リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループは、事業活動の遂行において直面し、あるいは事業活動の中で発生し得るさまざまなリスクを認識し、的確な管理を行うことによって、その発生の可能性を低下させるとともに、発生した場合の損失を最小限にとどめることにより、事業の継続的・安定的発展の確保に努めております。中期経営計画〈2024‐2026〉においても「サステナビリティ経営の進化」を掲げ、「リスクヘッジとリスクテイクの徹底」を図っております。
なお、リスクとは、以下の観点から、当社グループの経営において経営目標の達成を阻害する要因すべてを指します。
・当社グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性のあるもの
・当社グループ事業の継続を中断・停止させる可能性のあるもの
・当社グループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性のあるもの
当社は、リスク管理規程に基づき、社長が委員長を務めるリスク管理委員会において、毎年度、全社の「重点リスク管理項目」を定めて各部門の運営計画に反映させており、当該項目には、法令違反リスクや安全・環境・品質に関するリスク等のESG要素も含まれております。同委員会は、本社部門、各事業部門及びグループ会社における機能別のリスク管理状況を定期的(年2回)にモニタリングし、必要に応じて是正・改善措置を指示するとともに、新たなリスクへの対応を図り、その対応状況を取締役会に定期的(年2回)に報告しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、次のようなものがあります。ただし、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点で予見しがたいリスクが顕在化し、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、こうしたリスク管理体制のもと、下記に掲げる対応策を適宜実施することにより、リスクの回避又は軽減を図ることで、経営への影響の低減に努めております。
(1)主に外部環境の変化に伴うリスク
|
主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
① |
建設市場の縮小リスク 国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や、財政健全化等を目的として公共投資が減少した場合には、今後の受注動向に影響を及ぼす可能性があります。 |
取締役会で建設事業の受注見通し、案件量を毎月フォローし、執行役員会議・事業部門長会議等において適宜必要な対策を指示しております。 2030年を見据えた長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」において収益構造の転換を掲げ、中期経営計画〈2024‐2026〉によって各事業に応じた成長戦略を実行しております。 |
② |
建設資材価格及び労務単価の変動リスク 建設資材価格や労務単価等が、請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し、それを請負金額に反映することが困難な場合には、建設コストの増加につながり、損益が悪化する可能性があります。 |
厳格な受注前審査の実施、見積提出時における業務範囲の明確化等により、リスクの低減に努めております。 工事請負契約の締結にあたっては、契約条件に労務賃金・建設物価の変動に基づく請負代金の変更に関する規定(スライド条項等)を含めた契約の徹底に努めております。 |
③ |
取引先の信用リスク 発注者、協力会社、共同施工会社などの取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性があります。 |
取引先に対する与信審査の徹底と継続的なモニタリングを行うとともに、当社グループの債権保全が可能な契約の締結に努めております。 |
④ |
海外事業リスク 海外での事業を展開するうえで、進出国での政治・経済情勢、為替、租税制度や法的規制等に著しい変化が生じた場合や、テロ・戦争・暴動等の発生、資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には、工事の進捗や工事損益に影響を及ぼす可能性があります。 |
海外事業展開にあたって、事業機会とともにカントリーリスク等も踏まえて地域や国を絞り込み、必要な対策を図っております。 (主な取組み) ・海外大型案件取組み時の審査体制の強化 ・契約リスク管理部署の設置 ・コンサルの活用等によるテロ対策の実施 ・腐敗防止の取組み |
⑤ |
投資開発事業リスク 景気の減速による不動産市況の低迷や金融市場の変動など、投資開発分野の事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
企業体力に見合ったリスクの範囲内で事業を行うよう毎年度投資計画を策定するとともに、個別案件の取組みにおいては、投資取組基準に基づき、出口戦略(投資の回収計画)も含めて計画的に投資を行っております。 取締役会で投資開発事業の進捗状況、投資残高、事業ポートフォリオ、時価評価を定期的にフォローし、必要な対策を図っております。 |
|
主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
⑥ |
長期にわたる事業におけるリスク PFI事業、再生可能エネルギー事業等の長期にわたる事業において、諸物価や人件費、金利等の上昇、取引先の信用不安など、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
取締役会でPFI事業、再生可能エネルギー事業等の進捗状況を定期的にフォローし、必要な対策を図っております。
|
⑦ |
投資有価証券の価格変動リスク 投資有価証券の時価が著しく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
毎年、個別銘柄ごとに、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、保有意義を見直し、取締役会にて、保有の必要性を検証したうえで、保有意義の低下した銘柄は、原則として売却しております。 |
⑧ |
金利水準・為替相場の変動リスク 金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
金融相場変動リスク管理規程に従い、リスク管理を行っております。 (主な取組み) ・固定金利による資金調達、金利スワップによる金利変動リスクの低減 ・為替予約、通貨スワップ、現地通貨による資金調達、外貨持高の調整による為替相場変動リスクの低減 |
|
主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
⑨ |
自然災害・感染症リスク 地震、津波、風水害等の自然災害や、感染症の世界的流行が発生した場合は、当社グループが保有する資産や従業員に直接被害が及び、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 災害規模が大きな場合には、受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で事業環境が変化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
|
BCP委員会を設置し、BCPの継続的見直しや訓練計画の決定及び実施状況のフォローを行っております。 (主な取組み) ・首都直下地震、南海トラフ地震等の巨大地震を想定した震災訓練の定期的な実施 ・風水害発生時の行動基準の策定、風水害に関する従業員向け研修(eラーニング)の実施及び風水害を想定した訓練の実施 ・災害時情報共有システムの整備 ・非常用電源の確保及び備蓄品の拡充 ・データセンターのバックアップ体制の構築
|
⑩ |
サイバーリスク 標的型メールやマルウェアによるウイルス感染、不正アクセス等のサイバー攻撃の被害にあった場合、事業活動や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
デジタル戦略委員会を設置し、情報セキュリティに関する事項を審議し、必要な対策を図っております。 (主な取組み) ・従業員対象の標的型メール訓練の実施 ・社外公開サーバーの脆弱性診断 ・外部委託によるウイルスの常時監視 ・未知のマルウェア対策の実施 |
⑪ |
法令の新設・改廃等に係るリスク 社会や時代の変化により、新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
事業活動に影響を及ぼす法令の新設・改廃等について適切に対応するため、関連規程・規則を整備し、各種会議体・イントラネット等を用いた社内周知、社内教育・研修(eラーニングを含む)を実施しております。 |
|
主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
⑫ |
気候変動リスク 脱炭素社会への移行に向けて、建築物の新築時の各種規制の強化や炭素価格付けの導入等がなされた場合、また気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇や気象災害が頻発・激甚化した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 |
2019年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、2020年から毎年、気候変動に関するリスクと機会を分析・開示するとともに、気候変動への対策を図っております。 (主な取組み) ・気候変動関連のリスクと機会について、取締役会で事業戦略との整合性を確認 ・サステナビリティ委員会(委員長:社長)を設置し、気候変動を含む地球環境問題に関する基本的な方針・施策を審議・決定 ・環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」、CO2排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030‐2050」を掲げ、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、活動を推進 ・気象災害の頻発・激甚化に対し、グループ会社や協力会社を中心にサプライヤーとの連携を強化 |
⑬ |
退職給付債務に関わるリスク 年金資産の時価の下落及び割引率など退職給付債務の数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
年金資産運用委員会を設置し、資産運用実績や財政決算シミュレーション等について審議を行い、年金資産運用に関する基本方針並びに政策的資産構成割合の見直し・改定を実施するとともに、委託先の運用機関による運用状況について適切なモニタリングを行い、毎年、取締役会に報告しております。 |
(2)主に業界特性・組織内部に起因するリスク
|
主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
① |
重大事故や契約不適合等のリスク 設計、施工段階における技術・品質面での重大事故・不具合や人身事故、環境事故が発生し、その修復に多大な費用負担や施工遅延が生じたり、重大な契約不適合となった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
「安全第一」「人命尊重」「顧客第一」「品質確保」「環境保全」の事業姿勢を社内で共有し、安全と品質への意識向上を図っております。 (主な取組み) ・技術・品質委員会、安全・環境委員会の設置 ・品質管理部署の追加設置 ・建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の運用、安全衛生管理基本方針の制定、全社安全衛生計画の策定 ・QMS(品質マネジメントシステム)の実施、品質方針の策定、CS(顧客満足)推進活動の実施 ・EMS(環境マネジメントシステム)の実施、環境基本方針の策定 ・事故・不具合事例のフィードバック、全社水平展開、PDCAの実施 |
② |
個人情報・機密情報漏洩リスク 事業活動において取得した個人情報、機密情報が漏洩した場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
「プライバシー・ポリシー」の制定や個人情報保護規程等の整備、全社個人情報保護管理者の設置により、個人情報の適切な管理を実施するとともに、情報セキュリティリスクに対応するため、各種取組みを実施しております。 (主な取組み) ・「情報セキュリティガイドライン」の適宜見直し ・「情報セキュリティハンドブック」の配布、デジタルサイネージを利用した啓発 ・情報セキュリティeラーニング、情報セキュリティ監査の定期的実施 ・日本シーサート協議会への加盟とCSIRT体制によるインシデント対応 |
|
主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
③ |
法令違反リスク 当社グループの主な事業分野である建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには安全・環境、労働、ハラスメント関連の法令等、さまざまな法的規制を受けており、当社グループにおいて違法な行為があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
社是「論語と算盤」を拳拳服膺し、グループ全体で倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図っております。 (主な取組み) ・「企業倫理行動規範」の制定 ・各種法令等に適切に対応するための関連規程類・社内体制の整備 ・企業倫理委員会(委員長:社長)、企業倫理室の設置、内部通報制度(相談連絡先:企業倫理相談室、ハラスメント相談窓口、外部相談窓口、グループ会社相談窓口等)、内部監査体制の整備等、コンプライアンス推進体制の構築 ・経営幹部向け企業倫理研修の定期的実施 (グループ会社幹部含む) ・全従業員へのコンプライアンス研修(eラーニング含む)を毎年実施 ・独占禁止法順守プログラムや行動規準等の整備、独占禁止法違反行為に対する再発防止策の継続実施 ・社内媒体(社内報・法務ニュース等)を通じた啓発 ・グループ会社も当社に準じてこれらの取組みを実施 |
④ |
中長期的な担い手不足リスク 建設業の担い手である技能労働者の高齢化が進んでおり、団塊世代が大量離職するまでに、新規入職者の増加による世代交代が進まない場合、生産体制に支障をきたし、事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
官民連携のうえ、担い手の確保・育成、処遇改善、建設業界の魅力向上等に取り組んでおります。 (主な取組み) ・適正な請負代金と工期の確保 ・協力会社を通じた技能労働者の賃金水準の向上、社会保険加入促進 ・週休二日推進 ・協力会社への入職支援、優良技能者の表彰・手当支給、多能工化支援 ・技能者訓練施設(清水匠技塾)を活用した、技能者の適応・定着教育の実施 ・女性の活躍推進 ・建設業の魅力をPRする広報活動 ・外国人材の適正な活躍推進 ・建設キャリアアップシステムの普及・推進 ・省人化工法・建設ロボットの開発・採用、ICTの活用を含む生産性向上の取組み |
配当政策
3 【配当政策】
当社は、長期的発展の礎となる財務体質の強化と安定配当を基本方針とし、1株当たり配当金の下限を年間20円としたうえで、成長により稼得した利益を連結配当性向40%を目安に還元する方針としております。
剰余金の配当は、中間配当と期末配当の年2回の配当を行うことを基本方針としており、これらの配当の決定機関は、中間配当については取締役会、期末配当については株主総会であります。
また、当社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる旨を定款に定めております。
当事業年度の剰余金の配当は次のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 |
1株当たり配当額 |
2023年11月7日 |
9,863百万円 |
13円50銭 |
取締役会決議 |
||
2024年6月27日 |
4,643百万円 |
6円50銭 |
定時株主総会決議 |
内部留保資金については、財務体質の健全性を維持しつつ、事業・人財投資等の持続的成長及び更なる企業価値向上に向けた投資や、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた資本政策等に活用する考えであります。