2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を、NTTグループの事業を取り巻く環境及びそれに対応した事業戦略、業務運営に係るリスクのほか、規制をはじめとした政府との関係に係るリスク等の観点から総合的な評価を行っています。

当社におけるビジネスリスクマネジメントの概要、リスクの抽出・重要リスクの特定、リスクの内容及び対処策については以下のとおりです。

 

 

(1)ビジネスリスクマネジメントの概要

身近に潜在するリスクの発生を予想・予防し、万一リスクが顕在化した場合でも損失を最小限に抑えること等を目的として、リスクマネジメントの基本的事項を定めたリスクマネジメント規程を制定しています。代表取締役副社長が委員長を務めるビジネスリスクマネジメント推進委員会及びグループビジネスリスクマネジメント推進委員会が中心となって、リスクマネジメントのPDCAサイクルを構築し運用しています。なお、2023年度においてビジネスリスクマネジメント推進委員会は2回、グループビジネスリスクマネジメント推進委員会は2回開催され、全社的に影響を与えると想定されるリスクの特定及びその管理方針等について議論しました。

また、グループ一体となってリスクマネジメントに取り組むため、NTTグループビジネスリスクマネジメントマニュアルを策定しグループ各社に配布しています。本マニュアルにより、リスク発生に備えた事前対処策、リスクが顕在化した場合におけるグループ連携方法や対応方針、情報連絡フロー等を定め、迅速な対応を可能とする体制を整備し運用しています。

 

 

(2)リスクの抽出・重要リスクの特定

当社では社会環境の変化等を踏まえ、想定するリスクや、その管理方針の見直しを随時行っています。リスクの抽出にあたっては、ビジネスリスクマネジメント推進委員会及びグループビジネスリスクマネジメント推進委員会が中心となって、NTTグループを取り巻くリスクの分析プロセスを策定し、このプロセスに則って定期的にリスク分析を実施することで、全社リスクを特定します。さらに、それらリスクの相関分析を行い、最も重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「重要リスク」と特定し、その対応策を決定します。

 

 

(3)リスクの内容及び対処策

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。当社が現在関知していないリスク、あるいは当社が現時点では重要ではないと考えるリスクであってもNTTグループの事業活動を損なうことになる可能性があります。さらに、本有価証券報告書は、リスクと不確実性を伴う将来見通しに基づく情報も含んでいます。NTTグループは、下記リスクのほか、本有価証券報告書中の他の箇所に記載されているリスクに直面していますが、これらのリスクの影響により、NTTグループの実際の業績が、将来見通しに基づく記述が想定しているものとは大きく異なってくる可能性があります。

 

○ 経営戦略に係るリスク

事業成長に関するリスク

 

市場構造の変化や競争の進展に適切に対応できない場合、NTTグループの営業収益が低下する可能性や設備投資の効率化が図れない可能性、販売経費・設備関連コスト・人件費等の削減効果が充分に発揮されない可能性があります。情報通信市場では、競合他社の新規参入等による競争激化や、新料金プラン等による顧客基盤の維持・更なる拡大がNTTグループの想定したとおりにならない場合、結果としてNTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。また、情報サービス市場では、急成長するインドや中国等の情報サービス企業が、グローバル競争をもたらしつつあり、競合会社の積極参入による競争激化が経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

特にグローバルビジネスの拡大において、企業・組織との合弁事業、事業提携、協力関係の構築、出資、買収等の活動を実施していますが、海外における事業活動は、投資や競争等に関する法的規制、税制、契約実務を含めた商習慣の相違、労使関係、国際政治等様々な要因の影響下にあります。これらのリスクが顕在化した場合には、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

その他の市場においても、各事業において想定したとおりの収益が得られない可能性があり、結果として経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

また、IOWNについては、そのロードマップが計画どおりに進展しないことにより、技術革新によるビジネスが拡大しないことや、IOWNを軸としたエネルギー効率化が図られないことで、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループは、2023年5月に発表した新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」に基づき、これまでの中期経営戦略の考え方や取組みをベースに、新たな価値創造と地球のサステナビリティを実現することをめざしています。

設備投資の効率化に向けては、各社でネットワークのシンプル化・スリム化を実施することに加え、AI等を活用し、自らの業務プロセスをデジタル化することで様々な業務における更なる生産性の向上をめざします。また、グループ各社が共通で購入するハードウェア、ソフトウェア及びサービスについて、グローバルベンダー等と一元的に価格交渉を行い、包括的な契約を締結する調達専門会社のNTT Global Sourcing, Inc.を米国に設立し、NTTグループのトータルの調達コスト削減等に取り組んでいます。

ITシステムについても、グローバルで標準化されたシステムへ移行していくことを通じて、共通基盤化による効率化を進めるとともに、シンプルで生産性の高い業務運営の確立に向けて取り組んでいます。

また、グローバル事業における着実な成長を実現するため、2019年よりグローバル事業の再編成に取り組んできましたが、昨今お客さまのニーズはますます多様化・高度化し、デジタルトランスフォーメーション(DX)や、ITモダナイゼーションへのニーズが高まるとともに、競合各社は社会・テクノロジーの変化に合わせサービスラインを拡大する等、事業環境が大きく変化してきています。このような状況下、株式会社エヌ・ティ・ティ・データとNTT Ltd.で行ってきたビジネスユーザ向けグローバル事業を株式会社エヌ・ティ・ティ・データ傘下に集約し、2023年5月に海外事業の新オペレーティングモデルを発表して以降、北米、EMEA・中南米、APACの3つのRegional Unit、Global Technology Services、Business Solutionの2つのGlobal Unitの計5 Unitそれぞれにおいて、新モデルへの移行と各Unit内の統合を進め、両社がより一体となって事業運営体制の整備に取り組んでいます。統一した事業戦略のもと、インフラからアプリケーションまでのEnd to Endのサービス提供、当社の研究開発の成果の活用、Smart Worldや5G等の分野におけるビジネス推進に取り組むとともに、中長期的には、IOWN構想を中核とした環境価値、社会価値も提供可能な高度なサービスの実現に向けて取り組みます。

