2025年2月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況及び事業運営に特に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

当社グループでは、「リスクマネジメント基本規程」に基づき、代表取締役社長を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置し、グループ全体にわたるリスクの洗い出しと評価、連絡・報告体制の整備、対応策の検討等を実施し、これら主要なリスクの発生の回避及び発生時の迅速かつ適切な対応に向け、全社的なリスクマネジメント体制を構築しております。

なお、文中における将来に関する事項は当社グループが有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)当社グループの主な事業において発生可能性がある主要なリスク

    映画、アニメ、演劇各事業の不確実性によるリスク

当社グループの以下の事業において、作品によっては収入が見込みを大きく下回るリスク、作品の製作遅延や公開延期、公演中止等により、作品からの収入が見込めないなどのリスクが存在します。

・映画事業 :公開作品によっては興行収入が想定を下回るリスク。また、出演者・スタッフ等のトラブルや撮影時の事故などによる公開予定作品の製作遅延や公開延期、公開中止等のリスク。

・アニメ事業:出資作品によっては興行収入や配信等の各種利用料が想定を下回るリスク。また、声優・スタッフ等のトラブル等により製作遅延や公開延期、放映・配信の中止等のリスク。さらには、作品内容や表現等によって海外での利用に支障が発生し、十分な収入が得られないリスク。

・演劇事業 :新作などの公演によっては十分な観客動員が果たせないリスク。また、制作スケジュールの遅延や俳優の健康上の理由・トラブル等により公演が延期や中止となるリスク。

これらのリスクが顕在化する可能性は、映画事業、アニメ事業、演劇事業が不確実性を本質的な事業特性とする限り、一定程度、常に存在すると言えます。

これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、製作投資の回収可能性の低下による棚卸資産の評価減等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があり、さらには当社が提供するコンテンツに対する信頼を損なうという大きなリスクを伴います。

これらのリスクへの対応策は、常に幅広く良質なコンテンツの獲得を行うことや、年間を通じてバランスの取れたラインナップ編成によって興行のボラティリティを軽減することに加え、コンテンツの制作段階におけるトラブルの発生やスケジュールの遅延などのリスクを防止するため、各作品のリスク管理を徹底しています。また、万が一の場合には、速やかな代替策や対応策の実施を検討してまいります。

 

    コンテンツの制作現場に係るリスク

当社グループの映画事業、アニメ事業、演劇事業の各事業において当社グループが制作する各種コンテンツの制作現場では、コンプライアンス違反、ハラスメント事案の発生、各取引業者との取引トラブル等の発生のリスクが存在します。

これらのリスクは、コンテンツ制作という業務の性格上、クリエイターや俳優、技術スタッフなど多様な関係者、取引先が関わっていることから、当社と直接雇用関係にない外部の事業者、芸能関係者、フリーランス等によって引き起こされる可能性もあり、常に一定程度のリスクは存在すると言えます。

これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの信用を毀損するだけでなく、当該コンテンツの上映、放映、上演などの各種利用が行えないといった事態が生じる可能性があります。その場合は営業収入や営業利益が減少し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、当社が主導的に製作する実写映画の制作現場においては、一般社団法人映画制作適正化機関の審査基準を遵守することにより、適正な制作現場の実現を担保するよう努めています。また、アニメ制作や演劇制作においても、それぞれのコンテンツ制作の特性を勘案しながら、ハラスメントに対する啓発をはじめとして人権尊重意識の徹底を図るとともに、制作現場の適正な就業環境や取引環境の実現に向けた取り組みを今後も継続して進めてまいります。

 

    知的財産権の侵害や不正転売に係るリスク

当社グループの以下の事業において、「ゴジラ」など当社が保有するIPや当社が出資した各種コンテンツの知的財産権が侵害されるリスクや、演劇公演の鑑賞券等の不正転売によるリスクが存在します。

・映画事業  : 映画、映像作品の違法動画配信や海賊版パッケージ商品の流通、またキャラクターグッズ等での無許諾商品、模倣品等による当社の知的財産権が侵害されるリスク。

