リスク
3【事業等のリスク】
(1)当社グループにおけるリスク管理体制について
当社グループでは、グループ全体における事業リスクを管理するため、各部署やグループ各社の担当責任者を構成員とするリスク管理委員会を設置しております。リスク管理規程に基づき、個々のリスク(コンプライアンス、経営戦略、業務運営、環境、災害、人的資本、情報セキュリティなど)に対処する責任部署を定めるとともに、グループ全体のリスクを網羅的・統括的に管理する体制としております。各部署やグループ各社は担当業務に関するリスクの抽出を行い、優先的に対応すべきリスクと対応策を検討し、内部統制推進部署(同委員会事務局)へ報告しております。内部統制推進部署は報告されたリスクを総括し、同委員会へ報告しております。なお、経営上の重大なリスクへの対応方針その他リスク管理の観点から重要な事項については、取締役会へ報告しております。
(2)主要なリスクについて
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末において当社グループが判断しているものです。
① 印刷関連市場(紙媒体)の縮小
当社グループの事業は、印刷事業および印刷機械・印刷資材の販売など、国内向け印刷関連市場が中心です。デジタル化の進展やメディアの多様化が進む中で、印刷関連市場(紙媒体)は長期にわたり縮小し続けており、今後もその傾向が継続することが想定されます。印刷関連市場(紙媒体)の縮小が想定を超えて急激に進んだ場合には、操業度の低下により労務費や減価償却費などの固定費負担が高まるなど、業績に大きな影響を与える可能性があります。
印刷関連市場(紙媒体)の縮小は長期にわたり継続的に続いており、かつ近年ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の拡大や断続的に実施されている印刷用紙の値上げによりその動きがさらに加速しているため、最優先で解消するべきリスクとして認識しております。
当社グループとしては、半導体関連マスク事業の強化や新事業開発の強化により、紙媒体への依存度が高い従来型ビジネスモデルからの転換を急ぐとともに、生産設備(その種類・能力と配置)の最適化により、市場縮小による受注減少に柔軟に対応できる低コスト生産体制の整備を進めております。
② 事業の繁閑
当社グループの事業は、国内向け印刷関連市場が中心で、かつカタログ等の商業印刷を主力としていることから、顧客の事業年度に合わせた仕事(4月、1月のタイミングで更新される印刷物や期末の予算消化案件)が多く、特に第4四半期に売上・利益が集中する傾向があります。連結ベースで、第4四半期が年間に占める割合は、過去10会計年度の平均で、売上高で28%、営業利益で43%となっており、同時期に何らかのビジネス阻害要因が発生した場合は、業績に大きな影響を与える可能性があります。2011年3月に発生した東日本大震災、そして2020年3月期末の新型コロナウイルス感染拡大による広告宣伝活動の自粛は、業績に相当程度影響を与えました。
当社グループとしては、顧客にワンストップソリューションを提供するビジネスモデルを確立し、年間を通して安定的に継続受注できるベース案件を増やすことで事業の閑散リスクを低減してまいります。
③ 受注単価の低下
印刷業界においては、長期にわたり縮小し続けている紙媒体需要に対して供給能力過剰の状態が続いており、それに伴い受注単価は下落または低位安定の状態が続いております。今後印刷関連市場(紙媒体)の縮小が想定を超えて急激に進んだ場合には、価格の下落がさらに進む可能性があります。
当社グループとしては、生産性の向上や仕入コストの削減を図るほか、社員が持つ知識・ノウハウ、そしてITの活用による価格競争力の向上、生産設備(その種類・能力と配置)の最適化による低コスト生産体制の構築、新事業開発の強化などの各種対策を行うことにより対応しております。
④ 原材料等の価格高騰
印刷用紙、インク、印刷用の版など、当社グループが使用する原材料等は、世界情勢の変化、市況やエネルギー価格、為替レート、物流経費などにより変動します。特に主要材料である印刷用紙は原材料全体に占める割合は大きく、価格変動による影響が最も大きくなります。また、製紙メーカーの減産による市場流通量の減少も価格高騰に影響を与えます。印刷用紙や資材以外にも、電気・ガスなどのエネルギー価格の高騰も生産活動に影響を与えます。
原材料等の高騰に対しては、販売価格への転嫁や生産性向上などのコスト低減や経費削減で吸収すべく対応しますが、対応しきれない場合は、上記のとおり業績に影響を及ぼす可能性があります。販売価格への転嫁につきましては顧客との交渉を行っておりますが、顧客における広告宣伝予算には限りがあり、交渉結果次第では印刷部数や頁数の減少による売上減少、ひいては紙媒体以外の広告宣伝媒体へのシフト(紙離れ)を助長する可能性があります。当社グループとしては、①印刷関連市場(紙媒体)の縮小に記載のとおり、紙媒体への依存度が高い従来型ビジネスモデルからの転換を急ぐことで、その影響を低減することをめざしております。
