2025年4月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループは、使命及び社会的責任を自覚し、自然災害の発生や法令・規則等違反・不祥事の発生等の緊急事態に際し、ステークホルダー(顧客・従業員・株主・地域社会等)に及ぼす影響や被害を最小化するとともに、適時的確な情報発信を通じて安心と信頼の回復に努めることを基本としております。

 当社グループのコンプライアンス推進体制及びリスク管理体制の詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項」に記載のとおりであります。

(1)リスクマネジメント推進体制

 当社グループ全体を俯瞰した一元的なリスク管理の実現と事業環境の変化により生じる新たなリスク事象の見落としを防止し、網羅的なリスク管理の実現を目的としてリスクマネジメント委員会を設置しており、6か月に1回をめどとして定期的に開催し、適宜弁護士をはじめとする企業を取り巻くリスクに関する外部専門家より助言を得ながら、全社的なリスクマネジメントの策定及び実施を管理するとともに、主にリスク項目・評価の見直しや各リスク担当部署における進捗管理を行うものとしております。現在のリスクマネジメント委員会は、委員長を代表取締役社長とし、副委員長を取締役(サステナビリティ推進本部長)、委員を各リスク担当部署の責任者として構成し、事務局はリスクマネジメント室長、サステナビリティ推進室長としております。また、リスクマネジメント委員会において検討・議論された内容については、取締役会に報告し、取締役会が取り組み状況の監督を行っております。
 リスクマネジメント推進体制図は以下の通りであります。

 

(2)リスクマネジメントのPDCA

 当社グループでは、年度ごとに社会情勢や環境変化を分析の上、新たに生じる恐れのあるリスクを検討したうえで、「影響度」「発生頻度」の二軸で評価をし、重大なリスクを特定しております。特定された重大なリスクについては、各リスク担当部署がリスクの予防・対応のための計画を策定し、リスクマネジメント委員会がその実行状況をモニタリングしております。また、取締役会に報告し、取締役会が取り組み状況の監督を行っております。

 

(3)重大なリスクの内容と対応策

各種規制及び法制度等の変更に関するリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<ファーマシー事業>

①ファーマシー事業の収入は、処方箋に基づき医療用医薬品を調合投与する調剤行為であり、その薬剤の価格(薬価)及び報酬額は、厚生労働省により定められております。また、国民医療費の抑制策として、診療報酬及び薬価の改定が段階的に実施される傾向にあります。今後においても、診療報酬制度等の改定により収益構造が変化することで、当社グループの財政状況及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

②一般用医薬品の販売については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「医薬品医療機器等法」といいます。)によってリスク区分に応じて要指導医薬品及び第1類医薬品は薬剤師のみが、第2類医薬品及び第3類医薬品は薬剤師または登録販売者が販売しなければならないと規制されております。今後においても、医薬品販売に係る規制緩和の動向により、異業種の同事業への参入等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③ファーマシー事業の社会保険診療に関する調剤売上は、消費税法上非課税となりますが、一方で、医薬品等の仕入には消費税が課税されております。この結果、当社グループが負担することとなる消費税は、調剤売上原価に計上しております。過去の消費税の導入・改定及び調剤報酬改定時には、消費税率の上昇分が薬価の改定において考慮されておりましたが、今後、消費税率が改定され、その影響が薬価に反映されない場合は当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対応策

・関連する規制や法制度の変化を見据えた事業戦略の策定

・全国薬局長会議における事業戦略の周知

・外部環境のモニタリング

・規制緩和時に想定される異業種を含む競合他社の分析

 

 

コンプライアンスに関わるリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<全社>

当社グループは、ファーマシー事業及びリテール事業を主として展開しており、いずれも人々の健康及び生活を担う性質上コンプライアンスを最重視した健全かつ透明な事業活動を継続することが、不可欠と認識していることから、コンプライアンス委員会を中心としたコンプライアンスの徹底に注力しております。しかしながら、贈収賄等の腐敗行為や、不正競争、虚偽報告、人権侵害をはじめとするコンプライアンス違反が発生した場合やその対応が不十分であった場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼし、かつ社会的信用を失墜させる可能性があります。

<ファーマシー事業及びリテール事業>

ファーマシー事業は、医薬品医療機器等法、健康保険法、薬剤師法をはじめとした各種許認可、免許、登録、届出等により、厚生労働省及び都道府県保健福祉部の監督の下、調剤薬局を営業しております。また、リテール事業においても、同様に医薬品医療機器等法に基づく医薬品の販売を行っております。

万一、当社グループのファーマシー事業及びリテール事業において、健康保険法等で規定されている報酬請求における不正行為や、医薬品医療機器等法第75条第1項、健康保険法第80条各号及び麻薬及び向精神薬取締法第51条第1項等に規定される法令違反等に該当する行為があり、監督官庁から業務停止命令及び取消し等を受けた場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対応策

<全社>

・健全な企業風土を堅持するための経営陣・管理職による情報発信

・社外役員の視点を組み込んだPDCAサイクルの確立

・社内規程・マニュアル・FAQ等の充実

・役職員に対する周知・研修の充実

・リスク管理の実効化

・内部通報制度の適切な運用

・内部監査機能の強化

<ファーマシー事業及びリテール事業>

・調剤報酬改定時における社内説明会の実施

・業務マニュアルの整備

・管理薬剤師を対象とした研修

・業務知識確認テストの実施

 

業務品質・オペレーションに関わるリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<ファーマシー事業>

ファーマシー事業では、人体に影響を及ぼす医療用医薬品を薬剤師が扱っており、調剤過誤による医療事故を引き起こす可能性を内包しております。当社グループは、医療事故が会社の社会的信用を著しく失墜させる可能性があるものと認識し、あらゆる側面から、当該リスクの回避に向けた取り組みを最重要課題と位置づけております。

リスク対応策

・新卒採用薬剤師及び中途採用薬剤師を対象とした入社時研修制度

・勤務薬剤師のスキルアップを目的とした継続的な研修制度

・管理者育成のため、全薬局長が出席する薬局長会議の実施

・調剤機器メーカーとの共同開発による調剤過誤防止システムの配備、調剤業務のオートメーション化等のICT技術を応用した調剤機器の開発及び導入

・調剤業務に関する自社マニュアルの利用及び内部監査機能の強化

・調剤過誤防止対策を専門に扱う安全対策部の設置

 

 

他社との競合に関するリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<ファーマシー事業>

ファーマシー事業は、今後も調剤薬局を主軸とした多店舗展開を継続する方針であります。したがって、M&Aを含む調剤薬局の出店政策の成否や同業他社の出店動向により、当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。

リスク対応策

・M&Aを含む多角的な出店アプローチの検討

・競合他社の動向把握

・競争優位性の継続的な検証

 

 

人材不足及びエンゲージメント低下に関するリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<全社>

当社グループは、ファーマシー事業及びリテール事業の優位性を確保し継続的に成長し続けていくためには、多様な人材の確保や育成が不可欠と認識しております。人材の確保や育成・評価の不備、また、エンゲージメントの低下により、人材の流出等により人材の不足が発生し、優位性が低下した場合には、当社グループの出店計画及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

<ファーマシー事業及びリテール事業>

①調剤薬局及び第1類医薬品取扱店舗は、医薬品医療機器等法の規定により薬剤師の配置が義務付けられており、また、薬剤師法では、調剤業務は薬剤師が行わなければならないと規定されております。当社グループは、積極的な出店による拡大政策を継続しておりますが、薬剤師確保が困難な状況になった場合は、出店計画及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②一般用医薬品取扱店舗は、医薬品医療機器等法の規定により店舗管理者として登録販売者(又は薬剤師)の配置が義務付けられており、第2類医薬品及び第3類医薬品の販売は登録販売者(又は薬剤師)が行わなければならないと規定されております。当社グループは、積極的な出店による拡大政策を継続しておりますが、登録販売者確保が困難な状況になった場合は、出店計画及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対応策

・「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」に記載のとおり

 

情報セキュリティに関するリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<全社>

テレワーク等働き方の多様化や、クラウドやモバイル利用機会の増加により、サイバー攻撃のリスクは近年一層高まっており、その手口も巧妙化しております。お客さま・患者さまからお預かりした情報をはじめ、当社グループが保有する情報資産をあらゆる脅威から保護し、適切な安全管理を実現するため、情報セキュリティに取り組むことは極めて重要な責務であると認識しており、社内の情報セキュリティ体制の確立と遵守を図り、社会から信頼される企業として発展していくことを目的として社内の情報セキュリティ管理体制を構築しております。しかしながら、情報セキュリティ対策や従業員の危機意識が不十分だった場合、重要情報の漏えいやデータの破壊・改ざん、乗っ取り、システム・サービスの停止等が発生し、当社グループの経営成績のみならず社会的信用を失墜させる可能性があります。

リスク対応策

・ネットワークへの不正侵入防御や適切なアクセス制御等の複数階層での防御層の構築、外部からの侵入に対応できる体制の整備

・役職員に対する研修や訓練の実施

・第三者機関による脆弱性診断と対応

 

 

個人情報漏洩に関するリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<ファーマシー事業及びリテール事業>

