リスク
3 【事業等のリスク】
(1) 三菱電機グループのリスクマネジメント体制
三菱電機グループは、各部門及び国内外の関係会社が主体的にリスクマネジメントを遂行することに加えて、三菱電機の各コーポレート部門(リスク所管部門)がそれぞれの専門領域において各部門及び国内外の関係会社を統括/評価し、更にCRO(Chief Risk Management Officer)及び法務・リスクマネジメント統括部がグループ全体を統括することによって、適切かつ迅速な判断が可能な体制を構築しています。
各種のリスクについてグループ全体の経営に与える影響度に応じた重点付けを行いながら、大規模災害や社会的リスクなどの従来型リスクへの対応にとどまらず、経済安全保障、AI等の技術革新、サステナビリティなどの分野における新たなリスクに対する探索と備えも含めて、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会で経営判断し、機動的かつ戦略的に推進します。特に経営の監督と執行にかかわる重要事項については、取締役会、執行役会議において審議・決定します。
(2) 事業等のリスク
三菱電機グループは、海外向け売上高比率が5割超を占め、幅広い事業分野で「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を目指しています。また、顕在化した各種コンプライアンス事象を真摯に受け止め、内部統制システムの改善等に取り組んでいます。
事業の遂行に当たっては、様々な要素が三菱電機グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。具体的に三菱電機グループの財政状態及び経営成績や、投資家の判断に影響を及ぼす可能性がある要因のうち、主なものは以下のとおりです。
①地政学的リスクの高まりによる社会・経済・政治的混乱の影響について
ウクライナや中東等をめぐる国際情勢の緊張の高まりは、地政学的リスクのレベルを引き上げ、社会情勢を不安定化させるとともに、世界経済の回復に対しても減速をもたらしています。また2024年に主要各国・地域で行われる選挙の結果が多国間・二国間の政治・経済関係に影響を与えることなどにより、企業にとって予見困難なリスク顕在化の可能性が増しています。
三菱電機グループは、社会インフラから家庭電器まで広範な領域で事業を展開し、海外向けが売上高の5割超を占めています。また、日本国内向けの売上には国内で利用される製品だけでなく、顧客の製品に組み込まれて海外に輸出される製品も含まれています。地政学リスクの高まりによる社会・経済・政治的混乱により、当社製品の需要や、当社製品を組み込んだ顧客の製品の販売動向が変化した場合には、三菱電機グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうした各国の経済安全保障政策の急激な変化に対応すべく、政策動向や法制度の調査・分析、全社における機微技術管理、情報セキュリティ、投資、開発、サプライチェーン等に関わる経済安全保障の観点から見た統合的なリスク制御を行っています。
②サプライチェーン(部材調達)環境の変化について
半導体は、足元では需給緩和状況にあるものの、PC・スマートフォンの底打ちや生成AI向けの需要増を背景に、今後再び逼迫懸念が生じる可能性があります。また、感染症・自然災害等による供給混乱、各種経済安全保障規制の拡大、人権課題への対応など、サプライチェーンの強靭化が必要となっていることに加え、特定の国・地域の緊張関係によるサプライチェーンへの影響等も想定されます。
これらの状況も踏まえ、三菱電機グループは、適正価格での部材調達に基づくレジリエントなサプライチェーン構築に向け、様々なリスクに対応可能な調達BCP対策を推進し、競争力ある製品・サービスを継続的に市場に供給して参ります。
③情報セキュリティを取り巻く環境について
三菱電機グループの顧客・ステークホルダーの皆様からお預かりした情報、営業情報や技術情報、知的財産などの企業機密が、コンピューターウイルスの感染や不正アクセスその他不測の事態により、滅失もしくは社外に漏洩した場合、または工場の生産に影響を与えるようなサイバー攻撃事案が発生した場合は、三菱電機グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。加えてソフトウエア又はハードウエアの大規模障害、三菱電機グループ及び三菱電機グループ管理外のシステムに未知の脆弱性があった場合や外部事業者が提供する情報通信サービスの停止、大規模災害等により、情報システムが機能不全に陥る場合は、三菱電機グループの事業が影響を受ける可能性があります。また、当社が顧客に納入した製品に未知の脆弱性があった場合、顧客の提供するサービス及び社会に大きな影響を与える可能性があります。
かかるリスクの増大への対応として、情報セキュリティ基盤強化活動を推進し、巧妙かつ多様化する最新のサイバー攻撃パターンへの対策強化及びレジリエントな情報システムの維持・強化を進めていきます。また、人的情報漏洩防止策の強化も含めて機密情報の保全を図ります。
④技術革新の加速と競争の激化について
技術革新(ゲームチェンジ)の加速と競争の激化に伴い、国際的な法規制や社会的な価値観、社会構造が変化し続けています。そのような不確実性が高まる事業環境の変化を踏まえ、国際的な法規制を遵守しリスクを抑えつつ、チャンスに変えていく迅速かつ柔軟な対応が求められています。
三菱電機グループは、これらの変化に耐えうる強固な経営基盤を構築します。研究開発においては、大学など社外研究機関との連携や、顧客との共創などを通じて、グループ内外の知見を融合することにより未来社会をデザインし、新しい価値のタイムリーな創出を図ります。
⑤人権に関する法規・規制及び社会的要請等の高まりについて
三菱電機グループは、人権に関して以下のリスクを認識しています。
・各国で制定が進む企業に人権の取組みを求める法令に適時適切に対処しなければ法令違反となるリスク
・人権侵害に加担した企業とみなされた場合に企業に課される経済制裁リスク
・人権侵害に関わる企業への信頼の低下などのレピュテーションリスク
かかるリスクに対し、三菱電機グループとして国連「ビジネスと人権に関する指導原則」など国際規範に基づく取組みを強化しています。
また、グローバルサプライチェーンにおいて社会的責任を推進する企業同盟であるRBA(Responsible Business Alliance)のプロセスを積極的に活用するなど、三菱電機グループのバリューチェーンにおける人権デューデリジェンスの取組みを加速・強化します。
⑥持続可能な地球環境の実現に関する法規・規制及び社会的要請の高まりについて
三菱電機グループは、地球環境リスクのうち気候変動に係るリスクを最優先に対応しています。気候変動に係るリスクは、脱炭素社会への移行に関連するリスク(移行リスク)と、温暖化が進展した場合の物理的影響に関連するリスク(物理的リスク)に大別されます。これらのリスクは、費用の増加(生産・社内管理・資金調達コストなど)、収益の減少などを招くおそれがあります。
かかるリスクに対し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿って、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の観点から事業運営を強化します。事業のリスクを制御するとともに機会創出に取り組み、社会課題の解決を促進します。
⑦感染症・大規模災害(地震、津波、台風、水害、火山噴火、火災)等の影響について
三菱電機グループは、製造・販売拠点、研究開発拠点、及び本社を含む主要施設を日本国内外に多数有しており、感染症や大規模災害(地震、津波、台風、水害、火山噴火、火災)等により三菱電機グループの拠点が被害を受けることで、事業活動が中断する可能性があります。また、サプライチェーンの混乱に伴い調達、生産、物流等に影響が生じ、多額の損失が発生する可能性があります。
これらに対し、三菱電機グループは感染症や大規模災害等の緊急事態の際は、全社緊急対策室を設置し、全社の情報を一元管理するとともに、各事業拠点単位での安全確保と事業活動の復旧・継続(BCP)に取り組みます。また、安定調達に向けたサプライチェーンを構築し、BCPを強化していきます。
⑧製品やサービスの品質及び関連するコンプライアンスリスクについて
製品やサービスの欠陥や瑕疵等による損失計上や、関連するコンプライアンス違反の発生による社会的評価の低下等は、経営全般に影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクに対し、品質保証体制を強化するとともに、予防機能を重視した実効的な内部統制システムを構築していきます。
⑨金融市場(為替相場、株式相場)リスクの影響について
上記①~⑧項で示した複雑化する各個別リスク、あるいはそれらの複合リスクにより、為替相場、株式相場が影響を受ける場合、三菱電機グループは、以下の影響を受ける可能性があります。
<為替相場>
三菱電機グループの売上は北米、欧州、中国がおよそ10%ずつを占めていることに加え、当社における米ドル建てやユーロ建てでの輸入部材購入、アジア地域の製造拠点における当該地国以外の通貨建て輸出売上や輸入部材購入があります。
為替予約等により為替の変動の影響を回避するようにしていますが、為替レートの急変により、当社の想定している為替レートから大きく変動すると、三菱電機グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
<株式相場>
三菱電機グループは、「政策保有株式は原則保有しない」という考え方を基本方針としていますが、一方で、事業運営上、必要性が認められると判断した株式については保有することがあります。株式相場の下落は、三菱電機グループが保有する市場性のある株式の価値の減少や、年金資産の減少をもたらす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、保有株式については、採算性、事業性、保有リスク等の観点から総合的に保有意義の有無を判断し、毎年、執行役会議及び取締役会にて検証・確認を行っています。保有意義が希薄と判断した株式は、当該企業の状況等を勘案した上で売却を進めるなど縮減を図ることとしています。
なお、上記における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社が判断したものです。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、企業価値の向上を究極目標としつつ、当該年度の収益状況に応じた利益配分と内部留保の充実による財務体質の強化の両面から、総合的に株主利益の向上を図ることを基本方針としています。
また、当社は原則として中間配当及び期末配当の年2回の剰余金の配当を行う方針です。
剰余金の配当の決定機関は、取締役会です。
2023年度は、当事業年度の業績と財務体質の状況を勘案し、剰余金の配当(期末配当金)を1株当たり30円とし、中間配当金(1株当たり20円)とあわせ、年間配当金は1株当たり50円としました。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
|
2023年10月31日 |
取締役会決議 |
42,009 |
20 |
2024年 5月 9日 |
取締役会決議 |
62,702 |
30 |