出資に関しては、定期的にモニタリングを実施する等、期待したリターンを得られるよう取り組んでいます。

また、IOWNについては、IOWNロードマップの確実な実現に向け、IOWNのビジネス展開と開発ロードマップの進捗状況の確認及び達成に向けた対策検討等、技術革新や着実な達成に向けたリソースの確保・優先付けをし、遅滞のないよう取り組みます。

 

環境に関するリスク

 

気候変動問題が世界的に重要なリスクとして広く認識されている中、NTTグループの気候変動や資源循環・生物多様性等への対応や開示が不十分と評価された場合には、顧客・パートナー・株主・社員・地域社会等のステークホルダーからの理解が十分に得られず事業運営に支障をきたす可能性があります。また、新たな法令・規制の導入や強化等がなされた場合にはコスト負担が増加する等、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

気候変動や資源循環・生物多様性等に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 気候変動に関する戦略」をご参照ください。

 

 

お客さま体験(CX)の高度化に関するリスク

 

NTTグループは、お客さまの新たな体験や感動創造の高度化に向け、様々なパートナーと連携し、新たな価値の創造及び社会的課題の解決をめざす取組みを推進しています。お客さまに新たな価値を提供するビジネス創造が想定どおりに進展しなかった場合、市場競争力が低下し、結果としてNTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

お客さまの新たな体験や感動創造の取組みが十分に進展しないリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 新たな価値創造に関する戦略」をご参照ください。

 

従業員体験(EX)の高度化に関するリスク

 

情報通信及び関連する市場では、クラウドサービスや5Gサービスの拡大に加え、AI、デジタルツイン、量子コンピューティング等の技術が急速に進展しています。国内外の様々なプレイヤーが市場に参入し、サービスや機器の多様化・高度化が急速に進んでおり、今後、クラウドサービスやAIを中心とした変化が一層加速していくと見込まれます。また、2023年5月に発表した新中期経営戦略の取組みの柱にも成長分野への積極投資を掲げ、IOWN関連、スマートワールド、グリーンソリューション等新たな価値創造に注力しています。このような状況の中で、EXの強化は、生産性や創造性の向上、及び優秀な人材のリテンションのために重要です。EXの低下は、新技術の開発、新サービスの企画、既存サービスの改善、成長戦略の実行等に影響を及ぼす場合があり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

また、社員の健康・安全が十分に確保できない場合、労働生産性の低下等につながり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

EXの高度化に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 人的資本に関する戦略」をご参照ください。

 

 

○ 事業環境に係るリスク

金融市場に関するリスク

 

NTTグループは、社債・借入金等の手段により資金調達を実施していますが、金融市場において大きな変動が生じた場合には、資金調達が制約される可能性や資金調達コストが増加する可能性があります。

また、NTTグループは、投資有価証券等の金融資産を保有しています。景気後退による株式市場や金融市場の低迷により、それらの資産価値が下落した場合には評価損が発生し、NTTグループの業績に影響が生じる可能性があるほか、NTTグループの年金基金についても、年金運用等に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、現金及び現金同等物に加え、取引銀行と当座貸越契約及びコミットライン契約を締結しており、事業活動上必要な流動性を確保しています。資金調達に関しては、調達手段の多様化等を進めるとともに、低利かつ安定的な資金の確保に努めています。さらに、債権流動化等により資金の効率化にも取り組んでいます。また、リスク管理方針を制定し、この管理方針に従って先物為替予約等のデリバティブ取引を利用したリスクヘッジを行い、リスクの最小化に努めています。

 

偶発的な被害に関するリスク

 

地震・津波・台風・洪水等の自然災害、武力攻撃やテロ等の物理的な攻撃、新たな感染症の発生等の偶発的な事象が生じた場合、当社グループの社員・通信ネットワーク・情報システム等に対する被害が発生し、お客さまへのサービス提供に影響を与える場合があり、結果としてNTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

自然災害や武力攻撃・テロ等の物理的な攻撃に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

また、感染症による事業運営継続リスクへの対応として、NTTグループでは、お客さま、パートナー、従業員を含む全ての関係者の健康と安全を確保するため、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえたBCP計画の見直しを必要に応じて実施し、人々の生活や企業の活動にとって重要な情報通信サービスの安定的な利用の確保に取り組みます。当社及び通信事業を営む主要子会社は、人命尊重の視点から感染防止に努めつつ、指定公共機関としての責務を遂行するとともに、ネットワークの安定運用に必要な設備増強等の対策を講じます。

 

 

地政学に関するリスク

 

NTTグループは国内外において事業を展開しているため、テロリズム、武力行為、地域紛争等の国際情勢問題により、社員等の安全が脅かされる可能性や建物や設備が破壊される可能性、また、昨今の経済安全保障に係る懸念の高まりから、現地ビジネス展開、サプライチェーン、資金調達等への影響が生じることによって、事業運営に混乱が生じ、サービスを安定的に提供できない等、事業継続が困難になる場合があります。状況によっては、これらの問題が当該国・地域のみに限定されず、グローバルな事業継続に影響が発生する場合も考えられます。

また、それらの結果、社員が直接被害を受ける可能性や、ネットワークやシステムの復旧に長い時間を要する可能性、燃料や機器の調達が困難になることによりサービスを安定的に提供できない可能性等が考えられ、収入の減少や多額の修繕費用の支出を余儀なくされる可能性があります。状況によっては、それらに係る損害についてNTTグループが責任を負う可能性も考えられます。さらに、これらがNTTグループの信頼性や企業イメージの低下につながるおそれもあります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、国内外の情報管理方法の強化や社員安否確認の定期的な訓練、通信ビル等重要設備のセキュリティ確保や冗長性のある伝送ルート設計、長期停電に対する通信ビル・基地局の非常用電源の強化等を行っています。また、 NTTグループは「NTTグループサプライチェーンサステナビリティ推進ガイドライン」を公表し、国際情勢問題等に伴う原材料の高騰、物流の混乱、原材料や部品等の入手困難化といった事業継続に大きな影響を与える事態に備えて、サプライチェーンへの影響を最小限に留めるよう、事業継続計画を策定することをサプライヤに要請するとともに、それらの事態が発生した場合の事業への影響を最小化するよう、関連するサプライヤと連携し、対応を実施します。これらのように、NTTグループは事業継続に必要なシステムやネットワークを安全かつ安定して運用できるよう様々な対策を講じています。