⑤ 大口顧客の動向
当社グループには、依存度の高い大口顧客がいくつかあります。継続的な取引関係は当社グループの強みである一方、それら大口顧客の属する業界の好不調、ビジネスモデルや取引方針の変更、企業統合等により取引額が大きく変動する可能性があります。
当社グループのコア事業である印刷事業はその特性として、幅広い業界・業種に顧客を持っており、新規顧客開拓先においても同様に業界・業種を問いません。また、デジタルマーケティングを活用して、当社グループが拠点を構えていない遠隔地の顧客とも商談機会を得ることが可能となりました。これらの特性やデジタル技術を活かした新規顧客開拓活動を行いまして、将来のロイヤルカスタマーを継続して獲得することにより、特定顧客の動向に左右されない事業基盤の確立をめざしております。
⑥ 人材の確保・育成
当社グループが持続的に事業を発展させるためには、営業、製造、開発、管理等、それぞれの分野に精通したプロフェッショナル人材や管理能力に優れたマネジメント人材を継続的に確保、育成していくことが必要となります。また、今後拡大が期待される海外事業をより一層強化するためには、優秀な現地人材を採用するとともに、事業戦略に沿ったグローバル人材の確保も必要となります。しかしながら、優秀な人材の獲得は競争が厳しく、特に国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少もあり、優秀な人材の獲得や育成が計画通りに進まない場合や優秀な人材が流出した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
その対策として、新卒採用や中途採用を積極的に進めるとともに、「竹田iPグループ 人権方針」および「竹田iPグループ 人的資本に関する方針」を制定し、人材育成の充実を図るほか、多様な社員が活躍できる職場環境の整備を進めております。また、グローバル人材の確保におきましては、外国人留学生を採用し、日本と海外を結ぶ現地管理者として育成するほか、現地人材の採用を積極的に進めてまいります。
⑦ 新規事業に関わるリスク
印刷物(紙媒体)の需要の縮小と、価格の低下・低位での推移が今後も継続することが想定されております。市場環境の悪化や競争の想定以上の激化、M&Aの失敗などにより、印刷・物販事業に次いで柱となるべき事業が思うように育たない場合、会社業績が伸び悩む可能性があります。
当社グループとしては、半導体関連マスク事業の強化や新事業開発の強化により、紙媒体への依存度が高い従来型ビジネスモデルからの転換を急いでおります。
その取り組みにより、半導体関連マスク事業では2013年の株式会社プロセス・ラボ・ミクロン、2016年の東京プロセスサービス株式会社の子会社化を実現し、近年では両社の海外事業進出をサポートしております。
今後もコア事業である印刷事業との関連性が高く、実現性が高いこれらの事業の拡大について、M&Aの検討を含め積極的に進めてまいります。
⑧ 売掛債権の未回収
当社グループでは、与信管理と債権の回収管理を重視し貸倒れの極少化に努めておりますが、景況や産業構造の変化に伴い、顧客の倒産などによる貸倒れが生じるリスクは常にあるものと認識しております。貸倒れが一定規模以上で発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、新規顧客とは取引開始時にて信用調査を行い、さらにその後も定期的に信用調査を行い、与信限度額の設定・見直しを行っております。また、既存顧客との取引状況を毎月確認しており、信用状況に変化が生じた場合は、ファクタリングなどの債権保証サービスの活用や取引停止などの対策を速やかに講じております。
⑨ 情報セキュリティ
当社グループでは、多くの顧客情報および顧客からの受注案件にかかる顧客の機密情報を取り扱っております。予期せぬ事情により情報の流出、不正使用など情報セキュリティにかかるインシデントが発生する恐れがあります。また標的型攻撃メール等によるウイルス感染のリスクが高まっており、情報システムが一定期間機能不全に陥る事態も想定する必要があります。これらインシデントや情報セキュリティ対応のために多額の費用が発生し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼすほか、社会的信用を失う可能性があります。
その対策として、プライバシーマークやISO27001の認証取得を通じた諸規程の整備と運用、メール誤配信防止のチェックシステムの活用、専用ルームの設置や警備会社との提携、専用のデータセンターの利用、入退室のセキュリティシステムの導入、自社制作のガイドライン「ITセキュリティハンドブック」を活用した社員教育を行うほか、インシデント費用の発生に備えてサイバー保険に加入するなど、万全を期しています。
⑩ 気候変動のリスク
