リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
また、現時点では必ずしもリスクとして認識されない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。
当社は、リスクマネジメント活動を一元的に推進する体制を整えています。また、グループ全体の持続的な成長を実現するため、当社のみならず子会社などを含むグループ全体でのリスクマネジメントの推進に取り組んでいます。当社は、会社の危機を未然に防ぐためには、その予兆を把握し、事態が悪化する前に対策を講じることが重要という認識のもと、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを構築しています。また、リスクの発見時には迅速かつ適切な対応がとれる危機管理体制を整備しています。当社は、これらのリスクによる問題発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適時適切な対応に努める所存であります。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、潜在的リスクや不確定要因はこれらに限られるものではありませんのでご留意ください。
(1)他の事業者や他の技術との競争、市場や事業環境の急激な変化
新型コロナウイルス感染症の流行により、あらゆる領域で急速なデジタルシフトが進んだことで、通信の果たす役割もますます重要になっています。政府においても、デジタル実装を通じた地域活性化を推進する「デジタル田園都市国家構想」が掲げられ、人々の暮らしやビジネスのデジタル化が加速しています。当社は生活者の新たなライフスタイルをサポートし、経済発展と社会課題の解決を両立するレジリエントな未来社会の創造に向けた取り組みを推進します。
なお、他の事業者や他の技術との競争、市場や事業環境の急激な変化により、主に以下の事項に不確実性が存在し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
・当社グループの期待通りの需要が存在するかどうか
・当社グループの期待通りに契約数を維持拡大できるかどうか
・人口減少、高齢化に伴い期待通りの収入をあげられるかどうか
・新規事業への参入等により期待通りの収入をあげられるかどうか
・競争激化に伴う料金値下げによる通信料収入の低下、販売コミッションやお客さま維持コストの増大
・契約者のサービス利用頻度が下がることによる通信料収入の低下
・不測の事態が発生した場合であってもネットワーク及びコンテンツの品質等がお客さまの満足度を維持できるかどうか
・他の事業者と比較して、常により魅力のある端末やコンテンツ等の商品、サービスを提供できるかどうか
・物販事業拡大に伴う商品不具合への対応
・端末の高機能化等に伴う端末価格の上昇販売コミッションの増加
・迷惑メール、主にスマートフォンのセキュリティ脆弱性がもたらす脅威によるお客さま満足度の低下や防止対応コストの増加
・新周波数対応による基地局建設やデータトラフィック急増に伴うネットワークコストの増加
・当社の必要に応じた周波数を獲得できるかどうか
・新たな高速データ無線技術による競争激化
・通信方式、端末、ネットワーク、ソフトウェア等における特定技術への依存による影響
・無料通話アプリ等の拡大に伴う音声通話料収入の縮小
・他の電気通信事業者との接続料金値上げの可能性
・異業種との提携、通信と電力等のその他商品とのセット販売、MNO、MVNO事業者の新規参入、他事業者の事業領域の拡大等の事業環境の変化に伴う競争の激化
・金融事業における競争において期待通りの収入を上げられるかどうか
・金融事業の市況変動及び債務者の信用状況の悪化により、不良債権の増加や担保不動産価値の減少が生じることによる貸倒引当金の追加計上
・燃料高騰等による通信設備コストの増加及びエネルギー事業における電力調達コストの増加
(2)通信の秘密及び顧客情報の不適切な取り扱いや流出、及び、当社の提供する製品・サービスの不適切な利用等
近年、第三者によるサイバー攻撃等によって、重要な機密情報が外部流出する事故やサービス不正利用が世界的に発生しており、大きな社会問題となっています。これらのサイバー攻撃は、今や、自然災害や気候変動などに迫る大きなリスクとして考えられるようになっています。
当社は電気通信事業者として通信の秘密の保護を遵守するとともに、取り扱う情報資産の保護や管理については、情報セキュリティ委員会を設置し、内部からの情報漏洩防止、外部ネットワークからの不正侵入を防ぐための全社的対応策の策定及びGDPRなどのグローバル法制度の対応を実施しています。
