2023年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 当社グループのリスク管理体制

当社グループにおいては、損失リスクの管理を含めた危機管理を行う全社横断的な組織として、リスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会は、企業経営・事業継続に重大な影響を及ぼすリスクの識別・評価・管理が重要な課題であるとの認識の下、重点対応リスクを抽出した上で具体的な対策を講じる等、当社グループを取り巻くリスクを適切に管理し、リスク発生の防止に努めるなどの活動を行っております。各主要部門の担当取締役、執行役員及び従業員を中心に構成され、社内外における情報を収集し、様々な観点からリスク分析を行い、リスクに応じた対応策を検討、実施しております。

 

(2) 経営コンサルティング事業が経営成績上大きなウエイトを占めていることについて

経営コンサルティング事業は、当社グループの中核事業であり、収益面においても利益面においても大きな比重を占めております。

当社グループ(連結)の2022年12月期及び2023年12月期における売上高及び営業損益の内訳(金額及び構成比)は、下表のとおりであります。

 

 

(自 2022年1月1日
 至 2022年12月31日)

(自 2023年1月1日
 至 2023年12月31日)

売上高

営業損益

売上高

営業損益

金額
(百万円)

構成比率
(%)

金額
(百万円)

構成比率
(%)

金額
(百万円)

構成比率
(%)

金額
(百万円)

構成比率
(%)

経営コンサルティング事業

18,277

71.3

6,238

87.9

20,284

71.8

6,757

93.3

ロジスティクス事業

3,778

14.7

448

6.3

3,886

13.8

394

5.4

デジタルソリューション事業

3,562

13.9

176

2.5

4,051

14.3

△70

△1.0

消去又は全社

17

0.1

237

3.3

15

0.1

166

2.3

合計

25,635

100.0

7,100

100.0

28,238

100.0

7,247

100.0

 

 

(3) 当社グループの中核事業である経営コンサルティング事業に関連するリスクについて

① 経営コンサルティング業界を取り巻く環境について

当社グループにおいては、主に株式会社船井総合研究所が企業・法人を対象とした経営コンサルティングを行っております。

経営コンサルティング事業は、様々な分野において、幅広い専門知識や情報・技術をもって、企画立案・指導助言などのサービスを行う専門サービス業でありますが、当社グループが属する経営コンサルティング事業は、弁護士、公認会計士、税理士等のように法律によって独占業務が存する業態とは異なり、開業に際し必ずしも特別な資格取得の必要でない業態であります。

当業界におけるコンサルタント会社は、顧客満足度の高いサービスを提供するために、日々の業務等から得られたノウハウを蓄積し、新たな方法論(顧客の現状分析方法や現状分析に基づいた現状改革の方法)の構築を行っておりますが、今後当業界はさらに競争が厳しくなると予想され、DX等の新たな顧客ニーズも発生しており、顧客ニーズに対応できる企業とそうでない企業との二極分化の傾向が生じており、今後、合従連衡を含む業界再編が進展していく可能性もあります。

また、我が国における当業界の市場規模は、欧米と比較し経済規模としては相対的に小さいとの指摘がなされております。今後、我が国における企業経営が成熟するに従い、経営コンサルティングなどの知的専門サービスに対するニーズは高まるものと認識していますが、こうした知的専門サービスに対する理解並びに認識が十分に高まらず、当社が顧客ニーズに適合しない方向に向かった場合は、当社の収益の拡大も限定的なものに留まる可能性があります。

 

② 株式会社船井総合研究所の事業内容並びに顧客開拓について

当社グループの中核事業会社である株式会社船井総合研究所は、企業経営者が抱える様々な経営上の問題に対し、業種業態ごとに対応したマーケティング・顧客管理・人事などの経営に関するコンサルティングを通じ、顧客企業の育成及び発展を支援しております。

また、顧客企業に対する直接的なコンサルティング活動の他に、多岐にわたる経営課題並びに時流に即した経営セミナーの主催、また、経営戦略の研究や会員相互の交流による事業の可能性を広げるネットワーク作りを目的とする、多様なメンバーから構成された会員制組織である経営研究会を運営しております。

顧客開拓につきましては、既存顧客からの紹介、主催するセミナーによる集客、研究会のネットワーク拡充及び無料経営相談などにより顧客開拓を図っております。

顧客基盤におきましては、創業以来、流通業を主要な顧客基盤としておりましたが、現在においては、住宅・不動産業、医療・介護・福祉業、士業、自動車関連業、人材サービス業等、顧客基盤は拡大してきております。

株式会社船井総合研究所は、顧客開拓を専門に行う営業部門を有しておらず、今後も上記のようなコンサルティング活動を通じて顧客開拓を図る方針でありますが、顧客開拓のための活動や手法が有効に機能しなくなる等の事態が生じた場合においては、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ その他の経営コンサルティング事業について

