2026年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

また、現時点では必ずしもリスクとして認識されない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。

当社は、リスクマネジメント活動を一元的に推進する体制を整えています。また、グループ全体の持続的な成長を実現するため、当社のみならず子会社などを含むグループ全体でのリスクマネジメントの推進に取り組んでいます。当社は、会社の危機を未然に防ぐためには、その予兆を把握し、事態が悪化する前に対策を講じることが重要という認識のもと、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを構築しています。また、リスクの発見時には迅速かつ適切な対応がとれる危機管理体制を整備しています。当社は、これらのリスクによる問題発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適時適切な対応に努める所存であります。

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、潜在的リスクや不確定要因はこれらに限られるものではありませんのでご留意ください。

 

(1)他の事業者や他の技術との競争、市場や事業環境の急激な変化

現代社会において、通信はあらゆるものに溶け込んでおり、通信の社会的役割がより一層重要になる中、AI技術の進化により、生活や産業など社会全般において、新たな価値創造の時代が到来しつつあります。また、日本国内では、生産性向上や脱炭素化など、サステナブルな社会の実現に向け、産業構造の変革が期待されています。

他の事業者や他の技術との競争、市場や事業環境の急激な変化により、主に以下の事項に不確実性が存在し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループの期待通りの需要が存在するかどうか

・当社グループの期待通りに契約数を維持拡大できるかどうか

・人口減少、高齢化に伴い期待通りの収入をあげられるかどうか

・新規事業への参入等により期待通りの収入をあげられるかどうか

・競争激化に伴う料金値下げによる通信料収入の低下、販売コミッションやお客さま維持コストの増大

・契約者のサービス利用頻度が下がることによる通信料収入の低下

・不測の事態が発生した場合であってもネットワーク及びコンテンツの品質等がお客さまの満足度を維持できるかどうか

・他の事業者と比較して、常により魅力のある端末やコンテンツ等の商品、サービスを提供できるかどうか

・物販事業拡大に伴う商品不具合への対応

・端末の高機能化等に伴う端末価格の上昇による販売コミッションの増加

・迷惑メール、主にスマートフォンのセキュリティ脆弱性がもたらす脅威によるお客さま満足度の低下や防止対応コストの増加

・新周波数対応による基地局建設やデータトラフィック急増に伴うネットワークコストの増加

・当社の必要に応じた周波数を獲得できるかどうか

・新たな高速データ無線技術による競争激化

・通信方式、端末、ネットワーク、ソフトウェア等における特定技術への依存による影響

・無料通話アプリ等の拡大に伴う音声通話料収入の縮小

・他の電気通信事業者との接続料金値上げの可能性

・異業種との提携、通信と電力等のその他商品とのセット販売、MNO、MVNO事業者の新規参入、他事業者の事業領域の拡大等の事業環境の変化に伴う競争の激化

・金融事業における競争において期待通りの収入を上げられるかどうか

・金融事業の市況変動及び債務者の信用状況の悪化により、不良債権の増加や担保不動産価値の減少が生じることによる貸倒引当金の追加計上

・燃料高騰等による通信設備コストの増加及びエネルギー事業における電力調達コストの増加

・日本国内における人件費や建設費、物価の高騰に伴う仕入コスト等の増加

・米国による関税率の引き上げに伴う端末価格等の高騰

 

(2)通信の秘密及び顧客情報の不適切な取り扱いや流出、及び、当社の提供する製品・サービスの不適切な利用等

近年、サイバー攻撃の手法は一層高度化・巧妙化しており、ランサムウェア攻撃やAIを用いた攻撃などの増加により、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクが高まっています。例えば、地政学的な背景を有する高度な攻撃によるサービス停止や機密情報の漏えいは、企業にとって深刻な脅威であるのみならず、我が国の安全保障にも影響を及ぼす可能性があります。また、フィッシング詐欺をはじめとする不正行為も増加しており、お客さまが利用するサービスの不正利用による被害につながっています。