・アニメ事業 : アニメ作品の違法動画配信や海賊版パッケージ商品の流通、またキャラクターグッズ等での無許諾商品、模倣品等による当社知的財産権が侵害されるリスク。

・演劇事業   : 演劇公演の鑑賞券の不正転売リスク、演劇公演の盗撮や違法配信などによる当社知的財産権が侵害されるリスク。

これらのリスクが顕在化する可能性は、さまざまな対策を講じても一定程度発生することが見込まれ、根絶することはなかなか困難と考えられます。

これらのリスクが顕在化した場合は、コンテンツの利用に関する逸失利益が発生します。特に海外やインターネット上での知的財産権の侵害は、侵害行為の停止措置が困難な場合もあり、被害が拡大する可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、著作権、商標権等の保護に関する各種対策を強化するとともに、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)等の業界団体とも連携し、仮にリスクが顕在化した場合は、法的措置を前提に毅然とした対応をとることを徹底しております。また、鑑賞券等の不正転売に関しては、電子チケットの導入を推進していくとともに、行政機関及び各種関係団体とも連携して可能な限りの対策を講じてまいります。

 

    不動産事業に係るリスク

当社では全国各地に約130物件の不動産を保有しており、オフィス、飲食・物販店舗、ホテル事業などのさまざまなテナントに対する賃貸借契約によって収入を計上し、安定的なキャッシュ・フローを創出しております。直近ではオフィス需要の回復や物販・飲食テナントの好調な売り上げ、インバウンド需要によるホテル稼働率の上昇により、既存所有物件での収益は安定しているものの、エネルギー価格の上昇や資材価格の高騰と人手不足等による建築・設備工事費の高騰など、不動産事業を巡る事業環境は大きく変化しつつあります。

それらの影響により、当社グループの既存保有物件においては、修繕費を含めたランニングコスト負担増による収益の悪化、また、新規取得物件や再開発物件においては、物件価格の上昇や工事費の高騰による投資回収期間の長期化、開発計画の見直し・中断といったリスクが存在します。

これらのリスクに対し、既存保有物件においては、コスト削減に努めながら賃料改定の営業努力を継続してまいります。新規物件取得や保有物件の再開発においては、さまざまな想定に基づき、投資回収計画をより慎重に策定することによってリスクの低減を図ります。

 

    道路事業に係わるリスク

当社グループの不動産事業において、スバル興業㈱と同社の連結子会社が道路事業に係わっており、これら事業においては、公共工事への高い依存に伴うリスク、人員不足のリスク、労務費及び資機材価格の高騰リスク、自然災害のリスク、建設業法等の規制に関するリスク等、道路事業特有のリスクが存在します。

これらのリスクが顕在化する可能性は、それぞれ一定程度存在します。また、これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や営業利益が減少する可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、スバル興業㈱を中心に安全管理・品質管理の徹底、優れた技術者の採用・育成・配置など継続的な人員確保への取組みなど、影響を最小限にするための具体的な施策を実施しております。

 

 (2)  当社グループの企業運営全般において発生可能性がある主要なリスク

    情報セキュリティに係るリスク

当社グループでは、チケット販売やECサイトでの商品販売等によって取得したお客様の個人情報や、役員・従業員・取引先に関する情報、映像素材のデジタルデータ、その他業務上の重要な情報等を各種の情報システムにおいて管理しておりますが、悪意のある第三者いわゆるハッカー集団からの不正アクセス、マルウェアなどのコンピュータウィルス侵入により、当社グループが保有する個人情報・機密情報が漏洩するリスク、社内基幹インフラシステムの停止などのリスクが一定程度存在します。そのようなリスクが発生した場合には、最悪の場合、財務データを含む電子データが暗号化される等により、事業活動の継続を大きく阻害することも想定されます。

これらのリスクが顕在化する可能性は近年ますます高まっており、ひとたびこれらリスクが発生し顕在化した場合は、業務のほとんどがデジタル化、オンライン化によって成り立っている現在では、事業の長期間の停止など営業収入や営業利益の大幅な減少といった重大な結果を招く可能性があります。

