2026年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

(1)味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に関わるリスクと機会

 味の素グループは、「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」ことを志(パーパス)として掲げ、サステナビリティをASV経営の根幹に位置づけています。この考え方を踏まえ、6つの重要テーマ(マテリアリティ)に対し、16のトピックを特定し、組織横断的な管理が必要なグループ全体のリスク及び機会を下表のとおり整理しました。

 

 トピック、リスク及び機会の特定においては、影響と発生可能性、志(パーパス)及び事業戦略との関連性、経営リスク委員会における影響評価の結果を考慮しています。具体的には、SASBスタンダードにおける開示トピック(「加工食品」「バイオテクノロジー・医薬品」「半導体」)を参照の上、開示トピックでは捕捉しきれないマクロ環境の変化も補完するため、世界経済、地政学、規制動向、技術動向及び業界動向等に関する外部レポートも参照しました。その上で、味の素グループの事業特性及び事業環境の不確実性を加味してトピックを定め、リスク及び機会となり得る事象の調査及び分析を行いました。なお、これらの特定及び判断は、本有価証券報告書作成時点で入手可能な情報及び合理的と考える前提に基づくものです。今後、当社グループを取り巻く事業環境や事業内容等の変化に応じて、定期的な見直しを行います。サステナビリティ委員会と経営リスク委員会の役割に関しては、サステナビリティに関する考え方及び取組の(1)ガバナンスを参照下さい。

 

6つの重要テーマ

トピック

リスク

機会

持続可能な地球環境の実現

気候変動の深刻化による食糧不足

気候変動の進行に伴う異常気象や災害の頻発に伴い、農畜産物への被害が増加し、原材料の調達価格・物流費が上昇するリスク

脱炭素制度の進展

農業・畜産事業者の脱炭素規制対応コストの増加により、価格転嫁や生産縮小に伴う供給減を通じて、原材料の調達価格が上昇するリスク

脱炭素制度の進展に伴い、農業・畜産事業者の排出削減ニーズが高まり、温室効果ガス削減に資するAjiPro®-L等の製品・サービスの売上の増加につながる機会

脱炭素制度の進展に伴い、炭素税が導入されることで、低炭素製法で製造するMSG*1等の競争優位性が高まり、売上増につながる機会

*1 Monosodium Glutamate

淡水資源制約・使用規制の強化

淡水資源の枯渇進行を背景とする水コスト上昇に伴い、調達コストの上昇や取引先の生産停滞に連動した売上が低下するリスク

 

 

 

 

 

食を通じたウェルビーイングの実現

政府の農業支援(スマート農業等)や食糧安全保障政策

政府支援により、生産性向上と供給の安定化・効率化が進むことで、主要原材料の調達単価や緊急調達・輸送等の付随コストが低減し、原価改善につながる機会

人口増加によるたんぱく質クライシス

世界的な人口増加に伴う動物性たんぱく質需要の急拡大により供給が逼迫し、食肉調達価格や食肉使用製品の原価が上昇するリスク

世界的な代替たんぱく質の需要拡大により、代替たんぱく質の製造に必要な培地・アミノ酸等の関連事業の拡大及び売上増加につながる機会

ウェルビーイング志向の高まり・需要動向の変化

(※本トピックは、「食を通じたウェルビーイングの実現」「先端医療・予防への貢献」の両重要テーマに関連)

心身両面の健康・ウェルビーイング志向の高まりに伴い、食品の栄養成分表示等への対応コストが上昇するリスク

心身両面の健康・ウェルビーイング志向の高まりに伴い、基準や規制等に沿った製品・サービスの売上増加につながる機会

先端医療・予防への貢献

心身両面の健康・ウェルビーイング志向の高まりに伴い、先端医療分野(肥満症治療薬等)における売上の増加につながる機会

創薬エコシステム体制を含む医薬品業界の事業構造の変化

医療費の抑制を目的とした規制変化に伴う、CDMOの生産・供給体制の変化により、CDMO事業の受注・収益の増加につながる機会

スマートソサエティの進化への貢献

半導体を巡る安全保障政策の動向や競合技術の進化

各国における調達先多元化や国産化要件、競合の技術革新に伴い、当社素材の代替技術が普及し、製品の顧客採用率低下及び市場シェア低下により売上が減少するリスク

世界的な半導体需要拡大

デジタル化・AI普及を背景とした半導体の需要拡大に伴い、ABF®*2の販売数量が増加し、売上の拡大につながる機会

*2 Ajinomoto Build-up Film

多様な価値観・人権の尊重

人的資本市場の変化

労働市場の変化に伴い、AGWを体現する人財の採用・育成が計画どおりに進まない場合、イノベーション推進の停滞を通じて競争力が低下するリスク

労働市場が変化する中、AGWを体現する人財の採用や育成戦略の実現によって、イノベーションや新規テーマの創出が進み、競争力が向上する機会

工場運営の人財確保の困難により、現場の実行力が低下し、操業体制の維持・技能継承にかかる人件費が上昇するリスク

価値観や思想、嗜好の多様化

ハラール・ビーガン等の多様な社会的ニーズに対応するための認証取得、原材料管理・製造要件・表示対応等のコストが増加するリスク

ハラールやビーガン等、多様な価値観を持つ新たな顧客層の獲得により、関連製品の売上の増加につながる機会

 