こうしたリスクに対応するため、当社グループでは、「KDDIセキュリティポリシー」「データ利用における基本指針」「KDDIプライバシーポリシー」および「KDDIグループAI開発・利活用原則」を策定し、KDDIグループ全体の情報セキュリティガバナンスの強化に継続的に取り組んでいます。また、当社は、情報資産の保護・管理を適切に行うため、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会の配下に、経営層および事業・技術・コーポレート各部門の統括責任者で構成される情報セキュリティ部会を設置しています。同部会において、内部からの情報漏えい防止や外部ネットワークからの不正侵入対策など、全社的な情報セキュリティ施策を策定・推進します。

このような体制のもと、当社はリスクへの対応を継続的に実施しています。想定されるリスクの一つとして、悪意を持った第三者によるサイバー攻撃などにより、サービス停止やサービスの品質低下といった事業影響が生じる可能性があります。これらのリスクの回避および低減に向け、事業を担うシステムが守るべきセキュリティ対策の基準を規程として定めています。システム化検討段階におけるチェックに加え、開発段階では、脆弱性への対応として、ネットワークやWebサービスに問題がないかの点検を実施しています。さらに、リリース後も、定期的な監査、点検および脆弱性診断を継続することで、セキュリティレベルの維持・強化に取り組んでいます。

また、システムへの不正侵入により通信の秘密および顧客情報が漏えいする可能性があります。当社では、こうした脅威に迅速に対応できる環境を整備するとともに、情報漏えいの防止に向け、全社的な対応策の策定およびGDPRをはじめとするグローバルな法制度に対応しています。セキュリティ監視においては、不正アクセスや改ざん、標的型攻撃などの脅威に対し、24時間365日の体制で監視しています。監視機器から出力されるログをベースに監視・分析・検知を行うとともに、社内の関係部門と連携し、万が一の有事においても監視が継続できるよう、事業継続計画に基づき体制や手順の整備を行っています。これに加え、お客さまのデータおよび提供サービスを守るため、当社社員に対し、通信の秘密および顧客情報保護に関する教育を継続的に実施しています。業務委託先に対しても、情報漏えいのリスクを踏まえた定期的な監査や教育、セキュリティポリシーの遵守徹底など、情報取扱いの強化を図っています。リスクの高い顧客情報取扱業務に対しては、監査を強化しています。また、適正な顧客情報の取扱いを確保するため、社内組織の整備、第三者による評価の実施、サービス導入前のプライバシー影響評価(PIA)の導入などに取り組んでいます。

当社の提供する製品・サービスが不適切に利用された場合には、当社グループのブランドイメージや信頼性が損なわれる可能性があります。このため、当社では、「サービス仕様の監査」「監視」「啓発」の三つの施策を軸に対策に取り組んでいます。サービス仕様については監査を実施し、不備や悪用の可能性を特定しています。サービスの不正利用やフィッシングサイトの発生を監視・検知し、発生時には関係機関と連携のうえ、フィッシングサイトの閉鎖や不正を検知したアカウントの利用制限などにより被害の抑止を図っています。また、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備などに関する法律」に基づき、未成年のご契約時は原則としてフィルタリングサービスを設定するとともに、その利便性や認知度向上にも取り組んでいます。

これらの取り組みにより、お客さまに安心して通信サービスをご利用いただけるよう努めています。

 

(3)通信障害・自然災害・事故等

当社グループは音声通信、データ通信等のサービスを提供するために、国内外の通信ネットワークシステム及び通信機器等に依存しております。ネットワークシステムや通信機器の障害などによるサービスの停止が発生した場合、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜、顧客満足度の低下により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模な誤請求・誤課金、販売代理店の閉鎖や物流の停止に伴う商品・サービスの提供機会損失、SNSなどの媒体を通じた風評被害等が発生した場合も同様の影響が生じる可能性があります。

当社グループは通信障害・自然災害・事故等によるサービスの停止、中断等のリスクを可能な限り低減するため、ネットワークの信頼性向上とサービス停止の防止対策に取り組んでおります。具体的には災害時においても通信サービスを確保できるよう、防災業務実施の方針を定め、災害に備えた対策を図り、国内外の関係機関と密接な連絡調整を行っています。災害が発生した場合には、各社組織の各機能を最大限に発揮して24時間365日、通信の疎通確保と施設の早期復旧に努めております。