 

知的財産に関するリスク

 

NTTグループや事業上のパートナーがその事業を遂行するために必要な知的財産権等について、その一部であっても当該権利を他者が保有する場合には、当該他者から実施許諾等を得ることを基本としています。もし、当該他者から実施許諾等が得られない、あるいは、許諾が失効した場合には、NTTグループや事業上のパートナーの特定の技術、商品又はサービスの提供ができなくなるリスクがあります。

また、NTTグループが他者の知的財産権等を侵害したとの主張を受けた場合には、その解決に多くの時間と費用を要する可能性があり、さらに当該他者の主張が判決等により認められた場合は、当該他者への損害賠償責任等の発生、権利を侵害した事業の差止め等の可能性があります。

さらに、NTTグループが保有する知的財産権等について、第三者による不正な使用等により、本来得られる知財収入が減少したり、競争上の優位性が損なわれることで、NTTグループの経営成績や財務に影響を与える可能性があります。

知的財産に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 新たな価値創造に関する戦略」をご参照ください。

 

 

○ 事業活動に係るリスク

提供サービスの不具合に関するリスク

 

NTTグループは国内外において事業を展開しており、通信ネットワーク・情報システムをはじめ、社会と経済活動を支え、国民生活の安全を守るライフラインとして欠かせないサービスや金融・決済等生活基盤を支えるサービスを数多く提供しています。

これらのサービス提供に関して、重要システムにおける開発遅延や不具合、大規模なネットワーク故障の発生等によりお客さまへのサービス提供に影響を与える場合があり、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下するおそれがあります。

システム不具合、ネットワーク故障、サービス不具合等に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

 

情報に関するリスク

 

サイバーテロやセキュリティ上の管理不備等によるセキュリティインシデントにより、サービス停止・サービス品質の低下や情報の漏洩・改ざん・破壊等が発生した場合、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下、ひいては経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

また、お客さま情報をはじめとする個人情報保護への要求が社会的に高まるとともに、法制面からも個人情報保護に対する要請は大きくなっています。しかしながら、個人情報等を狙った犯罪行為が高度化、巧妙化する等、個人情報等の機密情報の流出や不適切な取り扱いが発生するリスクを排除できない場合があります。

重要情報の漏洩・改ざん・破壊等に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

広報活動に関するリスク

 

インターネット上でのNTTグループに関するネガティブ情報の拡散や、システム不具合、ネットワーク故障、サービス不具合等が発生した際の広報対応が遅れたり、誤情報が発信された場合、NTTグループの信頼性やブランドイメージの低下につながるおそれがあります。

ネガティブ情報・故障等発生時の広報対応遅れに関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

人権に関するリスク

 

NTTグループは国内外において事業を展開しており、当社グループ及びサプライチェーンにおいて強制労働や児童労働等の人権侵害行為が発生した場合には、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下、ひいては経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

人権に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 人的資本に関する戦略」をご参照ください。

 

コンプライアンスに関するリスク

 

NTTグループは、国内外で多くの拠点を持ち、様々な製品やサービスを取り扱う関係上、関連する法令や規則は多岐にわたり、事業活動を営むにあたり免許・届出・許認可等が必要とされるものもあります。特に海外での事業運営においては、当該国での法令の存在又は欠如、法令の予期しえない解釈、法規制の新設や改定等によって、法令遵守のための負担が増加する場合があります。また、近年では法令・規制に加えて、人権、児童労働、環境破壊、中間搾取等、サプライチェーン上に存在するグローバルレベルでのリスクへの対処も問題視されています。

これらに関して、従業員による個人的な不正行為等を含めたコンプライアンスに関するリスクもしくは社会的に信用が毀損されるリスクを排除できない場合があります。結果として、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下し、契約者獲得や入札資格停止等事業への影響が生じるおそれがあり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

コンプライアンス違反に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

契約締結に関するリスク

 

NTTグループの事業運営に関し、不適切な契約の締結がなされた場合、NTTグループが損害賠償請求を受ける等、金銭的負担が発生するおそれがあるほか、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下するおそれがあり、その結果として、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、契約審査制度の整備や契約に関する社内研修等を実施しているほか、NTTグループ各社において発生している、又はそのおそれのある訴訟等の案件についてモニタリングを実施するとともに、必要に応じて迅速に対策を講じています。

 

 

AIの不適切な利用等に関するリスク

 

多種多様な業界でAI利用が活性化する一方で、AIの不適切な利用により、金銭的負担が発生するおそれがあるほか、NTTグループ及びお客さま企業のイメージが低下するおそれがあり、その結果として、NTTグループが社会的責任を果たせなくなる可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、重大インシデントの防止及び確実なグループAIガバナンスの実行に向けて、AIガバナンスに関する規程類を制定しています。また、各事業会社においてAIリスクマネジメント責任者を定め、各AIプロジェクトに対するリスクの評価及びリスクヘッジのための対策をプロジェクトマネージャーとともに検討するAIマネジメントシステムを確立しています。持株会社においては、各事業会社における上記のAIマネジメントシステムが適切に運用されていることをモニタリングし、必要に応じて指導していきます。こうしたAIガバナンスを通してお客さまが安心してご利用いただけるAIサービスの提供に努めます。

 

各種規制対応、政府の株式保有等により事業に影響を与えるリスク

 

NTTグループは、事業の遂行に関して、規制当局による措置に服するリスクにさらされています。

 

日本の情報通信市場においては、競争促進や利用者保護等を目的とした電気通信関連の法改正等、多くの分野で規制の変更が行われてきています。

政府等による規制に関する決定、それに伴う通信業界における環境変化は、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、政府等の情報通信政策や規制等の動向について必要な情報収集等を行うとともに、パブリックコメントやヒアリングの場を通じてNTTグループの考え方を主張する等、必要な対応を行っています。規制の内容等については「(参考情報)当社事業にかかる法規制等 (1)規制」をご参照ください。

