2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    3,627名(単体) 34,860名(連結)
  • 平均年齢
    44.3歳(単体)
  • 平均勤続年数
    19.4年(単体)
  • 平均年収
    10,367,410円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社における状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

調味料・食品

22,096

(4,235)

冷凍食品

5,478

(3,391)

ヘルスケア等

5,321

(348)

その他

1,185

(538)

全社(共通)

780

(-)

合計

34,860

(8,512)

 (注)1.従業員数欄の( )内は、臨時従業員の年間平均雇用人員数を外数で記載しております。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

3,627

(227)

44.3

19.4

10,367,410

 

セグメントの名称

従業員数(人)

調味料・食品

1,689

(57)

冷凍食品

46

(-)

ヘルスケア等

980

(124)

その他

132

(46)

全社(共通)

780

(-)

合計

3,627

(227)

 (注)1.従業員数は、就業従業員数です。

 (注)2.従業員数欄の( )内は、臨時従業員の年間平均雇用人員数を外数で記載しております。

 (注)3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

(3)労働組合の状況

 特記すべき事項はありません。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 当社及び当社グループの多様性に関する取組みについては、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組 <味の素グループの人的資本に対する考え方>」をご参照ください。

 

①提出会社

当事業年度

管理職に占める

女性労働者の割合

(%)(注)1

男性労働者の

育児休業取得率(%)

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

14.4

89.6

70.1

72.5

65.8

 (注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

 (注)2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。当取得率の算出においては、正規雇用労働者を対象としています。

 

②連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の

割合(%)

(注)1

男性労働者の

育児休業取得率

(%)

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1

全労働者

正規雇用労働者

パート・

有期労働者

味の素冷凍食品㈱

8.5

100.0

52.6

75.6

84.7

味の素食品㈱

7.7

87.5

60.2

75.9

78.6

味の素AGF㈱

13.4

60.0

81.5

78.4

92.2

味の素ヘルシーサプライ㈱

21.3

75.0

55.6

82.2

59.9

味の素エンジニアリング㈱

2.3

66.7

72.3

70.1

味の素ファインテクノ㈱

15.0

64.0

88.8

90.7

51.7

味の素ベーカリー㈱

100.0

67.6

73.9

94.5

㈱味の素コミュニケーションズ

13.4

50.0

68.3

86.3

55.4

味の素構内サービス㈱

100.0

57.3

78.7

84.2

AGF鈴鹿㈱

44.4

70.4

71.5

75.6

AGF関東㈱

11.1

100.0

73.4

91.3

70.6

味の素デジタルビジネスパートナー㈱

44.2

100.0

61.4

71.9

101.9

 (注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

 (注)2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。当取得率の算定においては、正規雇用労働者を対象としています。

 (注)3.味の素ベーカリー㈱、味の素構内サービス㈱及びAGF鈴鹿㈱の3社は女性管理職が0名となっております。

 

<グループ全体における女性管理職比率>

 グループ全体での女性管理職比率は27%、味の素㈱は14%となっています。グループ全体で女性活躍に向けた基盤整備や取組みを進め、2030年度までにグループ全体で40%、味の素㈱は30%の女性管理職比率を目指します。

 

 

 

 

 

 

 

(人)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合計

男性

女性

味の素グループ総数

従業員合計

34,860

24,097

(69%)

10,763

(31%)

 

 

 管理職

5,184

3,767

(73%)

1,417

(27%)

 

 

 一般職

29,524

20,225

(69%)

9,299

(31%)

 

 

 嘱託

152

105

(69%)

47

(31%)

 

 日本

従業員合計

8,274

5,837

(71%)

2,437

(29%)

 

 

 管理職

2,125

1,834

(86%)

291

(14%)

 

 

 一般職

5,997

3,898

(65%)

2,099

(35%)

 

 

 嘱託

152

105

(69%)

47

(31%)

 

 アジア

従業員合計

13,925

9,942

(71%)

3,983

(29%)

 

 

 管理職

1,566

1,007

(64%)

559

(36%)

 

 

 一般職

12,359

8,935

(72%)

3,424

(28%)

 

 欧州※1

従業員合計

3,180

2,066

(65%)

1,114

(35%)

 

 

 管理職

462

292

(63%)

170

(37%)

 

 

 一般職

2,718

1,774

(65%)

944

(35%)

 

 米州

従業員合計

9,481

6,252

(66%)

3,229

(34%)

 

 

 管理職

1,031

634

(61%)

397

(39%)

 

 

 一般職

8,450

5,618

(66%)

2,832

(34%)

 ※1:ヨーロッパ及びアフリカ諸国

 

 

<味の素㈱の男女賃金格差について>

 味の素㈱の人事制度は一本化されており、同等職務レベルであれば男女の賃金レンジは同一となっておりますが、男女賃金の差異については以下の要因により生じております。

 

 正規労働者は、一般職において20代男女賃金はほぼ同水準です。しかし、30代では、転勤エリアが限定されている社員や、結婚・出産・育児などのライフイベントによる休職、時短勤務、残業時間の制限等の影響もあり、階層別賃金格差は約88%となります。管理職においては、初・中級管理職の男女賃金格差が95.5%、上級管理職で97.8%と上位職位になるにつれて賃金差は縮小します。しかしながら、給与水準が高い管理職における女性社員比率が低いため、正規労働者合計での男女賃金格差は72.5%となります。正規労働者において、20代における女性社員比率は41%と全体の女性社員比率30%に対して増加傾向にあります。この流れに加えて、味の素(株)は2030年度には女性管理職比率30%を目指しており、管理職人財パイプライン形成を目的として、「AjiPanna Academy(アジパンナ・アカデミー)」等の女性育成支援施策を推進しています。2024年度アジパンナ・アカデミーのキャリアワークショップ参加者25名の100%が上位職への挑戦意向を示しています。また、エンゲージメントサーベイの設問「私は、上位の職位につくことを打診されたならば、そのオファーを受けたいと思う」では、半数を超える女性が上位への職位への意欲を示しており、今後は女性管理職数の増加と共に賃金の差異は段階的に縮小していくと考えています。

