2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    283名(単体) 22,911名(連結)
  • 平均年齢
    50.0歳(単体)
  • 平均勤続年数
    21.7年(単体)
  • 平均年収
    13,040,000円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社における従業員数

2024年3月31日現在

セグメント
の名称

合計

 

 

 

 

 

 

 

個人

法人

投資家

不動産

マーケット

運用
ビジネス

その他

従業員数
(人)

22,911

8,422

4,390

2,244

1,928

371

1,534

4,022

[ 2,400]

[ 510]

[ 336]

[ 146]

[ 93]

[ 10]

[ 103]

[ 1,201]

 

(注)1.従業員数は、就業人員であり、海外の現地採用者を含み、臨時従業員2,365人を含んでおりません。

2.従業員数には、取締役を兼務していない執行役員等110人を含んでおります。

3.臨時従業員数は、[ ]内に年間の平均人員を外書きで記載しております。

4.報告セグメントごとの従業員数には連結子会社の従業員数を含んでおります。

 

(2) 当社の従業員数

2024年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

283

50.0

21.7

13,040

 

(注)1.当社の従業員は、三井住友信託銀行株式会社からの出向者等であり、平均勤続年数は出向元での勤続年数を
通算しております。

2.従業員数には、取締役を兼務していない執行役員等(当社以外の職務委嘱割合が高い者を除く)7人を含ん
でおります。

3.当社の従業員はすべて「その他」のセグメントに属しております。

4.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

5.当社には従業員組合はありません。労使間においては特記すべき事項はありません。

 

 

(3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

①当社

該当ありません(「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表の対象外であります)。

 

②連結子会社

当事業年度

名称

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注)1

男性労働者の
育児休業取得率
(%)

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

 

三井住友信託銀行株式会社

15.2

(+1.9)

111

(▲6)

 

52.3

(+2.1)

52.8

(+2.1)

65.9

(+0.2)

(注)4

日興アセットマネジメント
株式会社

24.3

(+4.5)

100

(+37)

 

59.5

(+2.6)

61.5

(+3.7)

34.4

(▲0.1)

(注)4

三井住友トラスト・
アセットマネジメント
株式会社

13.8

(+0.9)

63

 

71.2

(+1.2)

70.3

(+0.6)

147.8

(+113.0)

(注)4

三井住友トラスト・
ローン&ファイナンス
株式会社

9.9

(▲1.3)

100

 

68.2

(+0.7)

62.8

(+1.0)

63.1

(+6.7)

 

三井住友トラスト不動産
株式会社

1.6

(▲0.1)

82

(+53)

 

48.4

(+0.3)

48.1

(+0.5)

49.7

(▲6.6)

 

三井住友トラストクラブ
株式会社

33.3

(+4.1)

100

 

79.1

(+2.2)

78.5

(+2.0)

-

(注)5

三井住友トラスト
総合サービス株式会社

37.5

(+6.5)

-

(注)3

93.0

71.5

76.0

 

三井住友トラスト・
ライフパートナーズ株式会社

25.0

(+7.4)

50

 

57.2

58.3

49.0

 

三井住友トラスト・
パナソニックファイナンス
株式会社

9.9

(+1.7)

116

(+2)

 

63.6

(+1.3)

67.1

(+0.7)

78.5

(▲4.8)

 

三井住友トラスト
TAソリューション株式会社

61.8

(+25.7)

-

(注)3

82.5

(+1.8)

75.7

(+1.2)

82.5

(▲18.0)

 

三井住友トラスト・
システム&サービス株式会社

15.3

(+1.3)

56

 

82.1

(+0.2)

80.2

(▲0.5)

79.9

(+3.4)

 

三井住友トラスト・
ビジネスサービス株式会社

73.4

(+6.4)

-

(注)3

50.2

(+3.0)

52.3

(+0.4)

66.6

(+1.5)

 

 

各項目下段(   )内の数字は前事業年度との比較であります。なお、当グループでは、当事業年度より、前事業年度比で開示範囲を拡大し、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異ともに、自主的に常時雇用労働者101人以上の連結子会社について公表しております。そのため、前事業年度において開示を行っていない場合、前事業年度との比較については記載しておりません。

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、労働者の男女の賃金の差異は、当事業年度の男性の平均年間賃金に対する当事業年度の女性の平均年間賃金の割合を示しております(以下同様)。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。なお、三井住友信託銀行株式会社、日興アセットマネジメント株式会社、三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社については、前事業年度は同第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出しておりましたが、育児目的休暇の導入に伴い、当事業年度より同第71条の4第2号における取得割合を算出しております。

3.休暇取得の対象となる労働者がいないことから、記載を省略しております。

4.主要な連結子会社である三井住友信託銀行株式会社、日興アセットマネジメント株式会社、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社の労働者の男女の賃金の差異の背景についての補足説明を「(4) 主要な連結子会社(単体)における労働者の男女の賃金の差異の背景について」に記載しております。

5.三井住友トラストクラブ株式会社においては、当事業年度内において、パート・有期労働者に女性がいないことから、パート・有期労働者の男女の賃金の差異については記載しておりません。

 

③連結会社

当連結会計年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)2

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

18.7

(+2.5)

51.0

53.1

51.5

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。当社及び国内連結子会社(29社)を対象として算出しております。なお、下段(   )内の数字は前事業年度との比較であります。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。男女賃金差異について公表をしている連結子会社(12社)について連結をしております。

 

(4)主要な連結子会社(単体)における労働者の男女の賃金の差異の背景について

 ①三井住友信託銀行株式会社

当グループの全労働者のうち約6割の労働者が所属する三井住友信託銀行株式会社の労働者の男女の賃金の差異は、以下のとおりであります。

 

(当事業年度の前2事業年度及び当事業年度に係る労働者の男女の賃金の差異)

 

2021年度

2022年度

2023年度

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)1

49.5

50.2

52.3

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。なお、本項目に記載しております上記以外の労働者の男女の賃金の差異についても、上記方法に基づいて算出したものであります

 

三井住友信託銀行株式会社の雇用制度は、コース社員制度、専門社員制度、アソシエイト社員制度等に分かれております。雇用制度別労働者の男女の賃金の差異、全労働者に占める労働者の割合及びコース社員比賃金水準は以下のとおりであり、全労働者の75.7%を占めるコース社員の男女の賃金の差異は58.7%となっております。

 

(当事業年度に係る雇用制度別労働者の男女の賃金の差異等)

 

労働者の
男女の賃金の
差異(%)

全労働者に占める労働者の割合(%)

コース社員の
平均賃金を100%
とした場合の
平均賃金(%)

女性

男性

合計

コース社員

58.7

35.0

40.6

75.7

100.0

専門社員

84.1

0.3

1.2

1.5

105.8

アソシエイト社員

90.2

19.2

2.6

21.7

41.6

その他

(定年再雇用社員、アルバイト社員ほか)

133.3

0.5

0.6

1.1

47.8

全労働者

52.3

55.0

45.0

100.0

86.8

 

 

全労働者を基準とした52.3%との差異の主な背景としては、全労働者の21.7%を占めるアソシエイト社員は、営業店や本部各部のミドル、バックオフィス業務等、主に定型的な業務を担っており、その賃金水準はコース社員比41.6%であること、及びアソシエイト社員の約9割が女性であることが挙げられます。信託銀行では、安定的かつ堅確な事務の提供体制を構築することも重要な責務であり、事務領域の担い手についても、長期間の活躍を期待するアソシエイト社員としての採用、育成を重視しております。

なお、専門社員は、信託銀行ならではの専門性を発揮するために、コース社員制度とは別に、個人の専門性を評価して採用する雇用制度に属する社員であります。

 

 

三井住友信託銀行株式会社のコース社員に限定した男女の賃金の差異は、以下のとおりであります。

 

(当事業年度の前2事業年度及び当事業年度に係るコース社員の男女の賃金の差異)

 

2021年度

2022年度

2023年度

労働者の男女の賃金の差異(%)

55.6

56.4

58.7

 

 

三井住友信託銀行株式会社のコース社員制度は、隔地間転勤の有無や、対象とする業務等により、Gコース、Rコース、Aコースの3つのコースを設けており、コース別の男女の賃金の差異は、以下のとおりであります。

 

(当事業年度に係るコース社員制度別男女の賃金の差異)

 

Gコース

Rコース

Aコース

コース社員全体

労働者の男女の賃金の差異(%)

82.6

(+2.3)

90.7

(▲0.8)

89.9

58.7

(+2.3)

 

下段(   )内の数字は前事業年度との比較であります。なお、Aコースについては、前事業年度は男性の労働者数が少数であり記載を省略したため、前事業年度との比較は記載しておりません。

 

(参考)三井住友信託銀行株式会社のコース社員制度


 

コース社員全体、及び同じコース内での男女の賃金の差異の要因としては、主としてコース社員における男女の構成割合によるものと分析しております。

コース社員全体では、係長級、課長級以上の職位では男性の割合が高い一方、一般層では女性の割合が高くなっております。

また、会社指示での隔地間の転勤のあるGコースは、勤務地を限定するAコースに比べて当該転勤に伴う負担を勘案した高い賃金水準としておりますが、Gコースでは男性の割合が高い一方、Aコースでは女性の割合が高くなっております。

 

(当事業年度に係るコース社員制度別・職位別の社員構成割合)

コース社員構成割合(%)

Gコース

Rコース

Aコース

コース社員全体

女性

男性

女性

男性

女性

男性

女性

男性

一般層(注)1

3.2

14.5

4.5

0.3

66.1

0.2

27.5

(▲1.0)

8.5

(-)

係長級(注)1

6.4

50.6

35.8

33.8

30.7

0.4

16.8

(+1.2)

30.6

(+0.3)

課長級以上(注)1

1.0

24.3

17.1

8.6

2.6

-

2.2

(+0.1)

14.3

(▲0.6)

全体(各コース内での割合)(注)1

10.5

89.5

57.4

42.6

99.5

0.5

46.5

(+0.3)

53.5

(▲0.3)