 

当社連結子会社であるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.(以下「KSGM」)は、ミャンマー運輸通信省傘下組織であるミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)の通信事業運営のサポートを行っておりますが、2021年2月に発生した政変によって事業活動が制限されるなどした場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、KSGMは本事業活動におけるリース債権を保有しており、2022年4月以降開始されたミャンマー中央銀行及び外国為替監督委員会による外国為替管理の規制により、USドル建てのリース債権の回収に制限を受けております。購入又は組成した信用減損金融資産27,049百万円を認識しておりますが、当該金融資産の測定にあたり用いた仮定は、前提とした状況が変化すれば、当該金融資産の償却原価の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、ミャンマー通信事業に係るリース債権の詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 31.金融商品」に記載しています。

当社グループのサービスの提供が停止する主な事由として以下のものが考えられます。

・地震及び津波、台風、洪水等の自然災害やそれに伴う有害物質の飛散等の2次災害

・感染症の世界的流行(パンデミック)

・戦争、テロ、事故その他不測の事態

・電力不足、停電

・コンピューターウィルス、サイバー攻撃、ハッキング

・オペレーションシステムのハード、ソフトの不具合

・通信機器等の製品やサービスに係る欠陥

 

(4)電気通信事業等に関する法規制、政策決定等

電気通信事業をはじめ、電気事業や金融事業等に関する法律、規制の改廃または政策決定等が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループのブランドイメージや信頼性に影響を与える社会的問題を含め、こうした法規制や政策決定等に対して当社グループは適切に対応していると考えておりますが、将来において適切な対応ができなかった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、今後の競争政策の在り方について、総務省等における様々な審議会や研究会、意見募集等を通じて、他の電気通信事業者等との公正競争を有効に機能させるための措置の必要性を訴えておりますが、この取り組みに関わらず結果として当社の競争優位性が相対的に損なわれた場合にも、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

2025年5月21日に「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」が成立しましたが、日本の電気通信事業の公平な競争環境の確保は、公正競争ルールを規定した電気通信事業法と、日本電信電話公社から資産や設備(以下、特別な資産)を継承した日本電信電話株式会社(現NTT株式会社)と東日本電信電話株式会社(現NTT東日本株式会社)および西日本電信電話株式会社(現NTT西日本株式会社)に対して公益的な責務などを課す「日本電信電話株式会社等に関する法律(以下NTT法)」を組み合わせて実現されています。

NTTの特別な資産の維持・保護、国民生活や地域を守るユニバーサルサービスの確保、利用者利便を高める公正な競争の促進及び安全保障などの確保に向けて、今後も時代に即したNTT法の必要な見直しや強化などを適切に行いながら、NTT法を維持することが必要不可欠です。

これまでのNTTによる株式会社NTTドコモの完全子会社化や今般の株式会社NTTデータグループの完全子会社化、さらに今後も組織または事業の統合・譲渡などのNTTグループ一体化が進むと、その事業運営によって公正な競争が阻害され、効率性とグループ利益を優先する結果、国民生活や地域を守る全国のユニバーサルサービスを含めた我が国の電気通信の健全な発達および国民の利便の確保が損なわれるおそれがあるため、NTTのあり方については適時適切に検証を行い、必要な措置を講じるなど、慎重な政策議論が必要と考えております。

 

さらに、近年、経済安全保障の重要性が高まる中、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)」に基づき、当社は特定社会基盤事業者に指定されております。同法に基づく特定重要設備の導入等に関する国の審査や各種規制、ならびにサプライチェーン・リスク管理等に対して適切に対応しておりますが、将来においてこれらの規制の見直しや追加等が行われた場合には、追加の対策やコストの発生等、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

その他、電気通信事業等に関する法律、規制の改廃または政策決定や当社グループの競争優位性等の観点で、電気通信事業、電気事業や金融事業等の政策決定等に限らず、不確実性が存在しています。