 

 非正規労働者では、パートタイム従業員よりも賃金の高いシニア再雇用者社員における男女比率の差が要因です。今後の日本での労働人口減少を踏まえて、女性のシニア再雇用を推進する等、正規・非正規労働者を問わない女性の更なる活躍を進めることで、非正規労働者においても賃金の差異は段階的に縮小していくと考えています。

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>

 味の素グループは、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」ことを志(パーパス)とし

て、サステナビリティをASV経営の根幹に位置づけています。2030年に向けた中期ASV経営 2030ロードマップでは、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)である6つの重要テーマに沿って具体的な取組みを進めています。

 当社グループの事業は、健全なアグリフードシステム、すなわち食資源を生み出し消費する社会システムと、それを支える豊かな地球環境の上に成り立っています。そしてこのシステムは地球環境の変化に直面する一方で自然資本の損失にも大きく影響を及ぼしています。地球環境が限界を迎えつつある現在、環境変化への適応と自然の再生に向けた対策は、社会全体ならびに私たちの事業の持続的成長にとって喫緊のテーマであり、気候変動、生物多様性、サーキュラーエコノミー(循環経済)などの領域で取組みを推進しています。また、栄養バランスのとれた食生活や食を通じたこころの豊かさの実現、治療・予防の進化等への貢献に向けて、各種施策を展開しています。

 味の素グループは事業活動を通じて、ネガティブインパクト(負の影響)を着実に低減するだけでなく、強みであるアミノサイエンス®を活かし、多様なステークホルダーと共に、バリューチェーン全体で社会へよりポジティブなインパクト(良い影響)を創出していくことを目指しています。そして、健全な社会の繁栄、健康でより豊かな暮らしに向けた継続的な取組みとともに企業価値の持続的な向上を図っていきます。

 

 

(1)ガバナンス

 味の素グループでは、グループ各社及びその役員・従業員が順守すべき考え方と行動の在り方を示した味の素グループポリシー(AGP)を誠実に守り、内部統制システムの整備とその適正な運用に継続して取り組むとともに、サステナビリティを積極的なリスクテイクと捉える体制を強化し、持続的に企業価値を高めています。サステナビリティ関連指標の報酬方針への反映に関しては、コーポレートガバナンスの状況等の(4)役員の報酬等を参照下さい。

 持続可能性の観点から企業価値を継続的に向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、その概要は提出日現在で以下のとおりです。

 

 取締役会は、サステナビリティ諮問会議を設置する等、サステナビリティとESGに係る当社グループの在り方を提言する体制を構築し、ASV経営の指針となる味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)を決定するとともに、サステナビリティに関する取組み等の執行を監督しています。

 経営会議は、下部機構としてサステナビリティ委員会と経営リスク委員会を設置し、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会をその影響度合いの評価とともに特定し、対策の立案、進捗管理を行う体制を構築しています。なお、2024年度はサステナビリティ委員会ならびに経営リスク委員会からそれぞれ2回の活動報告を受けています。

 サステナビリティ諮問会議は、取締役会の下部機構としてサステナビリティの観点で味の素グループの企業価値向上を追求するための提言を行います。2023年4月から開始した第二期サステナビリティ諮問会議は、投資家とWell-beingの専門家を含む4名の社外有識者で構成され、議長も社外有識者が務めました。この会議は1年に2回以上開催され、取締役会の諮問事項である「マテリアリティの実装(Implementation)、実装化の情報開示と対話(Communication)、ステークホルダーとの関係構築(Partnership)」について執行の取組みを評価し、2025年3月に取締役会への最終答申を行いました。

 サステナビリティ委員会は、経営リスク委員会と連携して味の素グループへの影響評価とともに重要事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会の選定、抽出を行い、経営会議に提案します。そして、サステナビリティに関するリスクと機会に対して対策を検討・立案し、進捗管理を行います。また、味の素グループ全体のサステナビリティ戦略策定、戦略に基づく取組みテーマ(栄養、環境、社会)の推進、事業計画へのサステナビリティ視点での提言と支援、ESGに関する社内情報の取りまとめを行います。

 経営リスク委員会は、サステナビリティ委員会と連携して味の素グループへの影響評価とともに重要事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会の選定、抽出を行い、経営会議に提案します。そして、特に経営がイニシアチブをもって対処すべきリスク(地政学リスク、情報セキュリティリスク等)について、リスクマネジメントのための諸方策を立案、進捗管理を行うことで、リスクおよび危機に迅速かつ的確に対応できる強固な企業体質を目指します。

 

(2)戦略

 2024年は観測史上最も暑い年となり、産業革命以前からの平均気温上昇は1.5℃を上回りました。豊かな地球環境と健全な社会を次世代に受け継ぐことは私たちの責務であり、持続可能な事業活動にとって不可欠です。中でも気候の安定化は喫緊のテーマです。そのためにも、ネイチャーポジティブ、すなわち自然の損失を止め、回復軌道に乗せることが求められています。この他にもサーキュラーエコノミー(循環経済)、栄養バランスのとれた食生活、人権など、様々な課題は相互につながっており、同時に取り組んでいくことが必要です。