当社グループでは、「KDDI行動指針」、「KDDIセキュリティポリシー」、「KDDIプライバシーポリシー」、「KDDIグループAI開発・利活用原則」の策定や企業倫理委員会の設置などにより、コンプライアンス体制を確立しています。その他、顧客情報を管理するシステムでは、利用権限の管理やアクセスログの保存、監視の強化、さらに、社内データの持ち出しや業務パソコンからの外部メモリーへのコピーを禁止し、技術的、組織的、人的な観点から各種の安全管理措置を強化しています。
これらの啓発活動として、当社全社員に対して継続的に通信の秘密及び顧客情報の保護に関する教育を行い、また、業務委託先、特に販売店であるauショップに対しても、情報漏えいのリスクを踏まえ、定期的な監査や教育、 セキュリティポリシーの遵守、情報取扱いに関連した業務改善を徹底し、管理強化を図っています。加えて、リスクの高い顧客情報取扱い業務に対しては、監査を強化しています。さらに、適正な顧客情報の取り扱いを行うために、社内組織の整備、第三者による評価の実施、サービス導入前のプライバシー影響評価(PIA)の導入等の対応を実施しています。
また、サイバー攻撃による事業影響の回避や低減に向け、事業を担うシステムが守るべきセキュリティ対策の基準をセキュリティ規程として定め、規程への準拠状況を審査しています。本審査を、システムの企画から開発への移行フェーズにおいて厳格に実施することで、企画・設計段階からセキュリティ対策を考慮した「セキュリティバイデザイン」を実現するだけでなく、高度なセキュリティ監視を支える技術開発を進め、システムのセキュリティを強化し、安心・安全なサービスの提供に努めています。
更に、お客様に安心・安全に製品・サービスをご利用いただくための取り組みとして、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」等に基づき、未成年のご契約時は原則としてフィルタリングサービスの設定を実施するとともに、フィルタリングサービスの利便性や認知度向上にも積極的に取り組んでいます。また、KDDIでは、フィッシング詐欺を検知し関連機関と連携することで偽サイトによる被害を抑止し、サービスの不正利用を24時間365日で監視する体制を構築しています。サービスの不正利用の手口は日々巧妙化しているため、新たな脅威への対策にも取り組んでいきます。
これらの取り組みにもかかわらず、従業員の故意・過失、または悪意を持った第三者によるサイバー攻撃等により、通信の秘密及び顧客情報の漏洩、サービス停止・サービス品質低下が発生した場合、もしくは、当社の提供する製品・サービスが不適切に利用された場合、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜、補償・課徴金を伴う可能性があります。また、将来的に通信の秘密及び顧客情報保護、サイバー攻撃防護体制の整備のため、更なるコストが増加する可能性があり、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)通信障害・自然災害・事故等
当社グループは音声通信、データ通信等のサービスを提供するために、国内外の通信ネットワークシステム及び通信機器等に依存しております。ネットワークシステムや通信機器の障害などによるサービスの停止が発生した場合、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜、顧客満足度の低下により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、大規模な誤請求・誤課金、販売代理店の閉鎖や物流の停止に伴う商品・サービスの提供機会損失、SNSなどの媒体を通じた風評被害等が発生した場合も同様の影響が生じる可能性があります。
当社グループは通信障害・自然災害・事故等によるサービスの停止、中断等のリスクを可能な限り低減するため、ネットワークの信頼性向上とサービス停止の防止対策に取り組んでおります。具体的には災害時においても通信サービスを確保できるよう、防災業務実施の方針を定め、災害に備えた対策を図り、国内外の関係機関と密接な連絡調整を行っています。災害が発生した場合には、各社組織の各機能を最大限に発揮して24時間365日、通信の疎通確保と施設の早期復旧に努めております。
当社連結子会社であるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.(以下「KSGM」)は、ミャンマー運輸通信省傘下組織であるミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)の通信事業運営のサポートを行っておりますが、2021年2月に発生した政変によって事業活動が制限されるなどした場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、KSGMは本事業活動におけるリース債権を保有しており、2022年4月以降開始されたミャンマー中央銀行及び外国為替監督委員会による外国為替管理の規制により、USドル建てのリース債権の回収に制限を受けております。当連結会計年度において、当該リース債権の一部について損失評価引当金を計上しましたが、今後の回収状況によっては、引当金の追加計上等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、損失評価引当金の詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 32. 金融商品」に記載しています。
当社グループのサービスの提供が停止する主な事由として以下のものが考えられます。
・地震及び津波、台風、洪水等の自然災害やそれに伴う有害物質の飛散等の2次災害
・感染症の世界的流行(パンデミック)
・戦争、テロ、事故その他不測の事態
・電力不足、停電
・コンピューターウィルス、サイバー攻撃、ハッキング
・オペレーションシステムのハード、ソフトの不具合
・通信機器等の製品やサービスに係る欠陥
(4)電気通信事業等に関する法規制、政策決定等
電気通信事業をはじめ、電気事業や金融事業等に関する法律、規制の改廃または政策決定等が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループのブランドイメージや信頼性に影響を与える社会的問題を含め、こうした法規制や政策決定等に対して当社グループは適切に対応していると考えておりますが、将来において適切な対応ができなかった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後の競争政策の在り方について、総務省等における様々な審議会や研究会、意見募集等を通じて、他の電気通信事業者等との公正競争を有効に機能させるための措置の必要性を訴えておりますが、この取り組みに関わらず結果として当社の競争優位性が相対的に損なわれた場合にも、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
2024年4月に「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」(以下 改正NTT法)が成立し、改正NTT法の付則で「日本電信電話株式会社等に関する法律の廃止を含め」検討することおよび「令和七年に開会される国会の常会を目途」と時限を設ける旨が規定されたことは、今後の議論に先立ち、あらかじめ法制度のあり方を方向づけるとともに拙速な議論を招きかねず、極めて強い懸念があります。
日本の電気通信事業の公平な競争環境の確保は、公正競争ルールを規定した電気通信事業法と、日本電信電話公社から資産や設備を継承した日本電信電話株式会社と東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社に対して公益的な責務などを課す「日本電信電話株式会社等に関する法律(以下 NTT法)」を組み合わせて実現されるものであり、NTT法も含め通信政策の見直しを検討していくことは必要ですが、NTT法の廃止には慎重な検討が必要と考えております。NTT法の廃止が行われた場合、以下の懸念があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
・NTTグループ一体化で日本の健全かつ公正な競争環境が阻害され、利用者料金の高止まりやイノベーションの停滞など国民の利益が損なわれる懸念
・NTTがユニバーサルサービスの提供に関する公益的な責務を負わなくなることで、地域を問わず安心安全・強靭かつ高速・大容量の通信環境実現が困難となる懸念
・NTTグループの強大な市場支配力により、地域事業者が排除され、地域サービス衰退の懸念
その他、電気通信事業等に関する法律、規制の改廃または政策決定や当社グループの競争優位性等の観点で、以下の電気通信事業をはじめ、電気事業や金融事業等の政策決定等に限らず、不確実性が存在しています。
・事業者間接続料金の算定方式、会計制度の見直し
・指定電気通信設備制度、禁止行為規制の見直し
・ユニバーサルサービス制度の見直し
・MNO、MVNO等による移動通信事業への新規事業者参入
・周波数割り当て制度の見直し
・電波利用料制度の見直し
・電波の健康への影響に関する規制
・NTT東・西の固定電話網のIP網への移行に関するルール
・独占禁止法及びそれに関するルール
・消費者保護に関するルール
・不適正利用の防止に関するルール
・有害サイト等の増加等によるインターネットに関するルール
・インターネットのサービス品質計測及び広告表示に関するルール
・電話リレーサービス制度の見直し
・電気小売に関するルール
