2023年8月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

(1) 方針

 当社は、大規模災害や顧客情報漏洩など予期せぬリスクを想定したうえで、顕在的・潜在的なリスクを予防し、適切に管理することが、持続的な事業の成長には不可欠だと考えており、事業活動に潜むリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を常に行っています。

 取締役会直下の組織として、リスクマネジメント委員会を設置しています。グループCFOを委員長とするリスクマネジメント委員会は、全社のリスクを一元管理する組織です。リスクマネジメント委員会では、事業への影響度・頻度などを分析・評価し、リスクが高く、体制が整っていないものから、対応策が議論され、発生前のけん制を行うことをめざしています。また、取締役会への重要リスクの報告、およびリスクの対策に関する各部門への具体的な支援を行っています。

 

(2) 個別のリスク

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、当社グループの経営成績や財務状況などに特に影響度の大きいリスクとして認識している主なものとして、以下のものが挙げられます。文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。また、以下は、全てのリスクを網羅するものではなく、本書提出日現在において予見できない又は重要と認識していないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、リスクとその影響欄にて「顕在化している」旨の記載のない項目については、リスクの顕在化には至っておらず、顕在化する時期・可能性ともに未確実です。

 

 

リスク項目

リスクとその影響

主な取組み

経営人材に関わるリスク

代表取締役会長兼社長柳井正をはじめとする当社グループ企業経営陣は、各担当業務分野において、重要な役割を果たしています。これら役員が業務執行できなくなった場合、ならびに、そのような重要な役割を担い得る人材を確保できなかった場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループの各事業では、意思決定および業務執行が特定の経営人材に依存することのないよう、チームによる経営執行体制を構築しています。

・各事業における経営者自らが後継となる経営人材の育成を行っています。

・グローバルに活躍できる経営人材を常時積極的に採用するほか、専門の教育機関を設け、採用した人材を経営者に教育・育成していくための体制を整えています。

 

 

リスク項目

リスクとその影響

主な取組み

カントリーリスク、国際情勢に関わるリスク

商品生産国・地域または事業展開国・地域における、政治・経済情勢の変動、テロ・紛争などによる治安状態の悪化や社会的混乱、法制度・租税制度の変更、地震や風水害などの大規模な自然災害や世界規模の感染症の発生などにより、当社グループの商品の生産、供給および販売体制に悪影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループでは、生産拠点を複数の国・地域に分散するほか、主たる生産拠点には生産管理事務所を置き、現地情勢の適時の取得および迅速な対応ができる体制を整えるなど、国際情勢の変化に機動的に対応できるサプライチェーンの確立を進めています。

・当社グループ各社の拠点に、経理や税務・法務などの専門家を置き、リスク発生時に迅速かつ適切な対応およびコミュニケーションができる体制を整えています。

・特定の国・地域における国家間対立・民族的感情悪化に関しては、グローバル企業として、事業を展開する各国・地域における社会的課題を解決するための貢献を行い、各国・各地域コミュニティとの永続的な共存・共栄をめざしています。

環境に関わるリスク

・温室効果ガス排出量の削減や再生可能エネルギーへの転換などの気候変動への対応、生物多様性への対応、水資源の管理、化学物質の管理、廃棄物排出量の削減、循環型ビジネスモデルへの移行などが遅れた場合や適切に行われなかった場合は、当社グループブランドに対する社会的な信用低下を招く可能性があります。

・気候変動に伴う異常気象の増加により、商品供給体制をはじめ事業全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・当社グループの「環境方針」のもと、「気候変動への対応」「エネルギー効率の向上」「生物多様性への対応」「水資源の管理」「化学物質管理」「廃棄物管理と資源効率の向上」の6つの重点領域において、実効性が高い具体的な取り組みを決めて継続的に実行しています。

・気候変動への影響を削減するため、商品の生産から廃棄までを含む、事業活動全般における温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組んでいます。具体的な取り組みは2サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動(TCFD提言への取組)②戦略をご参照ください。

・バリューチェーン全体において生物多様性への影響を回避・軽減させるとともに、生物多様性の保全・再生に取り組むため、「生物多様性保全方針」のもと、取り組みを強化していきます。

大規模災害リスク

当社グループの販売する商品の生産工場、販売店舗及び本社機能を有する本部オフィスの存在する各地域において、地震、台風、火山の噴火、火災、風水害、爆発、建物倒壊等の大規模災害が発生した場合、商品の生産、供給及び販売体制並びに経営管理体制に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクマネジメント委員会を中心として、大規模地震、その他の大規模災害発生又は発生の恐れがある場合の緊急対策本部による有事指揮体制の準備、顧客や従業員・関係者の安全確保、経営資源の被害軽減、二次災害防止、業務早期復旧のためのシステムインフラ並びに、復旧拠点の分散配置の整備、危機管理マニュアルなどの整備、当該マニュアル等の世界展開を進めるための体制の整備に努めています。

