2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当グループでは、フォワードルッキングな視点で、1年以内に当グループの事業執行能力や業績目標に重大な影響をもたらす可能性があると考えているリスクをトップリスク、中長期的に重大な影響をもたらす可能性があると考えているリスクをエマージングリスクとして、経営者が定期的に選定のうえ、リスクの状況をモニタリング、コントロールしながら、対応策を講じ、取締役会等への報告を行っております。以下の記載における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当グループが判断したものです。

 

<トップリスク及びエマージングリスクの(リスク認識)の表記について>

当グループでは、管理すべき重要なリスクについて、それぞれの「発生可能性」と「影響度」で評価したリスクマップを作成し、定期的に取締役会等に報告しております。当グループのリスク認識として、各トップリスク及びエマージングリスクのリスクマップにおける位置を色と番号で示しています。

 


 

(1) トップリスク及びエマージングリスクとリスク対応策

イ.トップリスクとリスク対応策

トップリスクの内容

当グループにおける対応策

①政策保有株式等の価格下落に関するリスク

当グループは、取引先との安定的・長期的な取引関係の構築、業務提携、又は協働ビジネス展開の円滑化及び強化等の観点から、取引先等の株式等を保有してきております。「株式等の政策保有に関する方針」に基づき、継続的にそれらの削減に取り組んでおりますが、保有期間中において大幅な株価下落が生じる場合には保有株式の減損処理や評価損益の悪化を通じて、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、従来型の政策保有株式(資本・業務提携等を目的とせず、安定株主として保有する取引先の株式等)は原則すべて保有しない方針としております。当該方針のもと、取引先各社の持続的な企業価値向上と課題解決に向けた対話を通じて政策保有株式の削減を加速させてまいります。

・三井住友信託銀行株式会社では、保有している政策保有株式に係る時価変動リスクに対して、相場変動による影響を抑制し経済価値を確保するため、その一部について、経営会議でヘッジ方針を決議のうえ、ヘッジ取引を実施しております。

・当該ヘッジ取引実施後の正味の時価変動リスクに加え、政策保有株式・ヘッジ取引それぞれの評価損益の状況は、日次で計測され財務審議会構成員に報告されており、株価水準等に応じた運営・管理を実施しております。

 

信用ポートフォリオにおける大口与信先への与信集中リスク

多額の信用を供与している取引先グループ(以下、「大口与信先」)の信用状況が悪化した場合、多額の与信関係費用が発生する可能性があります。また、担保取得等のリスク軽減措置を講じていたとしても、担保価値の下落、その他予期せざる理由により与信関係費用が発生する可能性があります。これらにより、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・三井住友信託銀行株式会社では、信用格付に応じて取引限度額を設け、大口与信先ごとに信用供与額を管理しております。また、大口与信先に対する与信集中の状況、大口与信先の信用格付の状況について月次でモニタリングを実施し、投融資審議会に報告しております。また、定期的に与信集中リスクに関するストレステストを実施する等、当グループに与える影響を勘案した大口与信先リスク管理もあわせて実施しております。

 

 

 

トップリスクの内容

当グループにおける対応策

不動産市況変調リスク

国内外の不動産市況の変調により、当グループの不動産業向け与信取引と不動産の仲介・媒介業務に悪影響が及ぶ可能性があります。不動産業向け与信取引では、不動産業に特有の要因でクレジットの質が低下した場合には、その回収率が低下し、これにより与信関係費用が増加する可能性があります。

また、不動産の仲介・媒介を行う不動産事業では、不動産市況の低迷により、不動産取引量が減少、不動産仲介・媒介に係る手数料収入が減少する可能性があります。これにより、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・三井住友信託銀行株式会社では、国内外の不動産市況、不動産業向け与信取引の状況を月次でモニタリングし、対応策とともに投融資審議会に報告しております。また、定期的に不動産業向け与信リスクに関するストレステストを実施する等、当グループに与える影響を勘案したセクター集中リスク管理もあわせて実施しております。

