2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済状況による影響について

当社グループの主たる事業である放送事業は、広告収入に依存しております。日本の広告市場は、国内マクロ経済の動向や広告支出額の多い企業の業績に影響を受けると考えられます。

2023年の日本の総広告費は、新型コロナの5類感染症移行に伴うリアルイベントの開催数増加や国内外の観光・旅行の活性化などにより回復が見られ、前年から3.0%増加し、7兆3,167億円となりました。中でもインターネット広告費は、進展する社会のデジタル化を背景に、前年比7.8%増と過去最高を更新しました。

当社グループの連結業績は、メディア接触の変容と相まって、今後も国内広告市場等の動向に影響を受ける可能性があります。こうしたリスクに対応するために、中核である放送事業の価値を維持、向上しながらコンテンツ事業、ライフスタイル事業の成長を図ることで、各事業間、グループ各社間の連携をより深化させ、グループ全体で変化に対応できる体制を構築いたします。

 

(2) 放送事業について

①番組制作について

当社グループは、朝日放送テレビ株式会社を中心に放送事業各社が連携し、継続して斬新で魅力ある番組を開発し発信する体制を整えてまいりました。しかし、視聴者や広告主、社会のニーズに応えることができなければ、支持される番組を制作し続けることはできないと考えております。経営理念に掲げている通り「変化に対応しながら進化を続け、強力な創造集団として、社会の発展に寄与する」ことは当社事業の根幹であり、視聴者・広告主・社会のニーズに応えることができなければ、当社の経営にも悪影響を及ぼす可能性があると考えています。

今後も、これまで以上に、視聴者のニーズや社会の変化を積極的に感じ取り寄り添うことで、これまでの手法にとらわれない新たな番組作りのあり方を常に模索し、広く支持される番組作りを進めてまいります。

②番組内容について

当社グループは、放送番組の内容については、番組審議会や放送番組検討会議等の社内チェック機関ならびに日常の社員教育により問題が生じないように努めておりますが、完璧であることを保証するものではありません。大きな訴訟や賠償につながるような誤った報道または番組内容があった場合は、当社グループの評価に重要な影響を与え、経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

そうした事態を避けるため、今後も放送人としての意識とモラルを保つための制度や研修体制を強化し、放送倫理に基づいた番組制作体制の確立をはかってまいります。

③競合メディアについて

技術革新とIT化の普及により、映像コンテンツに触れることができるデバイスは多様化し、インターネット動画配信サービスが利用者を大きく伸ばし続けるなど、放送事業においては大きな脅威となっており、今後もこの状況は進んでいくものと思われます。

一方で、コンテンツの供給先としてとらえれば、こうした状況はビジネスチャンスの拡大につながると考えられますが、それらの進展状況や当社グループとしての対応が遅延する又は支障が生じた場合には経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

今後は、地上波放送の価値を維持しながら、グループ全体でコンテンツビジネスの拡大を図り、新たなメディア環境に柔軟に対応しうる体制を構築してまいります。

 

 

(3) 法的規制について

当社は放送法の規定に基づき認定放送持株会社としての認定を受けております。また当社グループの売上の大半を占める放送事業は、電波法や放送法等の法令による規制および政府、監督官庁の放送行政に大きな影響を受けております。

朝日放送株式会社は1951年10月に放送法に基づく放送免許を取得、60年以上にわたり更新し、2018年4月にテレビおよびラジオの放送免許を当社の子会社である朝日放送テレビ株式会社および朝日放送ラジオ株式会社にそれぞれ承継しております。最近では2023年11月に更新を受けており、有効期限が5年であります。

しかしながら、将来において、これら法令に違反する重大な事実が発生した場合、免許・登録等の取り消しや行政処分が発せられ、当社グループの事業活動や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、法令改正や監督官庁の放送行政の施策により、新たな設備投資が必要となりコストの増加が生じる可能性も考えられ、その場合、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を及ぼすことになります。

こうしたことから、当社グループでは内部管理体制の強化やコンプライアンス体制の整備に努めており、免許・登録等の取り消しや更新拒否の事由となる事実は現時点では発生しておりません。