これらのリスクへの対応策としては、「情報セキュリティ基本方針」及び「情報セキュリティ対策規程」に則り「情報セキュリティ委員会」を設置して当社グループの情報システムに関する運用ルールを整備することにより、当社グループ全体の情報セキュリティマネジメント体制を構築しております。また、可能な限り最新の知見や技術に基づくハード的なセキュリティ対策を講じるとともに、さまざまなユーザー教育・訓練を実施しております。さらに、万が一重大な情報セキュリティインシデントが発生した場合を想定して、CSIRT体制の構築に向けた取り組みを進めております。また、サイバーリスク保険への加入により経済的損害の発生に備えています。

 

    人権問題に係るリスク

近年、芸能業界やメディア・エンタテインメント業界において、性的暴力・ハラスメントなどの人権に関わる重大事案・不祥事が相次いで発覚・報道されており、当該企業がそれらに対するリスク認識や初動対応を誤るといったことも重なって、レピュテーションも含め企業価値の多大な毀損につながるという事例が見られています。

当社グループとしても、映画・アニメ・演劇等のエンタテインメントを主業としている以上、これらの問題が顕在化した企業と同様、役員、従業員その他関係者において、人権に関する問題事案が発生するリスクが全くないとは言えません。

これら人権に係るリスクが顕在化し、当該事案に対する企業として取るべき対応を誤り、大きな社会的批判を浴びるような事態に陥った場合には、当社の社会的信用が大きく毀損するだけでなく、各方面から営業取引の停止に至る可能性があり、さまざまな事業で深刻な影響が懸念されます。それにより営業収入、営業利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

これらのリスクへの対応策としては、当社グループでは2023年3月に人権方針を制定し、お客様、役員・従業員、ビジネスパートナー、株主を含むすべての人々の人権を尊重することを宣言しております。また、人権方針に基づき、グループ内において人権デューデリジェンスや人権教育を実施するなど、人権尊重に対する取組みに力を入れております。今後はさらに取引先・サプライチェーンに範囲を拡大して人権デューデリジェンスに取り組む予定にしており、人権尊重に関しては特に注力して実効性のある体制の強化を継続して図ってまいります。

 

    自然災害や事故、火災等の発生によるリスク

当社グループの以下の事業において、不特定多数のお客様が来場される事業場における自然災害(大規模な地震・風水害など)や事故、火災等の発生により事業活動の継続に支障をきたすリスクが存在します。

・映画事業 :全国各地に運営する映画館での自然災害や事故、火災等の発生リスク。

・演劇事業 :直営劇場であるシアタークリエや当社主催公演での自然災害や事故、火災等の発生リスク。

・不動産事業:全国各地の各所有物件に係る自然災害や事故、火災等の発生リスク。

これらのリスクが顕在化する可能性について、自然災害に関しては近年の気候変動による風水害の激甚化、全国各地で頻発する地震の発生等の傾向から見て、顕在化する可能性が高まりつつあると考えられます。

また、事故、火災の発生に関しては、長年にわたり各種予防策を徹底してきたことにより、昭和33年の東京宝塚劇場での死者3名を出した火災以降、当社グループの事業場において重大事故の発生に至った事例はありません。

一方、日本の広範囲で甚大な被害が予測されている南海トラフ地震については、政府の地震調査委員会により今後30年での発生確率が80%程度に引き上げられたというように、大規模自然災害のリスクは高まっている状況と考えられます。

これらリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、固定資産の滅失・毀損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えるとともに、これらリスクの発生した場合の企業としての事後の対応によっては、企業価値の毀損につながる可能性があります。

これらのリスクへの対応策としては、日頃からの防火・防災の対策を継続的に実施するとともに、大規模自然災害への対応策として、当社グループでは「災害時基本規程」を制定し、災害発生時の行動原則や災害対策本部の設置、連絡報告体制について定めております。また、グループ各社において「災害対策計画書」や「地震対応マニュアル」の整備を進めるなど、グループ全体での防災力の向上に取り組んでおります。