 味の素グループ全体の調達の7割は農畜水産物であり、自然の恵み、つまり生態系サービスに支えられたアグリフードシステムに大きく依存しています。このシステムは、温室効果ガス(GHG)総排出量の2割超を占め、エネルギー産業に次ぐ大きな排出源であり、地球環境に大きな影響を与えている一方で、地球環境の変化の影響も受けています。また、世界では食料の3分の1が廃棄されており、人口の3分の1にあたる28億人が健康的な食へのアクセスを持ちません。

 このように変革の余地が大きいアグリフードシステムにおいて、当社グループは発酵副産物を肥料・飼料とするバイオサイクルに取り組み、栄養素を循環させることで農畜産物の生産を支援し、地域環境や農家の生活向上に尽力してきました。近年はこれらの活動をもとに、農畜産業の環境負荷削減や再生への貢献を目指した事業を展開しています。また、110年を超える歴史の中で、製品・ソリューションの提供を通じ、世界各地の食文化やおいしさに妥協することなく、栄養バランスの良い食事をサポートしてきました。調理や食事を共にすることが、栄養だけでなく心の豊かさ、すなわち主観的なWell-beingと関係することも世界レベルで明らかになってきました。

 当社グループは、調味料、加工食品、冷凍食品などの食品事業やヘルスケア、電子材料など、強みであるアミノサイエンス®をベースとして幅広く事業を展開しています。これからも有形・無形の資産を活かし、科学者、政策決定者、ビジネスリーダー等のグローバル・ローカルのステークホルダーと共に、ネガティブインパクト(負の影響)を着実に削減するとともに、バリューチェーン全体で社会へよりポジティブなインパクト(良い影響)を創出していくことを目指してまいります。

 これらの活動のベースとして、人財資産を全ての無形資産の源泉と考え、従業員のエンゲージメントが企業価値を高める重要な要素と位置付けています。志を持った多様な人財が、生活者・顧客に深くより添い、イノベーションの共創に挑戦できるよう、人財への投資を強化していきます。

 

(3)リスク管理

 「中期ASV経営 2030ロードマップ」を実現する上で、的確にリスクを把握し、これに迅速かつ適切に対応することが極めて重要です。サステナビリティ委員会と経営リスク委員会は両委員会の間に取り残されるリスクがないよう緊密に連携して、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会の選定・抽出を行い、経営会議へ提案します。そして、その対策立案と定期的な進捗管理について、社会、環境、栄養などサステナビリティに関する事項はサステナビリティ委員会で行い、経営がイニシアチブをもって対処すべきリスク(パンデミック、地政学リスク、情報セキュリティリスク等)は経営リスク委員会で行います。

 なお、国内外の各現場では、個別の事業戦略や現地の政治・経済・社会情勢を考慮してリスクを特定し、対応策を策定するリスクプロセスを回しています。経営リスク委員会は、リスクプロセスを継続的に改善するとともに、各現場が特定したリスクを取りまとめ、経営がイニシアチブをもって対処すべきものに対応します。また、各事業・法人においては、有事に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、経営リスク委員会は、その有効性を常に検証するための体制を整備し、リスクへの対応状況を定期的に監視・管理しています。サステナビリティ委員会、経営リスク委員会に常勤監査委員が出席し、リスク管理の取組みをモニタリングしています。

 

(4)指標及び目標

 味の素グループは、現在の味の素が取り組む6つの重要テーマ(P.18参照)に対して、環境負荷などネガティブインパクト(負の影響)の低減だけでなく、強みであるアミノサイエンス®を活かした広く社会へポジティブなインパクト(良い影響)を創出する取組みも含めて目標・KPIを定めています。

 そして当社グループ全体を対象とする主要な取組みはその取組みと実績の進捗を経営会議で確認しています。

 

<主な取組みと目標・KPI>

 以下は主な取組みと目標・KPIです。6つの重要テーマ全体の取組みと目標・KPIは、「重要テーマに関わる主なリスク・機会と、対象領域、取組み、目標・KPI」(P.39)を参照下さい。

 ※気候変動、生物多様性保全、人的資本に関する実績の進捗を含む詳細は、P.22以降を参照下さい。

 

 

<味の素グループの気候変動に対する考え方>

(1)ガバナンス

 気候変動課題に対する当社のガバナンスは、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(2)戦略

 味の素グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開しています。気候変動は、大規模な自然災害による事業活動の停止、農作物や燃料などの原材料調達への影響、製品の消費の変化など、さまざまな形でグループの事業に影響を与えます。

 

①シナリオ分析の前提

 2024年度も、2100年に地球の平均気温が産業革命後より1.5℃又は4℃上昇するというシナリオで(*1)、グローバルのうま味調味料、及び国内・海外の主要な製品を対象とし2030年時点と2050年時点の気候変動による影響に関するシナリオ分析を実施しました。

 中長期における生産に関する事項として、気候変動の影響のうち、渇水、洪水、海面上昇、原料の収量変化等を物理的リスクとして、カーボンプライシングやその他の法規制の強化及びエネルギー単価の上昇、消費者嗜好の変化等を移行リスクとして捉え分析しました。

 1.5℃と4℃シナリオにおける2030年時点の平均気温差は0.2℃程度であり物理的リスクに大きな差が見られないと考え、平均気温差が1℃程度予想され物理的リスクに差があると考えられる2050年時点のシナリオ分析のリスクと機会を②・③の表において示しています。

 なお、これまでに当社が実施したシナリオ分析に係る前提の推移を要約すると以下のとおりです。

 

 

2020年度(*2)

2021年度(*2)

2022年度(*2)

2023年度以降(*2)

事業

うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品

うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品

うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品

うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品

発現の時期

2030年

2030年/2050年

2030年/2050年

2030年/2050年

シナリオ

2℃/4℃

2℃/4℃

1.5℃/4℃

1.5℃/4℃

売上高基準

カバレッジ

24%

24%

55%

65%

 *1 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるSSP1-1.9(1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ)及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等を参照しています。

 *2 過年度に実施したシナリオ分析の結果については、過年度に発行したサステナビリティデータブックをご参照ください。https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/databook.html

 

 

②シナリオ分析:リスク

1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合

リスク

平均気温上昇

洪水・渇水の重大性と頻度の上昇

製品に対する命令及び規制

消費者嗜好の移り変わり

右の対象は味の素グループ全体

カーボンプライシングメカニズム

リスクの分類

移行リスク

物理的リスク

移行リスク

移行リスク

移行リスク

事業インパクト

カーボンプライシングによる原料調達のコストアップ(コーヒー豆ほか)

創業時より実施している供給継続対策

使用する原料に関する法規制の強化によるコストアップ

(想定:原料のトレーサビリティやリサイクル使用の法規制)

気温上昇による需要減

(想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト)

カーボンプライシングにより、使用する燃料のコストアップ

潜在的財務影響

2億円/年

僅少

2030年:180億円/年(*3)

2050年:430億円/年(*3)

対応策

・原料産地の支援

・別製法で作られた原料の検討

・調達地域の多様化

・代替原料の研究開発

・サプライチェーン上下流の包括的な協力体制構築

・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・アイス飲用に適したマーケティング活動

・レンジ調理メニューの探索・提案

・内部カーボンプライシングによる財務影響の見える化

・燃料転換

・再生可能エネルギー利用

・環境配慮型の製法開発

 

 

 

4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合

リスク

平均気温上昇

洪水・渇水の重大性と頻度の上昇

消費者嗜好の移り変わり

燃料のコスト増加

リスクの分類

物理的リスク

物理的リスク

移行リスク

移行リスク

事業インパクト

農畜水産物の生産性低下によるコストアップ

(想定1:養殖の生育環境悪化、

想定2:家畜の増体率や生産性の低下、

想定3:乳牛の乳量低下、

想定4:家畜の感染症流行、

想定5:農産物の生育不良や病害虫流行)

原料調達のコストアップ、操業停止、納期遅延による売上高の減少

(想定1:タイの洪水、

想定2:タイの渇水、

想定3:日本の局地豪雨による冠水)

 

気温上昇による需要減

(想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト)

化石系の燃料や電力の価格上昇

潜在的財務影響

90億円/年

1億円/年

20億円/年(*4)

対応策

・調達地域の多様化

・サプライヤー・農家との連携強化

・エキス削減レシピの開発

・代替原料の研究開発

・高温耐性品種の導入

・販売価格への反映

・調達地域の多様化

・代替原料の研究開発

・節水生産の継続・改善

・供給体制・物流体制の整備

・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・手軽な加熱調理コミュニケーションへの改善

・アイス飲用に適したマーケティング活動

・レンジ調理メニューの探索・提案

・燃料転換

・再生可能エネルギー利用

・環境配慮型の製法開発

 *3 SBT(Science Based Targets)イニシアチブに認定された味の素グループの2018年度の基準GHG排出量に、IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)の1.5℃シナリオに相当する2030年CO2価格の予測:新興国=25$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=90$/t-CO2、先進国=140$/t-CO2、2050年CO2価格の予測:新興国=180$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=200$/t-CO2、先進国=250$/t-CO2を乗じて算出。4℃シナリオは現状の成り行きでありCO2価格の上昇は想定しておりません。

 *4 IEA発行のWorld Energy Outlookにおける、化石燃料の現状に対する4℃シナリオについて、2022年発行版(2021年を現状とする)では2050年に大幅な価格上昇予測となっておりましたが、2024年発行版(2023年を現状とする)では価格上昇がほとんどなくなっており、当社予測による潜在的財務影響額も2023年度予測値に比して小さくなっております。

 

③シナリオ分析:機会

1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合

機会

低排出量商品及びサービス

消費者嗜好の移り変わり

機会の分類

製品及びサービス

製品及びサービス

事業インパクト

生活者や顧客のエシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加

・健康志向によるニーズ拡大=売上増加

・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加

対応策

・環境配慮型の製法や製品の開発

・ESGの高評価を取得する取組み推進

・低環境負荷を証明する信頼性のあるデータ強化

・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策

・栄養価値が向上する製品開発

・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・環境配慮型の製法や製品の開発

 

4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合

機会

低排出量商品及びサービス

消費者嗜好の移り変わり

機会の分類

製品及びサービス

製品及びサービス

事業インパクト

生活者や顧客のエシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加

・健康志向によるニーズ拡大=売上増加

・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加

対応策

・環境配慮型の製法や製品の開発

・低環境負荷を証明する信頼性のあるデータ強化

・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策

・栄養価値が向上する製品開発

・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・環境配慮型の製法や製品の開発

 

④シナリオ分析結果の戦略への反映

(ⅰ)事業戦略への反映

 シナリオ分析における事業への影響を踏まえ、今後一層のGHG排出量削減に向け、燃料転換・再生可能エネルギー利用・環境配慮型の製法に関する投資を計画していきます。また、サステナビリティに対する取組みが製品の付加価値向上につながる「ASV」の実現に向けて、新たな事業戦略の策定に取り組んでまいります。

 また、2025年度以降のシナリオ分析においては、各種情報源のデータ更新と合わせてリスク・機会の見直しをしていきます。

 

(ⅱ)資金調達戦略への反映

 当社は、各種取組みに対して必要な資金については、サステナブルファイナンスを基本としております。2021年10月のサステナビリティボンド発行を第一弾に、2022年1月のポジティブ・インパクト・ファイナンスによるコミットメントライン契約、2022年12月のサステナビリティ・リンク・ローンによるコミットメントライン契約、2023年6月にサステナビリティ・リンク・ボンド発行と継続的にサステナブルファイナンスによる調達を実行しています(*5)。また、直近では2024年3月および4月に新たなサステナビリティ・リンク・ローンを2件契約しました。

 これら資金調達により、味の素グループが掲げる2030年までの2つのアウトカムのうちの1つ「環境負荷を50%削減」の実現、及び持続可能な社会の実現に向けた取組みをより一層加速させていきます。

 *5 これらの詳細に関しては、以下の「サステナブルファイナンス」サイトをご参照ください。

https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/sustainability/finance/

 

(3)リスク管理

 気候変動課題に対する当社のリスク管理は、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(4)指標及び目標

 味の素グループはSBT(Science Based Targets)イニシアチブより、ネットゼロを含む温室効果ガス(GHG)排出削減目標について2024年12月に新たな認定を取得しました。これにより、味の素グループはネットゼロを含むGHG排出削減目標の取組みへさらに加速させるため、戦略の見直しを進めています。

 

①目標

 <Near-term目標>

スコープ1+2:  2030年度までに温室効果ガス排出量を2018年度基準で50.4%削減

スコープ3:   2030年度までに温室効果ガス排出量を2018年度基準で30%削減

スコープ3 FLAG*6:2030年度までにFLAG関連排出量を2018年度基準で36.4%削減

森林減少根絶:  森林減少に関連する主要な製品について、2025年12月31日までに森林減少を行わないことを約束

 

 *6 林業や農業等の土地集約型セクター(Forest, Land and Agriculture)での森林から農地への土地利用転換や土地利用に伴って発生するGHG排出量

 

  

 

 <Long-term目標>

スコープ1+2+3:  2050年度までに温室効果ガス排出量を2018年度基準で90%削減

スコープ3 FLAG: 2050年度までにFLAG関連排出量を2018年度基準で72%削減

 

 

 

②2024年度実績

 

 スコープ1+2の合計GHG排出量については、前年度比およそ160,000t-CO2eの削減となりました。インドネシア味の素社が完全に石炭からバイオマスに、当社・九州事業所が重油から都市ガスに完全に燃料転換するとともに、インドネシア味の素社が再エネ証書を調達したことが削減につながりました。

 スコープ3のGHG排出量(全カテゴリー対象)については、前年度比は生産量増にもかかわらず原材料の1次データ取得のほか算定精度の向上によりおよそ3%減少しました。基準年である2018年度比では(基準年以降に当社グループ外となった会社の排出量の遡及なし)当社グループの総生産量が減少したことが主な原因で17%減少となりました。

 

 

 なお、SBTイニシアチブの基準に準じて2019年度以降に当社グループ外となった会社の排出量を遡及したスコープ1+2排出量およびスコープ3排出量(カテゴリー11除く)に関する、SBTイニシアチブの認定を受けた2030年度のスコープ1+2排出量目標(2018年比△50.4%)とスコープ3排出量目標(カテゴリー11除く、2018年比△30%)に対するそれぞれの削減実績は43%と13%となりました。スコープ1+2に関しては、現時点での計画によりおよそ9割の達成目途が見えていますが、一層の排出量削減に向け、更なる削減活動を検討してまいります。スコープ3に関しては、原料サプライヤーとのエンゲージメントのさらなる推進による1次データ取得や削減取組みの推進、低GHG原料の共同購買などによりGHG排出量の削減に向けて取組みを進めてまいります。

 

<SBTイニシアチブの基準に準じて2019年度以降に当社グループ外となった会社を遡及したスコープ1+2排出量および

スコープ3(カテゴリー11除く)排出量とそれぞれの削減率>

 

③目標達成に向けた取組み

 スコープ1+2の目標を達成するための施策として、省エネルギー活動やGHG発生の少ない燃料への転換、バイオマスや太陽光等の再生可能エネルギー利用、エネルギー使用量を削減するプロセスの導入を進めています(国内グループ会社における再エネ証書の調達など)。

 スコープ3については、製品ライフサイクル全体のGHG総排出量の約60%を原材料が占めていることから、原料サプライヤーへのGHG削減の働きかけや、再生農業を中心とした農業施策によるGHG削減、新技術導入に向けた検討を進めています。

 

<味の素グループの生物多様性に対する考え方>

(1)ガバナンス

 生物多様性に対する当社のガバナンスは、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(2)戦略

 味の素グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開していることから、当社事業は、農、畜、水産資源や遺伝子資源、水や土壌、昆虫等による花粉媒介などのさまざまな自然の恵みに大きく依存しています。これら自然の恵みは、多様な生物とそれらのつながりによって形作られる健やかな生物多様性によって提供されていますが、生物多様性は現在、過去に類を見ない速度で失われており、生物多様性の保全が世界的に喫緊の課題となっています。当社グループは、2023年7月に生物多様性ガイドラインを制定し、生物多様性の保全においては、気候変動、水や土壌、廃棄物、人権等の環境や社会課題とも密接に関わっているため、相互が効果的になるように課題解決に向けた取組みを進めていきます。

 

①LEAPアプローチ

 LEAPアプローチは、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が提唱するガイダンスで、企業および金融機関内の自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づいて体系的に評価をするためのプロセスを示しています。

2023年度は、当社グループ事業のうち評価対象に関して、LEAPアプローチによる依存・影響の分析からリスク・機会の評価を実施しました。2024年度は、Assess(評価)において、物理リスクの財務影響が大きいサトウキビの詳細分析を行いました。

 

(ⅰ)対象原料の選定

 売上高カバレッジ8割となる事業における原料を対象に、Science Based Target Network(SBTN)により作成されたガイダンスであるSBTs for Natureが提供するHigh Impact Commodity(HIC)に該当もしくはHigh Impact Commodity List(HICL)に収載されかつ調達量が多い12の原料を選定しました。選定原料は、サトウキビ、キャッサバ、トウモロコシ、生乳、大豆、菜種、米、牛、コーヒー、パーム、銅、原油です。なお、HICLに該当しているが包装資材である紙については対象外としました。

 

 

(ⅱ)分析結果

原料、製造、販売、消費の4工程について、LEAの3ステップを分析。

 

Locate(発見)

Evaluate(診断)

Assess(評価)

分析概要

対象事業について、味の素グループ事業のサプライチェーン上下流における、生物多様性損失の危機が大きいエリアを把握した。

味の素グループ事業のサプライチェーンにおける自然への依存と影響の因子を特定した。それら因子に対する指標と閾値を設定して依存・影響の将来状態(2050年)を定量的に診断した。

将来状態で劣化が進む依存と影響の因子に関して、シナリオにてリスクを予想した。それらの結果に対して、味の素グループの対応状況を踏まえた財務影響を試算し、リスク・機会の大きさを評価した。

ツール

以下のツールを各ステップで組み合わせて分析した。

(ENCORE、SBT’s High Impact Commodity List、SBTN Materiality Screening Tool、Geographic Information System、World Database Protected Area、IUCN Red List、GLOBIO、Aqueduct、Aqueduct Water Atlas、Nature Map Explore、Aqueduct Global Maps、Past and future trends in grey water footprints of anthropogenic nitrogen and phosphorus inputs to major world rivers、International Institute for Applied Systems Analysis、What a Waste)

 

結果

味の素グループ事業のサプライチェーン(上流、自社、下流)における自然(水、土壌、生態系など)との接点を特定するため、全球を評価単位エリア(25km-50km四方)に区分けし、自然劣化を踏まえて詳細分析すべき評価単位エリアを特定した。全対象2.4万評価単位エリアのうちLocateでは、生物多様性の重要性エリア・急速劣化エリア・棄損可能性エリア・高い水ストレスのエリア・先住民居住エリアのいずれかに該当するエリアは2万評価単位エリアと特定した。

Locateで特定した2万評価単位エリアにおいて、味の素グループ事業のサプライチェーンにおける各段階(上流、自社、下流)での自然への依存と影響の因子について、指標と閾値を設定して2050年時点での依存・影響度を想定分析した。自然毎に劣化傾向は異なり、森・大気は全世界で劣化するが、水・土は特定地域に偏重することを確認した。特に、菜種の調達国では、それらの生産地で土質が劣化する可能性があることを確認した。

Evaluateにおいて2050年時点で一定程度劣化する可能性があると特定した自然に関して、自然保全と経済発展が両立されるシナリオ(SSP1(*7))と自然劣化・経済停滞となるシナリオ(SSP3(*7))の二つのシナリオにて、どのようなリスクが発生しうるか予想した。共に自然の劣化により多種リスクが生じ得るが、特に財務面の影響が大きいと確認したものは、慢性的な物理リスクによる原料調達価格の高騰であった。調達額の高騰が大きい原料は、トウモロコシ・サトウキビであった。サトウキビはタイ、トウモロコシはアメリカでの土壌の劣化が原因であった。

*7 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長に呼応して新シナリオ作成を目的として立ち上げられたコミュニティである統合評価モデルコンソーシアムが開発した共通社会経済経路(SSP:Shared Socioeconomic Pathways)。SSP1:自然保全と経済発展が両立されるシナリオ。SSP3:自然劣化・経済停滞となるシナリオ。

 

(ⅲ)サトウキビの詳細分析結果

 上記LEAの3ステップ分析にて最もリスクが高い原料の一つであるサトウキビにおいて、2050年に自然劣化が特に大きいと予想した国であるタイ・インドネシア・ブラジルの詳細分析を行った。詳細分析内容は、全調達ミルを対象として各ミルを中心としたサトウキビ調達圏内の任意の4農地における、水リスク・森林減少リスク・土壌劣化リスクをデータベース分析した。分析の結果、相対的にリスクの高い(森林減少)ミルの所在地域は、インドネシア/バニャンギ・ジェンベル・ペカロンガラン・ぺマラン、タイ/スコータイであった。

 

②分析結果の戦略への反映

(ⅰ)事業戦略への反映

 2025年度は、サトウキビ農地における水リスク・森林減少リスク・土壌劣化リスクの実地調査を行います。それを踏まえた生物多様性に関する課題は、気候変動、水や土壌、廃棄物、人権等の環境や社会課題とも密接に関わっているため、相互が効果的になるように課題解決に向けた取組みを進めていきます。また、サステナビリティに対する取組みが製品の付加価値向上につながる「ASV」の実現に向けて、新たな事業戦略の策定に取り組んでまいります。

 

(ⅱ)資金調達戦略への反映

 当社は、各種取組みに対して必要な資金については、<味の素グループの気候変動に対する考え方>に記載している内容と同様に進めてまいります。

 

(3)リスク管理

 生物多様性に対する当社のリスク管理は、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(4)指標及び目標

 分析精度を向上させた生物多様性に関する課題および、それと密接に関わっている気候変動、水や土壌、廃棄物、人権等の環境や社会課題それぞれが、効果的になるように課題解決に向けた取組みが進められる指標と目標を設定していきます。

 

<味の素グループの人的資本に対する考え方>

(1)ガバナンス

 各国・地域の多様な人財を横断的に育成・登用し、人財の適所適財を実現するための基盤として、ポジションマネジメント×タレントマネジメントによるグローバル人財マネジメントシステムを導入、味の素グループの重要ポジションに対する後継者人財プールを可視化しています。また、グローバル人財マネジメントシステムや人財資産の強化に係る各種施策等の円滑な運営を目的に、最高経営責任者を委員長とした経営会議メンバーで構成される人財委員会を経営会議の下部機構として設置し、2024年度は全10回の議論を実施しました。特に人財パイプラインの構築においては、指名委員会との連動も踏まえたグローバルでの重要ポジションのサクセッションプランをReady(1年~3年)、Next(5年以内)、Future(8年以内)の期間で作成し、次世代リーダー層の人財プールを形成、戦略的な育成や登用を強化しています。

 

(2)人財戦略

 味の素グループは、2030ロードマップで定めた挑戦的なASV指標の達成には、4つの無形資産(技術・人財・顧客・組織)の更なる蓄積と成長が必要だと考えており、技術資産と顧客資産をつなぎ、イノベーションを生み出す人財資産への取組を特に強化しています。人財領域における主たる課題は下記のとおりですが、その解決に向けて“志”、“挑戦”、”多様性”、”Well-being”の4つの軸で”つなげる”というコンセプトのもと、グローバルに施策を展開しています(人財投資額(*8):2024年度約100億円/23-30年累計1,000億円以上)。これら人財資産の強化は組織資産としても蓄積され、技術資産および顧客資産を支える大きな土台となり、4つの無形資産の全体の更なる強化にもつながると考えています。

*8 機会投資含む金額

      4つの無形資産

 

[人財領域における主たる課題や更に強化すべき点]

・味の素グループ全体で共有する「Our Philosophy(志、ASV、AGW)」の更なる浸透。

・創業以来、大切にしている価値観であるAGW(新しい価値の創造、開拓者精神、社会への貢献、人を大切にする)をベースとした、「味の素グループらしい挑戦」を実行する機会の提供とそれを後押しする支援の強化。

・グローバルに食品とバイオ&ファインケミカル、地域、ジェンダー、キャリア、障がい等の観点で多様な人財を融合するダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの考え方のもと、「知・経験×属性」が融合されたクロスセクショナルチームで取り組み、イノベーションを共創する力の強化。特に国内においてはジェンダーの多様性の更なる促進。

・全ての基盤としての従業員およびその家族の心身の健康と幸せ。

 

[4つの“つなげる”戦略]

我々は会社の志に共感した社内外の仲間が集い、各人が知と経験を活かして挑戦に臨める環境があることがASV創出に必要と考えています。最重要基盤として、多様な人財が同じ方向を向けるよう、ASVマネジメントサイクルを更に加速し、会社と人財を志で「つなげる」ことを目指します。

挑戦

味の素グループは、2030ロードマップで掲げる挑戦的な高い目標を実現するためには、AGW(新しい価値の創造、開拓者精神、社会への貢献、人を大切にする)のより一層の活性化が重要と考えています。失敗を恐れずに味の素グループらしい挑戦の機会とリーダーシップを提供し、従業員一人ひとりがコンフォートゾーンを超える文化を醸成し、戦略と人財を挑戦で「つなげる」ことを目指します。

多様性

(DE&I)

味の素グループは、グローバルに食品とバイオ&ファインケミカル、地域、ジェンダー、キャリア、障がい等の観点で多様な人財を社内外から求め、融合する事がイノベーション創出に重要であると考えます。お互いを尊重する文化の醸成とマネジメントの高度化を通じて、グローバルで多様な人財を「つなげる」ことを目指します。

Well-being

味の素グループは従業員やその家族の生活基盤である身体的・精神的な健康、経済的な豊かさの向上が人財資産の基盤であると考えています。味の素グループで働いていると自然と健康になる環境・マネジメントや資産形成支援を通じてWell-beingと従業員を「つなげる」ことを目指します。

 

人財戦略の基本コンセプト

 

 味の素グループでは、ASVの自分ごと化を高める取組として、「理解/納得」、「共感/共鳴」、「実行/実現」、「モニタリング/改善」のステップからなるASVマネジメントサイクルを導入しています。会社と人財を志で「つなげる」取組において、2024年度は会社の志と個人の志の重なりを言語化するマイパーパスワークショップを実施するアンバサダーを49名育成、85社に展開し、「理解・納得」プロセスの強化を実施しました。2025年度は「実行/実現」プロセス強化に向けて、個人の志の言語化によって高められた内発的動機付けを行動変容に移す取組をグローバルで展開します。また、ASVエンゲージメントの進度を測る為に、エンゲージサーベイにおいてASV実現プロセススコア(*9)をグローバルでモニタリングしています。(実績:2024年度76%、目標:2025年度80%/2030年度85%)。2024年度は「チャレンジの推奨」や「インクルージョンによる共創」に関連する設問のスコアが上昇した一方で、「生産性向上(承認プロセスの課題)」に関連する設問、具体的には「私は、この会社では、日常業務で物事を決定するまでに、かなり多くの承認を得なければならないと思う」の好意的回答が20%(前年差△8%)に低下し、全体のスコアは昨年と同水準である76%にとどまりました。承認プロセスの改善はグループ全体で取り組むべき経営課題として捉えています。

 

*9 ASV実現プロセスとは:個人によるASVの「自分ごと化」から、組織として成果を創出するまでの一連のプロセスと連動するエンゲージメントサーベイの9設問で構成(「志への共感」「顧客志向」「ASVの自分ごと化」「チャレンジの奨励」「インクルージョンによる共創(2問)」「生産性向上」「イノベーション創出」「社会・経済価値の創出」)

 

(3)リスク管理

 人財に関わるリスク管理においては日本等の先進国を中心とした少子高齢化に伴う生産労働人口の減少、デジタル化の加速による既存スキルの陳腐化等といった外部環境変化に加え、既存領域における事業の更なる拡大と成長4領域の取組促進による事業変革を見据え、キャリア採用の拡大やDX人財育成の更なる加速に取り組みます。また、従業員の心身の健康は働く上での基盤と捉え、従業員のWell-being向上を通じて潜在的なリスク低減にも取り組んでいます。

 

(4)指標及び目標

味の素グループでは4つのつなげる戦略のもと、グループの志に共感して集まった多様な従業員一人ひとりが、コンフォートゾーン、すなわち自身にとって慣れた環境を超えた挑戦を通じて戦略を実行する個の力を磨き、その力を活かし「知・経験×属性」の観点から多様性(DE&I)を推進することで、チームとしての実行力を高めて参ります。「戦略と人財を挑戦でつなげる」取組においては、味の素(株)では手挙げ異動強化や手挙げでの組織横断プロジェクト参加の枠組(TRY&A-CROSS)導入など、従業員がコンフォートゾーンを超えて挑戦する機会提供を強化しております。グループグローバルでは日本以外の国の法人間でも人財交流を推進しており、グループ全体でエンゲージメントサーベイにおける挑戦に向けた行動変容「自分にとって挑戦と思えることを1つでも達成できたと答えた人の割合」は89%と高スコアであり、従業員の高い挑戦意欲を確認しています。さらなる挑戦文化の醸成に向けて、手挙げの取組のグローバルへ展開も進めてまいります。

また、挑戦で磨いた個の実力をチームの実行力に変える「グローバルで多様な人財をつなげる」においては、味の素グループのリーダーシップ層(執行役・執行理事・GEM)128ポジションにおける性別、国籍、所属籍等の観点での多様性が2024年度は25%と順調に推移しています。対象ポジションにおいて、Ready(1年~3年)、Next(5年以内)、Future(8年以内)の期間でサクセッションプランを作成しており、引き続き取組を強化して参ります。また、外部の知・経験を獲得するキャリア採用においても、味の素(株)では「年間入社者のうち、キャリア採用の比率」は、2024年度は49%と前年同水準ではありますが、人数は前年比122%と強化しております。しかしながら、日本国内においては特に女性管理職の母集団形成が課題と捉えています。味の素(株)の女性管理職率は14%と前年と同等水準に留まりました。エンゲージメントサーベイの設問「私は、上位の職位につくことを打診されたならば、そのオファーを受けたいと思う」では、好意的な回答数が男性70%に対して女性53%と男性と女性で差がありますが、半数を超える女性が上位の職位への意欲を示しており、20代~30代女性では65%となります。一方で、女性管理職活躍の阻害要因調査を実施したところ、現場における「DE&Iの意義・目的浸透不足」や「各職場の実態にあったKPI設定の必要性」が確認されました。これらの課題に着手し、意欲ある女性の支援をさらに推進して参ります。

 人財戦略の基盤となる「Well-beingと従業員をつなげる」においては、Well-beingに関するエンゲージメントスコア(心身の健康、報酬への納得感、働く環境等に関する計7設問の平均点)が84%と高スコアでした。引き続き、「味の素グループで働いていると、自然に健康になる」を目指す姿として、社員と家族の健康寿命延伸に向けた味の素グループ健康白書(健康でいるための約束)をグローバルに展開しエンゲージメントでその進捗を確認しております。

人的資本に関する主たる指標

対象

2023年度

実績

2024年度

実績

2025年度

目標値

2030年度

目標値

従業員エンゲージメントスコア

(ASV実現プロセスの9設問の平均値)

グローバル

76%

76%

80%

85%

 

持続可能なエンゲージメントスコア

グローバル

85%

88%

89%

90%

挑戦

手挙げでの異動比率(注)1

()内は公募による異動比率

味の素㈱

41%

(7%)*10

45%

(8%)

50%

(11%)

70%

(20%)

 

自身にとって挑戦と思えることを

1つでも達成できたと答えた人の割合

味の素㈱

89%

90%

90%

多様性

リーダーシップ層の多様化(注)2

グローバル

22%*10

25%

27%

30%

 

女性管理職比率

グローバル

27%(注)3

27%

30%

40%

 

 

味の素㈱

14%

14%

16%

30%

 

1年間で入社する従業員の内、キャリア採用で入社する従業員の比率

味の素㈱

48%

49%

50%

50%以上
(2024~)

 

全従業員の内、キャリア採用で入社した従業員の構成比

味の素㈱

17%*10

19%

20%

30%

従業員

Well-beingに関する

エンゲージメントスコア

グローバル

83%

84%

85%

90%

Well-

being

プレゼンティーズム

(仕事の生産性)の改善

味の素㈱

74%

74%

74%

75%以上

 

アブセンティーズム

(病欠)の低減

味の素㈱

2.4日

2.3日

2.2日

1.8日

*10 一部集計見直しの為修正

(注) 1 手挙げでの異動比率:全異動件数に対し、「従業員が自身でえがいたキャリアプラン通りの異動件数」と「公募による異動件数」の合算が占める比率を手挙げでの異動比率としてモニタリング開始

(注) 2 リーダーシップ層の多様化:味の素グループ執行役、執行理事、Group Executive Managerにおける多様性

(注) 3 海外グループ会社におけるチームリーダー職を管理職から一般職に区分変更したことによる修正

(5)2024年度の人的資本経営に関係する外部機関等からの評価

健康経営優良法人(ホワイト500)

「なでしこ銘柄」

PRIDE指標(ゴールド)

健康経営優良法人:2017~2024年まで8年連続認定

選定歴:2016年、2017年、2021年、2022年、2023年、2024年(2019年、2020年「準なでしこ」に選定)

認定歴:2020~2024年 5年連続認定