また、NTTグループがサービスを提供するために使用できる周波数には限りがあります。

スマートフォンやタブレット端末等の普及拡大に伴い、契約者当たりのトラフィック量が増加していく中、事業の円滑な運営のために必要な周波数が得られなかった場合や、新しい周波数帯域の運用開始が想定どおりに進まない場合に、サービス品質が低下したり、追加の費用が発生する可能性があります。さらには、サービスの提供が制約を受け、契約者が競合他社に移行し、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、新たな周波数の獲得に努めているほか、5Gエリア拡大等、周波数利用効率の向上にも努めています。詳細については、「(参考情報)当社事業にかかる法規制等 (1)規制 ③電波法」をご参照ください。

さらに、NTTグループが、金融ビジネスの事業展開を一層推し進めるにあたり、政府等が行う規制等に対し必要な対応が行えず、当局による業務の停止等が発生し、社会的な批判、お客さまからの信頼の喪失等により事業成長に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、規制対応等、金融ビジネス特有のリスクに適した管理体制構築や、金融ビジネスの専門人材の確保・育成に努めています。

 

政府は現在当社の自己株式を除き発行済株式の34.72%(議決権比率34.72%)を保有しています。政府は株主として当社の株主総会での議決権を有していることから、最大株主として、理論的には株主総会等における決定に対し多大な影響力を行使する権限を有しています。しかしながら、政府は1997年の国会答弁において、基本的に当社の経営に積極的に関与する形での株主権の行使はしないことを表明しており、事実、過去において政府は当社の経営に直接関与するためにそのような権限を行使したことはありません。法令に基づく政府のNTTグループに対する規制権限については、「(参考情報)当社事業にかかる法規制等 (1)規制」をご参照ください。

なお、2023年8月以降、総務省情報通信審議会において、「日本電信電話株式会社等に関する法律(以下、「NTT法」)」に関する議論が継続しており、2024年4月に成立したNTT法の改正法の附則には、NTT法の廃止を含め検討を行い、その結果に基づいて2025年の通常国会を目処に所要の法改正等の措置を講じる旨が規定されています。将来的に、仮にNTT法が廃止され、NTT法第4条に規定される政府株式保有義務(当社株式の三分の一以上の保有義務)も同時に効力を失った場合、政府が当社株式を売却する可能性も想定されますが、自由民主党 政務調査会が2023年12月5日に出した提言において「仮に株式を売却する場合には、市場に与える影響を勘案した手法を選択すべき」とされており、当社としても市場に影響を与えないような対応を求めていきます。

 

(参考情報)当社事業にかかる法規制等

 

(1)規制

情報通信産業を所管する日本の主要な監督機関は総務省であり、総務大臣は電気通信事業者を規制する権限を「電気通信事業法」により付与されています。1985年、NTTが民営化されると同時に「電気通信事業法」が施行され、日本における電気通信事業の法規制の枠組みは大幅に変更されるとともに、日本の情報通信産業に競争が導入されました。それ以降、政府は日本の電気通信市場における競争を促進する様々な措置を講じています。この結果、NTTグループはその事業分野の多くで、新規参入企業や新規に事業参入しようとしている企業との競争激化に直面しています。

当社及びその子会社の中には、その事業を行うにあたり、「電気通信事業法」のほか、「日本電信電話株式会社等に関する法律」及び「電波法」に基づく規制を受けている会社が存在します。その概要は次のとおりです。

 

① 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)

電気通信事業法による規制は次のとおりです。

(a) 電気通信事業者に課される規制

a 基礎的電気通信役務の提供

・ 基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)の提供(第7条)

基礎的電気通信役務(国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき次に掲げる電気通信役務)を提供する電気通信事業者は、その適切、公平かつ安定的な提供に努めなければならない。

・第一号基礎的電気通信役務

加入電話(基本料)又は加入電話に相当する光IP電話、ワイヤレス固定電話、第一種公衆電話(総務省の基準に基づき設置される公衆電話)、災害時用公衆電話、緊急通報(110番、118番、119番)等。

・第二号基礎的電気通信役務

FTTHアクセスサービス、CATVアクセスサービス、専用型ワイヤレス固定ブロードバンドアクセスサービス

b 電気通信事業の開始等

・ 電気通信事業の開始についての総務大臣の登録制(第9条)

ただし、設置する電気通信回線設備の規模及び設置する区域の範囲が一定の基準を超えない場合や電気通信回線設備を設置しない事業の開始については総務大臣への届出制となっています(第16条)。

・ 合併や株式取得等を行う際の電気通信事業の登録の更新制(第12条の2)

・ 電気通信事業の休廃止に関する総務大臣への届出制及び利用者への周知義務(第18条、第26条の4)

c 利用者料金その他の提供条件の設定等

・ 基礎的電気通信役務の契約約款の総務大臣への届出制(第19条)

基礎的電気通信役務を提供する電気通信事業者は、基礎的電気通信役務に関する料金その他の提供条件について契約約款を定め、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 消費者保護関連

電気通信事業者は、契約前の説明義務(第26条)、書面交付義務(第26条の2)、初期契約解除制度(第26条の3)、電気通信業務の休廃止の周知義務(第26条の4)、苦情等処理義務(第27条)、不実告知等や勧誘継続行為の禁止(第27条の2)及び媒介等業務受託者に対する指導等の措置義務(第27条の4)等が課されています。

d 相互接続

・ 電気通信回線設備への接続について他の電気通信事業者の請求に応ずる義務(第32条)

e ユニバーサルサービス基金制度

 ユニバーサルサービス基金制度は、ユニバーサルサービスの確保に必要な費用を、主要な通信事業者全体で支えていくための制度です。

 第一号基礎的電気通信役務については、その提供を確保するため、総務大臣の指定を受けた支援機関が、不採算地域等を含めて当該役務を提供する適格電気通信事業者(第108条)に対して、その提供に要する費用の一部に充てるための交付金を交付する(第107条)こととされており、これに伴い支援機関が必要とする費用については各電気通信事業者が応分の負担金を納付する義務を負う(第110条)こととされています。

