2025年2月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)経営リスクマネジメント体制

① 当社グループにおける経営リスクマネジメントは、「『経営戦略と経営リスクは表裏一体』という考えの下、マテリアリティを起点として、当社グループの健全で持続的な成長を妨げる重要な経営リスクを適切にコントロールし、マテリアリティの実現可能性を高めることにより、企業価値の向上を実現すること」を目的と掲げ、全社的リスクマネジメント(Enterprise Risk Management : ERM)体制を整備しております。推進体制として、取締役会の諮問機関である「リスクマネジメント委員会」がグループ全体のリスクの管理と対応方針の決定を行います。委員会は決定内容を取締役会に付議し、取締役会が最終的な方針を決議します。また、取締役会は「リスク管理規程」を制定し、それに従ってCRO(最高リスク責任者)を配置し、CROが統括するリスクマネジメント部が規程の主管部署となり、具体的なリスクマネジメントをグループ全体で横断的に行っております。

 

② 当社グループの経営リスクマネジメント体制を模式図で示すと以下の通りとなります。

 


 

 

(2)経営リスクマネジメントプロセス

① 当社グループは、グループ横断的に様々なリスクを把握し、発生頻度と想定影響度等のリスク特性を評価し、統合的に管理することを基本的な方針としております。その中で、特に当社の財務状況や社会的信用等へ大きな影響を与える重要なリスクを特定し、連結ベースで管理・対策を行っております。

平時における対応といたしましては、各リスクオーナー・リスク管理部門がリスク低減等の施策を実施し、そのリスク管理状況や各部門・会議体・委員会において把握している経営リスクに関する情報をCROに連携することで、CROが経営リスクの変動状況を把握することを可能にしております。

また、有事の際には、リスクマネジメント委員会を速やかに開催し、発生したリスクの関連部門で構成される対応組織(危機対応組織)を組成し、CROによる指揮の下、初動対応等を実施し、早期復旧・被害最小化に取り組むことにしております。

 

② 当社グループのリスクマネジメントプロセスを模式図で示すと以下の通りとなります。

 


 

 

(3)当連結会計年度におけるリスクアセスメント

① リスクマネジメント委員会は、経営リスクアセスメントの結果を分析し、抽出された各リスクを適切に管理するため、次の通り分類することにしております。

ⅰ トップリスク:経営リスク及び主要リスクのうち、取締役会が特に注力を必要とするリスク

ⅱ 経営リスク :当社グループにおける当社グループの健全で持続的な成長やマテリアリティの実現を妨げるおそれのあるリスク

ⅲ 主要リスク :当社グループの各事業の運営において発生するリスクであって、定常的な管理を必要とするリスク

 

② 当連結会計年度においては、当社グループの健全で持続的な成長やマテリアリティの実現の妨げとなる経営リスクを考慮した経営リスクアセスメントを実施し、リスクマネジメント委員会(2回開催)での議論・承認を経て、当社グループにおける重点リスクの更新を行った後、重点リスクのうち、取締役会が特に注力を必要とするリスクをトップリスクとして選定しております。トップリスクについては、リスクごとの責任者として執行役員等をリスク・オーナーとして指名するほか、重点リスクについては、各リスクに応じた主管部門を定めております。リスク・オーナー及び主管部門は、リスクマネジメント部と連携のうえ、それぞれのリスクの低減を図るとともに、当社グループを取り巻く社会環境、経営戦略の進捗状況、その他リスクに与える影響を考慮し、それぞれのリスクが当社グループの経営に与える影響度の変化を把握し、実際に経営リスクに直面した際には、実行すべき対応を講じることとしております。

また、抽出された各リスクの「当社グループの事業に与える影響度」及び「発生可能性」の観点を踏まえたリスクマップを策定いたしました。有価証券報告書提出日現在におけるリスクマップは、下図の通りであります。

 


 

 

(4)トップリスク

 有価証券報告書提出日現在における当社グループにおけるトップリスクと判断したリスクは、次の通りであります。

 トップリスクは、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクと考えております。なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

人材

・人材確保

・人材育成

 当社グループの持続的な成長のためには、経営者、優秀な人材、コンタクトセンターで直接サービスを提供するオペレーター等、必要とする人材を採用し、それら社員のエンゲージメントを最大化すること、そして人材の質的向上が経営の重要課題であると考えております。具体的には、採用計画に基づく年間の採用活動、体系化された各種教育・研修の実施等を通じた人材育成に取り組むほか、多様な人材が活躍するための人事制度、ダイバーシティー経営、健康経営の推進を図る等の施策を行うことで、優秀な人材が集まり、継続して就業し、活躍しやすい環境を整備しております。

 しかしながら、必要となる人材を計画的に採用または育成することができない場合や、人材の流出を防止できない場合、当社グループの事業成長、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

情報

・情報漏洩・改ざん

・個人情報保護

・サイバー攻撃

 当社グループは、事業運営に必要な役職員に関する情報、営業上の情報はもとより、クライアント企業から預託を受けた個人情報を含めた各種情報に接しております。そのため、当社グループの事業を継続して運営するにあたり、各種情報の滅失、毀損、外部漏洩、改ざん等を防止することは、当社グループの経営の重要課題と位置づけ、情報保護管理体制の維持・運用を図るため、「個人情報保護方針」、「情報セキュリティ方針」をはじめとした情報保護に関する規程類を整備するとともに、当社グループ全役職員に対する周知、教育を継続して実施しております。

 さらに、昨今の高度に発達した情報化社会においては、マルウェア感染・サイバー攻撃が日々高度化、巧妙化していることから、サイバー攻撃等による各種情報の滅失等のほか、当社グループにおいて利用しているシステムの停止、当該システム停止による事業の中断等が生じる可能性があり、サイバー攻撃等への対処についても当社グループの経営の重要課題となっております。当社グループにおいては、サイバー攻撃等への防止、発生時の迅速な対応を実現するため、CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー:最高情報責任者)の配下に、情報リスクマネジメントの組織を設けるとともに、専門組織としてComputer Security Incident Response Team(CSIRT)を設置しております。

 当連結会計年度においては、更なる情報リスクの低減を図るため、外部の専門家を交えて情報リスクに関しての重大事象を想定した際の不備についての検証を行うとともに、情報リスクのコントロールを専任する情報危機管理部を設置しております。

 しかしながら、完全なる各種情報の滅失等の防止、サイバー攻撃の完全なる排除は困難であることから、万が一、各種情報について滅失等にかかる事故やサイバー攻撃による事業の中断等が発生した場合、各種情報の主体主等からの損害賠償請求、契約解約や社会的信用の失墜等により、当社グループの事業、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

・システム・業務停止

 当社グループでは、継続した在宅ワークの実施やDXを活用した業務の効率化のため、営業及びオペレーションの運用管理から人事労務管理及び経理全般に至る業務遂行において、インターネット通信網やシステムを活用しております。そのため、インターネット通信網の利用やシステムの提供を受けるにあたっては、事前にインターネット通信網やシステムの信頼性を調査するとともに、必要となるシステム保守を定期的に実施しております。

また、当社グループが保有しているシステムについては、計画的な保守のほか、システム設備の老朽化への対処として、定期的な交換等の措置を行うことで、当社グループの事業が可能な限りの停止、遅延することのないように努めております。

 しかしながら、自然災害、予測を超えた不正アクセス、マルウェア感染によるシステムへの攻撃等によりインターネット通信網やシステムに障害等が生じたことにより、当社グループの事業が停止、遅延した場合には、これにより発生した損害の賠償を求められる可能性があるほか、当社グループの事業への信頼喪失を招き、結果として、当社グループの事業活動、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

 

戦略

・事業戦略

・投資・提携

・新ビジネスモデル

 当社グループは、クライアント企業にとって付加価値の高いコンタクトセンターサービスの提供(「スマートコンタクトセンター業務」)と、クライアント企業の社内業務の支援を行うサービス(「スマートビジネスサポート業務」)を行っております。近年の生成AI等の技術革新により、クライアント企業のデジタル化の進展、エンドユーザーのITリテラシー向上に伴う電話による問い合わせニーズの伸びが限定的であるなど、コンタクトセンター事業を取り巻く環境は激しさを増しております。そのため、当社グループでは、生成AIとVOCを積極的に活用することにより更なる付加価値を創出し、当社グループのビジネス及び収益の拡大を目指しております。また、スマートコンタクトセンター業務とスマートビジネスサポート業務の提供のみならず、新たなBPO領域の創出、その実現に向けて必要となるパートナー企業への投資、業務提携を実施しております。

 特に、パートナー企業への投資、業務提携の実施にあたっては、事前にパートナー企業の財務内容や契約内容等の審査を行い、リスクを検討したうえで決定しております。また、投資、業務提携後は、当初想定した事業計画等の達成状況を定期的にモニタリングしております。

 しかしながら、デジタル化・生成AI等のテクノロジーの急速な進化、それら技術の活用による従来の電話対応業務の急激な減少、同業他社による新事業の創出等に対する、当社グループの技術対応の遅れ、コンタクトセンター事業の優位性確保や新たな事業の創出の停滞により、当社グループの事業成長に影響を及ぼす可能性があります。また、パートナー企業への投資、業務提携に関し、当初想定していた成果が得られないと判断された場合には、減損等が発生するほか、業務提携の解消による事業終了により、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

・海外事業

 当社グループは、ベトナム、台湾、タイに進出し、事業活動を行っているほか、海外で事業を行っている企業との取引を実施しております。そのため、該当する国・地域の政治、経済、社会情勢等に起因して予測を超えた事態や法令・規制の変更等による送金停止等のカントリーリスクを有しております。

 そのため、必要に応じて、伊藤忠商事株式会社の現地法人と情報連携を図り、該当する国・地域の状況を可能な限り把握するとともに、当社グループの駐在員からの密な情報提供を受けることで、リスクの軽減に努めております。

 しかしながら、地政学リスクが顕在化した場合、完全に回避できることが不可能であることから、これらの国・地域における当社グループの事業遂行の遅延・不能のほか、取引先企業による支払や納期の遅延、サプライチェーンリスクによる価格の高騰等により、当社グループの財政状況や業績に影響を及ぼす可能性があります。更に、ベトナム、台湾、タイに進出するにあたって投資した費用の回収が容易ではなくなることから、当社グループの財政状況や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

サステナ

ビリティ

・気候変動

 気候変動問題は世界共通の課題であり、当社グループも経営の重要課題の一つとして捉え、事業活動を通じた環境負荷の低減に向けた活動を展開しております。当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言へ賛同するほか、2022年4月開催の取締役会において、2025年、2030年、2040年までの温室効果ガス(GHG)排出量削減率の具体的な目標値を策定し、決議いたしました。

 なお、気候変動にかかるリスクの詳細については、当社グループの公式ホームページに掲載しております。

(URL)

https://www.bell24.co.jp/ja/csr/environment/climatechange-index/climatechange/

・人権

 当社グループは、日本国内のほか、ベトナム、台湾、タイにおいて事業活動を行っており、当社グループの役職員のみならず、取引する顧客の役職員の方々も多国にわたっています。近年、先進国を中心として人権への関心が高まっており、またステークホルダーによる人権への高度な対応要求は、サステナビリティの観点により、当社グループの事業活動に影響するものと考えております。当社グループにおいては、人権方針を制定し、公式ホームページにて公表し、役職員への周知活動を継続して実施するほか、適宜、人権デュー・デリジェンスを実施しております。

 しかしながら、当社グループにおいて人権侵害に該当する事象が発生した場合は、株価の下落、顧客との取引の停止、当社グループの社会的信用の失墜等により、当社グループの事業成長及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を最重要課題の一つとして認識しており、剰余金の配当を安定かつ継続的に実施し、業績の進捗状況に応じて配当性向及び必要な内部留保の充実等を総合的に勘案したうえで、中期的には親会社の所有者に帰属する当期利益をベースに、連結配当性向50%を目標として、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本的な方針としております。

なお、内部留保資金については、財務体質の強化を図るとともに、戦略的な成長投資に充当することにより企業価値の向上に努める考えであります。

また、当社は中間配当として、毎年8月31日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。

なお、当社の剰余金の配当等の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下の通りであります。

決議年月日

配当金の総額

1株当たり配当額

2024年10月9日

取締役会決議

2,213

百万円

30

2025年5月29日

定時株主総会決議

2,213

百万円

30