リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの事業その他に関するリスクについて、株主および投資家の皆様の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。以下に記載するリスクが生じることにより、当社グループの業績および財政状態が悪化する可能性があります。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避並びに顕在化した場合の適切な対応に努めてまいります。
なお、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、今後リスク要因が増加する可能性も有しております。
(1) グループ全体または複数事業に及ぶ共通リスク
① 企業福利厚生制度の変遷について
当社グループの主力事業である企業福利厚生分野に関連する事業においては、従来の日本型福利厚生制度ともいえる全従業員へ均等に提供する形態から、欧米型ともいえる成果主義・自己責任に基づく手当支給の形態へと制度を移行する企業も一部にあります。また、日本企業の世界展開が加速する環境の中、グローバル化によって賞与の制度等が欧米型に移行する企業が増加する可能性があります。
当社グループは、日本型福利厚生のアウトソーシングサービスを主力事業としており、今後ともこの事業分野に注力していく方針ですが、海外における福利厚生の事例や制度を研究するとともに、当社独自のメニューの開発等にも力を入れ、今後の福利厚生制度の変遷に対応する対策を行っております。しかしながら、顧客企業の福利厚生制度が欧米型に変遷することなどに当社グループが適切に対応できない場合には、ビジネスモデルの変更などを迫られる可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 法的規制の変更や会計基準改定について
当社グループは、顧客企業やその従業員の皆様に対し不動産取引(仲介・管理・賃貸・販売)、リフォーム・建築、旅行(ホテル・旅館)、物販など様々な分野にわたるサービスを提供しております。
これらの事業運営にあたっては、宅地建物取引業法、建設業法、旅行業法および消防法等の各種免許や許認可等が必要となる他、それら業務手順などにおいても法律や規制の制限を受けております。当社グループは、以下の主要な許認可を含めこれらの許認可等を受けるための諸条件および関係法令の遵守に努めており、現状において当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの事業に関する法令や会計基準等の改変または新設に対し、当社グループが適切に対応できない場合などには、当社グループの事業展開、並びに業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
株式会社リロケーション・ジャパン
また、当社グループの提供するサービスは、会計に係る法律や規則に基づく制限も受けております。情報収集に努めるとともに、監査法人との対話を通じて適宜対応をしておりますが、会計基準等の改変または新設に対し、適切に対応できない場合などには、当社グループの事業展開、並びに業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 個人情報保護について
当社グループでは、物件所有者や入居者、顧客企業の従業員の皆様やホテル利用者、別荘のタイムシェア事業における会員など、多くの個人情報を取り扱っており、それらをデータとして保持・管理しております。
当社グループでは、個人情報の取り扱いに関して厳格なルールと承認プロセスを定め、個人情報を取り扱う業務についてはそれらに基づき運用している他、個人情報に関する定期的な研修を開催し、グループの全役職員への教育を徹底することなどにより個人情報の漏洩防止を図っております。また、業務全般を恒常的にモニタリングする部署を設置し、個人情報の取り扱いに関する指導と不正防止の強化に取り組んでおります。しかしながら、個人情報の漏洩が社会問題ともなっておりますように、万一、何らかの理由により当社グループでそのような事態が発生した場合には、損害賠償や信用失墜といった有形無形の損害を被る可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 人の移動の停滞について
当社グループは、借上社宅管理事業において物件検索等による転居支援を提供するほか、賃貸管理事業においては顧客オーナーに代わり管理物件のテナント募集・仲介を行い、海外赴任支援事業では海外赴任に関わる手続きをサポートしております。これらのサービスは人が移動する際に収益が発生するものであり、天災や紛争、感染症等の影響を受けて移動が制約された場合はサービスに対する需要が低下する可能性があります。
当社グループは、安定的な営業収益の確保に努めており、人の移動に関わらず継続的に得られる収益も一定程度有しております。しかしながら人の移動に制約が生じ、その制約が広範囲かつ長期に及ぶ場合は収益機会等が大きく変動し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 情報通信システムについて
