ1,2、2050年目標のGHGスコープ1,2,3は、排出量を自助努力で基準年比90%削減(グロス目標)とし、残余排出は国際的に認められる方法(2023年11月発行のISO14068-1:2023に準ずる)でオフセットすることでネットゼロを達成(ネット目標)
* 各GHG削減目標の算定においては、セクター別脱炭素アプローチは使用していない
* 組織体制の変更に伴い、開示対象範囲を見直し、関連する数値を再算出
<2040年目標達成に向けた脱炭素ロードマップ>
GHG排出削減目標達成に向けた移行計画として、スコープ1,2とスコープ3の3カテゴリーについて、2040年までのGHG削減ロードマップを策定しています。
(ⅰ)スコープ 1,2脱炭素ロードマップ
・再生可能エネルギーの積極的な利活用
再エネ電力証書の購入、オンサイトPPAの導入を進め、海外では2030年までに使用電力の再エネへの100%転換を目指します。日本国内では有志企業とともに再エネ電力のコストダウン、調達手段の多様化を政府に働きかけ、再エネ導入加速に尽力します。
・徹底した省エネ・燃料転換の推進
生産拠点においては製造プロセス改善、高効率・省エネ設備導入を進めています。非生産拠点においては日本国内ではZEB事業所社屋を拡大し、海外では省エネ型オフィスへの移転を促進させます。社有車においてはエコドライブを徹底します。また、現状では困難なスコープ1削減の課題に対しては、2030年以降の施策として、設備の電化、水素・CCS等の将来技術の導入検討を本格化させるとともに、社有車においてはEV、燃料電池車等への転換を拡大させていくことを想定しています。
(ⅱ)スコープ3主要カテゴリー(Cat.1, 4, 11) 脱炭素ロードマップ
スコープ3においてはカテゴリー1(調達)、カテゴリー4(輸送)、 カテゴリー11(使用)の3カテゴリーで合計の3分の2以上を占めるため、2030年までに3カテゴリーの排出量を基準年比40%まで削減する施策を中心に展開していきます。これまでの主要な削減策として、複合機・プリンターの小型・軽量化や省エネルギーに取り組んできましたが、今後も継続して取り組んでいきます。これらに加え、再生機販売、再生材料の利活用に関する施策を拡大していき、現在取り組みに着手している輸送に係る脱炭素活動や、 低炭素材料の採用拡大については2025年以降にその効果が大きくなるように取り組んでいきます。カテゴリー1の取り組みは、主に顧客とサプライヤーのスコープ3カテゴリー1、カテゴリー4の取り組みは、主にサプライヤーのスコープ1・スコープ2、カテゴリー11の取り組みは、主に顧客のスコープ2削減に貢献するものであり、スコープ3の削減活動を通じて、バリューチェーンの脱炭素に貢献していきます。
<サステナビリティへの取り組みを活用した資金調達>
当社グループは、脱炭素や資源循環等をはじめとしたESGへの取り組みを強化し、サステナビリティを活用した資金調達を積極的に推進しています。2020年に三菱UFJ銀行と初のサステナビリティ・リンク・ローンを締結して以来、2024年度にはみずほ銀行と「Mizuho Eco Finance」や三井住友信託銀行と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の融資契約を締結し、継続的に資金調達を行っています。
(b)目標及び実績
環境目標に対する実績*は以下のとおりです。これらの進捗状況はESG委員会や取締役会を通じ、経営レベルで監督が行われています。
* 第三者検証中の暫定値。確定値及びScope3の全カテゴリーは2025年8月に以下ウェブサイト上で開示予定
https://jp.ricoh.com/sustainability/data
* 組織体制の変更に伴い、開示対象範囲を見直し、関連する数値を再算出
* 小数点第1位までの表示にあたっては、小数点第2位以下を四捨五入しているため、表内の数値の合計が一致しない場合があります
(c)算出条件
以下の条件にて、温室効果ガス排出量を算出・開示しています。
・温室効果ガス排出範囲:経営支配力アプローチ採用
当社グループでは、事業方針の導入・実施権限を有する事業・施設に対する環境影響を総合的に管理するため、経営支配力アプローチを採用しています。
・温室効果ガス測定方法:見積による測定
当社グループでは、グローバル拠点の温室効果ガス排出量を迅速・効率的に把握するため、見積による測定方法を採用しています。
(d)その他指標
・内部炭素価格の導入
