2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

(1)当社のリスクマネジメント体制

当社は、当社グループのリスクマネジメントに関する「リスクマネジメント基本規程」を定め、担当の役付執行役員を委員長とする「事業リスク委員会」において当社グループの多面的なリスクマネジメントを行っています。

委員会を構成する各委員は、現在本社管理部門の長・事業本部長です。事業リスク委員会は当社グループ全体のリスクを分析し、発生可能性と影響度等を勘案し、管轄するリスクマネジメント統括委員会にその活動状況などを報告するとともに、主管部門に各対策の立案を指示し、その実施状況を監督します。

体制図については、本有価証券報告書 第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等又は当社「RYODEN REPORT 2024」コーポレート・ガバナンスに記載のとおりです。

「RYODEN REPORT 2024」 https://ir.ryoden.co.jp/library/annual/

(2)当社のリスクマネジメント体制の運用状況

事業リスク委員会は原則年2回開催しており、本委員会では企業活動に関して抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントが有効に機能しているかの検証・評価を行います。

当事業年度は2回開催し、自然災害、情報セキュリティ、カントリーリスク、新事業の展開による品質・知的財産権侵害のリスク及び投資リスクなどへの対応・対策について検討・評価しました。

(3)事業等のリスク

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況などに重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。

なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。また文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

なお、リスクの発生可能性及び影響度については、それぞれ以下のように定義しております。

 

発生可能性

影響度

いつ発生してもおかしくない

長期にわたり経営に大きな影響がある

1年に一度発生する

長期にわたり経営に影響がある

1~3年に一度発生する

数ヶ月にわたり経営に一定の影響がある

3~10年に一度発生する

一時的に経営に影響がある

10年に一度も発生しない

経営にほとんど影響しない

 

 

 

①経済環境の変動に関するリスク

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループは、「FAシステム」、「冷熱ビルシステム」、ネットワークシステムやスマートアグリ・ヘルスケアなどの「X-Tech」、半導体・デバイス品などの「エレクトロニクス」関連の機器・システムの販売を主な事業とする企業集団であり、取引先は製造業や卸売業、建設関連及び医療関係やサービス業など幅広い業種に及んでいます。

 各取引先の状況は、景気変動やそれぞれが属する業界の需要の低迷や設備投資の減少などにより影響を受けるため、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

〇対応策 

 新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029|2034」で掲げるイノベーション戦略を推進、既存事業の維持だけでなく深化・拡大と新領域の探索に取り組むことで高収益ビジネスの領域を広げ、景気変動に影響されにくい企業体質へと進化してまいります。

 

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」イノベーション戦略

 

 

②主要仕入先との関係

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループの主要仕入先は、「FAシステム」及び「冷熱ビルシステム」では三菱電機株式会社であり、当連結会計年度における仕入高は連結仕入高の16%を占めています。

 主要仕入先の事業戦略や製品の市場戦略、代理店政策の変更や供給動向などにより、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

〇対応策

 主要仕入先との間では販売代理店契約などを締結し、緊密な関係を維持していますが、仕入先の代理店政策の変更による影響もあり、こうした影響を最小限にとどめるため、新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029|2034」で掲げるサプライチェーン戦略を推進し、当社の商社機能としての価値を高めるだけでなく仕入先の価値向上にもつながる活動に取り組むことで関係を一層強固にしていきます。

 

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」サプライチェーン戦略

 

 

③自然災害の発生

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 大規模地震や異常気象その他自然災害が発生した場合、当社のインフラ(事業所、ネットワークなど)の損壊などにより本社・支社機能および営業活動に支障が生じる可能性があります。また、仕入先及び販売先の被災の状況、社会インフラ、物流網などの復旧の遅れ、さらには事業活動の制限や停止などでサプライチェーンに大きな影響を受けた場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

〇対応策

 こうした影響を最小限に留めるため、防災マニュアルなどBCPの策定、顧客や仕入先などのサプライチェーン全体での供給不足に対応するためのBCP在庫を確保するなどの対応を進めています。

 

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」サプライチェーン戦略

 

 

 

④新事業の展開

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループは、新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」イノベーション戦略に基づき、新事業の創出に取り組んでいます。

 新事業は先行者利益が得られることはもちろん他社との差別化につながり、高利益率・高収益が見込まれます。

 一方、これまで当社仕入先が担ってきた品質や知的財産権の侵害リスクなどを当社自身が負担することとなり、当社の責に帰す想定外の不具合などが生じた場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

〇対応策

 当社では、こうしたリスクに対応するため、戦略技術センターを中心に知的財産に関する戦略を推進し、国内外で体制強化に努めております。こうした取り組みは、事業創出会社を実現するためには不可欠なものであり、また他社との差別化にもつながるものと考えます。

 

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」イノベーション戦略

 

 

⑤カントリーリスク

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループは、中国を中心とした東アジア、タイを中心とした東南アジア及び欧米(ドイツ・米国)などで事業を展開しており、当連結会計年度における海外売上高の合計は連結売上高の22%を占めています。また新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」イノベーション戦略では、これまでの顧客追従型の海外展開から重点エリアを選択的に攻略する方針に転換、特に成長性の高い地域・エリアの攻略を戦略の軸に据えています。

海外事業展開時には、海外事業を担当する部門が予め関係部門と連携し、事業展開にあたっての法規制やリスクを第三者機関(現地弁護士事務所やコンサルタントなど)を通じて調査・検討し、経営会議・取締役会の審議を経て展開しています。

 しかしながら、事業展開している国々・地域において予期しない法律又は規制の変更、政治又は経済情勢の悪化、テロ・戦争などによる社会的混乱など、国内における事業展開とは異なるカントリーリスクが発生した場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

〇対応策

 こうしたリスクを低減するため、事業展開している国・地域の法規則に照らし合わせた法令の自己チェックを毎年実施しているほか、現地のコンサルタントなどと連携し情勢の把握に努めています。また、海外子会社を担当する部門において定期的に現地法人の役員と情報交換を行い、適宜対策を講じています。

 

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」イノベーション戦略

 

 

⑥為替レートの変動

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループの事業には、海外顧客への商品供給及び海外仕入先からの調達があります。各地域における売上・費用・資産を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。決算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また中長期的な通貨変動により、計画された調達及び商品供給を実行できないことや、予定された利益の確保ができない場合があるため、為替レートの変動は当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

〇対応策

 当社グループは、先物為替予約などによる通貨ヘッジ取引を行い、米ドル及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による影響を最小限に止める取組みを行っています。

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」財務戦略

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」サプライチェーン戦略

 

 

 

⑦在庫

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループは、顧客の所要見込みや仕入先の供給状況などの情報収集に努め、適正な在庫水準の維持と滞留在庫の発生を防ぐ努力をしていますが、市況変動など当初見込んでいた顧客の所要見込みの減少により廃棄損や評価損を計上する場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 

 

〇対応策

 当社グループでは、事業セグメントごとの標準在庫月数などを定めた「標準在庫管理運営規則」に則りその管理を徹底しています。

 また、金額に応じた発注権限の設定や発注時点での顧客の所要量の精査、引き取り確約や仕入先への発注量の調整などに注力し、適正な水準の維持に努めています。

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」サプライチェーン戦略

 

 

⑧投資

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループは、新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」の財務戦略に基づき、成長投資による事業ポートフォリオ変革に取り組んでおり、将来の成長に向けビジネスパートナーに対して出資を行うことがありますが、出資先の業績が出資時点と大きくかい離し、出資の減損処理が必要になるリスクがあります。

〇対応策

 出資に際しては、出資先の財政状態、事業計画の実現性、投資リターン等を慎重に判断し、経営会議や取締役会で審議を行っています。また出資後は、出資先の財政状態、事業計画の進捗を定期的にモニタリングしています。

 

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」財務戦略

 

 

⑨気候変動問題への対応

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で採択された「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を抑制するために温室効果ガスの排出量を大幅に削減していくことが世界全体で取り組むべき目標として掲げられ、これを受け、日本では政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。今後、環境関連法規制等の強化、気候変動に関するリスクへの対策、炭素税の導入、環境負荷低減の追加的な義務等による環境保全に関連する費用が増加した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

〇対応策

 当社グループは、こうした流れの中、温室効果ガス排出抑制への取り組みを「低炭素」から「脱炭素」へと強化し、現在は「RYODENグループ環境方針」のもと、2030年までにScope1及びScope2について2023年度比で42%、Scope3について25%の温室効果ガス排出量削減を目標に掲げ取り組んでいます。

 また取締役社長を最高責任者とするサステナビリティ委員会を設置し、本社・国内外の各拠点における環境管理体制や各種手続きを明文化し、環境に配慮した事業活動が行われているか、ルールが適正に守られているかなど、継続的かつ客観的にチェックする体制を整えています。

 さらに、脱炭素社会への移行は重要な事業機会として捉え、社会課題の解決につながる事業の創出にも取り組んでいます。

 経営方針等との関連性

RYODENグループ環境方針

新中長期経営計画「ONE RYODEN Growth 2029 | 2034」ステークホルダーエンゲージメント戦略

 

 

 

⑩コンプライアンス

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループは、経営理念に基づく行動指針に「法令・ルールを遵守する」を掲げ、全ての事業活動において法令・ルールの遵守を最優先させるとともに、倫理を逸脱する行為は行わないことを社内外に約束しています。

 しかしながら、管理体制上の問題が発生する可能性はゼロではなく、法令・規制に違反した場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。また、従業員の不正行為は、その内容次第では当社の業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

