リスク
3 【事業等のリスク】
(1) 当社グループのリスク管理
① リスク管理の基本方針
当社では、リスクマネジメントを経営上の重要課題と認識し、取締役会で決定した基本方針のもとリスクマネジメントの体制と管理手法を整備しております。「リスク」を「事業戦略及びビジネス目標の達成に影響を与える不確実性」と定義し、リスクを適切にコントロールすることで積極的な投融資・事業拡大による事業成長の基盤と位置づけ、経営の健全性確保と企業価値の維持・向上、経営資源の保全と有効活用、安定的な事業継続と事業成長、ステークホルダーの信頼性の維持・向上、役員・従業員等の安全確保・健康確保を目的としております。また、リスクマネジメントの基本方針に基づいて計量化に基づく管理を推進し、定量的に把握可能な重要リスクについては、連結ベースで最大損失額をもとにリスクアセットを算出し、株主資本(リスクバッファー)の範囲内にコントロールしております(2026年3月期のリスクアセット率は5~6割程度)。そして、経営上重大な影響のあるリスクを「トップリスク」として位置づけるほか、複数のストレスシナリオにおける影響度を取締役会に報告しております。
② リスク管理体制
当社では、管理部門統轄役員をリスクマネジメントの統轄責任者としたうえで、リスクマネジメント部を設置し、連結ベースでの統合的なリスクマネジメント体制を構築しております。リスクマネジメント部は、関係部署と連携し個別リスクを管理・モニタリングするとともに、定量的に把握可能なリスクについては、グループ全体のリスク量を経営会議、社長及び取締役会に定期報告しております。また、COSO-ERMフレームワークが推奨する3ラインモデル(スリーライン・ディフェンス)に基づき、第1線(営業部門・子会社)がリスクの特定・評価・対応を、第2線(リスクマネジメント部)が独立した立場で基本原則・枠組みの策定及び第1線への牽制・モニタリングを、第3線(監査部)が独立した立場で態勢の適切性・実効性を検証し、監査等委員会・社長・経営会議に報告・改善提言を行う体制を構築するものとしております。信用・カントリー・与信・事業投資・市場、安全保障貿易管理等、各種リスク等のうち、当社グループにおいて特に集中的に管理すべきリスクを重要リスクと位置づけ、リスクマネジメント部が統括管理し重要事項は取締役会で決定・継続監督されます。また、健全なリスクカルチャーの醸成・浸透を図るため、教育・訓練及びリスク情報の共有を継続的に行っております。
<当社のリスク管理体制>
(2)主要なリスクの概要
① マクロ経済環境の変化に関するリスク
当社グループの全世界における営業収入は、当社グループが商品を取り扱っている国又は地域のマクロ経済環境の変化の影響を受けます。従いまして、日本、アジア、米州、欧州、アフリカ等を含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小などは、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② カントリーリスク
当社グループは、アジア市場や米・欧州等の市場において積極的な事業展開を行っております。これら海外市場での事業展開には、貿易保険によるリスク抑制策を講じていますが、予期しない法律又は関税などの貿易取引規制の変更、不利な政治的・経済的変動や国際通貨の変動、企業活動にとって不利な税制度への変更、現地におけるインフラの未整備、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しております。これらの事象が顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 商品市況リスク
当社グループでは、鉄鋼製品、金属原料、非鉄金属、食品及びエネルギー製品・生活資材等について、市況商品を扱い、一部で流通在庫を有しております。当社グループは、過去の市況変動データに基づく統計的手法により、将来のある一定期間のうちに被る可能性のある最大損失額を計測し、商品の価格変動リスクの把握に努めております。また、市況の変動が大きくなった場合に備え、必要に応じてポジション枠や損失限度枠等を設定することとしておりますが、需給状況や為替動向、時には地政学的な環境の変化が市況に与える影響が大きく、市況の変動への適切な対応ができなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、非鉄地金や石油製品等については、商品先渡取引や商品スワップ取引を利用して相場変動等のリスクヘッジに努め、内部規程に基づき、その評価損やリスク枠の上限等を設定のうえ管理しておりますが、ヘッジポジションの状況や商品在庫の種類、相場の急激な変動等によっては、リスクの軽減効果が十分には得られないことや期末の時価会計処理による評価損の発生、追加の証拠金拠出による資金流出等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 為替リスク
当社グループの事業には、全世界における商品の仕入と販売が含まれております。各地域における収益、費用、資産、負債を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算しております。換算時の為替レートにより、これらの項目の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に他の通貨に対する円高(特に当社グループの売上の重要部分を占める米ドルに対する円高)は当社グループの輸出取引に対しては悪影響を及ぼしますが、輸入取引には好影響を及ぼし、円安は輸入取引に対しては悪影響を及ぼしますが、輸出取引には好影響を及ぼします。なお、当社グループでは、先物為替取引、通貨スワップ取引及び為替スワップ取引等を利用し為替変動のリスクヘッジに努めておりますが、期末における為替ポジションの状況や外貨建資産・負債の保有状況によってはリスクの軽減効果が十分には得られない場合があります。