 

サイバー攻撃に関するリスク

ランサムウェアなどのマルウェアの感染、DDoS※1攻撃、BEC※2(Eメール詐欺)は、サプライチェーンへの攻撃等、企業活動に深刻な影響を与えるサイバー攻撃は、ますます大きな脅威となっています。

サイバー攻撃に対しては、継続して対策・強化策を実施しておりますが、攻撃方法は絶えず進化しており、最新の攻撃に対しては万全ではない可能性があります。このため、同攻撃により当グループのサービスの停止や情報漏洩、データの破壊・改ざん等が発生し、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。 ※1 Distributed Denial of Service attack
※2 Business Email Compromise

(リスク認識)


 

当グループは、「サイバーセキュリティ経営宣言」を策定のうえ、経営の重要課題として対策に取り組んでおります。具体的な取り組みとしては、主要グループ関係会社におけるサイバーセキュリティに関する第三者評価作業の実施など態勢面での対応に加え、統合ログ監視の導入やDDoS攻撃対策の高度化による技術的なセキュリティ向上を行う等、多様なサイバー攻撃に対する各種対応を推進しております。

・サイバーセキュリティに対する取り組みは年度計画として策定のうえ、実施状況等について、IT審議会などに定期的に報告し、審議を行っております。また、外部環境の変化を考慮のうえ、定期的にセキュリティの十分性を確認・検証するなど、継続的にPDCAサイクルに則った改善対応を行っております。

 

 

 

 

トップリスクの内容

当グループにおける対応策

法務・コンプライアンスリスク

当グループは、銀行法、金融商品取引法、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律等の各種法令諸規則等の遵守を徹底しておりますが、役員及び社員が遵守を怠った場合、当グループに対する罰則・行政処分や市場での評価の失墜を招く可能性があります。また、当グループが提供する商品・サービスが顧客の期待に合致せず、業務遂行の過程で発生する様々なトラブルやクレームに起因して損害賠償請求訴訟を提起される可能性があります。これらにより、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、グループ各事業の特性に応じた適切なコンプライアンス態勢を整備するため、コンプライアンス・プログラムを策定し、進捗・達成状況を管理しております。

・当グループは、グループ全体としてコンプライアンス意識の浸透を促進するため、コンプライアンス研修を強化しております。具体的には、グループ全体にまたがるテーマについて、eラーニング研修やディスカッション型勉強会などの研修資料をグループ各社に提供しております。グループ各社は、業務・商品の特性やお客さまの属性に応じた研修、勉強会及び個別テーマに関するeラーニング研修を実施しております。

・グループ各社の役員・社員が当グループの大切な価値観を具体的に移すための指針である「私たちの行動指針」の更なる活用、ホットライン活性化等、声をあげる組織風土の醸成に向けた施策を検討、その理解浸透を図っております。

 

⑥金融犯罪を未然に検知し防止する能力に関するリスク

マネー・ローンダリング等の金融犯罪を未然に検知し防止する能力に関して、金融当局は、金融機関に対し引き続き高い期待を持っております。当グループは、当局と協力しながら対応しておりますが、金融犯罪等の手口は巧妙化しており、将来的には金融犯罪等防止態勢の不備により、当社商品・サービスが金融犯罪に利用され、それにより国内外の当局から行政処分や巨額の制裁金を課せられる可能性があります。また、当グループの顧客が金融犯罪の被害者になるリスク、当グループと反社会的勢力等で取引関係が生じるリスク、これらに起因したレピュテーション毀損のリスクがあり、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等のリスクを網羅的かつ具体的に評価した上で、当グループが直面する金融犯罪等のリスクに対し、その評価の程度に応じてリスクを低減させる施策を立案・実施しております。また、実際に金融犯罪等に接する可能性がある社員のリスク感度向上の重要性を認識し、教育・研修等の実施を通じて、人材の育成・確保に努めております。加えて、システム面を含め金融犯罪等の防止態勢の更なる高度化に努めております。

 