全体(コース別の割合)(注)2

57.7

3.8

38.5

100.0

 

コース社員全体における下段(   )内の数字は前事業年度との比較であります。

(注)1.当事業年度の各コース社員合計、もしくはコース社員全体を100%として職位別・男女別に社員構成割合を表示しております。

2.当事業年度のコース社員全体を100%として、コース別に社員構成割合を表示しております。

 

三井住友信託銀行株式会社のコース社員のうち、それぞれ57.7%、38.5%が属するGコース、Aコースの職位別の男女の賃金の差異は、以下のとおりであり、全ての職位において90%を超える水準となっております。

 

(当事業年度に係るコース社員制度別・職位別男女の賃金の差異)

労働者の男女の賃金の差異(%)

Gコース

Aコース

一般層

100.7

(+3.7)

129.2

係長級

93.0

(+1.5)

90.0

(▲1.5)

課長級以上

93.6

(▲0.9)

- (注)1

 

下段(   )内の数字は前事業年度との比較であります。なお、Aコースの一般層については、前事業年度は男性の労働者数が少数であり記載を省略したため、前事業年度との比較は記載しておりません。

(注)1.男性の労働者がおらず、記載を省略しております。

 

三井住友信託銀行株式会社のコース社員制度は、社員本人が自らの意思でコースを選択することが可能な制度としており、入社時のコース選択のほか、入社後のコース転換も認めております。また、能力・役割・成果に基づく公平な処遇制度となっております。これまでは男性の多くはGコースを選択し、女性の多くはAコースを選択してきた経緯がありますが、近年は、Gコースを志望する女性や、Aコースを志望する男性も増加基調にあります。

また、信託銀行特有の、広く深いビジネス領域を維持・拡大するため、高い専門性を有する経験豊富なコース社員を対象としたフェロー認定制度を導入しておりますが、当該認定者が主に課長級以上の社員であること等も、コース社員の男女の賃金の差異へ影響しております。

 

多種多様な分野における専門性の次世代への継承の観点や、信託銀行の幅広いビジネスの更なる深化に向けて、多様な人材の活躍は不可欠であると考えております。コース社員の27.5%を占める一般層の女性コース社員の更なる活躍推進が、会社の未来にとって重要な課題と捉え、役員自らが女性マネジメントをサポートするサポーター役員制度等、女性コース社員のキャリアの形成を支援し、更なる活躍を推進する取り組みを進めております。これらの取り組みを通じ、「2024年10月末までに課長以上のラインのポストに就く女性の比率を20%以上」及び「マネジメント業務を担う女性の比率を30%以上とする」という三井住友信託銀行株式会社の行動計画(KPI)の達成を実現します。

 

三井住友信託銀行株式会社における当事業年度の前2事業年度及び当事業年度の女性管理職の割合は、毎年度上昇しております。一方、同期間における労働者の男女の賃金の差異は、(当事業年度の前2事業年度及び当事業年度に係る労働者の男女の賃金の差異)に表示のとおり、縮小の傾向にあることから、女性のマネジメント職への登用による効果を確認しております。

 

(課長以上のラインのポストに就く、もしくはマネジメント業務を担う女性社員比率)

 

2021年度

2022年度

2023年度

2030年度

(目標)

課長以上のラインのポストに就く女性社員比率(%)

(注)1

13.0

13.3

15.2

30.0

マネジメント業務を担う女性社員比率(%)

(注)1

28.3

30.0

31.6

34.0

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります

 

また、三井住友信託銀行株式会社では、(当事業年度に係るコース社員制度別・職位別男女の賃金の差異)に表示のとおり、コース社員制度別、職位別での男女の賃金の差異は90%を超えておりますが、更なる差異縮小へ向けた取り組みを進めていきます。特に、係長級において男女の賃金の差異が拡大する傾向にあります。その主な要因は、出産等のライフイベントに伴う長期休業によるキャリア中断の影響や、育児に伴う短時間勤務制度の利用による労働時間の短縮等と分析しており、当事業年度の1か月当たりの法定外労働時間は、女性は男性比57.8%(※)、また、当事業年度の短時間勤務制度の利用者736人のうち、99.7%が女性となっております。

(※)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

 

以上を踏まえ、三井住友信託銀行株式会社では、性別にかかわらず多様な人材が活躍し、新たな価値を創造する組織を目指し、女性のマネジメント職への登用に加え、全社における時間外労働の削減、ライフイベントを踏まえたキャリア選択・早期復職の仕組み、柔軟な勤務制度の拡充や、それらを可能とする企業風土の醸成が不可欠と考えており、以下の施策を積極的に進めてまいります。

また、男性、女性の双方が公正な評価、処遇の下、ともに活躍できる職場環境の実現に向け、コース社員制度における隔地間転勤の在り方やその賃金水準等についても、継続して検討を進め、社員一人ひとりの自律したキャリア選択を後押しできる、未来に適合する人事制度への変革を進めてまいります。

 

 

施策

具体的事例(前事業年度)

具体的事例(当事業年度)

※前事業年度からの進捗及び現在検討中の施策を含む

更なる時間外勤務の削減、また、リモート勤務等の柔軟な働き方の推進。加えて、両立支援策の拡大により、更なる女性の働きやすい職場環境を整備すること。

・勤務間インターバル11時間の導入

・家事サービス導入検討 等

・勤務間インターバル11時間を継続運用中

・産育休から早期復職した女性社員を対象に家事サービスを含む家事・育児負担を軽減する両立支援制度(両立応援カフェテリアプラン)を2024年4月に導入

・育児と健康の相談ダイヤル等、保活支援に繋がるサービスを導入

早期職場復帰の制度を整え、出産後早期に職場復帰する機会(キャリアのブランクを短くする機会)を提供すること。

・育児施設の斡旋等

・当社社員が利用できる提携育児施設数を大幅に拡大

・拠点ビルにおいて授乳室の設置を予定(2024年内を目標)等

男性育児休業等の取得の推進を継続し、女性活躍の機会創出に努めること。

・男性育児休業取得率に加えて、男性育児休暇取得日数をKPIに加えることを検討

・男性育児休業取得率を四半期毎にモニタリングすることに加えて、KPIに平均取得日数を追加

・男性育児休業等の1か月取得を「強い推奨」へと変更し取得推進の強化を開始

・男性育休に関する正しい情報の入手及び職場の理解浸透と風土醸成に向け「共育てセミナー」を開催(継続開催予定)

・定期的な男性育休に関するオンライン研修を検討中等

キャリア選択の機会を拡充すること。

・フルリモートを前提とした居住地の拠点にない業務へのアサイン 等

・フルリモートを前提とした居住地の拠点にない業務へのアサインを継続実施中。また、フルリモート勤務メニューの拡大などを検討中

 

 

 ②日興アセットマネジメント株式会社/三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社

当社の主要な連結子会社2社の労働者の男女の賃金の差異について、以下のとおり記載しております。

(i)日興アセットマネジメント株式会社の労働者の男女の賃金の差異は、以下のとおりであります。

(当事業年度の前事業年度及び当事業年度に係る労働者の男女の賃金の差異)

 

2022年度

2023年度

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)1

56.9

59.5

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。なお、本項目に記載しております上記以外の労働者の男女の賃金の差異についても、上記方法に基づいて算出したものであります。

 

日興アセットマネジメント株式会社の雇用形態別の男女の賃金の差異、全労働者に占める労働者の割合及び正規雇用労働者比賃金水準は以下のとおりであり、全労働者の91.8%を占める正規雇用労働者の男女の賃金の差異は61.5%となっております。

 

 

(当事業年度に係る雇用制度別労働者の男女の賃金の差異等)

 

労働者の
男女の賃金の
差異(%)

全労働者に占める労働者の割合(%)

正規雇用労働者の
平均賃金を100%
とした場合の
平均賃金(%)

女性

男性

合計

正規雇用労働者

61.5

34.0

57.9

91.8

100.0

パート・有期労働者

(定年後社員含む)

34.4

2.2

6.0

8.2

108.4

全労働者

59.5

36.1

63.9

100.0

100.7

 

 

男女賃金差異が34.4%であるパート・有期労働者は、その約8割が定年後社員となりますが、賃金水準は正規雇用労働者比108.4%であり、その約75%が男性であることが、正規雇用労働者と全労働者における男女の賃金の差異の差の主な要因であります。

正規雇用労働者における男女賃金差異の主な要因としては、三井住友信託銀行株式会社と同様に、階層別の男女の構成割合によるものと分析しており、女性の管理職登用を進めること、即ち女性管理職比率の向上が、男女賃金差異の解消に寄与していくものと考えております。そのために、2021年度には、女性活躍推進における取り組みを更に加速するために、2030年度までに海外拠点を含む日興アセットマネジメントグループ全体における女性管理職比率を30%に引き上げる目標を新たに設定しております。加えて、2022年度には目標を達成するための具体的なアクションリストを作成、それに基づいた女性管理職比率の目標を明確化することにより、達成に向けての進捗状況の透明性を確保し、女性活躍推進の取り組みの更なる充実を図るとともに、多様性に対する社員の一層の意識向上を目指しております。結果、2021年度は16.9%であった女性管理職比率も2023年度には24.3%に達しており、同期間において、男女賃金差異も縮小しております。今後も、組織の多様性拡大を目指し、各種施策を積極的に推進してまいります。

 

(ii)三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社の労働者の男女の賃金の差異は、以下のとおりであります。

 

(当事業年度の前事業年度及び当事業年度に係る労働者の男女の賃金の差異)

 

2022年度

2023年度

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)1

70.0

71.2

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成 27 年法律第 64 号)の規定に基づき算出したものであります。なお、本項目に記載しております上記以外の労働者の男女の賃金の差異についても、上記方法に基づいて算出したものであります。

 