株式会社船井総研ITソリューションズは、ITコンサルティング事業を行っており、主に基幹システム導入サポートやITコスト削減支援などのITコンサルティング業務を行っております。IT関連業界においては技術革新のスピードが速く、また競合他社においても大手企業はもとより新興企業が多数存在し、競争の激しい業界であります。このような業界においては、刻々と変化、複雑化する顧客ニーズに対し的確に対応する必要があり、同社が顧客ニーズに対応できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、同社は、2024年4月1日をもって、株式会社船井総合研究所に吸収合併される予定です。

株式会社プロシードは、コンタクトセンターコンサルティング事業を行っており、米国COPC社との日本独占ライセンス契約に基づいて、COPC組織認証等個人向けトレーニングを実施しているため、COPC社の経営方針、サービス内容の変化等によって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ コンサルタントへの依存について

経営コンサルティング事業において、コンサルタント1人当たりの業務量には限界があることから、事業拡大を図るには優秀なコンサルタントの増員が不可欠であります。そのために、社内教育の研修プログラムにおいてコンサルタントとしての基本姿勢及び必要な知識を習得させ、また、通常3~5名程度で構成されるチームで実際の現場におけるコンサルティング業務を通じ、個々のコンサルタントのレベルアップと知識ノウハウの社内共有を図り人材の育成に努めております。とりわけ育児等と就業の両立支援の制度の導入により女性の活躍機会の向上に積極的に取組んでおり、優秀な人材の定着に努めております。さらに、新たな人材確保においては、国内外を問わず新卒採用の他に各分野での経験者の採用を積極的に進め、潜在能力の高い人材の獲得に努めております。

今後においても優秀な人材の確保及び優秀なコンサルタントへの育成に努め、引続き増員を図る方針でありますが、当社グループが求める人材の確保及び育成が進捗しない場合においては、コンサルタントへの依存が高い当社グループの事業並びに業績に影響を及ぼすことになります。

また、当事業の性格上、個々のコンサルタントの意識や能力等により、パフォーマンスに差が生じる可能性があります。

当社は、社員のモチベーション及び帰属意識をより高めるために、人事評価制度における見直しを行い、個々の成果がより反映される給与体系を導入しております。しかしながら、能力の高いコンサルタントの中には独立志向が高い人材がいる可能性もあり、一部の重要な人材の離職があれば、業績において一時的な影響を受ける可能性があります。

 

 

⑤ 海外事業におけるカントリーリスクについて

当社は中国上海市に子会社を有しており、主に国内企業の中国進出サポート及び現地における営業マーケティングのコンサルティング活動を展開しております。中国市場におけるコンサルティングニーズは高い一方で、カントリーリスクが依然として高い状況にあります。具体的には、反日活動による日本製品への影響、税務・法務諸制度の度重なる変更による影響、政治・経済状況の激変によるマーケットに与える影響、大気汚染をはじめとした環境問題による従業員の健康への影響、その他、為替リスクなど海外事業特有のカントリーリスクがあげられます。今後も中国ビジネスにおけるコンサルティングニーズは高まるものと考えておりますが、上記のようなカントリーリスクにより、当社グループに一時的に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 経営コンサルティング事業以外の事業に関連するリスクについて

ロジスティクス事業については、顧客の業績向上及び物流コスト削減等を目的とした物流コンサルティング業務、物流業務の設計・構築・運用等を実行する物流BPO業務等のサービスを提供しております。これらは顧客との良好な関係により成立するため、常に競合会社からの営業活動による顧客の流出リスクに晒されております。また物流BPO業務については、リフト作業時の事故や倉庫内事故といった荷物事故、車両事故、倉庫の火災等予期しない業務事故が発生する可能性を秘めており、共同購買では品質における瑕疵等が考えられ、その対応処置に応じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらにESGにおける顧客をはじめとした社会・サプライチェーン全体の環境に配慮したソリューション提案を速やかに展開する必要性に迫られるリスクに晒されております。

デジタルソリューション事業については、マーケティング・バックオフィスの両面において、デジタル活用のコンサルティング、システム開発やプロダクト開発、WEB広告運用代行業務等のサービスを提供しております。デジタル関連業界においては技術革新のスピードが速く、また競合他社においても大手企業はもとより新興企業が多数存在し、競争の激しい業界であります。このような業界においては、刻々と変化、複雑化する顧客ニーズに対し的確に対応する必要があり、同社が顧客ニーズに対応できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。またHRソリューション事業については、主に採用広告運用代行サービスを通じて、現在多くの企業が抱える人手不足という課題に、ITテクノロジーを活用した解決ソリューションを提供しております。人材業界は大手企業をはじめ競合他社が多数存在し、価格面やサービス面において同社の競争優位性を維持できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 当社グループ戦略等について