 

 

 

トップリスクの内容

当グループにおける対応策

データ管理に関するリスク

当グループは、お客さまへのさまざまなサービスの提供や対外的な報告等のため、各種システム等にてお客さまのデータや経営管理に必要な基礎データ(以下、「経営情報等」という。)を管理しております。経営情報等の管理については、バーゼル銀行監督委員会の「実効的なリスクデータ集計とリスク報告に関する諸原則(BCBS239)」に沿って確立したデータガバナンス体制を適用する業務範囲の拡大と高度化、実効的な重要報告の品質管理フレームワーク運営が課題となります。これらの経営情報等のデータ品質管理プロセスに不備があることにより、経営の意思決定等を誤り、当グループの企業価値の低下や信頼を失うことはもとより、業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、個人情報、経営情報等の管理に関する統制フレームワークを整備し、継続的なデータ管理の強化及びBCBS239に沿ったデータガバナンスの高度化に努めております。

・毎年度、品質管理方針の策定並びにデータ統制環境・整備改善計画を策定し、経営情報システムの高度化を図るとともに、重要報告に係る品質管理フレームワークのPDCAを通じて、報告品質・データ品質の高度化を図っております。

・情報管理に関するポリシーや事務手続等を策定しており、社員に対する教育・研修等により情報管理の重要性について周知徹底しております。

 

⑧ビジネスモデルの持続性に関するリスク

国内外の物価上昇を背景に、計画以上の費用が発生する可能性があります。また、同業他社との競争激化等により、費用に見合った適正な価格設定ができない、あるいは価格の見直しが遅れる可能性があります。

当グループはAUF(Assets Under Fiduciary)の拡大を通じた成長を目指す計画を策定し、様々な施策を実行しております。しかしながら、こうした計画や施策が実行できない、あるいは計画や施策が実行できた場合でも当初想定した成果の実現に至らない可能性があります。

これらにより、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、収益力強化とリスク管理高度化の両立を主な目的とした経営管理の枠組み(リスクアペタイト・フレームワーク)を導入しており、リスク・リターン・コストの3つの観点から設定する指標(リスクアペタイト指標)のモニタリング・検証を通じた計画や施策の見直しおよび高度化を必要に応じ実施しています。

・加えて、定期的に、マクロ経済シナリオをベースにした中期的なポートフォリオシミュレーションを実施し、ストレス時の対応策等も協議しております。

・また、多様化するニーズにより的確に応えるビジネスモデルへの進化、デジタル技術の活用も含めた業務効率化等によるコスト構造改善にも努め、競争力の強化を図っております。

 

 

 

 

 

トップリスクの内容

当グループにおける対応策

気候変動に関するリスク

中長期的気候変動により、自然環境や社会インフラ、顧客の資産等に物理的被害が及ぶリスク(物理的リスク)が増加したり、政策変更や、気候変動に対する金融市場の選好や社会通念の変化、技術革新等による低炭素社会への急速な移行(移行リスク)が起こったりすることにより、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

具体的には、自然災害により与信先の信用状況や担保資産の価値が悪化するリスク(物理的リスク)や、低炭素社会への急速な移行により、二酸化炭素を多く排出する企業が発行する有価証券や当該企業向け貸出金等、当グループの保有資産の価格が下落するリスク等(移行リスク)があります。

(リスク認識)


・当グループは、気候変動に関する基本的方針として「気候変動対応行動指針」を策定しています。また、気候変動関連のリスク管理に関し、「サステナビリティ関連リスク管理方針」を規定し、基本的な考え方、取締役会・経営会議・役員の役割と責任、3線防衛体制、リスクカテゴリーごとの気候変動を考慮したリスク管理方針等を明確化しています。また、気候変動をリスクドライバーとした各リスクカテゴリーにおける1線でのリスク管理プロセスを強化・監督・支援するため、2線のリスク統括部内に気候変動リスクを含むサステナビリティ関連リスクの専門チームを設置しております。