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社の雇用制度では、正規雇用労働者は、プロフェッショナル職、エキスパート職、専門社員の職掌に分かれております。プロフェッショナル職は各業務の経営に関する分野も含め、創造的な業務遂行を期待される職掌であるのに対し、エキスパート職は各業務の経営に関する分野を除いた領域で、能動的に業務を遂行することが期待される職掌としております。また、専門社員は高度な専門知識、職務経験に基づき、専門的な職務又は特命的な職務を担うために、契約期間を定めて採用された社員であり、それぞれの構成比や、男女の賃金の差異は以下のとおりであります。

 

(当事業年度に係る雇用制度別労働者の男女の賃金の差異等)

 

労働者の
男女の賃金の
差異(%)

全労働者に占める労働者の割合(%)

プロフェッショナル職の平均賃金を100%とした場合の
平均賃金(%)

女性

男性

合計

正規雇用労働者

70.3

31.2

65.6

96.8

97.4

  うちプロフェッショナル職

75.1

21.9

57.4

79.3

100.0

  うちエキスパート職

104.9

7.9

0.2

8.1

58.7

  うち専門社員

84.1

1.4

8.0

9.4

108.2

非正規雇用労働者

(アルバイトや定年再雇用社員等)

147.8

1.0

2.2

3.2

43.0

全労働者

71.2

32.2

67.8

100.0

95.6

 

 

それぞれの職掌における男女の賃金の差異と、正規雇用労働者を基準とした70.3%との差異の背景としては、主としてエキスパート職の賃金水準が、プロフェッショナル職比58.7%であること及び、エキスパート職の約97%が女性であることが挙げられます。

 

また、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社の正規雇用労働者のうち、プロフェッショナル職、エキスパート職における職位別の男女の賃金の差異は、以下のとおりであります。

 

(当事業年度に係るプロフェッショナル職及びエキスパート職の職位別の男女の賃金の差異等)

 

全労働者に占める労働者の割合(%)

労働者の男女の

賃金の差異(%)

女性

男性

合計

プロフェッショナル職

21.9

57.4

79.3

75.1

  うち一般層

16.1

19.1

35.2

92.0

  うち管理職以上

5.8

38.3

44.1

89.9

エキスパート職

7.9

0.2

8.1

104.9

  うち一般層

7.9

0.2

8.1

104.9

  うち管理職以上(注)1

-

-

-

-

 

 (注)1.該当する労働者がおらず、記載を省略しております。

 

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社では、能力・役割・成果に基づく公正な処遇制度としており、職掌別、職位別の男女の賃金の差異は、全ての職位において概ね90%を超える水準となっております。また、社員本人が自らの意思で、職掌を選択することが可能な雇用制度であるとともに、入社後の職掌の転換も認めております。近年は多くのエキスパート職の女性がプロフェッショナル職に転換しており、プロフェッショナル職に占める女性の割合も増加しております。しかしながら、プロフェッショナル職においては、管理職以上の職責を担う社員の女性の割合が少ないことが、同じ職掌における男女の賃金の差異の背景となっており、また、部長職などの上位の管理職の職責を担う女性の割合が少ないことが、管理職以上における男女の賃金の差異の背景となっております。

 

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社では、多様性が社員の価値創造力を高め、当社の中長期的な成長力をもたらすと考えております。この考えに基づき、女性活躍を含むダイバーシティの推進に取り組んでおり、前述の職掌転換に加え、管理職以上の女性の割合を15%以上とする目標を掲げ、女性の管理職登用を進めております。結果、女性管理職比率は、2021年度の9.5%から、2023年度には13.8%と上昇しており、結果、男女の賃金の差異も縮小しております。また、管理職以上の職責を担いうる女性を増やしていくために、全社員に占める女性の割合(32.2%)を引き上げていくとともに、採用活動において、ファンドマネジャーの業務を説明するイベントや広報活動を実施し、資産運用ビジネスを志望する女性の拡大に取り組んでおります。また、女性が働きやすい職場環境や、利用しやすい各種制度の整備にも努めております。今後も、多様な人材が活躍し、新たな価値を創造する組織を目指し、さまざまな施策を積極的に進めてまいります。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
 

(1)ガバナンス

①価値創造プロセスの考え方
 当グループは、自らの存在意義(パーパス)を「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」と定義するとともに、「社会的価値創出と経済的価値創出の両立」を経営の根幹に掲げています。
 社会的価値創出と経済的価値創出を両立させるには、存在意義(パーパス)に基づきステークホルダーの価値を最大化させながらポジティブインパクトを創造するプロセスと、当社自身の財務・非財務の経営基盤を持続的に強化していくプロセスを有機的に結合するとともに、それを経営レベルで適切に管理する仕組みが必要です。当社は、この仕組みを「価値創造プロセス」として整理しています。
 

②サステナビリティ方針
 当グループは、「1.事業を通じた社会・環境問題の解決への貢献」「2.お客さまへの誠実な対応」「3.社会からの信頼の確立」「4.環境問題への取り組み」「5.個人の尊重」「6.地域社会への参画・貢献」からなる「三井住友トラスト・グループの社会的責任に関する基本方針(サステナビリティ方針)」(以下、サステナビリティ方針)を取締役会において定めています。
 また、サステナビリティ方針に関連する当グループの取組方針及び具体的な行動指針について、「環境方針」「気候変動対応行動指針」「生物多様性保全行動指針」「人権方針」を取締役会において定め、役員・社員に周知するとともに対外的に公表しています。

 このうち、「人権方針」については、サステナビリティ方針で定めている、「あらゆる企業活動において、個人の人権、多様な価値観を尊重し、不当な差別行為を排除」することを徹底するため、国際連合人権理事会「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき2013年12月に制定したものですが、昨今の人権尊重の重要性の高まり、人権課題に対する国際的な要請に加えて、金融機関として取り組むべき人権課題が変化していることを踏まえ、2023年2月に改定しました。改定後の「人権方針」については、当社ホームページ(https://www.smth.jp/sustainability/management/philosophy/human_rights_policyにてご覧いただけます。
 

③マテリアリティの特定
 当社では、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を根幹に、経済、社会の情勢変化、グループとしてのリスク認識、ステークホルダーからの要請なども考慮に入れて、中長期的な重要課題(マテリアリティ)を特定し取締役会において定めています。
 当社は、2015年度に初めてマテリアリティを特定し、以後、2019年度、2022年度に改定を実施しています。現行のマテリアリティの特定にあたっては、世界経済フォーラム国際ビジネス協議会の提言をもとに、世界4大会計事務所が中心となって取りまとめた「持続可能な価値創造のための共通指標と一貫した報告を目指して」における共通指標(以下、コモンメトリクス)を起点としました。第一段階として、コモンメトリクスの「地球」「人」「豊かさ」「ガバナンス」に分類される論点に基づいて「マテリアリティテーマ」を特定し、第二段階として、当グループのパーパスと経営戦略上のテーマに沿って、マテリアリティテーマを、実現を目指す社会と価値に関する項目に整理し、マテリアリティとして特定しています。 
 マテリアリティについては、企業活動が経済、社会、環境に影響(ポジティブインパクト/ネガティブインパクト)を与える項目を「インパクトマテリアリティ」、価値創造の根幹に影響を与える項目を「ガバナンス・経営基盤マテリアリティ」、財務パフォーマンスに影響を与える項目を「財務マテリアリティ」として3つに区分し、リスクアペタイト・フレームワークの中で適切に管理するマテリアリティ・マネジメントを実践しています。

 マテリアリティ及びマテリアリティテーマについては、経済や社会の情勢変化に伴って生じる論点を適切にくみ取るため、定期的にレビューを実施し、取締役会に報告しています。

 

マテリアリティ

概要

インパクト

マテリアリティ

人生100年時代

・超高齢社会における年金や社会保障などの社会システムの変化や、健康寿命の延伸などの社会課題への備えとなり、豊かな生活を支える商品・サービスの提供。

・お客さまが自身の要求するところに合う、有益で手頃な金融商品・サービスを利用できる状態をつくり出す。

ESG/サステナブル経営

・気候変動、生物多様性、資源循環・サーキュラーエコノミー、大気・水質・土壌汚染、人権尊重への対応と投融資先企業及びサプライヤーにおける環境・社会・ガバナンスに配慮した経営の支援、対応手段の提供。

地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)

・地域における各主体が相互補完関係を構築しつつ、地域外の経済主体などとの関係構築により、多面的に連携、共創していく関係の構築。

・先進的な海外プレイヤーとの協業などによるインベストメントチェーンの強化を通じた投資機会の提供。

信託×DX

資金・資産・資本の好循環実現を促す駆動力・機能。「的確な運用と万全の管理」を備えた資産運用・資産管理を含む「信託」の力、「DX」の力(既存業務プロセスの構造変革、事業の横断融合による新たなビジネスの創造)による好循環の実現。

ガバナンス・

経営基盤

マテリアリティ

コーポレートガバナンス

・社会的価値創出と経済的価値創出を両立させる経営のフレームワークの確立。

受託者精神

善良な管理者の注意をもってお客さまのために忠実に行為にあたる、受託者精神の全う。お客さまの最善の利益の実現。

人的資本

多様な価値観を有する人材の確保、登用、人材群の構築。心身ともに健康で会社のパーパスに共感しながら多様性を認め合う良好な人間関係のもと、自分の価値や強みを活かせる状況をつくり出す。

リスク管理と

レジリエンス

経営の健全性確保、経営戦略に基づくリスクテイクを通じた収益確保と持続的な成長を支える、リスクの状況の的確な把握と、リスクに対する必要な措置。

コンプライアンスと

コンダクト

法令・市場ルール・社内規程類はもとより、広く社会規範を遵守。

役員・社員の行為が職業倫理に反する、またはステークホルダーの期待と信頼に応えていないことによる悪影響の防止。

セキュリティ

基幹インフラ事業者に対するサイバー攻撃の防止及び発生時のインシデント対応。

システムリスク管理体制の不断の見直し、改善。顧客情報のルールに則した取得と利用、厳格な管理。

財務

マテリアリティ

ステークホルダーの

期待する財務体質

健全な財務、持続的な成長。安定的な収益獲得。

 