 

 

(5)公的規制

当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障、さまざまな政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止法、特許、消費者、租税、為替、環境、労働、金融(自己資本比率規制等)、電力等の法規制の適用を受けております。当社グループはこれらの法規制に係る情報を早期に収集し、必要な手続・対応を行っております。なお、これらの規制が強化された場合や当社グループ及び業務委託先等において規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限され、コストの増加につながる可能性があります。

 

(6)訴訟・特許

当社グループは、国内外で事業活動を行っており、その遂行に当たっては、各国の法令その他社会規範を遵守し、公正で健全な企業活動を行っております。また、保有する商品、技術またはサービスに係る知的財産権を保護するとともに、第三者の知的財産権を侵害しないよう努めています。なお、予期せぬ知的財産権を含む各種権利等の侵害を理由とする訴訟が提訴され、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)人材の確保・育成・労務管理

当社グループは、技術革新に即応すべく全社をあげて人材育成、キャリア形成の支援に注力しておりますが、期待通りの効果が出るまで一定の期間を要することがあり、将来的に人材投資コストが増加する可能性があります。また、当社グループは法令に基づき適正な労務管理、働き方改革の推進に努めております。なお、将来において適切な対応ができなかった場合には、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)減損会計

当社グループは、IFRSに準拠して資産の減損の兆候の判定や減損テスト等を行い適切な処理を行っております。将来において事業状況が悪化した場合、回収可能価額の低下により、保有するのれんを含む資産の減損損失が発生する可能性があります。

 

(9)電気通信業界の再編及び当社グループの事業再編

当社グループは、市場環境の変化に対して、事業戦略の着実な推進や必要に応じて事業再編を行っておりますが、国内外の電気通信業界の再編が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)内部統制に関するリスク

 当社の連結子会社であるビッグローブ株式会社及び同社の子会社であるジー・プラン株式会社(以下、併せて「本件子会社」といいます。)の広告代理事業に関し、本件子会社の社員により不適切な取引が行われていた疑いが確認されたことに伴い、外部の弁護士・公認会計士で構成される特別調査委員会による調査を実施した結果、実体が存在しない架空循環取引が行われていたことが認められました。当該調査結果を受け、過年度の有価証券報告書等の訂正を行うとともに、2026年6月2日に東京証券取引所へ改善報告書を提出いたしました。
 当社グループは、グループガバナンスの更なる強化に取り組んでおりますが、改善措置の一部又は全部が適切に整備・運用されず、不適切な取引や会計処理等が発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

 これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 利益配分につきましては、株主の皆さまへの還元を経営の重要事項と認識しており、財務面の健全性を維持しつつ、安定的な配当を継続することを基本とし、2026年3月期までの中期経営戦略においては、持続的な成長への投資を勘案しながら、連結配当性向40%超を維持する方針としております。

 当事業年度の配当につきましては、中間配当金として既に1株当たり40円00銭を実施いたしました。また、期末配当金につきましても、1株当たり40円00銭とし、年間配当金の合計は前事業年度の実績から7円50銭増配となる(株式分割考慮後)1株当たり80円00銭といたしました。

 また、次期以降の3ヶ年は、調整後当期利益に対する連結配当性向40%超を維持する方針といたします。

 内部留保資金につきましては、将来の設備投資、新たなサービスの開発、新規事業に向けた設備投資等に備えるものであり、これは将来の利益に貢献し、株主の皆さまへの利益還元に寄与していくものと考えております。

 なお、当社は、「取締役会の決議によって、毎年9月30日における最終の株主名簿に記載または記録された株主または登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当を支払うことができる。」旨を定款に定めております。

 

 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2025年11月6日

取締役会決議

152,343

40

2026年6月17日

定時株主総会決議

152,343

40

(注)2025年11月6日取締役会決議及び2026年6月17日定時株主総会決議による配当金の総額には、役員報酬BIP信託が保有する当社株式に対する配当金が、それぞれ60百万円ずつ含まれております。