・投融資先の気候変動移行リスク管理においては、高炭素セクターごとの投融資ポートフォリオGHG排出量をパリ協定に沿ったものへコントロールする目的で、投融資ポートフォリオ移行リスク管理態勢を策定しております。この中で、関連各部の役割と責任、セクターポリシーの在り方、1線における与信先の移行リスク管理プロセス及び2線における牽制の在り方等を定めています。これらのリスク管理プロセスは、セクターごとのGHG排出量削減目標の進捗管理や、風評リスク管理と一体となって実施されます。

 

 

 

ロ.エマージングリスクとリスク対応策

エマージングリスクの内容

当グループにおける対応策

地政学に関するリスク

長期化するロシア・ウクライナ紛争に加え、米国と中国の対立が深まる等、世界的に地政学リスクの増大が懸念されます。国家間の対立や各地域における政治的不安定化等により、当グループ取引先の企業業績悪化や金融市場の混乱が生じる可能性があります。また、国家間対立における経済制裁を含む各国の規制強化に伴い、国際的な業務の運営に一部支障が生じたり、規制に抵触したりする可能性があります。これらにより、当グループの業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、定期的にマクロ経済シナリオをベースにしたストレステストを実施しており、ストレス時のアクションプランを策定しています。ストレステストにおけるマクロ経済シナリオは、トップリスクや当グループの内外環境を考慮して複数のシナリオを策定し、シナリオ毎に業績への影響度合いをシミュレーションしています。

 

 

 

 

エマージングリスクの内容

当グループにおける対応策

②イノベーションに関するリスク

フィンテック等、金融ビジネスに関わるテクノロジーの高度化は、業界の垣根を越えて進歩し、お客さまの行動にも変化が生じております。当グループがこのような変化に適応できない場合、競争力の低下や事業規模の縮小等につながる可能性があり、これにより、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、デジタル技術を活用した既存業務のオペレーションの効率化や、新たな商品・サービスの提供に取り組んでいます。

・当グループは新商品・サービス導入時に複数の部署がさまざまな角度から検証する審査体制としており、お客さまから信頼していただける商品・サービスの導入に努めております。

 

スタグフレーションリスク

海外先進国において、インフレ期待が中央銀行の目標水準に収まらなくなり、中央銀行が利下げしにくい環境となる可能性があります。また、海外先進国において、債券市場の金利水準が高止まり、株式市場・不動産市場が弱含み、実質可処分所得が低下することで、消費者心理が冷え込み需要全体が弱含む可能性があります。これにより与信先の事業等への悪影響が顕在化した場合、与信関係費用の増加等を通じて当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスク認識)


 

・当グループは、信用ポートフォリオについて、定期的にマクロ経済シナリオをベースにしたストレステストを実施しており、ストレス時のアクションプランを策定しております。スタグフレーションリスクについても、業績への影響度合いをシミュレーションしております。

 

 

 

 

(2) その他のリスク

トップリスク及びエマージングリスク以外の主要なリスクには以下のものがあります。

 

イ.事業面に関するリスク

 

① 事業戦略に関するリスク

当グループは収益力強化の観点から様々な事業戦略を展開しておりますが、以下の要因により当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(ⅰ) 経済環境・市場環境・企業業績の悪化、同業他社との競争激化等の外部要因の変化等によって、事業戦略が奏功せず、当初想定した成果を生まない可能性があります。

(ⅱ) 当グループは、顧客サービスの向上、コスト競争力の強化等を目的として、他社との提携や合弁等を通じて、効率的なグループ経営を行うことにより、当グループとしての中長期的な収益力強化を図っておりますが、他社との提携や合弁等に伴うコスト、採用する事業・再編戦略や会計方針、事業環境の変化、その他の外部要因等により、期待通りのサービス提供や成果を確保できない可能性があります。また、このような提携や合弁等には、当グループと相手先との利益相反や意見対立、提携や合弁等の解消等様々なリスクがあります。