(注)マテリアリティの3区分の定義は以下のとおりであります。

インパクトマテリアリティ

当社の企業活動が、経済、社会、環境に影響(ポジティブ・ネガティブ両方のインパクト)する項目。社会的価値創出と経済的価値創出の両立を具体的に狙える段階のもの

ガバナンス・経営基盤

マテリアリティ

環境や社会の課題が、当社の企業価値向上プロセスに影響する項目。直ちに財務に影響するものではないが、長期的には影響する可能性が高い非財務項目で「守り」の要素が強い項目

財務マテリアリティ

環境、社会の課題が当社の財務に影響を与える項目

 

 

④サステナビリティ推進体制
 当社では、サステナビリティ方針に基づき執行機関である経営会議がサステナビリティ推進に関する方針・戦略を協議・決定し、取締役会がこれを監督する体制としています。
 2023年度からは、サステナビリティ課題への対応における所管各部との協議、取組状況の報告を組織的に行うことを目的に、経営会議の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しました。同委員会は、サステナビリティ推進部統括役員(CSuO)を委員長、経営企画部統括役員、人事部統括役員、IR部統括役員を委員とし、当社のサステナビリティへの取組状況の確認と、サステナビリティ推進に関する各種施策の審議を行っています。なお2024年度は、サステナビリティリスクへの注目度の高まりを受け、リスク統括部統括役員(CRO)を委員に加えています。
 同委員会における審議を経た上で、経営会議へ付議することで、サステナビリティに関する課題の対象範囲を明確化し、方針立案、対応実施、開示までの一連の取り組みを組織的に行う態勢を整えています。
 

 

(2)戦略

①社会的価値創出に向けたポジティブインパクトの創造
 社会的価値は当グループの企業活動が生み出す場合もありますが、多くはステークホルダーからその先のステークホルダーへ影響が連鎖する中で形成されていくと考えています。SDGsの実現に貢献し最終的に経済(豊かさ)、社会(人間)、環境(地域)に対する良い影響(ポジティブインパクトの創造とネガティブインパクトの抑制)につながる活動が、当グループにおける社会課題解決型ビジネスです。
 当グループは「信託」の多彩な機能を活用し、「資金・資産・資本の好循環」をキーワードに、個人・企業・投資家それぞれに生じる社会課題に対して付加価値の高い商品・サービスをお客さまに提供します。上記のマテリアリティの特定においても考慮した社会課題等を踏まえ、当グループでは、2030年に実現したい社会や当社の姿を見据え、好循環を促進する3つの重点戦略領域として、「人生100年時代」「ESG/サステナブル経営」「地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)」を設定しています。
 社会課題がますます高度化・複雑化するなか、当グループ固有の経営資源や顧客基盤だけでは社会課題を解決することは困難です。さまざまなステークホルダーとの連携やプラットフォームの構築を行い、新たな市場や機会を創出します。また、これらを実現するために、人的資本や設備投資を強化していきます。

重点戦略領域

取り組み

人生100年時代

・認知症、高齢者の独居等、超高齢社会における資産管理上の課題へのサポート

・現役世代の資産形成をサポート、個人金融資産の増大に貢献

ESG/サステナブル経営

・脱炭素社会への移行等に向けたサステナブルファイナンスへの取り組み

地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン

(ネットワーキング)

・再生エネルギーの導入と地域創生を念頭においた地域課題へのアプローチ

・投資のさまざまなプロセスにおける効率的かつ高付加価値のサービス提供、インベストメントチェーンの発展をサポート

 

 

②気候変動にかかる戦略

イ.気候変動対応に関する考え方

 気候変動は、グローバルな経済・社会の持続性を脅かす最も深刻な環境問題の一つですが、当社のマテリアリティにおいては、「気候変動」を含む「ESG/サステナブル経営」をインパクトマテリアリティとして特定しています。
 当グループでは、気候変動問題を優先的に対応する社会課題と位置付けており、この問題の解決には、既存の法制度や生活スタイル、企業活動など複雑な利害関係に向き合いながら、カーボンニュートラル社会への移行(トランジション)を着実に進めることが重要と考えます。「気候変動」に対しては、グループ共通のプリンシプル(行動原則)である「気候変動対応行動指針」のもと、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に認識し、信託グループの多彩なビジネスを通じて、ネガティブな影響の最小化とポジティブな影響の最大化に取り組んでいく方針です。
 

ロ.気候変動に関するリスクの認識

 当グループでは、中長期的な気候変動や異常気象による社会インフラ・自然等の物理的被害(物理的リスク)や気候変動に関連した政策変更・気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等による低炭素社会への急速な移行(移行リスク)を気候変動関連リスクと定義し、自らの事業活動による温室効果ガス(GHG)排出の抑制や、セクターポリシー等に基づく規律ある投融資のリスク管理・モニタリングに努めています。三井住友信託銀行では、移行リスク及び物理的リスクが将来にわたって投融資ポートフォリオに与える影響を把握すべく、シナリオ分析を実施しており、これらをビジネスモデルや戦略の持続可能性に関する確認、及び投融資先のお客さまとの気候変動に関する対話とエンゲージメントのツールと捉え、ポートフォリオ特性を踏まえつつ分析に取り組んでおります。 

(ⅰ)移行リスク

 移行リスク分析では、2023年度に、海外の事業法人を対象に加え、NGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)の気候変動シナリオごとに、2050年までの信用格付の変動シミュレーションを実施の上、与信関係費用にどのような影響が生じるかを分析しました。分析手法としては、前年同様、全セクターをカバーするセクターレベルのトップダウン方式による分析に加え、移行リスクヒートマップにおいて移行リスクが高いと判定されるセクターについては、個社レベルの財務シミュレーション(ボトムアップ方式)を組み合わせた信用格付シミュレーション分析を実施しました。

 結果として、「Current Policy(3.0℃シナリオ)」との比較において、NetZero2050(1.4℃シナリオ)では2050年までの累計ベースで903億円、同様にBelow 2.0(1.6℃シナリオ)では520億円の与信関係費用が増加する試算結果となりました。

 

(ⅱ)物理的リスク

 物理的リスクについては、三井住友信託銀行の与信ポートフォリオは大企業を中心とした事業法人と不動産、プロジェクトなどのアセットファイナンスの比率が高いこと、また、事業法人については入手可能な分析対象資産の位置情報データが限定的であることなどから、住宅ローンや不動産ファイナンス、プロジェクトファイナンスなど、資産の位置情報をもとにした分析が可能なアセットファイナンスを優先してシナリオ分析を実施しております。2023年度においては、ファイナンスを提供する太陽光発電プロジェクトの位置情報をもとに、土砂災害、積雪量の長期的予想モデルを用いて、案件ごとに将来の被災リスクの時系列変化を分析し、信用格付を用いた与信関係費用のシミュレーションを行っています。なお、プロジェクトファイナンスについては、取組期間、返済スケジュールを反映する簡便なモデル化を行った上で、取引期間中に被災する確率を計算する方法を取っています。

 分析にあたっては、株式会社ウェザーニューズとの協働により、土砂災害に関しては、NASA(アメリカ航空宇宙局)の土砂災害モデル及びNIES2020(国立環境研究所)の降水量を用いて、2100年までの推計値を算出しています。積雪に関しては、気象研究所大気大循環モデル(MRI-AGCM3.2/NHRCM)を採用し、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベースであるdatabase for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)上の、2℃、4℃シナリオにおける積雪深、積雪層全層の積雪相当水量を用いて、2100年までのリスクを分析しています。与信関係費用の試算においては、被災した際の想定損害率について十分なデータ蓄積がないことから、被災した場合に一定期間稼働が停止するなど効率が低下し、信用格付の低下を通じて発生する与信関係費用を推計しています。

 結果として、推計される与信関係費用額は、4℃シナリオにおいて2100年までの累積で4億円程度にとどまると試算されました。

リスク種別

セクター

主な分析結果

移行リスク

(2020年度)

電力セクター

電力会社が再生可能エネルギー発電への投資を行わない場合、信用格付が平均2~3ノッチ悪化

物理的リスク

(2020年度)

住宅ローン

与信関係費用が2019年比70億円増加

移行リスク

(2021年度)

海運セクター

代替燃料シフトによるコスト増、炭素価格の動向など想定シナリオにより財務影響に大きな差異を認識。投融資先のお客さまと意見交換を実施

移行リスク

(2022年度)

国内全セクター

(国内事業法人)

Current Policy(3.0℃シナリオ)と比べ、与信関係費用が2050年までの累計で最大135億円増加するが、財務への影響は軽微

物理的リスク

(2022年度)

不動産セクター

(ノンリコース・ローン)

信用格付に与える影響は限定的。都心部での被害想定額の推計精緻化や地下のインフラ被害とその影響長期化などの潜在的なリスクについて課題認識

物理的リスク

(2022年度)

不動産セクター
(J-REIT)

与信関係費用は年間最大0.2億円増加するが、影響は軽微

移行リスク

(2023年度)

全セクター

(国内・海外事業法人)

Current Policy(3.0℃シナリオ)と比べ、与信関係費用が2050年までの累計で最大903億円増加するが、財務への影響は軽微

物理的リスク

(2023年度)

国内太陽光発電プロジェクト

2100年までの土砂災害、雪害による累計与信関係費用が4億円程度と財務的影響は軽微。また、リスクの高い案件の地理的分散、付保などの対策の十分性を確認

 

 

ハ.気候変動に関する機会の認識

 脱炭素社会の実現に向け、社会構造・産業構造が大きく変わり始めるなか、グリーン技術開発や設備投資には巨額の資金が必要となります。政府の試算によると、日本国内だけでも、2030年までに約150兆円の資金需要が発生するといわれています。米国では、インフレ抑制法(通称IRA法)が成立し、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)など気候変動に関連する産業に対して税額控除や補助金を提供し、10年間で3,690億ドルを米国政府が支援する予定です。これに欧州連合(EU)も追随し、グリーンディール産業計画を発表するなど、世界各国がGX(グリーントランスフォーメーション)投資を促進する政策を打ち出しています。

