2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

 

事業の状況、業績の状況等に関する事項のうち、株主・投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりです。

(1) 当社グループの経営上重要なリスク(重点経営リスク)

(2) 事業領域固有の重要なリスク(ビジネスユニットリスク)

(3) その他各機能領域のリスク(グループ本部リスク)

 

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響があると経営者が認識しているリスクを以下で取り上げていますが、すべてのリスクを網羅している訳ではありません。当社グループの事業は、現時点で未知のリスク・重要と見なされていない他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、事業等のリスクは、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

■「重点経営リスク」の決定プロセス

GMCとリスクマネジメント委員会は、経営理念や事業目的等に照らし、利害関係者への影響を含めて、経営に大きな影響を及ぼすリスクを網羅的に識別した上で、重点経営リスクを決定し、その対応活動に積極的に関与しております。(図1:重点経営リスク決定プロセス)

・重点経営リスクは、その特性から「戦略リスク」と「オペレーショナルリスク」に分類し管理しております。戦略リスクについては、短期の事業計画達成に関わるリスクから中長期の新興リスクまで経営に影響を与えるリスクを幅広く網羅しております。

・リスクマネジメント委員会は、GMCの諮問機関として、より精度の高い重点経営リスク候補を提案するため、委員会メンバーそれぞれの専門領域の知見・経験則を活かし、十分な議論のもと、リスクの識別・評価を行っております。

なお、当社グループのリスクマネジメントシステムとリスクマネジメント委員会については、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 (Ⅹ) リスクマネジメントシステムとリスクマネジメント委員会」を参照ください。

 

図1:重点経営リスク決定プロセス


 

 

■事業等のリスク(詳細)

(1) 当社グループの経営上重要なリスク

重点経営戦略リスク

リスク項目名:①デジタルサービスの会社としての収益構造の移行

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

事業構造の転換が進まず、印刷量の減少による業績影響を受けて、中期的に目指しているROE10%超の実現に遅れが生じることでPBR1倍を達成できないリスクがあります。

リスクの対策:

PBR低迷の要因は収益性の低さにあるという分析結果を基に、企業価値向上プロジェクトを立ち上げ収益構造の変革に向けて以下のテーマを推進しております。

・デジタルサービスの会社に適した本社機能への変革

・低収益事業、新規事業の選択と集中

・オフィスプリンティング事業の構造変革

・オフィスサービス事業の利益成長の加速

これらを実現するための人材ポートフォリオ最適化や新たなリソースを獲得するためのM&A人材の育成強化も進めております。

 

 

重点経営戦略リスク

リスク項目名:②デジタル戦略の推進加速

 

緊急度

影響度

リスクマネジメント

レベル

実践型デジタル人材

C

データ利活用推進

B

オペレーショナルエクセレンスの実現

B

リスクの説明:

デジタル技術とデータを活用するデジタル戦略の推進加速に向け、本社機能と各ビジネスユニットが一体となり、実践型デジタル人材の育成、事業におけるデータ利活用の推進、オペレーショナルエクセレンスの実現等を継続して行わなければ当社グループの業績、成長に影響を及ぼすリスクがあります。

リスクの対策:

グローバルでの競争激化の中でレジリエンスを高めていくために、デジタル戦略の推進加速が重要であり、例えば以下のような施策の強化に努めております。

・人材ポートフォリオマネジメント強化による、実践型デジタル人材リスキングプログラムの推進

・RSI*1基盤データを活用した事業貢献の拡大

・オペレーショナルエクセレンスの実現に向けた、基幹システム刷新のプロジェクトマネジメント強化、生産性向上に向けたプロセスDXの実践範囲の拡大

 

*1 RSI(RICOH Smart Integration):当社グループ共通のプラットフォーム。デジタルサービスの開発・運用に必要な基本機能を備えたクラウドの共通基盤。

 

 

重点経営戦略リスク

リスク項目名:③デジタルサービスの会社としてのR&Dプロセスの確立

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

デジタルサービスの会社として、マーケットイン型/オープンイノベーション型のR&Dプロセスにシフトできないことにより、技術投資における投資利益率の向上を実現できないリスクがあります。

また、AI応用等でのELSI*2対応力不足による企業信頼失墜・事業機会損失発生のリスクもあります。

リスクの対策:

R&D投資の注力領域への集中と、投資配分のガバナンス強化を進め、マーケットイン型/オープンイノベーション型のR&Dプロセスへの移行を進めてまいります。また、技術倫理についての推進体制のもと、倫理啓発活動に加え、価値創出プロセスにおける技術倫理活動等、更なる強化を図ってまいります。

 

*2 ELSI(Ethical, Legal and Social Issues): 倫理的・法的・社会的課題

 

 

重点経営戦略リスク

リスク項目名:④情報セキュリティ

 

緊急度

影響度

リスクマネジメント

レベル

NIST SP800-171準拠対応

C

セキュリティ対応

C

リスクの説明:

デジタルサービスの会社への変革に向け、様々なデジタルサービスの活用・提供、自社業務のデジタル化の実践等を行ってまいります。その上で、情報セキュリティを確保する体制・運用を重視し取り組んでおりますが、以下のようなリスクがあります。

 

・NIST SP800-171未準拠リスク

サイバー攻撃の増加・高度化により、情報保護強化が高い水準を求められる状況にあり、米国政府はNIST SP800-171、日本政府は防衛産業サイバーセキュリティ基準(NIST SP800-171同等)を策定しました。それらの基準が、民間企業との取引にも適用され始めております。未準拠の場合、情報保護に対する事業影響(企業ブランド価値の棄損やビジネス機会の喪失等)が発生する可能性があります。

 

・プロダクトセキュリティリスク

製品/サービスのセキュリティ対策不備と、その不備により他者への攻撃の踏み台として悪用される等のインシデントが発生する可能性があります。

また、インシデント発生の脅威からお客様や企業を守るため、各国がセキュリティに関する法規制を強化しておりますが、法規制の変化に追従できないことによる制裁金の支払いや社会的信用の低下による事業影響が発生する可能性があります。

 

・コーポレートセキュリティリスク

巧妙化・複雑化するサイバー攻撃により、当社グループ各社の業務システムの停止/誤作動や、データの改ざん/漏洩/破壊等の業務影響の発生により事業活動停止のリスクが想定されます。

 

・ファクトリーセキュリティリスク

従来、生産工場は外部との接続が制限されてきたことからサイバーセキュリティリスクは少なかったが、近年DXが進んだことでITネットワークによる外部接続が生産工程の必須要件となりつつあります。生産システム/設備を狙ったサイバー攻撃による停止/誤作動やデータの改ざん/漏洩/破壊等の発生による事業活動停止のリスクが想定されます。

 

・個人情報保護等、データプライバシーリスク

各国でデータプライバシー及び個人情報保護に関する法律(改正個人情報保護法やGDPR*3等)が施行され、自国外の事象にまで適用(域外適用)されております。グローバルで個人情報/個人データを取り扱うにあたり各国の法律に抵触した場合、制裁金の支払いや社会的信用の低下による事業影響が発生する可能性があります。

 

*3 GDPR(General Data Protection Regulation):欧州の個人情報保護に関する規制

リスクの対策:

各国、国策レベルで対策が求められてきている中、変化し続ける情報セキュリティ情勢を常に把握した上で、グローバルに活動拠点のある当社グループにとって適切な対策を検討・推進していくことを、最重要課題の一つと位置づけております。

 

・NIST SP800-171 未準拠リスク

世界中のお客様に対してセキュアな「製品・サービス」を提供するため、国際基準のセキュリティニーズに対応してまいります。ワークフローをデジタル化してお客様へ付加価値を提供する等、お客様の情報資産を守ることを目的とした「事業環境」の整備やモノづくりに取り組んでおります。

当社グループのNIST SP800-171への準拠の考え方は、単にNIST SP800-171の要件に対応することだけではなく、お客様の情報資産を守ることを取り組みの目的の本質としております。

お客様の事業環境において、お客様が守りたいと考える情報資産を取り扱う可能性がある当社グループの「製品・サービス」をサイバー攻撃から守るという目的と、その「製品・サービス」をお客様に提供するまでのバリューチェーンにおいて、取り扱う情報資産を守るという目的の2つがあります。

当社グループではデジタルサービスを提供する事業者として、お客様の情報資産を第一に配慮したセキュリティ活動を行い、NIST SP800-171への準拠を目指します。

 

 

 

・プロダクトセキュリティリスク

セキュリティに関わる品質マネジメントを一層強化すると共に、発売済みの製品/提供中のサービスに対しても脆弱性の確認を行い、脆弱性が発見された場合に適切に対応します。そのために、セキュリティ問題の専用窓口の設置、製品の脆弱性対応ガイドラインの整備、各国法規制の変化への対応等の活動を実施します。

 

・コーポレートセキュリティリスク

情報セキュリティ標準(ISO/IEC*4、NIST、経済産業省ガイドライン等)に基づき、当社グループのサプライチェーン全体の情報セキュリティを意識した体制を構築/強化すると共に、企画・設計・購買・生産・販売・サポートの各フェーズの業務システムに関わるセキュリティリスクを適時評価し、継続的に対策検討・実施しております。

 

・ファクトリーセキュリティリスク

当社グループ各社の生産工場においても情報セキュリティ標準(ISO/IEC、NIST、経済産業省工場ガイドライン等)に基づき、各生産工場に関わるセキュリティリスクを適時評価し、継続的に対策検討・実施しております。

 

・個人情報保護等、データプライバシーリスク

当社グループ内における個人情報取扱規程の改定や個人情報の取扱状況の調査・是正等、整備が進む各国の法律を踏まえた対応方針の策定と対策の実施を進めております。

 

*4 ISO/IEC(International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission):製品の品質、性能、安全性、寸法、試験方法などに関する国際的な取り決め

 

 

重点経営戦略リスク

リスク項目名:⑤人材の確保・育成・管理

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

デジタルサービスの会社への事業変革を成し遂げ、中長期的に成長を続けることは、人材に大きく依存しております。特に将来の経営人材の育成を継続して行わなければ、当社グループの業績、成長に悪影響を及ぼすリスクがあります。

リスクの対策:

変革・発展を導くリーダーを継続的に育成するため、将来のリーダー候補の選定やアセスメント、キャリア計画などを包括的に進めております。

また、社員のIDP*5の作成支援、IDPに基づいたキャリア形成、それに必要な自律的な学習環境を作ることで、自律的なキャリア形成を促進する取り組みを進めております。

 

*5 IDP(Individual Development Plan): 個人のキャリアゴール達成のための育成計画

 

 

 

重点経営戦略リスク

リスク項目名:⑥ESG/SDGsへの対応

 

緊急度

影響度

リスクマネジメント

レベル

人権

C

脱炭素

C

資源循環/生物多様性

C

リスクの説明:

ESG/SDGsへの対応は、当社グループの事業活動に対して中長期的影響を及ぼす新興リスクであり、特に人権、脱炭素、資源循環/生物多様性を重要なリスクと捉え、活動しております。

これらの対応を競合に遅れることなく進めていかないと商談機会の損失等ビジネスへの悪影響にとどまらず、社会的信用の失墜、ブランド価値の毀損等、会社に甚大な損害を与える可能性があります。

リスクの対策:

以下の対応を強化しています。

・RBAベースのESGリスクアセスメントを全生産拠点に展開及び重要サプライヤーのESGマネジメントを強化し、人権リスクの低減を進めております。

・社会動向、自社CO₂削減状況・エネルギー使用量等から年間再エネ導入戦略とロードマップを策定し、SBT*61.5℃ライン維持に向けた脱炭素活動を展開しております。

・画像製品における新規資源使用率のシミュレーション・進捗管理等を通じて着地予測を定期的に実施し、新規資源使用率の削減施策の推進に努めております。

・持続可能な原材料木材調達を行うための「当社グループ製品の原材料木材に関する規定」及び「用紙調達方針」を定め生物多様性への配慮に努めております。

 

*6 SBT(Science Based Targets):パリ協定が求める水準と整合した企業が設定する中長期的な温室効果ガス排出削減目標

 

 

重点経営戦略リスク

リスク項目名:⑦地政学リスク

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

・グローバルで事業活動を行っており、各国・各地域における政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりは事業に大きな影響を及ぼします。

・各国の法規制強化、国家間の牽制等の地政学リスクにより、ビジネス機会を損失するリスク等があります。

リスクの対策:

予防・対応プロセスを強化し、各国法規制情報収集の強化、重要部品別に複数仕入先の選定等、今後も円滑な事業活動を行うため、経営にて審議し、迅速かつ適切な対応に取り組んでまいります。

 

 

 

重点経営オペレーショナルリスク

リスク項目名:①製品の長期供給遅れ・停止

 