(ⅲ) 当グループの業務範囲の拡大、金融サービスや管理システムの高度化に伴って、当グループが従来経験のない、もしくは予想されなかったリスクあるいはより複雑なリスクに晒される可能性があります。

 

② 企業買収・出資・資本提携等に関するリスク

当グループは、企業価値の向上を目的として、企業買収、出資、資本提携、子会社の設立等を行っており、今後も同様の企業買収等を行う可能性があります。しかし、これら企業買収等は、法制度の変更、競争環境の変化等により、想定通りの効果が得られない可能性があります。また、企業の財務内容や契約関係等の事前調査を十分に行っておりますが、買収後に未認識の偶発債務が発生した場合や、当該子会社等の利益が、期待した水準を大幅に下回った場合には、子会社株式及びのれんについて、相当の減額を行う必要が生じる可能性があります。これらにより、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

③ 子会社・関連会社等に関するリスク

当グループは、グループ会社間の連携により、顧客基盤の拡大やソリューション提供力の強化等による連結収益の拡大に取り組むとともに、経費削減等を通じた効率性の向上に努めております。当グループがグループ内の連携による収益効果を得られるかどうかについては、将来の事業環境の変化による不確実性を伴うものであり、子会社・関連会社の事業又は経営の悪化により、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

④ 信託事業に関するリスク

当グループは、取引先に提供する信託商品のうち一部の合同運用指定金銭信託について、元本補填契約を結んでおります。信託勘定には債権償却準備金を計上しておりますが、これを充当しても元本に損失が生じた場合には、その補填のための支払を行う可能性があります。また、元本補填契約のない信託商品についても、信託事業を遂行する上で、受託者としての責任において負担すべき債務・費用が発生する可能性があります。

また、資産運用業務において、運用成績が市場のベンチマークや他社の運用商品に劣る結果となった場合には、委託者が運用を委託している資金を引き揚げる可能性があり、当グループの業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑤ 規制・制度の変更に関するリスク

当グループは、事業活動を行う上で、様々な法律、規則、政策、実務慣行、会計制度及び税制の法令諸規制等の影響を受けております。これらの法令諸規制等は将来において新設・変更・廃止される可能性があり、その内容によっては、商品・サービスの提供が制限される、新たなリスク管理手法の導入その他の体制整備が必要となる等により、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 

ロ.業務面に関するリスク

 

① 事務リスク

当グループは、内部規定及び事務処理体制の整備、事務処理状況の定期的な点検、本部の事務指導等によって、適正な事務の遂行に努めておりますが、役員・社員・外部委託先要員が事務処理の過誤や不正等を起こした場合、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

② 外部委託に関するリスク

当グループは、様々な業務の外部委託を行っております。外部委託を行うにあたっては委託先の適格性や委託内容、形態を含め十分な検討を行っておりますが、委託先の選択が不適切であった場合、委託先において重大な事務過誤等が発生した場合等には、当グループにおいても間接的・直接的に悪影響を受ける可能性があり、これにより、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

③ システムに関するリスク

当グループは、様々な業務を遂行するため多様なシステムを活用しております。システムに関しては十分なリスク管理体制を構築しておりますが、コンピュータシステムのダウンや誤作動、システムの不備、さらにコンピュータの不正使用等により、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

④ 新技術リスク

情報通信技術の変化の勢いは加速し続け、お客さまの行動に影響を与えており、当グループは、従来のビジネスモデルを再定義する場合がございます。クラウドコンピューティングやブロックチェーン、人工知能等の新技術は、大きな機会を提供するだけでなく、慎重に管理する必要がある新しいリスクを生み出しております。当グループは、これら新技術に関しては慎重に管理するようにしておりますが、誤作動や不備等により、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑤ 情報セキュリティリスク

当グループは、内部規定及び情報管理体制の整備や社内教育の徹底等によって、顧客情報や社内機密情報の漏洩への対策を講じておりますが、役員・社員・外部委託先要員の不注意や不正行為等により顧客情報や社内機密情報が外部に漏洩した場合、当グループが行政処分や損害賠償等の請求を受ける可能性があり、これにより、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑥ 人材に関するリスク