 このような莫大な資金需要に応えるためには、官民で資金を出し合うブレンデッドファイナンスが必要不可欠です。当グループはこのような機会を逃すことなく、金融機関としての役割を果たし、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を目指していきます。

 

 

<各セクターにおける機会の認識>

電力セクター

エネルギー源

・再生可能エネルギーの拡大(太陽光発電、風力発電など)

・グリーン水素・アンモニア等に係る非化石のバックアップ電源の実現

・原子力発電の優位性向上

・電力系統の増強

製品サービス・市場

・EVや蓄電池の普及・拡大など、脱炭素化の潮流による社会全体での電化拡大と電力需要増加

・分散リソースの有効活用に資するVPP事業(注1)、デマンドレスポンス(注2)など

石油・ガスセクター

資源の効率性

・資源循環社会への移行に伴う低環境負荷製品の需要増加やケミカルリサイクル事業の拡大

エネルギー源

・再生可能エネルギー(風力発電事業)ほか低炭素エネルギーの需要増加

・グリーン水素、アンモニア、合成燃料、バイオ燃料などのゼロエミッションエネルギーの供給、サプライチェーン構築

製品サービス・市場

・お客さまの行動変化によるeモビリティー関連サービス事業拡大、及びカーシェア等の新たなサービス事業拡大

・CCUS(注3)技術の進展によるCO2排出削減事業の拡大

・良質なカーボンクレジットの需要拡大

不動産セクター

資源の効率性

・資源循環社会への移行に伴う低環境負荷製品の需要増加(低炭素セメント、木造建築、リサイクル建材など

エネルギー源

・再生可能エネルギー(創エネ、自己託送(注4)、コーポレートPPA(注5)など)の需要増加 ・省エネ・創エネ

・蓄電設備の需要増加

製品サービス・市場

・建設時の資材運搬等におけるEV関連サービス事業拡大、及びカーシェア等の新たなサービス事業拡大

・建築物の建設時、運用時、解体時のGHG排出量の可視化・管理に向けたシステム開発・導入の拡大

・環境不動産の認証制度・評価指標の高度化

海運セクター

資源の効率性

・資源循環社会への移行に伴う低環境負荷製品の需要増加(低炭素スチール、リサイクル材など)

エネルギー源

・グリーン水素・アンモニア、合成燃料、バイオ燃料などのゼロエミッションエネルギーの供給、サプライチェーン構築

・電気運搬船の商用化・拡大

製品サービス・市場

・お客さまの行動変化によるゼロエミッション輸送サービスの需要拡大

・良質なカーボンクレジットの需要拡大

 

(注)1.VPP(バーチャルパワープラント)とは、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供することを指します。

2.需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることを指します。

3.CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、CO2の回収・利用・貯留のことを指します。

4.一般送配電事業者が保有する送配電ネットワークを使用して、工場等に自家用発電設備を保有する需要家が当該発電設備を用いて発電した電気を、別の場所にある当該需要家や当該需要家と密接な関係性を有する者の工場等の需要地に送電する制度を指します。

5.PPA(Power Purchase Agreement)とは、需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を購入する契約を指し、オフサイト・コーポレートPPAとは、需要場所から離れた場所に発電設備を設置し電力小売事業者を経由して需要家に電力供給を行うモデルを指します。

 

ニ.カーボンニュートラルに向けた移行計画

 当グループは、全世界で加速するGHG削減等の社会課題解決に向け、2021年10月にカーボンニュートラル宣言を公表するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて着実に歩みを進めていくために、ネットゼロを目指す銀行間の国際的なイニシアティブであるNZBA(Net-Zero Banking Alliance)に加盟しました。また、グループ会社である三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社は2021年7月、日興アセットマネジメント株式会社は同年11月に、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロを目指す資産運用会社によるグローバルなイニシアティブであるNZAMI(Net-Zero Asset Managers initiative)に加盟し、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロの実現を目指していきます。両社はそれぞれグローバルに資産運用を展開する機関投資家として、投資先企業などのGHG排出量ネットゼロ実現に向けた施策を検討しています。
 また、当グループは、2023年10月にカーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しました。信託グループならではの幅広い業務領域をカバーするため、銀行・運用・信託、及び自社グループ(当グループの事業活動に伴うGHG排出)のセグメントごとの特性を踏まえた構成としています。
 ガバナンス・基盤の強化を行い、指標・目標を設定するとともに、銀行・運用・信託において、サーベイや専門性・パートナーシップ等の付加価値機能をフル活用し、各ステークホルダーとの対話を通じた経営課題・ニーズの把握や、課題解決に向けた幅広いソリューションを提供していきます。また、自社グループにおいても、エネルギー使用量の削減及び再生可能エネルギーへの転換を促進するとともに、GHG排出量の計測範囲の拡大や、良質なカーボンクレジットの活用検討等に取り組んでいきます。
 これらを推進することで、当グループのGHG排出量ネットゼロ達成はもとより、お客さまの脱炭素化に貢献し、脱炭素社会の実現を目指します。移行計画の全体像及び具体的な内容は以下のとおりです。 

 

<カーボンニュートラルに向けた移行計画の全体像>


 

 

◆銀行(NZBA)

時期

現在~2050年

戦略

(ⅰ)エンゲージメント方針

お客さまへの協業型脱炭素エンゲージメント戦略

・お客さまとの継続的なエンゲージメント(対話)を通じて、脱炭素化に向けた課題を把握し、ソリューションを開発・提供することで、お客さまのGHG排出量削減に貢献していきます。

・電力、石油・ガス、不動産、海運、鉄鋼、自動車等の高排出セクターのお客さまを中心に2023年度末までに50社とのエンゲージメントを実施しており、2025年度までに150社とのエンゲージメントを予定しています。

地域社会との関わり方

・お客さまを通じた脱炭素化に加え、地域社会に対しても、当グループの多彩な機能を提供することで、企業、地域社会の双方向での脱炭素化を加速させていきます。

・大学をはじめとする研究機関とも、当グループの機能提供や共同研究を通じて、革新的な技術の社会実装を支援します。

イニシアティブ・その他ステークホルダーとの関わり方

・イニシアティブへの参加・協議を通じて、協働エンゲージメントやルールメイキングについて積極的に関与していきます。

・困難な社会課題解決のために、お客さま以外のステークホルダーの皆さまとの対話を重視します。

(ⅱ)脱炭素ビジネスの推進

サステナブルファイナンスの拡大

・2023年にサステナブルファイナンスの2030年度までの累計取組目標を10兆円から15兆円(インパクトエクイティ2.5兆円を含む)に拡大し、お客さまの脱炭素化、脱炭素社会の実現に向けた資金面での支援を進めています。

TBFチームによる「技術×政策×金融」

・2021年にサステナビリティ推進部内に組成したテクノロジー・ベースド・ファイナンス(TBF)チームにおける「技術への深い知見」に、「政策的観点」や「信託銀行の多彩な機能」を組み合わせることで、社会課題解決を目指します。

インパクトエクイティの活用

・インパクトエクイティによる社会課題解決に向けた資金提供とともに出資先の技術等を活用したソリューションを提供していきます。

セクター戦略

・2030年中間削減目標を設定したセクターは、NZBAに基づき、セクター戦略を策定の上、当該セクターの脱炭素化に向けた取り組みを進めていきます。(電力、石油・ガス、不動産、海運セクターは策定済、鉄鋼、自動車セクターは2024年10月までに策定予定)

ERMコンサルティング

・2024年4月に世界最大のサステナビリティ専門コンサルティング企業であるERMグループと、「ERM SuMi TRUST コンサルティング株式会社」を設立し、ERMグループのグローバルな知見・技術を活かした、質の高い調査・分析・コンサルティングを提供し、法人のお客さまの脱炭素・トランジションに関する経営課題の解決に貢献していきます。

(ⅲ)プロセスの高度化

気候変動対応プロセスの運営開始

・気候変動移行リスク・セクターヒートマップを基に、GHG排出量削減目標を設定する重要なセクターを特定し、中間削減目標を設定のうえ、セクターポリシー、与信審査及びリスク評価・リスク低減措置に関する各種基準を設定・運営しています。

気候変動シナリオ分析の範囲拡大

・信用リスクへの影響を把握するために、移行リスク、物理的リスクのシナリオ分析を段階的に拡大しています。2023年度は、海外事業法人の移行リスクと、国内の太陽光発電プロジェクトファイナンスの物理的リスクを分析しました。

指標・目標

・投融資ポートフォリオにおけるGHG目標(2030年中間削減目標(セクター別)、2050年ネットゼロ)

・金額目標(サステナブルファイナンス、石炭火力発電所向け融資)

 

◆運用(NZAMI)

時期

現在~2050年

戦略

(ⅰ)三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社

・気候変動をESGマテリアリティの1項目として特定しており、投資先企業の「気候変動に関するリスクと機会」を踏まえたエンゲージメントやイニシアティブ活動、議決権行使を通じて、脱炭素社会への移行を後押しします。

(ⅱ)日興アセットマネジメント株式会社

・アジア企業で数少ない英国スチュワードシップ・コード署名機関として、組織体制、人員両面で、投資におけるESG対応を強化しています。グローバルネットワークを活かした商品提供を推進し、脱炭素社会への移行を後押しします。

指標・目標

GHG目標(2030年中間削減目標、2050年ネットゼロ)

 

 

 

◆信託

時期

現在~2050年

戦略

(ⅰ)投資家ビジネス

・投資家のお客さま、運用会社、投資先企業に対してコンサルティングやモニタリング、プロダクト等のESG機能の提供を行うことで、ESG投資を推進・強化し、日本経済全体のサステナブルな発展・成長に貢献していきます。

(ⅱ)不動産ビジネス

・不動産ESGサーベイによる立ち位置の可視化を起点として、環境認証支援や再生可能エネルギーの提供・マッチング等の支援を行い、受託物件はもとより、不動産セクター全体の脱炭素化に貢献していきます。

 