〇対応策

 当社グループでは、こうした影響を低減するため、担当の役付執行役員を委員長とする「倫理・遵法委員会」を設置し、企業活動における法令遵守・公平性・倫理性を確保するための活動を行っています。また、各部門・支社並びに海外を含めた関係会社において「遵法チェック」を行い、コンプライアンスに関する遵守状況の確認を行うとともに、グループ全社員に対しコンプライアンスe-learningを実施し、法令遵守の徹底に努めています。

 また透明性・独立性を高めた内部通報制度を運用し、法令違反や不正の早期発見及び是正に取り組んでいます。

 経営方針等との関連性

経営理念に基づく行動指針「法令・ルールを遵守する」

 

 

⑪人財の確保と育成

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループが掲げるビジョン:未来を共創するエクセレントカンパニーの実現の原動力は人財であり、優秀な人財の確保・育成及び定着は最重要課題です。また、労働人口が確実に減少しているなか、持続的な成長のためには女性活躍を含む多様性の確保が必要となりますが、こうした人財を採用・育成できない場合や優秀な人財が流出した場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

〇対応策

 これまで以上に積極的な採用活動に取り組むだけでなく、新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029|2034」の人財戦略に基づき、人事制度の整備、社員研修などを通じて人財の育成や定着に取り組んでいます。また、エンゲージメントの向上や女性管理職比率を新中長期経営計画のKPI(重要経営指標)とするほか、多様性の確保にも取り組んでまいります。

 

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」人財戦略

 

 

  ⑫情報セキュリティ

発生可能性

影響度

 

〇リスク

 当社グループは、業務遂行にあたり社内外の情報システムを利用しておりますが、災害などによる物理的故障、ソフトウエアの品質不良、人為的オペレーションミス、悪意を持った第三者からの攻撃やコンピュータウイルスによる乗っ取り、不正アクセスなどによりシステムが停止した場合、可用性が損なわれ、サプライチェーンを含めた事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、機密情報・個人情報等の漏洩により当社グループの社会的信用に影響を及ぼす可能性もあります。これらの事象は当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

〇対策

 当社グループでは、情報セキュリティリスクを重要な課題と捉え、情報資産やネットワークを含む情報システム運営に対するリスクへの備えとして「情報セキュリティ規則」を整備し、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)体制を構築し、インシデント発生時の対応を定めております。役職員に対しては定期的なeラーニングにより教育を施すとともに、偽の標的型攻撃メールを送信する「標的型メール訓練」などにより継続的に情報セキュリティ意識向上を図っております。

 昨今、リモートワークにより接続されるネットワークが社内外を問わなくなっていることから、ゼロ・トラスト・セキュリティへの移行を行い、あわせて物理媒体には暗号化を施すなどセキュリティレベルの向上に向け取り組んでおります。また、業績への影響への備えとしてサイバーリスク保険への加入を行っております。

 経営方針等との関連性

新中長期経営計画「One RYODEN Growth 2029 | 2034」イノベーション戦略

 

配当政策

3 【配当政策】

当社グループは、経営基盤・財務体質の強化のための内部留保の拡充と事業拡大のための投資財源への活用を基本として、株主各位への適正な利益還元を実施してまいります。剰余金の配当につきましては、各事業年度の連結業績及び中長期的なグループ戦略等を勘案のうえ、配当性向40%~60%を目安に利益還元を実施したいと考えています。また、自己株式の取得につきましても、株価の動向や財務状況を勘案のうえ実施する予定です。

当社は会社法第459条第1項の規定に基づき、機動的な配当政策を実施するため、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨及び剰余金の配当基準日を3月31日及び9月30日とする旨を定款に定めています。

上記方針の下、当期末の剰余金の配当は53円とし、昨年12月にお支払いいたしました中間の剰余金の配当53円とあわせて、当期の年間配当金は1株当たり106円といたしました。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する取締役会決議による剰余金の配当は、以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年10月31日

1,162

53

2025年5月15日

1,140

53

 

また、自己株式につきましては、当期に426千株、1,019百万円を自己株式立会外買付取引の方法により取得し、消却いたしました。

なお、新中長期経営計画「ONE RYODEN Growth 2029 | 2034」では、株主の皆様に対する利益還元強化の姿勢をより明確化し、更なる拡充を図るため「連結総還元性向」及び「連結株主資本配当率(DOE)」を新たな指標として導入することとし、配当方針を次のとおり変更いたしました。

・変更後の配当方針

当社グループは、財務の健全性を堅持するとともに中長期的な企業価値向上に向けた成長投資と株主各位への適正な利益還元を実施してまいります。

株主還元につきましては、短期的な業績に連動させず、中長期的かつ安定的に強化・拡充を図る方針であり、連結総還元性向50%又は連結株主資本配当率(DOE)3.5%を下限として剰余金の配当を実施いたします。

 また、自己株式の取得につきましても、株価の動向や財務状況を勘案のうえ実施する予定です。

 ※連結株主資本配当率(DOE)=(年間配当総額÷連結株主資本)×100

・変更の時期

 2025年3月期中間配当より適用いたします。