2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本項は、当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項や、リスク要因に該当しない事項であっても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項について記載しています。これらのリスクは互いに独立するものではなく、ある事象の発生により複数のリスクが増大する可能性があります。当社は、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生を回避するための施策を講じるとともに、発生した場合には迅速かつ適切な対応に努める所存です。

なお、本項に含まれている将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

1.経営環境等に関するリスク

① 金融経済環境の変化による悪影響

当社グループは、日本国内の各地域および米国や欧州、アジアなどの海外諸国において幅広く事業を行っております。金融経済環境における先行きは、米国の関税政策を起点に、各国・地域でインフレ再燃や景気悪化が懸念される等、不透明な状況です。日本や世界各国・地域における経済状況が悪化した場合、あるいは、金融市場の著しい変動等が生じた場合には、当社グループの事業の低迷や資産内容の悪化等が生じ、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 国家間の対立や世界の分断に関するリスク

足元では、各国による保護主義的な政策により自由貿易の後退や米中対立の拡大等が懸念されています。加えて、ウクライナ情勢や中東地域における武力衝突等、国・地域間の紛争も長期化している状況です。こうした対立や分断等により、当社グループの取引先等が事業の縮小やサプライチェーンの見直し等の事業戦略の再考を余儀なくされることや、グローバル経済の減速、地政学情勢の悪化等により、企業業績の悪化や金融市場の混乱が生じる可能性があります。これにより、当社グループにおいて、与信関係費用の増加や、保有資産等の評価損や減損の発生・拡大、資金流動性の低下等につながる可能性があります。また、国家間の対立における各国規制の強化に伴い、規制抵触による法令違反の発生やレピュテーションの悪化が発生する可能性があります。

こうした事態が生じた場合、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法令諸規制の改正等による悪影響

当社グループは、国内において事業活動を行ううえで、会社法、独占禁止法や会計基準等、会社経営に係る一般的な法令諸規制や、自己資本比率規制を含む銀行法、金融商品取引法、信託業法等の金融関連法令諸規制の適用を受けております。また、海外での事業活動においては、それぞれの国や地域の法令諸規制の適用も受けております。

これらの法令諸規制は将来において新設・変更・廃止される可能性があり、その内容によっては、商品・サービスの提供の制限や、追加のシステム開発負担につながる等、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 環境・社会に配慮した取り組みに関するリスク

当社グループは、金融の円滑化を図り、経済・社会の持続可能な発展に貢献するため、社会的責任と公共的使命の重みを常に認識し、適切なリスク管理態勢のもと、高度なリスクテイク能力を活用した金融仲介機能の発揮に努めています。

昨今、気候変動、自然の損失、人権侵害をはじめとする環境・社会課題の顕在化に伴い、当社グループを取り巻くステークホルダーからは、資金提供者として、環境・社会に一層配慮することが期待されています。かかる背景から、当社グループは「環境・社会に配慮した取引に関する取組方針」を制定して、環境・社会に対する負の影響を助長する可能性が高い取引の禁止やデューデリジェンス実施を定める等、環境・社会への負の影響の防止・軽減に向けた取り組みを強化しています。

しかしながら、ステークホルダーからの期待は多様であり変化しうるため、当社グループ自身や取引先の取り組みが期待から乖離した場合には、レピュテーションの毀損・与信関係費用の増加等により、当社グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 気候変動リスク

2015年に「パリ協定」が採択されて以降、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求するという決意のもと、気候変動の原因とされる温室効果ガスの排出量削減を目的とした取り組みが進められています。日本でも2013年度対比の温室効果ガスの排出量を2035年度までに60%、2040年度までに73%削減する目標が掲げられるなど、様々な環境・社会課題の中でも気候変動リスクへの対応が重要と認識しています。

当社グループは、気候変動が環境・社会、人々の生活・企業活動にとっての脅威であり、金融市場の安定にも影響を及ぼしうる最も重要なグローバル課題の一つであると認識しています。気候変動リスクとしては、脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化に起因する移行リスク、気温の変化と災害による被害の変化に起因する物理的リスクが挙げられます。移行リスクについては、炭素税や燃費規制といった政策強化や脱炭素技術への転換の遅れにより、取引先の業績悪化を通じた与信関係費用の増加が代表的なリスクとして想定されます。また、物理的リスクについては、風水災・山火事等の災害の増加・激甚化や気温上昇に伴う労働力低下等が想定されます。これにより当社グループの資産の毀損や取引先の業績悪化を通じた与信関係費用の増加を代表的なリスクとして捉えています。

当社グループはこれらのリスクを管理するために、グローバルな潮流・動向も捕捉しながら、戦略やリスク管理態勢の見直しを実施しておりますが、こうした取り組みが奏功せず気候変動リスクが顕在化した場合には、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 金融業界の競争激化による悪影響

当社グループは、国内外の大手金融機関やノンバンク等との激しい競争環境に晒されています。また、昨今はAIをはじめとする様々なテクノロジーの進展や新たなサービス提供方法等により、業種の垣根を越えて非金融事業者による金融領域への新規参入が相次ぐなど、当社グループを取り巻く競争環境はますます激化する可能性があります。さらに、これまで進められてきた金融規制改革により、競合他社との戦略の差別化が難しくなり、特定のビジネスにおける競争環境が激化していく恐れもあります。当社グループが、テクノロジーへの対応不足等により競争に十分対応することができない場合には、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競争激化等に伴い、金融業界において金融機関の再編が進み、当社グループの競争力や当社の株価に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 災害・テロ・感染症等の発生による悪影響

当社グループは、国内外において店舗、事務所や電算センター等の施設等を保有しておりますが、このような施設等は常に地震や台風等の災害やテロ・犯罪等の発生による被害を受ける可能性があります。また、感染症の流行により、当社グループの業務運営に支障が生じる可能性があります。当社グループは、各種緊急事態を想定したコンティンジェンシープランを策定し、バックアップオフィスの構築等、緊急時における態勢整備を行っておりますが、被害の程度によっては、当社グループの業務の一部が停止する等、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、2011年3月に発生した東日本大震災のような大規模な災害や新型コロナウイルスのような感染症の流行に起因して、景気の悪化、多数の企業の経営状態の悪化、株価の下落等が生じる可能性があります。その結果、当社グループの不良債権および与信関係費用が増加したり、保有株式や金融商品等において売却損や評価損が生じること等により、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

2.財務面に関するリスク

(1) 信用リスク
① 与信関係費用の増加等による追加的損失の発生

当社グループは、多くの与信先についてメインバンクとなっているとともに、相当程度大口の与信先があります。また、与信先の業種については分散に努めておりますが、不動産業、製造業、金融・保険業向けの与信の割合が相対的に高い状況にあります。

当社グループは、個々の与信先の信用状態や再建計画の進捗状況を継続的にモニタリングするとともに、企業グループやリスク事象発現時に影響が想定される特定業種への与信集中状況等を定期的にモニタリングするポートフォリオ管理を実施しているほか、クレジットデリバティブの活用によるヘッジおよび信用リスクの減殺を行っております。また、与信先から差入れを受けている担保や保証の価値についても定期的に検証しております。

しかしながら、国内外のクレジットサイクルの変調、特定の業界における経営環境の変化、不動産等の資産価格下落等によっては、想定を超える新たな不良債権の発生、メインバンク先や大口与信先の信用状態の急激な悪化、特定の業界の与信先の信用状態の悪化、担保・保証の価値下落等が生じる可能性があります。こうした事象によって、与信関係費用が増加する等追加的損失が発生し、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 貸倒引当金の状況

当社グループは、自己査定基準、償却・引当基準に基づき、与信先の状況、差入れられた担保の価値および経済動向を考慮したうえで、貸倒引当金を計上しております。

償却・引当の計上にあたっては、貸出資産を適正に評価し、市場売却を想定した厳正な担保評価を行っておりますが、国内外の経済情勢の悪化、与信先の業況の悪化、担保価値の下落等により、多くの与信先で貸倒引当金および貸倒償却等の与信関係費用や不良債権残高が増加する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 市場リスク
① 株価下落による追加的損失の発生

当社グループは、国内上場企業の普通株式を中心に、市場性のある株式を大量に保有しております。当社グループでは、「上場株式の政策保有に関する方針」を掲げ、株価変動リスクが財務状況に大きな影響を与えうることに鑑み、その保有の意義が認められる場合を除き、上場株式を政策保有しないことを基本方針としており、売却を計画的に進めております。また、必要に応じて部分的にヘッジを行うことによりリスクを削減します。しかしながら、これらの保有株式の株価が下落した場合には評価損や売却損が発生する可能性があります。

また、当社グループの自己資本比率の計算においては、自己資本の算出にあたり、保有株式の含み損益を勘案していることから、株価が下落した場合には、自己資本比率が低下する可能性があります。

その結果、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

「上場株式の政策保有に関する方針」および政策保有株式の保有意義検証等の概要については、当社の「コーポレートガバナンスに関する報告書」をご覧ください。

https://www.mizuho-fg.co.jp/company/structure/governance/pdf/g_report.pdf

 

② 金利の変動による追加的損失の発生

当社グループは、投資等を目的として国債をはじめとする市場性のある債券等を大量に保有しているため、金利上昇に伴う価格の下落により、評価損や売却損が発生する可能性があります。また、当社グループの金融資産と負債の間では満期等に違いがあるため、金利変動により損失が発生する可能性があります。当社グループは、厳格なリスク管理体制の下、必要に応じて債券の売却や銘柄の入れ替え、デリバティブ取引等によるヘッジを行う等、適切な管理を行っておりますが、金融政策の変更や、財政悪化等によるソブリンリスク顕在化、その他市場動向等により大幅に金利が変動した場合には、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 外国為替相場の変動による追加的損失の発生

当社グループは、資産および負債の一部を米ドル等の外貨建てで有しております。外貨建ての資産と負債が通貨ごとに同額ではなく互いに相殺されない場合には、その資産と負債の差額について、為替相場の変動により円貨換算額が変動し、評価損や実現損が発生する可能性があります。当社グループでは、必要に応じ適切なヘッジを行っておりますが、予想を超える大幅な為替相場の変動が発生した場合には、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 保有資産の市場流動性低下による追加的損失の発生

当社グループは、市場で取引される様々な資産を保有しておりますが、金融市場の混乱等により保有資産の市場流動性が著しく低下し、その結果、保有資産の価値が下落する可能性があります。グローバルな金融市場混乱や経済・金融環境の悪化等により、保有資産の市場流動性が著しく低下した場合には、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ ヘッジ目的等の金融取引に係る財務上の影響

ヘッジ目的等で利用するクレジットデリバティブや株式関連デリバティブ等の金融取引については、ヘッジ対象資産と会計上の取り扱いや評価方法が異なる場合があります。そのため、市場の変動等により、ある特定の期間において、ヘッジ対象資産の評価が上昇しても、当該金融取引から損失のみが発生する場合があり、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 流動性リスク
① 資金調達が困難となることによる追加的損失の発生

当社グループの資金調達は、主に預金、債券発行および市場からの調達により行っております。特に、外貨資金は、円貨資金に比べ市場からの調達の依存度が高くなっております。そのため、資金調達の安定性の観点から、流動性ストレス状況下における資金繰り逼迫の影響分析や資金繰りの状況に応じた対応方針の策定等、厳格な管理を行っております。

しかしながら、国内外の景気悪化、金融システム不安、金融市場の混乱等により資金流動性が低下した場合、あるいは当社グループの業績や財務状況の悪化、格付の低下や風説・風評の流布等が発生し、予想外の資金流出が発生した場合には、資金調達コストの増加や、外貨資金調達等に困難が生じることがあり、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 格付引き下げによる悪影響

当社や銀行子会社等、当社グループの一部の会社は、格付機関から格付を取得しております。格付の水準は、当社グループから格付機関に提供する情報のほか、格付機関が独自に収集した情報に基づいています。また、日本国債の格付や日本の金融システム全体に対する評価等の影響も受けているため、常に格付機関による見直し・停止・取下げが行われる可能性があります。

仮に格付が引き下げられた場合には、資金調達コストの上昇や資金調達の困難化、市場関連取引における追加担保の提供、既存取引の解約等が発生する可能性があり、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

例えば、当社グループのデリバティブ契約に基づき格下げによる追加担保の金額を試算すると、他の条件が不変であれば、2025年3月末に1ノッチの格下げがあった場合は約41億円、2ノッチの格下げの場合は約152億円となります。

 

 

 

(4) 自己資本比率等に係るリスク
① 自己資本比率規制

当社グループおよび銀行子会社には、バーゼル銀行監督委員会が公表したバーゼルⅢテキスト(銀行の自己資本と流動性に係る国際的な基準の詳細を示すもの)に基づき、金融庁の定める自己資本比率規制(当社グループがグローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)に選定されていることに伴う、G-SIBsバッファーに係る規制を含む)が適用されております。また、バーゼル銀行監督委員会が公表したバーゼルⅢの見直しに係る最終規則文書に基づく改正後の自己資本比率規制は、2024年3月末から当社グループに適用されています。

仮に当社グループや銀行子会社の自己資本比率が一定基準を下回った場合には、その水準に応じて、金融庁から社外流出の制限や資本の増強を含む改善計画の提出、さらには総資産の圧縮又は増加の抑制、一部業務の縮小、子会社等の株式の処分、業務の全部又は一部の停止等の是正措置を求められる可能性があります。加えて、当社グループの一部銀行子会社は、米国その他の事業を行う諸外国・地域において、現地の自己資本比率規制に服しており、当該規制に抵触した場合には、現地当局から様々な規制および命令を受ける可能性があります。かかる事態が生じた場合、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② レバレッジ比率規制

当社グループおよび銀行子会社には、バーゼル銀行監督委員会が公表したバーゼルⅢテキストに基づき、金融庁の定めるレバレッジ比率規制が適用されております。また、バーゼル銀行監督委員会が公表したバーゼルⅢの見直しに係る最終規則文書に基づき、G-SIBsに対するレバレッジ比率の上乗せ措置(レバレッジ・バッファー)に係る規制が2023年3月末から適用され、さらに当該最終規則文書に基づくレバレッジ比率の算出方法の改正については、2024年3月末から実施されています。

仮に当社グループや銀行子会社のレバレッジ比率が一定基準を下回った場合には、その水準に応じて、金融庁から社外流出の制限や、資本の増強に係る措置を含む改善計画の提出、さらには総資産の圧縮又は増加の抑制、一部業務の縮小、子会社等の株式の処分、業務の全部又は一部の停止等の是正措置を求められる可能性があります。加えて、当社グループの一部銀行子会社は、米国その他の事業を行う諸外国・地域において、現地のレバレッジ比率規制に服しており、当該規制に抵触した場合には、現地当局から様々な規制および命令を受ける可能性があります。かかる事態が生じた場合、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 総損失吸収力(TLAC)規制

G-SIBsに選定されている当社グループおよび主要子会社には、FSBが公表した「グローバルなシステム上重要な銀行の破綻時の損失吸収および資本再構築に係る原則」等に基づき、金融庁の定めるTLAC規制が適用されております。

仮に当社グループの外部TLAC比率や主要子会社の内部TLAC額が一定基準を下回った場合には、金融庁から外部TLAC比率の向上や内部TLAC額の増加に係る改善策の報告を求められる可能性に加えて、業務改善命令を受ける可能性があります。かかる事態が生じた場合、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 資本調達

普通株式等Tier1資本を除き、当社グループの資本調達(TLAC規制に対応した調達を含む)は、主に債券発行により行っております。

仮に当社グループの業績や財務状況の悪化、格付の低下や風説・風評の流布等のほか、国内外の景気悪化、金融システム不安や金融市場の混乱等が生じた場合には、資本調達コストの増加や、十分な資本調達ができないことにより、企図した水準への自己資本比率等の向上が図れない事象等が生じる可能性があります。かかる事態が生じた場合、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) その他の財務面に関するリスク
① 分配可能額等に関するリスク

持株会社である当社は、その収入の大部分を傘下の銀行子会社等から受領する配当金に依存しておりますが、会社法の制限等により、当該銀行子会社等が当社に対して配当金を支払わない可能性があります。また、当社の業績および財務状況の悪化や、会社法の制限や銀行の自己資本規制の強化に伴う配当制限等により、当社株主への配当の支払いや当社グループが発行する一部の資本性証券の配当又は利払いが困難もしくは不可能となる可能性があります。

 

② 退職給付債務等の変動による追加的損失の発生

当社グループの退職給付費用および債務は、年金資産の期待運用利回りや将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の前提条件に基づいて算出しておりますが、株式相場ならびに金利環境の急変等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件に変更があった場合には、退職給付費用および債務が増加する可能性があります。また、当社グループの退職給付制度を改定した場合にも、追加的負担が発生する可能性があります。その結果、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 繰延税金資産に係る財務上の影響

繰延税金資産については、現行の会計基準に従い、将来の課税所得見積りを合理的に行ったうえで計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産が減少し、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 固定資産の減損に係るリスク

当社グループは、保有する有形固定資産および無形固定資産について、現行の会計基準に従い減損会計を適用しておりますが、当該資産に係る収益性の低下や時価の下落等により、投資額の回収が見込めなくなった場合は減損損失を認識する可能性があります。減損損失を認識した場合、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3.業務面に関するリスク

(1) オペレーショナルリスク
① システムリスクの顕在化による悪影響

当社グループは、勘定系・決済系等の巨大なコンピュータシステムを保有しており、国内外の拠点をはじめ、お客さまや各種決済機構等のシステムとグローバルなネットワークで接続されています。また、近年では外部委託を利用した自社開発型のシステムに加えて、社外の事業者が提供するクラウドサービス等の利用も増加しております。

当社グループは、日頃よりシステムの安定稼動の維持に努めるとともに、重要なシステムについては、原則としてバックアップを確保する等、不測の事態に備えたコンティンジェンシープランを策定しております。また、外部委託先やクラウドサービスを提供するクラウド事業者等のサードパーティに対しても当社グループが必要とする管理水準を示し、その管理態勢・対応状況を事前および定期的に確認する等、適切な対応に努めております。

しかしながら、過失、事故、サイバー攻撃、システムの新規開発・更新等により重大なシステム障害が発生した場合には、こうした対策が有効に機能しない可能性があります。

2021年2月以降、株式会社みずほ銀行(同年8月20日の障害は、みずほ信託銀行株式会社も含む)において複数のシステム障害が発生し、営業部店やATMでの取引、インターネットバンキング取引、内為・外為取引等が一部不能となりました。これに伴い、当社および株式会社みずほ銀行は、2021年9月22日および同年11月26日に銀行法第52条の33第1項および同法第26条第1項に基づき、金融庁より業務改善命令を受けました。その後、11月26日付の業務改善命令に基づき、当社および株式会社みずほ銀行は、2022年1月17日に金融庁へ業務改善計画を提出いたしました。なお、同命令に基づく当該業務改善計画の実施状況については、2022年3月末の実施状況を初回として、以降3ヶ月ごとに報告を実施し、2024年1月15日付の報告書をもって定期報告は終了しております。

このような事案を含め、システムリスクが顕在化した場合には、情報の流出、誤作動、業務の停止およびそれに伴う損害賠償、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② サイバー攻撃等による悪影響

当社グループが保有する多くのシステムは、国内外の拠点をはじめ、お客さまや各種決済機構等のシステムと、グローバルなネットワークで接続されております。当社グループは、サイバー攻撃がさらに高度化する中、サイバーセキュリティの強化を経営の重要課題として認識し、経営主導のもと、金融という重要な社会インフラの担い手として、安心・安全なサイバー空間の構築に貢献することを「サイバーセキュリティ経営宣言」にて意思表明を行い、継続的にグループ・グローバルおよびサードパーティを含めた対策を推進しています。

具体的なサイバーセキュリティ対策としては、Mizuho-CIRT*1を中心に、高度なプロフェッショナル人材を配置し、外部の専門機関とも連携したインテリジェンスや先進技術を駆使しながら、統合SOC*2等による24時間365日の監視体制を整備しています。当社システムでは、ウイルス解析や多層的防御体制等を導入しており、これら技術的な対策の有効性や対応プロセスの実効性をテストするためにTLPT*3を実施する等、レジリエンス態勢の強化に取り組んでいます。

また、外部委託先やクラウドサービスを提供するクラウド事業者等のサードパーティにおけるサイバーインシデント発生時の対応を含めたサイバーセキュリティリスク管理態勢等を契約締結時および契約期間中において、定期的に確認しています。サードパーティからサイバーインシデントの発生報告を受けた際は、当社グループへの影響を把握・分析し、当社グループに対する影響が懸念される場合には、迅速にサイバーインシデント対応を実施します。

当社では、サイバーセキュリティ態勢等の有効性について、NIST*4のCybersecurity Framework等のサイバーセキュリティに関する外部フレームワークや金融庁が公表したサイバーセキュリティに関するガイドライン等を参考に確認するとともに、第三者による評価も受けています。

しかしながら、このようなサイバーセキュリティの強化が奏功せず、外部からの不正アクセスやコンピュータのウイルス感染、新技術への対応が不十分な場合等に起因するサイバー攻撃を受けた際に、電子データの漏えい・改ざんや業務停止、情報漏えい、不正送金等が発生し、お客さまに不便・不利益を与える可能性があります。また、それに伴う損害賠償、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

*1 Cyber Incident Response Team(組織内の情報セキュリティ上の問題を専門に扱うインシデント対応

チーム)

*2 Security Operation Center(企業などの組織において、情報システムに対する脅威の監視や分析などを

行う役割や専門チーム)

*3 Threat-Led Penetration Testing(実際の技術を使用してシステム侵害を試みることで、セキュリティ

の強度を確認するテスト)

*4 National Institute of Standards and Technology(米国立標準技術研究所)

 

③ 事務リスクの顕在化による悪影響

当社グループは、幅広い金融業務において大量の事務処理を行っております。これらの多様な業務の遂行に際して、役員・社員による過失等に起因する不適切な事務が行われることにより、損失が発生する可能性があります。

当社グループは、各業務の事務取扱を明確に定めた事務手続を制定するとともに、事務処理状況の定期的な点検を行っており、さらに本部による事務指導の強化や管理者の育成、システム化等を推進しておりますが、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。今後、仮に重大な事務リスクが顕在化した場合には、損失の発生、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 人事上のリスクの顕在化による悪影響

当社グループは、多数の従業員を雇用しており、日頃より多様な人材の確保や育成等に努めております。しかしながら、十分に人材を確保・育成できない場合には、当社グループの競争力や効率性が低下し、業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 訴訟に関するリスク

当社グループは、国内外において銀行業務を中心に様々な金融業務を行っておりますが、こうした業務を行うにあたり、損害賠償請求訴訟等の提起を受ける可能性があり、その場合、訴訟の動向によっては、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) コンプライアンスに関するリスク
① 個人情報等の漏えい等の発生による悪影響

当社グループは、多数の法人・個人のお客さまの情報を保有しているほか、様々な内部情報を有しております。特に、個人情報については、個人情報保護法の下で、情報の漏えいや不正なアクセスを防止するため、より厳格な管理が要求されております。当社グループにおいても情報管理に関するポリシーや事務手続を策定しており、役員・社員に対する教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底、システム上のセキュリティ対策等を行い、外部委託先についても同様に情報管理態勢を監督しておりますが、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。今後、仮に重要な情報が外部に漏えいした場合には、損害賠償、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策上の不備に係るリスク

多様化かつ高度化する金融犯罪は増加の一途をたどり、世界各所でテロ犯罪が継続的に発生する等、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策(以下「マネロン対策」という)の重要性が急速に高まっております。またFATFの第5次相互審査を2028年に迎えるにあたり、マネロン対策の強化ならびにその有効性を検証することが求められています。当社グループは、国内外において事業活動を行ううえで、国内外の法令諸規制の適用およびそれに基づく国内外の金融当局の監督を受けており、当社グループでは、国内外の法令諸規制を遵守する態勢を整備するとともに、マネロン対策の更なる強化を継続的に実施しております。

しかしながら、マネロン対策が有効に機能せず、仮に法令諸規制の違反等が発生した場合には、業務停止、制裁金等の行政処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ テロ支援国家との取引に係るリスク

米国法上、米国人は、米国国務省によりテロ支援国家と指定された国(イラン、シリア、北朝鮮、キューバ。以下「指定国」という)と事業を行うことが一般的に禁止されており、当社グループは、関係する米国法を遵守する態勢を整備しております。ただし、米国外の拠点において、関係法令の遵守を前提に、顧客による輸出入取引に伴う貿易金融やコルレス口座の維持等、指定国に関連する業務を限定的に行っております。なお、イランには、駐在員事務所を設置しています。指定国に関係するこれらの業務は、当社グループ全体の事業、業績および財務状態に比し小規模であり、また、関係する日本および米国の法令を遵守する態勢を整備しております。

指定国が関与する取引に関わる規制は今後強化もしくは改定されていく可能性があり、当社グループの法令遵守態勢が米国における規制に十分対応できていないと米国政府に判断された場合には、当社グループの業務運営に悪影響を及ぼすような、米国政府による何らかの規制上の措置の対象となる可能性があります。また、顧客や投資家を失う、ないしは当社グループのレピュテーションが毀損することで、当社グループの業務運営又は当社の株価に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 不公正な市場取引に係るリスク

当社グループは、国内外において市場業務を行ううえで、不公正な市場取引に係る本邦および他国の法令諸規制や取引所規則等の適用とともに国内外の金融当局の監督を受けております。

当社グループは、不公正な市場取引に係る法令諸規制や取引所規則等が遵守されるよう、役員・社員に対するコンプライアンスの徹底やコンプライアンス・リスク管理等を行っておりますが、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。

今後、仮に不公正な市場取引に係る法令諸規制の違反等が発生した場合には、関係当局からの処分やレピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 法令違反等の発生、役員・社員による不適切な行為・不作為による悪影響

当社グループは、国内において事業活動を行ううえで、会社法や独占禁止法等、会社経営に係る一般的な法令諸規制や、銀行法、金融商品取引法、信託業法等の金融関連法令諸規制の適用、金融当局の監督を受けております。また、海外での事業活動については、それぞれの国や地域の法令諸規制の適用とともに金融当局の監督を受けております。さらに、当社グループおよびグループ役員・社員は、法令諸規制やルールを遵守することのみならず、「顧客や社会から期待される水準」、「社会的規範や目線」に即した行動を取ることが求められていますが、その水準や目線は日々高まるとともに内容は変容していくことが想定されます。

当社グループは、上記を踏まえ、役員・社員に対するコンプライアンスの徹底や健全なリスクカルチャーの浸透および醸成に向けた取り組み、法務リスク管理等を行っておりますが、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。

今後、仮に法令違反等や役員・社員による不適切な行為・不作為が発生した場合には、行政処分やレピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 戦略に関するリスク
① 当社グループの戦略、施策が奏効しないリスク

当社グループは、2023年5月に発表した、2023年度から2025年度までの3年間を計画期間とする当社グループの経営計画等、様々な戦略や施策を実行しております。

しかしながら、こうした戦略や施策が実行できない、あるいは、たとえ戦略や施策が実行できた場合でも当初想定した成果の実現に至らない可能性、本項に示した各種リスクの顕在化又は経済環境の変化等により発表した数値目標を達成できない可能性があります。

なお、当社グループの経営計画の内容につきましては、有価証券報告書「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご覧ください。

 

② 業務範囲の拡大等に伴う新たなリスクの発生による悪影響

当社グループは、銀行業・信託業・証券業をはじめとする様々な業務を行っております。さらに、お客さまのニーズの高度化や多様化、ないしは規制緩和の進展等に応じた新たな業務分野への進出や各種業務提携、資本提携を実施しております。当社グループは、こうした新たな業務等に伴って発生する種々のリスクについても適切に管理する体制を整備しております。しかしながら、想定を超えるリスクが顕在化すること等により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) レピュテーショナルリスク

当社グループの事業は、お客さま、社員の他、経済・社会における様々なステークホルダーからの信用に大きく依存しております。そのため、当社グループおよびその役員・社員が提供するサービス・活動が、ステークホルダーの期待・要請から大きく乖離していると評価された場合には、当社グループの信用またはブランドに対して負の影響がおよび、有形無形の損失を被る可能性があります。当社グループは、こうしたレピュテーショナルリスクを早期に捕捉し、適切に対応することで、リスクの顕在化を未然に防止するよう努めております。しかしながら、こうした取り組みが十分に機能せず、ステークホルダーの期待・要請に沿わない結果となった場合には、当社グループの業務運営や、業績および財務状況、ないしは当社の株価に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) モデルリスク

