リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの事業、財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。記載内容のうち将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
なお、当社は、リスクマネジメント委員会を設け、これらの中から定期的に経営戦略に伴うリスクの分析・評価を行い、リスク対応策を講じることで全社的なリスクを低減し、危機の発生を回避、もしくは危機発生時の損失を最小化しています。もし、危機を認知した場合は、クライシスマネジメント規程に定められた方針に則り、速やかに対応いたします。
(1)グローバルでの事業拡大に伴う、バリューチェーンにおけるリスク
当社グループは、グローバルな事業展開をしており、更なる市場拡大を目指しています。生産につきましても、OEM生産を手掛ける多くの海外工場と協力して、東南アジア及び中国など各地域での生産を進めています。
グローバルでの事業拡大には、バリューチェーンである調達、生産、販売において、以下に掲げるリスクが内在しており、経営戦略や業績に影響を及ぼす可能性があります。
① サステナビリティ(人権・環境)に関するリスク
a.当社グループは、生産委託先工場に対し、各国及び国際的な労働基準を遵守し労働者に公正で安全な労働環境を提供するよう厳しく要求しています。しかし、当社の生産委託先工場が、人権NGOから労働基準の非遵守を指摘された場合、事実関係に関わらず、当社グループの企業イメージを損なうリスクがあります。
b.温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーへの転換などの気候変動への対応が遅れた場合や、廃棄物排出量の削減、資源循環の取り組みなどが適切に行われなかった場合、当社グループの企業イメージに対する社会的な信用低下を招く可能性があります。また、自然災害・気候変動により、スポーツ時間の減少や生産委託先工場の操業停止、原材料価格の変動など、当社事業・財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
c.当社グループは、製品及び製造工程の有害・制限化学物質管理を進めていますが、生産委託先工場や原材料サプライヤーで有害・制限化学物質の非遵守使用があった場合、業績や企業イメージに悪影響を及ぼす可能性があります。
② サプライチェーンに関するリスク
当社グループは、東南アジアを中心とした委託工場での生産から各販売地域を結ぶサプライチェーンにおいて、自然災害や事故等があった場合の物損に備えて、物流保険に加入しております。一方で、サプライチェーンが寸断され、商品の到着遅延による売上減があった場合は、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 信用リスク
当社グループはグローバルで販売チャネルの管理を強化していますが、代理店や小売店の経営破たんや債務不履行があった場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)季節的変動に係るリスク
当社グループが取扱う製品には、季節性の高いものが含まれており、季節により業績に偏りが生じる場合があります。そのような製品については、需要見通しの上で仕入・販売計画を策定しておりますが、気候条件による季節的な影響を正確に予測することは困難であり、実際の気候が予測と異なることにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)外部への生産委託に関するリスク
当社グループは、製品の生産の一部を外部の協力工場に委託しております。これらの外注先の選定にあたっては、技術力や供給能力などについて、あらかじめ厳しく審査を行い、信頼できる取引先を選定しておりますが、納入の遅延や製品の不具合をはじめとした、生産面でのリスクが生じる可能性を否定できず、外注先の生産能力不足や自然災害による外注先の操業停止などにより、当社グループが十分な製品供給を行えない可能性があります。
(4)原材料の仕入価格の変動に関するリスク
当社グループが生産委託先工場に生産を委託しているフットウエア製品の原材料の仕入値は国際的な原油価格と関係があるため、原油価格の大幅な価格変動が数ヶ月後の原材料価格動向に影響を及ぼす傾向があります。フットウエア製品は、売上高の大部分を占めており、国際原油価格に著しい変動が発生した場合には、仕入価格も変動し当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)製品の物流価格の変動に関するリスク
当社グループが生産委託先工場から販売子会社の市場に製品を輸送する場合の費用は、国際的な物流価格と関係があるため、物流価格の大幅な価格変動が製品仕入価格動向に影響を及ぼす傾向があります。
主に東南アジアに生産委託工場を有するフットウエア製品は、売上高の大部分を占めており、国際物流価格に著しい変動が発生した場合には、仕入価格も変動し当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、リスクマネジメント委員会の下部組織として、情報セキュリティ委員会を設け、セキュリティ専任チームが情報セキュリティの強化を進め、個人情報や営業秘密等の情報管理に努めています。しかし、高度化したサイバー攻撃により、これらの情報が万一漏洩・流出した場合、又は、販売オペレーションが停止した場合には、お客様などからの損害賠償請求、売上の機会損失、及び信用の失墜等により、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)システム障害に関するリスク