◆自社グループ

時期

現在~2030年

戦略

(ⅰ)2030年目標と進捗状況

・当グループでは、2030年までのGHG排出量Scope1・2ネットゼロ目標を掲げ、着実に削減を進めています。

(ⅱ)GXリーグ(注)への参画

・当グループのGHG排出量Scope1・2の約9割を占める三井住友信託銀行はGXリーグへ参画し、2025年度中間削減目標を設定しました。

(ⅲ)今後の方針

・グループ会社を含めたScope3の計測範囲を拡大し、再生材料や低排出製品を積極的に採用していきます。

・環境データの信頼性を確保するため、GHG排出量について第三者保証の範囲拡大を検討していきます。

・自助努力により最大限、排出量の削減に取り組み、削減困難な部分は、良質なカーボンクレジットの活用も検討していきます。

指標・目標

GHG目標(2025年度中間削減目標、2030年ネットゼロ)

 

(注)2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXヘの挑戦を行い、現在及び未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取り組みを行う企業群と官・学と共に協働する組織です。

 なお、当社では、カーボンニュートラルに向けた取組推進のため、以下のガバナンス・基盤を強化していく計画です。

ガバナンス・基盤

(ⅰ)ガバナンス体制・リスクアペタイト指標の設定

・当グループは取締役会を中心とした監督・執行のガバナンス体制を構築し、リスクアペタイト指標を設定しリスクアペタイトフレームワークを活用してモニタリングを行っています。

(ⅱ)人材育成・サステナビリティ活動

・社員の環境意識と脱炭素に係る知見向上を目的とした人材育成プログラムの強化や、社員参加型のサステナビリティ活動を全国の営業店部で展開し、社員への啓発活動に取り組んでいます。

 

 

③人的資本にかかる戦略:人事戦略とWell-beingの向上

 当グループの掲げるパーパスを実現し、社会課題への取り組みを通じた資金・資産・資本の好循環の促進と市場の創出による成長を図るためには、非財務資本、その中でも人的資本の充実が重要と考えており、当社のマテリアリティにおいては「人的資本」をガバナンス・経営基盤マテリアリティとして特定しています。社員は価値創造の源泉となる重要な資本の一つ(人的資本)であり、社会的価値創出及び経済的価値創出の重要な担い手です。人的資本への投資による社員のWell-beingの向上を通じて、お客さまや社会に対する価値創出が実現し、社会の一人ひとりのWell-being向上に繋がります。その結果として、社会の成長とともに当グループの企業価値も向上し、それが社員一人ひとりの励みや誇り、やりがいといった社員のWell-being向上をもたらす「好循環」を創り上げると考えております。


 

 価値創造の起点となる社員のWell-beingについて、当グループでは「イ.心身ともに健康で、ロ.会社のパーパスに共感しながら、ハ.多様性を認め合う良好な人間関係のもと、ニ.自分の価値や強みを活かして、働く幸せを追求していける状態」と定義し、社員のWell-beingを追求することで人的資本の向上を実現してまいります。

 


 

イ.健康経営(心身ともに健康)

 当グループでは、社員が健康と幸福を実感し、持続的に能力を発揮することで人的資本の向上を目指しております。そうした心身両面での健康推進を目指した取り組みが評価され、当グループは7年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されております。

(ⅰ)働き方の最適化

当グループでは、「多様な働き方とワークライフバランスの実現」に向けて、IT投資強化や業務プロセス改革による生産性向上と時間外労働の削減、また、時差出勤や在宅勤務等、柔軟な働き方推進への取り組みを行っています。三井住友信託銀行株式会社では、勤務間インターバル11時間の導入や計画的な休暇取得を奨励しており、有給休暇取得日数、取得率ともに上昇しております。更なる働き方の最適化に向け、グループでの勤務間インターバル11時間の導入や、三井住友信託銀行株式会社では、有給休暇取得率目標の設定を検討しております。

(ⅱ)健康マネジメント

当グループでは、心身の健康推進へ、研修などを通じた啓蒙活動を行っているほか、各事業所へ産業医を配置し、きめ細かい健康管理・健康指導を行っております。三井住友信託銀行株式会社では、年1回の健康診断の受診に加え、健康管理システムを導入し、社員ごとの個別指導を行うことで、再検査受診率は上昇しております。また、心の健康では、ストレスチェックやプレゼンティーズム、アブセンティーズム(注)の測定により社員の状態を把握しているほか、カウンセラーの設置や各種セミナーの開催を通じて、心の健康維持に努めております。今後も、社員の健康維持・向上に力を入れ、人生100年時代にふさわしい健康経営の推進を図ってまいります。

 

(注)プレゼンティーズムとは、出勤しているものの、何らかの健康問題によって業務効率が低下している状態、アブセンティーズムとは、仕事を休業ないし欠勤している状態を指します。

 

ロ.エンゲージメントの強化(会社のパーパスに共感)

 当グループでは、社員が会社のパーパスに共感し、経営課題や社会的使命に取り組むことで、人的資本の向上を目指しております。

(ⅰ)パーパスの浸透

当グループでは、全社的なパーパスの浸透に取り組んでおり、三井住友信託銀行株式会社では、パーパスのより一層の浸透を目指し、社長自らがパーパスに込めた思いを全社員に伝える社長キャラバンや、全課長・チーム長を対象とした社長との対話型オンライン講話、次世代の育成を目的とした信託FR(Future Generations Relations)座談会を開催するなど、全社的なパーパス浸透を図っております。

(ⅱ)やりがい・働きがいを生む風土

当グループでは、「全社員がやりがいを持って活躍し成長できる機会の提供」に向け、チャレンジと学びを後押しする風土構築とコミュニケーションの活性化に取り組んでおります。当グループは2024年に創業100年を迎えましたが、100周年記念事業でも、関連会社24社から443人(2024年3月末時点)の社員をアンバサダーとして選出し、社員が主導して事業を推進する等、やりがい・働きがいを生む風土の構築を意識しております。三井住友信託銀行株式会社では、店部長自らが講師を務めて自身の経験や学びを伝達する店部長塾を開催している他、1on1コーチング研修を通じたマネジメント層のコミュニケーションスキル向上により、心理的安全が担保された風通しの良い職場環境の構築に努めております。また、社員意識調査やパルスサーベイを導入し、社員の声を経営層やマネジメント層で把握しながら、更なる向上に努めております。結果、満足度は大きく上昇している一方で、活性度は横ばいとなっており、今後は社員の行動の後押しを更に強化してまいります。

(ⅲ)Well-beingの推進

当グループでは、2021年4月にWell-being担当役員を設置し、日本経済新聞社主催の「Well-being Initiative」等、産官学連携セッションへ参画しながら、社内外でのWell-being推進活動を強化しております。また、FINANCIAL WELL-BEING(注1)への貢献に取り組み、人生100年時代に、お客さま一人ひとりの幸せに資するベストパートナーを目指しております。その価値創出の担い手である社員自身のFINANCIAL WELL-BEING実現に向けて、三井住友信託銀行株式会社では、年金業務・職域業務で培った高品質な投資教育ノウハウを社員に還元し、社員の資産形成支援を強化しています。2022年度には、社員と会社がベクトルを合わせ、中長期的な成長を追求できる仕組みとして、全社員に対して株式報酬(RS信託(注2))を導入しております。

 

(注)1.FINANCIAL WELL-BEINGとは「お金や資産について、不測の事態に対する備えと将来に向けた準備ができて、安心できる状態」を指します。

   2.株式交付信託と譲渡制限付株式の利点を組み合わせた社員向け株式報酬制度を指します。
 

ハ.組織力の強化(多様性を認め合う良好な人間関係)

 当グループでは、「個々人の多様性と創造性を経営に生かす」ことを重視しており、多様な属性・背景を有する社員が公正・公平(エクイティ)な支援の下、その多様性と創造性が組織の付加価値となるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの概念そのものを経営理念(ミッション)に掲げ、人的資本の向上を目指しております。

(ⅰ)女性活躍推進の取り組み

当グループでは、2030年までに女性役員比率を30%以上にするという経団連の「2030年30%へのチャレンジ」に賛同し、女性管理職比率のKPIを策定しております。また、三井住友信託銀行株式会社では、全社員向け研修のほか、女性リーダー層を対象とする階層別研修、自律的なキャリア形成を支援するためのキャリアデザイン研修を実施しております。2021年度に導入した、役員自らが女性社員のキャリア形成をサポートする「サポーター役員制度」を継続して実施しておりますが、役員が、マネジメントを担う女性社員のメンターを務めることの効果を実感しております。今後も課長登用を見据えた女性リーダー研修の導入など、女性活躍推進への取り組みを強化してまいります。

(ⅱ)多様な人材の活躍推進

信託グループ特有の広く深いビジネスフィールドを維持しつつ、成長領域を確立するには、多様な経験とスキルを有する人材群の確保が不可欠と考えており、各種施策を推進しております。

キャリア

採用社員

多様なバックグラウンドのキャリア社員の採用を強化しております。三井住友信託銀行株式会社では、成長領域の確立に向け、理学や工学の博士号取得者を採用し、テクノロジー・ベースド・ファイナンスチームを立ち上げるなど、持続可能な社会に向けたポジティブ・インパクトの創出を目指す取り組みも進めております。

障がい者

当グループでは、障がいの有無にかかわらず、職場の一員としてやりがいを持って働くことができる職場環境の構築を目指しております。2022年度に人事部内に知的・精神(発達)障がいのある社員の採用・活動支援を担う組織を立ち上げ、2024年度には大阪にも拡大しております。

外国籍社員

当グループでは、多くの外国籍社員が活躍しており、マネジメント職に就く外国籍社員の比率は年々上昇しております。また、海外拠点で働く現地スタッフを対象に、当グループ及び業務理解の深化、ネットワーク強化等を目的とした研修の開催や、国を跨ぐ人材配置により人材交流を進めております。