 

 

リスク項目

リスクとその影響

主な取組み

資源管理・原材料調達に関わるリスク

災害・気候変動その他の理由により、当社グループ各事業で販売する商品に使用する原材料(綿花やカシミヤ、ダウン等)の十分な調達が困難になり、また価格が高騰する可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの商品供給体制及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

複数の調達先との間で原料調達合意書を締結し、特定の原材料を特定の調達先に依存することなく、かつ適正な価格により調達する仕組みを整えています。

為替リスク

・当社グループ各事業では商品の多くを海外の生産工場から輸入しているため、各国・地域の通貨に対する決済通貨の急激な為替変動が発生した場合、各事業の業績に悪影響を与える可能性があります。

・グループ全体として、事業展開に合わせて多様な通貨で金融資産を保有しているため、当社の機能通貨である円の為替変動によって金融損益が大きく変動する可能性があります。

・為替環境の激変緩和を目的として、各国・地域事業において、想定仕入見込み額に基づく先物為替予約を実行しています。この際、ヘッジ比率や期間など、具体的なヘッジ方針については、財務の安全性に資するかという観点から、当社取締役会において討議・承認を行っています。

・金融資産の保有通貨の妥当性についても、当社取締役会で討議を行います。

情報セキュリティリスク

・顧客情報(個人情報を含みます)や営業秘密などの機密情報が流出・消失した場合、当該情報の回収や、損害賠償の支払などの対処を要し、業績への悪影響および顧客の信用低下を招く可能性があります。

・欧州の個人情報保護規則であるGDPRなど、国・地域間の個人情報の移転を制限する法的規制に違反したと当該行政から判断された場合、多額の課徴金による業績への悪影響および顧客の信用低下を招く可能性があります。

・機密情報の管理を徹底するために、グループ全体を統括するCSO(Chief Security Officer)指揮のもと、情報セキュリティ室を設置し、事業を展開する各国・各地域のIT部門および法務部門と連携しています。

・外部からの攻撃、内部不正や事故などあらゆる事態を想定し、機密情報(特に顧客の個人情報)の適切な管理体制の構築・強化を行うために、各事業部門におけるインフラ整備、業務プロセス評価、委託先評価、規程などの整備及び標準化、定期的な教育啓発活動等を行っています。

知的財産に関わるリスク

・商品管理や店舗運営、Eコマースのウェブサイトを含むあらゆる分野で使用する最新の技術や当社グループの商品に係る知的財産権などの権利につき、当該権利の保有者によりライセンスが受けられず、その結果、当該技術の使用や商品供給が困難となる可能性があります。

・当該技術や商品が他者の知的財産権を侵害していた場合には、多額の損害賠償やライセンス費用の支払請求を受ける可能性が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループの商品を第三者に模倣され、安価で販売された場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループでは知的財産を取り扱う専門部署を設け、商品開発及び技術導入時などにおける侵害調査を行っているほか、当社グループ内の従業員に対し知的財産に関する教育・啓発活動を実施し、知的財産権の侵害防止に努めています。

・新規技術を開発した際には積極的に権利化を行っています。さらに、事業展開国・地域および展開予定国・地域における市場モニタリング、現地法務部門との連携、現地法律事務所や政府機関と連携し、模倣品などによる被侵害の情報の収集を図っています。

・被侵害の事実が確認された場合、またはそのおそれがある場合には、現地法務部門や法律事務所と連携し、速やかに法的措置を含めた対処を検討します。

 

 

リスク項目

リスクとその影響

主な取組み

人権に関わるリスク

・当社グループ及びサプライチェーンにおいて、労働環境・安全衛生の悪化や人権侵害行為、特に、強制労働や児童労働、ハラスメント、差別的行為など、関係者の人権を著しく傷つける行為等が発生した場合には、当社グループに対する顧客および取引先の信用低下を招き、当社の商品供給や販売体制に悪影響を及ぼす可能性があります。

・欧米をはじめとする各国・地域において、サプライチェーンの人権保護などを目的とする規制強化または法制化が、当社グループの商品の生産・輸送・販売体制に悪影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループ、取引先を問わず、当社グループの影響を受けるすべての人の基本的人権を尊重し、心身の健康や安心・安全を確保することが最も重要な責務との考えのもと、FRグループ人権方針を定めています。

・助言・監督機能として人権委員会を設置し、人権デューデリジェンスの実施、人権研修、通報窓口の運用等を通して人権侵害行為の発生を防ぎます。

・サプライチェーンについては、サステナビリティ部を中心として、取引先工場の労働環境のモニタリング実施や、取引先工場の従業員向けホットラインの運用などを通して、適切な労働環境の維持と改善に努めています。原材料についても、国際基準に則って、生産工程で人権や労働環境が適正に守られていることが確認された原材料の調達を進めています。

・今後は、国・地域を問わず、原材料調達レベルまでトレーサビリティを確立し、サプライチェーン全体で人権や労働環境の問題がないことを自社で確認する体制の構築を進めます。あわせて、第三者認証を活用し、人権や労働環境が適正に守られていることを客観的に検証していきます。

・人権侵害に関する事象が発生した場合は、必要に応じて人権委員会にて調査・審議を行う他、被害者の心のケアを行うための体制を整えています。

取引先に起因するリスク

・商品の企画・生産・輸送・販売などに関わるあらゆる取引先に関する様々なリスクが存在します。

・取引先と当社グループの価値観や理念が共有できず、経営効率が低下する可能性や、十分な債権回収ができず、業績に悪影響を及ぼす可能性、意図せず反社会的勢力と取引を行ってしまう可能性、取引先による法令違反行為が発生する可能性があります。リスクが顕在化した場合、当社グループに対する顧客および社会の信用低下を招く可能性があります。

・このほか、例えば、輸配送業者による商品輸配送時や倉庫業者による商品保管時に、災害や人為的行為による商品の滅失・毀損・盗難、取引先や現地法令に起因した商品の引渡不能などが発生する可能性もあります。

・当社グループ各社では、不適切な取引先との間で取引関係を開始することを防止するため、新規取引先との取引開始時に必要に応じて与信・信用調査を行っています。

・すべての取引先との適切な取引関係を構築することを目的に、「ビジネスパートナー行動指針」を定め、その内容をご理解のうえ、遵守していただける取引先と取引を行っています。

・輸配送業者や倉庫業者との取引に関するリスクへの対策としては、各事業に物流担当を置いて、取引先輸配送業者や倉庫業者と常時コミュニケーションを取り、商品の輸送・保管における問題の発生時には速やかに現地経営者とグローバル物流本部に報告し、迅速に対応を検討・実施する体制を整えています。

 

 

リスク項目

リスクとその影響

主な取組み

減損リスク

事業環境の変化などにより収益性が低下した場合、有形固定資産及び使用権資産などについて減損損失を計上する可能性があります。

・減損会計を適用して、適時に減損兆候の判定を行い、不採算店舗の発生を早期に把握、適切な会計処理を行っています。

・当該店舗の収益性低下の原因把握を行い、抜本的な収益改善計画を策定・実行しています。

経営環境の変化に起因するリスク

当社グループ事業の展開各国・地域において、天候不良、消費動向の変化などの経営環境の変化が生じることにより、商品の売上の減少や過剰在庫が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

各グループ事業の展開国・地域で、お客様が必要とする商品情報を適時に収集し、即時に商品化した上で、必要十分な数量を生産販売できる体制を整え、経営環境の変化に極力機動的に対応していきます。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主の皆様への利益還元を経営の最重要課題のひとつと考え、恒常的な業績向上と、業績に応じた適正な利益配分を継続的に実施することを基本方針としております。配当は、グループ事業の拡大や収益向上のための資金 需要、ならびに財務の健全性を考慮した上で、業績に応じた高配当を実施する方針です。剰余金の配当は、中間配当と期末配当の2回行うことを基本方針としております。これらの配当は、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議に基づき行います。

 当期の期末配当金は、1株当たり165円の配当を実施、中間配当金1株当たり125円(下記に示す株式分割考慮前は1株あたり375円)を含め、年間配当金は290円となりました。なお、2023年3月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を実施しています。当該株式分割を考慮すると、前期比83.3円の増配となりました。内部留保資金ならびにフリー・キャッシュ・フローにつきましては、グループ企業の事業基盤強化のための投融資に有効活用し、継続的かつ安定的な成長に努めてまいります。

 当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めております。

 なお、当期の剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たりの配当額(円)

2023年4月13日

38,330

375

取締役会決議

2023年11月6日

50,600

165

取締役会決議

(注) 当社は、2023年3月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っていますが、2023年4月13日を取締役会決議日とする配当は、2023年2月28日を基準日として実施したため、当該株式分割前の1株当たりの配当額を記載しています。