気候変動による影響が深刻化しており、世界が低炭素社会に移行する際の「移行リスク」として、温室効果ガス排出規制などの法規制への対応にて、設備投資や技術開発に関する追加費用が発生する可能性があります。さらに、これらの法規制に対応した製品・サービスへの顧客ニーズの高まりに対応する必要が生じ、要求水準を満たさない場合は販売機会の損失につながる恐れがあります。また、気候変動に伴う自然災害の発生による「物理的リスク」として、工場における生産停止やサプライチェーンの寸断による製品供給が停滞する可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの活動や経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
気候変動リスクへの対応としては、当社グループでは「竹田iPグループ サステナビリティに関する方針」および「竹田iPグループ 環境方針」にて今後の取り組む課題として「カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み」を明文化するとともに、長期的な視点でリスクや課題を分析し、対策を進めてまいります。
⑪ 災害の発生
地震や水害などの大規模な災害が発生した際には、電力の供給停止や物流網の寸断など、社会的インフラに重大な被害が及ぶ可能性があります。原材料の仕入先や協力工場を含めた生産・流通体制が維持できない場合には、当社グループの活動に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループでは、発生時期が予測できないこれらの災害リスクに対しては、生産拠点の分散化と、製造設備など主要設備に防火・耐震対策を施すとともに、BCP(事業継続計画)を策定するなどの対策を講じております。
⑫ 感染症の世界的蔓延(パンデミック)
新型インフルエンザなど、人類が免疫を持っておらず、治療薬やワクチンが存在しないような感染症の世界的蔓延(パンデミック)が発生した場合は、当社グループ従業員の感染による操業停止および出荷遅延が生じる可能性があります。また、顧客における操業停止や販売促進活動の自粛による受注減少、仕入先や協力工場からの供給が停滞するなど、当社グループの活動や経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは社員および家族の健康と安全に配慮しつつ、顧客への製品やサービスの提供に影響を及ぼすことがないよう、感染予防と事業継続に取り組んでいます。具体的には、緊急対応計画書を策定し、定期的な検温や消毒の徹底による感染防止に努めるほか、時差出勤やテレワークなどの柔軟な勤務形態やTV会議の推進、ITを活用した非接触型の営業活動の確立などによりリスクを最小化します。
今後は、今回のコロナ禍で得られた経験や知見も活用して感染防止対策のレベルアップを図るとともに、新たな生活様式や市場の変化に対して柔軟に対応することにより、経営成績等への影響を極小化するよう努めてまいります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様へ安定的な配当を行うことを基本方針としております。業績、配当性向に加え、企業体質強化・新事業開発のための内部留保にも配慮しながら、総合的に勘案する方針をとっております。このうち内部留保金は、中長期的な観点から成長が見込まれる分野の事業拡大に向けた設備投資、M&A、研究開発投資などを中心に、有効活用してまいりたいと考えております。
当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨を定款で定めており、中間配当と期末配当の年2回の配当を行うことを基本方針としております。当事業年度における1株当たりの配当金は、中間配当金10円(普通配当8円、特別配当2円)、期末配当金16円(普通配当14円、創業100周年の記念配当2円)の年間配当金26円といたしました。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月13日 |
82 |
10.00 |
取締役会決議 |
||
2024年5月14日 |
132 |
16.00 |
取締役会決議 |
なお、2024年5月14日に公表した中期経営計画(2024年度~2026年度)において、株主還元の強化を重点施策の一つと位置づけ、これまでの安定的な株主還元を堅持しつつ、より高水準の配当を目指し、配当実施金額に下限を設けるとともに、中期経営計画の期間に渡り下限設定額を逓増(2024年度 30円、2025年度 33円、2026年度 37円)させる方針といたしました。目標とする指標として連結配当性向30%以上を定め、1株当たりの配当予想は2024年度 33円、2025年度 37円、2026年度 47円の計画といたしました。また、十分な内部留保を確保できた場合は、自己株式の取得なども含め、株主コストを意識した株主還元を一層強化してまいります。