⑤ 金利リスク
当社グループは、営業取引及び投融資活動において、金融機関からの借入及び社債等資本市場からの資金調達を行っております。このうち変動金利による調達につきましては、一部に金利スワップ等を利用して金利変動のリスクヘッジに努めておりますが、今後の金利動向によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率や長期期待運用収益率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されており、数理計算上の前提条件の変更や実際の結果との乖離、割引率の低下、運用利回りの悪化等による退職給付債務の増加を通じて、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 上場有価証券の価格変動リスク
当社グループは、取引先を中心に国内外で市場性のある株式等の上場有価証券を保有しており、上場有価証券の価格変動リスクを負っております。このため、保有する上場有価証券の価格の動向によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、個々の保有株式等については、毎年定期的に取締役会及び経営会議において、取引や配当による投資リターン、資本効率、保有目的等に照らして保有の適否を総合的に検証しております。保有する意義が乏しいと判断された株式等については、適宜売却を進めております。
⑦ 信用リスク
当社グループの事業における売上債権等の大部分は、取引先ごとに一定の信用を供与し、掛取引を行ったものであり、売掛債権、前渡金、貸付金、保証その他の形で信用供与を行っております。信用供与に際しては、各取引先に対して与信限度額を設定し、必要に応じて信用保険の付保等を行い、エクスポージャーの集中状況等を含めて厳格かつ機敏な与信管理を通じ、リスクの低減を図っておりますが、必ずしも全額の回収が行われるとは限りません。また、社内格付に応じた予想倒産率や倒産時の損失率、デフォルト時のエクスポージャーを勘案し、最大損失額の計測を実施しておりますが、経済的状況や事業環境、国際的・地政学的な環境の急激な変化により、取引先の不測の倒産・民事再生手続等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 事業投資リスク
当社グループは、既存事業の強化や事業領域の拡大等を図るための事業投資を行っております。これらの投資に際しては、投資等審査委員会において検討を行う等、投資内容や投資金額に応じた所定の手続きを経て実行の是非を決定しております。投資実行後は計画の進捗状況等について定期的に一括して分析を行うと共に、分析の結果、特に注意を要すると考えられる投資先については集中的なモニタリングを実施しておりますが、投資先の企業価値の低下や所期の投資採算が確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、開発型案件や資源分野等については、需給バランス、市況、生産コスト等の変動が大きく、当該投資から得られる収益のボラティリティは他の投資に比べると高い傾向があります。
⑨ 資金調達リスク
当社グループは、営業取引及び投融資活動において、金融機関からの借入及び社債等資本市場からの資金調達を行っております。資金調達に当たっては、資金需要見通しに基づき、手元流動性の確保に努めておりますが、国内外の金融市場の混乱や金融規制の変更、当社グループへの信用格付の引き下げ又は金融機関の融資方針の変更など調達環境に大きな変化が生じた場合、資金需要の急激な増加が発生した場合、一部の借入契約に付されている財務制限条項に抵触した場合などには、資金調達の制約や調達コストの増加などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。財務制限条項の詳細については、「第2 [事業の状況] 5 [重要な契約等](借入契約における財務制限条項)」をご参照ください。
⑩ 法的規制等に関するリスク
当社グループは、事業を展開する各国において、事業・投資の許認可、国家安全保障又はその他の理由による輸出入及び販売制限、関税をはじめとするその他の貿易取引規制等、様々な政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止、特許、租税、為替管理、食品の安全規制、環境・リサイクル関連等の法規制の適用も受けております。特に貿易関連の法的規制については専門部署を設置し、体制を強化しておりますが、これらの規制により、当社グループの活動が制限される可能性があるだけでなく、規制への対応がコストの増加につながる可能性もあります。従いまして、これらの規制は当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ コンプライアンスリスク
当社グループは、国内、海外において多岐にわたる分野で事業活動を行っており、その遂行において、それぞれの国・地域の会社法、税法、独占禁止法、金融商品取引法、贈収賄防止規制、安全保障貿易管理、各国の輸出管理規制、各種経済制裁等への遵守をはじめとする様々な法令、公的規制、社会規範規程の遵守を求められております。万一、当社グループの役職員によりこれらの法令、公的規制、社会規範規程に違反する事象が発生した場合、罰金・課徴金、事業活動の制限(輸出許可取消等)、取引先からの取引停止、損害賠償等の関連する費用の発生、社会的信用の失墜等を通じて、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 税務に関するリスク
当社グループは、アジア市場や米・欧州等の市場において積極的な事業展開を行っており、日本及び諸外国において納税義務を負っております。そのため、将来的に、各国税務当局による課税が強化され、企業活動にとって不利な税制度への変更が行われた場合には、当社グループが納付すべき税額が増加する可能性があります。