当グループは、幅広い分野で高度な専門性を必要とする業務を行っており、有能な人材の確保・育成に努めておりますが、必要な人材を確保・育成することができない場合には、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑦ コンダクトに関するリスク

当グループ各社・役員又は社員の行為が、職業倫理に反していること、又はステークホルダーの期待と信頼(※)に応えていないことにより、当グループ・顧客・市場・金融インフラ・社会及び職場環境に対し悪影響を与える可能性があります。
(※)合理的な期待水準を把握のうえ当グループとして設定する適切なサービスレベル

 

⑧ 人的リスク

人事運営上の不公平・不公正(報酬・手当・解雇等の問題)、人権問題(ハラスメントを含む)等が発生した場合、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑨ 災害等の発生に伴うリスク

当グループは国内外の営業拠点や本部、システムセンター等の業務施設において事業活動を行っており、これら施設等や、その他当グループが保有する有形資産(動産・不動産・設備・備品等)及び従事する役員及び社員は、地震、風水害、火災、爆発、停電、戦争、犯罪・テロ、資産管理の瑕疵、あるいは新型インフルエンザ等の感染症等による被害を受ける可能性があります。こうした事態が発生した場合、その被害の程度によっては、当グループの業務の全部又は一部の継続が困難になる等、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑩ 風評リスク

当グループや金融業界一般に対して否定的な内容の報道がなされたり、インターネット等の情報媒体において、否定的な内容の風評・風説が流布したりすることがあります。その内容が正確か否かにかかわらず、こうした報道・風評・風説により、金融業界一般又は当グループのイメージや株価に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

環境・社会的リスク

当グループは、「三井住友トラスト・グループの社会的責任に関する基本方針(サステナビリティ方針)」を掲げ、持続可能な社会の構築に積極的に貢献することが社会的な責任であると認識しています。しかしながら、当グループの事業活動が環境・社会問題に及ぼす影響に対する配慮が不十分である場合、直接的・間接的の如何に関わらず、結果的に問題の発生や拡大、あるいは助長等に関与してしまうおそれがあり、引いては信用リスク等の財務面に関するリスクや当社風評等に影響が及ぶ可能性があります。

 

モデルリスク

当グループは、業務遂行上さまざまなモデル(※)を使用しています。モデルには唯一の正解は存在せず、一定の仮定や単純化を含むことにより、不正確なアウトプットを出力するリスクがあります。また、モデルに根本的な誤りがなくても、適切に使用されないことによって、誤った意思決定につながるリスクがあります。当グループではこれらのモデルリスクを認識し、モデルの開発、使用、変更、廃止等の各プロセスにわたり、モデルリスクを管理していますが、モデルの不確実性を完全に排除することはできず、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
(※)インプット、加工処理プロセス、アウトプットの3つの要素から構成されるものであり、理論や仮定に基づきインプットデータを処理し、アウトプット(推定値、予測値、スコア、分類等)を出力するもの

 

⑬ リスク管理の方針及び手続が有効に機能しないリスク

当グループは、リスク管理の方針及び手続の強化に努めております。しかしながら、新しい分野への業務進出や急速な業務展開、又は外部環境の変化により、リスクを特定・管理するための方針及び手続が有効に機能しない可能性があります。また、当グループのリスク管理の方針及び手続の一部は、過去の経験・データに基づいて構築されたものもあること、将来のリスクの顕在化を正確に予測し対処することには限界があることもあり、有効に機能しない可能性があります。こうした当グループのリスク管理の方針及び手続が有効に機能しない場合には、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

ハ.財務面に関するリスク

 