 東西地域会社は、総務大臣から適格電気通信事業者に指定されており、2023年度と2024年度の東西地域会社への補填額はそれぞれ63億円、67億円となっています。

 第二号基礎的電気通信役務についても、第一号基礎的電気通信役務と同様に、支援機関が適格電気通信事業者(第110条の3)に対して、その提供に要する費用の一部に充てるための交付金を交付する(第107条)こととされており、必要な費用については各電気通信事業者が応分の負担金を納付する義務を負う(第110条の5)こととされています。

 なお、東西地域会社は、日本電信電話株式会社等に関する法律により、第一号基礎的電気通信役務のみ全国提供を義務付けられています(第3条)。

 

(b) 東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(東西地域会社)のみに課される規制

a 利用者料金その他の提供条件の設定

・ 指定電気通信役務に関する保障契約約款の総務大臣への届出制(第20条)

第一種指定電気通信設備を用いて提供する指定電気通信役務の料金その他の提供条件については、利用者と別段の合意がある場合を除き適用される保障契約約款を定め、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 特定電気通信役務の料金の規制(第21条)

特定電気通信役務については、その料金の指数が総務大臣から通知される基準料金指数以下となる場合には総務大臣への届出制とする一方、基準料金指数を越える場合には総務大臣の認可を必要とする、いわゆる「プライスキャップ規制」が適用されています。

(注)

・第一種指定電気通信設備 各都道府県において電気通信事業者の設置する固定端末系伝送路設備のうち、同一の電気通信事業者が設置するものであって、各事業者の業務区域(NTT東日本の場合は東日本エリア全域、NTT西日本の場合は西日本エリア全域)内の総数の2分の1を超えるもの及びこれと一体として設置する電気通信設備で、他の電気通信事業者との接続が利用者の利便向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に不可欠な設備として、総務大臣が指定するもの。具体的には、東西地域会社の主要な電気通信設備が指定されている。

・指定電気通信役務    第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が当該設備を用いて提供する電気通信役務であって、他の電気通信事業者によって代替役務が十分提供されないこと等の事情を勘案して、適正な料金その他の提供条件に基づく提供を保障することにより利用者の利益を保護するため特に必要があるものとして総務省令で定めるもの。具体的には、加入電話、ISDN、公衆電話、専用サービス、フレッツ光、ひかり電話等であるが、利用者の利益に及ぼす影響が少ない付加的な機能の提供に係る役務等は除かれる。

・特定電気通信役務    指定電気通信役務のうち利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるもの。具体的には、東西地域会社の提供する加入電話、ISDN、公衆電話。

・基準料金指数      特定電気通信役務の種別ごとに、能率的な経営の下における適正な原価及び物価その他の経済事情を考慮して、通常実現することができると認められる水準の料金を表す指数として、総務大臣が定めるもの。

・プライスキャップ規制  料金の上限を規制する制度のこと。なお、東西地域会社の実際の料金指数は、2023年10月1日から始まった1年間の基準料金指数を下回る水準にあることから、プライスキャップ規制に基づく値下げは行っていない。

b 相互接続等

・ 第一種指定電気通信設備との接続に関する接続約款の総務大臣の認可制(第33条)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備を有する電気通信事業者として、相互接続に係る接続料及び接続条件について接続約款を定め、接続料が能率的な経営の下における適正な原価を算定するものとして総務省令で定める方法により算定された原価に照らし公正妥当なものであること等を要件に総務大臣の認可を受けることになっています。

 

 

(電話接続料)

1998年5月、日米両政府の規制緩和等に関する共同報告の中で、日本政府は、接続料への長期増分費用方式の導入の意向を表明、2000年5月に長期増分費用方式の導入を定めた改正電気通信事業法が成立し、それ以降、同方式により接続料の値下げが行われました。また、その後、通信量が大幅に減少する中で、接続料の上昇による通話料の値上げを回避する観点から、NTSコスト(Non-Traffic Sensitive Cost、通信量に依存しない費用)を接続料原価から控除し基本料で回収することとされました(2004年10月の情報通信審議会答申)。

なお、NTSコストの一部については、ユニバーサルサービス基金の利用者負担の増加を抑制する観点から同基金の見直しが行われた際、基金の補填対象範囲の縮小分の負担について東西地域会社のみに負わせるのではなく、各事業者から公平に回収することが適当とされたことから、再度接続料原価に算入することとされています。

2022年度以降の接続料については、2021年の情報通信審議会における検討の結果、IP網への移行期間(2022年4月から2024年12月まで)において、引き続き長期増分費用方式を適用することとされました。

 

(光ファイバ接続料)

東西地域会社が有する光ファイバは、電気通信事業法における第一種指定電気通信設備として他事業者に認可料金(接続料)で貸し出すことを義務付けられています。

加入光ファイバ接続料については、接続料低廉化の見通しを示すことにより他事業者が参入しやすい環境を整えるため、2023年度から2025年度までの3年間を算定期間とする将来原価方式により算定しています。なお、今回の接続料においても、実績接続料収入と実績費用の差額を次期以降の接続料原価に加えて調整する乖離額調整制度を導入しており、未回収リスクはないものと考えています。

なお、加入光ファイバの分岐端末回線単位の接続料設定の問題については、情報通信行政・郵政行政審議会における検討の結果、依然として様々な解決すべき課題がある(2012年3月の情報通信行政・郵政行政審議会答申)とされ、分岐端末回線単位の接続料は設定されていません。

 

・ 第一種指定電気通信設備との接続に係る機能の休止及び廃止の周知(第33条の2)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備との接続に係る機能を休止・廃止しようとするときは、総務省令で定めるところにより、予め、当該機能を利用する他の電気通信事業者に対して、その旨を周知しなければならないとされています。