 

経営基盤の強化

外部からのサイバー攻撃

基幹システム停止により業務が滞るリスク

情報詐取・漏洩により多大な損失が生じるリスク

結果として企業の信頼を毀損するリスク、訴訟などの法的責任を負うリスク

地政学的対立とグローバル規模の貿易戦争

地政学リスクの顕在化による従業員の安全が脅かされるリスクと、サプライチェーンが寸断されるリスク

輸出入における高関税による価格競争力低下、売上減少リスク

競合企業に対して当社製品の競争力が相対的に高まり、販売が拡大する機会

台湾海峡問題のエスカレーション

従業員の安全及び事業継続に対するリスク

特定地域からの原料調達が困難となるリスク

シーレーンの安全確保のため原材料コストが上がるリスク

甚大な自然災害の発生

災害発生地域の従業員の安全及び事業継続に対するリスク

サプライチェーン寸断のリスク

AI技術の高度化

AIの高度活用をする他社と比べ競争劣位に陥るリスク

AIの活用に伴い生じる、機密秘密の不正流出、フェイク情報の拡散、AIガバナンスの不十分さによる法規制違反、倫理上の問題、誤った経営判断等の発生リスク

AIの高度活用を深化させることで、業務効率化や生産性向上に加え、研究開発や事業戦略、リスクマネジメントにおける分析及び意思決定の高度化が進み、さらに、イノベーションの創出を促進することにより、中長期的な競争優位の強化につながる機会

 

(2) 味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に関わる対象領域、取組みと目標・KPI

 「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)」に記載のとおり、現在の味の素グループが取り組む6つの「重要テーマ」①「持続可能な地球環境の実現」②「食を通じたウェルビーイングの実現」③「先端医療・予防への貢献」④「スマートソサエティの進化への貢献」⑤「多様な価値観・人権の尊重」⑥「経営基盤の強化」に対して、対象領域、取組み及び目標・KPIは以下になります。

 

6つの重要テーマ

対象領域

取組み

目標・KPI

持続可能な地球環境の実現

気候変動

緩和と適応

・温室効果ガス排出削減

 -2030年度:スコープ1+2  50.4%削減(対2018年度)

       スコープ3    30%削減(対2018年度)

       スコープ3 FLAG 36.4%削減(対2018年度)

 -2050年度:ネットゼロ、電力再生可能エネルギー化100%(対2018年度)

 -飼料用アミノ酸を活用したソリューションの提供による、牛由来の温室効果ガス排出削減(政府、地方自治体、乳業・畜肉メーカーとの連携によるエコシステムの構築)

・持続可能な農業への貢献

 -バイオスティミュラント製品の展開拡大(肥料削減による温室効果ガス削減(緩和)、環境ストレス耐性の向上(適応)、収穫物の品質向上、劣化土壌の改善)

 -バイオサイクル(循環型アミノ酸発酵サイクル)の拡大

・環境負荷の低い食品素材や製法で作られた食品・素材の提供と生活者の行動変容促進(細胞性食品や精密発酵などの技術開発、バイオマス発酵やプラントベースを用いた食品開発)

自然資本

生物多様性保全

・TNFDの情報開示フレームワークに基づいた情報開示

 -SBTi for Natureに沿った評価・優先順位の検討

森林破壊防止

・森林破壊ゼロ

 -対象原材料:パーム油、大豆、牛肉、紙、コーヒー

水資源の保全

・水使用量削減

 -2040年度:15%削減(対2018年度)

持続可能な調達

・重要原料の持続可能な調達比率100%

 -2030年度:対象原材料:紙、パーム油、大豆、コーヒー豆、牛肉、サトウキビ

・アニマルウェルフェア向上の推進

サーキュラーエコノミー(循環経済)

廃棄物ゼロエミッション

・資源化率

 -99%以上維持

プラスチック廃棄物削減

・プラスチック廃棄物削減

 -2030年度:ゼロ化

・当社マイクロプラスチック代替素材を活用したパーソナルケア製品の提供による生活者の行動変容促進

フードロス削減

・フードロス削減

 -原料受け入れからお客様納品まで50%削減継続(対2018年度)

 -2050年度:製品ライフサイクル全体で50%削減(対2018年度)

 -レシピ等情報発信や地域(行政、流通等)との連携による家庭内フードロス削減への貢献

 -当社業務用(BtoB)製品を活用した、顧客におけるロス削減

 

 

食を通じたウェルビーイングの実現

健康・栄養

食を通じた健康・栄養課題の解決

・栄養バランスのとれた食生活への貢献(2030年度)

 -栄養バランスの良い*3 製品を年間21億食提供

    *3 Health Star Rating(HSR)ランク3.5以上

 -減塩した調味料により年間11億食分の減塩に貢献

 -甘味料により年間7億人の減糖に貢献

 -栄養バランスの良いメニューの提供

 -栄養に役立つ情報の発信

・こころの豊かさへの貢献

 -調理、共食のWell-beingへの貢献を可視化し指標化を目指す。その知見をブランド価値向上につなげる

先端医療・予防への貢献

治療・予防

の進化

・アミノ酸の生理機能や栄養機能を活用した製品の利用機会拡大

 -2030年度:2倍(対2020年度)

・メディカルフード領域の強化

 -2030年度:提供数2倍(対2024年度)

・輸液等医薬品向けの高品質な医薬用アミノ酸の安定供給

・培地や先端医療素材のサービスソリューション提供型ビジネスへの進化

・バイオ医薬品開発製造受託サービスの強化及び領域拡大

スマートソサエティの進化への貢献

先端半導体パッケージ

材料提供・エコシステム創出を通じた先端半導体進化

・半導体の進化に貢献するイノベーション創造のスピードアップと先端材料の提供拡大、半導体バリューチェーンにおける共創エコシステムの強化

・光電融合分野などの先端半導体分野における技術及び材料の開発の実現

多様な価値観・人権の尊重

人権

責任ある雇用

・国際基準に則った人権・環境デュー・ディリジェンスの着実な推進

 -サプライチェーン上の取組み

  深掘性:国別人権リスク評価結果に基づく人権影響評価の実施、及び予防・是正措置、モニタリング

  網羅性:「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」に基づくサプライヤーの実態把握及び改善に向けた伴走、モニタリング

 -グループ従業員の取組み

 -グループ法人(製造サイト)における人権リスク抽出と実態把握

  グローバルグループ法人における実施率:2026年70%以上、2030年100%

 -上記に基づき適切な予防・是正措置の実施

経営基盤の強化

人的資本

人財の活用

・ASV実現プロセスESスコア

 -2030年度:88%

・リーダーシップ層の多様化ダイバーシティ

 -2030年度:30%

・女性管理職比率

 -2030年度:40%

・挑戦する人財の促進

 -「ASVアワード」の推進

・従業員のリテラシー向上

 -環境、健康・栄養、人権、DX などのリテラシー向上施策の展開

事業環境変化

レジリエンス強化

・経営インテリジェンス機能の強化による、将来からバックキャストした経営リスク・機会の検討と戦略への活用

・グローバルな品質保証システム、戦略的知財ポートフォリオ構築

・コンプライアンス意識向上のための継続的な施策

・安全衛生に関するアセスメント・監査・点検の継続実施

・減損や為替・金利変動リスクの極小化、柔軟な資金調達によるリスク軽減

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の配当を行うことを基本方針としており、中間配当は取締役会、期末配当は 株主総会において決定いたします。なお、法令に別段の定めがある場合を除き、剰余金配当その他会社法第459条第1 項各号に掲げる事項を、取締役会の決議により定めることができる旨を定款に規定しております。期末の剰余金配当 については、上記の通り定款に規定しておりますが、感染症および天変地異等により株主総会の開催および運営に影 響を及ぼす場合を除き、株主総会の決議によることを原則としております。

 「中期ASV経営 2030ロードマップ」において「累進配当政策」を宣言し、減配せず、増配または配当維持の方針を示しており、当期(2026年3月期)の株主配当は、前期より8円増配となる、1株当たり年間48円(うち中間配当金24円)を予定しております。併せて、減損損失の計上等、非定常的な利益変動の影響を受けにくい事業利益をベースとする「ノーマライズドEPSに基づく配当」(注)を当社の標準的な配当計算方法として位置付けています。

 事業利益を着実に増加させることで、今後も更なる増配を図ります。なお、3か年の総還元性向は50%以上(対親会社の所有者に帰属する当期利益)としております。

 これらを踏まえ、次期(2027年3月期)の株主配当につきましては、当期より年間で2円増額となる、1株当たり年間50円(うち中間配当金25円)を予定しております。

 なお、内部留保金はオーガニック成長を最優先にし、次にM&Aで事業成長を推進します。その上で、ネット有利子負債/EBITDA倍率<2.0倍の範囲内で機動的に自己株式取得を行います。

 

(注)ノーマライズドEPSに基づく配当=(事業利益×(1-味の素グループ標準税率27%))÷発行済株式総数×還元係数35%

 

 

当期に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2025年11月6日

23,350

24

取締役会決議

2026年6月19日

23,021

24

定時株主総会決議(予定)