① 事業領域の見直しについて

当社グループは、現経営陣の下、事業戦略の見直しを行った結果、中核事業であり安定した利益の見込まれる経営コンサルティング事業については、当面事業の拡大は可能と判断し、当該事業及びその周辺事業に経営資源を集中する方針を採っております。

当該方針に従い、今後、経営コンサルティング事業とシナジー効果の高い周辺事業などの新規の事業領域への進出を図ることにより、初期投資によるコスト発生及び投資計画と業績実績との乖離が発生した場合、当社グループの経営成績に一時的に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 当社グループのブランド力について

創業者の舩井幸雄が築いてきた「船井総合研究所」ブランドは、経営コンサルティング事業をはじめとする当社グループの事業展開の上で不可欠であり、このブランドを維持・発展することは、当社グループの事業基盤拡大の上で非常に重要であります。しかしながら、コンサルタントの質の低下や当社グループが提供するサービスが、顧客ニーズに必ずしも合致したものではなくなる状況が生じ、顧客からの信頼獲得に影響を及ぼす等の事態が生じた場合には、ブランド力の低下につながります。また、「船井総合研究所」あるいは「船井総研」の商標を冠する各社等にリーガル・コンプライアンスやコーポレート・ガバナンス上の諸問題が発生した場合にはブランドの毀損につながり、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 情報セキュリティに関するリスクについて

当社グループは、業務遂行上の必要から、個人情報や経営情報等の顧客の機密情報を保有しております。当社グループでは情報セキュリティをESGの重要課題の一つと捉え、グループの情報セキュリティ基本方針の下、当該情報の取得、保管、加工、利用、廃棄に当たっては、個人情報の保護に関する法律やその他の各種法令、守秘義務契約や機密保持契約を厳守すべく、グループ全体に情報セキュリティ関連規程及び運用状況の統制を行い、社内規程に則った取扱いをする体制を布いております。組織面では役職員等に対して情報セキュリティ5か条及び情報セキュリティマニュアルやeラーニングを用いた教育・研修等による情報管理の重要性の周知徹底をするとともに、システム面では主たるグループ会社では2018年より場所を選ばないシームレスなモバイル環境の整備と、クラウド化やメールの暗号化及び誤送信対策等によりセキュリティの両立を進め、コロナ禍以降の新たな働き方にもスムーズに対応しております。また、株式会社船井総合研究所では、2020年から顧客の情報資産の預かり方法の仕組みも刷新するなど、セキュリティ対策を日々強化し、機密保持に努めております。

しかしながら、これらの対策にもかかわらず、不測の事態により、これら情報の流出、個人情報の取得・取扱手続の不備による法令違反、重要データの破壊や改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用低下や損害賠償等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 内部管理体制について

当社グループは、持続的な成長と中長期的に企業価値の向上を図るため、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置づけております。当社グループでは業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備及び運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な事業運営が困難となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(8) 保有資産に関するリスクについて

当社グループが保有する資産のうち、有形固定資産、無形固定資産及び有価証券等において、当社グループの業績が計画どおり進捗できず将来得られるキャッシュ・フローが大幅に減少することとなった場合や、発行体の業績悪化等や経営破綻等が発生した場合には、これらの資産について減損処理を行う場合があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。こうした保有資産に関するリスクを回避するために、新規投資及び投資後の進捗管理を取締役会等において十分に検討を行い、リスクの予防や早期発見に努めてまいります。

 

(9) 大規模災害やパンデミック等のリスクについて

大規模災害により社会インフラが損壊するような事態や新型コロナウイルス等によりパンデミックが発生し、世界経済に悪影響を与える事態になった場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。これらの事態に備えて、従業員の安否を確認し、安全を確保する危機管理マニュアルを定めており、また事業継続対策の一環として、2024年4月に東京本社を東京ミッドタウン八重洲に移転することとしております。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、財務体質と経営基盤の強化を図るとともに、株主の皆様への適切な利益還元を経営の最重要課題と認識しており、今後も業績を考慮した利益配当を実施していきたいと考えております。なお、2023年12月期から2025年12月期の中期経営計画における株主還元の方針としては、「配当による還元」及び「自己株式取得による還元」の双方を考慮し、総還元性向60%以上を目指してまいります。

この方針に基づき、当事業年度の期末配当金につきましては、1株につき33円といたしました。これにより、中間配当1株につき32円と合わせ、年間配当金は1株65円となり、連結の配当性向は61.1%となります。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は定時株主総会であります。

内部留保につきましては、長期的な視点にたって将来の企業価値増加のために行う投資と、機動的な資本政策等が行える財務体質とのバランスを図りながら、自己資本の充実に努めていきたいと考えております。

なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2023年8月8日

取締役会決議

1,574,066

32

2024年3月23日

定時株主総会決議

1,577,854

33