 

    海外展開に係るリスク

当社グループでは、映画、アニメ事業において、コンテンツの海外展開(海外への映画配給、配信プラットフォームへの利用許諾、商品化権の許諾等)を積極的に行っているほか、演劇事業においても、海外において自社製作作品のロングラン公演を実施しております。また、2023年には米国及びタイの企業に対して戦略的出資を行い、2024年には北米を中心にアニメーションの配給を手掛ける米国のGKIDS, INC.を100%子会社化したほか、シンガポールにおいて当社の子会社(孫会社)Toho Entertainment Asia Pte. Ltd.がアジア地区の拠点として稼働を開始するなど、積極的に海外展開への取り組みを行っております。

これらの海外展開においては、紛争や政情不安、不確実性を増した世界経済の状況といった地政学上のリスクにとどまらず、各種コンテンツの表現に対する文化や慣習の違いに起因するリスク、知的財産権に関するリスク、SNS等における炎上リスク、各種法的規制の変更に関するリスク、為替リスクなど多岐にわたるリスクが存在します。

また、海外を拠点とする子会社等においては、グループ・ガバナンスが十分に行き届かないことによるコンプライアンスリスク等が存在すると考えられます。さらに、戦略的出資をしている海外の会社については、当該会社の経営成績が投資時点で想定されていた事業計画を大きく下回って推移する際には、株式の評価損リスクが生じます。

これらのリスクが顕在化する可能性は、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に基づき、当社グループが成長戦略の一環として、今後も海外展開を積極的に拡大する中で増加していくものと考えられます。

これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入や各段階の利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。また、訴訟コスト等が臨時に発生する可能性があります。

これらのリスクへの対応策として、2025年2月に海外事業を統括する当社100%子会社のTOHO Global株式会社を経営統括会社として機関決定し、同社を中心にグループとしての内部統制体制の構築を図っております。今後も海外での事業展開においては、各地域におけるリスク情報の収集に努めるとともに、海外子会社のグループ・ガバナンスの実効性を高めてまいります。また、グループ内での知見の共有や経験豊富な専門家にアドバイスを得るなど、可能な限りリスクの低減に努めてまいります。

 

    物価、人件費等の高騰による収益構造悪化のリスク

当社グループの以下の事業において、エネルギー費・原材料費などを含む物価や人件費の高騰といった要因がもたらす収益構造悪化のリスクが存在します。

・映画事業  : 物価・人件費の高騰による全国各地で運営する映画館のランニングコスト増、及び新規出店に伴う出店費といったコスト増に伴う収益構造悪化のリスク。

・演劇事業   : 直営劇場に係るランニングコスト増、資材費や人件費のコスト増による公演製作費の増による収益構造悪化のリスク。

・不動産事業 : 全国各地に保有する不動産物件に係るエネルギーコストや修繕費の高騰による収益構造悪化のリスク。

これらのリスクは、地政学上のリスクも含めた世界経済、国内における政府の経済政策、社会環境の変化が発生要因であるためにコントロールが難しく、常にリスクとして存在します。

これらのリスクが顕在化した場合は、営業収入、営業利益が減少するとともに、設備投資の回収可能性の低下による固定資産の減損等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

これらのリスクに対しては、可能な限り適切な方法で価格転嫁して収入の増加に努めるとともに、一層の運営効率化とコスト節減に努めリスクの低減を図ります。

 

    電子商取引(ECサイト)に係るリスク

当社グループでは、映画館や演劇においてインターネット上でチケットを販売しているほか、複数のECサイトでキャラクターグッズ等の商品を販売しております。これらの事業においては、第三者からの悪意ある攻撃によらずとも、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等の障害または人為的なミスにより、システムの運用が停止する事態が発生し、一定期間、チケットや商品の販売ができなくなるリスクが存在します。

これらのリスクが顕在化した場合は、逸失利益が発生するとともに、復旧までに相当の時間を要した場合は、お客様からの当社グループ事業に対する信用の失墜につながる可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、過去に発生した障害の分析に基づき、的確な対応策の実施により再発防止に努めるとともに、各ベンダー等との連携を強化し、障害発生時の迅速な復旧対応の体制整備を推進してまいります。

 

   投資有価証券等に係るリスク

当社グループは、重要な取引先との関係を強固にするため、上場株式および非上場株式を複数保有しておりますが、大幅な株式相場の下落や当該企業における企業価値の毀損が生じた場合には、保有有価証券を減損処理する可能性があります。

これらのリスクへの対応策は、有価証券の投資基準・保有意義を明確にするとともに、取締役会への報告を含む定期的なモニタリングを実施することで、リスクの軽減に努めています。

 

   パンデミック発生に係るリスク

新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的なパンデミック発生から5年を経て、社会活動はほぼ完全に正常化したように思われますが、グローバル化が浸透した現代においては、新たな感染症による世界的なパンデミックの発生と、それに伴う世界的な経済活動の混乱や停滞といったことは、今後も発生可能性のあるリスクとして否定できません。

当社グループにおいても、コロナ禍では映画館・演劇劇場の休業要請への対応や、演劇事業においては出演者の感染リスクへの対応、従業員の就業制限など、さまざまなリスクに対応いたしましたが、今後も新たな感染症によるパンデミックが発生した場合には、前回のコロナ禍と同様、大きな経済的損失が見込まれ、営業収入、営業利益が減少するとともに、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

これらのリスクの対応策として、従業員の在宅勤務制度やリモートワーク環境の整備は、ほぼ十分に整備されております。また、ワクチン接種などの従業員の健康管理体制や、新たなパンデミック発生時の緊急対応のあり方については、コロナ禍における経験を踏まえて引き続き課題として検討しております。

 

   気候変動に係るリスク

気候変動に伴う温室効果ガスの排出抑制の取り組みは企業活動と切り離せないものであり、映画、アニメ、演劇等のエンタテインメントを主業とする当社グループにおいても、企業の社会的責任として脱炭素や循環型社会に向けた取り組みを推進して行かなければ、信用の毀損に伴う収益の減少や株式市場における企業価値向上に支障が生じる可能性があります。

これらのリスクへの対応策として、当社グループはサステナビリティの重要課題の一つとして「地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します」を掲げ、脱炭素の実現に向けTCFDに基づく情報開示やCDP評価を受けるなど第三者からの評価や視点も取り入れながら取り組んでおります。なお、CO2排出量の削減目標としては2017年度比で2030年度までに50%削減、2050年度までに実質排出量ゼロを目指しております。

2024年には、主要な事業所である東宝スタジオにおいて日本初の取組みとして水素を燃料として発電された電力の商用利用を開始しており、今後も再生可能エネルギーの活用も含めてCO2排出量削減、事業活動における環境負荷の少ない素材の活用や廃棄物の削減等を推進してまいります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様に対する利益還元の充実を経営の重要課題の一つとして位置付けております。

剰余金の配当については、成長投資に向けた財務体質の強化を図りつつ、2022年4月に公表いたしました「中期経営計画 2025」において、株主還元の数値目標として、「年間40円の配当をベースに配当性向30%以上」かつ機動的な自己株式の取得を基本方針としております。

当期末の配当金については、上記基本方針と当期の業績等を総合的に勘案し、直近の配当予想から15円増配し、1株当たり50円とし、中間配当金1株当たり35円と合わせ年間85円といたしました。

また、当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を取締役会決議において行うことができる旨を定款に定めており、中間配当と期末配当の年2回の配当を行うことを基本方針としております。これらの配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

なお、当社は連結配当規制適用会社であります。

 

 当期を基準日とする剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2024年9月24日

取締役会決議

5,982

35.00

2025年5月29日

定時株主総会決議

8,477

50.00

 

 

なお、2025年4月に「中期経営計画 2028」で公表いたしましたとおり、従来の基本方針であった「年間40円の配当をベースに配当性向30%以上」から「年間85円の配当を下限に配当性向35%以上」かつ、機動的な自己株式の取得を新たな基本方針としております。