リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は次のとおりであります。
また、必ずしもリスク要因には該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しておりますが、当社に関するすべてのリスクを網羅するものではありません。
また、次の文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 経済動向等の変動
当社事業は、基本的には企業向けにアミノ酸や樹脂原料等の原材料に関する研究開発及びライセンスの付与を実施するものであることから、一般的な製造業や小売業と比較して、景気の変動の影響を受けにくい特徴を有しますが、景気の急速な悪化により、事業者の新規事業や研究開発活動への投資が減速した場合、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) ライセンシーにおける販売
当社は、収益化手法の1つとしてライセンス契約に取り組んでおります。ライセンス契約においては、主として自社において技術を使用した製品の生産、販売を行わないことにより、設備投資及び販路確保や在庫の保有、広報等の販売活動にかかる費用やリスクを最小限にすることができます。
一方、ライセンス契約の事業構造上、製品の販売活動はライセンシー(ライセンス契約の締結先)に依拠し、当社において販売の計画、実行を行わないことから、特に短期的な業績予測と実績の乖離が生じる可能性があります。
当社としては、期待するロイヤリティ収入を保持できるよう、ライセンシーの販売計画を精査のうえ、ライセンス契約の条件を個々に設定しており、今後は既存のライセンス契約の条件やロイヤリティ収入の実績の知見をもって、さらに業績予測の精度を高める方針でありますが、ライセンシーの事業状況に変動が生じた場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) カントリーリスク
当社は、アジア地域において事業展開を行っており、当該地域における事業活動には次のようなリスクがあります。
・予期し得ない法律、規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
・不利な政治的要因の発生及びそれに伴う為替の変動
・常識、文化、社会的慣習の違いによる契約違反や技術流出等の発生
当社は、今後事業開拓活動により、研究開発の対象製品、提携先(取引先)の多様化を進め、研究開発に続くライセンス契約も、複数の地域、取引先に展開していく計画でありますが、上述のアジア地域に特有のリスクが発生した場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 商用化における特定の対象製品にかかるリスク
当社の1つの大きなパイプラインにおける対象製品(当社がライセンスした技術によりライセンシーにおいて商用生産される製品)である飼料添加物用のアミノ酸については、畜産業界における病気の蔓延等により、その需給に大幅な変動が生じることがあります。例えば、2018年から中国を中心に拡大した豚コレラの蔓延により、中国国内での養豚数が激減し、豚向けの主要な飼料添加物であるバリンの売上が想定値より大幅に減少するという事態が生じました。
当社は、複数のパイプラインに取り組むことで、特定の1つのパイプラインのリスクが当社の経営全体に与える影響を最小限に抑えるような事業構造を構築してまいりますが、特定製品にかかる需給リスクが発生した場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) パイプラインの進捗にかかるリスク
各パイプラインはStageごとの複数の契約の締結、遂行により進捗していくものであり、研究開発の目標達成状況やパートナー企業の方針等により、契約が締結されない、あるいは進捗が遅延又は停滞する可能性があります。
計画数値の策定にあたっては、既に契約が締結されているもの、あるいはほぼそれと同様の確度で収益が見込まれるものを中心に売上高に計上することで予算未達のリスクを抑えることとしております。それでも、ライセンス契約の締結時期の遅延や大型の研究開発契約の開発期間の長期化等のパイプラインの進捗に遅れが生じる事象が生じた場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 技術革新への対応に関するリスク
バイオリファイナリー技術については、商用化可能な技術基盤の確立のために中長期的な研究開発期間及び先行投資が必要であり、IT技術のように革新が早く入れ替わりがあるような業界ではありませんが、対象製品について当社技術より優位性の高い技術が第三者により商用化された場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社においては、技術基盤の強化のための研究開発活動を継続するとともに、「(4) 商用化における特定の対象製品にかかるリスク」に記載のとおり、商用化の対象製品を複数とすることで、特定の1つのパイプラインのリスクが当社の経営に与える影響を最小限に抑えるような事業構造を構築してまいります。
(7) 大株主である公益財団法人地球環境産業技術研究機構との関係について
当社は、公益財団法人地球環境産業技術研究機構で開発された技術を事業化したことから設立されており、同機構は当事業年度末において当社の株式1,800,000株を保有する大株主であります。
当社では、同機構の保有するRITE Bioprocess®に関連するものを始めとする特許権の実施許諾を受け事業展開を行ってきており、その使用にあたっては同機構(ライセンサー)に対しロイヤリティを支払うものであります。また、当社の研究開発拠点であるGreen Earth研究所の建物は同機構より借り受けるものであります。
同機構は公益財団法人として、開発した技術を世の中に広め、もって地球環境の保全及び世界経済の発展に資することを理念としており、当社の事業成長を推進する立場にあることから、これまで同機構とは協力的な提携関係を維持しており、その継続性にかかるリスクは僅少でありますが、万が一これらの特許権及び建物賃貸にかかる契約の継続が困難となった場合には、現在時点において当社の業績及び財務状況等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、特許権については、大規模な設備投資や販売活動を必要としない事業形態を活かして研究開発へ注力し、当社の特許権の取得を進めつつ、できる限り多くの企業との協業を実現することにより、外部の特許権に依存しない事業展開を進める方針であり、現状、当該依存度は減少傾向にあります。
(8) 災害等
当社の研究開発拠点は、Green Earth研究所とバイオファウンドリ研究所の2ヵ所であり、大規模災害等が発生し、当該研究所が損壊又は当該研究所の研究開発設備が破損、紛失した場合、研究開発が停止することとなります。