・ 第一種指定電気通信設備の機能に関する計画の総務大臣への届出制(第36条)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備の機能の変更又は追加の計画について、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 第一種指定電気通信設備の共用に関する協定の総務大臣への届出制(第37条)

東西地域会社は、他の電気通信事業者との第一種指定電気通信設備の共用の協定について、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 第一種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務に関する総務大臣への届出制(第38条の2)及び整理・公表制(第39条の2)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務の提供の業務を開始・変更・廃止したときは、その旨、卸電気通信役務の種類、一定の要件を満たす卸先事業者に対する料金その他の提供条件等を総務大臣に届け出ることとされています。また、総務大臣は、当該届出に関して作成し、又は取得した情報について、整理・公表することとされています。

・ 第一種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務のうち、電気通信事業者間の適正な競争関係に及ぼす影響が認められる役務(特定卸電気通信役務:フレッツ光、ひかり電話)の提供義務(第38条の2)
東西地域会社は、正当な理由がなければ、卸先事業者に対する特定卸電気通信役務の提供を拒んではならないとされています。

 

c 禁止行為

東西地域会社は、市場支配的な事業者として、接続情報の目的外利用や他の電気通信事業者に対し不当に優先的な取扱いを行うこと等を禁止されている(第30条)ほか、特定関係事業者として総務大臣に指定されたエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社及び株式会社NTTドコモとの役員兼任等の禁止(第31条)が定められています。

また、東西地域会社の業務委託先子会社において禁止行為が行われないよう、東西地域会社が委託先子会社に対し必要かつ適切な監督を行うことや、東西地域会社が接続の業務に関して知り得た情報の適切な管理、接続の業務の実施状況を適切に監視するための体制の整備等が義務付けられています(第31条)。

したがって、NTTグループ内の電気通信事業者間で排他的に連携してサービスを提供することには一定の制約があり、NTTグループとしては、この禁止行為規制を含め公正競争条件を確保しつつ市場ニーズに応じたサービスを提供していく考えですが、例えば、新サービスの迅速な提供に支障をきたす等の影響が生じる可能性があります。

 

(c) 株式会社NTTドコモに課される規制

a 相互接続等

・ 第二種指定電気通信設備との接続に関する接続約款の総務大臣への届出制(第34条)

株式会社NTTドコモの携帯電話に係る主要な電気通信設備については、他の電気通信事業者との適正かつ円滑な接続を確保すべきものとして総務大臣より第二種指定電気通信設備に指定されており、他の電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、接続料及び接続の条件について接続約款を定め、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 第二種指定電気通信設備との接続に係る機能の休止及び廃止の周知(第34条の2)

株式会社NTTドコモは、第二種指定電気通信設備との接続に係る機能を休止・廃止しようとするときは、総務省令で定めるところにより、予め、当該機能を利用する他の電気通信事業者に対して、その旨を周知しなければならないとされています。

・ 第二種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務に関する総務大臣への届出制(第38条の2)及び整理・公表制(第39条の2)

株式会社NTTドコモは、第二種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務の提供の業務を開始・変更・廃止したときは、その旨、卸電気通信役務の種類、一定の要件を満たす卸先事業者に対する料金その他の提供条件等を総務大臣に届け出ることとされています。また、総務大臣は、当該届出に関して作成し、又は取得した情報について、整理・公表することとされています。

・ 第二種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務のうち、電気通信事業者間の適正な競争関係に及ぼす影響が認められる役務(特定卸電気通信役務:携帯電話、BWAアクセスサービス、セルラーLPWA)の提供義務(第38条の2)
株式会社NTTドコモは、正当な理由がなければ、卸先事業者に対する特定卸電気通信役務の提供を拒んではならないとされています。

 

なお、第二種指定電気通信設備に関する規制については、株式会社NTTドコモのほか、第二種指定電気通信設備を設置する全ての電気通信事業者に課されています。

 

b 禁止行為

株式会社NTTドコモは、電気通信事業者間の競争環境の確保の観点から、端末を販売等しない場合よりも端末を販売等する際の通信料金を有利にすることや、行き過ぎた期間拘束により利用者を囲い込むこと等を禁止されています(第27条の3)。なお、本規定については、株式会社NTTドコモのほか、総務大臣に指定された事業者に課されています。

また、株式会社NTTドコモは、市場支配的な事業者として、接続情報の目的外利用やグループ内の事業者であって総務大臣が指定するものに対し不当に優先的な取扱いを行うこと等を禁止されています(第30条)。

(注)

・第二種指定電気通信設備  電気通信事業者の設置する特定移動端末設備(携帯電話端末・BWA端末)に接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであって、その業務区域内の全ての当該伝送路設備の総数の10分の1を超えるもの及びその事業者が当該電気通信役務を提供するために設置する電気通信設備で、他の電気通信事業者の電気通信設備との適正かつ円滑な接続を確保すべき設備として、総務大臣が指定するもの。

 

 

② 日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和59年法律第85号)

(a) 概要

1997年6月に公布された「日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律」(以下、「平成9年改正法」)は、1999年7月に施行されました(これにより「日本電信電話株式会社法」は「日本電信電話株式会社等に関する法律」に改題され、当社を純粋持株会社とする再編成がおこなわれました。)。同法は、その後も改正されておりますが、直近では2024年4月に「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」(以下、「令和6年改正法」)が公布・施行されました。

具体的には、電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究に係る責務の廃止や、外国人役員に係る規制の緩和、役員選解任の決議に係る認可の事後届出への緩和、剰余金処分の決議に係る認可の廃止、及び商号変更が可能になる等の改正がされました。また、今後の検討として、ユニバーサルサービスや公正競争、経済安全保障等を確保する観点から、NTT法の廃止を含め検討を行い、その結果に基づいて2025年の通常国会を目処に所要の法改正等の措置を講じる旨が附則に規定されました。

 

(b) 目的・事業・責務

一 目的

日本電信電話株式会社(以下、「会社」)、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(以下、「東西地域会社」)について定めることを目的とする。

 

一の二 定義

1 会社とは、東西地域会社がそれぞれ発行する株式の総数を保有し、これらの株式会社による適切かつ安定的な電気通信役務の提供の確保を図ること並びに電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うことを目的とする株式会社であって、附則第4条第1項に規定する権利及び義務を承継したものをいう。

2 「東日本電信電話株式会社」とは、二の3(1)イに掲げる都道県の同号に規定をする区域において地域電気通信事業を経営することを目的とする株式会社であって、平成9年改正法附則第2条第1項の規定により国が引き継がせるものとされた業務を承継したものをいう。

3 「西日本電信電話株式会社」とは、二の3(1)ロに掲げる府県の同号に規定する区域において地域電気通信事業を経営することを目的とする株式会社であって、平成9年改正法附則第2条第1項の規定により国が引き継がせるものとされた業務を承継したものをいう。

 

(注)附則第4条第1項

日本電信電話公社は、会社の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、その時において当社が承継する。

(注)平成9年改正法附則第2条第1項

国は、東西地域会社を設立し、それぞれ、日本電信電話株式会社が営んでいる国内電気通信業務のうちこの法律による改正後の地域電気通信業務に該当する業務を、各地域会社に引き継がせるものとする。

 

二 事業

1 会社は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。

(1)東西地域会社が発行する株式の引受け及び保有並びに当該株式の株主としての権利の行使をすること

(2)東西地域会社に対し、必要な助言、あっせんその他の援助を行うこと

(3)電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うこと

(4)(1)(2)及び(3)に掲げる業務に附帯する業務

2 会社は、二の1に規定する業務を営むほか、総務大臣へ届け出ることによって、その目的を達成するために必要な業務を営むことができる。

3 東西地域会社は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。

(1) それぞれ次に掲げる都道府県の区域において行う地域電気通信業務

イ 東日本電信電話株式会社にあっては、北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県及び長野県

ロ 西日本電信電話株式会社にあっては、京都府及び大阪府並びにイに掲げる県以外の県

(2)二の3の(1)に掲げる業務に附帯する業務

4 東西地域会社は、総務大臣へ届け出ることによって、次に掲げる業務を営むことができる。

(1)二の3に規定するもののほか、東西地域会社の目的を達成するために必要な業務

(2)それぞれ二の3の(1)により地域電気通信業務を営むものとされた都道府県の区域(目的業務区域)以外の都道府県の区域において行う地域電気通信業務

5 地域電気通信業務は、東西地域会社が自ら設置する電気通信設備を用いて行わなければならない。ただし、電話の役務をあまねく目的業務区域において適切、公平かつ安定的に提供することを確保するために必要があると認められる場合に、総務大臣の認可により、他の電気通信事業者の設備(無線設備)を用いて電話を提供することができる。

6 東西地域会社は、二の3、二の4に規定する業務のほか、総務大臣へ届け出ることによって、地域電気通信業務の円滑な遂行及び電気通信事業の公正な競争の確保に支障のない範囲内で、二の3に規定する業務を営むために保有する設備若しくは技術又はその職員を活用して行う電気通信業務その他の業務を営むことができる。

 

三 責務

会社及び東西地域会社は、それぞれその事業を営むに当たっては、常に経営が適正かつ効率的に行われるように配意するとともに、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与し、もって公共の福祉の増進に資するよう努めなければならない。

 

(c) 総務大臣の認可を必要とする事項

・ 会社及び東西地域会社の新株及び新株予約権付社債の発行(第4条、第5条)

(注)会社は、総務省令で定める一定の株式数に達するまでは、認可を受けなくても総務大臣に届け出ることにより新株の発行が可能(附則第14条)

・ 会社及び東西地域会社の定款の変更、合併、分割及び解散の決議(第11条)

(注)定款の変更は、会社又は東西地域会社の商号の変更に係る決議を除く

・ 会社及び東西地域会社の事業計画及び事業計画の変更(第12条)

・ 東西地域会社の重要な設備の譲渡及び担保に供すること(第14条)

 

(d) その他総務大臣に対する義務

・ 会社の代表取締役、取締役又は監査役の就任又は退任の届出(第10条)

(注)日本の国籍を有しない人は、会社及び東西地域会社の代表取締役となることができない

(注)会社及び東西地域会社は、日本の国籍を有しない人がそれぞれの取締役又は監査役の三分の一以上を占めることとなってはならない

・ 会社及び東西地域会社の貸借対照表、損益計算書、事業報告書の提出(第13条)

・ 会社及び東西地域会社への命令を受ける義務(第16条)

・ 会社及び東西地域会社の業務に関する報告の要求に応じる義務(第17条)

 

 

③ 電波法(昭和25年法律第131号)

(a)総務大臣の免許を必要とする事項

・ 無線局の開設(第4条)

 

(b)総務大臣の許可を必要とする事項

・ 無線局の目的、通信の相手方、通信事項等の変更等(第17条)

 

(携帯電話の周波数帯割当て)

移動通信事業において、事業者が無線周波数帯域を使用するためには日本政府(総務省)の免許が必要となります。周波数帯の割当ては電波法及び関連する法令等により規定されています。

(2)会社株式に係る事項

 

① 外国人等議決権割合の制限(日本電信電話株式会社等に関する法律 第6条)

会社は、外国人等議決権割合が三分の一以上になるときは、その氏名及び住所を株主名簿に記載し、又は記録してはならない。

  (注)外国人等 一 日本の国籍を有しない人

二 外国政府又はその代表者

三 外国の法人又は団体

四 前三号に掲げる者により直接に占められる議決権の割合が総務省令で定める割合以上である法人又は団体

なお、当社定款において、株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者、及びその有する株式の全部若しくは一部について日本電信電話株式会社等に関する法律第6条に基づき、株主名簿に記載されなかった若しくは記録されなかった株主又は当該株主の有する株式の質権者に対して、剰余金の配当をすることができる旨を規定しています。

 

 

② 政府による当社の株式保有義務(日本電信電話株式会社等に関する法律 第4条)

政府は、常時、会社の発行済株式の総数の三分の一以上に当たる株式を保有していなければならない。

  (注)発行済株式の総数の算定方法の特例(日本電信電話株式会社等に関する法律 附則第13条)