当社グループのサービスの多くは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じて提供されています。当社グループは、適用できうる限りの最新の技術と対応を行い通信ネットワークが正常に機能し、サービスの提供に支障がないよう努めています。しかしながら、かかる対応策によっても通信ネットワーク若しくはコンピュータシステム上のハードウエア又はソフトウエアの不具合、欠陥といった当社グループの情報システムに脆弱性又は不備が生じる可能性があります。加えて、当社サービスの不正な利用、重要なデータの消失、機密情報の不正取得などが発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)個人情報の取扱いに関するリスク
当社グループは、グローバルレベルで顧客や従業員の個人情報を保有しています。欧州及び各国における個人情報保護法の施行に対応するため、社内体制とプロセスを整え、当該部署への教育を強化するなどしてリスクを低減しています。特に欧州に関しては、EU一般データ保護規則違反により万一制裁金が課された場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある為、当社グループ共通ルールを定めた拘束的企業準則(Binding Corporate Rules)をEU当局に申請しています。
(9)知的財産権に関するリスク
当社は、国内外において、多くの特許権・商標権等の知的財産権を所有しております。知的財産権に関する侵害事件の発生など、商品開発への悪影響やブランドイメージの低下等を招く可能性があります。
知的財産権に関する侵害訴訟は解決までに相当な時間と費用を要し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)マーケティング活動に関するリスク
当社グループはブランド価値向上のため、積極的なマーケティング活動を実施しております。
当社グループの発信内容や、当社グループが起用した方々の言動に対する社会的批判がその真偽に関わらず拡散し、当社グループのブランド価値や企業の信用が低下し、財務的、又は非財務的な損失を被る可能性があります。
(11)人財育成及び確保に関するリスク
当社グループにとって人財は経営の基盤であり、特にグローバルな事業活動を一層進める中で、それらの環境で活躍できる人財の育成・確保が急務であり、国内外での積極的な採用活動、研修・教育の充実、コア人財の流出の防止などの施策を講じています。これらの施策にも拘わらず、当社グループの人財育成・確保、適材適所の配置が計画通り進まなかった場合、長期的視点から当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12)競合と技術革新に関するリスク
当社グループの事業に関連する製品は、国内外の市場で競合他社との激しい競争にさらされております。当社グループの競合先には、研究開発や製造、販売面で有力な企業が存在しております。現在、当社グループのブランド力及び製品は、こうした競合先との競争力を十分に有しておりますが、このことが、将来においても競合他社に対し有利に競争し続け得ることを保証するものではありません。また、取引先における技術革新によって当社製品の販路が縮小され、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13)新規事業に係るリスク
当社グループが新規事業に取り組む場合には、事前に十分な検討を行った上で事業計画が策定され、取締役会における承認の上で行われます。新規事業の展開には先行投資が必要となるケースが多く、当該事業が安定して収益を計上するまでには一定の時間を要することが予想されるため、一時的に当社グループの利益率が低下する可能性があります。
(14)M&Aに関するリスク
当社グループは新規市場への展開を行う中で、M&Aをその有効な手段のひとつとして位置付けており、今後も必要に応じてM&Aを実施する方針です。M&Aに際しては、対象企業のビジネス、財務内容及び法務等について詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスクの低減を図る方針でありますが、これらの調査の段階で確認又は想定されなかった事象がM&Aの実行後に発生又は判明する場合や、M&A実施後の事業展開が計画通りに進まない可能性があり、その場合は当社グループが当初期待した業績への寄与の効果が得られない可能性があることも考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(15)経済環境・消費動向の変化のリスク
当社グループが事業活動を展開している各国における経済環境や消費動向の変化により、売上の減少や過剰在庫が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)海外拠点での事業活動に係るリスク
当社は、事業活動の相当部分を米国、欧州及び中国を含むその他地域で行っております。こうした海外市場で事業を行うにあたって、以下のような特有のリスクがあります。
・ゼネスト等の労働紛争
・アジア等における労働力不足と賃金水準の上昇
・政治不安
・貿易規制や関税の変更
・一般的に長期の債権回収期間
・法律や規制の予想し得ない制定又は改正
・文化、商慣習の相違
・関税、輸送費用、その他の価格競争力を低下させる負担費用
・投資効果の実現までに要する長い期間と多額の資金
(17)減損に係るリスク
当社は、今後買収を通じてさらにのれん等を保有する可能性があり、これらの資産につき収益性の低下が発生した場合、当社は減損を認識しなければならず、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(18)見積り前提条件の変動リスク
当社グループは連結財務諸表を作成するに際して、売上債権の回収可能性、棚卸資産の評価、投資有価証券の減損、繰延税金資産に対する評価性引当額、従業員の退職給付制度などに関して見積りを行っております。これらの見積りは将来に関する一定の前提に基づいており、その前提が実際の結果と相違する場合には、予期せぬ追加的な費用計上が必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(19)為替レートの変動に伴うリスク
当社グループは、グローバルで製品の製造販売を行っております。各地域における現地通貨建の財務諸表を円換算して連結財務諸表を作成しており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値に影響が出る可能性があります。製品仕入につきましては大部分を米ドル建で行っており、米ドルに対する他通貨の為替レートの変動などに伴う製造原価の上昇などにより、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、実需の範囲内で短期及び長期の為替予約取引により、為替変動リスクを低減していますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではありません。
(20)税務に関するリスク
当社グループを構成する事業法人は、各国の税法に準拠して税額計算し、適正な形で納税を行っております。なお、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについて細心の注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。
(21)株価下落のリスク
当社の発行済株式は、東京証券取引所にて売買可能であり、大株主による当社株式大量の市場売却や、そのような売却の可能性は、当社株式の市価を低下させる可能性があります。また、当社は当社株式に転換可能な有価証券を発行する可能性もあり、これらの事態が発生した場合、株式価値が希薄化し、株価に悪影響を与える可能性があります。
(22)製造物責任に関するリスク
当社グループは、厳密な品質基準を設けて生産及び仕入れを行っております。製造物責任賠償保険に加入しておりますが、すべての賠償額を保険でカバーできるという保証はありません。製造物責任問題発生による社会的評価、企業イメージの低下は、当社製品に対する消費者の購買意欲を減少させる可能性があります。これらの事象は財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(23)法令違反リスク
当社グループは、「アシックスグローバル行動規範」を定め、内部統制の体制を整え、グループ一丸となって法令順守及び倫理行動規範の徹底に努めております。それにもかかわらず、当社グループの役員又は従業員が法令に違反する行為を行った場合には、当社グループの事業活動が制限され、財政状態及び経営成績が悪化する可能性があります。
(24)紛争・訴訟リスク
当社グループと、取引先、顧客等との間に紛争や訴訟が発生した場合、当該紛争解決に多額の費用がかかり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(25)大規模自然災害等に関するリスク
想定外の自然災害、政治経済状況の変化、感染症・伝染病等の流行、法律・規制の変更、テロ・戦争・その他社会情勢の混乱などが、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
特に、グループ全体の経営管理機能を集約している本社が所在する兵庫県神戸市で大規模自然災害が発生した場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、大規模自然災害が本社地域及び主要オフィスに発生した場合に適用する「事業継続計画(BCP)」を策定しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営上の最重要課題のひとつとして認識しております。この中で「中期経営計画2026」において設定いたしました、中期経営計画期間内における連結総還元性向50%を達成すべく、累進配当の継続を前提に利益配分を検討してまいります。また、「中期経営計画2026」におけるキャピタルアロケーション方針に基づき株主還元と成長投資をバランスよく実施していきます。
上記に加え、財務規律の維持も図りつつ、内部留保資金につきましては成長分野への投資を通じて将来の収益拡大につなげてまいります。
当社の剰余金の配当は、6月30日を基準日とした中間配当と12月31日を基準日とした期末配当の年2回行うことを基本方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。なお、当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨を定款に定めております。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、利益還元の基本方針を踏まえ、売上高、営業利益ともに過去最高を記録し、さらに、中期経営計画を前倒しで達成したことから1株につき年間65円00銭(うち中間配当金25円00銭)と過去最高の配当を実施することを決定しました。
基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たりの配当額 (円) |
2023年8月8日 |
4,580 |
25.0 |
取締役会決議 |
||
2024年3月22日 |
7,329 |
40.0 |
定時株主総会決議 |