両立支援

ライフスタイルに応じた働き方の実現、ライフイベントに左右されないキャリア継続を目指し、両立支援制度の充実と風土醸成に取り組んでおります。三井住友信託銀行株式会社では、2022年度に、産前・産後に男性社員が長期の育休を取得することが可能となるベビーケア休暇を新設し、1か月の休暇取得を推奨する取り組みを開始したことで、男性育休取得率だけでなく取得日数も拡大しております。今後も、「仕事」と「家庭」の両立を後押しする選択肢を提供し、社員の自律的なキャリア形成を支援してまいります。

 

 

 

ニ.人材力の強化(自分の価値や強みを発揮)

 当グループでは、「人材育成No.1金融グループ」を目標として掲げており、2018年4月に制定した「人材育成方針」に基づき、各社員が未来に向けたありたい姿を自ら考え、実現に向けて自ら行動する「自律的なキャリア型人材」の育成に注力することで、人的資本の向上を目指しております。

(ⅰ)自律的なキャリア型人材

当グループでは、「信託の基礎知識に加え、複数の専門性を掛け合わせ、何を主軸とし、どのような専門性を融合させるかを自分で考え、自分のキャリアを自ら作る人材」を自律的なキャリア型人材と定義し、人材育成に注力しております。今日の社会システムの相互依存関係は一層拡大・複雑化し、各種課題やリスクは複雑に絡み合っており、お客さまや社会の課題解決には多面的な対応が求められます。各社員が有する基礎力にキャリアを通じて積み上げてきた専門性を融合することで生まれる総合力を駆使することで、未来に適合できる人材を創出してまいります。三井住友信託銀行株式会社では、社員自身の自律的なキャリア形成を支援するため、新入社員向けの業務チャレンジ制度(特定の事業・業務への配属を公募)や、入社5年以内に複数業務を経験する「若手育成プログラム」を実施しております。また、業務公募制度も拡充しており、多くの社員が自ら選択した業務に従事しています。2021年度からは社内副業制度を開始し、関心がある業務に副業として週1日従事することで、業務の垣根を超えた人材やノウハウの融合を図り、能力開発やイノベーションを促進しており、そのメニューも年々拡大しております。

(ⅱ)人材育成投資の充実

当グループでは社員一人ひとりの目指すキャリアの実現のため、「SuMiTRUST University(スミトラスト ユニバーシティ)」と冠した社内大学を展開しております。外部の教育機関等と提携し、役割に応じた階層別の研修や業務スキル等の向上を目的とした研修から、自己啓発まで多くのコンテンツを整備しております。また、2022年度にはラーニングマネジメントシステム「University+(ユニバーシティプラス)」を開始し、通常業務では接点のない社員が集まるネットワークの場を設けることで、社員同士が知識・経験を共有し、刺激し合うことを通じて、新たな価値を創出することを目指しております。また、IT/デジタル分野を中心に、自ら学べるコンテンツを整備しIT/デジタル人材育成に注力したことも、研修受講者数の増加を後押ししています。一方、時流に合わせて、社内知識の習得を主な目的とする集合研修のうち内容が重複していたものを整理し、一部をオンラインコンテンツとしたことで、集合研修の実施時間は減少しております。

(ⅲ)専門人材集団

三井住友信託銀行株式会社では、人材ポートフォリオの可視化に関するアセスメントを通じ、当グループのビジネスモデルをより力強く推進するために重要な人材群を特定しています。自律的なキャリア形成と業務経験の蓄積、更には人材育成投資の強化を通じて、人材力を強化してまいります。また、経営の継続に対してクリティカルなポストの特定を行い、社員やキャリア採用も含め後継者を管理する取り組みを行っており、攻めと守りの両面から人材を強化していきます。

専門人材

(フェロー)

財務コンサルタントや各事業のフロント人材に加え、ミドル・バックオフィスの人材まで、高度な専門性が認められる社員をフェローとして認定しております。これまでは、長年培ってきた専門性の評価という観点からシニア層を対象として認定してまいりましたが、2022年度から、幅広い世代を対象にすることで、更なる専門人材の拡充に努めており、認定者は増加しております。

経営人材

将来の経営人材候補を継続的に育成する取り組みとして、GL(グローバル&ジェネラルリーダー)研修及びSL(ストラテジックリーダー)研修等、選抜研修を毎年開催しております。GL研修は次世代経営者候補の育成、SL研修は次世代リーダー候補の育成を目的としており、外部講師のもと、経営に必要な価値観の習得や戦略的思考のトレーニングを通じ、経営人材の強化を図っており、経営人材の母集団となる選抜研修受講者数は増加しております。

グローバル人材

グローバルビジネスを牽引する人材を育成する取り組みとして、語学研修等を通じた言語能力の獲得によるグローバル人材候補の裾野拡大や、海外勤務未経験者の海外派遣を通じた実地経験や国内のグローバル業務への計画的配置を実施しております。また、国内中心のキャリアを積んできた次世代経営人材に対して、グローバル基準での経営観の醸成を主眼に、海外のトップビジネススクールへの短期派遣を行う選抜型の研修も実施しております。

IT/デジタル人材

信託銀行ビジネス推進に必須のIT/デジタル関連スキルを強化するため、研修拡充や資格取得支援の拡大により、リスキリングに注力しております。2023年度より、IT/デジタル人材育成に向けた具体的なKPIを設定し、研修コンテンツの充実等の取り組みを行った結果、IT/デジタル人材の育成は計画どおり進捗しています。デジタルテクノロジーを活用し、環境変化や顧客ニーズに合わせたビジネスを推進する人材の育成を強化してまいります。

 

 

 

 

(3)リスク管理

サステナビリティ関連リスク管理方針

 当グループは、持続可能な社会の構築に積極的に貢献することが社会的な責任であるとの認識のもと、「三井住友トラスト・グループの社会的責任に関する基本方針(サステナビリティ方針)」を掲げています。当グループの事業活動が環境・社会問題等の持続可能な社会の構築に係る課題等に及ぼす影響への配慮が不十分な場合、結果的に問題の発生や拡大あるいは助長等に関与してしまうおそれがあり、それらは当グループの企業価値を棄損するだけでなく、上記方針の実現を阻害する重要なリスクであると認識しています。

 上記のようなサステナビリティに関するリスクを的確に管理すべく、当グループでは「リスク管理規程」に「サステナビリティ関連リスク管理方針」を規定し、基本的な考え方、取締役会・経営会議・役員の役割と責任、3線防衛体制、リスクカテゴリーごとの気候変動を考慮したリスク管理方針等を定めています。

なお、サステナビリティ関連リスクのうち気候変動関連リスクは、当グループのトップリスクとして管理を行っています(トップリスクの定義等は「3 事業等のリスク」をご参照ください)。

 

②サステナビリティ関連リスク管理に向けた体制整備

 当グループでは、2023年4月に三井住友信託銀行株式会社のリスク統括部内にサステナビリティ関連リスクに対応する専門チームを設置し、サステナビリティ関連リスク管理体制の整備・高度化に取り組んでいます。2023年度は、責任ある企業行動に対する社会的要請の高まり等の環境変化を踏まえ、三井住友信託銀行が行う与信業務等の一部業務を対象に、外部データを活用したサステナビリティ関連リスクに係るデューデリジェンス実施等に関するサステナビリティ関連リスク管理の枠組みを導入しました。当該リスク管理の枠組みにて認識したリスクに対しては、リスクに応じたモニタリングや、取引先企業やステークホルダー等とのエンゲージメント(対話)を通じてリスク低減を図っていくことで、サステナビリティ方針に掲げた持続的社会の構築に向けた環境・社会課題の解決等に貢献していきます。

 

気候変動関連リスク管理方針

 当社では、取締役会の決議により気候変動に関する基本的方針として「気候変動対応行動指針」を策定しています。また、気候変動関連のリスク管理に関しては、「リスク管理規程」の中で「サステナビリティ関連リスク管理方針」を規定し、気候変動関連リスクを含むサステナビリティ関連リスクに関する基本的な考え方、取締役会・経営会議・役員の役割と責任、3線防衛体制、リスクカテゴリーごとの気候変動を考慮したリスク管理方針等を定めています。
 「サステナビリティ関連リスク管理方針」において、「気候変動関連リスク」とは、環境分野の重要課題のうち、中長期的気候変動や異常気象により、社会インフラ、自然等が物理的被害を受けたり(物理的リスク)、気候変動関連政策の変更、気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等により低炭素社会への急速な移行が起きたり(移行リスク)することで、当グループ・顧客・市場・金融インフラ・社会が悪影響を受けることと定義しています。その上で気候変動を各リスクカテゴリーに横断的に影響を与える「リスクドライバー」とした上で、各リスクカテゴリーで気候変動固有のリスク管理方針のもと、管理の具体化を進めております。

<気候変動関連リスク管理のための3線防衛体制>

3線

内部監査を行う部署

・リスク管理態勢の有効性評価

2線

統合的リスク管理部署

・気候変動関連リスクに関し、牽制機能を発揮し、各リスクカテゴリー管理部署と適切に情報共有等を行いつつ、統合的にモニタリングを実施

各リスクカテゴリー管理部署

1線の牽制、支援、気候変動固有の各リスクカテゴリーのリスクに関する管理方針策定

1線

サステナビリティ推進部

・グループGHG排出量ネットゼロ戦略立案
・気候変動に関する1線の活動を統括

グループ会社の各事業・フロント部署

・気候変動に関するリスクの特定、評価、コントロール
・お客さまによる気候変動対応に関するエンゲージメント推進

 

<気候変動固有のリスク管理方針>

 

気候変動固有のリスク管理方針

リスクホライズン(注)

信用リスク

気候変動に関する与信先モニタリング(与信先のGHG排出量、座礁資産、風水害リスクモニタリング等)

短期・中期・長期

市場リスク

気候変動対応を踏まえた投資先発行有価証券の価格変動リスクのモニタリング(GHG排出量と株価の相関関係のモニタリング、同セクター内での比較分析等)

短期・中期

オペレーショナル・リスク

事務リスク(外部委託)