・金融事業に関するルール
・データの管理・利活用に関するルール
・プラットフォーマーに関する規制
・経済安全保障の確保に関するルール
(5)公的規制
当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障、さまざまな政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止法、特許、消費者、租税、為替、環境、労働、金融、電力等の法規制の適用を受けております。当社グループはこれらの法規制に係る情報を早期に収集し、必要な手続・対応を行っております。なお、これらの規制が強化された場合や当社グループ及び業務委託先等において規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限され、コストの増加につながる可能性があります。
(6)訴訟・特許
当社グループは、国内外で事業活動を行っており、その遂行に当たっては、各国の法令その他社会規範を遵守し、公正で健全な企業活動を行っております。また、保有する商品、技術またはサービスに係る知的財産権を保護するとともに、第三者の知的財産権を侵害しないよう努めています。なお、予期せぬ知的財産権を含む各種権利等の侵害を理由とする訴訟が提訴され、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)人材の確保・育成・労務管理
当社グループは、技術革新に即応すべく全社をあげて人材育成、キャリア形成の支援に注力しておりますが、期待通りの効果が出るまで一定の期間を要することがあり、将来的に人材投資コストが増加する可能性があります。また、当社グループは法令に基づき適正な労務管理、働き方改革の推進に努めております。なお、将来において適切な対応ができなかった場合には、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)退職給付関係
当社グループは、確定給付企業年金制度(基金型)、退職一時金制度(社内積立)ならびに確定拠出年金制度を設けております。定期的に退職給付債務の将来予測に基づく資産運用方針、運用機関の見直しを行っております。なお、今後当社グループの年金資産の運用利回り低下により年金資産の時価が下落した場合、または、退職給付債務を計算する上での前提条件(割引率、人員構成、昇給率等)が大幅に変更になった場合に損失が発生する可能性があります。
(9)減損会計
当社グループは、IFRSに準拠して資産の減損の兆候の判定や減損テスト等を行い適切な処理を行っております。将来において事業状況が悪化した場合、回収可能価額の低下により、保有するのれんを含む資産の減損損失が発生する可能性があります。
(10)電気通信業界の再編及び当社グループの事業再編
当社グループは、市場環境の変化に対して、事業戦略の着実な推進や必要に応じて事業再編を行っておりますが、国内外の電気通信業界の再編が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆さまへの利益還元を経営の重要事項と認識しており、財務面の健全性を維持しつつ、安定的な配当を継続していくことを会社の基本方針とし、持続的な成長への投資を勘案しながら、連結配当性向40%超を維持する方針としております。
また、当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当事業年度の配当につきましては、中間配当金として既に1株当たり70円00銭を実施いたしました。また、期末配当金につきましても1株当たり70円00銭とし、年間配当金の合計は前事業年度の実績から5円00銭増配となる1株当たり140円00銭といたしました。
内部留保資金につきましては、将来の設備投資、新たなサービスの開発、新規事業に向けた設備投資等に備えるものであり、これは将来の利益に貢献し、株主の皆さまへの利益還元に寄与していくものと考えております。
なお、当社は、「取締役会の決議によって、毎年9月30日における最終の株主名簿に記載または記録された株主または登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当を支払うことができる。」旨を定款に定めております。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
|
2023年11月2日 |
取締役会決議 |
146,602 |
70 |
2024年6月19日 |
定時株主総会決議 |
145,833 |
70 |
(注)2023年11月2日取締役会決議及び2024年6月19日定時株主総会決議による配当金の総額には、役員報酬BIP信託が保有する当社株式に対する配当金が、それぞれ75百万円含まれております。