当社グループでは、福利厚生事業におけるシステム投資を通じた成功事例をグループ全体で共有し、他の事業においても従来の利益成長率を上回る成長曲線を描くことを目的に事業基盤整備や業務効率化を企図したシステム投資を継続的に行っております。当社グループのシステム等を統括する専門部署を設置している他、CIO(最高情報責任者)管掌のもと、特に重要な事業会社の取締役に就任することでも各事業会社との連携に取り組んでおります。しかしながら、システム投資の費用が想定より増加した場合、計画策定時に企図した利益目標達成に寄与しない危険性があります。また、システムは当社グループにおける様々な事業運営に内在しており、それらにトラブルが発生し、その影響が広範囲かつ長期に及ぶ場合はシステムの機能回復等にかかる費用の発生、損害賠償や信用失墜といった有形無形の損害を被る可能性があり、当社グループの業績および財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑥ 新規事業の育成について
当社グループは、留守宅管理サービスや福利厚生代行サービス、海外赴任支援サービスなど先駆的なビジネスモデルを創出し、これらの事業を拡大することにより成長してまいりました。今後も、さらなる成長に向けて、主力事業と関連性の高い事業領域で新規事業を立ち上げていくとともに、インキュベーション途上にある事業は、早期に事業基盤を確立し利益貢献を果たすよう育成してまいる所存ですが、新しい社会的な要請に対応可能なサービスを創出できず、当社グループとして適切に対応できない場合は事業展開、業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 人材の獲得および育成について
当社グループが継続的に成長を成し遂げていくために、人材の獲得および育成は重要な要素のひとつとして挙げられます。創業当時から、当社グループでは「パートナーシップ経営」と称して当事者としての経営参加を従業員に推進し、表彰制度の拡充やストックオプションの提供等を通じた優秀な人材の確保とモチベーション向上による育成に取り組んでまいりました。また、社員に舞台を与える経営を基本方針とし、持株会社体制をとることで経営者人材の育成を図る他、将来の幹部候補をジュニアボードとして指名し、その成長を監督・支援するなど、後継者を育成する体制を構築しております。加えて、キャリアサポート制度を設置し、年次毎に異なるキャリア形成を促す取り組みを全社員に対し実施するなど、引き続き人材獲得および育成に対応しております。
当社グループは継続的な成長を維持していくために、さらに業容を拡大する計画にありますが、事業の拡大に伴う必要人員の増加に対し、日本の労働人口の減少が進行することにより必要な人材の確保が難しくなる可能性があります。また、新規事業の開発等、適正な知見を持つ人材の採用において競合他社との競争環境が悪化することも予想されます。優秀な人材が採用できない場合や人材の育成が十分に進まなかった場合には、当社グループの成長を阻害する要因となる可能性があり、新規事業の開発が鈍化するなど業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 感染症について
当社グループは、顧客企業の従業員の住居を含む福利厚生サービス提供する企業として事業活動を継続し社会機能を維持する役割を果たすため、災害や新型コロナウイルス感染症等に対応するための行動基準について整備するほか、救護や避難の訓練等を継続的に実施しております。
しかしながら、従業員や顧客の罹患等により営業活動に制約が生じた場合、またはパンデミックが起こり、行動制限措置により国内のみならず海外規模で人の移動が制限された場合、当社グループのサービス需要が低下し、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 自然災害・気候変動について
当社グループは、気候変動問題に対して、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、借上社宅管理事業と観光事業における気候変動による事業へのリスクと機会を特定し、財務インパクト試算に基づくシナリオ分析を開示しております。
借上社宅管理事業においては、事業運営において不動産を自社で保有する必要がない転貸型のビジネスモデルを展開していること等により、気候変動による直接的な影響は軽微であると分析しております。しかしながら、気候変動に対する取組みが不十分であった場合、既存顧客との取引関係や、新規顧客の獲得に問題が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
観光事業においては、お客様が安全に施設をご利用いただけるよう対策と管理には万全の注意を払っております。しかしながら、台風や異常気象などの自然災害が発生した場合、お客様の減少が見込まれるほか、施設被害の修繕や対策工事費用が発生することで、業績に影響を与える可能性があります。
その他主力事業については、順次必要なデータの収集と分析を進め、準備ができ次第開示してまいります。
⑩ 減損会計について
当連結会計年度末時点で、当社グループでは、観光事業の宿泊施設などを有形固定資産として計上しております。また、M&Aによる連結子会社の増加に伴いのれんを計上しております。M&Aにおいて当社グループは適切な買収対象の選定、投資の実行および被買収事業のPMI等について複数の実績を有しておりますが、今後グループ入りした企業にて事業の収益性や市況等の動向による影響またはPMIの遅延が生じた場合、これらの資産について、減損会計の適用に伴う損失処理が発生し、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(2) 各事業におけるリスク
① リロケーション事業
ⅰ 商習慣の変化について
当事業においては、顧客企業やその従業員、物件オーナー等に対し不動産取引(仲介・管理・賃貸・販売)、リフォーム・建築等多岐に渡るサービスを提供しており、各取引においては地域毎に存在する商習慣または商習慣に基づく契約規格が存在します。
当社グループはそれら商習慣または商習慣に基づく契約規格を前提としたビジネスモデルを構築し、現在に至るまで成長を継続しておりますが、今後、敷金、仲介手数料といった商習慣に基づく契約規格に変化があった場合や、電子契約や重要事項説明の非対面化といった情報通信システムの発展に伴う手続きの簡便化や商習慣の変化等に対し、当社グループが適切に対応できず付加価値を提供できなくなった場合には、事業展開並びに業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ M&A戦略について
当社グループは、「全国7ブロック展開」を企図し、中期経営計画等の事業計画においてもM&Aを戦略の一環として位置づけ、今後もその実行を検討してまいります。しかしながら、将来のM&Aについては、計画上必要な買収対象が市場にあるとは限らず、買収対象があった場合においても、当社グループにとって受入可能な条件で合意に達することができないなどの不確実性を伴います。継続的な情報収集に努めておりますが、M&Aによる戦略が奏功しなかった場合、事業計画策定時に企図した利益目標に寄与せず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅲ 債務保証について
当社グループでは、国内および海外において管理している賃貸物件等に対する滞納家賃の督促・保証サービスを行っております。当該保証サービスの対象となる入居者の審査にあたっては当社グループの基準や各種法令に則り、適切に行っておりますが、急激な景気の悪化など、何らかの理由により滞納件数が想定を上回り、滞納債権が増加した場合などには、貸倒引当金の積み増しなどにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ⅳ ビザの発行遅延や規制の変化について
当事業では日本から海外各地への赴任手続を代行するサービスを提供しておりますが、海外への渡航や就労にあたり必要なビザは世界の経済動向、天災や紛争、感染症等に影響を受けて発行が停止される場合があります。発行停止が長期間におよび赴任スケジュールに変更があった場合、また、規制等に変更が生じ、それらに対し適切に対応できない場合は当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
② 福利厚生事業
ⅰ 市場の飽和について
当事業では顧客企業に代わり、従業員へ福利厚生サービスを提供しておりますが、都市部においては福利厚生代行サービスの利用の浸透に伴い同業他社との競合が激化しております。また、地方においては就業人口の高齢化と人口減少が進行しており、長期的には市場が縮小していく可能性があります。
当社グループは市場環境の変化に対応するため、顧客企業の従業員のニーズの変化や働き方改革に代表される社会の動向に沿ったサービスやコンテンツの開発を進めておりますが、料金やサービス品質等の面で利用者の期待に沿えない場合は競争力の低下を招き、顧客の流出や新規の顧客獲得が進まないことなどによる営業成績の悪化が当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 観光事業
ⅰ 天候不順、感染症等について
当事業においてはホテル運営等の事業を展開しております。各宿泊施設においてはイールドマネジメント等により収益の確保に努めておりますが、悪天候や感染症等が長期に及ぶ場合、消費マインドの冷え込み等により一時的に宿泊数が減少する可能性があります。さらに影響が広範囲かつ長期に及ぶ場合は、悪天候や感染症等による二次被害を防ぐために必要な費用が増加する可能性があります。これらに対して当社グループが適切に対応できなかった場合は、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ 不動産市場環境について
ホテル運営事業では一部施設について当社グループが保有し、売却を行っておりますが、不動産市場は、景気動向、金利動向、地価動向等の影響を受けやすい傾向があります。
当社グループは適切な施設の選定および運営、運営を通じて資産価値を引き出すことによる売却収益の獲得、売却後における運営受託等についてノウハウを有しておりますが、経済の不確実性や変化等により、不動産市場の環境が悪化した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営における重要課題の一つとして捉え、30%前後の配当性向を目安に連結業績に連動した配当とすることを基本方針としております。加えて、一過性の特殊要因による影響を必要に応じて調整することで、安定的な利益還元を図っております。
以上の方針に基づき、今回計上した持分法適用会社に対する投資及び金融債権の減損損失は一時的な損失であるため配当金の決定においては加味せず、持分法適用会社に対する投資及び金融債権の減損損失を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益と配当性向に基づき、2024年3月期末の配当金は1株当たり37円といたします。
なお、1株当たり37円は過去最高の配当額となります。
今後も、継続的な成長を実現するための投資や財務体質の強化といった観点とのバランスを図りながら、利益還元を進めてまいります。
当社は、配当の回数を期末配当の年1回とすることを基本方針としておりますが、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議により、毎年3月31日を基準日として剰余金の配当等を行うことができる旨、および毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
また、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。