⑬ 気候変動に関するリスク
当社グループでは、 TCFD提言に基づくシナリオ分析を通じて、気候変動に関するリスクの識別・評価を行っております。当社グループは、鉄鋼製品、非鉄金属、化石燃料由来の商材等、温室効果ガス(GHG)排出強度の高い商品を主要に取扱っており、気候変動に関する規制の強化(カーボンプライシング、炭素国境調整措置等)、カーボンニュートラル社会への移行に伴う市場環境の変化、自然災害の激甚化等のリスクに晒されております。これらのリスクが顕在化した場合、商品需要構造の変化、調達・物流コストの上昇、保有資産の評価減等を通じて、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、GHG排出量の削減目標(2030年度国内Scope1+2:2021年度比34%削減、2050年度:カーボンニュートラルの実現)を設定のうえ、Scope1,2排出量の削減に取り組むとともに、脱炭素に資する商材の取扱い拡大等により対応しております。
⑭ 人的資本に関するリスク
当社グループの事業継続と成長は、専門性を有する人材の確保・育成・処遇が重要な要素(基盤)となっています。労働市場の構造的な人手不足、世代交代に伴うノウハウ承継の困難、海外拠点における採用と定着の難しさ、ダイバーシティ&インクルージョンへの対応の遅れ等のリスクに晒されております。人材の確保・育成・定着が円滑に進まない場合、専門性の喪失、事業競争力の低下、海外事業展開の遅延等を通じて、当社グループの経営成績及び中長期的な成長に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、Hanwa Business School (HKBS)を中核とするProfessional & Global人材の計画的な育成、健康経営の推進、ダイバーシティ推進等を継続実施しております。
⑮ 情報システム及び情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業遂行のため基幹システム及び各種業務システムを多数運用しており、サイバー攻撃(標的型攻撃、ランサムウェア、サプライチェーン攻撃を含む)、システム障害、人為的ミス、自然災害等のリスクが存在します。これらのリスクが顕在化し、システムの長時間停止、機密情報・個人情報の漏洩、業務継続性の毀損が生じた場合、業務の中断、損害賠償請求、社会的信用の失墜等を通じて、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑯ 品質に関するリスク
当社グループは、鉄鋼製品、金属原料、非鉄金属、食品等の商品を取扱っており、当社グループが提供する製品やサービスの品質については、製造者や委託加工先と共同で適切な検査体制の下に提供しているほか、品質安全環境管理部が所管する品質管理規程に基づいた、適切な仕入先の選定や品質基準の維持がなされておりますが、製品やサービスに欠陥があり、製造物責任賠償やリコール等が発生した場合には、多額の費用負担が発生することや、当社グループの社会的信用や企業イメージの低下を招くなど、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑰ 自然災害等に関するリスク
当社グループは、地震等の自然災害やインフルエンザ等の感染症の発生に備えて、危機管理マニュアルや事業継続計画の整備、安否確認システムの導入、防災訓練などの対策を実施しております。しかしながら当社グループの事業所や社員の活動は広範囲に及んでおり、自然災害等が発生した際にはその損害を完全に回避できるものではありません。想定を超える損害が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様への継続的な利益の還元を経営の最重要政策の一つとして考えております。株主の皆様に対しては安定した配当を継続して実施することを第一義とすると共に、持続的な企業価値の向上に努め、中長期的に配当額の増加を目指してまいります。
また、内部留保金につきましては、経営基盤の強化並びに成長事業・新規事業への積極投資に活用し、当社グループの更なる発展に努めてまいります。
「中期経営計画 2025」の計画期間におきましては、単年度業績の影響を受けにくく、安定的かつ累進的な配当を目指して、株主資本に応じた配当水準を示す株主資本配当率(DOE)を採用しております。期首の連結株主資本に対してDOE2.5%を下限の配当水準とすることに加え、自己株式の取得等による追加の株主還元を柔軟に検討してまいりました。
また、2026年5月12日に発表した「中期経営計画 2028」にてお示ししておりますとおり、DOEの下限を従来の2.5%から3.5%へ引き上げると共に、総還元性向について新たに40%程度を目標に設定いたしました。これらの方針のもと、配当及び自己株式の取得を通じて、株主還元の充実に取り組んでまいります。
当社の剰余金の配当回数は、中間配当と期末配当の年2回を基本的な方針としており、これらの配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会としております。
なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めております。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
期末配当に関する事項は、2026年6月26日開催予定の定時株主総会の決議事項となっております。
※当社は、2026年4月1日付で普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行っておりますが、上記の期末配当金の基準日は2026年3月31日であるため、当該分割前の株式数を基準とした金額を記載しております。