当社グループは、TCFDにて開示している気候変動リスクにおいて、カーボンプライシング政策によるサプライヤーからの調達コスト上昇を評価することを目的に、スコープ3カテゴリー1(調達)に対する内部炭素価格(シャドウプライス)を18,900円/tCO2*で設定しています。
* IEA World Energy OutlookでNZEシナリオの前提条件として設定されている炭素価格(2030年時点・先進国の値)を参照して設定
b. 資源循環分野
(a)方針及び取り組み
当社グループが目指す姿を実現するには、私たちだけでなく、社会全体が循環型社会に向かって変化していく必要があります。1994年に制定されたコメットサークルは、循環型社会実現のコンセプトとして、製品メーカー・販売者としての当社グループの領域だけでなく、その上流と下流を含めた製品のライフサイクル全体で環境負荷を減らしていく考え方を表したものです。
製品に使用する資源は、可能な限り、リデュース、リユース、マテリアルリサイクルを行うことが重要です。そのため、小型・軽量化、長寿命化や、製品・部品リユース及びリサイクル材、リニューアブル材を増やす活動を行っています。これらを統合して、バージン材の使用量を減らしていく取り組みを実施しています。
(b)目標及び実績
製品の新規資源使用率・使用量の実績*は以下のとおりです。
* 第三者検証中の暫定値。確定値は2025年8月に以下ウェブサイト上で開示予定
https://jp.ricoh.com/sustainability/data
加えて、SASB基準に則り、当社グループが所属するハードウェアセクターにおいて、「製品ライフサイクル管理」に係る指標を以下ウェブサイト上で開示しています。https://jp.ricoh.com/sustainability/report/guideline
また、事業活動においても資源ロスを最小化するための活動を推進しており、水の再使用や再生利用による水使用量の削減にも取り組んでいます。水使用量実績*は以下のとおりです。
* 第三者検証中の暫定値。確定値は2025年8月に以下ウェブサイト上で開示予定
https://jp.ricoh.com/sustainability/data
* 組織体制の変更に伴い、開示対象範囲を見直し、関連する数値を再算出
c. 生物多様性分野
(a)方針及び取り組み
当社グループでは、生物多様性への配慮を適切に実施するため、事業と生物多様性の関係性を評価し、リスクを特定した上で、戦略を立案・実行しています。
持続可能な社会を構築するためには、特に持続可能な調達が重要と考え、再生紙やECF紙等の環境に配慮した製品の調達を進めています。当社グループでは、2010年に「リコーグループ製品の原材料木材に関する規定」を制定し、2023年、環境面と人権や地域での操業に配慮した「用紙調達方針」を新たに制定しました。これらの方針・規定に基づいて、事業活動に伴う環境負荷を削減すると同時に、地球の再生能力を維持し、高める取り組みを進めています。
また、当社グループは、生物多様性保全のみならず地球温暖化防止、持続可能なコミュニティ発展の観点からも森林保全が重要と考え、1999年より積極的な取り組みを行っています。2020年からは「守る」「増やす」の両面で100万本の森づくりを目指して活動を進めています。環境NGO、自治体、地域住民等、様々なステークホルダーの皆様と連携して、グローバルに森林保全活動を実施しています。
(b)目標及び実績
持続可能な紙の調達の割合は、2024年度時点で全体の90%となり、2026年度の100%を目指して推進しています。森林保全活動として取り組む植林本数は、2024年度末で累計53.1万本の実績(対前年7.8万本増)となり、2030年の100万本への進捗度は53.1%と順調に推移しています。
(3) 人権への対応
① ガバナンス
「(1) 当社グループのサステナビリティ方針 ①ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
当社グループの人権尊重の原点は、創業の精神である三愛精神にある“人を愛し”にあります。グローバルにビジネスを展開している当社グループでは、各国の法令遵守に加え、国際的規範に準拠した人権尊重の実践に取り組んでいます。
2021年4月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「リコーグループ人権方針」を定めました。本方針は、日英含む10言語で国内外の主要グループ会社に周知しており、サプライヤー及びビジネスパートナーにも本方針を支持し実践いただくよう努めています。
当社グループは、人権尊重の推進フレームワーク(下図)に基づき、当社グループのビジネスに関わるバリューチェーン全体における全てのステークホルダーの人権尊重の実践に取り組んでいます。
人権デュー・ディリジェンス*を通じて、顕著な人権課題を特定し、負の影響の防止、軽減措置を講じて是正を行っています。
* 人権デュー・ディリジェンス:人権に関する負の影響を認識し、それを防止・対処するために実施すべきプロセス
③ リスク管理
「(1) 当社グループのサステナビリティ方針 ③リスク管理」をご参照ください。加えて、人権への対応に関するリスク管理は以下のとおりです。
a. 人権デュー・ディリジェンス
人権リスク管理の重要性を考慮し、2022年より人権影響評価を毎年実施しております。当社グループにとっての15の代表的な人権リスクについて人権影響評価を実施し、顕著な人権課題の特定を行っています。2023年に評価プロセスの見直しに伴い顕著な人権課題の見直しをしましたが、今後は原則として3年毎に見直しを実施します。
[2023年の影響評価で特定された顕著な人権課題]
7つ(強制労働、過剰・不当な労働時間、労働・安全衛生、差別・ハラスメント、テクノロジー・AIに関する人権問題、プライバシーの権利、サプライチェーン上の人権問題)
顕著な人権課題については、当社の人権対応責任部門が、負の影響の防止・軽減への取り組みを関連部門と協議の上、推進していきます。代表的な人権リスクの防止、軽減措置として、人権リスクごとに、守るべき基準を定めた「リコーグループ人権尊重のためのガイド」を2024年に発行しました。
また、生産拠点については、労働安全衛生の観点や、業務委託・人材派遣・仲介業者等を利用した多様な人材の雇用の機会が多いこと等から、人権リスク管理の重要性が高いと認識し、継続的にモニタリングを実施しています。主要な生産拠点に対して、RBAのリスクセルフアセスメントを用いたESGリスク評価を年次で実施し、負の影響を特定し、是正対応を実施しています。また、一部の生産拠点においては、2年ごとに第三者監査(RBA VAP*)の継続受審を通じて、国際的なESG要件への適合状況を確認し、これまで監査を受審した5拠点すべて(下表)で認証を取得しています。
* VAP(Validated Assessment Program):RBA行動規範に対する準拠状況を第三者監査機関が確認するプログラム
また、購買金額の上位80%以上を占める重要サプライヤーを中心にESGリスクセルフアセスメントの年次実施を通じて、サプライチェーンにおける人権リスクの評価を継続的に行っています。評価の結果、リスクが高いサプライヤーについては、改善のアドバイスや現場監査の実施を通じて是正を要請していきます。
加えて、顕著な人権課題の1つである「サプライチェーン上の人権問題」への対応として、世界の紛争地域及び高リスク地域における鉱物採掘や取引が、人権侵害や労働問題等の源になるのを防ぐために、サプライチェーンにおける責任ある鉱物資源調達の調査を実施しています。2024年度の調査票の回収率は、目標100%に対し96%でした。紛争鉱物の使用撲滅に向け、部品単位での含有状況の調査や、RMAP*認証を取得した製錬所への取引切り替えを要請しています。
今後も継続的な人権デュー・ディリジェンスの取り組みによって、人権尊重の取り組みを強化してまいります。
* RMAP(Responsible Minerals Assurance Process):紛争鉱物問題に取り組む米国組織 RMI(Responsible Minerals Initiative)が実施する製錬所認定プログラム
b. 救済措置
万が一人権侵害が起きてしまった場合の救済措置として、当社グループでは、ステークホルダーが報復の恐れなく人権に関する懸念等を通報できる制度と対応メカニズムを提供しています。人権侵害の申し立てがあった場合には、申し立てを速やかに調査し、人権への負の影響を是正する措置を講じます。
(a)通報者の保護
・匿名性の確保
下記に示すいずれの通報制度においても、匿名での通報を可能としています。
・通報内容の機密保持
受領した通報情報は、関係者以外に開示されることはなく、厳重に機密情報として管理されます。
・報復措置の禁止
当社グループは、相談内容へのセキュリティ保護を図り、誠実に通報を行ったこと、調査に協力したことを理由として、各国の法令に基づき、不利益に取扱う行為をしません。 当社グループは、安全で健全、かつ生産的な職場を通報者に提供するよう努めています。
(b)人権問題に対する通報制度
当社グループは、人権問題が発生した場合の通報手段として、社員、サプライヤー・パートナー、外部ステークホルダーの皆様に向けた通報制度を整備しています。
[社員向け通報制度(内部通報)]
「リコーグループほっとライン」「リコーグループグローバル内部通報制度」
[サプライヤー・パートナー向け通報制度]
「サプライヤー・パートナーホットライン」
[外部ステークホルダー向け通報制度]
人権に関する申し立て:一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)「対話救済プラットフォーム」
責任ある企業行動に関する申し立て:「責任ある企業行動ホットライン」
通報制度の実効性を高めるため、「リコーグループグローバル内部通報制度」はリコー常勤監査役に直接報告できる仕組みを採用しております。また、「対話救済プラットフォーム」はJaCERが受付をし、救済において専門家からの支援を受けることで、正当性・透明性の向上を図っております。各通報制度の詳細については、以下ウェブサイト上で開示しています。
https://jp.ricoh.com/governance/compliance#whistleblowing
④ 指標及び目標
人権に関する指標及び目標、実績は以下のとおりです。
・企業の人権に関する取り組みを評価・格付けする国際的な指標CHRBスコア(ESG目標)
・サプライヤー・パートナー行動規範署名率
ESG説明会を通じて、サプライヤーの皆様への教育・トレーニングを実施しています。当社の取り組みやサプライヤー・パートナー行動規範のご説明に加え、脱炭素の目標設定、ESG監査の実施、高リスクと判定したサプライヤーの皆様への改善プログラムの実施等、より発展した内容についてご説明しています。
・人権影響評価の対象会社
・人権教育の実施状況
(4) 人的資本・多様性への対応
① ガバナンス
「(1) 当社グループのサステナビリティ方針 ①ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
人的資本戦略を通じたお客様と社員の“はたらく歓び”の実現
当社グループの使命と目指す姿である「“はたらく”に歓びを」の実現に向けての人的資本戦略を策定しています。戦略を確実に実行し、社員にとっての“はたらく歓び”の創出、ひいてはお客様の“はたらく歓び”につなげてまいります。
人的資本施策における3つの柱
当社グループの人的資本の考え方は、社員の「“はたらく”に歓びを」と、事業成長を同時実現することです。その実現に向けて、人的資本施策として「自律」「成長」「“はたらく”に歓びを」の3つを柱に掲げています。社員の自律と成長を促し、働くことを通じて得られる体験を積み重ねることにより、はたらくことに歓びを感じることが、デジタルサービスの会社への変革を加速させ、同時に事業の成長へとつながります。
(ⅰ)自律:社員の潜在能力発揮を促す
一人ひとりの社員が、自分を活かすために主導権を握ること、会社が適所適材を実現すること、この2つが人的資本を活かす基本と考えています。この目的の実現のため、「リコー式ジョブ型人事制度」の導入、社内公募制度の拡大、及び個人やチーム単位でのパフォーマンス最大化を図るため、リモートワークと出社の双方の良さを取り入れたハイブリッドワークの継続的推進を行ってきました。これらの自主自律のための環境整備に加え、社員一人ひとりの潜在能力を引き出すため、マネージャー自身が「管理型」から「支援型」へと変化する必要性があり、変化促進のためのマネージャー向け研修としてマネジメントカレッジを展開し、国内当社グループにおけるマネージャーの意識変革に取り組んでおります。
(ⅱ)成長:個人の成長と事業の成長を同軸にする
変革を加速させるためには、ビジネスをリードする人材の育成が重要です。当社グループでは全社横断的に将来のリーダー候補の選定やアセスメントの実施等を進め、次世代のリーダーシップパイプラインを構築しています。また、デジタル人材の育成は、デジタルサービスの会社への変革において最も加速させるべき課題の一つであり、リスキリング、アップスキリング及びクロススキリングを含め、様々な施策を展開しています。デジタル人材育成のためには、自律的なキャリア支援や学習環境の提供を進めるのと同時に、ビジネスニーズからの育成計画も策定することで、社員主導と会社主導の双方からデジタル人材の育成と再配置の加速を進めています。
(ⅲ)“はたらく”に歓びを:社員エクスペリエンスを“はたらく歓び”につなげる
