リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの経営成績及び財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクとしては、以下のようなものがある。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものである。
(1) 需要変動による影響
当社グループの主要な事業である都市ガス・LPG・電気事業は、当地域の社会・経済動向のほか、猛暑や暖冬等の気候変動、小売全面自由化に伴う競争環境の変化、省エネルギーの進展や産業構造の変化、お客さまのエネルギー選好の変化等により、販売量が変動し、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、新規需要開発を推進するとともに、新サービス等による付加価値の提供やデジタル技術活用等により、当地域におけるトータルエネルギーシェアの拡大を進めている。
(2) 原料価格の変動による影響
都市ガスの原料であるLNG(液化天然ガス)の価格は、原油価格・為替相場等の変動の影響を受ける。原料価格の変動は、原料費調整制度によって一定の範囲内でガス販売価格に反映されることから業績への影響は緩和されるが、反映までのタイムラグにより期間収支に影響を受ける可能性がある。
また、LNG調達先との契約更改、価格交渉の動向により原料価格が変動した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
原油価格や為替相場等の変動リスクを一定程度抑制するため、商品スワップ取引を利用している。当社は、2023年3月1日に一部の選択約款を変更し、2023年4月検針分のガス料金から、原料費調整額の算定に用いる平均原料価格の上限を撤廃した。
(3) 電力調達価格の変動による影響
電力調達は発電事業者・卸電力取引市場からの調達と自社電源を組み合わせているが、調達価格が変動した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、発電事業者との相対契約の弾力性向上に取り組むとともに、調達比率の最適化を図り、調達コストの低減と収支安定化のバランスを図っている。
(4) 金利変動等による影響
当社グループの保有する株式・年金資産等は株価・金利等が変動することによって、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、市場金利の動向により調達金利が変動することによって、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。ただし、有利子負債の大部分は固定金利で調達した長期借入金や社債であり、短期の金利変動による影響は限定的である。
変動金利での調達は、一部に金利スワップ取引を利用して固定化を行っている。
(5) エネルギー政策・法令・制度等の変更による影響
2050年カーボンニュートラルに向けた動きが広がり、新たな環境規制や制度の導入等により追加的な対応や費用負担が発生した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、2021年7月、「東邦ガスグループ2050年カーボンニュートラルへの挑戦」、2022年3月、「東邦ガスグループビジョン」及び新たな中期経営計画(2022~2025年度)を策定し、カーボンニュートラルの実現に向けた対応の方向性と具体的な取組みを示した。中期経営計画期間では、重油等から都市ガスへの燃料転換、コージェネや蓄熱材等を活用したエネルギーの高度利用、カーボンニュートラルLNGの調達・販売及び太陽光、バイオマス、風力等の再生可能エネルギーの電源開発・調達の拡大を進める。また、お客さまのカーボンニュートラル実現に向けた取組みをワンストップで支援する。さらに、CО2分離回収やメタネーションの技術開発を進めるとともに、知多緑浜工場を拠点とした水素サプライチェーンの構築や水素利用技術の実用化に取り組む。
(6) 自然災害等による影響
大規模な自然災害により、製造設備や供給設備、お客さま設備に広範に被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、不測の大規模停電等が発生した場合にも、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、自家発電設備や防消火設備等の設置に加え、防災体制の整備や工業用水等の備蓄など、災害の影響を最小限に止める対策を実施するとともに、ガス導管の耐震化など製造設備や供給設備等の耐震性の向上を図っている。
(7) 原料調達支障による影響
都市ガスの主な原料であるLNGは海外から輸入しているため、輸入先のカントリーリスクや天然ガス生産設備・液化設備での操業上のトラブル、LNG船の運航上でのトラブル等により、原料が長期にわたり調達できない場合には、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
LNGの低廉かつ安定的な調達に向け、当社グループは、LNG調達地域の分散化により安定的な調達体制構築や受入基地の柔軟な運用に取り組んでいる。また、上流権益・中流事業や、LNG船への出資等により、調達するLNGのバリューチェーンへの関与を強化している。
(8) 製造、供給支障による影響