① 信用リスク

(ⅰ) 不良債権の状況

国内外の景気動向、不動産・株式市場を含む金融経済環境の変化及び貸出先の経営状況等により、当グループの不良債権残高や与信関係費用が増加する可能性があります。

(ⅱ) 貸倒引当金

当グループは、貸出先の状況、差入れられた担保の価値及び経済全体に関する前提・見積りに基づいて貸倒引当金を計上しております。従って、実際の貸倒費用が貸倒引当金計上時点における見積りと乖離する可能性があります。また、経済情勢全般の悪化、貸出先の信用状況の変化、担保価値の下落その他予期せざる理由により、貸倒引当金の積み増しが必要となる可能性があります。

(ⅲ) 貸出先への金融支援

当グループは、貸出債権等の回収実効性を確保することを目的として、貸出先に債務不履行等が生じた場合においても、債権者として有する法的な権利を必ずしも行使せず、状況に応じて債権放棄や追加貸出等の金融支援を行うことがあります。このような場合には、不良債権残高や与信関係費用が増加する可能性があります。

(ⅳ) 他の金融機関の動向による影響

急速な貸出金回収や取組方針の変更等、他の金融機関の動向によっては、当該貸出先の経営状態が悪化する可能性や追加融資を求められる可能性があります。このような場合には、不良債権残高や与信関係費用が増加する可能性があります。

 

② 市場リスク

当グループは、バンキング業務又はトレーディング業務として、債券、株式、デリバティブ商品等の多種の金融商品に対し投資活動を行っております。これらの活動による損益は、金利、外国為替、債券及び株式市場の変動等のリスクに晒されており、その結果、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

③ 退職給付債務に関するリスク

当グループの年金資産の価値の下落や退職給付債務の計算の前提となる期待運用利回りの低下等の数理上の仮定に変化があった場合、当グループの未積立退職給付債務が変動する可能性があります。また、金利環境の変化等によって未積立退職給付債務や退職給付費用に悪影響が及ぶ可能性、年金制度の変更によって未認識の過去勤務費用が発生する可能性及び会計基準の変更によって財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

④ 繰延税金資産に関するリスク

繰延税金資産は将来の課税所得の見積額等に基づき計上されております。経営環境の変化等に伴う課税所得の見積額の変更等によって繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑤ 自己資本比率等に関するリスク

当グループには、銀行法に定める自己資本比率等に関する規制が適用されるため、自己資本比率やレバレッジ比率等の規制比率を所要水準以上に維持する必要があります。

当グループの自己資本比率やレバレッジ比率等が、要求される水準を満たすことができなかった場合には、その水準に応じて、金融庁から経営改善計画の提出や業務の全部又は一部の停止を含む様々な命令を受けることとなり、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑥ 資金繰りリスク

当グループの財務状況や業績の悪化、当グループに対する悪い風評、経済環境の悪化、市場の流動性の低下等によって、当グループの資金調達コストが上昇したり、資金調達が制限されたりする可能性があります。その結果、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑦ 格付低下のリスク

格付機関が格付を引き下げた場合には、当グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される可能性があります。また、当グループのデリバティブ取引に関して追加担保を要求される、既存の顧客取引が解約される等の事態が発生する可能性もあります。このような場合には、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑧ ALMに関するリスク

当グループは、バランスシートに内包された上記「②市場リスク」や「⑥資金繰りリスク」等を適切にコントロールする目的で、資産及び負債の総合管理(ALM)を行っています。

国内の金融政策転換等の環境変化により、特に金利上昇局面では、当社が保有する金融資産価値の変動、資金調達費用の増加、顧客の投資行動の変化等が想定されます。その結果、従来よりもALM運営の難易度は上昇しており、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(3) リスクガバナンス体制

当グループは、グループ全体のリスクガバナンス体制として、各事業によるリスク管理(ファーストライン・ディフェンス)、リスク統括部及びリスク管理各部によるリスク管理(セカンドライン・ディフェンス)、内部監査部による監査(サードライン・ディフェンス)の三線防御体制(スリーラインズ・オブ・ディフェンス)を構築しております。

 


 

(4) リスク管理のプロセス

当グループでは、リスク統括部及びリスク管理各部がセカンドラインとして、以下の手順でリスク管理を行っております。また、このリスク管理プロセスについては、関連するシステムを含め、サードラインの内部監査部により定期的に監査されております。