当社グループは、事業の広範化・複雑化と人工知能等の技術革新を背景に、モデルを活用する機会が広がり、その重要性や影響度は増しています。そのため、モデルを利用する業務において、モデルの誤り又は不適切な使用に基づく意思決定によって、当社グループが有形無形の損失を被る可能性があります。当社グループは、グループ全体で包括的かつ実効的なモデルリスク管理の取り組みを進めております。しかしながら、内部環境や外部環境の変化などから誤ったモデルや不適切な使用に基づく意思決定により、当社グループの業務運営や、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 財務報告に係る内部統制の構築等に関するリスク

当社は、ニューヨーク証券取引所上場企業であり、当社グループは、米国サーベンス・オクスリー法に準拠した開示体制および内部統制の強化を行っております。同法により、当社経営者および監査法人はそれぞれ当社の財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、その評価結果をForm20-Fにより報告することが求められています。

また、金融商品取引法においても、当社経営者による財務報告に係る内部統制の有効性の評価、および経営者評価に対する監査法人の意見を内部統制報告書および内部統制監査報告書により報告することが求められています。

当社グループは、上記に従い財務報告に係る内部統制の構築を行っており、評価の過程で発見された問題点は速やかに改善するべく努力しております。しかしながら、改善が間に合わない場合や、経営者が内部統制を適正と評価したとしても監査法人は不適正とする場合があり、その場合、当社グループの財務報告の信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) リスク管理の方針および手続が有効に機能しないリスク

当社グループは、リスク管理の方針および手続にのっとりリスク管理の強化に注力しております。しかしながら、急速な業務展開に伴い、リスクを特定・管理するための方針および手続が、必ずしも有効に機能するとは限りません。また、当社グループのリスク管理手法は、過去の市場動向に基づいている部分があることから、将来発生するリスクを正確に予測できるとは限りません。当社グループのリスク管理の方針および手続が有効に機能しない場合、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4.トップリスク

当社は、「1.経営環境等に関するリスク」、「2.財務面に関するリスク」、「3.業務面に関するリスク」に記載されている各リスク事象を含めた企業価値毀損につながるリスク事象について、当社の脆弱性や外部環境変化等を踏まえて幅広く収集した後、リスクの波及経路や蓋然性・影響度等を評価し、リスクコントロールの難度も勘案のうえ、トップリスクを選定しております。この運営を通じて当社グループ内のリスクコミュニケーションを深めるとともに、未然防止策や事後対応等のリスクコントロール強化策の検討、業務計画への反映等を通じ、ガバナンスの強化に活用しています。

トップリスクの選定や期中におけるコントロール状況は経営陣での議論に加え、リスク委員会や取締役会等にも報告し、外部委員や社外取締役を含めた多面的な議論を行っております。また、期中においても必要に応じて内外環境変化を踏まえた機動的な見直しを行っております。

2025年3月現在、以下をトップリスクとして選定しております。

 