・ 第4条第1項の規定の適用については、当分の間、新株募集若しくは新株予約権の行使による株式の発行又は取得請求権付株式若しくは取得条項付株式の取得と引換えの株式の交付があった場合には、これらによる株式の各増加数(「不算入株式数」)は、それぞれ第4条第1項の発行済株式の総数に算入しないものとする。

・ 前項に規定する株式の増加後において株式の分割又は併合があった場合は、不算入株式数に分割又は併合の比率(二以上の段階にわたる分割又は併合があった場合は、全段階の比率の積に相当する比率)を乗じて得た数をもって、同項の発行済株式の総数に算入しない株式の数とする。

2024年3月31日時点の当社の発行済株式総数は90,550,316,400株であり、同日現在の政府保有株式数は29,199,372,200株、即ち、自己株式除き発行済株式総数の34.72%となっています。

(注)当社は2000年12月に公募増資により30万株(2009年1月4日付の株式分割、2015年7月1日付の株式分割、2020年1月1日付の株式分割及び2023年7月1日付の株式分割後に換算すると30億株)の新株発行を実施しました。これらの株式は、前述のとおり、政府が保有する株式の比率を計算する際には発行済株式総数には算入されません。また、政府保有株式数には名義書換失念株等の政府が実質的に保有していない株式が含まれているため、これらの株式は、政府が保有する株式の比率を計算する際には政府保有株式数に算入していません。これらの条件を考慮すると、政府が保有する株式の比率は33.33%となります。

NTTグループと政府の各種部門・機関との取引は、個別の顧客として、かつ独立当事者間の取引として行われています。政府は、株主としての資格において当社の株主総会で議決権を行使し、筆頭株主としての立場から、理論上は株主総会での大多数の決議に重大な影響力を及ぼす権限を有します。しかしながら、過去に政府がこの権限を行使して当社の経営に直接関与したことはありません。

 

 

 

③ 政府保有株式の売却について

  政府の保有する会社株式の処分は、その年度の予算をもって国会の議決を経た限度数の範囲内でなければならない(日本電信電話株式会社等に関する法律 第7条)

 

・ 売却の経緯及び売却方針について(第一次売出から第六次売出について)

当社は発行済株式総数1,560万株で設立され、政府が売却可能である当社株式1,040万株(政府による保有が義務付けられた全体の三分の一に当たる520万株を除いた株式)のうち540万株については、1986~1988年度において売却されました。

また、1990年12月17日に、未売却となっていた500万株のうち、イ)250万株について毎年度50万株程度を計画的に売却することを基本とすること、ロ)後年度において市場環境から許容される場合、計画の前倒しによる売却があり得ること、ハ)残余の250万株については、当分の間、売却を凍結するという売却方針が大蔵省(当時)より示されました。(ただし、1997年度まで、市場環境等により実際の売却は見送られました。)

1998年度においては、1998年12月に100万株について売却が実施されました。

1999年度においては、100万株が売却限度数として計上されていましたが、このうち48,000株については1999年7月13日の当社の自己株式買入において売却が実施され、残りの952,000株については1999年11月に売却が実施されました。また、上記の1990年12月に示された売却方針については終了しました。

2000年度においては、2000年11月に100万株の売却が実施されました。

 

・ 政府保有株式の売却実績について

提出日現在までの政府保有株式の売却実績については、下表のとおりです。

年度

政府の売却実績

売却時期

売却株数

売却方法

1986年度

1987年 2月(第一次売出)

200,000株

一般競争入札

1,750,000株

証券会社による「売り出しの取り扱い」

1987年度

1987年11月(第二次売出)

1,950,000株

証券会社による「引受」「売り出しの取り扱い」

1988年度

1988年10月(第三次売出)

1,500,000株

証券会社による「引受」「売り出しの取り扱い」

1998年度

1998年12月(第四次売出)

1,000,000株

ブックビルディング方式による株式売り出し

1999年度

1999年 7月13日

48,000株

自己株式買入

1999年11月(第五次売出)

952,000株

ブックビルディング方式による株式売り出し

2000年度

2000年11月(第六次売出)

1,000,000株

ブックビルディング方式による株式売り出し

2002年度

2002年10月 8日

91,800株

自己株式買入

2003年度

2003年10月15日

85,157株

自己株式買入

2004年度

2004年11月26日

800,000株

自己株式買入

2005年度

2005年 9月 6日

1,123,043株

自己株式買入

2011年度

2011年 7月 5日

57,513,600株

自己株式買入

2012年 2月 8日

41,820,600株

自己株式買入

2013年度

2014年 3月 7日

26,010,000株

自己株式買入

2014年度

2014年11月14日

35,088,600株

自己株式買入

2014年11月28日

1,068,100株

自己株式買入

2016年度

2016年 6月14日

59,000,000株

自己株式買入

2019年度

2019年 9月11日

48,666,700株

自己株式買入

2022年度

2022年 9月15日

92,925,400株

自己株式買入

(注)1.1995年11月24日を効力発生日として、普通株式1株につき1.02株の割合をもって株式分割いたしました。

2.2009年1月4日を効力発生日として、普通株式1株につき100株の割合をもって株式分割いたしました。

3.2015年7月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割いたしました。

4. 2020年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割いたしました。

 

配当政策

3【配当政策】

当社では、持続的に企業価値を高めるとともに、株主の皆さまに利益を還元していくことを重要な経営課題の一つとして位置付けています。株主の皆さまへの還元は、継続的な増配を基本的な考えとし、自己株式取得については、機動的に実施することとしています。内部留保資金につきましては、財務体質の健全性を確保しつつ、成長機会獲得のための投資や資本効率を意識した資本政策等に活用してまいります。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。また、中間配当については、会社法第454条第5項の規定による剰余金の配当をすることができる旨を定款に定めています。

これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。

当事業年度においては、上記の方針に基づき、中間配当金として1株当たり2.5円、期末配当金として1株当たり2.6円を決定しています。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

 

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月7日

212,809

2.5

取締役会決議

2024年6月20日

218,673

2.6

株主総会決議