 

(4) 個人情報の取り扱いについて

当社グループでは、番組の出演者、観覧者、会員サービス、ショッピング事業やハウジング事業の顧客情報等の個人情報を保有しております。これら個人情報の取り扱いに関しましては、十分な注意を払っておりますが、不正アクセスや想定していない事態によって外部流出等が発生した場合、当社グループの社会的信用に悪影響を与え、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは今後、最新のデジタル技術も活用し、グループ内の各種データの厳密な管理を徹底してまいります。

 

(5) 災害や事故による影響について

当社グループは、放送事業においては、放送事故や放送中断による悪影響を最小化するため、全ての設備における定期的な更新と点検整備を行っております。しかし、放送設備、中継設備で発生する災害、停電またはその他の中断事故につながる全ての事象を完全に防止または軽減できる保証はありません。従って、大規模地震や火災、停電等により放送設備等が被害を受ける等した場合、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、ハウジング事業やゴルフ事業等における事業用地に何らかの被害が発生した場合も事業収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうした事態に対応しうるよう、従業員の安全を確保しながらの放送継続のためのBCP事業継続計画を整備し、体制を維持・強化してまいります。

 

(6) 外国人等が取得した株式の取扱等について

放送法では認定放送持株会社の認定要件の一つとして、日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者が特定役員である場合と、日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者、外国の法人、団体が議決権の5分の1以上を占める場合には、認定しない旨が規定されています。一方で、放送法では一定の条件のもとで、上記の外国人等からの名義書換を拒むことができるとの規定もあります。

当社では現在、外国人等の議決権比率が5分の1以上を占める状態にはありませんが、今後も外国人等の議決権比率に対する注視を続け、認定を維持するべく必要に応じた適切な対処を行ってまいります。

 

 

(7) 成長投資に伴う業務提携や企業買収等について

当社グループでは、認定持株会社体制下でグループ成長の原動力とするための成長投資を積極的に行ってきました。今後も事業拡大やバリューチェーン構築のための選択肢の一つとして、業務提携や企業買収等を実行する可能性があります。これらについて、必ずしも予期したとおりの成果が得られるという保証はなく、事業環境の急変等により事業収益性が低下した場合には、株式の評価損やのれんの減損等にかかる損失が発生するリスクがあります。また、投資先等においてコンプライアンスや内部統制の不備等が内在するリスクも否定できず、これらに起因して、当社グループの経営成績、財務状況、およびグループガバナンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクを低減するため、投資プロセスにおいて、チャンスとリスクについて検討し協議する体制、制度を整備し、管理バックアップ体制を強化してまいります。その上で、放送事業、コンテンツ事業、ライフスタイル事業、それぞれの領域における戦略に沿った機能や資源を獲得する手段としてM&Aなどの投資を行い成長のエンジンとしてまいります。

 

(8) 固定資産の減損会計による影響について

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証し、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。しかし、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への適切な利益還元を経営上の最重要課題のひとつと位置づけております。利益の配分につきましては、認定放送持株会社という責任ある立場を踏まえ、財務体質の強化・維持と、企業価値の向上および成長戦略のための投資とのバランスを常に考え、業績、配当性向、適切な内部留保等を総合的に勘案して対応いたします。

この方針にしたがい、当社グループの本業による利益を示す連結営業利益から法定実効税率相当額を控除した利益(みなし当期利益)に対し、配当性向30%を目途として継続的・安定的かつ柔軟に決定し、また、急激な経営環境の悪化による著しい業績低迷時を除き、1株当たり年間12円を配当の下限水準とします。

また、当社は、中間配当を行うことができる旨を定款で定めており、剰余金の配当は、中間配当および期末配当の年2回を基本的な方針としております。なお、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

当期の期末配当につきましては、上記の方針と業績を勘案して、1株につき普通配当6円とさせていただきました。これにより、既にお支払い済みの中間配当1株につき6円とあわせて、通期の配当は、1株につき12円となりました。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月8日

取締役会決議

250

6

2024年6月26日

定時株主総会決議

250

6