ファーマシー事業では、処方箋及び薬剤服用歴に代表される患者情報を調剤薬局及び「公式アプリ いつでもアイン薬局」で保持し、リテール事業では、アインズ&トルペ公式アプリ及びAINZ&TULPE WEBSTORE、アユーラ 公式サイト、Francfranc公式アプリ、Francfranc ONLINEの運用に伴う顧客情報を保持しております。当社グループは個人情報保護体制並びに取扱いに対するルールを徹底することにより万全を期し、主要事業会社である株式会社アインファーマシーズは「保健医療福祉分野のプライバシーマーク」を取得しております。しかしながら、事故並びに犯罪行為による個人情報の漏洩があった場合、経営成績のみならず社会的信用を失墜させる可能性があります。

リスク対応策

・個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の基本となる要素の文書化

・グループ全社におけるPMS運用

・役職員に対する研修の実施

・主要事業者である株式会社アインファーマシーズにおける2年に1回のプライバシーマーク更新審査の受審

 

M&Aに関わるリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<全社>

①当社グループは、積極的な新規出店及びM&Aにより、事業規模の拡大を推進しております。M&A戦略においては、投資回収可能性を重視したうえで対象会社を慎重に検討し、発生するのれんの償却額を超過する収益力を安定的に確保することが可能な買収額により行うことを基本方針としておりますが、買収後、計画どおりに進まない場合には、子会社株式評価損、のれんに係る減損損失等の損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

②当社グループは、積極的な新規出店およびM&Aを通じて事業拡大を推進しており、通常の出店費用については営業キャッシュ・フローの範囲内で自己資金により賄っております。一方、大型のM&A等については、必要に応じて金融機関からの借入れにより資金を調達しております。当連結会計年度末における現金及び預金の残高は268億8千1百万円、短期及び長期借入金の残高は386億2千1百万円となっております。現在の借入金は主に固定金利で調達しており、金利変動リスクを一定程度回避しております。ただし、今後も成長戦略に基づき資金調達を継続する可能性があり、その際の市場金利の動向によっては、変動金利での調達が必要となる場合も想定されます。このような場合、当社グループの財務状況や支払利息等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対応策

①・買収時におけるデューデリジェンスの確実な実施

・適切なPMI実施、定期的・継続的なモニタリング

②・金利動向の継続的なモニタリング

・計画的な資金調達、ヘッジの活用

 

 

大規模自然災害やパンデミック等に関わるリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<ファーマシー事業及びリテール事業>

①当社グループは、調剤薬局を主軸とした多店舗展開を行っており、全国各地の営業拠点及び営業店舗で事業を展開しております。各地域において、大規模な地震や風水害、気候変動を起因とする台風・豪雨等の自然災害等が発生した場合、社員や店舗・事業所への被害等により、当社グループの財務状況及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

②国内外で重大な感染症が拡大した場合、感染の拡大防止策の徹底を最優先事項としたうえで、当社グループがはたすべき調剤業務の継続等の社会的責任を全うすべく、事業継続計画(BCP)に沿って感染拡大防止策も含めて対応しております。しかしながら、感染拡大防止のための外出自粛が求められるような感染症が拡大した場合、ファーマシー事業では、外来受診抑制等による処方日数の長期化を要因として、処方箋単価は増加する一方で、処方箋枚数は減少することが考えられます。また、リテール事業では、外出自粛、店舗の臨時休業及び営業時間短縮の実施、インバウンド需要の減少等による来店客数減少の影響が考えられ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③インフルエンザや花粉症(アレルギー性鼻炎)等季節性疾患の流行により、処方箋応需枚数は季節によって変動する可能性があります。

リスク対応策

・BCPの定期的な整備、更新及び役職員への周知

・安否確認訓練の実施

・避難訓練、本部及び現地対策本部訓練の実施

・感染症等の流行トレンドの把握

 

気候変動に関するリスクについて

リスクの内容と

シナリオ

<全社>

地球を取り巻く環境問題は、地球温暖化や海洋汚染、生物多様性等様々ですが、中でも気候変動課題は年々深刻化しており、当社グループにおいても環境保護・負担軽減への取り組みは不可欠と認識しております。気候変動に伴い、温室効果ガスの排出に関する規制等の脱炭素経済への「移行」に起因するリスクと、気象災害の激甚化等の気候変動による「物理的」変化に起因するリスクが考えられ、それらは、将来的に、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対応策

・「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)」に記載の通り

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題として捉え、業績に応じた成果の配分を行うとともに、これを安定的に継続することを基本方針としております。

 当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としております。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき当期の利益状況と今後の事業展開等を総合的に勘案し、1株当たり80円の配当を実施することを決定し、配当性向は30.3%(連結)となりました。

 当社は、株主への機動的な利益還元を行うため、「取締役会の決議により毎年10月31日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 また、内部留保資金につきましては、成長力の維持及び拡大に加え、財務体質の強化のために活用していく方針であります。
 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年7月30日

2,826

80

定時株主総会決議