お客様にはたらく歓びを感じていただくためには、まず、私たちがはたらく歓びを感じられるような経験を積むことが重要です。多様性と共創文化の中で能力を開花させ、はたらく歓びを感じること。これこそ、社員に体験してもらいたいことです。このような充実感・充足感のある「歓び」を生む社員エクスペリエンスは、私たちが直面する様々な変化に対応し、デジタルサービスの会社としての強固な文化を形づくるエンジンと言えます。
③ リスク管理
「(1) 当社グループのサステナビリティ方針 ③リスク管理」をご参照ください。
④ 指標及び目標
当社グループの人的資本戦略における主要指標は、前述の3つの柱に紐づいた「IDPに基づく異動率」「デジタル研修履修率」「社員エンゲージメント」「女性管理職比率」と定めています。
「IDPに基づく異動率」向上のために、今までの自身のキャリアを可視化する「キャリアシート」と今後の自律的な成長のための育成計画「IDP」の継続した更新を進め、結果、当連結会計年度ではキャリアシートの更新割合は全対象者に対して82%の社員が更新をしており、今後の自律的な成長のためのIDPの更新に関しては80%の社員が更新をしています。
「デジタル研修履修率」に関しましては、前述の価値創造モデルにおける戦略要素の一つである、「プロセスDXと高い生産性」に焦点を当て、全社員のプロセスDX人材の社内認定制度*の取得を目指し、当連結会計年度では98%の社員が、プロセスDX人材のブロンズ認定を完了しています。
「社員エンゲージメント」は継続的に従業員の会社に対する信頼を見るのに重要な指標となります。前連結会計年度の結果を踏まえ、各販売極やビジネスユニットごとにメッセージングの強化等を実施し、当連結会計年度の結果としては、前連結会計年度から0.05ポイントプラスとなり、2025年度の目標に向けて着実にエンゲージメントが上昇しています。
DEIの観点からも重要な多様性のある組織づくりに関しても、積極的な登用や育成を進めています。重要な指標となる「女性管理職比率」は、当連結会計年度の結果としては、前連結会計年度から0.7%プラスとなり、多様性のある組織への変革を進めています。
* プロセスDX人材の社内制度認定:当社グループでは、デジタル技術を活用し仕事やプロセスのリデザインをする「プロセスDX」
の考え方や手法を学び、社内で認定を受ける制度を策定しています。この認定制度はブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ
の4種類のレベルがあり、ブロンズではプロセスDXを実践するための基本的な考え方や手法を理解している状態を認定条件とし
ています。
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)とワークライフ·マネジメント(WLM)
イノベーションは、多様な人材が個々の能力を活かし協働することで創出されます。そのためには、多様な社員それぞれが自身のパフォーマンスを最大限発揮して活躍できる環境が必要です。この実現に向け、「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン」と「ワークライフ・マネジメント」を経営戦略の1つと位置付けて取り組みを進めています。社員の多様性を尊重し、生き生きと働けるような環境整備を進めるべく、「リコーグループ企業行動規範」を企業カルチャーの基本として社員コミュニケーションを徹底しています。また、あらゆる多様性や価値観を互いに受け入れ、グローバルの社員が一つのチームとして働く決意を表す「グローバル DEI ステートメント」を22言語、明確な行動規範として「グローバル DEI ポリシー」を17言語で定めています。個々人の多様性を認め、すべての人が敬意をもって尊重される環境で働けるよう取り組みを推進していきます。D&Iを一歩進め、「エクイティ(Equity:公平性)」という概念を加え、DEIとして一層取り組みを強化しており、エクイティの概念におけるトップからのメッセージの展開や国際女性デー(IWD)に合わせたグローバル全社でのイベントの開催等を実施しています。またWLMの観点から、すべての社員が働きやすい環境で勤務できるように、当社グループでは両立支援のための各種制度の整備に加え、ハイブリッドワークを実施しております。これにより、場所にとらわれることのない働き方を実現しつつも、必要に応じてオフィスでコミュニケーションもとれる形をとっており、新しい働き方を率先して実施しています。