研究開発は当社の事業の核となる活動であることから、研究開発設備について、地震保険をかけ、損壊時における新規設備購入のための手元資金を確保しております。また、事業継続上作成に期間がかかる菌株については、独立行政法人製品評価技術基盤機構が提供する、安全保管(生物遺伝資源の保管委託)サービスを利用して保管しておりますが、不測の災害等が発生した場合、当事業年度においては売上高の約70%を占める研究開発契約にかかる業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、2023年4月にバイオファウンドリ研究所が稼働を始めたことで、災害等にかかるリスクの影響は分散、軽減されております。
(9) 知的財産権
当社は事業展開において様々な特許権等の知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、又は他者より適法に実施許諾を受けた権利であると認識しております。これらの知的財産権について、これまで第三者の知的財産権を侵害した、又は当社が侵害を受けた事実はなく、今後も侵害を防止するため、適切な管理を行っていく方針でありますが、当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性や新たに第三者の知的財産権が成立する可能性もあり、当該侵害のリスクを完全に排除することは困難であります。
今後、当社が第三者との間の知的財産権を巡る法的紛争等に巻き込まれた場合、顧問弁護士や弁理士と協議のうえ、当該知的財産権によってはライセンサーとも協力し、対応する方針でありますが、当該紛争に対応するために多くの人的及び資金的負担が発生するとともに、当社のライセンサーから特許権の実施の差止請求や、損害賠償等の請求を受けることがあり、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報セキュリティ
当社の提供する技術は、特殊な設備を要することなく導入できることが強みでありますが、一方で技術つまりはノウハウにかかる情報資産につき、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入等による漏洩リスクが存在します。
これに対し、VPN(Virtual Private Network)及びUTM(Unified Threat Management)を導入し、プライベートネットワークによる拠点間接続を行い、セキュリティの高い環境を構築しております。また、当社の情報資産はVPNで接続されたLAN(Local Area Network)上に保存し、適切なアクセス権限の設定を行うことにより、情報資産を一元管理し、情報漏洩リスクへの対策を講じておりますが、不法な侵入等を受けた場合は、企業が不正にその技術を利用して当社に競合する、又は当社へライセンスされた特許権にかかる情報資産の漏洩につき、当社のライセンサーから特許権の実施の差止請求や、損害賠償等の請求を受けることがあり、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 先行投資に伴う財務影響
技術開発ベンチャーである当社においては、商用化可能な技術基盤の確立のための、研究開発にかかる投資が重要と考えており、先行的に研究開発設備の導入及び研究開発用消耗品の購入、並びに研究員の増員のための人件費等の費用を先行的に投下しており、2023年9月期までにおいて継続的な営業損失を計上しており、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社においては、今後も、技術基盤の強化のための研究開発活動への投資を継続するとともに、新たな研究開発契約やライセンス契約の締結及びそれに伴う収益の計上に努めてまいりますが、これらの先行投資が想定どおりの成果に繋がらなかった場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 社歴、業歴が浅いことによる業績の不確実性
当社は、2011年9月の設立より、近年までは商用化のための研究開発を事業活動の中心とし、収益も行政機関等からの助成金を主体としておりましたが、2018年9月期より本格的な商用化に至っております。
技術自体は商用化段階に達しており、当該技術を使用して製造する製品も既存の市場が存在し、その規模、市場価格等の指標となるデータが入手できます。そのため、業績予測については一定程度の蓋然性があるとの認識であり、今後は実績の積み重ねにより、さらに業績予測の精度を高める方針であります。
ただし、当事業年度までは赤字決算であり、過年度の業績のみでは期間比較を行う充分な材料とはならず、今後の業績については当社において合理的と考えられる方法により予測、算定したものでありますが、判断指標が不十分であり、当社の業績予測と実績に乖離が生じる可能性があります。
(13) 人材の獲得及び育成について
技術基盤の継続的な強化のための研究開発活動、及び収益の最大化のための事業活動にあたっては、優秀な人材の確保が必要不可欠であります。当社においては、事業規模に応じて採用活動を行ってきており、これまでのところ適時に必要な人材の採用に至っておりますが、今後、大企業の採用市場の動向や少子化による就活者の募集の減少等により、採用活動が円滑に進まない場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(14) その他のリスク
① 配当政策
当社は、株主に対する利益還元については重要な経営課題と認識しておりますが、現時点においては、新興市場であるバイオリファイナリー業界において先駆者優位性を獲得するためにも、事業成長への投資を優先しており、これはひいては株主への利益還元に繋がると考えております。
将来的には、業績及び財務状況等を勘案しながら配当実施について検討していく方針でありますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については、提出日現在において未定であります。
② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化
当社は、主として、取締役及び従業員に対し、経営目標や業績の達成の意識向上又は優秀な人材の採用を目的としたインセンティブとして、新株予約権の付与を行っております。
提出日現在におけるこれらの新株予約権にかかる潜在株式数は639,800株であり、当社の発行済株式総数及び潜在株式数の合計11,917,500株の5.37%にあたり、今後新株予約権が行使された際には、既存株主の株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元については重要な経営課題と認識しておりますが、現時点においては、新興市場であるバイオリファイナリー業界において先駆者優位性を獲得するためにも、事業成長への投資を優先しており、これはひいては株主への利益還元に繋がると考えております。
将来的には、業績及び財務状況等を勘案しながら配当実施について検討していく方針でありますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については、提出日現在において未定であります。なお、内部留保資金については、事業成長への投資として、研究開発にかかる設備投資や運転資金に活用していく予定であります。
当社は、配当を行う場合には、期末配当にて年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。また当社は、剰余金の中間配当を取締役会の決議により行う旨の定款の規定を設けております。