事故等による大規模な設備トラブルに伴い都市ガスの製造、供給に重大な支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、工場やガス導管等の高経年設備の修繕、他工事による損傷防止、ガス導管の定期的な点検を実施するとともに、緊急保安体制を整備することで、一層のリスク低減に努めている。
(9) 情報システム支障による影響
システム障害やサイバー攻撃等により基幹となる情報システムに重大な支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、システムの維持管理を徹底するとともに、各種のセキュリティ対策を実施し、サイバー攻撃対策訓練の実施やセキュリティ規程類に基づくチェックを継続的に行っている。
(10) ガス消費機器・設備トラブルによる影響
ガスの消費機器・設備に関する重大なトラブルが生じた場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、ガス消費機器の調査、安全点検、メンテナンス業務等の品質向上とともに、安全使用のための周知や安全機器への取替促進を行っている。
(11) 取扱商品・サービス等の品質による影響
当社グループ及び委託先が取り扱う商品・サービス等に関する品質にトラブルが発生した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、社内外の研修等を通じて、当社グループ及び委託先が取り扱う商品・サービス等の品質向上に取り組んでいる。
(12) 商品・資機材等の納入遅延による影響
調達先の工場操業停止等により商品・資機材等に重大な納入遅延が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、調達先と連携し生産及び納期状況を確認するとともに、調達多様化に向けた代替調達先の調査・検討を実施している。
(13) 投資環境の変化による影響
原油価格等の市況の変化や景気動向等によっては、国内外投資について、将来の収益性の低下等により、適切に回収されず、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、海外投資については、事業を行う各国における法規制や商慣習等の変化により、事業運営の遅延や停滞、費用の増加などが発生する可能性がある。
当社グループは、案件ごとに収益性やリスク等の事業性を慎重に吟味の上、必要な投資を行っている。また、市況の変化や景気動向等を注視し、減損の兆候がある場合、減損損失の認識・測定の要否に関する判定を行っている。
(14) コンプライアンス違反による影響
法令、約款、若しくは企業倫理や社会的規範に反する行為が発生した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、コンプライアンス委員会を設置して、コンプライアンス活動の進捗確認と課題把握を行うとともに、教育・啓発や点検・調査活動を推進し、コンプライアンスの徹底を図っている。また、コンプライアンスに関する相談窓口を社内外に設置している。
なお、当社は、2024年3月4日、電力・ガスの営業行為において、公正取引委員会から独占禁止法に基づく警告等を受けた。同様の事例を二度と発生させないよう、法令遵守及び再発防止を徹底する。
(15) 情報漏洩による影響
当社グループが取得、管理しているお客さまの個人情報が外部に流出した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、個人情報保護委員会を設置して、個人情報保護に関する活動計画等の審議を行うとともに、教育・啓発や自主監査の活動を推進し、情報管理の徹底に取り組んでいる。
(16) 感染症の流行による影響
新型コロナウイルス等の感染症の拡大に伴い、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。当社グループは、感染防止策を徹底することで、ガス事業者としての使命である安定供給、保安の確保等に取り組んでいる。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、経営基盤の強化と安定配当を利益配分に関する基本方針としている。
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当は株主総会、中間配当は取締役会である。
当社は、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めている。
当期の期末配当金については、業績等を総合的に勘案し、前期末に比べ10円増額し1株につき40円(中間配当金30円を加え通期で70円)とした。この結果、配当性向31.0%、純資産配当率2.1%となった。
当社は、営業キャッシュ・フローの創出力を維持しつつ、持続的な成長に向けた投資を加速し、投資拡大局面においても効率性や健全性のバランスをとって全体を管理していく。また、株主還元については、安定配当を基本とし、機動的な自己株取得・消却を合わせ、中長期的に連結当期純利益の4~5割を目安として実施する方針であり、加えて、自己資本の最適化に向け、当面の期間、追加の株主還元を実施する。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりである。