リスク
3 【事業等のリスク】
(1) リスクマネジメントの考え方
当社は、当社グループ全体の企業価値を持続的に向上させるため、事業活動に関連する内外の様々なリスクを適切に管理するための体制を構築しています。また、事業活動に重大な影響を及ぼすリスクが顕在化した際の損失を低減させるための活動を行います。
(2) リスクマネジメントの体制
当社グループは、スリーラインモデルの考え方に基づくリスクマネジメント体制を構築しており、リスク管理に関する取組は、取締役会が監督するサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役、委員:取締役、原則毎月1回開催)が統括しております。
第一ラインとして、当社の各拠点及びグループ各社ごとに任命したリスクマネジメントリーダーが事業にかかる現場部門でのリスクを管理しています。第二ラインとして、コンプライアンス・リスク管理部会がリスクマネジメントリーダーから集約した現場部門でのリスクを評価・把握するとともに、マテリアリティ部会及び2025年6月に新設した人的資本部会が中長期的な全社レベルのリスクや人的リスクを特定し、これらの専門部会の連携により必要な対策をサステナビリティ委員会に報告することとしております。また、第三ラインとして、内部監査室が第一ラインと第二ラインから独立した立場で、リスク管理体制・状況を監査しております。
リスクマネジメント体制の概略
(3) 主要なリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に及ぼす影響については、具体的な内容を見積もることが困難であるため、記載しておりません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 住宅・不動産市場の動向に関するリスク
当社グループの事業は、国内の経済状況及び住宅・不動産市場の動向に大きく依存しています。そのため、何らかの要因により国内経済が悪化し需要が後退した場合や、将来的に市場構造が大きく変化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、環境貢献度の高い木材の活用や国産材の取り扱いの強化、エネルギー関連商品を含めた躯体・住宅設備機器等の1棟当たりの納材量の拡大を図るとともに、住宅ストックビジネスの拡大に取り組み、収益基盤の更なる安定を図ることで、リスクの軽減に努めてまいります。
② 木材、建材・住宅設備機器等の調達及び価格変動に関するリスク
当社グループは、木材を国内外から調達しているほか、建材や住宅設備機器についても、一部の仕入先メーカーが海外拠点において部品の調達や製品の生産を行っています。そのため、国内外における自然災害や社会不安(戦争、感染症の流行、地政学的リスクなど)により、調達が困難となる可能性があります。また、取扱商品の市況や需給の急激な変動により、調達価格が大きく変動した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、国内外の調達ネットワークを活用し、木材製品や建材・住宅設備機器などの商品を複数の産地・メーカーから調達するとともに、全国に配置した物流拠点のストック機能を生かすことで、安定的かつ適正価格での調達及び供給体制の安定確保に努めています。
③ 法令違反等に関するリスク
当社グループは、宅地建物取引業法、建設業法、建築士法などの法令に基づく許認可を取得し、建築、労働、環境をはじめとする事業遂行に関わる各種法令・条例を遵守し、事業活動を行っております。
しかしながら、当社グループ及び外部協力事業者において、重大な法令違反や不正行為、労働災害などが発生した場合には、是正措置に多額の費用が発生するほか、業務停止等の行政処分を受ける可能性があります。これにより、当社グループの社会的信用やブランドイメージが損なわれ、損害賠償請求や訴訟への対応が必要となるなど、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、「行動倫理規範」等を定め、役職員に対して周知・徹底を図るとともに、継続的にコンプライアンス研修や内部通報制度の整備・運用を通じて、コンプライアンス意識の醸成に努めております。また、取締役会直属のサステナビリティ委員会の下に設置された「コンプライアンス・リスク管理部会」では、コンプライアンス関連事案の情報共有・分析、発生防止策や対応策の検討・指導・監督等を行っております。
さらに、安全委員会・衛生委員会とは別に、安全衛生活動をより強化する目的で、物流・製造・施工管理に関わる各部署及びグループ会社が連携し、「ナイスグループ中央安全衛生委員会」を3カ月ごとに開催しています。同委員会では、労働災害の予防に向けた定期点検、発生事案の検証、再発防止策の推進等を行っています。加えて、専門分野の異なる複数の法律事務所と顧問契約を締結し、事案の内容に応じた的確な法的助言を受けられる体制を整備することで、迅速かつ適切な対応を可能としています。
④ 人材に関するリスク
当社グループの持続的成長及び企業価値の向上は、専門性の高い人材の確保と継続的な育成が不可欠です。そのため、必要な人材の確保や従業員の育成が不十分となった場合や重要なポジションを担う人材が予期せず流出した場合、さらには職場の人間関係や設備面などにおける職場環境の改善が不十分で従業員のモチベーションが著しく低下する場合には、当社グループの経営成績や事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、「住まいと暮らし」の領域に必要な専門スキルの拡充を図るため、キャリア開発や戦略的な人員配置を行い、計画的かつ継続的な人材育成に努めるとともに、サクセッションプランを通じた次世代経営層の育成を推進してまいります。また、DXや経営などの分野に精通した外部人材の登用やキャリア採用の拡充を図ります。
さらに、エンゲージメントの向上を図ることで心理的安全性が確保された組織風土を醸成し、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針」に応じた多様な働き方に対応する施策の導入などを通じて、すべての従業員がその個性や能力、強みを生かして活躍できる「働きやすさ」と「働きがい」のある職場環境の整備に取り組んでまいります。また、健康経営の実践を通じて、健康リスクの低下とハイリスク者の減少を実現するなど、従業員が心身ともに健康で安心して働ける健全な職場環境の実現を目指してまいります。
⑤ 建設技能者の減少に関するリスク
建設業界においては、建設技能労働者の数が長期的に減少傾向にあります。今後、当社グループ及び施工協力会社を含め、必要な建設技能労働者の確保が困難となった場合、施工能力の低下による工期の遅延や長期化、さらには労務費の高騰を招き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、建設業関連の部署及び連結子会社の再編を通じて、施工機能の強化と合理化を図るとともに、働き方改革などの処遇改善策を推進してまいります。
また、当社グループが他社に発注する分譲マンションの施工においても、同様に人手不足が深刻化した場合、工期の長期化や遅延、工事費の上昇に加え、施工不良や品質低下などのリスクが高まることが懸念されます。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、発注先選定時の厳格な審査や信頼できる施工会社とのパートナーシップの強化、品質管理体制の強化など、多角的な対策を講じております。
⑥ 自然災害等に伴う事業継続に関するリスク
大規模な地震や風水害などの自然災害により、当社グループの施設・設備等が甚大な被害を受けた場合、あるいは重篤な感染症の急激な拡大などにより事業活動に大きな制約が生じた場合には、当社グループの役職員の安全や業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、災害等による事業への影響を最小限に抑え、事業の継続を可能とするための事業継続計画(BCP)を策定しております。具体的には、安否確認等に関するマニュアルの整備、定期的な訓練の実施、避難場所の周知、防災備蓄の確保、並びに計画的な設備改修などを通じて、災害時の被害軽減に努めています。
あわせて、感染症の流行を想定した事業継続体制の構築にも取り組み、さまざまな非常時においても安定的な事業運営を維持できる体制の整備を進めております。
⑦ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業上の重要情報に加え、事業の過程で入手した個人情報や取引先等の機密情報を保有しております。これらの情報に関して、当社グループのITシステムがサイバー攻撃やウイルス感染等の被害を受けて業務が停滞した場合、また、個人情報等が漏洩した場合には、社会的信用の低下や損害賠償の発生などを通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、情報資産を安全かつ適正に管理・運用することを目的として、「情報セキュリティ方針」を定めております。具体的には、情報の漏洩、紛失、不正アクセス、破壊、改ざん、盗難等を防止するための対策を講じており、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ウイルス等への対策も強化しております。
また、取締役会直属のサステナビリティ委員会の下に設置された「マテリアリティ部会」において、情報セキュリティに関するリスク評価と対策の有効性を定期的にモニタリングしております。さらに、情報資産を取り扱うすべての役職員に対して、必要な教育訓練を定期的に実施することで、情報セキュリティに関する意識と対応力の向上を図り、情報セキュリティ対策の徹底に努めております。
⑧ 品質保証に関するリスク
マンション事業及び一戸建住宅事業において、予期せぬ重大な品質問題が発生した場合、多額の費用が発生するだけでなく、当社グループの評価が大きく毀損され、業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、地盤調査、設計、基礎工事から上棟、竣工に至るまで、各工程に応じて、建築基準法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律に準拠した自社検査を実施するとともに、第三者機関による検査も併せて行うことで、設計・施工の品質確保に万全を期しています。あわせて、長期保証制度の導入や定期的な点検の実施により、品質維持・改善に努めております。
⑨ 保有する資産に関するリスク
当社グループは、販売用不動産、有形固定資産及び投資有価証券その他の資産を保有しており、主に時価の下落による評価損又は減損損失の計上によって当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、販売用不動産については仕入基準に基づく優良な土地を取得しております。なお、一定額を超える場合は取締役会で審議しております。新規設備投資につきましては「⑭ 設備投資及び企業買収、研究開発等に関するリスク」に記載しております。また、政策保有株式については、保有方針及び保有の合理性を毎年取締役会で検証しております。なお、保有する資産については評価損及び減損損失を適宜把握し必要に応じて会計処理しております。
また、全国に保有する木材市場や物流センターなどの施設・設備については、老朽化に伴い安全性を含めた良好な労働環境を確保するために、多額の修繕費が発生する可能性があります。その場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、中長期的な視点に立って改修計画を策定し、施設・設備の適切な維持管理に努めています。
⑩ 取引先への信用供与に関するリスク
当社グループは、取引先に対して売上債権等の信用供与を行っております。そのため、取引先の経営状況が何らかの要因により悪化した場合には、貸倒れ等による突発的な不良債権が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、信用リスクの顕在化を防止すべく、適切な債権限度額の設定をはじめとする厳格な与信管理を徹底しております。
⑪ 資金調達に関するリスク
当社グループは、事業に必要な資金を金融機関からの借入により調達しております。そのため、金融市場の混乱や当社の信用格付の引き下げ、あるいは金融機関の融資方針の変更などにより、資金調達に制約が生じる可能性があります。また、将来的に金利が上昇した場合には、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、長期資金の確保や金利の固定化を図るとともに、コミットメントライン等の活用により十分な資金流動性を確保するなど、安定的かつ効率的な資金調達体制の構築に努めております。
⑫ 為替に関するリスク
当社グループは、木材及び建材を外貨建てで輸入しているため、為替相場の変動によって想定を超えるコストが発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、輸出入契約額の一定割合について先物為替予約を活用することで、為替変動が経営成績に及ぼす影響の軽減に努めております。
⑬ 気候変動に関するリスク
当社の取締役会は気候変動を含むサステナビリティに関するリスク及び機会について監督を行っております。また、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において検討を行った気候変動リスク及び機会について、必要に応じて審議を行い、重要事項を決定しております。
また、当社グループは環境方針に基づき、企業活動を通じた環境負荷の低減に努めております。特に気候変動への対応については、TCFDのフレームワークに基づき取りまとめており、その内容は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 重要なサステナビリティ項目 ① 気候変動への対応(TCFD)」に記載しております。
⑭ 設備投資及び企業買収、研究開発等に関するリスク
当社グループは、事業拡大の有効な手段として、設備投資や企業買収、研究開発の推進を掲げております。しかし、市況の変化や新たなリスクの顕在化により、設備の稼働率低下や対象企業の価値の大幅な減少など、想定した効果が得られない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、新規設備投資の妥当性を判断する際には、ハードルレートをWACC(加重平均資本コスト)を上回る水準に設定しております。また、企業買収においては買収監査を実施しております。これらの内容については、取締役会等で十分な議論を行いリスク回避に努めております。
⑮ 業務委託先の倒産等に関するリスク
当社グループは、マンション事業及び一戸建住宅事業において、設計会社や建設会社などの外部業者に対して各種業務の発注・委託を行っております。発注した業務が適切に履行されているかを逐次確認していますが、外部業者が業務を履行しない場合や倒産した場合などには、当社グループが定めたスケジュールや品質基準、法令に基づく業務遂行が困難になるおそれがあります。
特に、顧客に販売するマンションや一戸建住宅の工事完成前に売買契約を締結し、引渡義務を負う場合においては、所定のスケジュールや品質基準、法令を満たした工事が行われないと、売主として顧客に対し債務不履行責任を負うほか、規制当局から是正指導を受ける可能性があります。これらの事態は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、売主として保証金の供託や保険への加入を行っております。また、与信など一定の取引条件を満たす複数の事業者と当社の品質基準を共有する体制を構築し、さらに特定の外注先に依存しない体制を整備することで、リスクの最小化に努めております。
配当政策
3 【配当政策】
当社の配当政策に関する考え方は、今後の成長と競争力強化のための資金需要等を勘案しつつ、株主の皆様へは中長期的な持続的成長を通じた累進配当を導入しており、1株当たり配当金は維持又は増配(記念配当などを除く)することを基本としており、「中期経営計画 Road to 2030」の計画期間である2030年3月期までは、毎期7円の増配を計画しております。また、剰余金の配当は年2回、中間配当と期末配当を行うこととし、期末配当については株主総会、中間配当を行う場合は取締役会において決定する旨を定款に定めております。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、業績等を総合的に勘案して、当社普通株式1株につき、年間65円(うち中間配当25円)とする予定であります。なお、期末配当40円については、2025年6月27日開催予定の定時株主総会の決議事項として上程しております。
なお、当期に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。