トップリスク

リスク事象

リスクシナリオ

日本経済・日本企業の

地盤沈下

・各国の関税政策等によりビジネス展開の不確実性が高まることに加え、中国の景気減速やデフレ輸出等が日本企業の収益性を下押し

・インフレ圧力の高まりから日本国内でも金利が急上昇。一部金融機関の脆弱性発現を機に、システミックリスクが顕在化

・中期的には日本国内の少子高齢化・人口減少により低成長が定着し、日本企業 

 の国際競争力が低下

米国経済の大幅かつ

急速な減速

・高関税が米国での物価上昇をもたらし、インフレが再燃。高金利環境の継続により企業・家計の金利負担が増加

・減税・規制緩和の期待が先行し、株式市場等が適正水準から乖離して上昇するも、過度な期待の剥落を機に、資金流出が一気に加速

・ファイナンシャルスポンサーやNBFIにおける局所的な事象を契機に、プライベ

 ートクレジット・プライベートエクイティ等が急収縮

各国のソブリンリスク顕在化

・各国において、拡張的な財政政策から債務残高が増加、あるいは政治的・社会的な混乱からソブリン債の金利急騰や格下げが発生

・日本においても、財政規律の緩み、あるいは大規模な国債増発が惹起されるこ

 とで財政不安が意識され、長期金利が上昇

貿易戦争の激化と紛争リスク

・各国で保護主義的な政策がとられることで自由貿易が後退。米中対立が一段と

 激化し、中国経済を下押し。中国経済の長期低迷やデフレ輸出により、世界経

 済が減速

・戦後の国際秩序が変質するなかで、国家間の緊張の高まりが経済的な緊張や軍

 事的衝突に波及

サイバー攻撃

・AI等の急速な普及や、地政学リスクの高まり等を背景に、特定国家や犯罪・テロ組織からのサイバー攻撃が増加

・サードパーティも含めた管理態勢・事後対応の不十分さにより、顧客情報等が

 流出、あるいはサービスが停止

システム障害

・人為的過失、機器の故障、サイバー攻撃等を要因として大規模なシステム障害が発生

・オペレーショナル・レジリエンスの態勢が不十分なことにより、代替策提供や

 復旧までの時間が長期化、お客さまに広範な不便・不利益が発生

気候変動影響の深刻化と

不十分な環境対応

・ESGの流れが揺り戻され、各国間の気候変動対応の合意形成が困難となることで社会全体の移行に跛行性や遅れが生じ、気候変動影響が深刻化

・金融機関は継続して環境配慮や移行・物理的リスク管理に対する取り組みを求

 められるも、ビジネス影響やエネルギー安全保障、データ・技術面の制約など

 から対応が不足

マネロン・テロ資金供与

・法令・制裁への認識不足、システム対応の不備、コンプライアンス意識の希薄化などにより重大な法令違反等が発生

・金融ビジネスの多様化やテクノロジーの進展等による犯罪手口の巧妙化が進む

 なか、金融サービスが犯罪行為やテロ行為に悪用され国際社会からの批判に発

 展

役員・社員による不適切な

行為・不作為

・国内外で法令・規制違反の発生

・お客さま本位ではない業務運営等、社会的な目線から乖離していることに伴う

 批判が発生

人材不足等による持続的成長の停滞

・人材の外部流出加速、採用の不調や、社員の主体性・多様性を尊重しないこと等に伴う活力低下や人材育成の遅延により、人的資本が毀損

・過重労働等の勤務環境の悪化が法令違反やレピュテーションの悪化に帰結

AI等のテクノロジーへの

対応不足

・お客さまによるAIなどのテクノロジー活用が進むことで、当社の商品やサービスに求められる要件、競争環境が変化

・テクノロジーへの投資や取り組み、お客さまのニーズ把握が不十分となることで、商品性や生産性が劣後

・生成AI等の新たなテクノロジーを悪用したサイバー攻撃やマネー・ローンダリング等の金融犯罪への対応不足による損失発生

業務停止を引き起こし得る

自然災害の発生

・首都直下型地震・南海トラフ等の大規模地震や風水害等の発生により、人的被害や建物崩壊等の物的被害が多数発生

・大規模な人的・物的被害の発生により首都圏が機能不全となり、決済等の重要

 なサービス提供が困難化

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、「自己資本充実、成長投資、株主還元強化の最適なバランスを実現する」との資本政策の基本方針に基づき、株主還元については「累進的な配当を基本とし、自己株式取得は機動的に実施」することとしております。配当は、安定的な収益基盤の着実な成長に基づき、配当性向40%を目安に決定し、自己株式取得は、業績と資本の状況、株価水準、成長投資機会等を勘案して決定してまいります。

当事業年度の親会社株主に帰属する当期純利益は8,854億円と第2四半期決算公表時に上方修正した業績予想を超過達成いたしました。また、普通株式等Tier1比率(バーゼルⅢ最終化完全実施ベース、その他有価証券評価差額金を除く)は10.3%となりました。同比率については、ストレス耐性と資本活用余力を具備する水準である9%台半ばから10%台半ばのレンジで運営しております。

これらを踏まえ、当社取締役会は、当事業年度の1株当たりの年間配当金を、前事業年度から35円増額した140円(中間配当金65円および期末配当金75円)といたしました。

また、当社は、株主の皆さまへの利益還元をより適時に行うため、毎年9月30日および3月31日を基準日として、中間配当と期末配当の年2回の配当を行う方針としております。剰余金の配当については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる旨を定款に規定しております。また、株主の皆さまからの提案がある場合には株主総会の決議により定めることとしております。

なお、来期より、「自己資本充実、成長投資、株主還元強化の最適なバランスを実現」するとの資本政策の基本方針を維持しつつ、株主還元については「累進的な一株あたりの増配に加え、機動的な自己株式取得を実施する」ことといたします。さらに、配当については、安定的な収益基盤の着実な成長に基づき、毎期5円を目安に増配を実施し、自己株式取得は、業績と資本の状況、株価水準、成長投資機会等を勘案しつつ、総還元性向50%以上を目安に決定してまいります。

内部留保資金につきましては、財務体質の強化および将来の事業発展のための原資として活用してまいります。

 

当事業年度の剰余金の配当は、以下の通りであります。

 

決議年月日

株式の種類

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額

2024年11月14日

取締役会

普通株式

164,993

65円

2025年5月15日

取締役会

普通株式

188,463

75円