委託先の風水害による委託業務の継続性

短期・中期

イベントリスク(風水害)

気候変動に起因する風水害増加が当グループ保有不動産に与える悪影響への対応

短期・中期・長期

コンプライアンスリスク

気候変動関連規制への対応

短期・中期

コンダクトリスク

気候変動に関する当グループの行為がステークホルダーの期待と信頼に応えていないことによる顧客・市場・金融インフラ・社会等に与える悪影響への対応

短期・中期

統合的リスク管理

2050年GHG排出量ネットゼロ宣言の実行(実現)失敗による当社及びステークホルダーに与える悪影響への対応

短期・中期・長期

 

(注)短期:1年以内、中期:1年超10年未満、長期:10年以上

 

④気候変動関連リスク管理に向けた対応

イ.三井住友信託銀行株式会社の与信業務における環境社会(ES)リスク管理

 三井住友信託銀行株式会社では、社会への負の影響が大きい与信は禁止、抑制、または慎重な取り組みを行う必要があるとの観点から、「セクターポリシー」を定めて、定期的に投融資審議会で見直しを行い、経営会議に報告しています。また、投融資の取組判断のプロセスにおいて、セクターポリシーに十分留意する運営としています。

ロ.投融資先の気候変動移行リスク管理

 三井住友信託銀行では、高炭素セクターごとの投融資ポートフォリオGHG排出量を、パリ協定に沿ったものへコントロールする目的で、投融資ポートフォリオ移行リスク管理態勢を構築しています。

 この中で、3線防衛体制における1線、2線の関連各部、チームの役割と責任、セクターポリシーの在り方、1線における与信先の移行リスク管理の実務プロセス(気候変動移行リスクセクターヒートマップを勘案した投融資先の移行リスク区分評価、エンゲージメントを通じたリスク削減に向けた協議、モニタリング等)、2線の牽制の在り方等を定めています。これらのリスク管理プロセスは、セクターごとのGHG排出量削減目標の進捗管理や、風評リスク管理と一体となって実施されます。

(ⅰ)気候変動移行リスクに対する対応方針
 全世界でGHG排出量削減に向けた動きが加速する中、当グループは、2021年10月に「三井住友トラスト・グループ カーボンニュートラル宣言」を公表し、投融資ポートフォリオのGHG排出量を、2050年までにネットゼロにすることを目指しています。お客さまと協働し、お客さまの中長期的な気候変動移行リスクによる影響とその対応策について、継続して対話していくことを重視していきます。
(ⅱ)気候変動移行リスク管理に対する考え方
 投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロに向けて、気候変動移行リスクセクターヒートマップを基にGHG排出量削減目標を設定する戦略上重要なセクターを特定しています。特定されたセクターについては、GHG排出量削減目標とそのモニタリング・管理、各種基準やセクターポリシーを設定しています。
(ⅲ)気候変動移行リスク管理プロセス
 GHG排出量削減目標を設定したセクターについては、新規与信先・既存与信先に関わらず、移行リスクに関するデューデリジェンスを実施した上で、投融資の取組判断を行うこととしています。
 特に、与信残高が一定以上となる場合は、リスクの重要性を勘案して、気候変動移行リスクを区分しています。この気候変動移行リスク区分は定期的に見直すとともに、必要に応じて、区分に応じた追加的リスク低減措置を検討します。

⑤人権マネジメント

 当グループでは、「人権」尊重の責任を継続的に果たしていくことを「人権方針」において掲げています。事業活動における人権を尊重する責任を果たすべく、人権課題を確認することを目的に、年1回、グループ各社を対象に「人権デューデリジェンスチェックリスト」を送付し、役員・社員、取引先・サプライヤーにおける人権課題の把握、改善策を講じることに努めています。本チェックリストの結果を含め当グループの人権対応状況を把握し、必要な課題の抽出、改善策を協議する場として、「人権デューデリジェンス連絡会」を設置しています。本連絡会の審議を通じて、人権啓発研修の内容見直し等の具体的取組に反映させています。

 

(4)指標及び目標

①気候変動関連の主な指標及び目標

 当グループでは、気候変動に係る当グループの戦略とリスク管理の基本方針に基づき管理する具体的指標及び目標を設定し、グループにおける気候変動対応の状況をモニタリングしています。今年度における主な指標及び目標は下表のとおりです。なお、当グループは指標の状況を定期的に確認し、外部環境の変化や戦略の見直しに伴い、指標の見直しを行っております。

カテゴリー

指標

目標

気候変動ビジネス機会

サステナブルファイナンス累計取組額

2021年度~2030年度 累計取組額15兆円

リスク管理

投融資ポートフォリオのGHG排出量(注1)

2050年までにネットゼロ

自社グループのGHG排出量

(注2)

2030年までにネットゼロ

石炭火力発電向け貸出残高

プロジェクト貸出残高を2030年度に2020年3月末比半減
プロジェクト貸出残高及びコーポレート貸出(新規・拡張)残高を2040年度までにゼロ

運用ポートフォリオのGHG排出量(三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社、日興アセットマネジメント株式会社)

(注3)

2050年にネットゼロ

 

(注)1.投融資ポートフォリオについては、セクターごとに以下の中間削減目標を設定しており、実績は記載のとおりです。

セクター

中間削減目標

進捗実績値

電力

2030年度:138~173g-CO2e/kWh

(2020年度:249 g-CO2e/kWh)

2022年度:253 g-CO2e/kWh

石油・ガス

2030年度:2020年度比▲13%~▲31%

(2020年度:3.6 Mt-CO2e。計測方法の変更に伴い、5.7 Mt-CO2eから変更)

2022年度:2020年度比+19%

不動産

2030年度:34~41kg-CO2e/㎡

(2021年度:66 kg-CO2e/㎡)

2022年度:62 kg-CO2e/㎡

海運

2030年:

Portfolio Climate Alignment 0%以下

2022年:

旧基準 ▲4.5%

新基準 (努力目標)+21.2%(最低目標)+16.9%

鉄鋼

2030年度:2019年度比▲22%~▲27%

(2019年度:4.3Mt-CO2e)

2022年度:2019年度比▲22%

自動車

(生産段階)

2030年度:2019年度比▲47%

(2019年度:224kt-CO2e)

2022年度:2019年度比▲30%

自動車

(製品段階)

2030年度:106~128g-CO2e/vkm

(2019年度:202g-CO2e/vkm)

2021年度:196 g-CO2e/vkm

 

(注)2.自社グループのGHG排出量については、2022年度の実績でScope1(直接排出)とScope2(間接排出)合計で9,997t-CO2eとなり、前年度と比較して約57%削減しました。また、GHGプロトコルに準拠した計測・集計を行い、三井住友信託銀行単体(Scope1,2)の一部について、初めて第三者保証を取得しました。今後、利用データの質的・量的な充実や、計測手法の改善を通じた分析精度の向上に努めます。

(注)3.運用ポートフォリオについては、各社ごとに以下の中間削減目標を設定しており、実績は記載のとおりです。

社名

中間削減目標

進捗実績値

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社

運用資産の50%を対象(注4)に、2030年の排出原単位を2019年比半減

2023年6月末:2021年6月比(注5)▲8.7%

日興アセットマネジメント株式会社

運用資産の43%を対象(注6)に、2030年の排出原単位を2019年比半減

2022年12月末:2019年12月比▲22.8%

 

(注)4.2021年6月末時点の運用資産85兆円の50%にあたる約43兆円が対象

5.目標は「2019年比半減」であるが、2021年6月時点のポートフォリオに対して、2019 年の排出データを使用して算出したため、進捗実績値を「2021年6月比」と表記

6.2021年12月末時点の運用資産31兆円の43%にあたる約13兆円が対象

 

 

②人的資本関連の主な指標及び目標

 当グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。なお、施策の浸透とともに各種指標は上昇しております。

 


備考欄に「※1」のあるものは当グループ全体、その他は三井住友信託銀行株式会社のデータ、「※2」のあるものは当事業年度から新たに情報公表を開始したデータであります。

(*1)ストレスチェック実施先の増加により2022年度までは関係会社17社、2023年度は関連会社18社の結果の単純平均としています。

(*2)設問「自分自身の思考や行動に影響を与えている」についての、関連会社のスコアの平均であります。2022年度以前は社員意識調査を実施した関連会社17社の単純平均であり、2023年度は、所属従業員が少ない会社のスコアへの影響を排除するため、社員意識調査を実施した関係会社のうち従業員数50人以上の関係会社15社の単純平均としています。

(*3)設問「あなたは、この会社で働いていることに、満足している」についてのスコアであります。

(*4)設問「自分の仕事に対して誇りを持っている」等、関連する10の設問についてのスコアの平均値であります。

(*5)各年度中に育休を取得した男性労働者の数を、各年度中に配偶者が出産した男性労働者の数で割った比率であり、100%を超える水準となっております。

(*6)2022年度より集計開始しており、2021年度の実績数値はありません。

(*7)新中期経営計画(2023-2025年度)にあわせて新たに設定した指標であり、2021年度、2022年度の実績数値はありません。

 

 加えて、更なる人的資本の向上に向けた主なKPIとして、次のとおり目標を設定しております。


備考欄に「※」のあるものは当グループ全体、その他は三井住友信託銀行株式会社のデータであります。

(*1)ストレスチェック実施先の増加により2022年度までは関係会社17社、2023年度は関係会社18社の結果の単純平均としています。

(*2)設問「自分自身の思考や行動に影響を与えている」についての、関係会社のスコアの平均であります。2022年度以前は社員意識調査を実施した関係会社17社の単純平均であり、2023年度は、所属従業員が少ない会社のスコアへの影響を排除するため、社員意識調査を実施した関係会社のうち従業員数50人以上の関係会社15社の単純平均としています。

(*3)設問「自分の仕事に対して誇りを持っている」等、関連する10の設問についてのスコアの平均値であります。

(*4)2023年度にて2025年度の目標であった92の水準を達成しており、今後は90を維持すべく2025年度の目標を90へと引き下げております。