 

イ.リスクの特定

当グループの業務範囲の網羅性も確保した上で、直面するリスクを網羅的に洗い出し、洗い出したリスクの規模・特性を踏まえ、管理対象とするリスクを特定しております。この中で、特に重要なリスクを「重要リスク」として管理しております。

 

ロ.リスクの評価

管理対象として特定したリスクについて、グループ各事業の規模・特性及びリスクプロファイルに見合った適切なリスクの分析・評価・計測を行っております。「重要リスク」については、定期的に、「発生頻度」「影響度」及び「重要度」を評価し、トップリスクやエマージングリスクなどに該当するかどうかの判断を行っております。

 

ハ.リスクのモニタリング

当グループの内部環境(リスクプロファイル、配分資本の使用状況など)や外部環境(経済、市場など)の状況に照らし、KRI等の指標を設定した上で、リスクの状況を適切な頻度でモニタリングし、状況に応じ、グループ各事業に対して勧告・指導又は助言を行っております。モニタリングした内容は、定期的に又は必要に応じて取締役会、経営会議などへ報告・提言しております。

 

ニ.リスクのコントロール及び削減

リスク量がリスクアペタイトの許容レンジやリスク限度枠を超過したとき、もしくは超過が懸念されるなど、経営の健全性に重大な影響を及ぼす事象が生じた場合には、取締役会、経営会議などに対して適切に報告を行い、リスクの重要度に応じ、必要な対応策を講じております。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社はかねてより、株主の皆様への安定的な利益還元、及び還元の拡充を重要な経営方針の一つとして位置付け、株主還元強化に取り組んでまいりました。株主還元方針を踏まえ、一株当たり配当金は累進的としつつ、連結配当性向については40%以上を目安として決定してまいります。

毎事業年度における配当の回数につきましては、会社法第454条第5項の規定による金銭による中間配当を行うことができる旨を定款に定めており、中間配当及び期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。なお、中間配当の決定機関は取締役会であり、期末配当の決定機関は株主総会であります。

当事業年度につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比1,118億円減益の791億円となりましたが、これは政策保有株式が株価下落時に資本へ与えるマイナス影響をヘッジするために保有している日本株ベア型の投資信託のポジションの縮小・再構築を行ったことを主因とするものです。本業の堅調に加え、日本株ベア型の投資信託の売却損計上は評価損から実現損への振替であり資本十分性に懸念がないことから、普通株式の期末配当金を期初予想通り1株当たり55円00銭としております。2023年12月にお支払いいたしました中間配当金(1株当たり55円00銭(※))を含め、この1年間にお支払いする普通株式の配当金の合計は1株につき110円00銭(※)となります。

(※)当社は、2024年1月1日を効力発生日として普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施しております。これにより、当事業年度の中間配当金も、株式分割を考慮した金額を記載しております。

内部留保資金につきましては、健全性確保の観点からその充実に留意しつつ、当グループとしての企業価値を持続的に向上させるべく活用してまいります。

なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

株式の種類

配当金の総額
(百万円)

1株当たりの配当金
(円)

2023年11月14日

取締役会

普通株式

40,008

55.00

2024年6月20日

定時株主総会

普通株式

39,640

55.00

 

 

(参考)株主還元方針

一株当たり配当金は累進的としつつ、利益成長を通じた増加を目指す。連結配当性向40%以上を目安に決定する。

なお、自己株式取得については、資本十分性の確保を前提として、中長期的な利益成長に向けた資本活用と、資本効率性の改善効果とのバランスを踏まえつつ、機動的に実施する。

 


 

連結配当性向

39.5%

37.7%

40.2%

100.6%

43.5%

(予想)

 

(注) 1.過年度の配当金も、株式分割(2分割)を考慮した金額を記載しております。

2.2024年度記念配当金は、中間・期末それぞれ1株につき5円の計10円を予定しております。