緊急度

影響度

リスクマネジメント

レベル

感染症

C

地震・噴火・台風

B

リスクの説明:

大規模地震、津波、洪水、感染症の拡大、サプライヤーの供給停止及び地政学リスクによる不測の事態により、以下のような事象が発生し、ビジネス機会を損失するリスクが考えられます。

・部品供給の遅延や停止

・製品工場の製造の遅延や停止

・輸送機関の遅延や停止

・販売会社への供給遅延や停止

リスクの対策:

リスク発生時を想定した予防・対応プロセスを強化しております。

・有事を想定した在庫の確保

・重要部品別に複数仕入先選定又は代替品の選定

・購買、生産等の領域ごとのアラートレベルの設定と運用

・リモートワーク等の新しい働き方を想定したBCP訓練

加えて、机上訓練のみならず一定の実践を常態的に行っております。令和6年能登半島地震においても対策が奏功し生産・供給を継続できました。今後も有効性の確認と改善を継続的に行ってまいります。

 

 

重点経営オペレーショナルリスク

リスク項目名:②国内外の大規模な災害/事件事故

 

緊急度

影響度

リスクマネジメント

レベル

国内:地震・噴火

C

国内:風水雪害

C

国外:大自然災害・事件事故

C

リスクの説明:

国内外で発生する大規模な自然災害・事件・事故において、人的/物的被害が生じ、経営に著しい影響を及ぼすリスクを想定しております。

リスクの対策:

当該リスク対応において、以下のような対策を行っております。

 

国内

・災害発生時に適切な対応が図れる仕組みの構築及び継続的な見直しを行っております。

・災害による被害の発生を防ぎ、万が一災害が生じた場合の被害を最小限におさえるために、国内の当社グループ合同での災害対策訓練や事業所単位での防災訓練(夜間避難訓練含む)、定期的な設備点検等を継続的に実施しております。

・水害リスク対応として、大規模な水害発生時の復旧行動計画を策定し、計画に基づいた机上訓練や実地訓練を行っております。また、比較的高いリスクが想定される拠点に対する水害対策工事の実施、並びに水害リスク情報の可視化ツールの運用を開始する等、当社グループ全拠点で水害情報の施策立案を展開すると共に、従業員の対応力向上を図っております。

・噴火リスク対応として、前事業年度より富士山噴火への対応を強化し、当社グループ拠点に対する影響に基づく対策を実施しております。

 

国外

・海外の関連会社を対象とした危機対応標準を制定し、自然災害・事故・事件が発生した場合の対応基本方針を定めると共に、各組織の役割及び責任を明確にしております。

・海外関連会社の重大な自然災害リスクを把握し、第三者の情報と差異があった場合は必要な対応を指示、危機発生時の報告ルートを確認、BCP構築・運用に課題がある会社の支援を実施する等、海外関連会社の危機管理対応力を強化しております。

 

 

 

重点経営オペレーショナルリスク

リスク項目名:③人事関連コンプライアンス対応

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

人事関連の各種コンプライアンス違反が発生し、社会的信用を失墜するリスク等が考えられます。

リスクの対策:

・コンプライアンス遵守(人権・ハラスメント問題を含む)のための教育を実施しております。

・コンプライアンス違反を発見した際の相談・通報の啓発を行っております。

・マネジャー向けの労務管理教育を実施しております。

・グループ全体での労働関連法規改訂内容と対処の共有をしております。

・グループ全体での人事関連コンプライアンス違反に関する相談窓口の設置及び事例の共有をしております。

 

 

重点経営オペレーショナルリスク

リスク項目名:④グループガバナンスに関するリスク

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

社内外の環境変化が激しい時代において、健全な成長を維持するためにグループガバナンスの強化が非常に重要であると考えております。本社のガバナンスが適切に機能していない場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

・新規事業や外部環境の変化に伴う新たなリスクに対し、グループの方針策定や対応が迅速に行われず、倫理やコンプライアンス違反につながる可能性があります。

・当社グループのガバナンスの整備・運用状況、業務プロセスに対する本社の管理監督が不十分な場合、不正や不祥事等によるブランドイメージや信頼性の低下、そしてグループ全体の持続的な成長や企業価値の向上に対するリスクが高まることになります。

リスクの対策:

グループガバナンスのリスクを低減するために、本社機能とビジネスユニット、当社グループ各社のガバナンス体制を再設計しております。ガバナンス機能の更なる強化を進めつつ、デジタルサービスの会社として適切な本社機能の規模・役割に再整備していきます。

本社主管管理部門によるグループ会社のガバナンスについては、2024年7月1日設立予定のエトリア株式会社を含め個別事業の特徴やリスクマネジメントの成熟度に応じて、適切な指導及び管理監督を行ってまいります。また、テクノロジーの活用については、翌事業年度にシステム導入を完了し、グループ全体で発生したコンプライアンス違反や不正行為、内部通報等からの傾向分析を行い、各組織に対しデータに基づく、より効果的な対応アクションを提案していきます。

 

 

(2) 事業領域固有の重要なリスク

リスク項目名:①オフィスプリンティング市場における環境変化

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

オフィス向け複合機やプリンター市場において、リモートワークの増加やペーパーレス化に伴い印刷量が減少し、業績に影響を与える可能性があります。

リスクの対策:

既存のオフィスプリンティング事業の顧客基盤の維持・拡大に取り組み、社内プロセスはSCMの徹底効率化やオペレーショナルエクセレンスにより、更なる収益性の向上を図っております。合わせてオフィスサービス分野においては、ビジネスプロセスオートメーション領域とコミュニケーションサービス領域を成長領域と定め、ストック収益の積上げを加速させることでオフィスプリンティング領域のリスクヘッジを図っております。

また、複合機を含むエッジデバイスの供給体制については、他社との協業を進めて最適な生産・開発体制を構築することで競争力のある商品を提供し、利益率の向上によるリスクヘッジを行っております。

 

 

リスク項目名:②デジタルサービスの成長に向けたリソース確保

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

デジタルサービスの成長に向けてはコンサルティング・インテグレーションができるデジタル人材の確保が必要要件の1つとなっております。慢性的な人手不足を背景にしたIoTやAIを活用した業務改革の潮流はより一層強まっており、デジタル人材を確保する動きがより高まっているため十分に確保できない可能性があります。

リスクの対策:

優秀なデジタル人材の流出防止及び獲得の為に、プロフェッショナル人事制度の構築等の人事制度改革を進めております。また、人的資本戦略を策定し、グループ全体の社員のスキルの底上げに加え、デジタルアカデミーやリスキリングプログラムの策定・実施を通じて、プロセスDXの実践人材やデジタルエキスパート人材の育成に努めております。

 

 

リスク項目名:③商用印刷事業の成長リスク

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

リモートワークやペーパーレスの拡大により企業内の大量印刷需要の減少や印刷量の集約・統合により、商用印刷事業領域における企業内印刷事業の業績が下振れするリスクがあります。

リスクの対策:

企業内印刷事業での業績下振れリスクを低減するために、未開拓の欧米代理店や新興国の開拓を進めると共に、事業ポートフォリオマネジメントの実施により今後も市場成長が見込まれている商用印刷事業の高付加価値領域やインクジェット技術・製品へのリソース投入を強化し、事業構造変革を進めております。

 

 

 

リスク項目名:④サーマル市場の成長鈍化、収益性の低下

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

サーマル市場は世界的な人口増加に伴う消費財の増加により堅調に成長しているものの、コモディティ化が進行しております。グローバルに事業を展開する中、各地域の景気回復の遅れにより成長が鈍化し、収益性悪化や過剰在庫・設備稼働率悪化となる可能性があります。

リスクの対策:

市場動向のモニタリング体制を強化し、需要予測の精緻化と日常管理体制の強化を進めております。各地域の景気動向による需要の増減がある中、グローバルの販売網・生産インフラを活用し最適な地域での生産・供給オペレーションを実施することで業績変動リスクの最小化に努めております。

また、包装トップシールに直接印字するスマートパッケージ事業の拡大等独自の技術で差別化をすることにより、社会課題の解決に貢献すると同時に収益の安定化を図っております。

 

 

 

(3) その他各機能領域のリスク

リスク項目名:①のれん、固定資産の減損

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

B

リスクの説明:

企業買収の際に生じたのれん、事業用の様々な有形固定資産及び無形資産を計上しております。これらの資産については、今後の業績計画との乖離や市場の変化等によって、期待されるキャッシュ・フローが生み出せない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクの対策:

資産の取得に際して、投資金額及び内容に応じた所定の手続きを実施し、投資対効果の検討等様々な点を考慮し実行の是非を決定しております。また、外部への投資案件は、GMCの諮問委員会である投資委員会にて、財務、戦略、リスク視点での妥当性を審議し、GMCへ見解を上申しております。決裁された投資案件に関して、同委員会が進捗モニタリングを定期的に行うことによりリスクへの対策を講じていく仕組みを構築しております。

 

 

リスク項目名:②繰延税金資産

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

税効果会計を適用し、将来減算一時差異及び繰越欠損金等に対して繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、事業計画を基礎とした将来の課税所得に対して回収可能性を検討しております。将来の課税所得の見積りが、現在の課税所得の見積りよりも低下した場合、繰延税金資産の回収可能額が減少し、繰延税金資産を減額することになり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクの対策:

繰延税金資産の評価にあたり、繰延税金負債の実現予定時期、将来の課税所得の見積り及び税務戦略を考慮しております。将来の課税所得の見積りに関しては事業計画を基礎として、各ビジネスユニットが業績の進捗をモニタリングし、計画の達成を阻む要因があれば、自律的かつ迅速に対応できる体制を構築しております。

 

 

 

リスク項目名:③知的財産権の保護

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

B

リスクの説明:

知的財産権を重要な経営資源と捉え、現在及び将来の自社事業とそれを支える技術等の保護、差別化とその拡大のために、特許権、意匠権、商標権等の知的財産権を獲得しておりますが、競合他社が同等の技術等を開発して独自性が低下するリスクや、各国特許庁の審査で狙いどおりの権利獲得ができず十分な保護が得られないリスクがあります。また、当社グループが第三者の知的財産権を侵害するとして、第三者から、販売の差し止めや損害賠償金の支払い等を求める警告を受けるリスクや、訴訟を提起されるリスクがあります。更に、新規事業立上げで、他社との協業、共同研究や共同開発が活性化していることに伴い、知的財産権に関する契約が増えておりますが、当該契約でトラブル等が発生すると、自社事業に悪影響を与えるリスクが大きくなります。

リスクの対策:

特許等の出願前に先行技術調査を徹底すると共に、各国の知的財産に係る法律、審査基準やプロセスを把握し、知的財産権獲得の精度向上に努めております。また、自社製品・サービスを市場に提供する前に、第三者の知的財産権の調査と、自社製品・サービスと第三者の知的財産権との対比検討を徹底しております。第三者の知的財産権を侵害するリスクがある場合、外部の弁護士や弁理士による鑑定、必要であれば設計変更、ライセンス交渉やライセンス取得を行い、第三者との係争リスクを低減しております。

「知的財産権の保護」を業績に影響を及ぼすリスクとして重要視し、過去に発生した、知的財産権に関する契約トラブル事例を形式知化し、トラブルの予防とリスク低減をしております。

 

 

リスク項目名:④製品品質・製造物責任

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

B

リスクの説明:

当社グループが製造・販売する製品に、

・重大な安全性問題(人損・焼損)

・安全・環境法規制問題

・品質問題の長期化

等が発生することで、お客様の信頼や社会的信用を失墜させ、企業ブランドや製品ブランドが毀損され事業継続が困難になるリスクが考えられます。

リスクの対策:

「製品品質・製造物責任」に対する予防・対応プロセスを強化しております。

・機器の信頼性・安全性の向上に向け、故障・事故が生じるメカニズムの分析精度を高め、問題の再発・未然防止策を開発過程に反映し、リスク低減につなげております。

・万が一、問題が発生した際に市場対応が迅速かつ確実に行われるために、体制を整備しております。

・各国における安全・環境法に準拠した製品をお客様に提供するため、現地と密に連携をとり適切な標準・ガイドの制定、定期的な見直しを実施しております。

 

 

 

リスク項目名:⑤公的な規制への対応(輸出入管理)

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

B

リスクの説明:

事業活動を行う中で、例えば以下のような要因により会社に甚大な損害を与えるリスクがあります。

・輸出入関連法違反に対する輸出停止措置等の行政制裁による生産・販売への影響、社会的信用の失墜による取引の機会損失、罰金や刑事罰

・国際的有事等の外的要因による各国輸出規制法違反

リスクの対策:

・代表取締役 社長執行役員をトップとし、専任組織である輸出入管理部門を事務局としたグループ輸出入委員会体制によるガバナンスの強化を行っております。

・グループ役員及び社員への定期的な教育、事業部門への輸出入管理に特化した内部定期監査、関連部署への法令改定情報の迅速な周知を行っております。

・専任部隊による輸出前の該非判定・顧客審査含む必要審査の実施による法令の厳格な遵守等を行っております。

 

 

リスク項目名:⑥公的な規制への対応(独占禁止法/競争法)

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

B

リスクの説明:

事業活動を行う中で、独占禁止法及び競争法の違反が発生した場合、課徴金納付命令等の行政当局による処分や刑事罰、官公庁との取引停止、社会的信用の失墜によるビジネスへの悪影響等、会社に甚大な損害を与えるリスクがあります。

リスクの対策:

独占禁止法及び各国競争法の遵守徹底のため、各地域の法務部門が主導し、各国競争法の遵守、教育活動及び発生時対応の強化に努めております。

 

 

リスク項目名:⑦公的な規制への対応(環境)

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

B

リスクの説明:

事業活動を行う中で、各種環境関連法の違反が発生した場合、行政処分等による生産への影響、課徴金の負担、刑事罰、社会的信用の失墜やブランド価値の毀損によるビジネスへの悪影響等、会社に甚大な損害を与えるリスクがあります。

リスクの対策:

環境マネジメントシステムを構築し、定期的なアセスメントによる環境関連法の遵守徹底と共に、規制変化等のタイムリーな把握・対応を行っております。また、M&Aにおいても環境デューデリジェンスを適切に実施しリスクの未然防止を行っております。

収集した環境パフォーマンスデータを積極的に開示すると共に、主要データに関しては第三者検証を受ける等、透明性・信頼性の確保に努めております。

 

 

 

リスク項目名:⑧為替レートの変動

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

C

リスクの説明:

生産活動及び販売活動の相当部分を日本以外の米国、欧州及び中国等その他地域で行っており、事業活動において以下のような為替レートの変動による影響を受けます。

・海外子会社の現地通貨建ての業績が各会計年度の平均レートを用いて円換算されていることによる、連結損益計算書及び連結包括利益計算書への為替レート変動

・現地通貨建ての資産・負債が各決算日現在の為替レートを用いて円換算され、連結財政状態計算書に計上されることによる、資産・負債額への為替レート変動

リスクの対策:

・為替変動に関して、米ドル、ユーロ及び円等の主要通貨の短期的な変動の影響を最小限に抑えるため、金融機関等と為替予約等のヘッジ取引を実施しております。また、ヘッジ取引を行うことのできる会社又は組織は限定されており、それらは財務ルールとして徹底されております。

・グループ全体として決済におけるネッティングを最大限に行うことにより、為替リスクを最小化しております。

・海外子会社の資産・負債の通貨マッチングを実施しております。

 

 

リスク項目名:⑨確定給付制度債務

緊急度

影響度

リスクマネジメントレベル

B

リスクの説明:

確定給付制度債務及び年金制度の資産に関し、一定の会計方針に基づいてこれらの給付費用を負担し、政府の規制に従って資金を拠出しております。

現時点では、直ちに多額の資金は不要ですが、株式や債券市場等の予測し得ない市況変動により制度資産の収益性が低下すれば、追加的な資金拠出と費用負担が必要になるリスクがあります。

リスクの対策:

政府の規制や人材戦略・人事制度を踏まえ、適宜制度の見直しを検討・実施しております。

 

 

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

株主還元方針については、総還元性向 50%を目安とし、配当利回りを意識した継続的な増配と機動的な自己株式取得を行う方針です。配当については、利益拡大に沿った継続的な増配を目指します。自己株式の取得は、経営環境や成長投資の状況を踏まえつつ、機動的に実施し、1株当たり利益(EPS)の向上を図っていきます。

当事業年度の配当につきましては、中間配当といたしまして1株当たり 18円、期末配当につきましては、1株当たり 18円とし、年間 36円を実施いたしました。

当社は、中間と期末の年2回の剰余金の配当を行うこととしており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。

当社は、「毎年9月30日を基準日として、取締役会の決議によって、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

 

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月8日

取締役会決議

10,970

18.0

2024年6月20日

定時株主総会決議

10,863

18.0